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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第82話:痛恨の一撃

第82話:痛恨の一撃 作:

地球に迫る巨大隕石型モンスターから世界を救うため、遊次たち「なんでも屋Next」の4人と、オスカー、アリシアは、外界から閉ざされた砂漠国家「ネフカ王国」へ足を踏み入れた。しかしそこはモンスターを上位の存在として崇める過激派「絶対派」が支配する国だった。

一行を迎え入れた神官ムルシドの手引きで、彼らは石造りの密室にて少女「トト・ミポット」と出会う。彼女は歴史家だった父が国の「禁忌」に触れたため、両親を国王アスラナクに処刑され、自身も命を狙われていた。そこに記された内容を知っているのは、この場では彼女ただ一人だ。だがトトはその口を固く閉ざす。そこに記された禁忌にこそ、世界を救う手がかりがあるとオスカーは推測する。

一方、王宮に仕えるムルシドは、思想の異なる者を処刑する暴政を憂い、密かに革命を企てていた。彼はデュエリアからの入国要請を好機と捉え、偉人ヘックス・ヴラッドウッドの名を利用して入国の許可を国王に進言。それをアスラナク打倒の引き金にしようとしていたのだ。

ムルシドによれば、隕石型モンスターは「悪星神」と呼ばれるモンスターワールドの神だという。神を打ち破ろうとする遊次たちに絶対派の王が協力する可能性は低く、トトの命を守るためにも、彼ら自身もアスラナクを打倒し革命を起こすしかないと考え始めていた。しかし、国際問題への発展を危惧するアリシアは慎重姿勢を崩さず、王との謁見を主張する。

その矢先、アスラナク配下「七使徒」の一人が指揮する「アザン軍」の副指揮官と、その兵士達が隠し部屋を急襲。トトを匿っていたことが露呈し、ムルシドは捕らえられてしまう。遊次たちはトトを連れて地下道へ逃げ込むが、追っ手を振り切れないと判断したイーサンは単身で身を翻し、副指揮官セヘジュと対峙。オスカーから与えられた「強制オースデュエル」を発動し、兵の足止めを要求する。対するセヘジュはイーサンの身柄を要求。敗北すれば兵を止めることができず、いずれ遊次たちやトトも捕らえられてしまう。そうなれば命の保証はない。

地下道を逃げ続ける遊次たちを救うため、イーサンは一刻も早くセヘジュを打ち破り、兵を機能停止させなければならない。


「デュエル!」
宣言と共にセヘジュのデュエルディスクのランプが灯る。

「私のターン!ペインチャージャー・アレクトを召喚!」


■ペインチャージャー・アレクト
 効果モンスター
 レベル3/闇/戦士/攻撃力1500 守備力1000
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。
 ②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。デッキから「ペインチャージャー」魔法カード1枚を手札に加える。


現れたのは、全身を鋭角的な漆黒の装甲で覆う戦士モンスターだった。後方に角を伸ばした兜から無造作な黒髪を覗かせ、目元は赤く発光するバイザーで隠されている。装甲から露出した青白い左頬には生々しい傷跡が刻まれ、邪悪な笑みを浮かべている。

金属プレートを幾重にも重ねた堅牢な黒鉄の鎧は、胸部で光るV字の意匠を起点に、継ぎ目や亀裂から真紅のエネルギーを血管のように這わせて鮮烈に発光している。背や腰からは巨大な刃状の漆黒パーツが、翼やマントのごとく鋭く突き出していた。金属の指先まで覆う手甲の両腕が握りしめるのは、無骨で分厚い機械式の銃。黒と鈍色の銃身側面に二つの赤い円形センサーを光らせる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/3wiJHJV
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「ペインチャージャー・アレクトの効果発動!召喚時、デッキからペインチャージャー魔法カードを手札に加えることができる。私は永続魔法『ペインチャージャー・プロイオクシス』を手札に加える」

「魔法カード『ペインチャージャー・アフォルメ』発動!デッキからペインチャージャーを特殊召喚し、自分は500のダメージを受ける」

■ペインチャージャー・アフォルメ
 通常魔法
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:デッキから「ペインチャージャー」モンスター1体を特殊召喚する。その後、自分は500ダメージを受ける。
 ②:自分が「ペインチャージャー」SモンスターをS召喚したターン、墓地のこのカードを除外して発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。


「私はペインチャージャー・メガイラを特殊召喚!」

■ペインチャージャー・メガイラ
 効果モンスター/チューナー
 レベル5/闇/戦士/攻撃力2100 守備力1700
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。
 ②:このカードが特殊召喚した場合に発動できる。
 デッキから「ペインチャージャー」罠カード1枚を選び、自分フィールドにセットする。
 ③:このカードが戦闘でダメージを与えた場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。その効果を無効にする。


現れたのは、全身を分厚いベージュの重装甲で覆った、無骨な男の戦士だ。逆立った暗紺色の短髪を露わにしたその顔は、不敵な嗤いを浮かべている。青白い肌の左頬には深く刻まれた傷跡から真紅のエネルギーが脈打って這い、左目を赤く爛々と輝かせている。

何層にも重ねられたプレート状の鎧は、背中から刃のように鋭い装甲を逆立たせている。装甲の随所に走る赤いラインが、まるで血管のように脈動して発光している。金属の手甲に覆われた両腕で抱えるのは、鈍く光るベージュと黒の無骨な大型ガトリング銃。六つの銃口を赤く発光させ、真っ直ぐに前方へと突き付けている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/AtBHgan
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「そしてこの瞬間、魔法カードの効果により私は500のダメージを受ける。…ウッ!!」
セヘジュ LP8000→7500

セヘジュの全身を、鮮烈な赤い稲妻が激しく駆け抜ける。その衝撃に、彼はたまらず低い声を漏らす。照らされた口角は不気味に吊り上がり、その表情はどこか底知れぬ愉悦に満ちている。

「痛ェ…。だがこの痛みこそ我が力となる!この時、私のフィールドの2体のペインチャージャーの効果が起動する!私がダメージを受けた時、500ダメージにつき1つ、ペインカウンターを置く!」

セヘジュが痛みを受けると同時に、アレクトとメガイラを覆う装甲に刻まれた赤いラインが、まるで血流のように禍々しく鮮烈な光を放つ。

ペインカウンター 0→2

イーサンは目を細め、禍々しく光を放つ装甲を静かに見つめていた。ペインチャージャー。自ら受けた痛みをカウンターとして蓄積し、それを力へと変換する。それがセヘジュの戦術なのだろう。奇しくも、目の前の相手は自分と同じくカウンターを操るデュエリストだった。

「特殊召喚されたペインチャージャー・メガイラの効果発動!このモンスターが特殊召喚された時、デッキよりペインチャージャー罠カードをセットすることができる。私がセットするのは『ペインチャージャー・パリオクシス』」

「さらに自分がダメージを受けている場合、このカードは手札から特殊召喚可能。現れよ、チューナーモンスター、ペインチャージャー・ティシポネ!」


■ペインチャージャー・ティシポネ
 効果モンスター/チューナー
 レベル4/闇/戦士/攻撃力1500 守備力1200
 このカード名の、②の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。
 ②:自分がダメージを受けている場合、このカードは手札から特殊召喚できる。その後、自分は500ダメージを受ける。
 ③:自分フィールドのペインカウンターを3つ取り除いて発動できる。このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、「ペインチャージャー」モンスター1体を召喚できる。


現れたのは、鈍色の装甲に豪奢な黄金の装飾を纏った戦士だ。逆立った金髪の下で、凶悪に吊り上がった双眸が赤く爛々と光を放っている。その顔の左半分には、額から頬にかけて稲妻のようにひび割れた真紅の傷跡が刻まれ、むき出しの牙を見せて獰猛な笑みを浮かべている。

屈強な体躯を包む鎧は、分厚い金属板を幾重にも噛み合わせたような重厚な造りだ。肩や腕、膝などの要所は鋭利な黄金のパーツで幾重にも保護され、黒鉄色の装甲の隙間からは脈動する赤い光が漏れ出している。腰周りには幾何学的なブロック状の装甲帯を幾つも巻き付けている。地を蹴り、前傾姿勢で突進してくるその右腕には、角張ったシルエットを持つ黄金と鈍色の大型銃が握られている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/73dMGHG
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「さらにこの効果で特殊召喚した時、私は500のダメージを受ける」
赤い稲妻がセヘジュの全身を激しく貫く。

セヘジュ LP7500→7000

「グッ!!フフ、いいぞ…!この時、私の3体のモンスターにペインカウンターが置かれる!」

フィールドの3体の戦士たちの鎧に刻まれたラインが一斉に真紅の光を宿し、不気味な輝きを放ち出す。

ペインカウンター2→5

「永続魔法『ペインチャージャー・プロイオクシス』発動!そしてその効果を発動する。自分がダメージを受けたターン、1ターンに1度手札のペインチャージャーを特殊召喚する!」


■ペインチャージャー・プロイオクシス
 永続魔法
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分がダメージを受けたターンに発動できる。手札から「ペインチャージャー」モンスター1体を特殊召喚する。
 ②:自分フィールドに「ペインチャージャー」Sモンスターが存在する場合、自分の墓地の「ペインチャージャー」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、自分は1000ダメージを受ける。


「現れよ、ペインチャージャー・アラストル!」

■ペインチャージャー・アラストル
 効果モンスター
 レベル4/闇/戦士/攻撃力1600 守備力1500
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。
 ②:自分フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードにペインカウンターを2つ置く。
 ③:自分フィールドの「ペインチャージャー」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのレベルをターン終了時まで1つ上げるか下げる。


現れたのは、高く束ねた銀髪を靡かせる女戦士モンスターだ。重厚な光沢を放つメタリックな装甲が、強靭な体躯を隙なく包み込んでいる。装甲の継ぎ目や表面に走る溝からは、脈打つ真紅のエネルギーが血管のように這い、鮮烈な光を放つ。

鋭角的な兜の奥で赤い瞳が爛々と輝き、露出した口元は牙を見せて獰猛に歪んでいる。両腕で力強く構えるのは、巨大な穂先の直後に複数の銃口を備えた、無骨な「銃槍」だ。赤く発光する銃門がイーサンへと向けられている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/o5qdVFa
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「ペインチャージャー・アラストルの効果発動。1ターンに1度、フィールドのカード1枚にペインカウンターを2つ置くことができる。対象はペインチャージャー・アレクト!」

アラストルは、手にした銃槍の銃口を隣に立つアレクトへと向けた。銃門から真紅のレーザーが放たれ、アレクトの体を容赦なく撃ち抜く。その激しい衝撃に、アレクトは苦痛の声を漏らした。だが、直後にアレクトを包む装甲のラインが、まるで血管のように脈動し始める。受けた痛みを力へと変換するように、その赤い輝きはより一層禍々しく、鮮烈に光を放ち出した。

ペインカウンター 5→7

セヘジュは己を包む黒い鎧を「バン」と掌で力強く叩いた。金属の重い響きと共に、腹の底から響くような声を張り上げる。

「ゆくぞ、異人。痛みの先にある気高き力、痛いほど目に焼き付けるが良い!
私はレベル4『ペインチャージャー・アラストル』に、レベル4『ペインチャージャー・ティシポネ』をチューニング!」

その宣言に呼応し、ティシポネの姿が眩い光の輪へと解けていく。円環の中を突き進むアラストルの体は、4つの鮮烈な星の光へと変換された。ティシポネに置かれていたペインカウンターはフィールドから消え去る。

ペインカウンター 7→6

「刻まれし苦痛は力へと変わる。蓄えしその疼きを撃ち放ち、苛烈なる報いを下し給え」

厳かな口上を唱えながら、セヘジュは右の拳を固く握りしめた。己の鼓動を確かめるように心臓の辺りへ押し当て、静かに瞼を下ろす。祈るように念じた後、再び見開かれたその瞳は、凛とした鋭さを湛えて正面を真っ直ぐに見据えていた。

「どうか私に力を!シンクロ召喚!
ペインチャージャー・プラクシディケ!」


■ペインチャージャー・プラクシディケ
 シンクロモンスター
 レベル8/闇/戦士/攻撃力2600 守備力2200
 チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。
 ②:自分フィールドのペインカウンターの乗ったモンスターは相手の効果の対象にならない。
 ③:相手がカードまたはカードの効果を発動した場合、自分フィールドのペインカウンターを3つ取り除いて発動できる。その効果を無効にし破壊する。その後、相手に1500ダメージを与える。


現れたのは、全身を深い紫色の重装甲で覆った屈強な戦士だ。高く逆立てた赤い髪を靡かせた顔は、獰猛な笑みを浮かべている。赤く爛々と輝く左目と、右目の傷跡から漏れ出す真紅の光が、その狂気を際立たせている。

幾重にも重ねられた重厚なプレート鎧は、深い光沢を放っている。装甲の継ぎ目や表面の溝には、まるで血管のように脈動する真紅のラインが走る。胸部中央で大きく輝く赤い紋章は、まるで心臓のように鼓動している。金属の手甲に覆われた両腕が握りしめるのは、鈍く光る鈍色と黒の、無骨な多砲身の大型機関砲だ。その銃身の側面が赤く発光し、爛々と輝く複数の銃口が、今まさに眼前の敵を薙ぎ払わんとしている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/ue3xuFk
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「プラクシディケも他のペインチャージャーと同様、ダメージを負うとペインカウンターを保持する効果を持つ。そしてこのモンスターがフィールドに存在する限り、ペインカウンターが置かれた自分のモンスターは相手の効果の対象にならない」

「さらにペインカウンターを3つ取り除くことで、相手が発動したカード効果を無効にし、1500のダメージを与える強力な効果を持つ。この素晴らしき力を、貴様は次のターンに"痛い"ほど思い知ることになるだろう」

対象耐性付与に無効+バーンダメージという強力な効果。セヘジュが受けてきた痛みは今、彼の力となってイーサンの前に立ちはだかっている。

「墓地の魔法カード『ペインチャージャー・アフォルメ』の効果発動。ペインチャージャーSモンスターがS召喚したターン、墓地のこのカードを除外することでカードを1枚ドローする」

「さらに永続魔法『ペインチャージャー・プロイオクシス』の効果発動!ペインチャージャーSモンスターが場にいる時、墓地のペインチャージャーを蘇らせ、私は1000のダメージを受ける。
復活せよ、ペインチャージャー・アラストル!」

赤き光の渦を切り裂き、高く束ねた銀髪を靡かせた女戦士が再び姿を現す。そしてひときわ巨大な真紅の稲妻が、セヘジュの全身を真っ向から貫く。

「うおおおおッ!!」
彼は両腕を左右に大きく広げ、見開いた瞳で凄まじい衝撃を正面から受け止める。やがて、陶酔しきった恍惚の表情を浮かべ、正面へと視線を据え直す。

セヘジュ LP7000→6000

「これにより、私のフィールドの4体のペインチャージャーに2つずつペインカウンターが置かれる」

その言葉に呼応し、場に並ぶ4体の戦士たちの装甲が一斉に脈動を始める。それぞれの鎧に刻まれた赤いラインが、蓄積された痛みを証明するように鮮烈な光を放ち出す。

ペインカウンター 6→14

奇妙な目の前の光景を見つめ、イーサンは静かに考えを巡らせる。

(カウンターが大台を突破した。だが現状はあのSモンスターの効果ぐらいにしか使わないはずだ。何故そこまでしてカウンターを溜める?)

しかしその答えは示されぬままだ。セヘジュは手札のカードをデュエルディスクへと装填する。

「私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

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【セヘジュ】
LP6000 手札:2

①ペインチャージャー・アレクト ATK1500
(ペインカウンター:6)
②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100
(ペインカウンター:4)
③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600
(ペインカウンター:2)
④ペインチャージャー・アラストル ATK1600
(ペインカウンター:2)

永続魔法:ペインチャージャー・プロイオクシス
伏せカード:1(パリオクシス)


①□②□④
 □ ③
□□□□□


【イーサン】
LP8000 手札:5
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Sモンスター「ペインチャージャー・プラクシディケ」によって、ペインカウンターが置かれた全てのペインチャージャーは対象耐性を持つ。さらに1ターンに1度、あらゆるカード効果を無効にすることができる。セットされたカードもある以上、イーサンが越えるべき壁は決して低くない。

(早く決着を着けなきゃならない。でなければ遊次たちが…)

鎧の兵士たちが鳴らす無機質な足音が、いまだ遊次たちの背後へと執拗に迫り続けている。決着が長引けば、敗北よりも先に捕縛されるのは明白だった。

イーサンは鋭い眼差しを崩すことなく、真正面を見据える。覚悟を固めたその指先が、デッキトップへと力強く掛けられた。

「俺のターン…ドロー!フィールド魔法『ヴォルタンク・カレントコレクター』を発動!」


■ヴォルタンク・カレントコレクター
 フィールド魔法
 このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:自分フィールドの「ヴォルタンク」モンスターの攻撃力は、
 フィールドの雷カウンターの数×300アップする。
 ③:自分フィールドの「ヴォルタンク」モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
 代わりにこのカードの雷カウンターを1つ取り除く事ができる。


閉塞感の漂う狭い地下通路の至るところで、鋭い金属音が反響する。二人の周囲を囲い込むように、巨大なアンテナが次々と地を割って突き出した。

「お互いのデッキがシャッフルされる度に、このフィールド魔法に雷カウンターを置くことができる。俺のフィールドのモンスターは雷カウンターの数×300攻撃力が上がり、さらに俺のモンスターが破壊される代わりにカウンターを取り除くこともできる」

「同じカウンター使いか」
セヘジュは興味を引かれたように呟いたが、プラクシディケの発動を無効にする効果が使われることはなかった。

(さすがに初手から無効にしないだろう。だがその判断こそがお前にとって命取りになる)

イーサンにとっては、関門を一つ越えたような感覚だった。このカードこそが彼のデッキの要であるからだ。勢いづいたイーサンは、即座に次の札を手札から取り出した。

「永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』を発動」

■ヴォルタンク・リファインドサーキット
 永続魔法
 このカード名の①②③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:フィールドの表側のカード1枚を対象として発動できる。
 フィールドのリンクマーカーの数だけ、そのカードに雷カウンターを置く。
 ②:フィールドの雷カウンターを2つ取り除いて発動できる。
 このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、
 自分メインフェイズに「ヴォルタンク」モンスターを1体を召喚できる。
 ③:雷カウンターが乗ったカードがフィールドを離れた場合、
 フィールドの表側のカード1枚を対象として発動できる。
 墓地へ送られたそのカードに置かれていた数だけ、
 雷カウンターを対象のカードに置く。


イーサンの周囲から、白く細い光の筋が地面を這い始める。それは植物の根のように分岐しながら、無機質な回路の模様となって足元一帯を覆い尽くしていった。

「自分フィールドにモンスターがいない時、ヴォルタンク・インダクタは手札から特殊召喚できる」

■ヴォルタンク・インダクタ
 効果モンスター
 レベル3/光/雷/攻撃力1000 守備力1500
 このカード名の、②の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
 ③:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから「ヴォルタンク」モンスター1体を墓地へ送る。


フィールドに無機質な青い直方体が現れる。深く沈んだ青いメタリックの筐体は、幾何学的なプレートに覆われている。上部からは銀色のつまみが無造作に突き出し、正面からは2本の鋭利な端子が前方を睨むように突き出している。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/4LXtcBt
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「さらにフィールドにヴォルタンクが存在する場合、ヴォルタンク・モーターは手札から特殊召喚できる」

■ヴォルタンク・モーター
 効果モンスター
 レベル2/光/雷/攻撃力1100 守備力1500
 このカード名の、②の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:自分フィールドに「ヴォルタンク」モンスターが存在する場合、
 このカードは手札から特殊召喚できる。
 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除いて発動できる。
 「ヴォルタンク・モーター」以外の「ヴォルタンク」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。


現れたのは青いモーター形状のモンスター。外殻は精密な歯車とねじ部品が露出し、中央部に大型の回転軸が設けられている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/3jDG7gK
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「ヴォルタンク・インダクタの効果発動。メインフェイズに1度、デッキからヴォルタンクを1体、墓地に送ることができる。墓地に送るのは『ヴォルタンク・ポテンショメータ』。この時、デッキがシャッフルされたことで、ヴォルタンクの共通効果が起動。自身に雷カウンターを置く。さらにフィールド魔法にも雷カウンターが置かれる」

フィールドに浮かぶインダクタと、並び立つモーターを青白い稲妻が直撃した。激しい衝撃の後、二体の頭上には雷を帯びた光の球が形成され、静かに浮かび上がる。さらに、周囲に張り巡らされた無数のアンテナ群の中の一つにも雷が落ち、その先端に新たな光の球が浮かび上がった。

雷カウンター 0→3

「墓地に送られたポテンショメータの効果発動。デッキから罠カード『ヴォルタンク・グリッドパージ』を手札に加える。シャッフルが発生したことで、3枚のカードに雷カウンターが置かれる」

雷カウンター 3→6

フィールド魔法の効果によって、すでに下級モンスター2体の攻撃力は、セヘジュの切り札であるSモンスターの攻撃力を超えている。

ヴォルタンク・インダクタ ATK2800
ヴォルタンク・モーター ATK2900

「なんというパワー…!」
出力を上げ続けるヴォルタンク。その身に宿る雷光を前に、セヘジュは驚愕の色を隠せない。

(だが奴がここで止まるはずもあるまい。雷はさらに膨れ上がり、私を一瞬で焼き殺す程の力を得るだろう。その一撃はさぞ…"痛い"のだろう)

間もなく自身を貫くであろう絶大な衝撃を幻視し、セヘジュは密かに舌先で唇をなぞった。その瞳の奥には、恐怖を塗り潰すような歪んだ期待が宿っている。


「ヴォルタンク・モーターの効果発動。場の雷カウンターを2つ取り除き、デッキからヴォルタンクを1体、特殊召喚できる。現れよ、ヴォルタンク・エンジン」

雷カウンター 6→4

■ヴォルタンク・エンジン
 効果モンスター
 レベル4/光/雷/攻撃力1800 守備力1200
 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
 デッキから「ヴォルタンク・エンジン」以外の「ヴォルタンク」モンスター1体を手札に加える。


青いエンジンを模したモンスターは、金属光沢のある深い青色の体を持つ。胴体は直方体に近い形状で、表面には複数のランプや操作盤のような装飾が施され、冷たい光を放つ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/nb09OhR
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「デッキがシャッフルされたことで、場の3体のヴォルタンクとフィールド魔法に雷カウンターが置かれる」
雷カウンター 4→8

「ヴォルタンク・エンジンの効果発動。特殊召喚した時、デッキからヴォルタンクを1体、手札に加えることができる。ヴォルタンク・スイッチギアを手札に加える。さらにシャッフルが発生したことで雷カウンターは増加する」

雷カウンター 8→12

目まぐるしく跳ね上がるカウンターの数とは対照的に、セヘジュは二つの妨害手段を温存したまま、依然として動こうとはしない。その沈黙の意図を測るように、イーサンは冷徹に状況を見極める。

(今さら下級モンスター1体を止めたところで、あいつも自分が無傷で済むことはないとわかっているはずだ。そして、俺が中途半端に展開を止めることなどないことも。実際ここで動かない以上、相手の算段は大型モンスターが現れた時に、罠カードや無効効果で展開を阻害すること…)

窮地を前にしても、イーサンの瞳に焦りはなかった。視界の奥には、必死に地下道を駆けていく遊次たちの背中が、今も鮮明に焼き付いている。

(こんなところで足を取られている時間はない。
"一撃"で全て焼き尽くす…!)

イーサンは覚悟を込めた鋭い手つきで、デュエルディスクから二枚のカードを同時に抜き放った。

「俺はヴォルタンク・モーターとヴォルタンク・エンジンをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」

リンクマーカーが次々と輝き、空間に青白いサーキットが展開する。モーターとエンジンの輪郭が光の粒となり、線で結ばれていく。2体のモンスターに乗っていた雷カウンターは空中へと霧散する。

雷カウンター 12→8

「光より現れし摩天、集いし雷は更なる牙城を呼び起こす。
リンク召喚!リンク2『ヴォルタンク・ライトニングロッド』!」


■ヴォルタンク・ライトニングロッド
 リンクモンスター
 リンク2/光/雷/攻1800
 【リンクマーカー:下/左】
 雷族モンスター2体
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、
 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。
 ②:このカードがリンク素材として墓地に送られた場合、
 墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのカードをデッキに戻し、自分はデッキから1枚ドローする。
 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、
 フィールドのカード1枚を対象として発動する。
 そのカードを破壊する。


回路が完成すると同時に、二体の光が奔流となって中央へと収束した。眩い蒼が爆ぜ、雷鳴のような轟きとともに、天へ貫く巨大な光柱が立ち上がる。青いボディと、飛び出た大きないくつものネジが特徴的だ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/bK4xj8i
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「この瞬間、永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。カードが墓地へ送られることでフィールドの雷カウンターが失われた時、カード1枚にのっていた雷カウンターを、他のカードへと置き直すことができる」

セヘジュは、目前にそびえるライトニングロッドを見上げる。

(この蒼き塔の精霊は私のフィールドのカードを破壊する効果を持つ。ならば…)

放たれる威圧感を正面から受け止めながら、彼は瞬時に思考を巡らせる。そして、淀みなく一つの結論を導き出した。

「罠カード発動!『ペインチャージャー・パリオクシス』!自分フィールドにペインチャージャーSモンスターが存在する場合、相手フィールドのモンスター1体をデッキへと戻す!対象はライトニングロッド!」


■ペインチャージャー・パリオクシス
 通常罠
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに「ペインチャージャー」Sモンスターが存在する場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのカードをデッキに戻す。
 ②:自分・相手ターンに墓地のこのカードを除外して発動できる。
 自分フィールドの「ペインチャージャー」モンスターの攻撃力は、ターン終了時まで自分フィールドのペインカウンターの数×300アップする。


ライトニングロッドが据えられた足元の地面から、真紅の稲妻が噴き出した。放たれた眩い光が周囲を一瞬で真っ白に染め上げる。イーサンはその激しい輝きに耐えきれず、反射的に瞼を閉じた。再び彼が目を開けたときには、フィールドに存在していたはずのライトニングロッドの姿は、影も形もなく消え失せていた。

「チェーン1のリファインドサーキットの効果。ヴォルタンク・エンジンに乗っていたカウンターを2つ、フィールド魔法へと置く」

雷カウンター 8→10

リンクモンスターを失っても、想定通りであるかのようにイーサンの表情は揺るがなかった。

「俺はまだ通常召喚を残している。手札からヴォルタンク・リレーを召喚」

■ヴォルタンク・リレー
 効果モンスター
 レベル3/光/雷/攻撃力1200 守備力900
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:このカードが召喚した場合、
 墓地のレベル4以下の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ③:自分フィールドの「ヴォルタンク」モンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
 このカードを手札から特殊召喚し、フィールドのモンスターの数だけ、
 フィールドの表側カードに雷カウンターを置く。


直方体の形状をしている装置のような青色のモンスターが現れる。前面中央には、固定された小型のボタンスイッチが配置され、両側にはそれぞれ金属製の端子が設置されている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/J4rW1NM
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「ヴォルタンク・リレーの召喚時、効果発動。墓地のレベル4以下のヴォルタンクを復活させることができる。
俺は墓地の『ヴォルタンク・エンジン』を選択」

イーサンはセヘジュへと視線を向けるが、プラクシディケによる無効効果はまたも使われなかった。リンクモンスターを失い、さらに通常召喚権を費やしたこのタイミングでの妨害は、イーサンの展開を根底から覆す有効打になるはずだった。拭い去れない違和感を覚えながらも、イーサンは墓地から戻ったカードをデュエルディスクへと叩きつける。

「…リレーの効果により、墓地のヴォルタンク・エンジンを特殊召喚する」
再び複数のランプや操作盤を持つ部品型モンスターが姿を現す。

「俺はリレーとエンジンをリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!再び現れよ、ヴォルタンク・ライトニングロッド!」

先ほど姿を消した蒼き巨塔が再びセヘジュの眼前へと聳え立つ。しかしセヘジュは余裕の表情を浮かべている。

「しかし私のモンスターは、プラクシディケの効果により対象とならない。そのモンスターで破壊できるカードはないぞ」

「だがモンスター以外ならどうかな。ライトニングロッドの効果発動。お前のフィールドの永続魔法を破壊する」
雷カウンター 10→8

蒼き巨塔ライトニングロッドの頂上から、一条の雷が放たれ、永続魔法を射抜き破壊する。ここでプラクシディケの無効効果を使用しても、フィールド魔法によって1度の破壊耐性が付与される以上、ライトニングロッド自体は除去できない。セヘジュからしても、ここを止める必然性はないだろう。

「手札のヴォルタンク・スイッチギアの効果発動。フィールドの雷カウンターを1つ取り除くことで、手札から特殊召喚できる」

雷カウンター 8→7


■ヴォルタンク・スイッチギア
 効果モンスター
 レベル5/光/雷/攻撃力2000 守備力2200
 このカード名の②③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 お互いのデッキがシャッフルされる度に、このカードに雷カウンターを1つ置く。
 ②:フィールドの雷カウンターを1つ取り除いて発動できる。
 このカードを手札から特殊召喚する。
 ③:フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
 自分の墓地の「ヴォルタンク」カードの枚数だけ、そのカードに雷カウンターを置く。(最大10個まで)
 ④:フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動できる。
 相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替える。


現れたのは、鮮烈なブルーに塗装された巨大なスイッチ型モンスターだ。幾何学的なプレートを組み合わせた重厚な筐体は、まるで要塞の一部を切り出したかのような威圧感を持つ。その中央からは、鈍い光沢を放つ銀色の巨大なレバーが、斜め上方へと突き出している。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/QFFwsKl
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「魔法カード『ヴォルタンク・リブート』発動。墓地のヴォルタンクを復活させる。来い、ヴォルタンク・エンジン!そして俺はリンク2『ヴォルタンク・ライトニングロッド』と『ヴォルタンク・エンジン』をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!」

ライトニングロッドは半透明の分身を作り、3体のモンスターが地面に現れたサーキットへと入ってゆく。モンスターたちが光の矢へと姿を変え、サーキットの各方向に配置された矢印へと吸い込まれる。

「顕現せし強固なる城塞、今ここに天をも穿つ雷鳴を轟かせよ!」

「リンク召喚!『ヴォルタンク・スパークキャッスル』!」


■ヴォルタンク・スパークキャッスル
 リンクモンスター
 リンク3/光/雷/攻2300
 【リンクマーカー:右/左/下】
 雷族モンスター2体以上
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いのデッキがシャッフルされる度に、
 このカードおよびこのカードのリンク先のモンスターに雷カウンターを1つ置く。
 ②:相手モンスターが効果を発動した時、
 フィールドの雷カウンターを3つ取り除いて発動する。その発動を無効にして破壊する。
 ③:フィールドの雷カウンターを2つ取り除き、墓地の「ヴォルタンク」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターをこのカードのリンク先に特殊召喚する。


地下道を震わせる凄まじい地鳴りが轟き、サーキットの中心から巨大な蒼い要塞がその姿を現した。それは、深いメタリックブルーの金属装甲に覆われた難攻不落の城塞。壁面からは無数の砲身が睨みを利かせ、その圧倒的な威容は周囲を圧する。そして、その中央に位置する主塔の頂点には巨大なネジを思わせる二本の支柱が備え付けられており、そこから鮮烈な青白い雷を帯びたリングが形成されている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/FtT734v
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「な、なんと巨大な…!精霊なのか、本当に!?」

地下通路を埋め尽くす巨城が、重苦しい威圧感を放っている。セヘジュはその圧倒的な質量に気圧され、ただ上方の城塞を仰ぎ見る。

「スパークキャッスルは雷カウンターを3つ取り除くことで、相手モンスターの効果を無効にできる。これでプラクシディケの効果は使えないな」

イーサンの宣告を浴び、セヘジュはただ沈黙した。反撃の芽を摘み取られた彼に、勢いづくイーサンの足を止める術はない。ただ激しさを増していく雷光が盤面を力強く塗り潰していくのを、彼は指を咥えて見ているしかない。

「リンク素材となったヴォルタンク・ライトニングロッドの効果発動。墓地のヴォルタンクを1体デッキへ戻し、1枚ドローする。ヴォルタンク・モーターをデッキに戻し、ドロー。この時、シャッフルが発生したことで俺の場のカードにカウンターが置かれる」

雷カウンター 7→11

「ヴォルタンク・スイッチギアの効果発動。墓地の『ヴォルタンク』カードの数だけ、フィールドのカードに雷カウンターを置く。よって、俺はフィールド魔法に5つ雷カウンターを置く」

鈍い駆動音を響かせ、スイッチギアの巨大なレバーが下へと押し下げられた。直後、周囲にそびえるアンテナ群に、天空から5本の青白い稲妻が激しく叩きつけられる。衝撃が走った5本のアンテナの先端に、雷を帯びた光の球が浮かび上がった。

雷カウンター 11→16

「ヴォルタンク・スパークキャッスルの効果発動!雷カウンターを2つ取り除くことで、墓地のヴォルタンクをリンク先に特殊召喚する。復活せよ、ライトニングロッド!」

雷カウンター 16→14

スパークキャッスルの主塔の頂点から、鮮烈な青白い雷が放たれた。放たれた雷撃がフィールドの地面を撃ち抜くと、そこから蒼い光の奔流が渦を巻き、巨大な構造物を形成していく。光が収束した場所には、蒼き巨塔ライトニングロッドが、再びフィールドにそびえ立った。

「墓地の『ヴォルタンク・リブート』の効果を発動。墓地のこのカードをデッキに加えてシャッフルし、その後1枚ドローする。これによってシャッフルが発生したことで、俺の場のカードに雷カウンターが置かれる。リンクモンスターは自身のリンク先にも雷カウンターを置くことができる」

雷カウンター 14→21

視界を覆うほどの雷光がすでにフィールドを白く染め上げている。セヘジュはその光景に見惚れるかのように、目を見開いて見つめ続けていた。

「永続魔法『ヴォルタンク・リファインドサーキット』の効果発動。フィールドのリンクマーカーの数だけ、フィールドのカードに雷カウンターを置く。リンクマーカーの合計は5。よってフィールド魔法に5つカウンターを置く」

放たれた五条の雷がフィールド中央へと集束し、大地に刻まれた魔法陣へと吸い込まれていった。さらに周囲を囲むアンテナ群へ次々と落雷が奔り、フィールドを埋め尽くす光はその眩さを一層増していく。

雷カウンター 21→26

「これでメインフェイズは終わりだ。俺のヴォルタンクはフィールド魔法によって、雷カウンターの数×300攻撃力を増す。よって攻撃力は7800アップする!」

-------------------------------------------------
【セヘジュ】
LP6000 手札:2

①ペインチャージャー・アレクト ATK1500
(ペインカウンター:6)
②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100
(ペインカウンター:4)
③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600
(ペインカウンター:2)
④ペインチャージャー・アラストル ATK1600
(ペインカウンター:2)


①□②□④
 ⑧ ③
⑦⑩□□⑨


【イーサン】
LP8000 手札:5(グリッドパージ)

⑦ヴォルタンク・インダクタ ATK8800
(雷カウンター:4)
⑧ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK10300
(雷カウンター:2)
⑨ヴォルタンク・スイッチギア ATK9800
(雷カウンター:2)
⑩ヴォルタンク・ライトニングロッド ATK9600
(雷カウンター:2)

フィールド魔法:ヴォルタンク・カレントコレクター
(雷カウンター:16)

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット
--------------------------------------------------

「攻撃力10300!?なんという、圧倒的な力…!」

セヘジュはその場に膝を突く。重厚な鎧が硬い地面とぶつかり、鋭い金属音を響かせる。見上げる蒼き巨城に射す雷光を浴びながら、セヘジュの瞳には絶望ではなく、神を仰ぐような狂信的な輝きが宿っていた。対するイーサンは、冷徹な眼差しを崩さぬまま、地を這うような低い声で告げる。

「お前の墓地の罠カードは、ペインカウンターの数だけフィールドのペインチャージャーの攻撃力を上げる効果がある。だがそんなものは焼け石に水。バトルを凌ぎきることはできない」

すぐに決着を着け遊次達を追う兵士を機能停止させるためには、1度のバトルでライフを焼き切るのが手っ取り早い。仲間を守るという目的のために、イーサンは最も正しい選択をしたのだ。

「バトル!ヴォルタンク・スパークキャッスルで、ペインチャージャー・アレクトへ攻撃!」

攻撃力の差は8800。セヘジュの残りライフを容易に焼き切ることができる。

スパークキャッスルの下部に備えられた無数の砲身が、唸りを上げて一斉にセヘジュを照準に捉えた。筒の奥底で青白い雷鳴が狂おしく渦を巻き、一点へと激しく凝縮されていく。今まさに放たれんとする雷撃の余波が、張り詰めた大気をビリビリと震わせていた。

「こんな一撃、喰らったらひとたまりもないではないか…」

セヘジュは膝をついたまま、呆然と唇を震わせる。まさに攻撃が放たれんとするその時。力なく項垂れていたセヘジュが、弾かれたように立ち上がった。その表情には、恐怖を塗りつぶすほどの凄まじい恍惚が張り付いている。

「どれほど"痛い"のか…この身で味わわせてくれッ!」

明らかな異変を感じ取り、イーサンは反射的に眉を寄せ、鋭く身構える。不気味な高揚を纏ったセヘジュは、握りしめていた手札のカードを、迷うことなく正面へと突き出した。

「手札のペインチャージャー・ポイネの効果発動!相手モンスターの攻撃宣言時、このカードを手札から捨て、フィールドのペインカウンターを任意の数取り除くことで、その数×1000、私のライフを回復する!そしてこの効果を使用したターン、私のモンスターは戦闘で破壊されない!」

「なんだと…ッ!」


■ペインチャージャー・ポイネ
 効果モンスター/チューナー
 レベル1/闇/戦士/攻撃力500 守備力500
 このカード名の、②の効果はデュエル中に1度しか使用できず、③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分が500以上のダメージを受けた場合、ダメージ500につきこのカードにペインカウンターを1つ置く。
 ②:相手モンスターの攻撃宣言時、手札のこのカードを捨て、自分フィールドのペインカウンターを任意の数取り除いて発動できる。自分は取り除いた数×1000ライフを回復する。
 この効果を使用したターン、自分フィールドの「ペインチャージャー」モンスターは戦闘で破壊されない。
 ③:自分フィールドのペインカウンターを2つ取り除いて発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。


「私は10個のペインカウンターを取り除き、ライフを10000回復する!」
ペインカウンター 14→4

(クソッ…この効果をスパークキャッスルで無効にしようとしても、プラクシディケでさらに無効にされるだけだ。奴はこのために無効効果を温存していたのか…!)

セヘジュが無効効果をイーサンの展開を阻害することに使わなかったのは、この回復効果を確実に通すためだった。フィールド魔法によって上昇し続ける攻撃力を前に舌なめずりをしたセヘジュには、最初からこの光景が見えていた。


銀と黒の重装甲を纏った女戦士がフィールドに姿を現した。淡い桃色の髪をポニーテールに結い、鋭い紅い瞳を宿している。装甲の各所には、回路のような赤い発光ラインが複雑に走り、胸部中央にある赤いコアは不気味に明滅していた。左目の下には、一筋の赤い血涙のような紋様が刻まれている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/jMHj5ar
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そのモンスターは、現れると同時に片方の掌を天へと突き上げる。突き上げられた掌へ向かって、セヘジュのフィールドに並ぶ4体のモンスターから赤い光の帯が吸い上げられていく。掌の上にはエネルギーが集束し、鮮烈な赤い稲光がバチバチと音を立てて激しく渦を巻いた。エネルギーが最高潮に達した瞬間、ポイネは凝縮された赤いエネルギーの塊を、セヘジュへと投げるように放つ。

「フハハハハ!」
莫大なエネルギーを受け、セヘジュは高笑いをあげる。体を包む赤い脈動が、そのライフを満たしていく。

セヘジュ LP6000→16000

「さあ来るがよい!」
一切の防御を捨て、セヘジュは自らの身を曝け出すように両腕を広げた。瞬間、スパークキャッスルの無数の砲口から一斉に雷鳴が放たれる。一直線に放たれた青白い稲妻がセヘジュの体を真っ向から捉え、視界を白く染めるほどの光がその全身を容赦なく呑み込んだ。

「ぐあああああああ!!!!!」

凄まじい衝撃に叩かれ、セヘジュは張り裂けんばかりの絶叫を上げる。本来であれば一撃で決着がつくほどの絶大な威力に晒されながら、その表情には至上の愉悦を味わうかのような不気味な恍惚が張り付いていた。

セヘジュ LP16000→7200

激しく降り注いでいた雷光が止み、白煙の向こうからセヘジュの姿が浮かび上がる。その肩は力なく落ち、満身創痍の様子ではあったが、射貫くような鋭い眼差しだけは真っ直ぐにイーサンを捉えていた。セヘジュは不敵な笑みを浮かべると、重い動作でゆらりとイーサンを指差した。

「今のは、痛恨の一撃だったぞ。お前にとってな…!」

回復したライフも、すでに半分まで削られた。致命的な打撃を与えたはずのイーサンだったが、その表情はどこまでも険しい。セヘジュは弾かれたように上体を起こすと、込み上げる熱に任せて叫びを上げた。

「私がダメージを負った時、ダメージ500につき、ペインチャージャーにペインカウンターが置かれる!受けたダメージは8800!全てのペインチャージャーに17個のカウンターが置かれる!」

彼の言葉に呼応し、4体のペインチャージャーの全身を凶暴な赤色の稲妻が激しく貫く。逃れられぬ激痛に焼かれ、モンスターたちは喉を震わせて苦悶の叫びを上げた。絶叫が止むと同時に、装甲の隙間を這う赤いラインが、一層どす黒く禍々しい光を放ち始めた。

ペインカウンター 4→72

-------------------------------------------------
【セヘジュ】
LP7200 手札:1

①ペインチャージャー・アレクト ATK1500
(ペインカウンター:17)
②ペインチャージャー・メガイラ ATK2100
(ペインカウンター:18)
③ペインチャージャー・プラクシディケ ATK2600
(ペインカウンター:19)
④ペインチャージャー・アラストル ATK1600
(ペインカウンター:18)


①□②□④
 ⑧ ③
⑦⑩□□⑨


【イーサン】
LP8000 手札:5(グリッドパージ)

⑦ヴォルタンク・インダクタ ATK8800
(雷カウンター:4)
⑧ヴォルタンク・スパークキャッスル ATK10300
(雷カウンター:2)
⑨ヴォルタンク・スイッチギア ATK9800
(雷カウンター:2)
⑩ヴォルタンク・ライトニングロッド ATK9600
(雷カウンター:2)

フィールド魔法:ヴォルタンク・カレントコレクター
(雷カウンター:16)

永続魔法:ヴォルタンク・リファインドサーキット
--------------------------------------------------

「痛みこそ力!72ものペインカウンターを備えた我が精霊に死角は無し!墓地の罠カード『ペインチャージャー・パリオクシス』を除外すれば、我がモンスターはターン終了時まで、ペインカウンターの総数×300、攻撃力がアップする!」

眉間に深い皺を寄せ、イーサンは目まぐるしく思考を巡らせる。先程のスパークキャッスルが放った一撃は、まさしく痛恨。しかしそれはセヘジュの言葉通り、イーサンに対しても重く突きつけられたものであった。

(奴が罠カードを発動すれば、全てのペインチャージャーの攻撃力は2万を超える…!だがこのまま攻撃をやめれば、次の相手ターンでその攻撃力が俺に襲い掛かる…!)

イーサンの奥歯がギリリと軋んだ。突きつけられた現実に、胸中では暗い焦燥と苛立ちが黒煙のように渦を巻いている。

遊次たちを救い出す最短の道として、イーサンは迷いなく全霊の一撃を叩き込んだ。だが、皮肉にもその「痛み」はセヘジュの手によって巨大な力へと塗り替えられ、今や鋭い牙となって彼自身へと迫っている。

早期決着という目論見は、無惨にも崩れ去った。それどころか、この未知の国で一網打尽にされる最悪の未来が、すぐそこまで足音を立てて近づいている。

仲間を守るために戦うイーサンに、この絶望的な窮地を切り抜ける術はあるのか。迫り来る敵兵の魔手から、果たして遊次たちを救い出せるのだろうか。


第82話「痛恨の一撃」 完




遊次達とトトに迫る魔の手。
トトの助言により遊次達は身を隠すも、兵士達に見つかるのは時間の問題だ。

猶予がない中、副指揮官セヘジュは更なるシンクロ召喚によって切り札を呼び出し、イーサンのフィールドを蹂躙する。
圧倒的な盤面とライフ差。
それを覆す手はイーサンに残されているのだろうか。


「一国を敵に回そうとも…俺は仲間を、家族を守る」

次回 第83話「宣戦布告」

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16 第79話:旅立ち 258 0 2026-04-15 -
20 ネフカ王国編 あらすじ 398 0 2026-04-17 -
23 第80話:手厚い"歓迎" 129 0 2026-04-22 -
16 第81話:禁忌を抱く少女 139 0 2026-04-29 -
19 第82話:痛恨の一撃 106 0 2026-05-06 -
2 第83話:宣戦布告 45 1 2026-05-13 -

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