交流(共通)
メインメニュー
クリエイトメニュー
- 遊戯王デッキメーカー
- 遊戯王オリカメーカー
- 遊戯王オリカ掲示板
- 遊戯王オリカカテゴリ一覧
- 遊戯王SS投稿
- 遊戯王SS一覧
- 遊戯王川柳メーカー
- 遊戯王川柳一覧
- 遊戯王ボケメーカー
- 遊戯王ボケ一覧
- 遊戯王イラスト・漫画
その他
遊戯王ランキング
注目カードランクング
カード種類 最強カードランキング
● 通常モンスター
● 効果モンスター
● 融合モンスター
● 儀式モンスター
● シンクロモンスター
● エクシーズモンスター
● スピリットモンスター
● ユニオンモンスター
● デュアルモンスター
● チューナーモンスター
● トゥーンモンスター
● ペンデュラムモンスター
● リンクモンスター
● リバースモンスター
● 通常魔法
永続魔法
装備魔法
速攻魔法
フィールド魔法
儀式魔法
● 通常罠
永続罠
カウンター罠
永続魔法
装備魔法
速攻魔法
フィールド魔法
儀式魔法
● 通常罠
永続罠
カウンター罠
種族 最強モンスターランキング
● 悪魔族
● アンデット族
● 雷族
● 海竜族
● 岩石族
● 機械族
● 恐竜族
● 獣族
● 幻神獣族
● 昆虫族
● サイキック族
● 魚族
● 植物族
● 獣戦士族
● 戦士族
● 天使族
● 鳥獣族
● ドラゴン族
● 爬虫類族
● 炎族
● 魔法使い族
● 水族
● 創造神族
● 幻竜族
● サイバース族
● 幻想魔族
属性 最強モンスターランキング
レベル別最強モンスターランキング
レベル1最強モンスター
レベル2最強モンスター
レベル3最強モンスター
レベル4最強モンスター
レベル5最強モンスター
レベル6最強モンスター
レベル7最強モンスター
レベル8最強モンスター
レベル9最強モンスター
レベル10最強モンスター
レベル11最強モンスター
レベル12最強モンスター
デッキランキング
第81話:禁忌を抱く少女 作:湯
地球へと迫る隕石型モンスターの脅威。その対抗策を求め、遊次たち『Next』の4人、ニーズヘッグCEOのオスカー、そしてデュエリア政府のアリシアは、未開の地ネフカ王国へと足を踏み入れた。
彼らの眼前に広がったのは、人とモンスターが当たり前のように生活を共にする信じがたい光景だった。
神官ムルシドの先導で街を進む一行だが、すれ違う住人たちの視線は一様に冷ややかだ。やがて人目を避けるように導かれた薄暗い路地裏。そこに立ち塞がったのは、2メートルを優に超える兵士ナディムだった。異国からの来訪者を警戒する2人は、オースデュエルを利用して遊次たちの真の目的を吐かせようと企んでいた。
ナディムと対峙したのは怜央だ。禁書の力で強大なモンスターを呼び出すナディムに対し、怜央は新たなるエクシーズモンスターを喚び出し、たった1ターンで勝利を収めた。
敗北したナディムはムルシドに秘密を暴かれ、反逆者として兵士たちに連行されていく。その異常な事態に、遊次がムルシドへ事の真意を問いただす。だが次の瞬間、冷酷な罠を張ったはずの老神官は石畳に深く膝を折り、遊次たちの前で静かに頭を垂れた。
「…お待ちしておりました。我が"盟友"、ヘックス・ヴラッドウッドの使者よ」
「なっ…!」
遊次たちは思わず身を引き、地面に伏した老人の姿を目を見開いて見下ろす。
ムルシドはゆっくりと顔を上げた。真っ直ぐに向けられたその瞳には、切迫した真剣な光が宿っていた。
「この国は今、滅びの一途を辿っている。だがそなたらの力があれば…未来は変えられる!」
路地裏に立ち込める、異様な空気。オスカーは、ヘックスを盟友と呼んだムルシドの言葉に一つの手がかりを見出していた。脳裏に蘇るのは、病室で祖父ヘックスが語った言葉だ。
(カードを通じて、ネフカの人々と心を交わし合うことができたよ。ある神官とは深く酒を汲み交わすほどに仲良くなれたものさ)
オスカーには確信があった。目の前で膝を突くこの男こそが、祖父の友となった神官なのだと。オスカーは静かに口を開く。
「俺達がこの国に来た目的は、世界を救う手立てを探すためだ。たとえ我が祖父の友の頼みであっても、その目的に通ずるものでなければ聞き入れるつもりはない」
ムルシドはゆっくりと立ち上がり、凛とした表情で前を見据える。
「私も、世界に迫る危機やそなたらの目的を全て知るわけではない。だが…おそらく、私とそなたらの目指す道は交差する。そう確信している」
遊次たちは無言のまま、ムルシドの顔を見つめていた。言葉の真意はまだ掴みきれない。だが、少なくとも彼が敵ではないことだけは伝わった。アリシアが周囲に鋭い視線を配りながら、冷静な声色で口を開く。
「いずれにしても、今のネフカ王国の状況を我々は知る必要がある。話をお聞かせ願えるか、ムルシド殿」
「古くから密談に使われる談話室がこの奥にある。人目につかない場所だ、案内しよう」
ムルシドは深く一度頷くと、身を翻して薄暗い路地裏の奥へと歩みを進めた。その背中を追い、遊次たちは覚悟の宿った面持ちで静かに後へと続いた。
薄暗い路地を奥へ奥へと進むと、やがて行き止まりの壁に突き当たった。談話室はどこかと、遊次は周囲を見回す。だが、そこにあるのはただの冷たい壁だけだ。
すると、先頭のムルシドが静かに身をかがめる。彼が向かったのは、壁の最下部に開いた小さな穴だった。大人が身を縮めてようやく入れるほどの隙間へと、ゆっくり潜り込んでいく。普通に歩いていれば視界に入らない足元の死角。その奥に部屋があるなどとは到底思えない隠し穴だ。遊次たちも身を低くし、ムルシドの背中を追って暗い穴の中へと進んでいった。
狭い穴を抜けた先には、冷たい石造りの小部屋が広がっていた。窓はなく、薄暗い空間の中心には、同じく石で作られた簡素なテーブルと幾つかの椅子がポツンと置かれている。部屋全体に埃が薄く積もり、長年使われていなかったことを物語る。奥の石壁の一部には重々しい木の扉が備え付けられており、別の部屋があるようだ。
部屋の奥、ムルシドが石造りの椅子に静かに腰を下ろした。卓を挟んだ向かい側には、空席の石椅子が二つ。そこへ、遊次とオスカーがほぼ同時に、何の遠慮もなくドカリと腰を下ろす。背後で立ち尽くすイーサンとアリシアは、そんな二人の背中へ引きつった視線を送っていた。
「で、まずアンタは何者なんだよ、ムルシドさん。急に罠にかけてきたかと思ったら掌返して国を救ってくれって…」
遊次が鋭い視線を向け、単刀直入に切り込む。対するムルシドは表情を変えることなく、静かに言葉を返した。
「私はネフカ王国で40年間、神官を務めている。目的は…現国王アスラナクを倒し、囚われの身である前国王ゴルズ・シャマシュに王権を戻すことだ」
「なぜ今の国王を打倒したいと?」
アリシアが食い下がると、ムルシドの顔が忌まわしい記憶を呼び起こすように険しく歪んだ。
「アスラナクは3ヶ月前、この国に革命を起こし、王座を奪い取った。奴と同じ思想を掲げる者達を引き連れて。その数はネフカの兵に比べても圧倒的に少数だったが…奴らはデュエルの実力のみで兵を次々と倒し、革命を成功させた」
「アスラナクは奴と同じ過激派思想を持つ者だけで軍を結成した。"七使徒"と呼ばれる7人の幹部を筆頭にな。そして多くの罪なき人々が"反逆罪"として処刑され、命を失うこととなった。許されざる暴政だ」
「そんな…」
灯が思わず息を呑む。王が代わったという事実は知っていたが、その裏で血が流れていることなど知る由もなかった。
「罪もねえのに反逆罪ってのはどういうことだ?」
冷たい石壁に背を預けながら、怜央が低い声で問いかける。
「この国には、大きく分けて2つの思想がある。"中立派"と呼ばれるいわゆる穏健派と、"絶対派"と言われる過激派だ」
中立派。それは先ほど路地裏でムルシドたちが口にしていた言葉だ。老神官は静かに言葉を継ぐ。
「シャマシュ王政下のネフカは"中立派"を貫き、そして多くのネフカの民もまた同じ思想を持つ。しかしその影で"絶対派"は革命の機を窺い、牙を研いでいた。そして3ヶ月前、アスラナクを筆頭に革命が起き、ついに絶対派が権力を手にするに至った。以降、中立派思想を表に出した者は"反逆罪"として捕らえられるようになってしまったのだ」
街を監視するように立つ、あの鎧の兵。そして彼らの目を常に恐れ、萎縮しながら暮らす住人たち。入国した時から肌で感じていたあの張り詰めたような異様な空気は、すべてアスラナクによる圧政のせいだったのだ。
「その中立派と絶対派というのは、具体的にどのような思想なのですか?」
頭の中で情報を整理しながら、アリシアが全員の抱いた疑問を代弁する。
「この国の民は精霊…つまりモンスターを信仰していることはご存じだろう。信仰の度合いに違いはあれど、みな精霊の存在を強く重んじておる」
ムルシドの言葉に、遊次たちは静かに頷いた。
「"中立派"とは、精霊と人々が対等であることを望む者。対して"絶対派"は、精霊こそが上位の存在であり、人間は精霊に屈服すべきであるとする思想のことだ」
精霊に屈服する。その極端な思想に、遊次は強く眉をしかめ、思わず声を荒げた。
「屈服…?んだよそれ!モンスターは仲間だしダチみたいなもんだろ!そっちの方がどう考えても良いじゃねえか!」
「私も同感だ。しかしいつの時代も行き過ぎた信仰を持つ者が現れ、争いは生まれる。嘆かわしいことだがな」
深く息を吐き出すムルシド。その瞳には、どうにもならない争いへの深い悲哀が浮かんでいた。そんな彼の言葉を聞きながら、灯がふと腑に落ちない表情で問いかける。
「あの…ムルシドさんも中立派なんですよね?なのに、どうして今の国王のもとで神官を務めてるんですか?」
その問いには「ムルシド自身がなぜ今も王宮に残るのか」そして「アスラナクが何故それを許しているのか」という2つの意味があった。ムルシドは再び険しい表情で言葉を紡ぐ。
「アスラナクが王となってから、シャマシュ王に仕えた兵や神官は皆その身を追われることとなった。私以外はな。アスラナクにとっても経験の深い神官の存在は必要だった。それを理解していた私は、自身が絶対派であると示すことで王宮に残る道を選んだのだ」
ムルシドは中立派であることを隠し王宮に残る道を選んだ。兵士であるナディムを「中立派の女と逢瀬を繰り返していた」と密告し反逆者として捕らえさせたのは、ナディムを引き剥がすためでもあり、アスラナクに忠実な絶対派の神官を演じるためでもあったのだ。
「いくら自分が絶対派だと言い張っても、片っ端から中立派を捕まえるような暴君が簡単に信じるとは思えませんが…」
イーサンが疑問をぶつける。ムルシドは眉間に皺を寄せ、深く顔を伏せた。頭巾が落とす暗い影が、彼の表情をどこか妖しく見せている。
「当然、口先だけでは疑惑は晴れぬだろう。故に私は…中立派だった妻と娘を告発し国に差し出したことで、アスラナクへの忠誠を示したのだ」
その言葉に、遊次たちは大きく目を見開いた。張り詰めた空気の中、遊次がおそるおそる声を絞り出す。
「…どうなったんだよ。アンタの家族は」
「…処刑されたさ」
顔に陰を落としたまま、ムルシドは静かに答えた。遊次の表情が激しく歪む。次の瞬間、彼は反射的に手を伸ばし、ムルシドの胸倉を激しく掴み上げていた。
「なんでだよッ!告発なんかしたら…そうなんのはわかるだろ!そんなに神官の座が惜しかったのか!?」
激しい怒りと苛立ちに任せ、遊次は目の前の男へ言葉を叩きつける。沈黙して俯いていたムルシドは、やがて弾かれたように顔を上げ、悲痛な叫びを上げた。
「そうしなければッ!この国から革命の灯火は消え失せるッ!!」
見開かれた両目は痛々しく血走り、きつく食いしばった歯の隙間から嗚咽が漏れる。その頬を、大粒の涙がとめどなく伝い落ちていた。
その凄絶な姿に、遊次は息を呑み言葉を失う。ムルシドはギリッと奥歯を鳴らし、震える声で言葉を繋いだ。
「アスラナクが玉座に座り続ければ、私の家族だけでなく、多くの罪なき人々が迫害され、殺される。そして間違いなくネフカ王国は滅びの道を辿るだろう。私が残らねば…王宮は絶対派のみで固められ、アスラナクを倒す隙など生まれぬ…」
「ああするしか、なかったのだ。ああするしか……!」
遊次の腕を掴み返すその両手は、ひどく震えていた。保身のために選んだ道ではない。国を奪還するため、自らの手で家族を死地へ追いやったのだ。すでに奪われた二つの命。もはや後戻りなど許されない。己の残酷な決断を、何が何でも正しいものにしなければならない。その凄絶なまでの覚悟と執念が、強く噛み締めた言葉の端々に滲み出ていた。
遊次は掴んでいた腕から力を抜き、ゆっくりと下ろした。
「…悪かったよ。アンタの思いも知らずに責め立てて。でも、俺は…」
遊次は口ごもる。彼は未だ納得できない様子で、険しい表情を浮かべ続けていた。
石造りの部屋に重苦しい沈黙が落ちる。すると、部屋の隅にある扉が微かな音を立てて開いた。遊次たちが一斉に視線を向けると、開いた隙間から一人の少女が顔を覗かせていた。丸く大きな金縁メガネの奥で、琥珀色の瞳が瞬きをしている。その姿を見たムルシドは、はっと息を呑んで声を上げた。
「トト…!隠れているように言ったはずだ…!」
弾かれたように立ち上がり、少女のもとへ歩み寄るムルシド。トトと呼ばれたその少女は、扉の陰から完全に姿を現し、彼を見上げた。
褐色の肌に、後ろで無造作に束ねられた癖のある茶髪。特徴的な金色の眼鏡。身に纏うのは、鮮やかな黄色を基調とし、赤や青の細やかな幾何学模様が施された衣服と頭巾だ。そしてその小さな片腕には、彼女の体格には不釣り合いなほど大きく分厚い、一冊の古文書がしっかりと抱えられている。
キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/yjk5866
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
幼さの残る顔立ちだが、その振る舞いに怯えはない。彼女はまっすぐな視線ではきはきと答えた。
「申し訳ありません、ムルシド様。大きな声が聞こえたもので、つい気になってしまいました」
遊次は少女を見つめたまま、問いかけた。
「えっと…その子は?」
呼ばれたムルシドが振り返る。その顔には明らかな逡巡が浮かんでいた。しばらくの沈黙。やがて、彼は意を決したように息を吐き出す。
「…そうだな。そなたらをここに連れてきた以上、いずれは話さなければならないことだ」
ムルシドは遊次たちへ真っ直ぐに向き直り、言葉を紡いだ。
「この娘はトト・ミポット。あるきっかけでこの国の"禁忌"を知り、アスラナクに命を狙われている。私が秘密裏に保護し、ここに身を隠してもらっている」
「こんな小さな子が、命を…」
遊次は思わず声を漏らし、トトの姿を改めて見つめる。目の前に立つ少女はどう見ても12歳前後だ。命を狙われるにはあまりにも幼すぎる。
トトは、遊次たちをどこか怯えたような瞳で見つめていた。見たこともない出で立ちをした異国の人間を前にして、身を固くするのは無理もない。その警戒を解くように、ムルシドは柔らかな声色で彼女へと語りかけた。
「安心しなさい。この方々は私の友であるヘックス殿の遣いでこの国にやってきた。彼がその名を貸した以上、信頼できる人達さ」
「ヘックス様!?かの偉大なるヘックス様ですか!?」
途端に、トトの顔にパッと明るい光が差した。30年前、唯一この国に足を踏み入れ、モンスターワールドとネフカ王国の発展に多大な寄与をもたらした人物。ヘックスという偉大な名は、こんな年端もいかない少女にまでしっかりと語り継がれているらしい。
「あの、なんでその子が命を狙われてるんですか…?それに"禁忌"って…?」
灯が恐る恐る口にすると、先ほどまでの明るいトトの表情が一瞬にして曇った。俯く小さな肩。その痛々しい様子を察し、ムルシドが言葉を引き取る。
「彼女の父親…ガンド・ミポットは有名な歴史家だった。若き頃から古文書を解読し、この国の歴史を紐解いて来た。しかしそれが災いし、彼はこの国の暗部に触れてしまった。そのことがアスラナクの耳に届き…ガンドは捕まってしまった」
「そして禁忌を知らぬトトの母親さえも処刑され…命を奪われた。両親が命を懸けて必死に守ったことで、トトだけはなんとか逃げおおせることができたが…今も命を狙われ続けている」
遊次は目を伏せるトトを見つめ、両手で強く拳を握りしめた。
「とんだクソ野郎だな、アスラナクってのは」
理不尽に両親を殺され、今なお追われる身となった幼い少女。あまりにも無慈悲な境遇に、壁際にもたれかかる怜央の眼差しもまた、険しく鋭いものへと変わっていた。
トトは深く俯いたまま、小さな震える声で話し始めた。
「父上の研究資料は全て燃やされてしまいました。毎日、毎日、父上が寝る間も惜しんで積み上げてきたものが、全部…一瞬にして…」
その声には、やり場のない悔しさが滲み出ている。彼女は胸に抱えた分厚い古文書をさらに強く抱きしめ、かすかに掠れた声で言葉を紡ぐ。
「唯一持ち出せたのは…この一冊の古文書だけです」
顔を上げたトトの瞳は、強い決意と恐怖で激しく揺れ動いていた。あまりにも理不尽な運命に巻き込まれた幼い少女を前に、遊次はただ黙って見つめることしかできなかった。ムルシドはトトの腕に抱かれた古文書へ視線を落とした。
「この古文書こそ"禁忌"が記されたものだ。危険だから手放せと言っているのだが、聞く耳を持ってくれなくてな」
「当然です!この本は父上の生きた証!命に代えてでも守らなければ…っ!」
トトはムルシドを見上げ、力いっぱい声を張り上げた。その小さな顔には、決して譲らぬ強い覚悟が宿っている。ムルシドは複雑な眼差しで彼女を見つめ、やがて息を吐いて言葉を続けた。
「彼女の父ガンドとは、昔から親しくしていてね。彼は物知りで、よく子供達にもこの国の歴史を語って聞かせていた。大らかで優しく、民から愛される男だった。その古文書は、彼の形見のようなもの。私には、取り上げることはできなかった」
ムルシドの脳裏に、今は亡き友の姿が鮮明に蘇る。暖かな陽の射す広場で、古い本を片手に身振り手振りで語りかける大柄な男。短い黒髪と褐色の肌、分厚い黒縁メガネの奥の瞳は、いかにも人の良さそうに細められている。その足元には目を輝かせた子供たちが集まり、男の周りには常に絶えない笑顔と大きな笑い声があった。
二度と戻らぬ過去を振り返るような、静かで哀しげな声色。その響きに、トトの顔に再び暗い影が落ちる。小さな腕で古文書を抱きしめるその姿は、彼女自身もまだ、両親の死という残酷な現実を受け入れきれていないことを物語っていた。
沈黙が支配する中、ムルシドが口を開く。
「それと、"禁忌"については私も詳しくは知らぬ。アスラナクと一部の"七使徒"は、古来より存在する王宮の書庫からその秘密を知り得たようだがな」
「では、彼女も禁忌の中身は知らないと?」
イーサンが静かに問いかける。その声に反応し、トトは真っ直ぐにイーサンを見上げた。
「いえ。全てではありませんが、私もこの古文書には少し目を通したことがあります。この国が何を隠そうとしているのかも…知っています。でも、絶対に教えられません!」
その瞳には断固たる意志が滲んでいる。古文書を抱きしめるトトを見下ろし、オスカーが短く問いかけた。
「古文書が読めるのか」
「は、はい。昔から父上の書斎に入り浸っていたので。読むのに時間はかかりますが」
オスカーは彼女の胸にある古い本を真っ直ぐに指差し、淡々と言い放つ。
「その古文書には、俺達の求めるものが書かれている可能性がある。世界を救う方法に繋がる、何かが」
その言葉に、遊次はハッと顔を上げた。古来より精霊と深く通じるこの国が「禁忌」と呼び、血眼になって隠そうとする何か。それが自分たちの探し求める手がかりである可能性は、たしかに高い。
「世界を…救う?」
トトが不思議そうに首を傾げる。ムルシドは遊次たちへ正面から向き直り、凛とした表情で口を開いた。
「『私とそなたらの目指す道は交差する』と言ったのは、まさしくそのことだ。世界に迫る危機と、彼女の持つ禁忌。そしてアスラナクの暴政。これらは全て一つに繋がるはず。次はそなたらがこの国へ来た理由についてお教え願おう」
石造りのテーブルを挟み、遊次とオスカーの向かいへムルシドが腰を下ろした。そのすぐ横には、大きな古文書を抱えたトトがちょこんと座り、丸メガネの奥から遊次たちを見上げている。
遊次たちはトトへ自己紹介を済ませると、自分達の知っている情報と、この国を訪れた真の目的を語り始めた。地球へと迫り来る隕石型モンスターの存在。衝突まで、残された猶予はあと7ヶ月しかないこと。そして、誰一人犠牲を出すことなく、その巨大な脅威を打ち破るための手がかりを探していること。
「たった7ヶ月で、世界が…」
丸メガネの奥で、トトの目が大きく見開かれた。あまりにも現実離れした事実に、半ば放心したようにぽつりと呟く。唐突に突きつけられた世界の終焉を、幼い少女がすぐに飲み込めるはずもなかった。
ムルシドは、ゆっくりと口を開く。
「デュエリアからの入国要請には、この世界に巨大な隕石が迫っていると書かれていた。その時、私には察しがついた。数年前に精霊世界から突如として消えたあのモンスターが、現実世界に現れたのだと」
「そこまで読めていたんですか!?じゃあムルシドさんなら、なんで隕石のモンスターが現実世界に現れたか、わかるんじゃ…」
灯が縋るような視線を向けると、ムルシドは神妙な面持ちで口を開いた。
「わからん。わからんが…もしかすると、18年前にこの国で起きた"ある事件"が関係しているかもしれぬ」
「事件?」
遊次の短い問いかけに、ムルシドは深く眉根を寄せて過去を辿り始める。
「18年前、王宮に突如として石のような巨大な人型のモンスターが現れ、宮殿を破壊するという事件があったのだ。詳細はわからず、そのモンスターがどこへ消えたかも定かではないがな」
「そ、それって…!」
遊次と怜央が弾かれたように顔を見合わせた。自分たちの記憶にある出来事と、あまりにも重なる部分が多い。遊次は真剣な眼差しをムルシドへ向け、探るように尋ねる。
「デュエリアでも14年前に同じような事件があったんです。コラプスって聞いたことないですか?」
「…悪いが、聞いたことはない。外界の情報はほとんど入ってこないものでな」
遊次は何度か深く頷き、テーブルへぐっと身を乗り出した。
「俺らの故郷のドミノタウンって町で、急に空間に裂け目が開いて、50メートルぐらいの金ピカの鎧のモンスターが現れたんです。そのモンスターのせいで何百人も死んじまって…」
「まさか、異国でそのようなことが…。ん、黄金の鎧と申したか…?!」
ムルシドが驚愕にカッと目を見開いた。そのただならぬ剣幕に、遊次は思わずたじろぎながら聞き返す。
「あぁ…なんか知ってんのかよ!?」
ムルシドはしばし押し黙り、やがて重い口を開いた。
「いや、我々もその黄金の鎧のモンスターのことはよく知っている。確かにちょうど十数年前から姿を見せなくなっていたとは思っていたが、まさかそのようなことが…」
「だがコラプスについては原因はハッキリしてる。どっかのバカが考えた装置で空間に裂け目を入れたせいだ。多分アンタらの方とは関係ないだろうぜ」
横から怜央が冷たく言い放ち、逸れかけた話を強引に本題へと引き戻す。ムルシドも小さく「そうか」と呟き、再び彼らへと真っ直ぐに向き直った。
「18年前の事件も、今回の隕石も、現実にモンスターが現れたことについては同じだ。何か関係があるかもしれぬと考えたが…」
「詳細はわからない…ということですね」
イーサンがぽつりと言葉を落とす。ムルシドの隣に座るトトは、自らの抱える古文書へじっと視線を落とし、何かを探り当てるように深く考え込んでいた。オスカーは微動だにせず、その少女の顔をただ静かに見つめている。
やがて、ムルシドが居住まいを正し、正面を見据えて口を開いた。
「この際だから話しておこう。デュエリアに現れた黄金の鎧のモンスター、そして地球に迫る隕石型のモンスター。これらは古来より我が国では神として崇められてきた存在なのだ」
その衝撃的な事実に、遊次たちは思わず息を呑み、驚きの声を上げた。
「神…ですか。他の精霊と比べても上位の存在であると?」
アリシアが真剣な眼差しで問い質すと、ムルシドは重々しく、深く頷いて答えた。
「精霊世界は人の心より生まれたもの。そして人の心には必ず光と闇、その両方が存在しておる。2体の神はそれらを司る原初の存在。精霊世界はこの2柱の神によって保たれているとも言われておる」
「黄金の鎧の神は『ディヴィヌス・ヴィクトリアーク』という。"勝聖神"とも呼ばれ、人間の善の心が具現化した存在だと考えられている」
「善の神…か」
遊次がどこか冷めた声でぽつりと呟いた。灯は無言のまま、その険しい横顔へと視線を向ける。言葉を交わさずとも、彼が今何を思い浮かべたのかは痛いほどにわかった。ドミノタウンを理不尽に破壊し、人々を地獄の底へと突き落とした存在。それが善を司る神だなどと、到底受け入れられるはずがなかった。
「隕石の神は『オミナギガント・メテオルフォビア』。闇の心より生まれし存在。我々は"悪星神"と呼んでおる」
勝聖神と悪星神。それはあのヘックスすら語らなかった、精霊世界の根幹に関わる未知の伝承だった。静かに耳を傾けていたオスカーが、思考を巡らせるように視線を落とし、興味深そうに言葉を紡ぐ。
「14年前、そのディヴィヌス・ヴィクトリアークが消えて以来、モンスターワールドは闇の勢力が勢いを増し、不安定化している。世界そのものを支える片割れであったとしても不思議ではない」
オスカーの言葉を受け、遊次が思考を巡らせるようにぽつりとこぼす。
「んで、もう片方の"お好み焼き屋を目で追うゴリラ"も、モンスターワールドからいなくなっちまったわけだろ」
「…オミナギガント・メテオルフォビアじゃ」
すかさず、ムルシドが静かな声で冷静に訂正を入れた。遊次は思わず大声を張り上げる。
「覚えられるか!」
「私は一発で覚えたぞ?」
横からアリシアがふっと笑みを浮かべ鼻を鳴らす。
(なんで得意げなの…)
灯は呆れつつ、出かかった言葉をそっと喉の奥へと飲み込んだ。
「と、とにかく!そのなんとかって隕石のモンスターも、モンスターワールドからは消えちまったんだろ。じゃあ、モンスターワールドはどうなるんだよ?」
気を取り直すように声を上げ、腕を組んで再び考え込む遊次。イーサンが彼へ複雑な視線を向ける中、ムルシドはゆっくりと首を横に振って答えた。
「予想はつかぬな。なにせ前例のないことだ。ともかく…地球に迫る悪星神を打ち破らねばこの世界に未来はない。そなたらはその方法を探しに来たというわけだな」
「はい。この国には我々の知らない精霊世界の情報が溢れています。きっと今語ってくださったことも、この国の保有する知識の断片に過ぎないはずです。だからこそ、世界を救うためにはネフカ王国の協力が不可欠だと…」
熱を帯びていたアリシアの言葉は、紡がれるうちに次第に小さくなり、やがてふっと途切れた。これから口にしようとする事と、この国の実態との間にある決定的な矛盾に気づいてしまったのだ。彼女の抱いた違和感をすくい上げるように、イーサンが静かに口を開く。
「問題は、国王であるアスラナクが協力してくれるかどうか、だな。モンスターを人間よりも上位であると考える"絶対派"が、神である悪星神を倒すことに協力してくれるのか…甚だ疑問だな」
その懸念はすでに想定していたというように、ムルシドは間髪入れず深く頷いた。
「まさにそれこそが問題の本質。レイノルズ殿の言うように、絶対派の精霊への信仰は常軌を逸しておる。私も、神を打ち破ろうとするそなたらにアスラナクが協力するとは思えん」
「な…そんなこと言ってる場合じゃねーだろ!世界が滅びちまうんだぞ!?」
遊次がたまらず身を乗り出し、声を張り上げた。だが、ムルシドは表情一つ崩すことなく、落ち着き払った声音で残酷な現実を突きつける。
「絶対派の思想は強固だ。圧倒的に上位の存在である神に抗うぐらいなら、死を選ぶであろう。少なくとも、アスラナクが進んで協力するとは考えづらい」
「だから国王を倒せ…そう言いたいわけですか」
イーサンが冷ややかに言い放つ。その射抜くような鋭い視線を向けられても、ムルシドは表情一つ変えることなく、無言で真っ直ぐに見つめ返した。
「結局はアスラナクと話してみないことには始まらないだろう。あなたが今言ったことも、俺達を革命に利用するための方便って可能性もある」
「イーサン…!」
まるでムルシドを疑うようなイーサンの言葉に、たまらず灯が咎めるように声を上げた。ムルシドは落ち着いた声で言葉を返す。
「そなたらを利用しようとしている…か。あながち間違いではない。アスラナクが王座を奪って以来、私は革命の機を窺ってきた。家族を犠牲にしてでも…な。そんな中、悪星神に立ち向かわんとする者達がネフカへの入国を申し出てきた。我が友、ヘックス殿の使者として」
「悪星神を討つために我が国へ協力を求めるのならば、必ずアスラナクと対立することとなる。この国に革命をもたらす好機は今しかないと確信した。故に私が、アスラナクへ進言したのだ。精霊世界の繁栄に貢献したヘックス殿の意思を尊重し、彼らの入国を許可してはどうかと。むしろ今こそ、精霊の威厳を世界に知らしめる絶好の機会ではないかと、な」
ムルシドの言葉に、部屋の空気が張り詰める。悪星神の接近と、それに抗う者たちの存在。神を絶対視するアスラナクにとって、遊次たちは本来なら門前払いすべき存在だ。しかし、彼らにはヘックスという強大な後ろ盾があった。ネフカ王国とモンスターワールドの繁栄は、間違いなく彼の功績だ。ムルシドはその過去の恩義を巧みに突き、王宮の懐深くから、革命の火種となる遊次たちをこの国へ引き入れてみせたのだ。
アリシアは目を丸くし、声もなくムルシドを見つめた。この男の眼には、最初からアスラナクの打倒しか映っていない。世界が滅びる危機すらも、王を討つための盤上の一手に過ぎないのだ。「利用している」というイーサンの言葉をあっさりと肯定したのも、その凄まじい執念ゆえ。彼の奥底で赤々と燃え続ける革命への信念は、もはや誰にも疑いようのないものだった。
重苦しい沈黙が部屋を満たす中、オスカーが張り詰めた空気を鋭く切り裂いた。
「悪星神を打ち破るためには、この国の膨大なモンスターワールドの知識は必要不可欠。だが絶対派の思想を鑑みれば、協力を得られない可能性が高い。いや、表向きは協力すると言いながら情報を隠し続ければ、アスラナクは意図的に世界を滅亡へ導くことさえできる」
「つまり…"絶対派"の王など、端から頼りにならんということだ」
精霊を神と崇め奉る「絶対派」が頂点に立つ国。その王が、神を滅ぼそうとする自分たちに手を貸す保証など、最初からどこにもない。保証がない以上、彼らの協力を前提とすること自体が間違いだという。
一切の隙もないオスカーの冷徹な結論。遊次は目を見開き、半ば口を開けたまま完全に固まった。複雑に絡み合っていたはずの状況は、恐ろしいほどにシンプルな答えに収束する。選ぶべき道は、もはや一つしか残されていないように思えた。
「どっちみち、アスラナクを倒すしか選択肢はねえってことだな」
オスカーの導いた結論と遊次が口にした言葉が、次々と他の者へと伝播してゆく。それはまるで、長きたゆたいから目覚めたような感覚。視界の靄が晴れていくのがわかる。
怜央が、ギリッと奥歯を鳴らした。その顔には、理不尽に対する抑えきれない怒りがはっきりと浮かんでいた。
「罪もねえ奴らが殺されて、ガキまで命狙われてんだ。アスラナクって野郎が王座にいて得になることは一つもねえ」
彼は忌々しげに吐き捨てると、真っ直ぐに人差し指を突き立てた。そして、地を這うような低い声で、はっきりと宣言する。
「"引きずり下ろし一択"だ」
遊次、そして怜央。彼らの顔つきに、退けない強い覚悟がはっきりと浮かび上がっていく。だが、その熱に当てられることなく、イーサンは険しい顔つきのまま反論の声を上げた。
「王を引きずり下ろすなんて、そんな簡単な話じゃないだろ。ただでさえアスラナクは少数精鋭で国をひっくり返した奴だぞ。しかも軍を従えてるんだ、真っ向から挑んでも勝てるはずがない」
その冷静な指摘に続くように、ずっと俯いていたトトが、弾かれたように顔を上げた。
「…イーサン様のおっしゃる通りですよ。アスラナクに立ち向かうなんて…無謀です!死にたいんですか!?」
その眼差しには、自ら死地に飛び込もうとする者たちを本気で警戒する、鋭い光が宿っていた。必死に声を荒げるトトに対し、遊次は立ち上がり毅然とした声で問う。
「じゃあ、お前はずっと逃げ続けんのかよ」
トトの小さな肩がびくりと跳ねる。
「アスラナクが王でいる限り、お前はこの先ずっと、安心して街も歩けねえんだぞ。日の光も浴びれない。誰とも話せない。ずっとこんなとこに隠れて一生を過ごすのかよ」
「それは…」
トトは反論できず、口ごもる。遊次は彼女から視線を外し、今度はイーサンへと真っ直ぐに向き直った。
「女の子1人守れねえで…世界なんか守れっかよ」
イーサンは目を細め、一瞬だけふっと視線を逸らす。やがて、短く息を吐き出してから言葉を返した。
「…そうだよな。お前は、そういう奴だ。昔から」
そして彼は、すべての迷いを振り払うようにしっかりと前を向く。
「どんなに止めようが、お前らは止まらない。だから、お前らを守るために戦うしかない。そのために俺はこの国に来たんだ」
張り詰めていた空気が緩み、遊次の口元にふっと笑みがこぼれる。その隣へ歩み寄った灯も、小さなトトへと真っ直ぐに向き直った。
「政治家でもない私達がここに来たのは、こういう時のためだよ」
言葉とともに、灯は横に立つ遊次の肩をポンと叩く。
「この人はヴェルテクス・デュエリアの本戦で戦えるぐらい強い人。それとこの人は、そんな遊次に1回勝ってる人」
彼女の視線と指先は、静かに足を組んで座るオスカーへと向けられる。灯が安心させるような優しい笑みを浮かべると、今度は遊次が灯の肩をぐっと引き寄せ、トトへ向かってニカッと笑いかけた。
「そういうコイツも、めちゃくちゃ強いんだぜ!怒らせたら俺でも勝てないかもな。もちろん怜央とイーサンも、デュエルでスゲー修羅場潜って来てる。七使徒だかなんだか知らねーけど…負けねえよ、絶対」
その圧倒的なまでの自信を浴び、トトは丸メガネの奥の目を丸くして押し黙った。一国を前にしても、彼らの態度には微塵の揺らぎもない。その事実だけで、彼らの語る"修羅場"がいかに常軌を逸したものだったか、幼い彼女にも容易に想像がついた。
遊次達に揺れる瞳を向けながら、ムルシドは感慨深く言葉を紡ぐ。
「いくらヘックス殿の使節とはいえ、トトを任せられるかは会ってみなければわからなかった。だが今なら断言できる。トトを救えるのは…そなたらしかいない」
遊次はムルシドと視線を交わす。そして再び胸の内で覚悟を決めた。だが、その熱を帯びた空気の中で、アリシアだけは険しい表情を崩さなかった。彼女は遊次を真っ直ぐに見据え、厳しく忠告する。
「言っておくが、アスラナク王との謁見を諦めるつもりはない。我々はそのために来たのだ。それにデュエリアを背負っている以上、革命など口にすることも許さん。国際問題を起こすつもりか。勝手に決めるな」
畳み掛けるようなアリシアの言葉に、遊次も負けじと声を張り上げる。
「でもよぉ!トトを守るためには戦うしかねーだろ!」
「だからといって革命を起こすなどという結論は飛躍しすぎだ。そもそも、他国の事情に外国人が口を挟むべきでない。いいか、勝手な真似をした者はデュエリアへ帰す。それが政府としての命令だ」
アリシアの頑なな態度に、遊次はギリッと強く奥歯を噛み締めた。ムルシドもまた口を固く結び、ひどく険しい顔つきになっている。せっかく掴みかけた革命の機が、今まさに眼の前で失われようとしているのだ。その胸中が穏やかであるはずもなかった。
「所詮"お役人様"か。くだらねえ」
苛立ちを隠そうともせず、怜央が大きく舌打ちをして吐き捨てる。しかしイーサンはどこか安堵した様子で、息を吐いた。
「なんとでも言え。とにかく、まずは国王との謁見だ」
怜央の刺々しい言葉を冷たくあしらい、アリシアは淡々とムルシドへ向き直る。
「ムルシド殿、当初の予定通り、王宮へと…」
アリシアが言葉を続けようとしたその瞬間、静かに座っていたオスカーが急に立ち上がり、背後を振り返った。そのただならぬ動きに、遊次たちも一斉に彼と同じ方向へと視線を向ける。だが、そこにあるのは無機質な石造りの壁と、先ほど自分たちがくぐり抜けてきた足元の小さな穴だけだった。
直後、ドォンと重い音が室内に響き渡った。
壁の向こう側から、何者かが力任せに石を叩きつけている。
不気味な打撃音に、トトがびくりと肩を跳ねさせ、怯えた様子ですぐさまムルシドの背後へと身を隠した。遊次たちは即座に身構え、音の鳴る壁へと射抜くような視線を突き刺した。
ムルシドが大きく目を見開き、血相を変えてトトへと視線を飛ばす。
「まずい…!トト、奥の部屋に隠れろ!」
トトは無言でこくりと頷いた。小さな背中を翻し、古文書を抱いて部屋のさらに奥へと一目散に駆け込んでいく。逃げる彼女を急き立てるように、壁の向こう側からは重い打撃音が何度も響き続ける。石を打ち据える鈍い音が鳴り響くたび、頑強な壁にはピキッと亀裂が走り、そのヒビはみるみるうちに大きく広がっていった。
そして頑強だった壁が、ついに轟音とともに砕け散った。視界を遮る粉塵の向こう側から、鈍い光を反射する鎧を纏った十数人の兵士たちが姿を現した。彼らは殺気を孕んだ動きで、一斉に部屋へと踏み込んでくる。
殺気立った兵士たちの中心で、一際異彩を放つ男が立っていた。短く刈り上げた薄緑色の髪に、褐色肌の引き締まった顔。顎には短く整えられた髭を蓄えている。威圧感を放つ漆黒の重厚な甲冑を纏い、太い腕を誇示するように前で組んでいた。
キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/6Gx0Vb4
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
その男が、粉塵の中で不敵な笑みを浮かべ、部屋の奥にいるムルシドたちへと視線を向ける。そして、余裕を滲ませた低い声音で口を開いた。
「おやおや、これはムルシド殿。それに…後ろの方々はデュエリアからの使節でしょう。何故このような狭苦しい部屋に?」
「暫し、彼らとの情報共有をしていたまでだ」
ムルシドは胸の内の動揺を押し殺し、あくまで落ち着いた声で返答した。だが、黒い鎧の男は間髪入れずに切り込んでくる。
「アスラナク様を差し置いて、か?」
射抜くような鋭い視線に、ムルシドは一瞬言葉を失う。すかさず、黒い鎧の男が冷酷に言葉を重ねた。
「おっと、これは"痛い"所を突いたかな?貴方がこの辺りに度々出入りしていたのは知っていた。何やら怪しいと思っていたが、もしや…禁忌に触れた少女を匿っているなどということはないだろうな?」
図星を突かれ、遊次は心臓が跳ね上がるのを覚えた。だが、表情の筋肉を固く引き結び、顔には一切の動揺を出さずに立ち尽くす。
「匿う?なぜ私がそのようなことを?」
ムルシドが再び言葉を返す。しかし、黒い鎧の男はそれに取り合うことなく、無言で周囲の兵士たちへ目配せをした。
重い金属音を鳴らし、兵士たちがいっせいにこちらへと歩みを進めてくる。遊次たちは警戒心を露わにしながら、トトが逃げ込んだ奥の部屋の入り口を背中で庇うように、ゆっくりと後ずさった。黒い鎧の男はその微かな動きを見逃さず、確信に満ちた笑みを浮かべた。
「なるほど、その部屋にいるのか」
兵士たちが一斉に踏み込んでくる。ムルシドの顔に一瞬の激しい葛藤が走るが、迷っている猶予はなかった。彼は弾かれたように背後を振り返り、遊次たちへ向かって怒鳴る。
「奥の部屋の床から地下道に抜けられる!あの子を連れて逃げろッ!」
その叫びが引き金となった。遊次たちが奥の部屋へ向かって駆け出すのと同時に、鎧の兵士たちが猛然と突っ込んでくる。先頭の兵士たちが、立ち塞がるムルシドに飛びかかり、その体を取り押さえた。
「ムルシドさんッ!!」
力ずくで押さえ込まれる姿に、遊次は思わず足を止める。複数人に羽交い締めにされながらも、ムルシドは必死に顔を上げ、声を振り絞った。
「"ギルド"に向かえ!!私の仲間がそこにいる!!」
遊次は悔しさに顔を歪めるが、ギリッと歯を食いしばると、意を決して再び奥の部屋へと駆け込んだ。部屋の中では、すでにトトが重い石の床板をずらし、暗い地下道への入り口を開け放っていた。
「ムルシド様は!?」
トトが切迫した表情で問い詰める。遊次は部屋の外から迫る足音に視線をやり、ひどく険しい顔で告げた。
「逃げるぞ、トト!」
その短い言葉に込められた現実を悟り、トトは苦しげに顔を歪める。そして、諦めるように無言でこくりと頷いた。遊次は不安げな瞳を揺らす彼女の小さな体をしっかりと抱きかかえると、地下道へと続く鉄の梯子を素早く下りていく。怜央たちもすぐさまそれに続いた。
暗く狭い通路を急ぐ中、遊次の脳裏には兵士に力ずくで押さえ込まれていたムルシドの姿が焼き付いて離れなかった。彼を助けられなかった悔しさに、ギリッと強く奥歯を噛み締める。そして、彼が最後に叫んだ言葉の謎を必死に頭の中で巡らせた。
「"ギルド"ってなんだ…!?どこに行けばいいんだ…!」
すると、腕の中に抱きかかえられていたトトが、遊次を見上げて言った。
「私、ギルドの人達を知っています!でも、どこにいるかは…」
答えが見えず思考にもやがかかる中、頭上の穴からはガチャガチャと重厚な鎧がぶつかり合う音が響いてきた。兵士たちはもうすぐそこまで追ってきている。立ち止まって考える暇などない。
遊次たちは梯子を急いで下り、地下道へと降り立った。そこは石造りのひらけた空間で、複数人が横に並んで歩けるほどのゆったりとした道幅があった。アーチ状の天井は高く、壁に点在する微かな明かりが、ひんやりとした空気の漂う通路の先までをぼんやりと照らし出している。古くから密会に使われたという部屋だ。人知れず街へと抜けるための隠し通路も用意されていたのだろう。
遊次は微かな明かりが照らす先を目指して駆け出した。灯、アリシア、怜央、オスカーがそれに続き、イーサンが最後尾につく。そして彼らの背後では、重い金属音を響かせながら、鎧を纏った兵士たちが次々と降り立ち、猛然と後を追ってきていた。
通路はどこまでも続いている。トトを抱えながら走る遊次が、忌々しげに後ろを振り返った。重装備のはずの屈強な兵士たちは、すでにすぐそこまで迫っている。
「クッソぉッ!!キリねえぞ!」
苦悶の表情で遊次が叫ぶ。灯や怜央もどうすればいいのかわからず、ただ無我夢中で足を動かし続ける。最後尾のイーサンは、走りながら背後の兵士たちへと鋭い視線を送っていた。
「待て異人達よ!その娘は重大な過ちを犯した罪人だ!こちらへ明け渡せ!」
先頭を駆ける5人の銀鎧の兵士たち。そのさらに奥から、黒い鎧を纏った薄緑色の髪の男が声を張り上げた。だが、遊次たちはその言葉に一切答えることなく、前を見据えて走り続けた。
「命令を無視するか!このままではそなたらも反逆罪だ!"痛い"目に遭いたくなければ今すぐその娘を渡せ!」
背後からの容赦ない警告に、走りながらアリシアが苛立ちも露わに叫んだ。
「あぁ、もう!なぜこんなことに…!」
入国して早々、反逆者として追われる身となってしまった。その理不尽な状況にアリシアの表情は険しい。だが、猛然と迫る武装した兵士たちへ、ただ怯えるだけの幼い少女を引き渡すことなど、これまで中立の立場を重んじてきた彼女であってもできるはずがなかった。奥歯を強く噛み締め、アリシアは迷いを振り切るように遊次の背中を追って走り続けた。
地下道を走り始めて3分。暗い通路は延々と続き、地上へと繋がる出口は一向に見えてこない。遊次や灯の荒い息遣いが反響し、その足取りは目に見えて鈍り始めていた。一方、背後に迫る兵士たちは重厚な鎧を身につけているにも関わらず、日々の鍛錬ゆえか、その歩みをほとんど緩める気配がない。
「このままじゃ追いつかれるッ!!」
灯が悲痛な声を上げる。最後尾を走るイーサンは、背後へ鋭い視線を送りながら冷静に口を開いた。
「奴らを足止めするにしても、人数が多すぎる。兵を指揮する奴にオースデュエルで勝てば、機能停止させられるかもしれないが…」
「でもそれじゃ、誰か1人がここに残ることに…」
灯が顔を強張らせる。誰か一人を置いていくことなど到底受け入れがたい。だが、このまま走り続けても追いつかれるのは明白だった。焦燥を察し、怜央が走りながら前を見据えたまま言い放つ。
「あの黒い鎧の奴は、街で副指揮官って呼ばれてた。偉そうにしてたし、明らかにアイツが兵を仕切ってるだろうぜ」
それは、誰かが残ってあの黒鎧の男と戦うしかないという事実の提示だった。すると他の者が言葉を返すより早く、最後尾を走っていたイーサンが不意に足を止めた。石畳を強く蹴り、猛然と迫る兵士たちへと単身で向き直る。
「イーサンッ!?」
遊次が弾かれたように振り返り、声を張り上げた。一目散にイーサンへと殺到してくる鎧の兵士たち。イーサンは肩越しに振り返り、短く告げた。
「言っただろ、お前達を守るためにこの国へ来たと。…俺なら大丈夫だ。行けッ!」
遊次の顔に、痛切な迷いと葛藤が浮かぶ。強く歯を食いしばると、意を決して再び前を向き、薄暗い通路の奥へと全力で駆け出していった。
イーサンは流れるような動作で左腕にデュエルディスクを装着し、それを高々と掲げた。
地鳴りのような足音を立てて迫る兵士たち。その先頭を駆ける黒鎧の副指揮官は、たった一人で通路に立ち塞がる男の姿に警戒心を露わにし、鋭く目を細める。直後、ひんやりとした薄暗い地下道に、場違いなほど無機質な機械音声が鳴り響いた。
≪強制オースデュエル発動≫
「何ッ!?」
突如として空間に生み出され、波紋のように広がって迫り来る赤い光の輪。その未知なる現象を前に、猛進していた兵士たちはたまらず急ブレーキをかけ、その場に立ち止まった。
強制オースデュエル。本来は国連に認められた軍や警察といった公的機関のみに行使が許される強権だ。かつての戦いでニーズヘッグに濫用されたその権限を、この国へ入るにあたり、オスカーを除くメンバーも与えられていたのだ。当然、国連の認可など通さずにオスカーの独断で。
赤い光の輪に囚われた副指揮官の左腕で、デュエルディスクが警告のように点滅を繰り返す。イーサンは彼を真っ直ぐに見据え、落ち着き払った声で告げた。
「世界デュエル憲章がある以上、俺とそこの副指揮官とのオースデュエルは、何人たりとも妨げることはできない」
オースデュエルへの物理的な介入は、絶対の法である『世界デュエル憲章』によって固く禁じられている。万が一力ずくで妨害すれば、デュエルディスクに搭載されたAIであるDDASが、世界のあらゆるシステムを掌握し、最悪の場合は国際機関の介入すら招きかねない。その圧倒的な拘束力が、兵士たちからイーサンへ手出しする術を完全に奪っていた。
「まさか、このような強硬手段に出て来るとは…痛恨の極み。だが私以外の兵士の行動を縛ることはできぬはず。追え、お前らッ!」
瞬時に状況を呑み込んだ副指揮官が、背後の兵士たちへ鋭い怒号を飛ばす。命令を受けた兵士たちはイーサンを迂回し、遊次たちを追って再び薄暗い通路の奥へと走り出した。
複数の重い足音が遠ざかり、やがて地下道にひんやりとした沈黙が落ちる。微かな明かりの中に取り残されたのは、静かに対峙するイーサンと、漆黒の鎧を纏う副指揮官の二人だけだった。
「お前、副指揮官らしいな。まずは権限を開示してもらおうか」
言葉と同時にイーサンのデュエルディスクから光が放たれ、薄暗い通路に青白いソリッドヴィジョンのウィンドウが展開された。そこに映し出されたのは、強制オースデュエルのシステムによって可視化された、目の前の男の権限だ。
イーサンは画面に並ぶ文字列を素早く目で追った。
「セヘジュ・メンカフ」という名前の下には"アザン軍副指揮官"と書かれている。
(現場での兵の指揮がアイツの持つ権限か。永久に兵士の動きを封じることはできないが、少なくとも足止めはできるはずだ)
黒い鎧の男は副指揮官。つまりその上に軍を統括する者が存在することを意味する。相手に要求できる契約は、あくまでこの男に与えられた権限の範囲内に限られる。もし軍全体を停止させるならば、指揮官に対してオースデュエルを仕掛け勝利する必要があるだろう。だが少なくとも副指揮官は現場を指揮できるため、その範囲内であれば他の兵士の動きを制限する契約を提示することが可能だ。
イーサンはホログラムのウィンドウを閉じ、副指揮官を鋭く見据えた。
「俺が提示する契約は、遊次達を追った兵士の動きを止めることだ」
副指揮官はわずかに顎を上げ、見下ろすような視線で冷静に応じた。
「強制オースデュエルもまた、世界デュエル憲章に則っているのだろう。ならばこちらも平等の契約を提示できる。私が提示する契約は、お前の身柄の確保だ。私が勝てば、いずれにしても他の者達を捕まえるのも時間の問題だしな」
「…いいだろう」
イーサンは短く答え、その要求を真っ向から受け入れた。
「わかっているのか?お前達は王国に牙を剝く反逆者だ!いまさら謁見など叶うと思うな!全員捕らえて、アスラナク様に献上するまで!」
男の怒号が薄暗い地下道に反響する。ここで敗北すれば、イーサン自身はおろか、先行した遊次たちやトトまでもが確実に捕らえられ、最悪の結末を迎えることになる。決して負けは許されない、これまでのデュエルとは比較にならないほど重い、命懸けの戦いだ。
イーサンは退路を断った覚悟の眼差しで相手を真っ直ぐに見据え、デュエルディスクを装着した左腕を力強く掲げた。
「見えた!出口だ!」
薄暗い地下道の先に、一条の光が上方から差し込んでいる。トトを抱きかかえて走る遊次の目に、地上へと続く梯子が飛び込んできた。一方、走りながら背後を振り返ったオスカーの視線の先では、重装備の兵士たちが全く勢いを落とすことなく、無慈悲な足音を響かせて迫ってきている。
その絶望的な状況を測り、オスカーは冷徹なまでに落ち着いた声で告げた。
「逃げ続けることはできん。イーサン・レイノルズが兵を機能停止させるまで、身を隠してやり過ごすしかあるまい」
「…あぁ。でも、隠れるっつってもな…」
荒い息を吐きながら、遊次は険しい顔つきで梯子に手をかける。その腕の中にすっぽりと収まるトトは、片手で古文書をぎゅっと抱きしめたまま、真剣な眼差しで遊次を見上げて口を開いた。
「私、身を隠す場所ならよく知っています。何ヶ月も兵士達と"かくれんぼ"をして来ましたから」
「…そうか、そりゃ心強ェ。頼んだぜトト!」
その言葉に、遊次はふっと皮肉めいた笑みをこぼした。そして、トトをしっかりと抱え直すと、力を込めて梯子を上り始めた。
対峙するイーサンとアザン軍副指揮官「セヘジュ」。
2人の間に、乾いた機械音声が鳴り響く。
「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」
プレイヤー1:イーサン・レイノルズ
条件①:アザン軍兵士に対し、神楽遊次およびその同行者を追うことを禁ずる。
(ただしこの契約は、アザン軍指揮官"アザン・ヤダフ"の命令においては適用されない)
プレイヤー2:セヘジュ・メンカフ
条件①:イーサン・レイノルズの身柄に関する一切の処遇は、セヘジュ・メンカフに一任されるものとする。
詳細な契約内容は、ソリッドヴィジョンの契約書として両者の前に浮かび上がる。そこには一切の別の解釈の余地がないほどに徹底された文章が記載されており、承認した時点で、完全なる両者の意図通りの契約にしかならないようになっている。
イーサンとセヘジュは指でソリッドヴィジョンの契約書にサインを行うと、DDASがオースデュエルの開始を宣言する。
「契約内容を承認します。デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」
イーサンと副指揮官セヘジュは、声を揃えて決闘を宣言する。
「デュエル!」
第81話「禁忌を抱く少女」 完
副指揮官セヘジュのデッキは、痛みを力へと変換するテーマ「ペインチャージャー」。
イーサンと同じくカウンターを使用し、万全の盤面を作り上げる。
対するイーサンの脳裏には、追っ手から逃げ続ける遊次達の背中が浮かぶ。
もたつけばデュエルの決着よりも先に遊次達が捕まってしまう。
そうなれば命の保証などない。
イーサンの覚悟は唸る雷鳴となり、フィールドへと出力される。
「こんなところで足を取られている時間はない。
"一撃"で全て焼き尽くす…!」
次回 第82話「痛恨の一撃」
彼らの眼前に広がったのは、人とモンスターが当たり前のように生活を共にする信じがたい光景だった。
神官ムルシドの先導で街を進む一行だが、すれ違う住人たちの視線は一様に冷ややかだ。やがて人目を避けるように導かれた薄暗い路地裏。そこに立ち塞がったのは、2メートルを優に超える兵士ナディムだった。異国からの来訪者を警戒する2人は、オースデュエルを利用して遊次たちの真の目的を吐かせようと企んでいた。
ナディムと対峙したのは怜央だ。禁書の力で強大なモンスターを呼び出すナディムに対し、怜央は新たなるエクシーズモンスターを喚び出し、たった1ターンで勝利を収めた。
敗北したナディムはムルシドに秘密を暴かれ、反逆者として兵士たちに連行されていく。その異常な事態に、遊次がムルシドへ事の真意を問いただす。だが次の瞬間、冷酷な罠を張ったはずの老神官は石畳に深く膝を折り、遊次たちの前で静かに頭を垂れた。
「…お待ちしておりました。我が"盟友"、ヘックス・ヴラッドウッドの使者よ」
「なっ…!」
遊次たちは思わず身を引き、地面に伏した老人の姿を目を見開いて見下ろす。
ムルシドはゆっくりと顔を上げた。真っ直ぐに向けられたその瞳には、切迫した真剣な光が宿っていた。
「この国は今、滅びの一途を辿っている。だがそなたらの力があれば…未来は変えられる!」
路地裏に立ち込める、異様な空気。オスカーは、ヘックスを盟友と呼んだムルシドの言葉に一つの手がかりを見出していた。脳裏に蘇るのは、病室で祖父ヘックスが語った言葉だ。
(カードを通じて、ネフカの人々と心を交わし合うことができたよ。ある神官とは深く酒を汲み交わすほどに仲良くなれたものさ)
オスカーには確信があった。目の前で膝を突くこの男こそが、祖父の友となった神官なのだと。オスカーは静かに口を開く。
「俺達がこの国に来た目的は、世界を救う手立てを探すためだ。たとえ我が祖父の友の頼みであっても、その目的に通ずるものでなければ聞き入れるつもりはない」
ムルシドはゆっくりと立ち上がり、凛とした表情で前を見据える。
「私も、世界に迫る危機やそなたらの目的を全て知るわけではない。だが…おそらく、私とそなたらの目指す道は交差する。そう確信している」
遊次たちは無言のまま、ムルシドの顔を見つめていた。言葉の真意はまだ掴みきれない。だが、少なくとも彼が敵ではないことだけは伝わった。アリシアが周囲に鋭い視線を配りながら、冷静な声色で口を開く。
「いずれにしても、今のネフカ王国の状況を我々は知る必要がある。話をお聞かせ願えるか、ムルシド殿」
「古くから密談に使われる談話室がこの奥にある。人目につかない場所だ、案内しよう」
ムルシドは深く一度頷くと、身を翻して薄暗い路地裏の奥へと歩みを進めた。その背中を追い、遊次たちは覚悟の宿った面持ちで静かに後へと続いた。
薄暗い路地を奥へ奥へと進むと、やがて行き止まりの壁に突き当たった。談話室はどこかと、遊次は周囲を見回す。だが、そこにあるのはただの冷たい壁だけだ。
すると、先頭のムルシドが静かに身をかがめる。彼が向かったのは、壁の最下部に開いた小さな穴だった。大人が身を縮めてようやく入れるほどの隙間へと、ゆっくり潜り込んでいく。普通に歩いていれば視界に入らない足元の死角。その奥に部屋があるなどとは到底思えない隠し穴だ。遊次たちも身を低くし、ムルシドの背中を追って暗い穴の中へと進んでいった。
狭い穴を抜けた先には、冷たい石造りの小部屋が広がっていた。窓はなく、薄暗い空間の中心には、同じく石で作られた簡素なテーブルと幾つかの椅子がポツンと置かれている。部屋全体に埃が薄く積もり、長年使われていなかったことを物語る。奥の石壁の一部には重々しい木の扉が備え付けられており、別の部屋があるようだ。
部屋の奥、ムルシドが石造りの椅子に静かに腰を下ろした。卓を挟んだ向かい側には、空席の石椅子が二つ。そこへ、遊次とオスカーがほぼ同時に、何の遠慮もなくドカリと腰を下ろす。背後で立ち尽くすイーサンとアリシアは、そんな二人の背中へ引きつった視線を送っていた。
「で、まずアンタは何者なんだよ、ムルシドさん。急に罠にかけてきたかと思ったら掌返して国を救ってくれって…」
遊次が鋭い視線を向け、単刀直入に切り込む。対するムルシドは表情を変えることなく、静かに言葉を返した。
「私はネフカ王国で40年間、神官を務めている。目的は…現国王アスラナクを倒し、囚われの身である前国王ゴルズ・シャマシュに王権を戻すことだ」
「なぜ今の国王を打倒したいと?」
アリシアが食い下がると、ムルシドの顔が忌まわしい記憶を呼び起こすように険しく歪んだ。
「アスラナクは3ヶ月前、この国に革命を起こし、王座を奪い取った。奴と同じ思想を掲げる者達を引き連れて。その数はネフカの兵に比べても圧倒的に少数だったが…奴らはデュエルの実力のみで兵を次々と倒し、革命を成功させた」
「アスラナクは奴と同じ過激派思想を持つ者だけで軍を結成した。"七使徒"と呼ばれる7人の幹部を筆頭にな。そして多くの罪なき人々が"反逆罪"として処刑され、命を失うこととなった。許されざる暴政だ」
「そんな…」
灯が思わず息を呑む。王が代わったという事実は知っていたが、その裏で血が流れていることなど知る由もなかった。
「罪もねえのに反逆罪ってのはどういうことだ?」
冷たい石壁に背を預けながら、怜央が低い声で問いかける。
「この国には、大きく分けて2つの思想がある。"中立派"と呼ばれるいわゆる穏健派と、"絶対派"と言われる過激派だ」
中立派。それは先ほど路地裏でムルシドたちが口にしていた言葉だ。老神官は静かに言葉を継ぐ。
「シャマシュ王政下のネフカは"中立派"を貫き、そして多くのネフカの民もまた同じ思想を持つ。しかしその影で"絶対派"は革命の機を窺い、牙を研いでいた。そして3ヶ月前、アスラナクを筆頭に革命が起き、ついに絶対派が権力を手にするに至った。以降、中立派思想を表に出した者は"反逆罪"として捕らえられるようになってしまったのだ」
街を監視するように立つ、あの鎧の兵。そして彼らの目を常に恐れ、萎縮しながら暮らす住人たち。入国した時から肌で感じていたあの張り詰めたような異様な空気は、すべてアスラナクによる圧政のせいだったのだ。
「その中立派と絶対派というのは、具体的にどのような思想なのですか?」
頭の中で情報を整理しながら、アリシアが全員の抱いた疑問を代弁する。
「この国の民は精霊…つまりモンスターを信仰していることはご存じだろう。信仰の度合いに違いはあれど、みな精霊の存在を強く重んじておる」
ムルシドの言葉に、遊次たちは静かに頷いた。
「"中立派"とは、精霊と人々が対等であることを望む者。対して"絶対派"は、精霊こそが上位の存在であり、人間は精霊に屈服すべきであるとする思想のことだ」
精霊に屈服する。その極端な思想に、遊次は強く眉をしかめ、思わず声を荒げた。
「屈服…?んだよそれ!モンスターは仲間だしダチみたいなもんだろ!そっちの方がどう考えても良いじゃねえか!」
「私も同感だ。しかしいつの時代も行き過ぎた信仰を持つ者が現れ、争いは生まれる。嘆かわしいことだがな」
深く息を吐き出すムルシド。その瞳には、どうにもならない争いへの深い悲哀が浮かんでいた。そんな彼の言葉を聞きながら、灯がふと腑に落ちない表情で問いかける。
「あの…ムルシドさんも中立派なんですよね?なのに、どうして今の国王のもとで神官を務めてるんですか?」
その問いには「ムルシド自身がなぜ今も王宮に残るのか」そして「アスラナクが何故それを許しているのか」という2つの意味があった。ムルシドは再び険しい表情で言葉を紡ぐ。
「アスラナクが王となってから、シャマシュ王に仕えた兵や神官は皆その身を追われることとなった。私以外はな。アスラナクにとっても経験の深い神官の存在は必要だった。それを理解していた私は、自身が絶対派であると示すことで王宮に残る道を選んだのだ」
ムルシドは中立派であることを隠し王宮に残る道を選んだ。兵士であるナディムを「中立派の女と逢瀬を繰り返していた」と密告し反逆者として捕らえさせたのは、ナディムを引き剥がすためでもあり、アスラナクに忠実な絶対派の神官を演じるためでもあったのだ。
「いくら自分が絶対派だと言い張っても、片っ端から中立派を捕まえるような暴君が簡単に信じるとは思えませんが…」
イーサンが疑問をぶつける。ムルシドは眉間に皺を寄せ、深く顔を伏せた。頭巾が落とす暗い影が、彼の表情をどこか妖しく見せている。
「当然、口先だけでは疑惑は晴れぬだろう。故に私は…中立派だった妻と娘を告発し国に差し出したことで、アスラナクへの忠誠を示したのだ」
その言葉に、遊次たちは大きく目を見開いた。張り詰めた空気の中、遊次がおそるおそる声を絞り出す。
「…どうなったんだよ。アンタの家族は」
「…処刑されたさ」
顔に陰を落としたまま、ムルシドは静かに答えた。遊次の表情が激しく歪む。次の瞬間、彼は反射的に手を伸ばし、ムルシドの胸倉を激しく掴み上げていた。
「なんでだよッ!告発なんかしたら…そうなんのはわかるだろ!そんなに神官の座が惜しかったのか!?」
激しい怒りと苛立ちに任せ、遊次は目の前の男へ言葉を叩きつける。沈黙して俯いていたムルシドは、やがて弾かれたように顔を上げ、悲痛な叫びを上げた。
「そうしなければッ!この国から革命の灯火は消え失せるッ!!」
見開かれた両目は痛々しく血走り、きつく食いしばった歯の隙間から嗚咽が漏れる。その頬を、大粒の涙がとめどなく伝い落ちていた。
その凄絶な姿に、遊次は息を呑み言葉を失う。ムルシドはギリッと奥歯を鳴らし、震える声で言葉を繋いだ。
「アスラナクが玉座に座り続ければ、私の家族だけでなく、多くの罪なき人々が迫害され、殺される。そして間違いなくネフカ王国は滅びの道を辿るだろう。私が残らねば…王宮は絶対派のみで固められ、アスラナクを倒す隙など生まれぬ…」
「ああするしか、なかったのだ。ああするしか……!」
遊次の腕を掴み返すその両手は、ひどく震えていた。保身のために選んだ道ではない。国を奪還するため、自らの手で家族を死地へ追いやったのだ。すでに奪われた二つの命。もはや後戻りなど許されない。己の残酷な決断を、何が何でも正しいものにしなければならない。その凄絶なまでの覚悟と執念が、強く噛み締めた言葉の端々に滲み出ていた。
遊次は掴んでいた腕から力を抜き、ゆっくりと下ろした。
「…悪かったよ。アンタの思いも知らずに責め立てて。でも、俺は…」
遊次は口ごもる。彼は未だ納得できない様子で、険しい表情を浮かべ続けていた。
石造りの部屋に重苦しい沈黙が落ちる。すると、部屋の隅にある扉が微かな音を立てて開いた。遊次たちが一斉に視線を向けると、開いた隙間から一人の少女が顔を覗かせていた。丸く大きな金縁メガネの奥で、琥珀色の瞳が瞬きをしている。その姿を見たムルシドは、はっと息を呑んで声を上げた。
「トト…!隠れているように言ったはずだ…!」
弾かれたように立ち上がり、少女のもとへ歩み寄るムルシド。トトと呼ばれたその少女は、扉の陰から完全に姿を現し、彼を見上げた。
褐色の肌に、後ろで無造作に束ねられた癖のある茶髪。特徴的な金色の眼鏡。身に纏うのは、鮮やかな黄色を基調とし、赤や青の細やかな幾何学模様が施された衣服と頭巾だ。そしてその小さな片腕には、彼女の体格には不釣り合いなほど大きく分厚い、一冊の古文書がしっかりと抱えられている。
キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/yjk5866
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
幼さの残る顔立ちだが、その振る舞いに怯えはない。彼女はまっすぐな視線ではきはきと答えた。
「申し訳ありません、ムルシド様。大きな声が聞こえたもので、つい気になってしまいました」
遊次は少女を見つめたまま、問いかけた。
「えっと…その子は?」
呼ばれたムルシドが振り返る。その顔には明らかな逡巡が浮かんでいた。しばらくの沈黙。やがて、彼は意を決したように息を吐き出す。
「…そうだな。そなたらをここに連れてきた以上、いずれは話さなければならないことだ」
ムルシドは遊次たちへ真っ直ぐに向き直り、言葉を紡いだ。
「この娘はトト・ミポット。あるきっかけでこの国の"禁忌"を知り、アスラナクに命を狙われている。私が秘密裏に保護し、ここに身を隠してもらっている」
「こんな小さな子が、命を…」
遊次は思わず声を漏らし、トトの姿を改めて見つめる。目の前に立つ少女はどう見ても12歳前後だ。命を狙われるにはあまりにも幼すぎる。
トトは、遊次たちをどこか怯えたような瞳で見つめていた。見たこともない出で立ちをした異国の人間を前にして、身を固くするのは無理もない。その警戒を解くように、ムルシドは柔らかな声色で彼女へと語りかけた。
「安心しなさい。この方々は私の友であるヘックス殿の遣いでこの国にやってきた。彼がその名を貸した以上、信頼できる人達さ」
「ヘックス様!?かの偉大なるヘックス様ですか!?」
途端に、トトの顔にパッと明るい光が差した。30年前、唯一この国に足を踏み入れ、モンスターワールドとネフカ王国の発展に多大な寄与をもたらした人物。ヘックスという偉大な名は、こんな年端もいかない少女にまでしっかりと語り継がれているらしい。
「あの、なんでその子が命を狙われてるんですか…?それに"禁忌"って…?」
灯が恐る恐る口にすると、先ほどまでの明るいトトの表情が一瞬にして曇った。俯く小さな肩。その痛々しい様子を察し、ムルシドが言葉を引き取る。
「彼女の父親…ガンド・ミポットは有名な歴史家だった。若き頃から古文書を解読し、この国の歴史を紐解いて来た。しかしそれが災いし、彼はこの国の暗部に触れてしまった。そのことがアスラナクの耳に届き…ガンドは捕まってしまった」
「そして禁忌を知らぬトトの母親さえも処刑され…命を奪われた。両親が命を懸けて必死に守ったことで、トトだけはなんとか逃げおおせることができたが…今も命を狙われ続けている」
遊次は目を伏せるトトを見つめ、両手で強く拳を握りしめた。
「とんだクソ野郎だな、アスラナクってのは」
理不尽に両親を殺され、今なお追われる身となった幼い少女。あまりにも無慈悲な境遇に、壁際にもたれかかる怜央の眼差しもまた、険しく鋭いものへと変わっていた。
トトは深く俯いたまま、小さな震える声で話し始めた。
「父上の研究資料は全て燃やされてしまいました。毎日、毎日、父上が寝る間も惜しんで積み上げてきたものが、全部…一瞬にして…」
その声には、やり場のない悔しさが滲み出ている。彼女は胸に抱えた分厚い古文書をさらに強く抱きしめ、かすかに掠れた声で言葉を紡ぐ。
「唯一持ち出せたのは…この一冊の古文書だけです」
顔を上げたトトの瞳は、強い決意と恐怖で激しく揺れ動いていた。あまりにも理不尽な運命に巻き込まれた幼い少女を前に、遊次はただ黙って見つめることしかできなかった。ムルシドはトトの腕に抱かれた古文書へ視線を落とした。
「この古文書こそ"禁忌"が記されたものだ。危険だから手放せと言っているのだが、聞く耳を持ってくれなくてな」
「当然です!この本は父上の生きた証!命に代えてでも守らなければ…っ!」
トトはムルシドを見上げ、力いっぱい声を張り上げた。その小さな顔には、決して譲らぬ強い覚悟が宿っている。ムルシドは複雑な眼差しで彼女を見つめ、やがて息を吐いて言葉を続けた。
「彼女の父ガンドとは、昔から親しくしていてね。彼は物知りで、よく子供達にもこの国の歴史を語って聞かせていた。大らかで優しく、民から愛される男だった。その古文書は、彼の形見のようなもの。私には、取り上げることはできなかった」
ムルシドの脳裏に、今は亡き友の姿が鮮明に蘇る。暖かな陽の射す広場で、古い本を片手に身振り手振りで語りかける大柄な男。短い黒髪と褐色の肌、分厚い黒縁メガネの奥の瞳は、いかにも人の良さそうに細められている。その足元には目を輝かせた子供たちが集まり、男の周りには常に絶えない笑顔と大きな笑い声があった。
二度と戻らぬ過去を振り返るような、静かで哀しげな声色。その響きに、トトの顔に再び暗い影が落ちる。小さな腕で古文書を抱きしめるその姿は、彼女自身もまだ、両親の死という残酷な現実を受け入れきれていないことを物語っていた。
沈黙が支配する中、ムルシドが口を開く。
「それと、"禁忌"については私も詳しくは知らぬ。アスラナクと一部の"七使徒"は、古来より存在する王宮の書庫からその秘密を知り得たようだがな」
「では、彼女も禁忌の中身は知らないと?」
イーサンが静かに問いかける。その声に反応し、トトは真っ直ぐにイーサンを見上げた。
「いえ。全てではありませんが、私もこの古文書には少し目を通したことがあります。この国が何を隠そうとしているのかも…知っています。でも、絶対に教えられません!」
その瞳には断固たる意志が滲んでいる。古文書を抱きしめるトトを見下ろし、オスカーが短く問いかけた。
「古文書が読めるのか」
「は、はい。昔から父上の書斎に入り浸っていたので。読むのに時間はかかりますが」
オスカーは彼女の胸にある古い本を真っ直ぐに指差し、淡々と言い放つ。
「その古文書には、俺達の求めるものが書かれている可能性がある。世界を救う方法に繋がる、何かが」
その言葉に、遊次はハッと顔を上げた。古来より精霊と深く通じるこの国が「禁忌」と呼び、血眼になって隠そうとする何か。それが自分たちの探し求める手がかりである可能性は、たしかに高い。
「世界を…救う?」
トトが不思議そうに首を傾げる。ムルシドは遊次たちへ正面から向き直り、凛とした表情で口を開いた。
「『私とそなたらの目指す道は交差する』と言ったのは、まさしくそのことだ。世界に迫る危機と、彼女の持つ禁忌。そしてアスラナクの暴政。これらは全て一つに繋がるはず。次はそなたらがこの国へ来た理由についてお教え願おう」
石造りのテーブルを挟み、遊次とオスカーの向かいへムルシドが腰を下ろした。そのすぐ横には、大きな古文書を抱えたトトがちょこんと座り、丸メガネの奥から遊次たちを見上げている。
遊次たちはトトへ自己紹介を済ませると、自分達の知っている情報と、この国を訪れた真の目的を語り始めた。地球へと迫り来る隕石型モンスターの存在。衝突まで、残された猶予はあと7ヶ月しかないこと。そして、誰一人犠牲を出すことなく、その巨大な脅威を打ち破るための手がかりを探していること。
「たった7ヶ月で、世界が…」
丸メガネの奥で、トトの目が大きく見開かれた。あまりにも現実離れした事実に、半ば放心したようにぽつりと呟く。唐突に突きつけられた世界の終焉を、幼い少女がすぐに飲み込めるはずもなかった。
ムルシドは、ゆっくりと口を開く。
「デュエリアからの入国要請には、この世界に巨大な隕石が迫っていると書かれていた。その時、私には察しがついた。数年前に精霊世界から突如として消えたあのモンスターが、現実世界に現れたのだと」
「そこまで読めていたんですか!?じゃあムルシドさんなら、なんで隕石のモンスターが現実世界に現れたか、わかるんじゃ…」
灯が縋るような視線を向けると、ムルシドは神妙な面持ちで口を開いた。
「わからん。わからんが…もしかすると、18年前にこの国で起きた"ある事件"が関係しているかもしれぬ」
「事件?」
遊次の短い問いかけに、ムルシドは深く眉根を寄せて過去を辿り始める。
「18年前、王宮に突如として石のような巨大な人型のモンスターが現れ、宮殿を破壊するという事件があったのだ。詳細はわからず、そのモンスターがどこへ消えたかも定かではないがな」
「そ、それって…!」
遊次と怜央が弾かれたように顔を見合わせた。自分たちの記憶にある出来事と、あまりにも重なる部分が多い。遊次は真剣な眼差しをムルシドへ向け、探るように尋ねる。
「デュエリアでも14年前に同じような事件があったんです。コラプスって聞いたことないですか?」
「…悪いが、聞いたことはない。外界の情報はほとんど入ってこないものでな」
遊次は何度か深く頷き、テーブルへぐっと身を乗り出した。
「俺らの故郷のドミノタウンって町で、急に空間に裂け目が開いて、50メートルぐらいの金ピカの鎧のモンスターが現れたんです。そのモンスターのせいで何百人も死んじまって…」
「まさか、異国でそのようなことが…。ん、黄金の鎧と申したか…?!」
ムルシドが驚愕にカッと目を見開いた。そのただならぬ剣幕に、遊次は思わずたじろぎながら聞き返す。
「あぁ…なんか知ってんのかよ!?」
ムルシドはしばし押し黙り、やがて重い口を開いた。
「いや、我々もその黄金の鎧のモンスターのことはよく知っている。確かにちょうど十数年前から姿を見せなくなっていたとは思っていたが、まさかそのようなことが…」
「だがコラプスについては原因はハッキリしてる。どっかのバカが考えた装置で空間に裂け目を入れたせいだ。多分アンタらの方とは関係ないだろうぜ」
横から怜央が冷たく言い放ち、逸れかけた話を強引に本題へと引き戻す。ムルシドも小さく「そうか」と呟き、再び彼らへと真っ直ぐに向き直った。
「18年前の事件も、今回の隕石も、現実にモンスターが現れたことについては同じだ。何か関係があるかもしれぬと考えたが…」
「詳細はわからない…ということですね」
イーサンがぽつりと言葉を落とす。ムルシドの隣に座るトトは、自らの抱える古文書へじっと視線を落とし、何かを探り当てるように深く考え込んでいた。オスカーは微動だにせず、その少女の顔をただ静かに見つめている。
やがて、ムルシドが居住まいを正し、正面を見据えて口を開いた。
「この際だから話しておこう。デュエリアに現れた黄金の鎧のモンスター、そして地球に迫る隕石型のモンスター。これらは古来より我が国では神として崇められてきた存在なのだ」
その衝撃的な事実に、遊次たちは思わず息を呑み、驚きの声を上げた。
「神…ですか。他の精霊と比べても上位の存在であると?」
アリシアが真剣な眼差しで問い質すと、ムルシドは重々しく、深く頷いて答えた。
「精霊世界は人の心より生まれたもの。そして人の心には必ず光と闇、その両方が存在しておる。2体の神はそれらを司る原初の存在。精霊世界はこの2柱の神によって保たれているとも言われておる」
「黄金の鎧の神は『ディヴィヌス・ヴィクトリアーク』という。"勝聖神"とも呼ばれ、人間の善の心が具現化した存在だと考えられている」
「善の神…か」
遊次がどこか冷めた声でぽつりと呟いた。灯は無言のまま、その険しい横顔へと視線を向ける。言葉を交わさずとも、彼が今何を思い浮かべたのかは痛いほどにわかった。ドミノタウンを理不尽に破壊し、人々を地獄の底へと突き落とした存在。それが善を司る神だなどと、到底受け入れられるはずがなかった。
「隕石の神は『オミナギガント・メテオルフォビア』。闇の心より生まれし存在。我々は"悪星神"と呼んでおる」
勝聖神と悪星神。それはあのヘックスすら語らなかった、精霊世界の根幹に関わる未知の伝承だった。静かに耳を傾けていたオスカーが、思考を巡らせるように視線を落とし、興味深そうに言葉を紡ぐ。
「14年前、そのディヴィヌス・ヴィクトリアークが消えて以来、モンスターワールドは闇の勢力が勢いを増し、不安定化している。世界そのものを支える片割れであったとしても不思議ではない」
オスカーの言葉を受け、遊次が思考を巡らせるようにぽつりとこぼす。
「んで、もう片方の"お好み焼き屋を目で追うゴリラ"も、モンスターワールドからいなくなっちまったわけだろ」
「…オミナギガント・メテオルフォビアじゃ」
すかさず、ムルシドが静かな声で冷静に訂正を入れた。遊次は思わず大声を張り上げる。
「覚えられるか!」
「私は一発で覚えたぞ?」
横からアリシアがふっと笑みを浮かべ鼻を鳴らす。
(なんで得意げなの…)
灯は呆れつつ、出かかった言葉をそっと喉の奥へと飲み込んだ。
「と、とにかく!そのなんとかって隕石のモンスターも、モンスターワールドからは消えちまったんだろ。じゃあ、モンスターワールドはどうなるんだよ?」
気を取り直すように声を上げ、腕を組んで再び考え込む遊次。イーサンが彼へ複雑な視線を向ける中、ムルシドはゆっくりと首を横に振って答えた。
「予想はつかぬな。なにせ前例のないことだ。ともかく…地球に迫る悪星神を打ち破らねばこの世界に未来はない。そなたらはその方法を探しに来たというわけだな」
「はい。この国には我々の知らない精霊世界の情報が溢れています。きっと今語ってくださったことも、この国の保有する知識の断片に過ぎないはずです。だからこそ、世界を救うためにはネフカ王国の協力が不可欠だと…」
熱を帯びていたアリシアの言葉は、紡がれるうちに次第に小さくなり、やがてふっと途切れた。これから口にしようとする事と、この国の実態との間にある決定的な矛盾に気づいてしまったのだ。彼女の抱いた違和感をすくい上げるように、イーサンが静かに口を開く。
「問題は、国王であるアスラナクが協力してくれるかどうか、だな。モンスターを人間よりも上位であると考える"絶対派"が、神である悪星神を倒すことに協力してくれるのか…甚だ疑問だな」
その懸念はすでに想定していたというように、ムルシドは間髪入れず深く頷いた。
「まさにそれこそが問題の本質。レイノルズ殿の言うように、絶対派の精霊への信仰は常軌を逸しておる。私も、神を打ち破ろうとするそなたらにアスラナクが協力するとは思えん」
「な…そんなこと言ってる場合じゃねーだろ!世界が滅びちまうんだぞ!?」
遊次がたまらず身を乗り出し、声を張り上げた。だが、ムルシドは表情一つ崩すことなく、落ち着き払った声音で残酷な現実を突きつける。
「絶対派の思想は強固だ。圧倒的に上位の存在である神に抗うぐらいなら、死を選ぶであろう。少なくとも、アスラナクが進んで協力するとは考えづらい」
「だから国王を倒せ…そう言いたいわけですか」
イーサンが冷ややかに言い放つ。その射抜くような鋭い視線を向けられても、ムルシドは表情一つ変えることなく、無言で真っ直ぐに見つめ返した。
「結局はアスラナクと話してみないことには始まらないだろう。あなたが今言ったことも、俺達を革命に利用するための方便って可能性もある」
「イーサン…!」
まるでムルシドを疑うようなイーサンの言葉に、たまらず灯が咎めるように声を上げた。ムルシドは落ち着いた声で言葉を返す。
「そなたらを利用しようとしている…か。あながち間違いではない。アスラナクが王座を奪って以来、私は革命の機を窺ってきた。家族を犠牲にしてでも…な。そんな中、悪星神に立ち向かわんとする者達がネフカへの入国を申し出てきた。我が友、ヘックス殿の使者として」
「悪星神を討つために我が国へ協力を求めるのならば、必ずアスラナクと対立することとなる。この国に革命をもたらす好機は今しかないと確信した。故に私が、アスラナクへ進言したのだ。精霊世界の繁栄に貢献したヘックス殿の意思を尊重し、彼らの入国を許可してはどうかと。むしろ今こそ、精霊の威厳を世界に知らしめる絶好の機会ではないかと、な」
ムルシドの言葉に、部屋の空気が張り詰める。悪星神の接近と、それに抗う者たちの存在。神を絶対視するアスラナクにとって、遊次たちは本来なら門前払いすべき存在だ。しかし、彼らにはヘックスという強大な後ろ盾があった。ネフカ王国とモンスターワールドの繁栄は、間違いなく彼の功績だ。ムルシドはその過去の恩義を巧みに突き、王宮の懐深くから、革命の火種となる遊次たちをこの国へ引き入れてみせたのだ。
アリシアは目を丸くし、声もなくムルシドを見つめた。この男の眼には、最初からアスラナクの打倒しか映っていない。世界が滅びる危機すらも、王を討つための盤上の一手に過ぎないのだ。「利用している」というイーサンの言葉をあっさりと肯定したのも、その凄まじい執念ゆえ。彼の奥底で赤々と燃え続ける革命への信念は、もはや誰にも疑いようのないものだった。
重苦しい沈黙が部屋を満たす中、オスカーが張り詰めた空気を鋭く切り裂いた。
「悪星神を打ち破るためには、この国の膨大なモンスターワールドの知識は必要不可欠。だが絶対派の思想を鑑みれば、協力を得られない可能性が高い。いや、表向きは協力すると言いながら情報を隠し続ければ、アスラナクは意図的に世界を滅亡へ導くことさえできる」
「つまり…"絶対派"の王など、端から頼りにならんということだ」
精霊を神と崇め奉る「絶対派」が頂点に立つ国。その王が、神を滅ぼそうとする自分たちに手を貸す保証など、最初からどこにもない。保証がない以上、彼らの協力を前提とすること自体が間違いだという。
一切の隙もないオスカーの冷徹な結論。遊次は目を見開き、半ば口を開けたまま完全に固まった。複雑に絡み合っていたはずの状況は、恐ろしいほどにシンプルな答えに収束する。選ぶべき道は、もはや一つしか残されていないように思えた。
「どっちみち、アスラナクを倒すしか選択肢はねえってことだな」
オスカーの導いた結論と遊次が口にした言葉が、次々と他の者へと伝播してゆく。それはまるで、長きたゆたいから目覚めたような感覚。視界の靄が晴れていくのがわかる。
怜央が、ギリッと奥歯を鳴らした。その顔には、理不尽に対する抑えきれない怒りがはっきりと浮かんでいた。
「罪もねえ奴らが殺されて、ガキまで命狙われてんだ。アスラナクって野郎が王座にいて得になることは一つもねえ」
彼は忌々しげに吐き捨てると、真っ直ぐに人差し指を突き立てた。そして、地を這うような低い声で、はっきりと宣言する。
「"引きずり下ろし一択"だ」
遊次、そして怜央。彼らの顔つきに、退けない強い覚悟がはっきりと浮かび上がっていく。だが、その熱に当てられることなく、イーサンは険しい顔つきのまま反論の声を上げた。
「王を引きずり下ろすなんて、そんな簡単な話じゃないだろ。ただでさえアスラナクは少数精鋭で国をひっくり返した奴だぞ。しかも軍を従えてるんだ、真っ向から挑んでも勝てるはずがない」
その冷静な指摘に続くように、ずっと俯いていたトトが、弾かれたように顔を上げた。
「…イーサン様のおっしゃる通りですよ。アスラナクに立ち向かうなんて…無謀です!死にたいんですか!?」
その眼差しには、自ら死地に飛び込もうとする者たちを本気で警戒する、鋭い光が宿っていた。必死に声を荒げるトトに対し、遊次は立ち上がり毅然とした声で問う。
「じゃあ、お前はずっと逃げ続けんのかよ」
トトの小さな肩がびくりと跳ねる。
「アスラナクが王でいる限り、お前はこの先ずっと、安心して街も歩けねえんだぞ。日の光も浴びれない。誰とも話せない。ずっとこんなとこに隠れて一生を過ごすのかよ」
「それは…」
トトは反論できず、口ごもる。遊次は彼女から視線を外し、今度はイーサンへと真っ直ぐに向き直った。
「女の子1人守れねえで…世界なんか守れっかよ」
イーサンは目を細め、一瞬だけふっと視線を逸らす。やがて、短く息を吐き出してから言葉を返した。
「…そうだよな。お前は、そういう奴だ。昔から」
そして彼は、すべての迷いを振り払うようにしっかりと前を向く。
「どんなに止めようが、お前らは止まらない。だから、お前らを守るために戦うしかない。そのために俺はこの国に来たんだ」
張り詰めていた空気が緩み、遊次の口元にふっと笑みがこぼれる。その隣へ歩み寄った灯も、小さなトトへと真っ直ぐに向き直った。
「政治家でもない私達がここに来たのは、こういう時のためだよ」
言葉とともに、灯は横に立つ遊次の肩をポンと叩く。
「この人はヴェルテクス・デュエリアの本戦で戦えるぐらい強い人。それとこの人は、そんな遊次に1回勝ってる人」
彼女の視線と指先は、静かに足を組んで座るオスカーへと向けられる。灯が安心させるような優しい笑みを浮かべると、今度は遊次が灯の肩をぐっと引き寄せ、トトへ向かってニカッと笑いかけた。
「そういうコイツも、めちゃくちゃ強いんだぜ!怒らせたら俺でも勝てないかもな。もちろん怜央とイーサンも、デュエルでスゲー修羅場潜って来てる。七使徒だかなんだか知らねーけど…負けねえよ、絶対」
その圧倒的なまでの自信を浴び、トトは丸メガネの奥の目を丸くして押し黙った。一国を前にしても、彼らの態度には微塵の揺らぎもない。その事実だけで、彼らの語る"修羅場"がいかに常軌を逸したものだったか、幼い彼女にも容易に想像がついた。
遊次達に揺れる瞳を向けながら、ムルシドは感慨深く言葉を紡ぐ。
「いくらヘックス殿の使節とはいえ、トトを任せられるかは会ってみなければわからなかった。だが今なら断言できる。トトを救えるのは…そなたらしかいない」
遊次はムルシドと視線を交わす。そして再び胸の内で覚悟を決めた。だが、その熱を帯びた空気の中で、アリシアだけは険しい表情を崩さなかった。彼女は遊次を真っ直ぐに見据え、厳しく忠告する。
「言っておくが、アスラナク王との謁見を諦めるつもりはない。我々はそのために来たのだ。それにデュエリアを背負っている以上、革命など口にすることも許さん。国際問題を起こすつもりか。勝手に決めるな」
畳み掛けるようなアリシアの言葉に、遊次も負けじと声を張り上げる。
「でもよぉ!トトを守るためには戦うしかねーだろ!」
「だからといって革命を起こすなどという結論は飛躍しすぎだ。そもそも、他国の事情に外国人が口を挟むべきでない。いいか、勝手な真似をした者はデュエリアへ帰す。それが政府としての命令だ」
アリシアの頑なな態度に、遊次はギリッと強く奥歯を噛み締めた。ムルシドもまた口を固く結び、ひどく険しい顔つきになっている。せっかく掴みかけた革命の機が、今まさに眼の前で失われようとしているのだ。その胸中が穏やかであるはずもなかった。
「所詮"お役人様"か。くだらねえ」
苛立ちを隠そうともせず、怜央が大きく舌打ちをして吐き捨てる。しかしイーサンはどこか安堵した様子で、息を吐いた。
「なんとでも言え。とにかく、まずは国王との謁見だ」
怜央の刺々しい言葉を冷たくあしらい、アリシアは淡々とムルシドへ向き直る。
「ムルシド殿、当初の予定通り、王宮へと…」
アリシアが言葉を続けようとしたその瞬間、静かに座っていたオスカーが急に立ち上がり、背後を振り返った。そのただならぬ動きに、遊次たちも一斉に彼と同じ方向へと視線を向ける。だが、そこにあるのは無機質な石造りの壁と、先ほど自分たちがくぐり抜けてきた足元の小さな穴だけだった。
直後、ドォンと重い音が室内に響き渡った。
壁の向こう側から、何者かが力任せに石を叩きつけている。
不気味な打撃音に、トトがびくりと肩を跳ねさせ、怯えた様子ですぐさまムルシドの背後へと身を隠した。遊次たちは即座に身構え、音の鳴る壁へと射抜くような視線を突き刺した。
ムルシドが大きく目を見開き、血相を変えてトトへと視線を飛ばす。
「まずい…!トト、奥の部屋に隠れろ!」
トトは無言でこくりと頷いた。小さな背中を翻し、古文書を抱いて部屋のさらに奥へと一目散に駆け込んでいく。逃げる彼女を急き立てるように、壁の向こう側からは重い打撃音が何度も響き続ける。石を打ち据える鈍い音が鳴り響くたび、頑強な壁にはピキッと亀裂が走り、そのヒビはみるみるうちに大きく広がっていった。
そして頑強だった壁が、ついに轟音とともに砕け散った。視界を遮る粉塵の向こう側から、鈍い光を反射する鎧を纏った十数人の兵士たちが姿を現した。彼らは殺気を孕んだ動きで、一斉に部屋へと踏み込んでくる。
殺気立った兵士たちの中心で、一際異彩を放つ男が立っていた。短く刈り上げた薄緑色の髪に、褐色肌の引き締まった顔。顎には短く整えられた髭を蓄えている。威圧感を放つ漆黒の重厚な甲冑を纏い、太い腕を誇示するように前で組んでいた。
キャラデザイン:ttps://imgur.com/a/6Gx0Vb4
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
その男が、粉塵の中で不敵な笑みを浮かべ、部屋の奥にいるムルシドたちへと視線を向ける。そして、余裕を滲ませた低い声音で口を開いた。
「おやおや、これはムルシド殿。それに…後ろの方々はデュエリアからの使節でしょう。何故このような狭苦しい部屋に?」
「暫し、彼らとの情報共有をしていたまでだ」
ムルシドは胸の内の動揺を押し殺し、あくまで落ち着いた声で返答した。だが、黒い鎧の男は間髪入れずに切り込んでくる。
「アスラナク様を差し置いて、か?」
射抜くような鋭い視線に、ムルシドは一瞬言葉を失う。すかさず、黒い鎧の男が冷酷に言葉を重ねた。
「おっと、これは"痛い"所を突いたかな?貴方がこの辺りに度々出入りしていたのは知っていた。何やら怪しいと思っていたが、もしや…禁忌に触れた少女を匿っているなどということはないだろうな?」
図星を突かれ、遊次は心臓が跳ね上がるのを覚えた。だが、表情の筋肉を固く引き結び、顔には一切の動揺を出さずに立ち尽くす。
「匿う?なぜ私がそのようなことを?」
ムルシドが再び言葉を返す。しかし、黒い鎧の男はそれに取り合うことなく、無言で周囲の兵士たちへ目配せをした。
重い金属音を鳴らし、兵士たちがいっせいにこちらへと歩みを進めてくる。遊次たちは警戒心を露わにしながら、トトが逃げ込んだ奥の部屋の入り口を背中で庇うように、ゆっくりと後ずさった。黒い鎧の男はその微かな動きを見逃さず、確信に満ちた笑みを浮かべた。
「なるほど、その部屋にいるのか」
兵士たちが一斉に踏み込んでくる。ムルシドの顔に一瞬の激しい葛藤が走るが、迷っている猶予はなかった。彼は弾かれたように背後を振り返り、遊次たちへ向かって怒鳴る。
「奥の部屋の床から地下道に抜けられる!あの子を連れて逃げろッ!」
その叫びが引き金となった。遊次たちが奥の部屋へ向かって駆け出すのと同時に、鎧の兵士たちが猛然と突っ込んでくる。先頭の兵士たちが、立ち塞がるムルシドに飛びかかり、その体を取り押さえた。
「ムルシドさんッ!!」
力ずくで押さえ込まれる姿に、遊次は思わず足を止める。複数人に羽交い締めにされながらも、ムルシドは必死に顔を上げ、声を振り絞った。
「"ギルド"に向かえ!!私の仲間がそこにいる!!」
遊次は悔しさに顔を歪めるが、ギリッと歯を食いしばると、意を決して再び奥の部屋へと駆け込んだ。部屋の中では、すでにトトが重い石の床板をずらし、暗い地下道への入り口を開け放っていた。
「ムルシド様は!?」
トトが切迫した表情で問い詰める。遊次は部屋の外から迫る足音に視線をやり、ひどく険しい顔で告げた。
「逃げるぞ、トト!」
その短い言葉に込められた現実を悟り、トトは苦しげに顔を歪める。そして、諦めるように無言でこくりと頷いた。遊次は不安げな瞳を揺らす彼女の小さな体をしっかりと抱きかかえると、地下道へと続く鉄の梯子を素早く下りていく。怜央たちもすぐさまそれに続いた。
暗く狭い通路を急ぐ中、遊次の脳裏には兵士に力ずくで押さえ込まれていたムルシドの姿が焼き付いて離れなかった。彼を助けられなかった悔しさに、ギリッと強く奥歯を噛み締める。そして、彼が最後に叫んだ言葉の謎を必死に頭の中で巡らせた。
「"ギルド"ってなんだ…!?どこに行けばいいんだ…!」
すると、腕の中に抱きかかえられていたトトが、遊次を見上げて言った。
「私、ギルドの人達を知っています!でも、どこにいるかは…」
答えが見えず思考にもやがかかる中、頭上の穴からはガチャガチャと重厚な鎧がぶつかり合う音が響いてきた。兵士たちはもうすぐそこまで追ってきている。立ち止まって考える暇などない。
遊次たちは梯子を急いで下り、地下道へと降り立った。そこは石造りのひらけた空間で、複数人が横に並んで歩けるほどのゆったりとした道幅があった。アーチ状の天井は高く、壁に点在する微かな明かりが、ひんやりとした空気の漂う通路の先までをぼんやりと照らし出している。古くから密会に使われたという部屋だ。人知れず街へと抜けるための隠し通路も用意されていたのだろう。
遊次は微かな明かりが照らす先を目指して駆け出した。灯、アリシア、怜央、オスカーがそれに続き、イーサンが最後尾につく。そして彼らの背後では、重い金属音を響かせながら、鎧を纏った兵士たちが次々と降り立ち、猛然と後を追ってきていた。
通路はどこまでも続いている。トトを抱えながら走る遊次が、忌々しげに後ろを振り返った。重装備のはずの屈強な兵士たちは、すでにすぐそこまで迫っている。
「クッソぉッ!!キリねえぞ!」
苦悶の表情で遊次が叫ぶ。灯や怜央もどうすればいいのかわからず、ただ無我夢中で足を動かし続ける。最後尾のイーサンは、走りながら背後の兵士たちへと鋭い視線を送っていた。
「待て異人達よ!その娘は重大な過ちを犯した罪人だ!こちらへ明け渡せ!」
先頭を駆ける5人の銀鎧の兵士たち。そのさらに奥から、黒い鎧を纏った薄緑色の髪の男が声を張り上げた。だが、遊次たちはその言葉に一切答えることなく、前を見据えて走り続けた。
「命令を無視するか!このままではそなたらも反逆罪だ!"痛い"目に遭いたくなければ今すぐその娘を渡せ!」
背後からの容赦ない警告に、走りながらアリシアが苛立ちも露わに叫んだ。
「あぁ、もう!なぜこんなことに…!」
入国して早々、反逆者として追われる身となってしまった。その理不尽な状況にアリシアの表情は険しい。だが、猛然と迫る武装した兵士たちへ、ただ怯えるだけの幼い少女を引き渡すことなど、これまで中立の立場を重んじてきた彼女であってもできるはずがなかった。奥歯を強く噛み締め、アリシアは迷いを振り切るように遊次の背中を追って走り続けた。
地下道を走り始めて3分。暗い通路は延々と続き、地上へと繋がる出口は一向に見えてこない。遊次や灯の荒い息遣いが反響し、その足取りは目に見えて鈍り始めていた。一方、背後に迫る兵士たちは重厚な鎧を身につけているにも関わらず、日々の鍛錬ゆえか、その歩みをほとんど緩める気配がない。
「このままじゃ追いつかれるッ!!」
灯が悲痛な声を上げる。最後尾を走るイーサンは、背後へ鋭い視線を送りながら冷静に口を開いた。
「奴らを足止めするにしても、人数が多すぎる。兵を指揮する奴にオースデュエルで勝てば、機能停止させられるかもしれないが…」
「でもそれじゃ、誰か1人がここに残ることに…」
灯が顔を強張らせる。誰か一人を置いていくことなど到底受け入れがたい。だが、このまま走り続けても追いつかれるのは明白だった。焦燥を察し、怜央が走りながら前を見据えたまま言い放つ。
「あの黒い鎧の奴は、街で副指揮官って呼ばれてた。偉そうにしてたし、明らかにアイツが兵を仕切ってるだろうぜ」
それは、誰かが残ってあの黒鎧の男と戦うしかないという事実の提示だった。すると他の者が言葉を返すより早く、最後尾を走っていたイーサンが不意に足を止めた。石畳を強く蹴り、猛然と迫る兵士たちへと単身で向き直る。
「イーサンッ!?」
遊次が弾かれたように振り返り、声を張り上げた。一目散にイーサンへと殺到してくる鎧の兵士たち。イーサンは肩越しに振り返り、短く告げた。
「言っただろ、お前達を守るためにこの国へ来たと。…俺なら大丈夫だ。行けッ!」
遊次の顔に、痛切な迷いと葛藤が浮かぶ。強く歯を食いしばると、意を決して再び前を向き、薄暗い通路の奥へと全力で駆け出していった。
イーサンは流れるような動作で左腕にデュエルディスクを装着し、それを高々と掲げた。
地鳴りのような足音を立てて迫る兵士たち。その先頭を駆ける黒鎧の副指揮官は、たった一人で通路に立ち塞がる男の姿に警戒心を露わにし、鋭く目を細める。直後、ひんやりとした薄暗い地下道に、場違いなほど無機質な機械音声が鳴り響いた。
≪強制オースデュエル発動≫
「何ッ!?」
突如として空間に生み出され、波紋のように広がって迫り来る赤い光の輪。その未知なる現象を前に、猛進していた兵士たちはたまらず急ブレーキをかけ、その場に立ち止まった。
強制オースデュエル。本来は国連に認められた軍や警察といった公的機関のみに行使が許される強権だ。かつての戦いでニーズヘッグに濫用されたその権限を、この国へ入るにあたり、オスカーを除くメンバーも与えられていたのだ。当然、国連の認可など通さずにオスカーの独断で。
赤い光の輪に囚われた副指揮官の左腕で、デュエルディスクが警告のように点滅を繰り返す。イーサンは彼を真っ直ぐに見据え、落ち着き払った声で告げた。
「世界デュエル憲章がある以上、俺とそこの副指揮官とのオースデュエルは、何人たりとも妨げることはできない」
オースデュエルへの物理的な介入は、絶対の法である『世界デュエル憲章』によって固く禁じられている。万が一力ずくで妨害すれば、デュエルディスクに搭載されたAIであるDDASが、世界のあらゆるシステムを掌握し、最悪の場合は国際機関の介入すら招きかねない。その圧倒的な拘束力が、兵士たちからイーサンへ手出しする術を完全に奪っていた。
「まさか、このような強硬手段に出て来るとは…痛恨の極み。だが私以外の兵士の行動を縛ることはできぬはず。追え、お前らッ!」
瞬時に状況を呑み込んだ副指揮官が、背後の兵士たちへ鋭い怒号を飛ばす。命令を受けた兵士たちはイーサンを迂回し、遊次たちを追って再び薄暗い通路の奥へと走り出した。
複数の重い足音が遠ざかり、やがて地下道にひんやりとした沈黙が落ちる。微かな明かりの中に取り残されたのは、静かに対峙するイーサンと、漆黒の鎧を纏う副指揮官の二人だけだった。
「お前、副指揮官らしいな。まずは権限を開示してもらおうか」
言葉と同時にイーサンのデュエルディスクから光が放たれ、薄暗い通路に青白いソリッドヴィジョンのウィンドウが展開された。そこに映し出されたのは、強制オースデュエルのシステムによって可視化された、目の前の男の権限だ。
イーサンは画面に並ぶ文字列を素早く目で追った。
「セヘジュ・メンカフ」という名前の下には"アザン軍副指揮官"と書かれている。
(現場での兵の指揮がアイツの持つ権限か。永久に兵士の動きを封じることはできないが、少なくとも足止めはできるはずだ)
黒い鎧の男は副指揮官。つまりその上に軍を統括する者が存在することを意味する。相手に要求できる契約は、あくまでこの男に与えられた権限の範囲内に限られる。もし軍全体を停止させるならば、指揮官に対してオースデュエルを仕掛け勝利する必要があるだろう。だが少なくとも副指揮官は現場を指揮できるため、その範囲内であれば他の兵士の動きを制限する契約を提示することが可能だ。
イーサンはホログラムのウィンドウを閉じ、副指揮官を鋭く見据えた。
「俺が提示する契約は、遊次達を追った兵士の動きを止めることだ」
副指揮官はわずかに顎を上げ、見下ろすような視線で冷静に応じた。
「強制オースデュエルもまた、世界デュエル憲章に則っているのだろう。ならばこちらも平等の契約を提示できる。私が提示する契約は、お前の身柄の確保だ。私が勝てば、いずれにしても他の者達を捕まえるのも時間の問題だしな」
「…いいだろう」
イーサンは短く答え、その要求を真っ向から受け入れた。
「わかっているのか?お前達は王国に牙を剝く反逆者だ!いまさら謁見など叶うと思うな!全員捕らえて、アスラナク様に献上するまで!」
男の怒号が薄暗い地下道に反響する。ここで敗北すれば、イーサン自身はおろか、先行した遊次たちやトトまでもが確実に捕らえられ、最悪の結末を迎えることになる。決して負けは許されない、これまでのデュエルとは比較にならないほど重い、命懸けの戦いだ。
イーサンは退路を断った覚悟の眼差しで相手を真っ直ぐに見据え、デュエルディスクを装着した左腕を力強く掲げた。
「見えた!出口だ!」
薄暗い地下道の先に、一条の光が上方から差し込んでいる。トトを抱きかかえて走る遊次の目に、地上へと続く梯子が飛び込んできた。一方、走りながら背後を振り返ったオスカーの視線の先では、重装備の兵士たちが全く勢いを落とすことなく、無慈悲な足音を響かせて迫ってきている。
その絶望的な状況を測り、オスカーは冷徹なまでに落ち着いた声で告げた。
「逃げ続けることはできん。イーサン・レイノルズが兵を機能停止させるまで、身を隠してやり過ごすしかあるまい」
「…あぁ。でも、隠れるっつってもな…」
荒い息を吐きながら、遊次は険しい顔つきで梯子に手をかける。その腕の中にすっぽりと収まるトトは、片手で古文書をぎゅっと抱きしめたまま、真剣な眼差しで遊次を見上げて口を開いた。
「私、身を隠す場所ならよく知っています。何ヶ月も兵士達と"かくれんぼ"をして来ましたから」
「…そうか、そりゃ心強ェ。頼んだぜトト!」
その言葉に、遊次はふっと皮肉めいた笑みをこぼした。そして、トトをしっかりと抱え直すと、力を込めて梯子を上り始めた。
対峙するイーサンとアザン軍副指揮官「セヘジュ」。
2人の間に、乾いた機械音声が鳴り響く。
「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」
プレイヤー1:イーサン・レイノルズ
条件①:アザン軍兵士に対し、神楽遊次およびその同行者を追うことを禁ずる。
(ただしこの契約は、アザン軍指揮官"アザン・ヤダフ"の命令においては適用されない)
プレイヤー2:セヘジュ・メンカフ
条件①:イーサン・レイノルズの身柄に関する一切の処遇は、セヘジュ・メンカフに一任されるものとする。
詳細な契約内容は、ソリッドヴィジョンの契約書として両者の前に浮かび上がる。そこには一切の別の解釈の余地がないほどに徹底された文章が記載されており、承認した時点で、完全なる両者の意図通りの契約にしかならないようになっている。
イーサンとセヘジュは指でソリッドヴィジョンの契約書にサインを行うと、DDASがオースデュエルの開始を宣言する。
「契約内容を承認します。デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」
イーサンと副指揮官セヘジュは、声を揃えて決闘を宣言する。
「デュエル!」
第81話「禁忌を抱く少女」 完
副指揮官セヘジュのデッキは、痛みを力へと変換するテーマ「ペインチャージャー」。
イーサンと同じくカウンターを使用し、万全の盤面を作り上げる。
対するイーサンの脳裏には、追っ手から逃げ続ける遊次達の背中が浮かぶ。
もたつけばデュエルの決着よりも先に遊次達が捕まってしまう。
そうなれば命の保証などない。
イーサンの覚悟は唸る雷鳴となり、フィールドへと出力される。
「こんなところで足を取られている時間はない。
"一撃"で全て焼き尽くす…!」
次回 第82話「痛恨の一撃」
| 現在のイイネ数 | 16 |
|---|
↑ 作品をイイネと思ったらクリックしよう(1話につき1日1回イイネできます)
同シリーズ作品
| イイネ | タイトル | 閲覧数 | コメ数 | 投稿日 | 操作 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 95 | 第1話:なんでも屋「Next」 | 1027 | 2 | 2023-03-25 | - | |
| 121 | 第2話:妖義賊(ミスティックラン) | 830 | 0 | 2023-03-25 | - | |
| 92 | 第3話:相棒 | 770 | 0 | 2023-03-25 | - | |
| 86 | 第4話:動き出す影 | 667 | 0 | 2023-03-26 | - | |
| 92 | 【カードリスト】神楽 遊次 | 973 | 0 | 2023-03-26 | - | |
| 92 | 第5話:大災害「コラプス」 | 786 | 0 | 2023-03-27 | - | |
| 95 | 第6話:2000万のプライド | 667 | 0 | 2023-03-27 | - | |
| 102 | 第7話:悪しきを挫く至高の剣士 | 866 | 0 | 2023-03-29 | - | |
| 83 | 第8話:解き放たれた猟犬 | 638 | 0 | 2023-03-29 | - | |
| 87 | 第9話:陸・空・海を統べる者 | 609 | 0 | 2023-03-31 | - | |
| 92 | 第10話:悪しき魂を塗り潰す彩 | 627 | 0 | 2023-04-01 | - | |
| 122 | 【カードリスト】花咲 灯 | 850 | 0 | 2023-04-02 | - | |
| 96 | 第11話:番犬の尾を踏んだ日 | 737 | 0 | 2023-04-02 | - | |
| 93 | 第12話:雷の城塞 | 761 | 0 | 2023-04-04 | - | |
| 94 | 第13話:平穏を脅かす者に裁きを | 594 | 0 | 2023-04-06 | - | |
| 87 | 【カードリスト】イーサン・レイノルズ | 652 | 0 | 2023-04-07 | - | |
| 111 | 第14話:決戦前夜 | 803 | 0 | 2023-04-09 | - | |
| 107 | 【お知らせ】お久しぶりです。 | 1787 | 2 | 2024-02-09 | - | |
| 79 | 第15話:爆焔鉄甲(スチームアーミー) | 795 | 2 | 2025-01-06 | - | |
| 72 | 第16話:魂の衝突 | 700 | 2 | 2025-01-13 | - | |
| 75 | 第17話:EDEN TO HELL | 620 | 0 | 2025-01-22 | - | |
| 86 | 第18話:憤怒の白煙 | 700 | 1 | 2025-01-29 | - | |
| 63 | 第19話:天に弧を描く義の心 | 536 | 2 | 2025-02-05 | - | |
| 57 | 第20話:To The Next | 622 | 1 | 2025-02-12 | - | |
| 67 | 【カードリスト】鉄城 怜央 | 586 | 0 | 2025-02-12 | - | |
| 60 | 第21話:踏み出す1歩目 | 485 | 0 | 2025-02-19 | - | |
| 64 | 第22話:伸し掛かる天井 | 604 | 0 | 2025-02-26 | - | |
| 62 | 第23話:壁に非ず | 538 | 0 | 2025-03-05 | - | |
| 55 | 第24話:滅亡へのカウントダウン | 615 | 0 | 2025-03-12 | - | |
| 50 | セカンド・コラプス編 あらすじ | 606 | 0 | 2025-03-12 | - | |
| 77 | 第25話:アクセラレーション! | 613 | 0 | 2025-03-19 | - | |
| 49 | 第26話:虹色のサーキット | 557 | 3 | 2025-03-26 | - | |
| 43 | 第27話:ふたりの出会い | 379 | 0 | 2025-04-02 | - | |
| 53 | 第28話:親と子 | 372 | 0 | 2025-04-09 | - | |
| 82 | 第29話:心の壁 | 550 | 0 | 2025-04-16 | - | |
| 50 | 第30話:無償の愛 | 432 | 0 | 2025-04-23 | - | |
| 61 | 第31話:開幕 ヴェルテクス・デュエリア | 594 | 0 | 2025-04-30 | - | |
| 57 | 第32話:究極の難題 | 629 | 0 | 2025-05-07 | - | |
| 60 | 第33話:願いの炎 | 539 | 0 | 2025-05-14 | - | |
| 74 | 第34話:ただそれだけ | 631 | 0 | 2025-05-21 | - | |
| 53 | 第35話:シークレット・ミッション | 414 | 0 | 2025-05-28 | - | |
| 55 | 【カードリスト】七乃瀬 美蘭 | 531 | 0 | 2025-05-28 | - | |
| 71 | 第36話:欲なき世界 | 493 | 0 | 2025-06-04 | - | |
| 55 | 第37話:禅問答 | 485 | 0 | 2025-06-11 | - | |
| 59 | 第38話:紅と蒼の輪舞 | 354 | 0 | 2025-06-18 | - | |
| 60 | 第39話:玉座 | 465 | 0 | 2025-06-25 | - | |
| 56 | 第40話:"億"が動く裏世界 | 564 | 0 | 2025-07-02 | - | |
| 48 | 第41話:生粋のギャンブラー | 395 | 0 | 2025-07-09 | - | |
| 64 | 第42話:運命のコイントス | 459 | 0 | 2025-07-16 | - | |
| 63 | 第43話:王選(レガルバロット) | 495 | 0 | 2025-07-23 | - | |
| 50 | 第44話:願いの芽を摘む覚悟 | 441 | 2 | 2025-07-30 | - | |
| 56 | 第45話:答え | 387 | 0 | 2025-08-06 | - | |
| 58 | 第46話:潜入作戦 | 427 | 0 | 2025-08-13 | - | |
| 62 | 第47話:心の象徴 | 395 | 0 | 2025-08-20 | - | |
| 61 | 第48話:繋ぐ雷電 | 452 | 0 | 2025-08-27 | - | |
| 50 | 第49話:帳が上がる時、帳は下りる | 440 | 3 | 2025-09-03 | - | |
| 59 | 第50話:影を焼き尽くす暁光 | 380 | 0 | 2025-09-10 | - | |
| 59 | 第51話:夜明け | 434 | 0 | 2025-09-17 | - | |
| 59 | 第52話:決闘眼(デュエル・インサイト) | 433 | 0 | 2025-09-24 | - | |
| 62 | 第53話:命の使い方 | 422 | 0 | 2025-10-01 | - | |
| 52 | 第54話:不可能への挑戦 | 425 | 3 | 2025-10-08 | - | |
| 44 | 第55話:たとえ、この命が終わっても | 326 | 0 | 2025-10-15 | - | |
| 54 | 【カードリスト】虹野 譲 | 416 | 0 | 2025-10-15 | - | |
| 63 | 第56話:交わる運命 | 403 | 0 | 2025-10-22 | - | |
| 46 | 第57話:降り掛かる真実 | 343 | 0 | 2025-10-29 | - | |
| 66 | 第58話:畏怖を纏う死兵 | 343 | 0 | 2025-11-05 | - | |
| 53 | 第59話:世界の敵 | 297 | 0 | 2025-11-12 | - | |
| 60 | 【カードリスト】オスカー・ヴラッドウッド | 339 | 0 | 2025-11-12 | - | |
| 46 | 第60話:変わらないもの | 382 | 0 | 2025-11-19 | - | |
| 42 | 第61話:花の仮面 | 299 | 0 | 2025-11-26 | - | |
| 37 | 第62話:鎖を絶つ獣 | 289 | 0 | 2025-12-03 | - | |
| 53 | 第63話:愚者の道 | 349 | 0 | 2025-12-10 | - | |
| 36 | 第64話:At a Crossload | 263 | 0 | 2025-12-17 | - | |
| 35 | 第65話:チェーン・ゼロ | 263 | 0 | 2025-12-24 | - | |
| 70 | 【カードリスト】鄭 紫霞 | 349 | 0 | 2025-12-24 | - | |
| 43 | 第66話:正反対の、似た者同士 | 327 | 0 | 2025-12-31 | - | |
| 43 | 第67話:約束という名の呪い | 355 | 0 | 2026-01-07 | - | |
| 40 | 第68話:夢を照らす灯り | 282 | 1 | 2026-01-14 | - | |
| 31 | 第69話:天界眼(ヘヴンアイズ) | 200 | 0 | 2026-01-21 | - | |
| 31 | 【カードリスト】ルーカス・ヴラッドウッド | 228 | 0 | 2026-01-26 | - | |
| 38 | 第70話:三つ巴 | 269 | 0 | 2026-01-28 | - | |
| 35 | 第71話:次元の塔 | 239 | 0 | 2026-02-04 | - | |
| 45 | 第72話:ノブレス・オブリージュ | 237 | 0 | 2026-02-11 | - | |
| 36 | 第73話:リミット | 210 | 0 | 2026-02-18 | - | |
| 36 | 第74話:悪魔の心臓 | 233 | 0 | 2026-03-11 | - | |
| 25 | 第75話:正しき未来 | 168 | 0 | 2026-03-18 | - | |
| 28 | 第76話:譲り受けた魂 | 326 | 0 | 2026-03-25 | - | |
| 41 | 第77話:『信じる』 | 210 | 0 | 2026-04-01 | - | |
| 30 | 第78話:神の国 | 157 | 0 | 2026-04-08 | - | |
| 16 | 第79話:旅立ち | 258 | 0 | 2026-04-15 | - | |
| 20 | ネフカ王国編 あらすじ | 398 | 0 | 2026-04-17 | - | |
| 23 | 第80話:手厚い"歓迎" | 129 | 0 | 2026-04-22 | - | |
| 16 | 第81話:禁忌を抱く少女 | 139 | 0 | 2026-04-29 | - | |
| 19 | 第82話:痛恨の一撃 | 107 | 0 | 2026-05-06 | - | |
| 2 | 第83話:宣戦布告 | 45 | 1 | 2026-05-13 | - |
更新情報 - NEW -
- 2026/04/27 新商品 CHAOS ORIGINS カードリスト追加。
- 05/15 09:56 評価 10点 《霊王の波動》「ドミナスシリーズの1枚、現状ほぼ満場一致でドミ…
- 05/15 09:27 評価 10点 《世海龍ジーランティス》「素材がとてつもなく緩い汎用リンク4、…
- 05/15 08:20 評価 8点 《砂塵の大嵐》「魔法罠2枚を破壊できる・・・と使い勝手のいい効…
- 05/15 07:30 評価 10点 《異国の剣士》「彼は攻守共に決して高くはないですが、物事を深…
- 05/15 07:17 評価 10点 《竜の精神》「発動条件に攻守どちらかの元々の数値が2500のモン…
- 05/15 02:29 評価 9点 《ジュークジョイント“Killer Tune”》「チューナーの召…
- 05/15 02:25 評価 6点 《真竜魔王マスターP》「誘発ケアもできるがリリース三体を要求す…
- 05/15 02:20 評価 8点 《鳴いて時鳥》「MDのダイスラリーで報酬のSR枠に選出された一枚。…
- 05/15 02:17 評価 9点 《見えざる神ゼノ》「オンラインオリパガチャ。バロネスとかを奪え…
- 05/15 01:26 掲示板 過度な荒らしに対する削除依頼板
- 05/15 00:11 評価 5点 《オルターガイスト・フィジアラート》「ファンデッキを蔑ろにして…
- 05/15 00:10 評価 5点 《オルターガイスト・フィフィネラグ》「ファンデッキを蔑ろにして…
- 05/15 00:10 評価 5点 《オルターガイスト・ピクシール》「ファンデッキを蔑ろにしてると…
- 05/15 00:10 評価 5点 《オルターガイスト・キードゥルガー》「ファンデッキを蔑ろにして…
- 05/15 00:09 評価 5点 《オルターガイスト・フェイルオーバー》「ファンデッキを蔑ろにし…
- 05/15 00:09 評価 5点 《オルターガイスト・ドラッグウィリオン》「ファンデッキを蔑ろに…
- 05/15 00:08 評価 5点 《オルターガイスト・ホーンデッドロック》「ファンデッキを蔑ろに…
- 05/15 00:08 評価 5点 《オルターガイスト・カモフラージュ》「ファンデッキを蔑ろにして…
- 05/15 00:08 評価 6点 《オルターガイスト・リバイタリゼーション》「ファンデッキを蔑ろ…
- 05/15 00:07 評価 6点 《オルターガイスト・ペリネトレータ》「ファンデッキを蔑ろにして…
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
CHAOS ORIGINS

LIMIT OVER COLLECTION -THE RIVALS-
ザ・ヴァリュアブル・ブックEX6
LIMIT OVER COLLECTION -THE HEROES-
BLAZING DOMINION
THE CHRONICLES DECK 精霊術の使い手
遊☆戯☆王OCG STORIES 6巻
PREMIUM PACK 2026
DUELIST BOX -PRISMATIC SUMMON-
遊☆戯☆王OCGストラクチャーズ 11巻
TERMINAL WORLD 3
BURST PROTOCOL
THE CHRONICLES DECK-白の物語-
WORLD PREMIERE PACK 2025
LIMITED PACK GX -オシリスレッド-




遊戯王カードリスト
遊戯王カード検索
遊戯王カテゴリ一覧
遊戯王デッキレシピ
闇 属性
光 属性
地 属性
水 属性
炎 属性
風 属性
神 属性