夜会の情報屋ヤマト

黒壱(クロイツ)
「夜会における普通の効果モンスターの中では、最後の一枚。ヤマトゴキブリのヤマトさん。
長くボサボサとした黒髪の青年。前髪が長いせいで表情は伺えず、覇気の無いのんびりとした口調で喋るが、本気を出すと恐ろしく素早い。生き残ることにかけてはスペシャリストで、マキリですら彼を殺し切ることは出来ないらしい。
影は「蜚蠊」。対応する欲望は「貪欲」。

※

「……で、姐さんはコチョウ姐さんの様子がおかしいと踏んでいるんで？」
暗い下水の匂いがする路地裏。そこでヤマトは珍しい来客を迎えていた。
「そうだ。あの人は、自分の妹分のことになるといささか正気じゃ居られないみたいだからねぇ」
両腕を組んで、アリサが言う。豊かな胸が押し潰されて窮屈そうだ。
「そりゃアリサ姐さんも同じじゃ……あぁ、いやいや何でも無いっすよぉ」
「……あんまり舐めた口を利かないことだね。その首から上を大事にしたいならねぇ」
「姐さんの魔剣で斬られたら、ちっとばかり成仏出来そうに無いんで。勘弁して欲しいっす」
へらへらと笑うヤマト。あまり口程に恐れた様子は無い。
「で、だ。アンタにはコチョウ姐がおかしなことしないよう、逐一見張って報告して欲しいんだよ」
「おかしなことって、具体的になんです？ いやぁわからないなあ」
「……蟲に囚われた様子になってないか、だよ」
アリサは唇を噛む。
「蟲との付き合いは夜会で暮らす人間には宿命みたいなモンでしょう？ 何を焦ってるんです」
にやにや笑うヤマトに、アリサは思わず剣を抜きかけて、自制した。
「ミツバが有名になり始めてから、コチョウ姐は心此処に有らずって感じさ。師父（シーフー）も心配してらっしゃる」
師匠であるマキリがコチョウにどんな感情を抱いているのか、気が付かないアリサでは無かった。伊達に長い付き合いではない。
「コチョウ姐はミツバが有名になって、変わっていくことを……成長していくことを恐れてる。蟲はそんな心の隙を突いてくる。今の姐々は、いつ喰われてもおかしくは無い」
「おかしな話ですねぇ。そこまで分かってるなら、何故本人に忠告しないんです？」
「素直に聞いちゃくれないよ。あの人にとって、ミツバは生きる全てだからね」
「それこそマキリの旦那の仕事でしょうや。男と女の話で解決しませんかねぇ。何で姐さんが気を揉んでるんですかぁ？」
「…………」
俯いて黙り込むアリサを、ヤマトは覗き込んだ。長い前髪の内側から鋭い眼が少女を見詰める。
「ははぁん。当ててみましょうか。そいつは『嫉妬』ですわ。誰に対する嫉妬なんですかねぇ。旦那か、コチョウの姐さんか、ミツバの嬢ちゃんか。……あぁ、全員ですか」
「……黙れ、殺すぞ」
「みんな自分と関係無いところで自分が入り込めない関係を持ってる。姐さんはそいつが堪らなく心細いんですねぇ、難儀なお人だ。誰かの為に何かしたいのに、誰もそいつを必要としてくれない。あぁそいつは悲しいですねぇ。我慢ならないですねぇ。『殺してやりたくもなりますねぇ』」
「ーーッ！」
致命的な一言に、とうとうアリサの勘忍袋の緒が切れた。
耳を聾する稲妻のように鋭く啼いて、抑え込まれていた剣が抜き放たれる。
銀の輝きも目で追えないほどの速さで振り抜かれた直剣は、確かにヤマトの頸を薙いだように見えた。
「……いやぁ怖い怖い」
しかし、離れたところで悠然と、黒髪の男は手を叩いて笑う。
「『蟻』は『秩序』だけではなく、『献身』も糧とするみたいですねぇ。面白い」
ばさり、と袖を鳴らし、ヤマトが抱拳礼を取る。
「良いですよぉ。姐さんの依頼、受けることにします。報酬は頂きましたんでねぇ」
「……クソ趣味の悪い男だね」
「褒め言葉と受け取っておきましょう。では、再見（サイツェン）」
影のように消えた男を一顧だにせず、アリサは震える手で剣を握り締めた。
「……そうさ。姐さんは、アタシが殺す」
」(2016-07-18 17:35)

海藻
「お、除外しつつのドローソースですか。この効果で自分を除外すればアド損は全くなしになりますね。特殊召喚するのは招待状とかかな？
そしてこれは、何というか…。自覚してるのがむしろ厄介かも知れませんね。ミツバは望んでないだろうに…」(2016-07-18 18:30)

黒壱(クロイツ)
「海藻さん＞
星京と違ってフィールドのカードは除外出来ないので、自分は除外出来ないですね。
でもヤマト出して何か除外してドローして、星京でヤマト除外してドローして、ヤマトss何か除外してドローして、の無限ループは出来ます。悠長ですけど（笑）」(2016-07-18 19:00)

名無しのゴーレム
「うわぁ、ドロドロだぁ……ヤマトの煽りっぷりがヤバい。
上級故に何も考えずに投入することは出来ませんが、闇の誘惑が単なる手札交換にならないのがこのカテゴリの強みでもあるのかも。①は墓地を除外しながら手札を肥やせるため非常に優秀。②も①に繋げるだけでなく、何かのついでに確保できる壁なんかにも。」(2016-07-18 22:03)

黒壱(クロイツ)
「名無しのゴーレムさん＞
3枚詰みはさすがに無理ですが、持久戦では異様に強い、みたいな。
コチョウ星京の流れを考えれば手札に来ても処理は簡単ですし、見た目以上に出しやすいかもしれません。」(2016-07-18 22:22)