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HOME > 遊戯王SS一覧 > 血に濡れる緑の鮮花②

血に濡れる緑の鮮花② 作:にゃる


森が震える。

逃げなければ。そうとしか思考できなくなったバベラータイプは、天空へとその活路を見出す。

だが、彼らは何かに阻まれ、落とされた。

木の幹が伸び、天を覆う。最早そこは開けた場所ではなく、木でできた牢獄。

こうなれば術師を狙い、即座に始末する。そう考えたかは定かではないが、バベラーはドリュアスをその嘴で貫かんとする。

結果として、その個体はドリュアスを貫けなかった。

逆に、彼の身体を、緑色の物体が刺し貫いていた。

他のバベラーが驚愕する。その個体を貫いたのは、唯の蔦だった。

蔦がしなり、そして加速し、他の個体を貫き、引き裂く。まさか。まさかまさか。

ドリュアス「……森よ、怒り狂え」

その言葉で、森が、一気呵成、バベラーに襲いかかる。

一面から蔦が伸び、引き裂いていく。枝は鋭い棘と化し、触れた者を骸へと変える。

やがて、植物は巣をも包む。バキバキと、チョコレートを砕くような音が木霊する。

植物が異常な成長をやめ、治った時、既にそこにあるのは、唯の広場だけだった。

ドリュアスは森を出る。血を失いすぎた。剣を杖にして、森から騎士団へと戻ろうとする。

前から自分を呼ぶ声がする。あれは……

ドリュアス「……アル、ルーナ」

アルルーナ「ドリュアスさん!その傷どうしたんですか!?」

ドリュアス「…………」

アルルーナ「と、兎に角救護室へ……!」

ドリュアス「…………なぁ」

アルルーナ「はい?」

ドリュアス「…………ただいま」

アルルーナ「っ!……お帰りなさい、ドリュアスさん!」

ああ、そうだ。私には仲間がいる。なのに何故私は一人でこの任務を受けたのか?

もしかしたら、焦っていたのかもしれない。故郷を護れなかった責務から、逃げ出したかったのか。

剣を執るしかなかった少女は、眠りに落ちる前に、そんな事を考えた。
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