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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第78話:神の国

第78話:神の国 作:

「勝者、神楽遊次。契約に基づき、ニーズヘッグ・エンタープライズに対し、セカンド・コラプス計画の破棄を命じます」

乾いた機械音だけが、ホールに響き渡る。

オーケストラホールを、しんとした静寂が満たしていく。
目前の結末を認められぬ者たちの、沈黙。
同時にそれは、やがて爆ぜる歓喜を待ち侘びる、深い呼吸でもあった。

灯、イーサン、怜央の3人は顔を見合わせる。
これが現実の光景であることを確かめるように。

静寂は長くはもたなかった。
内側から溢れる歓喜に押し広げられるように、灯の顔にぱっと笑顔が咲く。

「遊次っ…!」

ステージの方へ駆け寄ろうとした灯は、すぐに足を止めた。
その視線の先で遊次は、最後の一撃を受け、倒れているオスカーに真っ直ぐ向いていたからだ。

「…ったく、スカしたツラでとんでもねえ罠仕掛けやがって。普通ならあんなの気付かねえぜ」

遊次はオスカーの方へと歩みを進める。

「だが、貴様は固定概念の檻を破ってみせた。俺の敗北だ」

オスカーは身を起こし、言葉を返す。
称賛の言葉に対して、遊次は満足げな笑みを浮かべている。

灯やアリシアは、その光景をただあっけにとられて見つめていた。激闘の末に彼らが口にしたのは、世界の行く末についてではなく、ただ純粋に、互いの強さを認め合う決闘者としての言葉だった。

そんな中、ハイドがおもむろに手を打ち、無遠慮な拍手をホールに響かせた。

「素晴らしいデュエルだった!しかし勝負の感傷に浸っているところ悪いが、これからのことについて話し合わないかね?」

ハイドがホールの壁際へ視線を向ける。そこには、言葉を失ったルーカスたちが立ち尽くしていた。彼らは複雑な面持ちで顔を見合わせ、中央へと歩み寄っていく。

遊次はハイドの方へ向き直った。

「俺らが勝ったってことは、約束通り政府は俺らと一緒に、誰も犠牲にしない道を探してくれるってことでいいんだよな?」

「あぁ、勿論。二言はないさ」

ハイドは余裕の笑みを湛えるが、対する遊次の眼差しには不信感が色濃く残っている。その視線を真正面から受け、ハイドはさらに言葉を継いだ。

「鍵は君達が3つ、ニーズヘッグが3つ、所有権を有している。鍵の位置はGPSによって政府が把握できるが…ニーズヘッグが厳重に管理しているのだろう?物理的に奪うことなど不可能だ。安心してくれたまえ」

遊次は少しの間沈黙した後、己を納得させるように何度か頷いた。

「…そうだな。まあアンタらも世界を救いたいと思ってるのは間違いないだろうし、信用するぜ、大統領よ」

ハイドは何も答えず、ただ静かに佇んでいる。重苦しい静寂を破り、ルーカスが言葉を絞り出した。

「本当に、あると思ってるのか?"誰も犠牲にしない未来"とやらが」

その表情には不信感が貼り付き、行き場のない焦燥と怒りが瞳の奥で揺れている。しかし食ってかかるような問いを、怜央は冷徹に突き放した。

「イヤだろうが従ってもらうぜ。テメェらに他に道はねえんだ。悔しけりゃ、負けた自分を恨めよ」

「…恨むさ。死ぬ程な」
ルーカスは拳を白くなるまで握り締め、低く呟いた。そして、意を決したように傍らのオスカーを仰ぎ見る。

「どうする、兄さん」

オスカーは黒いマントを鮮やかに翻し、舞台の下へとしなやかに跳び下りた。

「実現するしかあるまい。犠牲なき未来を」

言い切るその瞳に、もはや迷いの色は微塵もない。そのあまりの潔さからか、美蘭は大きく息を吐いて肩の力を抜いた。

「…ま、アタシは最初っからオスカー様についていくってキメてるし。オスカー様がそういうなら、クヨクヨしててもしょーがないよね!」

あっけらかんとする美蘭に対し、ジェンは無言で真っ直ぐに前を見据えている。

舞台上に立つ遊次は、溢れる感慨を抑えきれぬように深く頷いた。左胸に拳を押し込み、皆を鼓舞するように叫ぶ。

「ようやく、みんな同じ方向を向けたな。力合わせて、世界を救おうぜ!俺らならやれる!絶対に!」

「どうやって?」
しかしその熱を冷ますように、蒼月は言葉を落とす。

「…それは……」
瞬間、遊次の表情がこわばった。

「完全なるノープラン…だな」

イーサンの力ない呟きが、ホールに虚しく響いた。歓喜の空気は一瞬で霧散し、シビアな現実が突きつけられる。しかしその静寂を切り裂いたのは、オスカーの言葉だった。

「頼りならある」

その言葉に反応し、ルーカスが弾かれたように顔を上げ、震える声で言う。

「頼りって、もしかして…」

オスカーは微動だにせず、静かに言葉を紡いだ。

「地球に迫る隕石は、モンスターワールドより現れた存在。その異世界を誰よりも知る者がいる」

「我が祖父、ヘックス・ヴラッドウッド。モンスターワールドを発見した張本人だ」

耳に飛び込んできた名前は、世界的な偉人。遊次達は一斉に顔を見合わせた。
アリシアが驚愕に目を見開き、激昂に近い声を上げる。

「な…何を言う!あの方は事故に遭い、今も眠り続けているではないか!」

「…いや、世間には知らせていないが、お祖父様は数週間前に目を覚ました。最近はようやく記憶も安定して、人と話せるようになったそうだ」

そう告げるルーカスの表情には、幾重にも重なる複雑な感情が入り混じっていた。

「…そ、そうなのか…!よかった。本当に」
ルーカスの言葉に、アリシアは瞳を揺らす。そこには、家族の無事を知ったかのような歓喜の色が滲んでいた。

「ガッハッハ!随分タイミングの良いご起床だな!」
ハイドはいつものように豪快に笑い飛ばすが、その目には一片の笑みもなかった。

「確かに彼ならば、我々の知らない何かを知っているかもしれませんね」
蒼月は目を細め、口角を上げる。

遊次は驚きに目を見開いたまま、虚空をじっと見つめてその存在を思い描く。

(ヘックス・ヴラッドウッド…。デュエルディスクを開発して世界を変えたスゲー人。それに、父さんの師匠だった人だ)

その瞳の奥には、隠しきれない高揚の色が灯っていた。
イーサンは何かを考えるように、そんな遊次を見つめる。

「じゃあ決まりだな!明日にでもすぐ会わせてくれ!」
遊次は真っ直ぐな目でルーカスに訴えかける。

「…お前に会わせる必要はないだろ」
ルーカスは不快そうな露骨に顔を歪ませる。

「なんでだよ!世界を救う方法がわかるかもしんねーのに、俺がいなくてどうする!皆も連れてくからな!」

遊次は舞台から飛び降り、灯たちの元へ走り寄った。
そのまま彼女たちの肩を抱き寄せ、力強く告げる。

灯は一瞬だけ身を硬くし、隣に立つ遊次の顔を覗き込んだ。すぐに視線を切り替え、ルーカスを真っ直ぐに見据える。

「ヘックスさんが目覚めてから、お二人とも会ってないんですよね?再会の時間を邪魔するつもりはありません。私達がお会いするのは、それが済んでからで結構ですから」

柔らかな物言いにルーカスの尖っていた空気が削がれ、彼は乱暴に後頭部をかいた。深くため息を吐き出し、ぶっきらぼうに応じる。

「…わかった。明日、面会できるように病院に頼んでおく」

「よっしゃ!ありがとな!」
遊次は一点の曇りもない笑顔を浮かべた。ルーカスは不信そうな顔で一歩にじり寄り、その鼻先に指先を突きつける。

「いいか、絶対に失礼な態度を取るなよ。本来、お前みたいな凡人が相まみえることなんて許されない人なんだ」

「おう!わかった!」
迷いのない返答に、ルーカスは怪訝な目を向けた。
そのまま、払いのけるように遊次から距離を取る。

ハイドはどこか遠くを見つめ、皮肉げに口角を上げた。

「吾輩も"旧友"との再会と行きたいところだが…向こうは嫌がるかもしれん。昔から何かとそりが合わないものでね。アリシア、明日の面会は君に頼むよ」

「は、はい!承知致しました」
アリシアは背筋を伸ばし、居住まいを正した。

「話は決まったよな。じゃあ早く帰らせてくんねえか?こっちはもう限界だ」

怜央はまぶたを閉じ、投げやりな口調で天井へと言葉を放つ。

「…そうだね。今日だけで色んなことが起きたもんね…」

怜央の言葉を皮切りに、灯の両肩にどっと重い疲労がのしかかった。夕刻の契約解除から始まり、ジェンの強襲、美蘭との激闘。さらにはイーサンの奪還劇から、この大舞台での決戦まで。一日の記憶が目まぐるしく脳裏をよぎり、そのあまりの重厚さに灯は深く息を吐いた。

「アタシももうヘロヘロ~。シャワー浴びたーい」
美蘭は腑抜けた声で天井を仰ぐ。彼女もこの一日で拉致に遭い、命の危険に瀕した者だ。明るく振舞っているが、内心では複雑な感情が渦巻いているだろう。それを察するように、ジェンが執事のような手際でその傍らへ歩み寄る。

「私がお家まで送りますよ」

「ホント!?さっすがジェンちゃん!ありがとね!」

美蘭の顔に、満足げな笑みが浮かんだ。つい先刻までの殺伐とした空気が嘘のように、ホールには穏やかな疲労感が漂い始めている。

蒼月がハイドと一瞬だけ視線を交わし、静かに前に出た。

「ではNextの皆さんは私がお送りしましょう」
そのままニーズヘッグの面々へ向き直り、口角を吊り上げる。

「色々ありましたが、我々は世界を救う同士です。今後とも"仲良く"していきましょう」

慇懃無礼な笑みを湛え、蒼月は流麗な動作で深々と頭を下げた。その姿を、ルーカス達は言葉もなく、ただ呆れたように見つめていた。

オスカーが遊次たちへと向き直った。冷徹な声音が、ホールの空気を鋭く切り裂く。

「勝利の余韻に浸る暇はない。本当の戦いはここからだ。一日たりとも無駄にはできん」

その一言に、緩みかけた場が再び鋭い緊張に包まれた。今も、刻一刻と地球には隕石型の超巨大モンスターが迫っている。誰も犠牲にせずそれを打ち破る"奇跡"に等しい方法を見つけなければ、この世界に未来はないのだ。

イーサンが遊次たちへと視線を向けた。その表情は迷いに揺れ、瞳の奥に深い苦悩を滲ませている。今自分たちが置かれている状況に、誰よりも激しく葛藤しているようだった。

遊次は真剣な表情を崩さず、真っ直ぐにオスカーを見据えた。

「あぁ、わかってる」

「…ならば良い」
オスカーは静かに目を閉じ、コートのポケットに手を沈める。

遊次は笑みを浮かべ、オスカーに視線を送る。彼の言葉にはいつも温度はない。だがデュエルを通じて、遊次は彼の内側に滾る熱情を垣間見た。それは、共に世界を救う同士としての確かな信頼へと変わりつつあった。

「では行きましょう」
蒼月は淀みのない所作で、Nextの4人を出口へと導いた。

こうして、果てしなく長い一日は幕を閉じた。次元の裂け目から異世界のエネルギーを注ぎ込み、モンスターを顕現させる「セカンド・コラプス計画」。迫りくる隕石を破壊するための、最も現実的なその計画は、同時にあまりに多くの犠牲を強いるものだった。

だが、世界を背負う覚悟を決めたNextの面々は、その計画を正面から打ち砕いた。
そして「誰も犠牲にしない未来」を掴むため、彼らは今、ようやく新たな一歩を踏み出した。




決戦の翌日。

窓から差し込む光が、鏡のように磨き抜かれた床の上に落ちている。厚手の絨毯が敷き詰められた回廊には人影もなく、行き届いた空調の微かな稼働音だけが、静まり返った空気をかえって際立たせていた。そこには徹底して管理された清潔さと、静謐な品位だけがある。

回廊の突き当たり。重厚な扉の脇に掲げられた真鍮のプレートには、「901」という数字が刻まれている。

ここはデュエリアにおける最高峰の医療施設。
最上階に位置するその空間は、外界の喧騒から完全に切り離されていた。

扉の前で、オスカーとルーカスが立つ。
数歩下がった廊下には、遊次、灯、イーサン、怜央、アリシアの5人が、2人の背中をただ静かに見つめていた。


オスカーが扉の取っ手に手を掛け、深く一度だけ息を整えた。静まり返った空間に、わずかな沈黙が流れる。意を決して指先に力を込めると、重厚な扉が音もなく滑るように開いていった。

開かれた視界の先、窓から差し込む強烈な陽光が、一人の老人の姿を逆光の中に浮かび上がらせている。光をまともに受けたその頬は、肉を削ぎ落としたかのように異様に痩せ細り、深い陰影が骨の輪郭を際立たせていた。肩から枕元にかけて流れる長い白髪は、淡い紫の色を滲ませている。

老人は微動だにせず、ただ一点の虚空を凝視し続けていた。だが、扉が開いた気配を辿るように、その首がゆっくりと、重々しく動き始める。やがて焦点の定まらない瞳が、真っ直ぐにこちらを捉えた。

「おじい…様…」
ルーカスの震える唇から、掠れた声が零れ落ちる。

老人は重い瞼をゆっくりと持ち上げ、その瞳に驚きの色を宿らせた。差し込む光のなか、オスカーとルーカスは一歩も動くことができない。掛けるべき言葉も見つからず、ただ静まり返った部屋のなかで、時間だけが止まったかのように二人は立ち尽くしていた。

やがて老人の痩せた顔に、幾筋もの深い皺が刻まれていく。強張っていた表情が解け、慈しむような柔らかな笑みがその口元に浮かんだ。

「大きくなったね。オスカー、ルーカス」

その声が届いた瞬間、ルーカスの瞳が大きく見開かれた。堰を切ったように熱い雫が溢れ出し、頬を伝って零れ落ちる。そしてルーカスはこらえきれず、祖父であるヘックスのもとへと駆け出した。

「お祖父様っ…!!」

まるで幼い子供に戻ったかのように、ルーカスはヘックスの細い身体に縋り付く。オスカーもゆっくりと重い足を踏み出し、寄り添い合う二人の側へと歩み寄った。

「お久しぶりです。…本当に」
オスカーは静かながらも、噛み締めるようにその一言に長い歳月の重みを込めた。

「…長く待たせてすまなかったね」

ヘックスは弱々しく二人を見つめ、掠れた声で口にする。その言葉を、ルーカスは顔を跳ね上げるようにして即座に否定した。

「何を言ってるんだ!悪いのは事故を起こした奴だ!」
見開かれたその瞳には、激しい怒りの色が宿っている。

13年という、余りにも長すぎた眠り。溢れ出すほどの想いや伝えたい言葉は、ヘックスの中に山ほど積み上がっている。しかし、空白があまりに深すぎて、今の彼にはそれらを形にする術がない。

「……そうだな」
彼は迷い、探し求めた末に、たった一つの言葉を絞り出すことしかできなかった。

「看護師さんから聞いたよ。今のニーズヘッグのトップはオスカー、君だと」

ヘックスの瞳には、喜びとともに、どこか割り切れない色が滲んでいた。オスカーはそれを察してか「えぇ」とだけ短く返事をした。しかしルーカスは、誇らしげに声を弾ませる。

「兄さんは凄いんだよ!落ちぶれた会社に改革を起こして、たった1年で復活させたんだ!」

子供の自慢のような無遠慮な言葉に、オスカーは目頭に指を置いて呆れたように首を振り、祖父へと視線を移した。ヘックスの口元にも少し引きつった笑みが浮かび、二人の視線が静かに重なる。
祖父と兄の間に流れた微かな空気に、ルーカスがぱたりと言葉を切る。ルーカスははっとしたように小さく息を呑むと、バツが悪そうにすっと視線を床へ逃がした。

「お体は大丈夫なのですか」
オスカーは静かに話題を変えた。

「…話すのがやっとさ。筋力が衰えて、一人では体も起こせない」

シーツに沈み込んだまま、ヘックスが力なく息を吐いた。

「…そうですか。しかしリハビリを続けば良くなるのでしょう」

オスカーは、ヘックスが返す言葉を最小限で済ませられるよう、静かに問いかけた。

「…多分ね」
ヘックスはかすかに目を細め、吐息のような声で応じた。

病室に、ふっと短い沈黙が降りた。オスカーが小さく息を吸い込み、静かに口を開く。

「俺達がここへ来たのは、見舞いのためだけではありません」

ヘックスは何も言わず、ただ真っ直ぐにオスカーを見返した。その眼差しから先ほどの柔らかさが消え、静かな熱が宿る。傍らのルーカスも身を起こして立ち上がり、その顔に険しい緊張を走らせた。

「今、世界には危機が迫っています」




オスカーはヘックスへと、事の次第を語った。

宇宙に隕石型のモンスターが現れ、地球へと向かっていること。
到達まで、あと8ヶ月に迫っていること。

迎撃のため、自分達は「パラドックス・ブリッジ」なる装置で空間に裂け目を作ろうとしていたこと。
モンスターワールドから流れ込むエネルギーで地球を満たし、モンスターを現実に召喚することで、隕石を打ち破る計画を進めていたこと。

昨日、ある者達によってその計画が阻止されたこと。
そして今は、犠牲なき未来を目指していること。


事のすべてを聞き終えたヘックスは、疲労を滲ませた表情で口を開く。

「…言いたいことも、聞きたいことも、山ほどある。私には…」

さらに言葉を繋ごうとしたヘックスだったが、途中で深く息を吐き出し、そのまま口を閉ざした。どうやら話すのがつらくなってきたようだ。やがて彼は静かに視線を動かし、ベッドの脇に設置されたアーム付きのタブレットを見やる。ルーカスは瞬時に意図を理解し、すぐさまアームに手を伸ばした。引き寄せたタブレットを、ヘックスの顔の正面へと移動させる。

そのタブレット型の装置は視線だけで文字を入力し、合成音声によって発話するものだ。ヘックスはタブレットに視線で文字を入力し、言葉の続きを紡ぐ。

「私には、何が正しいかわからない。どうすべきかも、わからない」

返ってきたのは、どうしようもなく空虚な響きだった。しかし、それも当然のことだ。13年ものあいだ眠り続けていた男に、世界を救う答えを求める方が異常なのだ。

「だが…これだけは言える」
ヘックスはなおも言葉を紡ぎ続けた。

「君達が、人を殺さなくてよかった」

オスカー達は目を見開く。その顔に、微かに複雑な色が滲んだ。彼の言葉は、これまで世界に迫る危機に抗い、苦渋の決断を下そうとしてきた自分達の戦いを、ある意味では否定するものにも聞こえる。だが、おそらくはそうではない。それはただ純粋な、一人の祖父としての心の声に他ならない。それを2人は理解した。

オスカーの瞳に迷いはなかった。祖父を真っ直ぐに見据え、言葉を返す。

「俺達は敗けた。これが唯一の事実です。誰かを犠牲にする道は、もう選べない。ならばこれから進む道を、正しき道にするしかありません」

ルーカスははっとして、隣のオスカーの横顔に視線を送る。

(兄さんはもう…前だけを向いているんだ)
ルーカスは俯き、強く拳を握る。固く握り込んだ拳が、微かな震えを止める。ルーカスは再び顔を上げ、病床の祖父へと力強い視線を向けた。


「俺達の他にも、世界の真実を知る者達がいます。デュエリア政府と、俺達を破ったなんでも屋という連中です。お会いしていただけますか」

ヘックスが小さく頷きを返す。オスカーが傍らのルーカスに目を向けると、ルーカスは無言で頷き返し、病室の扉へと歩み寄った。
扉を開け、廊下で待機していた者たちへと視線を送る。その合図を受け、遊次は背筋を伸ばし、ゆっくりとした足取りで室内に足を踏み入れた。

「失礼します」

遊次たちはこわばった面持ちのまま、ベッドの前に横一列に並び立つ。ヘックスは彼らの顔を、端から一人ずつ順番に見つめていった。やがて、一番右端に立っていたアリシアの顔に視線が移る。そこでピタリと、ヘックスの動きが止まった。

「君は…」

そのピンクとバイオレットのツートンカラーのロングヘアを見つめながら、ヘックスは驚きに目を見張った。その視線を真っ直ぐに受け止め、アリシアは深く頭を下げる。

「お久しぶりです、ヘックス殿。本日はデュエリア政府の一員として参りました」

「…あぁ。久しぶりだね、アリシアちゃん」
ヘックスの顔に、ふっと柔らかな笑みが広がった。

「アリシア…ちゃん?」
予想外のやり取りに、遊次が2人の顔を交互に見つめる。

「幼い頃、色々とよくしてもらっていたんだ。私の両親は官僚で、ヘックス殿と関わりがあってね。私は両親が普段家にいなかったから、よく屋敷に遊びに行ってたんだ」

傍らで聞いていたオスカーが、腕を組んで目を細める。記憶の糸をたぐるように、アリシアの顔をじっと見つめた。

「…思い出した。確かに昔、屋敷で見た事がある」

「今更か…。私はてっきり…。まあ、覚えていなくても仕方ないが」

アリシアは小さく息を吐き、呆れたような視線をオスカーへ向けた。

ヘックスは目の前の画面に視線を走らせ、アリシアへと顔を向けた。機械的な合成音声が室内に響く。

「昔、よくおとぎ話を聞かせてあげたね。モンスター達が暮らす、この世界とは別の世界の話だ」

「それって…」
その聞き覚えのある設定に、灯がはっと息を呑んで声を漏らす。アリシアは目を細め、どこか懐かしむような笑みを浮かべた。

「お、お祖父様…。まさかそんな昔にモンスターワールドのこと、漏らしたんですか…この女に…」

ルーカスは口元をぴくりとひきつらせて問うと、ヘックスは無邪気な笑みだけで答えた。

「まったく…」
ルーカスは呆れたように頭を抱えた。
アリシアは柔らかな瞳で、昔を振り返る。

「よく覚えています。とっても。おとぎ話にしては妙に凝っていて、まるで…自分の目で見てきたかのように語ってくださったものですから。まさか、実在するとは思っていませんでしたが」

ヘックスは静かに頷くと、再び画面へと視線を送る。

「君はいつ、モンスターワールドの存在を知ったんだい」

「約3年前です。世界に隕石が迫っていることを知り、政府も対抗策を講じていました。そこで初めて、ハイド大統領からあの世界の事を聞きました」

ハイドの名前を聞いたヘックスは複雑な表情を浮かべ、ゆっくりと何度か頷いた。そしてその視線が横へと滑り、遊次を捉える。不意に見つめられた遊次は、はっと肩を揺らし、慌てて背筋を伸ばした。

「はじめまして、神楽遊次と申します。ドミノタウンで、なんでも屋Nextっていうのをやってます」

その声に続くように、隣に立つ仲間たちも順に口を開く。

「花咲灯です。同じく、なんでも屋Nextの一員です」

「イーサン・レイノルズです。お会いできて光栄です」

「鉄城怜央だ……です」

並び立つ4人の姿を、ヘックスはじっと見比べる。少し思案するような間を置いた後、手元のタブレットへと視線を落とした。

「君達が、オスカー達を倒したというのかな?にわかには信じられないが」

打ち込まれた言葉が音声となって響く。遊次たちは顔を見合わせ、困ったような苦笑いを浮かべた。

「はは、一応…」

「僕も信じられないよ」
ルーカスも祖父の傍らで首をゆっくりと横に振る。

ヘックスは視線を遊次へと向け、合成音声で言葉を紡ぐ。

「神楽遊次君…といったね。もしかして、君が天聖君の息子かな?」

「…は、はい!父さんは、ヘックスさんの弟子だったって、俺も聞いてます」

遊次は緊張した面持ちでヘックスを見つめる。ヘックスの目元が緩み、どこか遠くを懐かしむような表情を浮かべる。

「アリシアちゃんに、天聖君の息子か。このタイミングで私が目を覚ましたのも、まるで運命に導かれているように思える」

ヘックスは再びタブレットへと視線を落とした後、再び遊次の方を向く。

「息子がいることは聞いていたが…私が事故に遭う何年か前には、あまり彼とは連絡を取らなくなってしまっていてね。思い出すのに時間がかかってしまった。天聖君は元気にしているかな?」

その問いに、遊次は心臓をきゅっと強く掴まれたような感覚を覚える。
傍らに立つ灯は、驚いた表情で遊次へと視線を向けた。

(そっか…。ヘックスさんが事故に遭ったのは、遊次のお父さんが失踪する前…)

遊次は言葉を詰まらせ、すっと床へ視線を落とした。その横でイーサンが微かに口を開きかけるが、すぐに結び直して息を呑み込む。怜央は何も言わず、ただ静かに遊次の横顔を見つめていた。やがて、遊次は顔を上げ、再び真っ直ぐに前を見据える。

「父さんは…13年前、コラプスから1年後に、急にいなくなりました。その後…病気で亡くなりました。それからは、ここにいるイーサンが親代わりに育ててくれました」

ヘックスは思いがけない事実に、大きく瞳を揺らした。やがてその目元に深い悲痛の色が滲み、痛ましげに伏せられる。彼は重く口を開き、静かに言葉を落とした。

「そうだったのか…。悪かったね」

「…いえ、大丈夫です!俺には家族も、仲間もいますから」

遊次は顔を上げ、力強く笑いかけた。彼がすでに前を向いていることを知ったヘックスは「そうか」と小さく呟き、少しだけ口角を上げた。

遊次は真っ直ぐヘックスに向かい、本題へと切り込む。

「ヘックスさん。あなたはモンスターワールドを発見した凄い人だ。それで、今地球に迫ってる隕石も、モンスターワールドから現れた存在なんですよね。俺達がここに来たのは、その隕石をぶっ倒す方法を見つけるためです。どんな小さなことでもいいんです!何か手がかりはありませんか?」

その問いに、ヘックスは枕に頭を預けたまま、ゆっくりと天井を仰ぎ見た。記憶の底を探るように少しの間だけ考え込み、やがて視線入力装置へと目を移す。微かな眼球の動きで文字を打ち込むと、再び真っ直ぐに前を向いた。

「私の記憶は、13年前に止まっている。わかる事と言えば…私がモンスターワールドを発見した当時から、二体のモンスターを筆頭に、光と闇の勢力が、争い合っていたということだ」

その話は、数週間前にルーカスから聞いたことがある。怜央はすかさず口を開く。

「闇の勢力は隕石モンスター。光の勢力はコラプスを起こした黄金の鎧のモンスター…だろ」

思いがけない返答に、ヘックスは一瞬だけ目を丸くした。そしてすぐに、入力装置へと視線を移す。

「そこまで知っているか。これは推測に過ぎないが…全てのモンスターは原則的に光か闇、どちらかの勢力に属している。そして、彼らは私がモンスターワールドを発見するよりもずっと前から、争いを繰り返して来た」

「そんなに昔から…」
灯は思わずぽつりと言葉を零した。

「もちろん、ずっと争い合っているわけではない。モンスター達にも国があり、暮らしがある。その長い歴史の中で時折、何かが火種となって大きな戦いが始まるのだ。人間と、同じように」

遊次達は真剣に耳を傾ける。ヘックスの傍らで、オスカーは腕を組んだまま言葉を補う。

「しかし14年前のコラプスから、黄金の鎧のモンスターはドミノタウンに姿を現し、そして忽然として消えた。その消息は未だに不明。以降、モンスターワールドでは闇の勢力が勢いを増していた。しかし3年前、隕石型のモンスターもモンスターワールドから姿を消し…現実世界の宇宙に現れた。これが、俺達の観測した事実だ」

ヘックスは幾度か深く頷きを返す。そして再び入力装置へと目を向け、文字を打ち込み始めた。

「13年間の記憶がある分、オスカーやルーカスの方が、私よりも詳しいだろう。その上でここに来たというのなら…申し訳ないが、私にも隕石型モンスターを打ち破る方法は、わからない」

遊次たちはたまらず俯き、肩を落とす。オスカーとルーカスの顔にも暗い陰りが落ちた。
ここへ来れば、何か希望が見つかるような気がしていた。しかし、現実はそう甘くはないのかもしれない。

誰もが重い空気に沈む中、ヘックスは真っ直ぐに前を向き、ゆっくりと自らの口を開いた。

「だが…手がかりならあるかもしれない」

弾けたように、遊次達は声の方を向いた。
再び、その瞳に希望が宿り始める。
ヘックスは入力装置に、視線で文字を入力し始める。

「私がモンスターワールドを発見して以来、その存在は世界に秘匿されてきた。しかし…あの世界の存在を、数千年も前から知る者達がいる」

オスカーやルーカスも驚きに大きく目を見開いていた。ニーズヘッグの中枢を担う彼らですら与り知らないようだ。

「その名も…ネフカ王国。
"神の国"と呼ばれる、砂漠国家だ」

ヘックスは自らの肉声を振り絞り、はっきりとその名を告げた。

「ネフカ、王国…?」
耳なじみのないその名前を、遊次は反芻する。
すると隣に立っていたイーサンが声を上げる。

「知らなくても無理はない。なにせ他国との関わりがほとんどない、誰もその全貌を知らない国だ」

「んだよ、お前は知ってんのか」
怜央が横目でイーサンを睨み、問い詰めるように言葉を投げた。

「…まあ、知識ぐらいはあるさ」

イーサンはすっと視線を逸らし、表情を崩さずに淡々と返す。

(ネフカ王国…どこかで聞いたことがあるような気が…)

灯は空中を見つめ、記憶の糸をたぐり寄せようと思考を巡らせていた。

「その国は古くから他国との交流を拒んでいる。そして他国もまた、ネフカ王国を恐れ、侵略など考えもしなかったそうだ。古い書物にそう書かれていたよ」

(古い書物…。ならばその時代には、まだ世の中に武器や兵器があったはず。小さな砂漠国家に、他国が恐れるほどの力があるとは思えないが…)

ヘックスの言葉にアリシアは考えを巡らせるが、答えは出なかった。


「待ってください、お祖父様。モンスターワールドを知る国なんて話、僕達は聞いたことがない」

ルーカスが戸惑いを滲ませて声を上げると、ヘックスはゆっくりと手元のタブレットに視線を落とした。

「君達がもう少し大きくなれば、いずれ話そうと思っていた。その前に私が長い眠りについてしまったがね」

打ち込まれた言葉が、音声となって室内に響く。ルーカスははっと息を呑み、そのまま口をつぐんだ。もうそれ以上は何も言葉を返すことができなかった。

合成音声は、淡々と言葉を紡ぎ続ける。

「ネフカ王国の民は、モンスターが生きていることを、当然の常識のように知っている。それ故に、モンスター達を家族のように慕い、友のように親しみ…あるいは"神"のように崇拝する」

「そんな国が…」

アリシアは言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くした。モンスターワールドという異世界の存在は、自身も偶然知ったにすぎない。世間からすれば、夢物語や都市伝説だと一蹴されるような荒唐無稽な話だ。それを、一つの国の民がまるごと常識として受け入れている。あまりにも常軌を逸した事実に、アリシアは俄かには信じられないという顔をしていた。

「彼らの中には特別、モンスターへの信仰心が強い者が存在する。我々の理解を遥かに超越するほどの信仰だ。そのような者は、特別な力を持つことがある」

「それは…モンスターワールドを見通す力だ」

ルーカスは信じがたいというように首を横に振った。そして顎を引き上げ、間髪入れずに言葉を返す。それはもはや、反論であった。

「モンスターワールドを…見通す?僕達ニーズヘッグでさえ、デュエルディスクを通して人とモンスターがリンクし、その時に一瞬だけ垣間見える向こうの世界を観測しているに過ぎません。あんな砂漠の辺境の国に、そんな技術があるわけない」

しかし、ヘックスはまるで想定通りと言わんばかりに、文字を入力する。

「私も最初は疑ったがね。彼らは本当に特別な技術などなくとも、モンスターワールドを見通せるのだよ。私もこの目で確かめたからね」

「行ったことあるんですか!?」
遊次はまるでその話に吸い込まれるように、思わず身を乗り出して問いかけた。

「あぁ。それこそ、君のお父さんと一緒にね」

遊次は目を見開いた。全く、想像もしていなかったような話だ。遊次の記憶の中にある父は、いつも穏やかで温かな笑顔を向けてくれる存在だった。亡き妻を想い、声を上げて涙を流すような、ただの人間臭い男だったはずだ。
しかし今、次々と明かされる事実が、その輪郭を大きく歪めていく。神楽天聖という父親の存在が、遊次の中でさらに底知れないものへと変わっていく気がした。

「40数年前のことだ。あの頃のネフカ王国には一時、国を開き外界との関わりを持つべきだという動きがあった。ほんの一瞬だけだがね」

「あの国の人々は外の者を恐れ、敵視している。だからネフカ王国にとっても本当に信用できる者だけが選別され、特別に入国が許された」

「それでお祖父様が…」
ルーカスの呟きに、ヘックスは小さく頷く。

「ネフカ王国には元々興味があってね。情報はほとんど出回っていなかったが、いくつかの古文書にはこう書かれていた。"神獣を操る遊戯を儀式として用いる国"だと」

その不可思議な伝承に、その場にいた全員の表情が一変する。誰もが身を乗り出すようにして、ヘックスの言葉に強く惹きつけられた。

「それってデュエルモンスターズ…?いや、でも…」

灯は思わず声を上げたが、すぐに違和感に気づき、口をつぐんだ。イーサンがすかさず、その疑念を明確な形で否定する。

「いくら起源がわかってないとはいえ、古文書にデュエルモンスターズの事が書かれてるわけがない」

ヘックスは視線を動かして文字を入力し、無機質な合成音声が病室の空気を震わせた。

「そう、デュエルモンスターズであるはずがない。しかし、どうしても通ずる部分があるように感じた。もしかしたらデュエルモンスターズの起源に繋がる何かがあるかもしれないと。だから私は、ネフカ王国が外国からの来訪者を求めていると知った時、名乗りを上げたのだ」

デュエルディスクをこの世に生み出し、モンスターへの強い愛着から異世界そのものを見つけ出した男である。彼がその未知の国に惹かれないはずがなかった。

「50年ほど前、世界は兵器を廃絶し、代替としてオースデュエルを戦力とするようになった。その時にデュエルディスクもネフカ王国に普及した。デュエリストの心から、その者固有のカードが生み出されるというデュエルディスクの仕組みは、ネフカ王国にとっても理想だった。故に、デュエルディスク開発者である私の入国が許可されたのだ」

その言葉を聞き、オスカーの脳内で散らばっていた情報が一本の線に繋がる。得心がいった様子で、彼はすぐさま口を開いた。

「その仕組みによって、モンスターワールドには新たな命が生まれる。モンスターを崇める者達にとって、これ以上喜ばしいことはない」

ヘックスは滑らかな視線の動きで文字盤を追い、素早く言葉を打ち込んでいく。

「まさにその通りだ。ネフカ王国に足を踏み入れた私は、真っ先に国王から、これ以上ないほどの感謝ともてなしを受けた。『精霊世界を豊かにしてくれた偉人だ』とね」

「せいれいせかい?」
聞き覚えのない言葉に怜央は首をひねる。

「向こうではモンスターワールドをそう呼ぶのだ。そこで、私もあの国のことを色々と聞いた。数千年前からモンスターワールドの存在を知っていること。我々の想像を超えるほど、民とモンスターの心が結びついているということ。そして…向こうの世界を見通す力を持つ者がいることも」

逸れていた話が、ついに核心へと舞い戻る。遊次たちの意識はさらに鋭く研ぎ澄まされ、ヘックスの語る一言一句へと強く惹きつけられていった。

「精霊世界を見通す力を持つ者は"霊術師"と呼ばれる。彼らはモンスターと常軌を逸するほど心の"リンク"ができる。私達はデュエルディスクを通して一瞬だけモンスターワールドへ接続できるが、彼らは生身の体でそれを行う領域に達しているのだ」

「どのように?」
オスカーは短く問う。

「私が会ったのは『大霊術師』と呼ばれる、その国で最も尊敬される男だった。彼は目を瞑り意識を集中させるだけで、モンスターワールドを見通し、見えた景色を壁に描き出してみせた」

「その時は私も眉唾だと思っていたが…数か月後、ニーズヘッグ本社のモンスターワールド監視室で、私は彼が描いた光景と全く同じ景色を目にしたのだ。間違いない。霊術師の力は本物だ」

科学の最先端をゆく男の口から語られるには、あまりにもオカルトじみた内容だった。まさかここまで突飛な話に発展するとは、その場にいる誰もが予想していなかっただろう。しかし、どれほど非現実的で信じがたい話であろうと、他ならぬヘックス自身が断言する以上、それが紛れもない真実であることは疑いようもなかった。

「そんな力があるんなら…隕石モンスターを倒す方法が見つかるかもしれねえ!」

熱を帯びた遊次の声が室内に響く。重く沈んでいたその場にいる者たちの顔に、今度こそはっきりとした希望の光が宿り始めていた。

「モンスターワールドを古来より見通してきた国。もはやそこに希望があることは疑いようもない。アリシア、すぐに手配しろ」

オスカーは腕を組んだまま、さも当然のことのように淡々と言い放つ。しかしアリシアの顔には、はっきりと困惑の陰りが落ちていた。

「簡単に言うな…。ネフカ王国は未だ外国との交流を拒んでいるのだぞ」

苦々しげに返すアリシアへ、怜央が咎めるような鋭い視線を向ける。

「おいおい政府さんよぉ、俺らに味方してくれる約束だよな?何いまさら渋ってやがる」

射抜くような眼差しに、アリシアはわずかにたじろぎながらも声を張り上げた。

「そ、そういうわけではない!対立はあれど、政府の目的は最初から世界を救うことだ。ただ…」

アリシアは病室に集まった全員の顔を静かに見回し、言い聞かせるように言葉にする。

「数か月前、ネフカ王国に新たな国王が誕生した。それ以来、ネフカはただでさえ少なかった輸入をさらに減らし、他国との断絶をより強固にしたのだ」

「王の交代…あっ!」
アリシアの言葉を聞いた瞬間、灯が何かに気づいたように弾かれたように顔を上げた。

「そういえば、ヴェルテクス・デュエリアの開会式の前に、そんなニュースがやってました!どこかで聞いた国だと思ったら…」

記憶の糸がふいに繋がり、灯の脳裏にいつか見たテレビの画面が鮮明にフラッシュバックする。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「速報です。ネフカ王国では、ゴルズ・シャマシュ国王が退位し、新たにアスラナク・バルネフェル氏が国王に就任した模様です。ただし、これまでもネフカ王国は外国への情報公開をほとんど行っておらず、この国王交代についても詳細は確認されておりません」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「王の交代により、保守的な姿勢を強めていることは明らかだ。数十年間なかった異国からの来訪を、そうやすやすと許すとは…」

アリシアが険しい顔つきで口ごもる。その言葉が終わるか終わらないかのうちに、遊次が食い気味に声を上げた。

「でもよ、世界が滅んだらネフカ王国だって困るんだぜ!いっそ地球に隕石が迫ってるって打ち明けちまった方が早くねえか?そしたら向こうだって会わないわけにはいかねーだろ!」

言葉遣いは荒いが、遊次の言葉は核心をついていた。世界中を巻き込む未曾有の危機が迫っている今、国のしがらみなどと悠長なことを言っている猶予はない。

「そうだな…」
アリシアは小さく息を吐き、反論することなく頷いた。すると不意に、病室の空気を震わせて機械の合成音声が響き渡った。

「よければ、私の名前を貸そう。おそらく私はここ数十年で唯一の来訪者であり、ネフカ王国にとても大きな恩がある。私の頼みということなら、話は通しやすいと思うがね」

アリシアは目を伏せて少しの間だけ考え込み、やがてヘックスに向かって深々と頭を下げた。そして顔を上げ、凛とした面持ちで前を見据える。

「…ありがとうございます、ヘックス殿。ネフカ王国こそ、世界救済の最大の手がかりであることは間違いない。その方向で閣下に進言しよう」

「よしっ!!」
遊次はぱっと顔を明るく輝かせ、勢いよく拳を握り込んでガッツポーズを作った。

「私も、はじめはネフカの民に敵視され、冷たい眼差しを向けられたものだ。それでもデュエルがあれば、そんな壁は簡単に壊せる。カードを通じて、ネフカの人々と心を交わし合うことができたよ。ある神官とは深く酒を汲み交わすほどに仲良くなれたものさ」

「そっかぁ…!」
ヘックスの言葉に、遊次は目を輝かせて、その話に食いついた。たとえ見知らぬ異国であっても、デュエルがあれば心を通わせることができる。その事実が何よりも嬉しかった。



一同はヘックスの病室を後にし、廊下を歩いてエレベーターホールへと向かっていた。

「いやー、思った以上の収穫だったな!」
遊次は大きく伸びをするように両手を後頭部で組んだ。その顔には、確かな手応えを感じたような満足げな笑みが浮かんでいる。

「ネフカ王国…どんな国なんだろう」

ぽつりと零す灯の心には、不安と共に未知の国に対する興味も同時に湧いて出ていた。しかしまとまりかけていた空気を断ち切るように、イーサンが冷ややかな声で割り込んだ。

「…ヘックスさんも言ってたように、ネフカ王国の人達は外国人を敵視してるはずだ。ただでさえどんな国かもわからないし、危険だとは思わないのか」

再び、周囲にひりつくような空気が張り詰める。オスカーは足を止め、鋭い眼差しを向け短く言葉を返した。

「ならば、諦めろと?」

イーサンは一歩前へと進み出ると、オスカーと真正面から視線を交える。

「そうは言っていないが…もっと慎重になるべきだ。仮に行くとしても、こいつらを連れていく必要はないだろ」

イーサンは背後に立つ3人を親指で指し示す。その言葉を受け、ルーカスは一切の熱を含まない、淡々とした口調で応じた。

「あぁ、別にいいけど?僕も疑問に思ってたんだ。僕達の計画を止めたからと言って、そいつらを世界の舵取り役に加える必要はないってね。お望みなら、後はこっちでやらせてもらうよ」

ルーカスはニヤリと口角を上げる。たまらず、イーサンの背後から遊次が勢いよく身を乗り出し、声を荒らげる。

「何言ってんだ、ふざけんな!この期に及んで俺らを排除するとかありえねーだろ!絶対行くからな!」

その瞬間、イーサンが勢いよく振り返り、凄まじい剣幕で遊次へと詰め寄る。

「お前はいつもそうだ!ちょっとは自分の心配をしろ!」

しかし遊次もまったく怯むことなく、真正面から声を張り上げた。

「うるせー!今さら蚊帳の外なんかゼッテーに認めねえぞ!行くったら行くんだ!」

感情を剥き出しにした二人の怒声が、病室を飛び越えて静かな廊下にまで大きく響き渡る。そのただならぬ喧騒を聞きつけ、様子を見に来た看護師が心配そうな顔でこちらを窺っていた。それに気づいた灯とアリシアが、声を出さず表情の動きだけで「大丈夫ですから」と、必死になってその場を取り繕っている。


「お前の得意分野は政治じゃない、デュエルだろ!お前が行く必要はない!」

「んだと…」
カッとなった遊次が、今にもイーサンの胸倉を掴もうと腕を振り上げた。しかしその手が届く直前、横からアリシアの声がすっと割って入る。

「…それが、そうでもないのだ。神楽君たちには、できれば我々と行動を共にしてもらいたい。もちろん、レイノルズ殿…貴方も含めて」

予期せぬ言葉に、イーサンと遊次はピタリと動きを止め、同時に声のした方へと顔を向けた。

「どういうことだ」
イーサンが訝しげに問い返す。

「これは、もう少し後で話そうと思っていたのだが…」

アリシアは歯切れ悪く言い淀み、視線を伏せた。すると事態を静観していたオスカーが、静かに切り込む。

「黒幕、か」

その言葉に、アリシアはびくりと肩を震わせ、大きく目を見開いてオスカーを見つめ返した。

「何故それを…」

「…なんだよ、黒幕って」
遊次は灯たちと顔を見合わせると、真剣な眼差しで問いかける。

その視線を受け、アリシアは小さく息を吐き出した。そして警戒するように、そっと周囲へ視線を巡らせる。やがて彼女は、廊下の突き当たりにある人気のない非常階段の扉を指差した。

「向こうで話そう」


大病院の片隅に位置する非常階段。
ただでさえ人影のまばらなフロアにあって、そこはさらに誰の足音も響かない隔絶された空間だった。薄暗く冷たい壁を、誘導灯の放つ緑色の光だけが不気味に照らし出している。

アリシアを中心にして、遊次たちは彼女を取り囲むように輪を作った。少し離れた場所では、オスカーが腕を組んだまま壁に背中を預け、怜央はひとり階段に腰を下ろしている。

全員の視線が中央へと注がれる中、アリシアは神妙な面持ちでゆっくりと語り始めた。

「おかしいと思わなかったか?巨大な隕石…それも明らかな異形が地球に飛来しているというのに、世界中がそれに気付いていないことに」

予想通りだったと言わんばかりに、ルーカスは合点がいったような視線を真っ直ぐに返す。

「おかしいと思ってたさ。それに、デュエリア政府だけが気付いたってことも…ね」

ルーカスの勘ぐるような眼差しを受けても、アリシアは動ずることなく言葉を返す。

「なぜ世界中が隕石の存在に気付かないのか。端的に言えば…衛星情報に工作がされているからだ」

灯は目を丸くする。それはニーズヘッグ本社に乗り込んだ時にルーカスが言っていた、彼の推測していた可能性の一つだったからだ。

「工作?どうやって?」

驚きに包まれる周囲をよそに、イーサンだけは感情を交えない冷静なトーンで短い問いを投げかける。アリシアはゆっくりと口を開いた。

「世界各国の衛星や観測所が集めたデータは、いくつかの国際データセンターに送られ、そこで計算された結果が各国へと返却される。その中枢となるデータセンターに、改竄プログラムが仕込まれていたのだ」

「そのプログラムによって、隕石型モンスターのデータだけが計算結果から自動的に削除されるようになっていた。だが3年前、デュエリア政府の情報システム事務官がデータセンターへ赴いた時、偶然にもその改竄プログラムに気づいたのだ」

専門的な話が続き、遊次と怜央は必死に頭を回転させてどうにか話に食らいつこうとしていた。

「だが国際データセンターは世界各国の衛星情報を預かる立場。我々デュエリアがシステムを勝手にいじくり回すことはできない。だからその事務官の発案で、デュエリアはデータセンターを介さず、独自のルートで衛星情報を計算できるように仕組みを変えたのだ。そしてデュエリア政府はそこで初めて、超巨大隕石が地球に迫っていることを知った」

オスカー、ルーカス、イーサンの3人が同時に眉間に深く皺を寄せた。すかさず、イーサンが鋭い声で話に割り込む。

「どういうことだ?今の話だと、システムの中身を見ていないのに改竄プログラムの存在に気付いたって事になる」

その疑問はもっともだったが、アリシアは表情を変えることなく淡々と答えた。

「そうだ。それを可能とする人物が、我が政府には存在する」

プログラムの内部構造を見ることなく、どうやって改竄の事実に気づくというのか。しかもその者は、たまたま調査に訪れただけの事務官にすぎないという。にわかには信じがたい話だった。しかし、アリシアはその場に浮かび上がった疑念を振り払うように、少しだけ声のトーンを張る。

「細かい話はまた今度だ。結論を言おう。隕石型モンスターを衛星情報から消すプログラムが施されていた。この事実からわかるのは…」

「隕石の飛来には、黒幕が存在するということだ」

衝撃的な言葉に、遊次と灯は一斉に目を丸くする。対照的に、ルーカスはひどく呆れ返ったように頭を押さえる。

「一番、聞きたくなかった結論だ。だって…自ら世界を滅ぼすどうしようもないバカが、この世に存在してるって事になるじゃないか」

怜央はギリッと奥歯を噛み締め、滲み出るような怒りの声を絞り出していた。

「なんで…なんのためにそんなことしやがる…!」

単なる天災ではない。何者かが明確な意思を持って、この地球に破滅の隕石を呼び寄せたのだ。それはつまり、彼らの行き場のない怒りをぶつけるべき明確な敵が、この世界のどこかに存在しているという事実を意味していた。

壁際に身を置くオスカーは、輪から少し離れたまま、ただじっと何もない空間を鋭く睨みつけていた。まるで、見えない壁の向こう側に潜む黒幕の正体を暴き、隠された真実を自らの手で引きずり出そうとでもしているかのようだった。
アリシアは口惜しそうに表情を歪め、悔しさを滲ませる。

「黒幕の手がかりも、目的も、何もわかっていない。だが我々が本格的に隕石衝突の阻止に動けば、黒幕も動き出す可能性が高い。そうなれば、戦いに発展するだろう」

これまでの断片的な情報が、ここに来てようやく一本の線として結びついた。すべてを察した灯が声を上げる。

「だから戦力が必要…ってことですよね」

「そうだ。戦いがいつ起きるかわからぬ以上、ニーズヘッグさえも打ち倒した君達の力は必要不可欠だと考える」

アリシアは真っ直ぐな眼差しを向け、力強く頷いた。しかしイーサンが再び待ったをかける。

「ネフカ王国には他国から入ることができないんだ。その黒幕とやらも、ネフカ王国には現れようがないだろ」

しかしその言葉に、オスカーが鋭く返す。

「何故、ネフカ王国に黒幕がいないと言い切れる?」

「それは…」
イーサンは言葉を詰まらせた。オスカーはさらに一歩踏み込み、鋭く畳み掛けた。

「隕石型モンスターを呼び寄せるなど、超常的な力に他ならん。だが古来よりモンスターワールドを知り、神通力を持つネフカ王国ならば、不可能とは言いきれまい」

オスカーの言葉を聞いた遊次の背筋を、微かな震えが駆け抜ける。

「確かに、そうだ…」
遊次は自身に右手を見つめる。散らばっていたピースが次々と嵌まり込み、ひとつの真実が浮かび上がっていく感覚。それは同時に、得体の知れない強大な敵との、避けられない新たな戦いの幕開けを確信させるものだった。

遊次は顔を上げ、確固たる意志を宿した瞳でアリシアを真っ直ぐに見据えた。

「俺らも、ネフカ王国に行く。もし隕石を呼び寄せたのが黒幕なら、隕石を止める方法だって知ってるかもしんねえ!だったら、コイツで聞きだすしかねえだろ」

そう言い放ち、遊次はデュエルディスクを掲げてみせる。階段に腰を下ろしていた怜央も、無言のまま立ち上がった。その両目は昏く据わり、隠しきれない怒りの炎を燃やしている。

「その黒幕ってのは、間違いなく世界一のクソ野郎だ。ぶっ飛ばさなきゃ…気が済まねえだろ」

彼らの後ろで、灯もすでに覚悟を決めた表情をしている。イーサンは、そんな三人の揺るぎない顔を順番にじっと見つめる。

遊次達が今後も隕石を止めるために、政府やニーズヘッグと行動を共にする客観的な必然性。そして何より、彼ら自身の覚悟。それらを跳ねのける言葉を、イーサンは持っていなかった。

諦めにも似た、どこか切なげな視線を向けながら、イーサンはぽつりと小さくこぼす。

「止めても、無駄なんだよな」

「あぁ」
遊次は間髪入れず、迷いのない声で切り返した。

「…そうか」
そしてイーサンもまた、覚悟の宿った眼差しで前を向いた。


アリシアは、薄暗い踊り場に集う全員の顔を順に確かめるように見渡すと、引き締まった声で告げた。

「決まったな。ではネフカ王国への入国を要請するよう、閣下に進言しておく。方針が決まり次第、改めて皆を招集する」

遊次と灯、怜央の3人は揃って力強く頷く。壁際にオスカーは、わざわざ返事をする必要などないとでも言うように、ただ腕を組んで静かに両目を閉じたままだった。




薄暗い非常階段での密談を終え、7人は連れ立って正面玄関の自動ドアを抜けた。外には手入れの行き届いた広大なロータリーが広がり、見上げる空は雲一つない快晴だった。

先頭を歩いていたアリシアがふと足を止め、ゆっくりと振り返った。その表情は引き締まり、凛とした声が響く。

「世界の命運は、皆に懸っている。頼むぞ」

「…あぁ!」

投げかけられた言葉の重みを真っ直ぐに受け止め、遊次は力強く頷きながら短く返した。それを聞いたアリシアは再び前を向き、迷いのない足取りで進み始める。ルーカスとオスカーもまた、何も語ることなく歩き出した。

しかしオスカーが不意に立ち止まり、振り返る。

「花咲灯…だったな」

「は、はい!?」
突然名指しされ、灯は弾かれたように背筋を伸ばした。無理もない。いくら顔を合わせたことがあるとはいえ、相手は世界を牛耳る巨大企業のトップだ。これまで直接言葉を交わす機会などほとんどなく、オスカーを見上げる瞳には明らかな緊張が走っていた。

そんな彼女の様子を気にする素振りも見せず、オスカーはいつもの感情の読めない冷徹な眼差しのまま、懐から一通の封筒を取り出してスッと差し出した。

灯は迷った手つきでそれを受け取り、意図を探るようにオスカーの顔をまじまじと見つめる。

「車の修理代だ」

「……え?」
あまりにも予想外の言葉に、灯はきょとんとした声を漏らした。

「ジェンが貴様の車を破壊しただろう。弁償するのが筋だ。ついでに、クロム・ナイトシェイドを投げ飛ばした際、神楽遊次を裏拳で弾き飛ばした際に発生したであろう傷の治療費、および慰謝料も含まれている」

オスカーは横目でイーサンにも視線を送る。
傍らにいた遊次やイーサン、怜央までが呆気に取られ、ぽかんと口を開けて固まってしまった。世界の存亡を懸けたスケールの大きい話をした直後。当の本人たちでさえとっくに忘れていたような出来事を、まさか彼が覚えていたとは思っていなかった。

「あ、ありがとうございます…。で、でも、なんかすっごく分厚いんですけど…」

灯は受け取った封筒を持つ手を小さく震わせる。おずおずと視線を上げ、再びオスカーの顔色を窺った。

「慰謝料も含むと言ったはずだ」
オスカーは漆黒のマントをバサリと翻し、短い言葉だけを返す。そして振り返ることもなく、迷いのない足取りでロータリーの先へと歩み、少し先で待つルーカスと共に風のように去っていった。


「…ほんと、よくわかんねえ奴だな…」

遠ざかっていくその背中を見送りながら、遊次が半ば呆れたような声でぽつりと呟く。

「でも、これからは味方だもんね。昨日までは怖かったけど…今は心強いかも」

手元の封筒を大切そうに胸に抱え、灯はほっとしたような柔らかな笑みを浮かべた。
怜央は真剣な眼差しで、遊次たちへと向き直った。

「アイツに頼るまでもねえ。黒幕なんざ、俺らがブッ潰してやればいい。だがそのためには…もっと強くならなきゃならねえ」

「…あぁ、そうだな」
遊次は快晴の空を見上げる。

(これから俺は、世界を救う方法を探さなきゃいけない。なりふり構ってられねえよな)

脳裏をよぎったのは、ヴェルテクス・デュエリアの予選で激闘を交わした者たちの顔だ。彼らは遊次たちを信じ、それぞれの願いを託してくれた。その思いを背負う遊次の背中は、未だずっしりと重いままだった。

そして遊次は前を向き、歩き出した。


犠牲なき未来への第一歩となるのは、神の国と呼ばれる砂漠国家「ネフカ王国」。
そして明らかとなった、黒幕の存在。

遊次達を待ち受けるのは、激闘と苦難。
それを超えるためには、更なる強さと、覚悟が必要だ。



【隕石衝突まで…残り244日】



第78話「神の国」 完




政府施設を訪れた遊次たちは、ある一人の男と出会う。
世界を救うための第一歩目は、まごうことなく、その者の足跡だった。

大統領マキシム・ハイドへ突きつけた、遊次の譲れぬ要求。
その一言が平穏を切り裂き、場は瞬く間に怒号の渦巻く阿鼻叫喚へと沈む。

果たすべき約束。
そして、未知なる異国への旅立ち。

不退転の覚悟をその足に込め、遊次たちは今、新たなる一歩を刻み出す。

「待ってろ、神の国!
絶対に、世界を救う方法を見つけてやるッ!」


次回 第79話「旅立ち」
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55 第46話:潜入作戦 414 0 2025-08-13 -
61 第47話:心の象徴 386 0 2025-08-20 -
61 第48話:繋ぐ雷電 444 0 2025-08-27 -
49 第49話:帳が上がる時、帳は下りる 422 3 2025-09-03 -
58 第50話:影を焼き尽くす暁光 366 0 2025-09-10 -
59 第51話:夜明け 424 0 2025-09-17 -
59 第52話:決闘眼(デュエル・インサイト) 416 0 2025-09-24 -
61 第53話:命の使い方 403 0 2025-10-01 -
49 第54話:不可能への挑戦 405 3 2025-10-08 -
42 第55話:たとえ、この命が終わっても 307 0 2025-10-15 -
52 【カードリスト】虹野 譲 405 0 2025-10-15 -
61 第56話:交わる運命 388 0 2025-10-22 -
45 第57話:降り掛かる真実 331 0 2025-10-29 -
65 第58話:畏怖を纏う死兵 329 0 2025-11-05 -
53 第59話:世界の敵 282 0 2025-11-12 -
59 【カードリスト】オスカー・ヴラッドウッド 327 0 2025-11-12 -
46 第60話:変わらないもの 367 0 2025-11-19 -
42 第61話:花の仮面 287 0 2025-11-26 -
37 第62話:鎖を絶つ獣 271 0 2025-12-03 -
53 第63話:愚者の道 329 0 2025-12-10 -
36 第64話:At a Crossload 246 0 2025-12-17 -
34 第65話:チェーン・ゼロ 250 0 2025-12-24 -
68 【カードリスト】鄭 紫霞 338 0 2025-12-24 -
43 第66話:正反対の、似た者同士 316 0 2025-12-31 -
43 第67話:約束という名の呪い 337 0 2026-01-07 -
40 第68話:夢を照らす灯り 256 1 2026-01-14 -
30 第69話:天界眼(ヘヴンアイズ) 193 0 2026-01-21 -
31 【カードリスト】ルーカス・ヴラッドウッド 204 0 2026-01-26 -
38 第70話:三つ巴 250 0 2026-01-28 -
35 第71話:次元の塔 227 0 2026-02-04 -
43 第72話:ノブレス・オブリージュ 227 0 2026-02-11 -
34 第73話:リミット 185 0 2026-02-18 -
34 第74話:悪魔の心臓 205 0 2026-03-11 -
23 第75話:正しき未来 146 0 2026-03-18 -
26 第76話:譲り受けた魂 303 0 2026-03-25 -
40 第77話:『信じる』 181 0 2026-04-01 -
27 第78話:神の国 128 0 2026-04-08 -
3 第79話:旅立ち 185 0 2026-04-15 -
3 ネフカ王国編 あらすじ 58 0 2026-04-17 -

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