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第一章 突然壊れた平和 作:スワラル・ネクロ
少年カイは夢を見た。
それは、悪魔が突然やって来て、自分以外の住民をどこか遠いところへ連れて行ってしまう夢。そして、誰もいなくなった港町でひとりぼっちの夜を過ごす夢。
「そんなことありゃあせんよ!」わっはっは。とカイに対して一人の漁師は言い放った。「でも、本当に変なんだよその夢、夢なのに夢じゃないみたい感覚で…」
「仮にも海の男がそんなこと気にすんなって!そんなんじゃいつまでたっても立派な漁師にはなれねぇぞぉ?」
ほれほれ、といった感じでカイをからかう漁師。その様子を見ていた一人の少女がカイに助け舟を渡す。
「こらっ!またカイお兄ちゃんをいじめて!」
「フユミ…」
「あーらら、今のフユミちゃん聞いてたのぉ?」
「『そんなことありゃあせんよ!』のところからばっちり聞いてたわ!」
「最初らへんからかよ…弁解のしようがねえな…だが、しかーし!フユミちゃあん。君がその会話を聞いてたとしても、だ。君になぁにができるのかなー?」
「今までの会話を全部奥さんに言いつけてやるんだから!」
「わー!わーっ!!たのむ!
それだけはやめてくれえ!飴やるから!」
「そんなものでおとなしくなると思わないでちょうだい!ほら、カイお兄ちゃんも何か言…」
フユミがそこまで言いかけた時、カイはすでに自宅に戻っていってしまった。問題事にフユミが絡むとろくな事にならないことをカイは察知していたのだ。事実、このまま続けさせていたら、フユミは漁師の男が土下座するまで漁師に食ってかかっただろう。しかし、それを止める勇気も無かった。だからカイは自宅に帰った。それが最善の選択だと思ったから。
「僕ってつくづく…情けない奴だよな…父さん…母さん…」
カイは、両親の形見であるペンダントを握りしめて、そう呟いた。
「とにかく今度からはお兄ちゃんをいじめないこと!分かった!?」
「へいへい」
「返事ははい!」
「はーい」
ようやくフユミの説教から解放された漁師はまだ残っている仕事を片付けるため、船へと歩き出した。
「まったく…こんなことになるんならカイの奴をからかわなけりゃよかったぜ…」
そんなことをぶつくさ言っていると、後ろから急にフユミに呼び止められた。
「漁師さん漁師さん!」
「な、なんだよ!?あれはもうわかったから!」
「違う…あれ…なに…?」
フユミが前方の空に指を指す。
「んん…?」
フユミが指を指したその先には、
黒い翼を生やした悪魔の大群が空を覆っていた。
カイは落ち込んだ時、嫌なことがあった時は自宅の地下室にこもって、それから一日中一歩も地下室の外に出ない。
そうすれば悲しいこと、辛いことは全て忘れられるかもしれないから。
「強く…なりたいな…」
父が遺したサーベルを見ながらそう呟いた時だろうか、外から叫び声が聞こえた。
「今日って祭の日だったっけ…?」
そう思い、地下室から外に出て、窓から家の外を確認した。するとそこには地獄のような光景が広がっていた。
「誰かー!助けてくれえー!俺はまだ死にたくねえよぉ!」
「嫌…嫌ぁ!!」
恐怖に顔を歪ませながら逃げ惑う人々たちと…
「MDNTIKUD…AKRMR…」
「OTNSKSTIR…」
人間の倍はあろうかという体躯と身体能力を駆使し、意味不明な言語を話しながら人間を捕まえていき、どこかへ飛び去ってゆく。一方的なハンティングゲームの様相があった。
「なんだよ…これ…」
自分が見た夢と同じ。まったく同じだった。それゆえにカイの思考は凍結した。だって、そんな、まさか、ありえない。あんな光景がたった今、目の前に広がっているなんて誰が想像できた?
しかし、幸か不幸かそんなカイの思考を蘇えらせる出来事がすぐ起きた。
「きゃー!」
「フユミ!!!」
そう、フユミが悪魔達に追われていたのである。
「……!待ってろよ!!フユミ!!」
それからのカイの思考は早かった。まず、地下室に行って父親の形見のサーベルを持ち、外へ飛び出してフユミの所へ一直線に走り抜けた。そしてフユミに完全に注意が向いている悪魔に背中から斬りかかった。
ズバッ!!!!
「GA!GOA!」
悪魔が背中の突然の痛みに悶え苦しんでいるうちにフユミに駆け寄る。
「フユミ!」
「カイお兄ちゃん!」
「無事でよかった…地下室まで行こう!そこなら多分安全だ!」
「うん!」
しかし、事が全てそううまくいくはずがなかった。
「YKM…YtTN…」
「WRRGOUN…」
「IKNETNR…」
「…くそっ!」
「カイお兄ちゃん…!」
カイ達はあっと言う間に三体の悪魔に取り囲まれてしまった…
それは、悪魔が突然やって来て、自分以外の住民をどこか遠いところへ連れて行ってしまう夢。そして、誰もいなくなった港町でひとりぼっちの夜を過ごす夢。
「そんなことありゃあせんよ!」わっはっは。とカイに対して一人の漁師は言い放った。「でも、本当に変なんだよその夢、夢なのに夢じゃないみたい感覚で…」
「仮にも海の男がそんなこと気にすんなって!そんなんじゃいつまでたっても立派な漁師にはなれねぇぞぉ?」
ほれほれ、といった感じでカイをからかう漁師。その様子を見ていた一人の少女がカイに助け舟を渡す。
「こらっ!またカイお兄ちゃんをいじめて!」
「フユミ…」
「あーらら、今のフユミちゃん聞いてたのぉ?」
「『そんなことありゃあせんよ!』のところからばっちり聞いてたわ!」
「最初らへんからかよ…弁解のしようがねえな…だが、しかーし!フユミちゃあん。君がその会話を聞いてたとしても、だ。君になぁにができるのかなー?」
「今までの会話を全部奥さんに言いつけてやるんだから!」
「わー!わーっ!!たのむ!
それだけはやめてくれえ!飴やるから!」
「そんなものでおとなしくなると思わないでちょうだい!ほら、カイお兄ちゃんも何か言…」
フユミがそこまで言いかけた時、カイはすでに自宅に戻っていってしまった。問題事にフユミが絡むとろくな事にならないことをカイは察知していたのだ。事実、このまま続けさせていたら、フユミは漁師の男が土下座するまで漁師に食ってかかっただろう。しかし、それを止める勇気も無かった。だからカイは自宅に帰った。それが最善の選択だと思ったから。
「僕ってつくづく…情けない奴だよな…父さん…母さん…」
カイは、両親の形見であるペンダントを握りしめて、そう呟いた。
「とにかく今度からはお兄ちゃんをいじめないこと!分かった!?」
「へいへい」
「返事ははい!」
「はーい」
ようやくフユミの説教から解放された漁師はまだ残っている仕事を片付けるため、船へと歩き出した。
「まったく…こんなことになるんならカイの奴をからかわなけりゃよかったぜ…」
そんなことをぶつくさ言っていると、後ろから急にフユミに呼び止められた。
「漁師さん漁師さん!」
「な、なんだよ!?あれはもうわかったから!」
「違う…あれ…なに…?」
フユミが前方の空に指を指す。
「んん…?」
フユミが指を指したその先には、
黒い翼を生やした悪魔の大群が空を覆っていた。
カイは落ち込んだ時、嫌なことがあった時は自宅の地下室にこもって、それから一日中一歩も地下室の外に出ない。
そうすれば悲しいこと、辛いことは全て忘れられるかもしれないから。
「強く…なりたいな…」
父が遺したサーベルを見ながらそう呟いた時だろうか、外から叫び声が聞こえた。
「今日って祭の日だったっけ…?」
そう思い、地下室から外に出て、窓から家の外を確認した。するとそこには地獄のような光景が広がっていた。
「誰かー!助けてくれえー!俺はまだ死にたくねえよぉ!」
「嫌…嫌ぁ!!」
恐怖に顔を歪ませながら逃げ惑う人々たちと…
「MDNTIKUD…AKRMR…」
「OTNSKSTIR…」
人間の倍はあろうかという体躯と身体能力を駆使し、意味不明な言語を話しながら人間を捕まえていき、どこかへ飛び去ってゆく。一方的なハンティングゲームの様相があった。
「なんだよ…これ…」
自分が見た夢と同じ。まったく同じだった。それゆえにカイの思考は凍結した。だって、そんな、まさか、ありえない。あんな光景がたった今、目の前に広がっているなんて誰が想像できた?
しかし、幸か不幸かそんなカイの思考を蘇えらせる出来事がすぐ起きた。
「きゃー!」
「フユミ!!!」
そう、フユミが悪魔達に追われていたのである。
「……!待ってろよ!!フユミ!!」
それからのカイの思考は早かった。まず、地下室に行って父親の形見のサーベルを持ち、外へ飛び出してフユミの所へ一直線に走り抜けた。そしてフユミに完全に注意が向いている悪魔に背中から斬りかかった。
ズバッ!!!!
「GA!GOA!」
悪魔が背中の突然の痛みに悶え苦しんでいるうちにフユミに駆け寄る。
「フユミ!」
「カイお兄ちゃん!」
「無事でよかった…地下室まで行こう!そこなら多分安全だ!」
「うん!」
しかし、事が全てそううまくいくはずがなかった。
「YKM…YtTN…」
「WRRGOUN…」
「IKNETNR…」
「…くそっ!」
「カイお兄ちゃん…!」
カイ達はあっと言う間に三体の悪魔に取り囲まれてしまった…
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