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HOME > 遊戯王SS一覧 > グラウンド外の決闘 2/3

グラウンド外の決闘 2/3 作:ぎゅうだん

「俺の先行だ。俺は、手札から《カオティック・エレメント》を発動!。」

「そのカード・・・。」

 大洋の魔法カードの発動に、康生は即座に決闘板でチェーンを選択する。一時停止、チェーンするかどうか、短い時間だが思考を許された時間を作る。

「すみません、少し考えさせてください。」

「ああ。大丈夫だ。」

 短いやり取りの後に康生が考え込んだ。その沈黙に、ユイは小声で沼田に呟く。

「あれって、なんのカードですか?。」

「特定のモンスターのサーチカードだよ。あれを使うデッキはかなり限られてるから、康生くんも考えてるんだろう。」

 沼田が簡潔に答えたところで、康生が決闘板のチェーンを停止させる。チェーンなし、ということを表す行動だ。

「チェーンは無しでいいのか?。」

「ええ。すまんです。」

 答えながら、康生は思考を巡らせていた。《カオスティック・エレメント》自体は知っていた。そして、そのカードを使うデッキにも検討がついていた。それと共に、自分の手札を見る。予想通りであれば、今あるカードの使い所は、かなり考えなければならない。

「なら、《カオティック・エレメント》で俺はデッキから《K9-66a号 ヨクル》を手札に加える。」

「やっぱり【K9】か。」

「その感じ、予想通りって感じだな。」

「ここ最近、ずっと見てますからね。」

「それなら、いちいち説明しなくても大丈夫そうだな。」

「ええ。わからない時には、遠慮なく検索させてもらいますから。」

 軽口に答えつつ、康生はニヤリと笑って見せた。大洋も楽しそうに笑う。どちらも楽しそうだ。

「今度はあまり見ない方のカードで行くか。さらに俺は手札から《虹の橋 ビフレスト》を発動!。EXデッキより《サイコ・エンド・パニッシャー》3枚を除外して、フィールド魔法を手札に加える。」

「フィールドサーチか。」

「ああ、EXカツカツだから、結構つらいけど。さて、こちらはどうだ?。」

 2度目の判断を突き付けられる。流石に、最初の反応で妨害を持っているのはわかったのだろう。自分の手札を確認して、康生は再び考え込んだ。

『ここで妨害を切って。・・・だけどここで妨害を切ると《カオティック・エレメント》を通した思惑が透ける可能性もあるな。』

 一瞬だけ迷うが、これ以上待たせるのは良くないな、と康生は直感に従うことにした。

「こちらもOKです。」

「わかった。俺は、デッキから《U.A.ハイパー・スタジアム》を手札に加える。そのまま発動するぞ。こっちもサーチがあるから何もないならそのままサーチしていいかな?。」

「そこはちょっと待ってください。」

 言いながら、康生は検索を始めた。その様子に、大洋は満更でもない様子で答える。一方で、観戦していたユイもすぐにスマートフォンでカードの検索を始めながら、沼田に声をかけた。

「それで沼っち先輩、【U.A】ってどんなテーマですかぁ?。」

「ん〜、簡単に言えばプロスポーツテーマかなぁ。あのカードだと【F.A】の可能性もあるけど、まあ【K9】と合わせるなら、ウルトラアスリートだろうね。」

「ふ〜ん。あ、あったあった。」

 検索で出たカードを読みながら、ユイが答える。

「【U.A】自体は小島もずっと使ってるデッキなんだよ。攻撃役と防御役が決まっていて、手札の選手とフィールドの選手が入れ替わるのが特徴だね。」

 沼田の説明とカード検索で出たカード群を見比べながら、ユイがウンウン唸る。その様子を沼田も楽しそうに眺めていた。

「さて、こうなると康生くんはちょっとばかりきついかな。こういう勝負は、場数がものをいうからね。」

 康生もまた、見たことがないテーマにワクワクしながらも、一方で困惑していた。一体どういう動きを見せるのか、正直よくわからない。

「・・・それも通します。」  

 康生が止めていたチェーンを外す操作を決闘板でおこなうと、《U.A.ハイパー・スタジアム》が発動されて処理された。VRゴーグルには彼らが近未来のスタジアムに立つ選手となっていた。周囲は広いアリーナとなり、多くの観客が熱狂を伴って見守っている。

「なら、俺は手札に《U.A.パーフェクトエース》を加える。」

 大洋が手札に加えたカード、それは筋骨隆々な肉体に機械装甲が装着された未来スポーツの、ピッチャーだった。一瞬だけ、その姿に康生の思考が止まる。

「・・・続けていいか、康生?。」

「あ、はい。すみません。」

「じゃあ、つづけて俺は《K9-04号 咒》を通常召喚。こいつの効果は、説明しなくても良さそうかな、」

「ええ、大丈夫です。そいつには《灰流うらら》です。」

 効果を説明される必要もなく、康生は妖怪少女の妨害を叩きつけた。大洋の呼び出した機械の陰陽師を、急に現れた妖怪少女がペシペシと足蹴にして陰陽師の集中を乱した。最後には陰陽師が切れて、諦めると、妖怪少女は笑いながら消えていった。

「そうなるか。」

 大洋が言葉を上げるが、康生としては大洋の反応に眉を顰めた。

『・・・なんか違和感があるな。』

 確信があるわけではないが、なんだか動きづらさを感じる。まるで、手札を見透かされているような。そんな感覚が康生にはあった。一方で、大洋は康生のプレイに一つの仮説を立てていた。それが、少しずつ実証されていた。

「小島は、康生くんのデッキの目星がついてるのかな。」

「そうなんですか?。」

 沼田の呟きを聞き逃すことなく、ユイは聞いた。2人に聞こえない様に小声なのが、彼女のそつの無さを表している様に感じる。

「もしかしたら、ね。ずっとケアしてる。」

「けあ?。」

「あ、う〜ん・・・・康生くんの持ってるかもしないカードが使われない様に、うまくプレイしてるってことね。」

「持っているかもしれないカードが使われない様に?。」

 ユイが曖昧な表情を浮かべた。

「それって、そんなフツーにできることなんですかぁ?。カードもすごい多いのに。」

「まあ、完全に予測してるってよりも、あったら嫌だな、だからケアしよってくらいの感じだからね。ただ・・・。」

 VRゴーグルに映し出されるスタジアムで対峙する2人を見る。妨害を受けながらも、余裕の感じられる大洋と、《灰流うらら》を使って《K9-04号 咒》という初動を止めながらも、表情が硬い康生が対称的に感じた。

「小島は康生くんの動きで、ちょっと察してるかもしれないね。」

 沼田の言葉に、まだピンと来ていないながらもユイも決闘を見守る。

「ノロイがダメとなると・・・次はこっちだな。俺は《バーバリアン・エコーズ》を発動する。発動処理で地属性戦士族をサーチしつつ手札を1枚捨てるよ。これは?。」

「う〜ん・・・通しっす。サーチ札引いすぎじゃないですか。」

「俺もけっこうびっくりしてるよ。」

 4枚目のサーチ札に康生も苦笑いを浮かべ、大洋も朗らかに笑う。初手を見てからここまでこの笑みをしっかり我慢していたのだろう。そのしたたかさが、康生には懐かしかった。

「そういや。」

「ん、なんだ康生?。」

 カードを探しながら、大洋が康生の呟きに答えた。

「いえ、そういやリトルの時も先輩、すげぇポーカーフェイスっていうか、どんな時も笑ってたなって。悔しい時も、きつい時も。」

「・・・そうかもな。これで、けっこう我慢してるんだぜ。」

「知ってましたよ。なんだかんだ、先輩とは付き合い長かったっスからね。」

「そうだったな。」

 大洋は答えながら1枚のカードを公開する。

「さて、待たせたが俺は《K9-17号 イヅナ》を手札に加え、その後に手札から捨てる。」

 大洋の動きに、康生もユイも驚いていた。
 流石に遊戯王を嗜む部活だ。環境カードでもある《K9-17号 イヅナ》の事はどちらも知っている。そして今の状況なら特殊召喚できることも。そのカードを捨てる意図を図りかねていた。決闘を見守る他の生徒たちも、大半は同じ感想だった。
 しかし、その動きに沼田は大洋の思惑を感じ取っていた。

「そして、俺は続けて《蛮族の狂宴LV5》を発動!。手札と墓地からレベル5戦士族を2体まで効果無効で特殊召喚だ!。こい、イヅナ!パーフェクトエース!。」

 続く大洋の魔法カード《蛮族の狂宴LV5》が発動される。スタジアムに響く蛮族の雄叫びにも似た観客の歓声が響く。その声に導かれるように、2人の影が現れた。1人は婦警、そしてもう1人は未来の野球選手だった。

「そしてイヅナとパーフェクトエースでオーバーレイ!。2体で《K9-17号 “Ripper”》だ!。」

 大洋の掛け声に、2体のモンスターが闇の渦に消える。そして、その渦が爆発すると、その中から黒い影がヒュンと飛び出した。半人半獣のそのシルエットは、しなやかな四肢を大洋の場で伸ばす。その姿は美しくも、しかし四肢に装備された刃が禍々しい。
 そして、遊戯王を楽しむ彼らとしては、何度となく目撃した強力なモンスターだった。

「さて、早速サーチ効果と行きたいけど?。」

 美しき半人半獣を従えた大洋の姿に、康生が気圧されていた。もちろん、強力なモンスターの展開にプレッシャーを感じたところもある。だが、それ以上にある確信から、目の前の決闘者の強さを感じたからだった。
 康生が静かにうなづくと、大洋は効果を処理していく。

「なら、X素材を1つとって《“Case of K9”》をサーチ。そして、そのまま発動してデッキから《K9-66b号 ランタン》をサーチ。あとは・・・。」

 大洋が次々と手を進めていく。そして、完成した盤面には《K9-17号 “Ripper”》、機械仕掛けの姫君《召煌女クインクエリ》、その上で《U.A.ハイパー・スタジアム》のマウンドに1人のピッチャーが佇んでいた。   (実際の展開は巻末の[展開補足補足①])

「これでエンドまで行きたいが・・・。」

 完成した盤面を確認しながら、大洋が康生に声をかけた。康生もまた、この完成された盤面を見ながら手札の1枚のカードを見つめて悩んでいた。

「・・・先輩、いつから気づいてました?。」

 悩みながらも、ふと確信を持って呟く。大洋もその言葉に答えた。

「うららでノロイを止めたあたりからだな。結果的に温存されて一番きついところに刺されたけど、あれでランタンやヨクルを通してOKなら、イヅナの可能性があるなってな。」

「それでかっちりRipper立てて来たわけですか・・・。」

「ま、もってなくてもケアできるならしとこうと思っていたし。それで、その反応だと持ってるみたいだけど、どうする?。」

 大洋の推理を聞いて、康生は手札のイヅナを見ながら悩む。ここまで話してしまったのだから使ってしまえという自分と、こういうのはとっておくべきだろ、そもそもなんで言っちゃったんだと攻める自分が頭の中で言い争う。  少しして、康生はチェーン無しの操作を決闘板に入力した。

「改めて、ターンエンドだ。」

 大洋が、改めてターンエンドの宣言をした。康生との会話で、観戦している生徒たちにも大洋のプレイイングの意図が伝わったようで、少しざわつく。スマートフォンでカードを検索する者、周囲と話す者それぞれが2人の決闘を話題に小声で語り合っていた。

「う〜ん。」

 その中で、ユイが唸った。そして、沼田に問いかけた。

「沼ちゃん先輩的には、今の展開ってどうなんですかぁ?。」

「ん?、どういうこと?。」

「なんか、うまくイヅナを出させない様にした、ってのはわかるんですけど、でも妨害的にはRipperの効果とピッチャーの無効化と・・・あとは。」

「あとは《K9-EX拘束解除》とかかな。手札のうち1枚は、パーフェクトエースのコストだと思うし。」

「なんか、色々やったけど、ちょっと先輩の方も動きづらそうっていうか。」

 首を傾げながらユイが沼田に尋ねた。周囲から見れば愛嬌を振り撒いているように見えるかもしれないが、沼田はむしろユイがこれまで【K9】のことをだいぶ理解していることに少しだけ感心していた。

「・・・そうかもね。」

「ですよねぇ。今だとだざーって流されたりするから、なんか心許ないって気もして。」

「まあ、康生くんのデッキは盤面だけの妨害だと、ちょっと嫌なカード多いからね。一応、ルプスも手札にあるから、見た目以上にはきついと思うけどね。」

 そんな2人のコソコソ話を気にも止めず、決闘の場の2人は向かい合ってお互いを見据えていた。康生にとっても大洋にとっても、お互いに向かい合うのは出会ったリトルリーグ時代から幾度となく経験した事だった。だからこそ、高校で遊戯王というゲームの場を借りて対面できた事が、康生にとってはどうにも感慨深かった。

『・・・といっても、今までは俺がマウンド側だったけどな。』

 そう思いながら、《U.A.ハイパー・スタジアム》のマウンド上に佇む《U.A.パーフェクトエース》を見据える。映像ながら、大洋の従えるエースはまさに守護神の如き威圧感を放っていた。手札コストが必要とはいえ、無効効果はなかなか重い。
 そんなことを思いながら、康生もデッキに指をかけた。

『コウセイ、ドローファースト。』

「ドロー!。」

 決闘板が後攻を告げ、康生が逆転の一手を求めてカードを引いた。
      
          ーーーーーーー 3/3に続く

[展開補足①]

①手札の《K9-66a号 ヨクル》効果を発動。手札の《K9-66b号 ランタン》と一緒に特殊召喚。その後、それぞれの効果で《K9-00号 ルプス》と 《K9-LC拘束解除》をそれぞれデッキから手札に加える。
② 《K9-66a号 ヨクル》と《K9-66b号 ランタン》で《召煌女クインクエリ》をX召喚。その①効果でX素材として墓地に置いていた《U.A.パーフェクトエース》を特殊召喚。
③ 《K9-LC拘束解除》をセット。

※ 2026.05.30
 実は、3/3の展開について修正を行うことにしました。ですので、今週中の3/3の更新はできそうにありません。すみません。3/3は2026.06.03の更新予定とさせていただきます。よろしくお願いします。

※ 2026.06.03
 本日に3/3を投稿する予定でしたが、明日2026.06.04に延期して投稿させていただきます。すみませんがよろしくお願いします。
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