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第73話:リミット 作:湯
〜お知らせ〜
これまで1年以上、週1回更新を続けてきましたが、次週以降、3週間か4週間ほど更新をお休みします。
理由は、この次の回のデュエル構成が過去最大に時間を要していることと、次章の流れを構成したいというものです。
それ以降は基本的に週1更新を続けたいと思いますが、かなり時間を使わないと厳しいので、場合によっては遅くなるかと思います。
申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
追記:3/11から投稿再開します。
なんでも屋Next、ニーズヘッグ、デュエリア政府が一堂に会するデュエリア・シンフォニーホール。
その舞台上で、怜央VSルーカスのデュエルの幕が開いた。
EXデッキにヘヴンアイズ・アポロジストが3枚存在する限り、ルーカスの切り札「ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン」は完全耐性を得る。
しかし怜央は、破壊を除外に変える永続魔法「スチームアーミー・ディメンションタワー」によって、EXデッキを削り、その完全耐性を奪う作戦に出る。
意表を突きダメージを与えることには成功したが、ルーカスの場には完全耐性を持ったエターナルドラゴンが未だ威圧感を放っている。
ルーカスは怜央の猛攻を掻い潜り、新たなリンクモンスター「ヘヴンアイズ・ヴィータ」を召喚。
そのモンスターはお互いのターンにP召喚を行う強力な効果を持っていた。それにより、ルーカスの場には6体のモンスターが立ち並ぶ。
さらにEXデッキにはカードが充填され、ヘヴンアイズ・ヴィータまでもが完全耐性を得てしまう。
追い詰められた怜央。
この絶体絶命の状況を切り抜けることはできるのか。
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP6600 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5700
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・ドミニオンズ ATK2400
⑤ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑥ヘヴンアイズ・ヴァーチュス ATK2200
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):ヘラルド、プロフェット、オファニム、アポロジスト×3
▲□□□■
③④②⑥⑤
□ ①
□⑦⑧□⑨
□□□□□
【怜央】
LP4000 手札:1(フォノグラフ・ソニック)
⑦スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
⑧スチームアーミー・エクスプロード(X素材1) ATK2600
⑨スチームアーミー・マヌーヴァー・インファントリー DEF500
フィールド魔法:スチームアーミー・デッドゾーン
永続魔法:スチームアーミー・サプリングバトルライン、スチームアーミー・ディメンションタワー
永続罠:命取りの重鎧
--------------------------------------------------
「P召喚されたエクスシーアの効果発動!
EXデッキから特殊召喚された時、デッキからPカードを2枚、EXデッキへ送る」
「さらにP召喚されたドミニオンズの効果発動!
EXデッキから特殊召喚された時、ターン終了時まで相手の表側カードの効果を全て無効にする!」
怜央の場には装備カードを装備した相手モンスターを守備表示にしてその効果を奪う永続罠「命取りの重鎧」と、「スチームアーミー」カードの効果破壊を防ぐブレイブロード・エクスプレス、さらには自分の魔法・罠の破壊を防ぐサプリングバトルラインが存在している。
これらが全て無効化されてしまえば、迫り来る猛攻を、ただの無機質な壁と化したモンスターで耐え凌ぐ他ない。
瞬間、怜央は動いた。
「マヌーヴァー・インファントリーの効果発動!
自分フィールドのスチームアーミーを相手モンスターに装備する!
エクスプロードをドミニオンズに装備!」
この効果が通れば、永続罠「命取りの重鎧」により、ドミニオンズは守備表示となり効果は無効化される。
そうなれば怜央の場の効果破壊耐性は維持される。
怜央の墓地の「スチームアーミー・バリケイド・ビルダー」は、相手ターンに自分のモンスターに戦闘耐性を与える効果を持つため、効果破壊・戦闘破壊耐性をモンスターに与えることで、このターンを凌ぐことができると考えたのだ。
しかし、逆もまた然りだ。
怜央のフィールドのカードを無効化することで、ルーカスは勝利に近づくことができる。
どんな手段を取ろうとも、この好機を逃すはずはなかった。
「ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動!
EXデッキのヘヴンアイズ・プロフェットをデッキに戻し、フィールドのカード1枚を破壊する!
僕はヘヴンアイズ・ドミニオンズを破壊する!」
エクスシーアが力強く翼を打ち、一気に空へと躍り出た。
立ち並ぶ天使たちの目前を暴風となって突き抜け、フィールドの逆側に位置するドミニオンズをその刃で捉える。
すれ違いざまに深く身を断ち切り、その勢いのまま翼を大きく翻して反転すると、悠然と元の位置へと舞い戻るその背後で、切り裂かれたドミニオンズが光の粒子となって爆ぜた。
「ドミニオンズはもうフィールドから消えた。
お前のモンスターが装備されることもなく、ドミニオンズの効果は無効にならない」
半透明のドミニオンズが宙に浮かび、その錫杖を掲げる。
放たれた凄まじい密度の白光が、怜央のフィールドを波状に呑み込んだ。
光に晒されたカードは、まるで命を奪われたかのように無機質な灰色へと変貌していった。
怜央の表情が一層険しくなる。
観客席の遊次達は、怜央が置かれた現状にただ立ちすくむ他なかった。
「チェーン1のエクスシーアの効果により、デッキからEXデッキにヘヴンアイズ・アルケー、ヘヴンアイズ・アコライトを置く。さらにエターナルドラゴンはEXデッキの表側カードの数×200攻撃力がアップする。アポロジストで付与した攻撃力上昇効果と合わせて、攻撃力は6100!」
その圧倒的な数値に遊次は唾を呑み込む。
さらにエターナルドラゴンはカントルのP効果により、モンスターを破壊した場合に、続けてモンスターへの攻撃が可能だ。
「天罰の時間だ、ドブネズミ。ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンで、エクスプロードに攻撃!」
この一撃が通れば、怜央のライフは風前の灯火となる。
しかしここで、怜央は手札のカードを表側へ向けた。
「手札のスチームアーミー・フォノグラフ・ソニックの効果発動!
このカードは相手ターン中に、手札から相手モンスターに装備できる!」
蒸気と不気味なノイズを吐き出しながら、真鍮の巨大なホーンを掲げ、側面にはスピーカーを突き出した、蓄音機型の爆弾が現れた。
ホーンを支える重厚な基部は丸みを帯びた金属の塊でできており、その底面には鋭いスパイクが隙間なく並んでいる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/de9fXJ2
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
本体から勢いよく射出された太い鎖が、空を裂いてエターナルドラゴンの巨体へと襲いかかった。何重にも巻き付いた鋼鉄の鎖は鱗をみしりと締め上げ、先端の重い鉄球がドラゴンの身体に爆弾を強引に固定していく。
「フォノグラフ・ソニックが装備されたモンスターが戦闘を行う時、俺への戦闘ダメージは0となり、戦闘を行うモンスターは破壊されない!」
■爆焔鉄甲 蓄音轟鳴(フォノグラフ・ソニック)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1100 守備力1300
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法&罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:相手メインフェイズ・バトルフェイズに、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
手札・フィールドのこのカードを、対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
②:このカードの装備モンスターが戦闘を行う場合、相手への戦闘ダメージは0になり、
モンスターと戦闘する場合、その相手モンスターはその戦闘で破壊されない。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
「エターナルドラゴンはカードの効果を受けねえが、フォノグラフ・ソニックの効果はエターナルドラゴンに対してじゃなく"俺"への効果だ。よってこのバトルで俺が受けるダメージは0となり、エクスプロードは破壊されねえ」
エターナルドラゴンの翼から放たれた光の雨が、エクスプロードへと降り注ぐ。しかしその瞬間、龍の背に固定されたフォノグラフ・ソニックが激しく共鳴した。ホーンから放たれた重厚な音波が壁となり、エクスプロードと怜央を包み込む。襲いかかる光の矢はすべて音のバリアに弾かれ、彼らに届く前に霧散する。
「あの爆弾が手札から装備されたのは攻撃宣言時…。装備直後に攻撃が行われる以上、ルーカス・ヴラッドウッドが爆弾を破壊するタイミングはなく、戦闘ダメージを確実に防げるというわけか」
アリシアは眼前の光景を見つめ、思考を整理するように呟いた。
その言葉に頷くように、蒼月が隣から口を開く。
「ヘヴンアイズ・カントルでエターナルドラゴンに付与した効果は、あくまで"モンスターを破壊できた時、連続攻撃が可能"というもの。モンスターを破壊できなかった以上、エターナルドラゴンはもう攻撃できませんね」
怜央は最大の脅威であったエターナルドラゴンの猛攻をなんとか凌いだ。 遊次たちは張り詰めていた緊張を解き、溜まっていた熱を逃がすように、深く長い息を吐いた。
だが、安堵の時間は一瞬だった。視線の先、ルーカスのフィールドには未だ5体ものモンスターが攻撃を残している。遊次の顔から緩みが消え、その鋭い視線が再び戦場へと向けられた。
「想定通りの結果だ。続いてヘヴンアイズ・ヴィータで、ブレイブロード・エクスプレスへ攻撃」
その宣言に対して、即座に怜央はデュエルディスクから1枚のカードを取り出す。
「墓地のスチームアーミー・バリケイド・ビルダーの効果発動!
このカードを墓地から除外することで、スチームアーミー1体はこのターン、バトルで破壊されない!
対象はブレイブロード・エクスプレス!」
■爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1200 守備力1800
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できず、
③の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードをX素材とするXモンスターは相手の効果の対象にならない。
③:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、戦闘で破壊されない。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「小賢しい。ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。
EXデッキのカードを1枚デッキに戻し、フィールドのカードを破壊できる。このモンスターがEXデッキから特殊召喚されている場合、この効果は1ターンに2度まで使用できる。EXデッキのヘヴンアイズ・アコライトをデッキに戻し、ブレイブロード・エクスプレスを破壊」
ブレイブロードが戦闘破壊できなければ、それ以上は怜央に戦闘で致命傷を与えることができない。ルーカスは迷いなく破壊効果を使用した。
エクスシーアが低く鋭く踏み込み、赤い列車へと肉薄した。横向きに振られた刃が一文字の光を刻み、ブレイブロード・エクスプレスの車体を真っ向から両断する。二つに分かたれた巨躯は、そのまま音を立てて爆ぜ散った。
「ブレイブロードが破壊されたことで、バトルは巻き戻る。
ヘヴンアイズ・ヴィータでエクスプロードに攻撃!」
ヘヴンアイズ・ヴィータの幹に並ぶ青い瞳が、一斉にエクスプロードを射抜く。その視線に引き寄せられるように、枝から放たれた深紅の葉が巨大な渦となって、機体を一気に飲み込んだ。破壊の余波は赤い波となって戦場を走り、持ち主である怜央を激しく打ち据えた。
「ぐぁあっ…!」
怜央 LP4000→3000
「ヘヴンアイズ・オスティアリウスで、スチームアーミー・マヌーヴァー・インファントリーを攻撃」
純白の装束に身を包んだ金髪の少年、オスティアリウスが静かに進み出た。彼が両手を広げると、空間に青白い光の線が奔り、複雑な幾何学模様を描く結界となってマヌーヴァー・インファントリーを包囲した。
結界は一瞬で収縮し、内側へ向けて凄まじい光の奔流を解き放つ。機械の兵士は抵抗する間もなく光の渦に飲み込まれ、跡形もなく砕け散る。
「マヌーヴァー・インファントリーが戦闘で破壊された時、効果発動!
デッキからスチームアーミー・メルト・コーポラルを守備表示で特殊召喚する!」
■爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
効果モンスター
レベル5/炎/機械/攻撃力2100 守備力1900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」速攻魔法1枚を手札に加える。
③:このカード以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルを1つ上げる。
右腕には多砲身の回転式機関砲、左腕には巨大な三本爪を備えた機械の兵士が、重々しくその場に立ち塞がった。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/D0y8dXa
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「メルト・コーポラルの特殊召喚時、効果発動。
デッキからスチームアーミー速攻魔法を1枚手札に加える。手札に加えるのは『スチームアーミー・アサルト』」
怜央のフィールドには今特殊召喚されたモンスター1体のみ。
なんとか命を繋いでいる状況だ。
「ヘヴンアイズ・ヴァーチュスで、メルト・コーポラルへ攻撃」
ヴァーチュスの翼が白光を蓄え、一気に振り抜かれる。
放たれた無数の光羽が、メルト・コーポラルの錆びた装甲を網の目のように穿った。
鉄の巨躯は内側から爆砕し、破壊される。
「視界がスッキリしたな。
ヘヴンアイズ・エクスシーアで、ダイレクトアタック」
エクスシーアが白銀の大剣を横なぎに振り抜く。
放たれた光の刃が、空気を裂く低い唸りを上げて怜央を襲った。
「ぐあああッ!」
怜央 LP2800→300
怜央の体は弾かれたように後方に飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。
その姿に視線を送りながら、遊次はこめかみを指で押さえ、長く息を吐き出す。本来ならば重い一撃を受けた怜央を憂慮すべき場面だ。しかし今の遊次を支配していたのは、敗北の淵で踏み止まったという強烈な安堵だった。
怜央は正面をまっすぐに睨みつけたまま、ゆっくりと体を引き起こした。
「しぶとさだけは一級品だな」
ルーカスは、立ち上がる怜央の姿を冷淡な瞳で静かに見下ろしている。
「…誰かさんが、ネズミ1匹駆除する力もねえおかげでな」
怜央は窮地に追い込まれながらも、不敵な笑みを浮かべる。
灯は観客席からその横顔を見つめる。
彼はいつもそうだった。どんなに追い詰められようとも、屈することを知らない。かつて真なる絶望の底にいた彼にとって、この程度の状況はもはや窮地ですらないのかもしれないと感じた。そして同時に、その姿に自分が何度も勇気を与えられたことを思い出す。
「むしろ一思いに殺してあげた方が、お前にとっても幸せだったんだけどな。メインフェイズ2。ヘヴンアイズ・ヴァーチュスの効果発動。EXデッキのヘヴンアイズ・ヘラルドをデッキに戻し、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する」
■天界眼の力翼霊(ヘヴンアイズ・ヴァーチュス)
ペンデュラム
レベル6/光/天使/攻2200 守2100 スケール1
【P効果】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分が「ヘヴンアイズ」モンスターをP召喚した場合に発動できる。
相手の魔法・罠カードを全て破壊する。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがEXデッキから特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体を特殊召喚し、
デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体をEXデッキに表側で加える。
②:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。
相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。
ヴァーチュスが大きく大翼を広げ、力強く振り下ろした。巻き起こった刃のような烈風に、怜央は思わず両手でその身を守る。しかし、発動していた4枚もの魔法・罠カードは全て割れるように破壊される。
フィールド魔法が破壊されたことで、有刺鉄線の支配する戦場は、絢爛たるオーケストラホールへと戻った。
ドミニオンズによって怜央の表側カードの効果は全て無効となったが、その効力はエンドフェイズまでだ。
ルーカスはその希望さえも完全に摘む選択をした。
「…ディメンションタワーがフィールドから墓地へ送られた時、除外されたスチームアーミーを手札に加えるか、特殊召喚できる。
来い、スチームアーミー・バリケイド・ビルダー」
フィールドに噴き出した黒い蒸気から、赤錆にまみれた鉄の巨躯が姿を現す。
円筒形の頭部からは白い煙が上がり、左腕には巨大な盾を構えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/PKfLmeQ
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「僕はこれでターンエンドだ」
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP6600 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5700
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・ヴァーチュス ATK2200
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、ドミニオンズ、アルケー、アポロジスト×3
▲□□□■
③□②⑤④
□ ①
□□⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP300 手札:1(スチームアーミー・アサルト)
⑦スチームアーミー・バリケイド・ビルダー DEF1800
--------------------------------------------------
「ブラボー!よく持ち堪えた!
それでこそ、黒龍に抗う勇者に相応しい生き様だよ」
ハイドの拍手が静かなオーケストラホールに響き渡る。怜央はただその姿に一瞬、冷たい視線を送るだけだった。
明らかなるルーカスの優勢だが、オスカーは依然何も言わず、ただ壁際で戦いを静観している。その意識は完全に戦いの中へと入り込んでいる。そして隣にいる美蘭やジェンも、決して油断の言葉を口にはしなかった。
なんでも屋Next。
彼らはこれまで、どんな無理難題でも無理やりこじ開けてきた。2人はそれを痛い程知っているからだ。
「なんとかライフを繋ぎ止めたが…ルーカスの場は前のターンよりも盤石だ。完全耐性のリンクモンスター2体。2度の破壊効果を有するエクスシーアに、召喚・特殊召喚を無効にするエターナルドラゴン。さらにヴィータは相手ターンでのP召喚を可能とする…」
イーサンは並び立つモンスター達を見つめ、その絶望的な状況を口にした。
「次のターンでひっくり返せなきゃ、さすがにもう勝ちはねえ。
でも、相手フィールドには完全耐性のモンスターが2体もいやがる…!」
遊次の瞳には色濃い焦燥が滲んでいた。ドローフェイズを含めても、怜央の手札は2枚。盤面には下級モンスター1体のみ。残りLP300の怜央にとって、ルーカスの突破不能に等しい盤面を覆せなければ、もはや勝機はない。しかし、そんな方法など遊次達には到底思い浮かばなかった。
怜央は動揺する仲間達など意に介さず、敵対するルーカスへと冷徹な言葉を投げつける。
「どんだけ大口叩こうが、蓋を開けてみりゃ、鼠1匹まともに殺せねえのが現実だ。
確信したぜ。テメェに世界は救えねえ」
「…は?」
真っ向から浴びせられた否定の言葉に、ルーカスの瞳が点のように収縮する。
怜央は正面に立つルーカスを睨みつけ、吐き捨てるように言った。
「世界を救うことに感情はいらねえとか、ほざいてたよな。呆れたぜ。テメェは、何かを守りたいと思ったことすらねえ、空っぽな人間ってことだ」
ルーカスは表情を変えず、冷めた瞳で怜央を見返す。
その口元には、かすかな嘲笑が浮かんでいた。
「守りたい、守りたくない。お前みたいな輩はそうやって、自分の尺度でしか物事をはかれない。だから"凡人"なんだ」
「守らなきゃ"いけない"んだよ。その使命に、思いなど不要だ」
ルーカスは両腕を広げ、堂々と言い放つ。怜央は顔を背けず、正面からルーカスを見据え続けた。
「究極まで追い詰められた時、人間が何に従うか知ってるか。"心"だ。結局はそれしかねえんだよ」
怜央は左の親指を己の胸元に突き立て、刺すように力強く押し当てた。その瞳には、熱を帯びた怒りが宿り始めている。
「聖人だろうがクズだろうが、"ココ"の根っこにはガッチリ根ェ張ってるもんがある。
キレイな言い方すりゃ、"願い"ってヤツだ。
ソイツを叶えるためなら、人間は鬼にでも悪魔にでもなれる。他の誰が死のうが知ったこっちゃねえ」
その言葉に、ルーカスは、汚いものを見るような眼差しで吐き捨てた。
「最低のカスだな」
「かもな。だが、だからこそ折れねェ。血ヘド吐こうが手足が引きちぎれようが、それが叶うんなら構わねえ。
俺らはそういうモンのために、テメェらをブッ潰しに来てんだ」
怜央の真っ直ぐな視線が、ルーカスを逃さず捉える。
そして彼の言葉は、客席の遊次や灯、イーサンの心に火を点けた。
彼らは、たとえ世界を危険に晒してでも、心に根付く"願い"のために、戦う道を選んだ。
ある者は、皆の笑顔を守るために。
ある者は、大切な人の傍にいるために。
ある者は、"居場所"を守るために。
そしてある者は、傷だらけになりながら共に歩んできた"家族"との今を守るために。
それは全員がバラバラで、一つたりとも同じ形をしていない。
しかし、目指すべき道だけは同じだった。
それが、彼らが今ここに立つ理由だ。
怜央は一歩踏み出し、真正面からルーカスを見据えた。
「テメェが誰かをぶっ殺そうが本気で世界を救いたいってんなら、血眼でかかってくりゃあいい。そういう奴のデュエルは、痛ェほど気迫が伝わってくるモンだ。当然、俺らは全力でブッ潰しにかかる。それでも、その"信念"だけはこっちも認めざるを得ねえだろ」
「だがテメェの場合、熱も信念もあったもんじゃねえ。あんのは"使命"とかいう、くっだらねえモンだけだろうが。そんな奴がいくら理屈とモンスターを並べようが、なんにも響かねェんだよ」
こめかみを指で突き、剥き出しの敵意を込めて言い放つ。その殺気に押されたのか、ルーカスの眉間には深い皺が刻まれた。
「ガッハッハ!これは困ったな、ヴラッドウッド弟くん!
何も言い返せないじゃないか!」
ハイドは手を叩きながら豪快に笑い声を響かせる。ルーカスは奥歯を食いしばり、込み上げる怒りを必死に堪えている。だがその瞬間、怜央は鋭い視線をハイドに向ける。
「テメェもだぜジジイ。なに高みの見物決め込んでんだ?」
叩こうとした両手を宙に止めたまま、ハイドは口を閉じる。しかしその唇の端には依然として不気味な余裕が張り付いていた。
「閣下への無礼は許さぬ!何様のつもりだ!」
アリシアはよく通る声で怜央を威圧するも、彼は構わず言葉を吐き続ける。
「テメェがパラドックス・ブリッジとかいうモン造らせたせいで、こっちは人生ブッ壊されてんだ。裏で何企んでんのか知らねえが、思い通りにはさせねえぞ」
その言葉にアリシアも一瞬だけ、目を見開いた。
血走った眼で大統領を睨みつける怜央の脳裏に、自らの過去がフラッシュバックする。虚空を力任せに引き裂き、這い出してきた金色の鎧。崩落した屋根の隙間から溢れ出していた、人としての形すら留めぬ赤黒い肉の塊。カビ臭い廊下を引きずり回され、肺の空気が弾け飛ぶまで殴りつけられた壁の硬い感触。
ハイドの真の思惑を探るような怜央の言葉に、ハイドは言葉を返す。
「君はコラプスの被害者遺族だったか。…うむ、そうだな」
ハイドは目を瞑り、数秒の静寂を置いてから口を開いた。
「"事故"とはいえ、責任は私にある!申し訳ないことをした!」
ハイドは一切姿勢を崩さず、赤いシートに深く腰掛け足を組んだまま、堂々と言い放った。
遊次は、ハイドの背中を射抜くように睨んでいる。
一時は自分達に協力し、世界を救うために欠かせない存在である、マキシム・ハイド。
しかし、やはり彼は自分達とは相容れぬ存在だ。
今、遊次達はその事実を再認識した。
怜央はただ静かに、強く、拳を握る。
「テメェらはいつも、高ェとこから神様気取って見てるだけだ。いっぺん、俺らと同じ地面に足つけりゃあ、見方も変わるかもな。だから…」
そして、再び正面に視線を向ける。
「全部、ぶっ壊してやるよ。そうすりゃ"神様"の指先で弾かれる奴らの気持ちも、ちったぁわかるだろうぜ」
怜央は前方の空間を握り潰すように、その掌を力強く突き出した。その言葉を真っ向から受けるルーカスの表情には、すでに不気味なまでの静寂が戻っている。
「…そもそも僕は最初から、君の町の住民も守ってやると言ってるんだ。感謝されこそすれ、口汚く罵られる筋合いはないな。愚民はいつもこれだから困る」
怜央の怒りを受け流すように、ルーカスは芝居がかった明るい声を響かせる。
「世界を救うなんて、僕が好きでやってることじゃない。でも勘違いしてもらっちゃ困るな。僕にだって"願い"くらいはあるさ」
ルーカスの耳元でまた、土砂降りの音が鳴り響く。刹那、弾んだ声音は消え、その顔から一切の温度が失われた。
「知能の低いドブネズミが、世界にのさばらないことだ」
オーケストラホールを、刺すような沈黙が通り抜ける。
怜央は無言のまま、ゆっくりとデッキトップに指をかけた。
その脳裏には、ある者達の笑顔や涙が浮かぶ。
リアム、ミオ、星弥、ランラン、治、トーマス、リク。
そして、ドモンとダニエラ。
泥にまみれながら共に歩んできた、"家族"の顔だった。
「俺の…ターン!!」
怜央は勢いよくデッキトップからカードを引く。
そのカードに視線を送り手札に押し込むと、怜央はフィールドを見渡す。
そして、大きく息を吐き呼吸を整える。その簡単な動作が、怜央の脳内に血液を循環させ、自らの感覚を研ぎ澄まさせる。激しい戦火の中に身を投じるには十分だった。
怜央は手札の1枚のカードを見つめ、怜央は不敵な笑みを浮かべ、呟く。
「…そうだな。もう今更、命なんざ惜しくねえ」
怜央は、1枚のカードを表へ向ける。
「速攻魔法発動!『スチームアーミー・アサルト』!
デッキからスチームアーミーを特殊召喚する!」
■爆焔鉄甲強襲作戦(スチームアーミー・アサルト)
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚する。
ターン終了時、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のLPを失う。
②:墓地のこのカードを除外し、自分の手札を1枚捨て、
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
「来い、スチームアーミー・バーン・スナイパー!」
■爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1800 守備力900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を手札に加える。
③:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、相手に800ポイントのダメージを与える。
肩から腕にかけてライフルが取り付けられた銅色の機兵が姿を現す。
目にはゴーグル型のレンズが装着されている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sp2cODa
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
「ただしこの速攻魔法を使ったターン終了時、俺はこの効果で特殊召喚したバーン・スナイパーの元々の攻撃力分、ライフを失う」
その効果に、遊次達は思わず息を呑んだ。
「それじゃあ……」
怜央のライフはわずか300。バーン・スナイパーの攻撃力1800のライフを失えば、その時点で怜央の敗北となる。
つまりこのターンで決着を着ける以外に、怜央が勝利する道はないということだ。
ルーカスは口端を吊り上げ、冷淡な笑い声を漏らした。
「これでわざわざ僕が駆除しなくても、ただ待つだけで勝手に死んでくれるわけだ。手間が省けて助かるよ」
「待つ?なに呑気なこと言ってんだ。
必死に抵抗しなきゃ、死ぬのはテメェだぜ」
しかし怜央はその言葉をもろともせず、指先をルーカスへと突きつける。
「バーン・スナイパーの特殊召喚時、効果発動。
デッキからスチームアーミーを1体、手札に加える。
俺が手札に加えるのは、スチームアーミー・キー・ロケットボム」
ルーカスは対面に存在する錆びた鉄の狙撃兵を見つめ、デュエルディスクに触れる。
「その処理後、ヘヴンアイズ・オスティアリウスの効果を発動。
自分フィールドのヘヴンアイズを破壊し、デッキからヘヴンアイズPモンスター1体を手札に加える。
ヘヴンアイズ・ヴァーチュスを破壊し、デッキからヘヴンアイズ・プロフェットを手札に加える」
オスティアリウスが地に手をつくと、ヴァーチュスの周囲を青い光の結界が包む。その結界は容赦なく収縮し、ヴァーチュスを跡形もなく破壊した。
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP6600 手札:1(プロフェット)
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5900
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、ドミニオンズ、アルケー、ヴァーチュス、アポロジスト×3
▲□□□■
③□②□④
□ ①
□⑧⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP300 手札:2(キー・ロケットボム)
⑦スチームアーミー・バリケイド・ビルダー DEF1800
⑧スチームアーミー・バーン・スナイパー ATK1800
--------------------------------------------------
フィールドを見つめ、蒼月が呟く。
「周到ですね。これでヘヴンアイズ・ヴィータのリンク先が2つ空いている状態。ヴィータの効果により、2体のモンスターを好きなタイミングでP召喚できます」
ヘヴンアイズ・ヴィータはフリーチェーンでP召喚を行う効果を持つ。ルーカスのEXデッキには、EXデッキから特殊召喚された時に効果を発揮する2体のモンスターがいる。1体は相手の表側カードを無効にするドミニオンズ。もう1体は相手のモンスターを全て手札に戻すオファニムだ。これらのモンスターが同時に降臨できる状況をルーカスは即座に創り出したのだ。
灯はステージ上の怜央へ視線を注ぎ、戦局を反芻する。
(ルーカスさんのフィールドには完全耐性モンスターが2体。EXデッキのアポロジストが1枚でも減れば耐性は崩れる。でもEXデッキにはまだまだカードがあるし制圧効果も残ってる。そんな中このターン中に勝つなんて…)
視線の先の怜央に、膝を折る気配はない。窮地にあってもなお揺るがぬ雄姿は、これまで通りの静かな熱を帯びている。しかしルーカスの布陣は、絶望的なまでに完成されていた。鉄壁の守護を貫き、この1ターンで全てを覆す道筋を、灯はどうしても思い描くことができなかった。
怜央は、ルーカスの頭上で浮遊する老騎士を指先で捉えた。
「バーン・スナイパーの効果発動。1ターンに1度、魔法・罠カード1枚を破壊し、800ダメージを与える。
Pカードは魔法カード扱いだ。Pゾーンのヘヴンアイズ・ゲートキーパーを破壊」
バーン・スナイパーが腕のライフルを構え、スコープ越しに標的を照準に収める。引き金が引かれた瞬間、激しい破裂音が響き渡った。弾丸は正確にゲートキーパーを貫き、老騎士は低く呻きを漏らして爆散した。
ルーカス LP6600 → 5800
「よし!Pスケールが揃ってなきゃ、ヴィータの効果でP召喚はできねえ!」
遊次は歓喜の声を上げるも、ルーカスと交戦したイーサンが首を横に振る。その答えを示すようにルーカスは手札のカードを1枚表へ向ける。
「手札のヘヴンアイズ・プロフェットの効果を発動。ヘヴンアイズPカードが破壊された時に手札から特殊召喚し、破壊されたカードをPゾーンに再びセットする」
■天界眼の代弁者(ヘヴンアイズ・プロフェット)
ペンデュラム
レベル3/光/天使/攻1100 守800 スケール1
【P効果】
このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのLモンスター以外の「ヘヴンアイズ」モンスター1体をリリースして発動できる。
そのカードと同じレベルの、カード名が異なる「ヘヴンアイズ」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
②:Pゾーンのこのカードを破壊し、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを自分のPゾーンに置く。
この効果は相手ターンでも発動できる。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「ヘヴンアイズ」Pモンスターまたは「ヘヴンアイズ」Pカードが破壊された場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、破壊されたカードを自分のPゾーンに置く。
②:このカードがEXデッキに表側で加わった場合、
このカード以外の自分のEXデッキ(表側)のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
フィールドに、紺青の長髪をなびかせた女性のモンスターが現れる。白銀の装飾が施された白の法衣を纏い、鮮やかな紅の帯が斜めに走る。頬には神秘的な青い紋様が刻まれ、鋭く澄んだ水色の瞳が静かに周囲を射抜いていた。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/4CwNMmb
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
オーケストラホールの影に潜み、ジェンが淡々と現状を分析する。
「これで再びP召喚が可能となりましたが…リンク先が埋まったことで、呼び出せるのは1体のみ。鉄城怜央も、これを意図して銃弾を放ったのでしょう」
「このターンを耐えるだけでルーカスちゃんの勝ちなんだよ。どんなに頑張ったって、無理なもんは無理でしょ」
美蘭が言葉を重ねるが、その表情は険しい。口にした楽観論とは裏腹に、彼女の顔から余裕は剥がれ落ちていた。
「墓地のスチームアーミー・スチールディゾルブの効果発動。このカードを墓地から除外して墓地のスチームアーミー3枚をデッキに戻すことで、デッキからスチームアーミー魔法・罠カードを1枚、墓地へ送ることができる」
■爆焔鉄甲錆処理槽(スチームアーミー・スチールディゾルブ)
通常魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の表側の「スチームアーミー」魔法・罠カード1枚を墓地に送って発動できる。
自分はデッキから2枚ドローする。
②:墓地のこのカードを除外し、
墓地の「スチームアーミー」モンスター3体を対象として発動できる。
それらのカードをデッキに戻し、
デッキから「スチームアーミー」魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。
「墓地のレイル・エクスプレス、メルト・コーポラル、モールス・シグナラーをデッキに戻し、罠カード『スチームアーミー・スモルダーリバイバル』を墓地へ送る」
「今墓地に送ったスモルダー・リバイバルを除外して、効果発動。墓地の『ランクアップマジック』を手札に加えることができる」
怜央は墓地から「RUM-リラプス・フォース」を相手に示し、手札に加えた。
「『RUM-リラプス・フォース』発動!ライフを半分払い、墓地のスチームアーミーXモンスターをランクアップさせる!対象はスチームアーミー・エクスプロード!」
怜央 LP300→150
■RUM-リラプス・フォース
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:LPを半分払い、自分の墓地の「スチームアーミー」Xモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターよりランクが1つ高い「スチームアーミー」Xモンスター1体を
X召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚し、このカード及び対象のモンスターをそのX素材とする。
②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「スチームアーミー」Xモンスターが存在する場合、
フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
自分のフィールド・墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(何が現れるかわからない。選択肢は1つだ)
ルーカスは鋭い視線を発動された魔法カードへ据え、EXデッキの表側から1枚を抜き取った。
「ヘヴンアイズ・ヴィータの効果発動!お互いのターンに1度、P召喚を行う!」
ヴィータの白い幹に並ぶ無数の瞳が、冷徹な青い光を放つ。それに応じるように、ルーカスの頭上で振り子が大きく弧を描き始めた。
「ペンデュラム召喚!現れよ、ヘヴンアイズ・ドミニオンズ!」
■天界眼の勧告者(ヘヴンアイズ・ドミニオンズ)
ペンデュラム
レベル7/光/天使/攻2400 守2700 スケール1
【P効果】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:もう片方のPゾーンに「ヘヴンアイズ」Pカードが存在する場合に発動できる。
Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがEXデッキから特殊召喚された場合に発動できる。
相手フィールドの全ての表側カードの効果を、ターン終了時まで無効にする。
②:相手がモンスター効果を発動した場合、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。
その効果を無効にして破壊する。
降り注ぐ一筋の光より現れたのは、翼の先端を赤く染めた多翼の上級天使。金色の冠と白い仮面、金装飾を施した白い法衣に赤い帯を垂らし、瞳は水色に発光している。その手には、巨大な紅玉を冠した金色の長杖を携えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/O2IHFKC
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「チェーン1のリラプス・フォースの効果!墓地のエクスプロードを素材に、1つ高いランクのモンスターをX召喚する!」
赤と黒の金属板で構成された機兵が姿を見せ、刹那、その全身を激しい火炎が呑み込んだ。
「焼け焦げた鎧は血戦の証。燻る執念を憤怒の白煙へと昇華せよ!」
口上と共に怜央の足元に黒い銀河の渦が広がり、機兵を包んでいた爆炎が天を衝く火柱となって爆ぜる。
「ランクアップ、エクシーズチェンジ!
現れよ、ランク5!スチームアーミー・デトネイト!」
■爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)
エクシーズモンスター
ランク5/炎/機械/攻撃力2800 守備力2600
レベル5モンスター×3
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがX召喚した場合に発動できる。
相手フィールドの全てのモンスターの効果を無効にする。
②:このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
この効果で破壊したモンスターが「スチームアーミー」モンスターを装備していた場合、
相手フィールドのカードをもう1枚破壊できる。
このカードが炎属性モンスターをX素材としている場合、この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードが破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
自分の墓地の「スチームアーミー」Xモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚し、
その後、墓地の「スチームアーミー」モンスター1体をそのモンスターのX素材とする。
現れたモンスターは、黒く焼け焦げた鉄の鎧で全身を覆っていた。その鎧にはパイプが張り巡らされており、それぞれから炎が噴射されている。鎧の各部から絶え間なく蒸気が噴き出し、周囲に熱気を放つ。肩の部分には大きな歯車、背中には大型の噴射口が装備されている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/RLUlao2
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「デトネイトがX召喚した時、効果発動!
相手フィールドのモンスター効果を全て無効にする!」
怜央の咆哮のような声に抗うように、ルーカスは凛とした立ち姿のまま腕を振るう。
「ヘヴンアイズ・ドミニオンズの効果発動!EXデッキから特殊召喚された時、相手の表側カードの効果を全て無効にする!」
この効果によってデトネイトの全体無効は打ち消されてしまう。RUMによる未知なるモンスターの特殊召喚に対して、牽制としてドミニオンズをP召喚したことがまさに功を奏したと言える。しかし、怜央にもこれは想定済だった。
「その効果にチェーンして、デトネイトの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのカード1枚を破壊できる!」
「だがゲートキーパーがPゾーンにいる限り、僕のカードは破壊されない!」
ルーカスは食い気味に言葉を返す。
「破壊するのはお前のカードじゃねえ。デトネイト自身だ!」
ルーカスは不可解そうに眉間に皺を寄せる。そしてソリッドヴィジョンで浮かび上がるデトネイトのカード情報に目をやると、一瞬でその意図を理解した。
(なるほど…破壊したモンスターがスチームアーミーを装備していれば、追加でもう1枚のカードを破壊できるのか。スチームアーミーをデトネイト自身に装備して自爆すれば、追加の破壊効果でゲートキーパーを破壊して、僕のモンスターから破壊耐性を奪えるわけだ)
ルーカスはデュエルディスクに触れ、EXデッキに上向きで装填されているカードの枚数を数える。
(EXデッキの表側には、アポロジスト以外にカードが3枚。なんでもかんでも効果を使うわけにはいかない)
ルーカスの中に迷いが生じる。エターナルドラゴンとヴィータの完全耐性と高打点を維持するためには、EXデッキにアポロジストを3枚残す必要がある。よってヘヴンアイズの効果のコストには、残りの3枚のカードしか使用できない制約が付く。
(デトネイトの破壊効果を止めれば破壊耐性は維持される。奴がそれを突破するには、墓地のディメンションタワーを再利用するぐらいしかないだろう)
ディメンションタワーはスチームアーミーによる破壊を除外に書き換える永続魔法だ。今は破壊され墓地に眠っている。
(奴はバーン・スナイパーの効果で、キー・ロケットボムを手札に加えた。あのカードは手札から捨てられると墓地のカードを回収できる。これはまさしく、墓地のディメンションタワーを再利用するために他ならない)
ルーカスは叩き込んだ盤面情報を基に相手の意図を推察する。
(だが逆に言えば、ここでゲートキーパーが破壊されてしまえば、ディメンションタワーは不要。キー・ロケットボムで他のカードを墓地から回収されてしまう。奴にとっての最も有効な勝利条件は、エターナルドラゴンを上回る攻撃力を叩き出すことだ。更なる展開を許せば、その勝利条件を満たす危険性を上げるだけ…)
怜央の手札にはまだ未知のカードが隠されている。相手の戦力を図り切れない以上、EXデッキのカードを温存するためだけに、怜央にさらなるリソースを与えるような判断はできなかった。ルーカスは頭の中で即座に結論を出す。
「ヘヴンアイズ・ドミニオンズの効果発動!EXデッキのヘヴンアイズ・アルケーをデッキに戻し、その効果を無効にし、破壊する」
しかし怜央はそれを待ち構えていたかのように、すぐさま言葉を重ねた。
「スチームアーミー・バリケイド・ビルダーの効果発動!自身をデトネイトに装備する!」
重厚な錆に包まれたバリケイド・ビルダーがデトネイトの背後へ寄り添い、巨大な盾を真っ向に構えた。
「え、これから破壊されるモンスターに、なんでわざわざ装備するの?フィールドのモンスターが減っちゃうだけじゃん…」
激しい応酬に、美蘭はただ呆然と戦場を見つめ、ぽつりと声を漏らす。
「ドミニオンズの効果によって、デトネイトの効果は無効となり、破壊される」
ルーカスの冷徹な声が響く。ドミニオンズがその黄金の錫杖を高く掲げた刹那、頂から苛烈な光の奔流が放たれた。
極光は2体の機兵を無慈悲に呑み込み、その装甲を根こそぎ灼き貫く。悲鳴のような金属音を置き去りにして、デトネイトとバリケイド・ビルダーの巨躯は激しい爆炎とともに四散した。
「さらにチェーン1のドミニオンズの効果。
お前の表側カードの効果は無効となる」
ドミニオンズが掲げた錫杖を振り下ろすと、眩い魔力の波が怜央のフィールドを襲った。
バーン・スナイパーの三つの赤い瞳は、抗うように激しく点滅を繰り返した後、泥を被ったように暗転した。
光の波動を振り払い、怜央は前へ1歩踏み出す。
「デトネイトが破壊された時、効果発動!墓地のスチームアーミーXモンスターを1体特殊召喚して、墓地のスチームアーミー1体をその素材にする。エクスプロードを特殊召喚して、バリケイド・ビルダーをその素材とする!」
轟音とともに火球がフィールドを叩き、激しく弾け飛ぶ。
立ち込める白煙の中から、黒と金の装甲の機兵エクスプロードが再びその姿を現した。
その周囲には一つの光球が浮遊している。
「バリケイド・ビルダーを素材にしたモンスターは、相手の効果の対象にならない。
エクスシーアの破壊効果は通用しねえぜ」
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP5800 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5500
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・プロフェット DEF800
⑥ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、ヴァーチュス、アポロジスト×3
▲□□□■
③⑥②⑤④
□ ①
□⑧⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP250 手札:2(キー・ロケットボム)
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材1) ATK2600
⑧スチームアーミー・バーン・スナイパー ATK1800
--------------------------------------------------
ルーカスは眼前の機兵を見据え、小さく舌打ちをする。その理由は、自分でもわからなかった。デュエルディスクにセットされたEXデッキに再び視線を向ける。一瞬だけ耳元で、時計が進む音が聞こえた気がした。
怜央は数多の妨害を潜り抜け、ようやく切り札エクスプロードを呼び出した。しかしPゾーンにゲートキーパーがいる限り、得意の破壊効果は機能しない。
「墓地のスチームアーミー・アサルトを除外して効果発動。手札を1枚捨てることで、墓地のスチームアーミーを1体復活させる。来い、スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス!」
轟音と共に白煙が噴き上がり、深紅の重装甲に覆われた鋼鉄の塊が姿を現した。鋭角的な流線型のフロントが熱気を帯びて眼光のように輝き、地響きを立てて線路と共にフィールドに現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/BcwMtxm
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「ブレイブロードがいる限り『スチームアーミー』カードは相手の効果で破壊されない。これでエクスシーアの破壊効果は効かねえ。あとはその白ウナギをどうにかすりゃいいだけだ」
怜央は眼前のエターナルドラゴンへ指を突きつけ、不敵な笑みを深く刻む。
「お前、自分が置かれてる状況がわかってないんだな」
その一言の重みに、イーサンの思考が即座に盤面へと走る。現状を整理し、勝機を計算するが、導き出される答えはあまりに絶望的だった。
(仮になんとかエターナルドラゴンを倒せたとしても、このターン中にルーカスのライフを0にしなきゃ、ライフコストによって怜央は負ける。本当に可能なのか?そんなことが…)
イーサンは思わず口元を押さえ、険しい表情でステージを見つめ続けた。
「キー・ロケットボムの効果発動。こいつが手札から捨てられた時、墓地の『スチームアーミー』カードを手札に加える」
墓地から1枚のカードが出力される。それは永続魔法「スチームアーミー・ディメンションタワー」。ルーカスの予想通りの一手だ。
「永続魔法『スチームアーミー・ディメンションタワー』を発動!」
■爆焔鉄甲次元塔(スチームアーミー・ディメンションタワー)
永続魔法
このカード名の③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
自分の「スチームアーミー」モンスターとの戦闘で破壊された相手モンスターは墓地へ行かず除外され、
自分の「スチームアーミー」モンスターの「カードを破壊する」効果は「カードを除外する」効果となる。
②:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
自分の「スチームアーミー」モンスターの「装備モンスターが破壊されることで墓地へ送られた場合」の効果は、
「装備モンスターが除外されることで墓地へ送られた場合」の効果となる。
③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、
自分の除外状態の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのカードを特殊召喚するか、手札に加える。
④:お互いのエンドフェイズに発動できる。
このターン、フィールドから除外されたカードの枚数×500のダメージを相手に与える。
地鳴りとともに、怜央の背後からどす黒く煤けた鉄塔がせり上がった。螺旋を描いて天へと伸びるその塔は、無骨なリベットと赤錆に覆われている。装甲の隙間からは重苦しい黒煙が絶え間なく噴き出し、戦場を鉄臭い威圧感で塗り潰した。
説明するまでもなくその力はルーカスも理解している。スチームアーミーによる破壊を除外に変える効果だ。さらにスチームアーミーの爆弾モンスターには「装備モンスターが破壊された場合」に、周囲のカードを破壊する共通効果を持つが、この効果は「装備モンスターが除外された場合」に変更される。
これによりルーカスの場に与えられた破壊耐性は意味を成さなくなる。しかし依然として完全耐性を持つエターナルドラゴンとヴィータには効果はない。
怜央は手札から残された1枚のカードをデュエルディスクに叩きつける。
「手札からスチームアーミー・ライター・テルミットを召喚!」
■爆焔鉄甲 点焼鋼弾(ライター・テルミット)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1500 守備力900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法&罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:このカードが手札から墓地に送られた場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」通常魔法カード1枚を手札に加える。
②:装備カード扱いとして装備されていたこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
装備モンスターのコントローラーに1000ダメージを与える。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
激しい火花を散らし、巨大なオイルライター型の爆弾型モンスターがフィールドに降り立つ。真鍮色の装甲に歯車とパイプが複雑に絡み合う。跳ね上がった蓋の奥からは、周囲を赤く染めるほどの猛火が噴き出している。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/a58WE1c
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
ルーカスは網の目のように頭の中でルートを張り巡らせ、思考する。
(奴にとってエターナルドラゴンを倒さずとも、他の攻撃表示モンスターへの一撃か、効果ダメージで僕のライフを0にするという手がある。おそらく、これが最も現実的な策だ)
ルーカスはデュエルディスクから浮かび上がるソリッドヴィジョンの盤面情報に目を通した後、目の前のタイプライター型爆弾を一瞥する。
(あのモンスターが僕のモンスターに装備されれば、奴の場のブレイブロードによって、僕のモンスターの攻撃力は1500ダウンする。さらに装備モンスターが戦闘破壊か除外されれば、効果により僕は1000のダメージを受けることになる。ディメンションタワーによるエンドフェイズの効果ダメージも考えれば、軽視はできない)
怜央の場に破壊耐性を与えるブレイブロードがいるため破壊はできないが、エターナルドラゴンによってこのライター・テルミットの召喚を無効にすることができる。その一手をここで使うべきか、ルーカスは迷いを見せた。
ルーカスはデュエルディスクに装填されたEXデッキの表側に視線を送る。アポロジストによって付与した完全耐性を維持するためには、EXデッキの表側カードはあと2枚しか使えない。耳元で、時計の針が進む音が聞こえる。
ルーカスは真っ直ぐと前を見据える怜央の姿を捉える。一切揺らがぬ彼の眼差しには、何か根拠があるように見えた。
完全耐性かつ攻撃力5000オーバーのエターナルドラゴンを突破するのが現実的でない以上、怜央はダイレクトアタック以外の手段で勝利を狙う可能性が高い。ライターテルミットの1000のバーンダメージが、怜央の勝率を押し上げる可能性を否定できなかった。
(仮にエターナルドラゴンの効果でこの召喚を無効にしても、エクスプロードの効果により、墓地から再びライター・テルミットを装備させられる。だがその装備先をエクスシーアで破壊してしまえば、少なくとも1000のダメージは回避できる)
スチームアーミーは共通効果として、フィールドのスチームアーミーを相手に装備させる効果を持つ。もしここでライター・テルミットの召喚を許せば、そのままルーカスのモンスターに装備されるだろう。
ディメンションタワーの効果により、ライター・テルミットが起爆するのは、装備モンスターが"除外された場合"に変わっている。つまり、装備モンスターをエクスシーアで自ら破壊すれば、1度爆発を免れることが可能だ。しかしエクスプロードによって再度ライター・テルミットが墓地より装備されれば、効果ダメージを受けることは免れない。
しかしここで召喚そのものを止めてしまえば、墓地からライター・テルミットを装備された後に、エクスシーアによる自壊で爆弾を解除すればいい。これによりライター・テルミットでのバーンダメージを与える手段は潰え、怜央がルーカスのライフを削り切る可能性は各段に下がる。
(奴の墓地のヒート・エンジニアは、墓地からの自己蘇生と、効果によるX召喚が可能。効果によるX召喚である以上、チェーンブロックを組むためエターナルドラゴンでは無効にできない)
エターナルドラゴンが無効にできるのはチェーンブロックを組まない召喚・特殊召喚のみだ。この召喚を止めなければ、おそらくエターナルドラゴンの効果を使用する機会はないだろう。
ルーカスはさらなるシミュレーションを進める。徹底的にリスクを弾きだし、どう動くべきかを判断する。簡単には結論を出さない。
(仮にレイル・エクスプレスがX召喚されたとすれば、奴はデッキから更なるモンスターを呼び出せる。ここでファーネス・メディックが呼び出されれば、墓地のライター・テルミットを復活させ、僕のモンスターに装備することができる。だが奴が動けるのはそこまでだ。僕を一撃死させる手段がない以上、奴にそのルートは選べない)
時計の針が、また頭の中で進む。
(つまり僕にとってのリスクは、次なるX召喚で僕にとって未知のモンスターが呼ばれるか、レイル・エクスプレスによる更なる展開で攻撃力を上げる手段が確保されるか。ここでライター・テルミットの召喚を無効にすれば、以降はこのモンスターによる効果ダメージを受ける機会は無いに等しい)
ディメンションタワーはエンドフェイズに、フィールドから除外されたカードの数×500のダメージを与える効果もある。その効果と戦闘ダメージを合わせて、ルーカスのライフを焼き切る戦術に出る可能性がある。その場合、ここでその召喚を無効にすれば、怜央の勝利条件を奪えるかもしれない。しかしそれには、EXデッキのカードを1枚消費し、完全耐性が剥がれるリスクが潜んでいる。
完全耐性を失うリスクを冒して1000のダメージを回避するか。それともEXデッキのカードを温存して完全耐性を維持するために、この召喚を身送るか。この時点で、明確な答えなどない。
ルーカスの選択が、勝敗を分かつ。
再び耳元で、時計の針が進む音が聞こえる。
この時、ルーカスの脳裏に、怜央の言葉が蘇った。
『知らねえようだから教えてやる。デュエルモンスターズってのはモンスターを全部倒すゲームじゃねえ。相手のライフを0にするゲームだぜ』
それは完全耐性を得たエターナルドラゴンに対して、怜央が口にしたアンサーだ。その一言が、ルーカスの決断を後押しした。
「ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンの効果発動。EXデッキのヘヴンアイズ・ヴァーチュスをデッキに戻し、その召喚を無効にする」
エターナルドラゴンが紅く染まった翼を大きく広げる。その双翼から放たれた白銀の光が、実体化しようとするライター・テルミットを包み込む。真鍮の装甲は凄まじい輝きに焼かれ、形を保てずにさらさらと分解されていく。
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP5800 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5300
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・プロフェット DEF800
⑥ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、アポロジスト×3
▲□□□■
③⑥②⑤④
□ ①
⑨⑧⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP250 手札:0
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材1) ATK2600
⑧スチームアーミー・バーン・スナイパー ATK1800
⑨スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
永続魔法:スチームアーミー・ディメンションタワー
--------------------------------------------------
遊次は目を見開いてステージ上を見つめる。同時に、怜央はその表情に陰を作る。果たしてこれは、怜央の勝利の道を断つ一手だったのだろうか。
怜央のデュエルディスクの墓地ゾーンから、1枚のカードが飛び出る。
「墓地のスチームアーミー・ヒート・エンジニアの効果発動。自分フィールドにスチームアーミーがいる時、コイツはデュエル中に1度、墓地から特殊召喚できる」
■爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1400 守備力1500
このカード名の、②の効果はデュエル中に1度しか使用できず、
①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「スチームアーミー」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れた場合、
またはX素材となったこのカードが墓地へ送られた場合、ゲームから除外される。
③:自分・相手ターンに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材として「スチームアーミー」Xモンスター1体をX召喚する。
赤錆の浮いた重厚な装甲を纏い、巨大な機械の塊が姿を現した。胸部から四肢にかけて刻まれた鮮烈な炎の紋様が、内側から溢れ出す熱量を示すように赤々と輝いている。右腕に携えた巨大なレンチは威圧的な重量感を湛え、握りしめられた左拳からは細かな火の粉が舞い上がる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/2TvljEP
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「俺はヒート・エンジニアとバーン・スナイパーでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
足元に現れた漆黒の銀河が、2体のモンスターを呑み込んでいく。2体は光を放つエネルギーへと凝縮され、渦巻く深淵の奥底へと収束していった。
「エクシーズ召喚!再び現れろ!
ランク4、スチームアーミー・レイル・エクスプレス!」
■爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)
エクシーズモンスター
ランク4/炎/機械/攻撃力2000 守備力2500
レベル4モンスター×2
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがX召喚した場合に発動できる。デッキから「スチームアーミー」罠カード1枚を手札に加える。
②:このカードのX素材を1つ取り除き、このカード以外の自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。
フィールド・墓地から2体までモンスターを選び、そのモンスターの下に重ねてX素材とする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
黒い渦が爆ぜ、もうもうと立ち昇る黒煙と共に、無数の配管と歯車を露わにした蒸気機関車が降り立つ。煙突からは赤々とした火柱が吹き出し、煤に汚れた重厚な車体は周囲の熱気を孕んで鈍く光る。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/LXkoeMH
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ここまでは彼の想定通りの動きだ。
ルーカスは眼前の蒸気機関車を冷たい瞳で見据える。
「レイル・エクスプレスの効果発動。オーバーレイユニットを1つ使い、フィールド・墓地のスチームアーミー2体を、他のスチームアーミーXモンスターのX素材にすることができる。墓地のキー・ロケットボムとファーネス・メディックを、エクスプロードの素材とする」
レイル・エクスプレスが白い蒸気を上げると、エクスプロードの周囲を漂う光球が2つ増える。
「さらに墓地のスチームアーミー・ランタン・ナパームの効果発動。コイツは1ターンに1度、墓地からフィールドのスチームアーミーのオーバレイユニットにできる。エクスプロードの素材とする」
エクスプロードの周囲の光球がこれで計4つとなる。
「エクスプロードはオーバーレイユニット1つにつき、攻撃力が200アップする」
スチームアーミー・エクスプロード ATK3200
赤く光を放つエクスプロードの機体を見つめ、ルーカスは鼻先で笑った。
「フッ、その程度の攻撃力じゃヴィータにすら及ばないな。威勢よく吠えてたくせに、チンタラと何をやってるんだ?」
その無力さを憐れむように、ルーカスは不遜な独白を続ける。
「…いや、これも仕方ないか。あと8ヶ月で地球が滅びるのに、無駄に足掻いて時間を無駄にする知能の低い生物だからな。なら、1度味わってみればいい。何もできず、ただ"リミット"を迎えて死ぬしかない、世界中の人々の気持ちをね」
ルーカスの悪辣な言葉に、怜央は嘲笑うように口角を上げた。
「何言ってんだ?リミットを迎えてんのはテメェだぜ」
「…は?」
投げかけられた一言を理解できず、ルーカスの表情に苛立ちが滲んだ。そんなルーカスを他所に、観客席で静観する遊次の唇が、不敵な笑みへと形を変えた。まるで、全てわかっているかのように。
「レイル・エクスプレスのオーバーレイユニットを1つ使い、効果発動!デッキからスチームアーミーを1体特殊召喚する。来い、スチームアーミー・メルト・コーポラル!」
■爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
効果モンスター
レベル5/炎/機械/攻撃力2100 守備力1900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」速攻魔法1枚を手札に加える。
③:このカード以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルを1つ上げる。
白煙を吹き出す蒸気機関車から、1体の機兵が降り立った。そのモンスターは右腕には多砲身の回転式機関砲、左腕には巨大な三本爪を備えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/D0y8dXa
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「メルト・コーポラルの効果発動。特殊召喚した時、デッキからスチームアーミー速攻魔法を1枚手札に加える」
怜央はデッキから、1枚の速攻魔法を手札に加え、表へ向けた。そして、瞬時にそのカードをデュエルディスクへと装填し、発動した。
「速攻魔法発動!スチームアーミー・ブーストフレイム!」
■爆焔鉄甲加速纏炎(スチームアーミー・ブーストフレイム)
速攻魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「スチームアーミー」Xモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●そのモンスターの攻撃力はそのモンスターのX素材の数×500アップし、
1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。
また、そのモンスターとの戦闘で破壊されなかった相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊される。
●そのモンスターはこのターン、戦闘・効果で破壊されず、
そのモンスターと戦闘を行った相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊される。
「このカードは、スチームアーミーXモンスター1体を対象に発動できる。エクスプロードを対象に、そのモンスターの攻撃力はオーバーレイユニットの数×500アップし、このターン2回攻撃できる!」
エクスプロードの装甲に火の粉が散り、激しい炎がその身に宿った。燃え盛る熱量に呼応し、機体に秘められた力が高まっていく。
スチームアーミー・エクスプロード ATK5200
「なっ…」
その圧倒的な出力の高さと2回攻撃というオプションに、ルーカスは目を見開く。
「さらにエクスプロードの効果発動。オーバーレイユニットを2つ使い、墓地のライター・テルミットをヘヴンアイズ・プロフェットに装備し、墓地のランタン・ナパームをオスティアリウスに装備する。ブレイブロード・エクスプレスの効果により、モンスターを装備した相手モンスターは、その装備カードの攻撃力分ダウンする」
エクスプロードの周囲を漂う光球が2つ弾け、その瞬間、ルーカスのフィールドの2体のモンスターの背後に蒸気が上がる。プロフェットの身に、その体躯よりも巨大なライター型の爆弾が巻き付けられる。鉄の塊が放つ圧倒的な質量が、華奢な肩へと容赦なく食い込んでいく。そしてオスティアリウスの身にも、ランタン型の爆弾が鎖を巻き付ける。
そしてオーバーレイユニットが2つ減ったことで、エクスプロードの攻撃力は400下がる。
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【ルーカス】
LP5800 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5300
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK100
(ランタン・ナパーム装備)
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・プロフェット DEF800
(ライター・テルミット装備)
⑥ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、アポロジスト×3
▲□□□■
③⑥②⑤④
□ ①
⑨⑧⑦⑩□
□□□□□
【怜央】
LP150 手札:0
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材2) ATK4800
⑧スチームアーミー・レイル・エクスプレス(X素材0) ATK2000
⑨スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
⑩スチームアーミー・メルト・コーポラル ATK2100
永続魔法:スチームアーミー・ディメンションタワー
--------------------------------------------------
これが、怜央の盤面の完成系だ。エクスプロードの攻撃力は驚異の数値を叩きだしている。
灯は明るい声で希望を紡ぐ。
「ブレイブロードの攻撃力ダウンと、ライター・テルミットの効果ダメージもある。このまま攻撃力5000で2回攻撃すれば、怜央の勝ちだよね…!」
しかしイーサンが隣で首を振る。
「オスティアリウスには攻撃を1度無効にする効果がある。それにエクスシーアで自分のモンスターを破壊することもできる。そう単純じゃないはずだ」
あまりにも想定できるルートが多すぎる。外野には、この現状を瞬時に分析することなど不可能に等しかった。
しかし、当事者にとってはそうではない。
ジェンは気付いていた。
ルーカスの顔色が明らかに変わったことに。
だが、ルーカスは何も言わない。
まだ怜央が正しいルートを導き出せる保証などない。
否、瞬時に膨大なルートからたった1つの正解を弾き出すことなど、不可能だと考えているからだ。そんな芸当が、目の前の男にできるはずがないと。
暫しの静寂の後、怜央が腕を前に突き出す。
それこそが激戦の火蓋を切る合図だった。
「バトル!エクスプロードで、オスティアリウスに攻撃!」
このままだと、戦闘ダメージと、ライター・テルミットとディメンションタワーの効果ダメージの合計で、ルーカスのライフは0となる。敗北の寸前、王手がかかった状況だ。つまり、ルーカスは敗北を避けるための行動を取らざるを得ない。
ルーカスは自らのデュエルディスクに視線を送る。EXデッキの表側カードは4枚。その内3枚は、ルーカスのモンスターに完全耐性を与えるアポロジストだ。つまり、完全耐性を崩さずに効果を使えるのは、あと1度だけだ。
仮にエクスシーアの破壊効果でオスティアリウスを破壊したとしても、エクスプロードには2度の攻撃が残されている。エクスプロードでエクスシーアとヴィータを攻撃すれば、戦闘ダメージの合計は3500。さらにプロフェットをエクスプロードの効果で除外すれば、ライター・テルミットにより1000の効果ダメージが入る。これらのカードは全てディメンションタワーにより除外されている。エンドフェイズにディメンションタワーによって除外されたカード×500のダメージが入り、ルーカスのライフは0となってしまう。
つまり敗北を避ける手段は一つ。選択肢はなかった。
ルーカスは奥歯を噛み、切り裂くように声を上げる。
「ヘヴンアイズ・オスティアリウスの効果発動!EXデッキのヘヴンアイズ・オファニムをデッキに戻し、その攻撃を無効にする!」
エクスプロードは拳に炎を宿らせ、空気を焼きながら突き進む。羽交い絞めにされたままのオスティアリウスは、のしかかる重圧に抗い、指先を地面へ突き立てた。その瞬間、地から噴き上がった蒼い壁が、エクスプロードの攻撃を弾き飛ばす。
すかさずエクスプロードの2撃目が放たれると思われたが、怜央の視線は黒き蒸気機関車へと映る。
「スチームアーミー・レイルエクスプレスで、ヘヴンアイズ・プロフェットに攻撃!」
耳を貫く汽笛を合図に、巨大な動輪が火花を散らして回転を始める。すると、怜央の背後にそびえるディメンションタワーから、溢れ出した黒煙が戦場を覆う。その煙は走り出した機関車を追い抜く勢いで纏わりつき、鉄塊を影の弾丸へと変貌させた。
逃げることも、叫ぶこともできない。凄まじい速度で迫った鉄の塊が彼女を撥ね飛ばし、その姿を瞬時に粉砕する。凄まじい風圧を残してルーカスの横を通り抜けた機関車は、空中に現れたレールを辿って怜央の傍らへと滑らかに帰還した。
霧散する煙が晴れると、ライター・テルミットが先端から火花を散らし、今にも弾けそうな震動を繰り返しながら、決発の時を待っていた。
この時、それまで静観を貫いていたオスカーが不意に壁から背を離した。何かに導かれるように、一歩、また一歩とステージへ歩を進める。その張り詰めた背中を、隣にいた美蘭とジェンが息を呑んで見つめた。
苦渋を滲ませるルーカスに対し、怜央は容赦なく次の一手を突きつけた。
「ライター・テルミットの効果発動。装備モンスターが除外された時、同じ縦列と隣のカードを全て除外する」
プロフェットが存在していたモンスターゾーンの周囲には、破壊効果を残しているエクスシーアと、完全耐性を持つエターナルドラゴン、ヴィータが存在する。この時、全ての観衆達は怜央の意図に気が付いた。
美蘭、ジェンは目を見開き、アリシアは驚きの声を漏らす。蒼月は静かに笑みを浮かべ、ハイドはまさに観客の如く背もたれに腰掛ける。
怜央はじっと据わった目で、言い聞かせるようにルーカスに言う。
「さらにライター・テルミットの効果発動。装備モンスターが除外されたことでこのカードが墓地に送られた時、相手に1000のダメージを与える」
「このままエクスシーアが除外されれば、俺はエクスプロードでオスティアリウスを攻撃する。ライター・テルミットのダメージと合わせりゃ、テメェは死ぬ。どうすべきかは、わかってるよな?」
怜央は感情を交えず、ただ冷徹に言葉を吐く。射貫くような視線を返すルーカスだったが、最適解を選ぼうとする理性とは裏腹に、強張った身体がその決断を拒んでいる。
どうすべきか。怜央は問う。
しかしなぜルーカスが決断できないのか。
その答えはこの場の誰もが理解していた。
(今エクスシーアの効果でオスティアリウスを破壊しなきゃ、オスティアリウスに攻撃されてルーカスちゃんの負け。でもそのためには…)
美蘭が目を細めるステージの上、ルーカスはデュエルディスクに視線を向ける。その耳元では、はっきりと時計の針が進む音が聞こえている。
「俺が引いたレールを進んでもらうぜ。
それか今、ここで死ぬか?」
タイムリミットは、すぐそこに迫っている。
否、もうリミットを迎えている。
それはルーカスも気づいていた。
そしてルーカスは苦悶の表情でEXデッキから1枚のカードを取り出す。
「…ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動…。EXデッキのヘヴンアイズ・アポロジストをデッキに戻し、ヘヴンアイズ・オスティアリウスを破壊する…!」
それはルーカスにとって最後の砦。エターナルドラゴンとヴィータの完全耐性を維持するための心臓部。しかしルーカスのEXデッキにはもうアポロジスト3枚しか残っていない。心臓にメスを入れる以外、生き残る術がないのだ。
苦肉の宣言に応じ、エクスシーアはその足を進め、オスティアリウスの前に立つ。立ちはだかるエクスシーアを前に、オスティアリウスは静かに膝をついた。最期の時を悟ったように深く瞼を閉じると、迷いのない一太刀がその身体を容赦なく両断する。衝撃と共に弾けた少年の姿は、眩い光の粒子へと散り、戦場から静かに消え失せた。
しかしそれは悲劇の序章に過ぎない。
「アポロジストがEXデッキに3枚ある限り、ヴィータとエターナルドラゴンはモンスター効果を受けなかった。だが…ようやく化けの皮を剥がせるぜ」
怜央の眼光がさらに鋭くなる。
「スチームアーミー・ライター・テルミットの効果!テメェに1000のダメージを与える!さらにエクスシーア、ヴィータ、エターナルドラゴン!そいつら全員、俺の目の前から消えてもらう!」
耳をつんざく爆音が炸裂し、ライター・テルミットがその内側に秘めた破壊エネルギーを一気に解放した。視界は真っ白な閃光に塗りつぶされ、凄まじい衝撃波が同心円状に広がる。
「うあああ!!」
ルーカス LP 5800→4800
噴き上がった爆炎は、天を衝くほどの火柱となって荒れ狂い、大気そのものを焦がしながらいつまでもその場に留まり続けた。揺らめく熱波が逃げ場を失い、視界を遮るほどの火の粉が舞い散るなか、地獄のような焦熱の向こう側に、ようやく3体の影が絶望的な姿を現す。
エクスシーアは全身の装甲に亀裂を走らせ、折れかけた剣を支えに立っていたが、すぐに力なく崩れ落ちた。白く輝いていたヴィータの幹は、猛火に晒されて無残な炭火へと変わり、埋め込まれていた無数の瞳は全て塞がっている。
そして、絶対的な威容を誇っていたエターナルドラゴンが、苦悶に満ちた呻きを上げながら、その巨躯を地響きと共に沈めた。
破壊の余韻を塗りつぶすように、怜央の背後にそびえるディメンションタワーから、粘り気のある濃密な黒煙が噴き出す。意志を持つ獣のように蠢く煙は、炎すらも呑み込みながら満身創痍の3体へと這い寄り、その身をまとめて闇の深淵へと引きずり込んでいった。
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP4800 手札:0
①ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):アポロジスト×2
▲□□□■
□①□□□
□ □
⑨⑧⑦⑩□
□□□□□
【怜央】
LP150 手札:0
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材2) ATK4800
⑧スチームアーミー・レイル・エクスプレス(X素材0) ATK2000
⑨スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
⑩スチームアーミー・メルト・コーポラル ATK2100
永続魔法:スチームアーミー・ディメンションタワー
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絶対的な支配力を誇っていたルーカスのフィールドは、ただ1体のモンスターをモンスターを残すのみ。対する怜央のフィールドは、漆黒の錆びた鉄塊で埋め尽くされている。
あまりに急激のことに、美蘭やアリシアはステージを見つめたまま固まっている。ルーカスは膝を折り、怜央を睨みつける。
「なんで…お前みたいなドブネズミが…」
怜央はフィールドの中央を悠然と渡り歩き、ルーカスの前に立つ。
「追い詰められたドブネズミは何をしでかすかわかんねえからな。窮鼠……なんとかってヤツだ」
ルーカスは腑に落ちない様子で、オーケストラホールの床の木目を見つめる。
怜央がライター・テルミットを召喚した際、ルーカスはライター・テルミットの効果ダメージがあることで、怜央が完全耐性を攻略せずともライフを削りきることを警戒し、その召喚を無効にした。一度召喚を無効にしてしまえば、エクスプロードの効果で再度装備されても、装備先のモンスターを破壊すれば効果ダメージは受けないからだ。
実際はエクスプロードの圧倒的な攻撃力と2回攻撃という、ルーカスの予想を上回る火力が出力されたことで、効果ダメージのケアに手がまわらず、ただエクスプロードの攻撃を凌ぐためだけに、攻撃無効と破壊効果を使わされてしまった。そこでEXデッキのリミットを超え、アポロジストを消費せざるを得ず、完全耐性が崩壊するに至った。
これこそが怜央の策略。唯一の勝利への道筋。
常に攻めの手を撃ち続け、EXデッキの表側カードという命綱に負担をかけ続けた。そしてトドメに相手の予想を上回る詰めの「ブーストフレイム」により、ついにその命綱は切れた。
ルーカスは弾けたように立ち上がり、怜央に詰め寄る。
「そもそも、EXデッキが足りなくなったのは、ライター・テルミットの召喚を無効にするという僕の"判断"があったからだ!もしあの召喚を無効にしていなければ、お前のプランは破綻していた!」
もしライター・テルミットの召喚を無効にしていなければ、EXデッキにはあと1枚、アポロジスト以外のカードが残っていた。そうなればエクスプロードの攻撃を2度防いでも、エターナルドラゴンとヴィータの完全耐性は維持され、怜央にはルーカスのライフを削り切る手段はなかった。
つまりルーカスがライター・テルミットの召喚を無効にしていなければ、怜央は敗北していた。あのルーカスの判断一つが、明確に勝敗に結びついていたのだ。故に、ルーカスは腑に落ちない。その不確定要素を怜央に計算できるはずがないと。
しかし怜央は、ルーカスを見上げながら淡々と言う。
「テメェなら、止める。"もしものこと"を想像して、当然のように一部を切り捨てるテメェならな」
突きつけられた言葉が、ルーカスの奥底にある何かに火をつけた。怒りに任せて怜央の胸ぐらへと荒々しく掴みかかる。
「これで自分が正しいと証明したつもりか!?こんなことで…!!」
「正しい?んなこたァ知るか。気に食わねえからブッ潰すだけだ」
2人の視線が真正面からぶつかり合う。胸ぐらを掴んだルーカスの右手が小刻みに震える。
「お前のような浅はかな凡人が、いつも世界を狂わせるッ…!お前達のせいで、世界中の人が死ぬんだぞ…!」
怜央もまたルーカスの胸ぐらに迫り、真っ向から言葉を叩きつけた。
「それはテメェらの頭ン中だけの話だろうが。俺からしてみりゃ、モンスターワールドから何十も何百もモンスターが流れ込んでくる時点で、隕石が落ちる前に地球が終わるとしか思えねェな…!」
それは、かつてコラプスの地獄をその身で味わった者だけが持つ、重く鋭い実感だった。ルーカスは次の言葉を紡ぐことができず、ただ苦渋に満ちた表情で奥歯を噛み締める。
「ウム、あながち否定はできん。一体で町一つが壊滅したのだからな」
静まり返る場の空気など意に介さず、ハイドは他人事のように冷淡に頷いた。
怜央は掴んでいた胸ぐらを無造作に放すと、デュエルディスクのブレードに指を走らせた。
「エクスプロードの効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのモンスターを1体破壊する。ヘヴンアイズ・ドミニオンズを破壊」
宣告と共に、背後に控えていたエクスプロードが噴射炎を上げて急加速した。逃げ場を奪うようにドミニオンズの翼を力任せに鷲掴みにすると、左腕のバーナーをその喉元へ零距離で突きつける。そして放たれた猛烈な火炎が標的を芯から焼き尽くし、ドミニオンズは悲鳴を上げて燃え尽きた。火の粉が舞う盤面には、ルーカスを守る盾はもう一枚も残されていない。
エクシーズ素材が減ったことでエクスプロードの攻撃力は4600に下がる。
「デュエルモンスターズは、モンスターを全て倒すゲームじゃない。そう言ってたじゃないか…」
ルーカスは弱弱しい声で呟く。
「だがこうも言ったはずだぜ。全部ぶっ壊すってな」
怜央は揺るがぬ声で言葉を返す。
その場に項垂れるルーカスを、怜央と背後に控えるエクスプロードが威圧する。不気味に輝く二対の赤い眼が、逃げ場のない敗者を無慈悲に見下ろしていた。
「テメェみたいな野郎は、涼しいツラして、いつも頭ン中で勝手に結論を出しやがる。"今から新しい道を探すなんて無理"?違ェだろ。テメェらはどうせ最初っから、そんな道なんざ眼中になかっただろうが」
戦いの憔悴ゆえか、それとも返す言葉が見つからなかっただけなのか、ルーカスは何も言わない。
「地べた這いずって、足掻いて、指一つ動かせなくなって…それでもどうしようなかった時に初めて"無理でした"だろうが。泣きながら世界中に頭下げて"どうしても犠牲が出ちまいます、スイマセン"だろうが。そこまでやったらこっちも多少は納得するかもな」
その言葉はあまりにも愚直だった。しかしかつてならば鼻で笑い、流していたであろう彼の言葉を、今のルーカスは受け止めざるを得なかった。デュエルがまるで刃のように、自分の喉元に突き立てられている感覚だった。
(なんだ、この状況は…。
まるで僕が…間違っているみたいじゃないか…!)
怜央の言葉を受け、観客席に立つ蒼月が静かに口を開く。
「足掻く前に正しき決断をする…それが指導者のあるべき姿ですがね」
その言葉を、深く椅子に腰を据えたままのハイドが引き取った。
「所詮は机上の空論、答えなどないのだよ。どちらも正しく、どちらも間違っている。だが…そこに唯一正負を付けられるのがデュエルだ。
勝者こそが正しい。なんと明快なことか!」
怜央を見つめ、遊次たちの胸の奥底で抗いようのない何かがせり上がった。それは、魂を直接揺さぶるような、激しく燃え滾る熱だ。
どう足掻いても覆すことなど不可能と思われた状況を、怜央は文字通り「命」を掛けて、足掻き、ここまで辿り着いた。
彼のデュエルこそが、遊次達に感じさせた。
自分達の進むべき道は間違っていない、と。
「何かを切り捨てる前に、血ヘド吐くほど足掻いてみやがれ。その発想すらねえお坊ちゃまが、世界の舵を握るだ?笑わせんな」
怜央は力強く一歩を踏み出した。呼応するように、背後のエクスプロードが機体から紅蓮の炎を噴き上げ、周囲の空気を歪ませるほどの威圧感を放つ。
だが、ルーカスもただでは倒れなかった。絶望的なプレッシャーを跳ね除けて立ち上がると、真正面から怜央の瞳を睨み据える。
「勝った気でいるなよ、ドブネズミ。お前達じゃ兄さんには勝てない。世界を動かすのは、僕達だ…!!」
その叫びは、これまで積み上げてきた己の正義と歩みを否定したくないが故の、悲痛な拒絶だった。怜央は何も答えず、ただ強く握り締めた拳を前方へと突き出した。
「ブレイブロード・エクスプレスで、ダイレクトアタック」
ブレイブロード・エクスプレスが全身から猛烈な蒸気を噴き上げ、その重厚な車躯を紅蓮の炎で包み込む。眼前に迫り来るブレイブロード・エクスプレスの圧倒的な速度に、ルーカスは息を呑み、驚愕に目を見開いた。
次の瞬間、車体から噴き出した蒸気が猛烈な紅蓮の炎を纏い、巨大な業火の渦を形成する。大気を引き裂く轟音と共に灼熱の螺旋が正面から激突し、ルーカスの姿は瞬く間に猛烈な熱波の中へと呑み込まれていった。
「うああああああ!!」
ルーカス LP4800 → 2300
崩れ落ちたルーカスは、床に膝をついたまま頭上の怜央を仰ぎ見る。鋭い憎悪を向けながらも、その瞳の奥には拭いきれない怯えが色濃く張り付いていた。
しかし怜央は問答無用で手を伸ばすと、胸倉を力任せに掴み取り、抗う間も与えずその体を強引に引きずり上げた。
そして怜央は無言のまま、右の拳を硬く握り締めた。肩を大きく引き、今にも叩きつけんばかりの勢いで拳を後方へと溜める。
呼応するように、背後に立つエクスプロードもまた、右腕に猛烈な火炎を爆ぜさせた。主の動きをなぞるようにその拳を深く引き、放たれる一撃の重みを予感させる。
「やめ…ろ……」
ルーカスは思わず、震えた声を上げる。
しかし、怜央は無慈悲にも、最後通告を放つ。
「トドメだ。スチームアーミー・エクスプロードで、ダイレクトアタック」
エクスプロードの巨大な拳に紅蓮の火炎が猛烈な勢いで集束していく。大気を焦がす熱波の中、怜央は射抜くような鋭い眼差しをルーカスへ向け、引導を渡す言葉を叩きつけた。
「ノブレスなんとかだか知らねえが…世界はテメェらなんざお呼びじゃねえんだよ」
溜められたエネルギーが爆発し、エクスプロードの拳が真っ直ぐに振り抜かれる。怜央に胸倉を掴まれていることで、ルーカスは逃げ場のない衝撃を真正面から浴びる。
迫る拳に目を見開いたのも束の間。気付けばルーカスは激しく舞い散る火花の中に呑み込まれ、抗う術もなく宙へと弾き飛ばされていた。
ルーカス LP2300→0
怜央は振り抜くことのなかった右拳を、ゆっくりと降ろす。
ルーカスの体は、凄まじい衝撃と共にステージの床へ叩きつけられた。見上げる視界を支配するのは、天井に吊るされた豪華なシャンデリア。白銀の光だけが、朦朧とする彼の意識を無慈悲に照らし出す。
「勝者、鉄城怜央。契約に基づき、パラドックスブリッジ"デーヴァ"の生体認証使用権はイーサン・レイノルズへ返還されます。また、ルーカス・ヴラッドウッドに対し、Nextのメンバーへの強制オースデュエルの発動を禁じます」
静寂が支配するオーケストラホールに、DDASの機械音声だけが響き渡った。
第73話「リミット」 完
怜央の勝利により、両者は互いに3つの鍵を有する。
オスカー以外の3人は契約により強制オースデュエルを封じられている。もしオスカーが敗北し強制オースデュエルが使用できなくなれば、ニーズヘッグがNextから鍵を奪う手段は存在せず、セカンド・コラプス計画は破綻を禁じ得ない。
追い詰められたオスカーは、全てを懸けた一手を打つ。
そして開幕する、遊次とオスカーの決戦。
遊次はオスカーの戦術を徹底的に潰す、ある戦略を仕掛ける。
「もし道を違えれば…神楽遊次は破滅する」
次回 第74話「悪魔の心臓」
これまで1年以上、週1回更新を続けてきましたが、次週以降、3週間か4週間ほど更新をお休みします。
理由は、この次の回のデュエル構成が過去最大に時間を要していることと、次章の流れを構成したいというものです。
それ以降は基本的に週1更新を続けたいと思いますが、かなり時間を使わないと厳しいので、場合によっては遅くなるかと思います。
申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
追記:3/11から投稿再開します。
なんでも屋Next、ニーズヘッグ、デュエリア政府が一堂に会するデュエリア・シンフォニーホール。
その舞台上で、怜央VSルーカスのデュエルの幕が開いた。
EXデッキにヘヴンアイズ・アポロジストが3枚存在する限り、ルーカスの切り札「ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン」は完全耐性を得る。
しかし怜央は、破壊を除外に変える永続魔法「スチームアーミー・ディメンションタワー」によって、EXデッキを削り、その完全耐性を奪う作戦に出る。
意表を突きダメージを与えることには成功したが、ルーカスの場には完全耐性を持ったエターナルドラゴンが未だ威圧感を放っている。
ルーカスは怜央の猛攻を掻い潜り、新たなリンクモンスター「ヘヴンアイズ・ヴィータ」を召喚。
そのモンスターはお互いのターンにP召喚を行う強力な効果を持っていた。それにより、ルーカスの場には6体のモンスターが立ち並ぶ。
さらにEXデッキにはカードが充填され、ヘヴンアイズ・ヴィータまでもが完全耐性を得てしまう。
追い詰められた怜央。
この絶体絶命の状況を切り抜けることはできるのか。
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【ルーカス】
LP6600 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5700
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・ドミニオンズ ATK2400
⑤ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑥ヘヴンアイズ・ヴァーチュス ATK2200
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):ヘラルド、プロフェット、オファニム、アポロジスト×3
▲□□□■
③④②⑥⑤
□ ①
□⑦⑧□⑨
□□□□□
【怜央】
LP4000 手札:1(フォノグラフ・ソニック)
⑦スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
⑧スチームアーミー・エクスプロード(X素材1) ATK2600
⑨スチームアーミー・マヌーヴァー・インファントリー DEF500
フィールド魔法:スチームアーミー・デッドゾーン
永続魔法:スチームアーミー・サプリングバトルライン、スチームアーミー・ディメンションタワー
永続罠:命取りの重鎧
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「P召喚されたエクスシーアの効果発動!
EXデッキから特殊召喚された時、デッキからPカードを2枚、EXデッキへ送る」
「さらにP召喚されたドミニオンズの効果発動!
EXデッキから特殊召喚された時、ターン終了時まで相手の表側カードの効果を全て無効にする!」
怜央の場には装備カードを装備した相手モンスターを守備表示にしてその効果を奪う永続罠「命取りの重鎧」と、「スチームアーミー」カードの効果破壊を防ぐブレイブロード・エクスプレス、さらには自分の魔法・罠の破壊を防ぐサプリングバトルラインが存在している。
これらが全て無効化されてしまえば、迫り来る猛攻を、ただの無機質な壁と化したモンスターで耐え凌ぐ他ない。
瞬間、怜央は動いた。
「マヌーヴァー・インファントリーの効果発動!
自分フィールドのスチームアーミーを相手モンスターに装備する!
エクスプロードをドミニオンズに装備!」
この効果が通れば、永続罠「命取りの重鎧」により、ドミニオンズは守備表示となり効果は無効化される。
そうなれば怜央の場の効果破壊耐性は維持される。
怜央の墓地の「スチームアーミー・バリケイド・ビルダー」は、相手ターンに自分のモンスターに戦闘耐性を与える効果を持つため、効果破壊・戦闘破壊耐性をモンスターに与えることで、このターンを凌ぐことができると考えたのだ。
しかし、逆もまた然りだ。
怜央のフィールドのカードを無効化することで、ルーカスは勝利に近づくことができる。
どんな手段を取ろうとも、この好機を逃すはずはなかった。
「ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動!
EXデッキのヘヴンアイズ・プロフェットをデッキに戻し、フィールドのカード1枚を破壊する!
僕はヘヴンアイズ・ドミニオンズを破壊する!」
エクスシーアが力強く翼を打ち、一気に空へと躍り出た。
立ち並ぶ天使たちの目前を暴風となって突き抜け、フィールドの逆側に位置するドミニオンズをその刃で捉える。
すれ違いざまに深く身を断ち切り、その勢いのまま翼を大きく翻して反転すると、悠然と元の位置へと舞い戻るその背後で、切り裂かれたドミニオンズが光の粒子となって爆ぜた。
「ドミニオンズはもうフィールドから消えた。
お前のモンスターが装備されることもなく、ドミニオンズの効果は無効にならない」
半透明のドミニオンズが宙に浮かび、その錫杖を掲げる。
放たれた凄まじい密度の白光が、怜央のフィールドを波状に呑み込んだ。
光に晒されたカードは、まるで命を奪われたかのように無機質な灰色へと変貌していった。
怜央の表情が一層険しくなる。
観客席の遊次達は、怜央が置かれた現状にただ立ちすくむ他なかった。
「チェーン1のエクスシーアの効果により、デッキからEXデッキにヘヴンアイズ・アルケー、ヘヴンアイズ・アコライトを置く。さらにエターナルドラゴンはEXデッキの表側カードの数×200攻撃力がアップする。アポロジストで付与した攻撃力上昇効果と合わせて、攻撃力は6100!」
その圧倒的な数値に遊次は唾を呑み込む。
さらにエターナルドラゴンはカントルのP効果により、モンスターを破壊した場合に、続けてモンスターへの攻撃が可能だ。
「天罰の時間だ、ドブネズミ。ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンで、エクスプロードに攻撃!」
この一撃が通れば、怜央のライフは風前の灯火となる。
しかしここで、怜央は手札のカードを表側へ向けた。
「手札のスチームアーミー・フォノグラフ・ソニックの効果発動!
このカードは相手ターン中に、手札から相手モンスターに装備できる!」
蒸気と不気味なノイズを吐き出しながら、真鍮の巨大なホーンを掲げ、側面にはスピーカーを突き出した、蓄音機型の爆弾が現れた。
ホーンを支える重厚な基部は丸みを帯びた金属の塊でできており、その底面には鋭いスパイクが隙間なく並んでいる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/de9fXJ2
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能
本体から勢いよく射出された太い鎖が、空を裂いてエターナルドラゴンの巨体へと襲いかかった。何重にも巻き付いた鋼鉄の鎖は鱗をみしりと締め上げ、先端の重い鉄球がドラゴンの身体に爆弾を強引に固定していく。
「フォノグラフ・ソニックが装備されたモンスターが戦闘を行う時、俺への戦闘ダメージは0となり、戦闘を行うモンスターは破壊されない!」
■爆焔鉄甲 蓄音轟鳴(フォノグラフ・ソニック)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1100 守備力1300
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法&罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:相手メインフェイズ・バトルフェイズに、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
手札・フィールドのこのカードを、対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
②:このカードの装備モンスターが戦闘を行う場合、相手への戦闘ダメージは0になり、
モンスターと戦闘する場合、その相手モンスターはその戦闘で破壊されない。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
「エターナルドラゴンはカードの効果を受けねえが、フォノグラフ・ソニックの効果はエターナルドラゴンに対してじゃなく"俺"への効果だ。よってこのバトルで俺が受けるダメージは0となり、エクスプロードは破壊されねえ」
エターナルドラゴンの翼から放たれた光の雨が、エクスプロードへと降り注ぐ。しかしその瞬間、龍の背に固定されたフォノグラフ・ソニックが激しく共鳴した。ホーンから放たれた重厚な音波が壁となり、エクスプロードと怜央を包み込む。襲いかかる光の矢はすべて音のバリアに弾かれ、彼らに届く前に霧散する。
「あの爆弾が手札から装備されたのは攻撃宣言時…。装備直後に攻撃が行われる以上、ルーカス・ヴラッドウッドが爆弾を破壊するタイミングはなく、戦闘ダメージを確実に防げるというわけか」
アリシアは眼前の光景を見つめ、思考を整理するように呟いた。
その言葉に頷くように、蒼月が隣から口を開く。
「ヘヴンアイズ・カントルでエターナルドラゴンに付与した効果は、あくまで"モンスターを破壊できた時、連続攻撃が可能"というもの。モンスターを破壊できなかった以上、エターナルドラゴンはもう攻撃できませんね」
怜央は最大の脅威であったエターナルドラゴンの猛攻をなんとか凌いだ。 遊次たちは張り詰めていた緊張を解き、溜まっていた熱を逃がすように、深く長い息を吐いた。
だが、安堵の時間は一瞬だった。視線の先、ルーカスのフィールドには未だ5体ものモンスターが攻撃を残している。遊次の顔から緩みが消え、その鋭い視線が再び戦場へと向けられた。
「想定通りの結果だ。続いてヘヴンアイズ・ヴィータで、ブレイブロード・エクスプレスへ攻撃」
その宣言に対して、即座に怜央はデュエルディスクから1枚のカードを取り出す。
「墓地のスチームアーミー・バリケイド・ビルダーの効果発動!
このカードを墓地から除外することで、スチームアーミー1体はこのターン、バトルで破壊されない!
対象はブレイブロード・エクスプレス!」
■爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1200 守備力1800
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できず、
③の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードをX素材とするXモンスターは相手の効果の対象にならない。
③:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、戦闘で破壊されない。
この効果は相手ターンでも発動できる。
「小賢しい。ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動。
EXデッキのカードを1枚デッキに戻し、フィールドのカードを破壊できる。このモンスターがEXデッキから特殊召喚されている場合、この効果は1ターンに2度まで使用できる。EXデッキのヘヴンアイズ・アコライトをデッキに戻し、ブレイブロード・エクスプレスを破壊」
ブレイブロードが戦闘破壊できなければ、それ以上は怜央に戦闘で致命傷を与えることができない。ルーカスは迷いなく破壊効果を使用した。
エクスシーアが低く鋭く踏み込み、赤い列車へと肉薄した。横向きに振られた刃が一文字の光を刻み、ブレイブロード・エクスプレスの車体を真っ向から両断する。二つに分かたれた巨躯は、そのまま音を立てて爆ぜ散った。
「ブレイブロードが破壊されたことで、バトルは巻き戻る。
ヘヴンアイズ・ヴィータでエクスプロードに攻撃!」
ヘヴンアイズ・ヴィータの幹に並ぶ青い瞳が、一斉にエクスプロードを射抜く。その視線に引き寄せられるように、枝から放たれた深紅の葉が巨大な渦となって、機体を一気に飲み込んだ。破壊の余波は赤い波となって戦場を走り、持ち主である怜央を激しく打ち据えた。
「ぐぁあっ…!」
怜央 LP4000→3000
「ヘヴンアイズ・オスティアリウスで、スチームアーミー・マヌーヴァー・インファントリーを攻撃」
純白の装束に身を包んだ金髪の少年、オスティアリウスが静かに進み出た。彼が両手を広げると、空間に青白い光の線が奔り、複雑な幾何学模様を描く結界となってマヌーヴァー・インファントリーを包囲した。
結界は一瞬で収縮し、内側へ向けて凄まじい光の奔流を解き放つ。機械の兵士は抵抗する間もなく光の渦に飲み込まれ、跡形もなく砕け散る。
「マヌーヴァー・インファントリーが戦闘で破壊された時、効果発動!
デッキからスチームアーミー・メルト・コーポラルを守備表示で特殊召喚する!」
■爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
効果モンスター
レベル5/炎/機械/攻撃力2100 守備力1900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」速攻魔法1枚を手札に加える。
③:このカード以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルを1つ上げる。
右腕には多砲身の回転式機関砲、左腕には巨大な三本爪を備えた機械の兵士が、重々しくその場に立ち塞がった。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/D0y8dXa
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「メルト・コーポラルの特殊召喚時、効果発動。
デッキからスチームアーミー速攻魔法を1枚手札に加える。手札に加えるのは『スチームアーミー・アサルト』」
怜央のフィールドには今特殊召喚されたモンスター1体のみ。
なんとか命を繋いでいる状況だ。
「ヘヴンアイズ・ヴァーチュスで、メルト・コーポラルへ攻撃」
ヴァーチュスの翼が白光を蓄え、一気に振り抜かれる。
放たれた無数の光羽が、メルト・コーポラルの錆びた装甲を網の目のように穿った。
鉄の巨躯は内側から爆砕し、破壊される。
「視界がスッキリしたな。
ヘヴンアイズ・エクスシーアで、ダイレクトアタック」
エクスシーアが白銀の大剣を横なぎに振り抜く。
放たれた光の刃が、空気を裂く低い唸りを上げて怜央を襲った。
「ぐあああッ!」
怜央 LP2800→300
怜央の体は弾かれたように後方に飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。
その姿に視線を送りながら、遊次はこめかみを指で押さえ、長く息を吐き出す。本来ならば重い一撃を受けた怜央を憂慮すべき場面だ。しかし今の遊次を支配していたのは、敗北の淵で踏み止まったという強烈な安堵だった。
怜央は正面をまっすぐに睨みつけたまま、ゆっくりと体を引き起こした。
「しぶとさだけは一級品だな」
ルーカスは、立ち上がる怜央の姿を冷淡な瞳で静かに見下ろしている。
「…誰かさんが、ネズミ1匹駆除する力もねえおかげでな」
怜央は窮地に追い込まれながらも、不敵な笑みを浮かべる。
灯は観客席からその横顔を見つめる。
彼はいつもそうだった。どんなに追い詰められようとも、屈することを知らない。かつて真なる絶望の底にいた彼にとって、この程度の状況はもはや窮地ですらないのかもしれないと感じた。そして同時に、その姿に自分が何度も勇気を与えられたことを思い出す。
「むしろ一思いに殺してあげた方が、お前にとっても幸せだったんだけどな。メインフェイズ2。ヘヴンアイズ・ヴァーチュスの効果発動。EXデッキのヘヴンアイズ・ヘラルドをデッキに戻し、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する」
■天界眼の力翼霊(ヘヴンアイズ・ヴァーチュス)
ペンデュラム
レベル6/光/天使/攻2200 守2100 スケール1
【P効果】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分が「ヘヴンアイズ」モンスターをP召喚した場合に発動できる。
相手の魔法・罠カードを全て破壊する。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがEXデッキから特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体を特殊召喚し、
デッキから「ヘヴンアイズ」Pモンスター1体をEXデッキに表側で加える。
②:自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。
相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。
ヴァーチュスが大きく大翼を広げ、力強く振り下ろした。巻き起こった刃のような烈風に、怜央は思わず両手でその身を守る。しかし、発動していた4枚もの魔法・罠カードは全て割れるように破壊される。
フィールド魔法が破壊されたことで、有刺鉄線の支配する戦場は、絢爛たるオーケストラホールへと戻った。
ドミニオンズによって怜央の表側カードの効果は全て無効となったが、その効力はエンドフェイズまでだ。
ルーカスはその希望さえも完全に摘む選択をした。
「…ディメンションタワーがフィールドから墓地へ送られた時、除外されたスチームアーミーを手札に加えるか、特殊召喚できる。
来い、スチームアーミー・バリケイド・ビルダー」
フィールドに噴き出した黒い蒸気から、赤錆にまみれた鉄の巨躯が姿を現す。
円筒形の頭部からは白い煙が上がり、左腕には巨大な盾を構えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/PKfLmeQ
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「僕はこれでターンエンドだ」
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【ルーカス】
LP6600 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5700
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・ヴァーチュス ATK2200
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、ドミニオンズ、アルケー、アポロジスト×3
▲□□□■
③□②⑤④
□ ①
□□⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP300 手札:1(スチームアーミー・アサルト)
⑦スチームアーミー・バリケイド・ビルダー DEF1800
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「ブラボー!よく持ち堪えた!
それでこそ、黒龍に抗う勇者に相応しい生き様だよ」
ハイドの拍手が静かなオーケストラホールに響き渡る。怜央はただその姿に一瞬、冷たい視線を送るだけだった。
明らかなるルーカスの優勢だが、オスカーは依然何も言わず、ただ壁際で戦いを静観している。その意識は完全に戦いの中へと入り込んでいる。そして隣にいる美蘭やジェンも、決して油断の言葉を口にはしなかった。
なんでも屋Next。
彼らはこれまで、どんな無理難題でも無理やりこじ開けてきた。2人はそれを痛い程知っているからだ。
「なんとかライフを繋ぎ止めたが…ルーカスの場は前のターンよりも盤石だ。完全耐性のリンクモンスター2体。2度の破壊効果を有するエクスシーアに、召喚・特殊召喚を無効にするエターナルドラゴン。さらにヴィータは相手ターンでのP召喚を可能とする…」
イーサンは並び立つモンスター達を見つめ、その絶望的な状況を口にした。
「次のターンでひっくり返せなきゃ、さすがにもう勝ちはねえ。
でも、相手フィールドには完全耐性のモンスターが2体もいやがる…!」
遊次の瞳には色濃い焦燥が滲んでいた。ドローフェイズを含めても、怜央の手札は2枚。盤面には下級モンスター1体のみ。残りLP300の怜央にとって、ルーカスの突破不能に等しい盤面を覆せなければ、もはや勝機はない。しかし、そんな方法など遊次達には到底思い浮かばなかった。
怜央は動揺する仲間達など意に介さず、敵対するルーカスへと冷徹な言葉を投げつける。
「どんだけ大口叩こうが、蓋を開けてみりゃ、鼠1匹まともに殺せねえのが現実だ。
確信したぜ。テメェに世界は救えねえ」
「…は?」
真っ向から浴びせられた否定の言葉に、ルーカスの瞳が点のように収縮する。
怜央は正面に立つルーカスを睨みつけ、吐き捨てるように言った。
「世界を救うことに感情はいらねえとか、ほざいてたよな。呆れたぜ。テメェは、何かを守りたいと思ったことすらねえ、空っぽな人間ってことだ」
ルーカスは表情を変えず、冷めた瞳で怜央を見返す。
その口元には、かすかな嘲笑が浮かんでいた。
「守りたい、守りたくない。お前みたいな輩はそうやって、自分の尺度でしか物事をはかれない。だから"凡人"なんだ」
「守らなきゃ"いけない"んだよ。その使命に、思いなど不要だ」
ルーカスは両腕を広げ、堂々と言い放つ。怜央は顔を背けず、正面からルーカスを見据え続けた。
「究極まで追い詰められた時、人間が何に従うか知ってるか。"心"だ。結局はそれしかねえんだよ」
怜央は左の親指を己の胸元に突き立て、刺すように力強く押し当てた。その瞳には、熱を帯びた怒りが宿り始めている。
「聖人だろうがクズだろうが、"ココ"の根っこにはガッチリ根ェ張ってるもんがある。
キレイな言い方すりゃ、"願い"ってヤツだ。
ソイツを叶えるためなら、人間は鬼にでも悪魔にでもなれる。他の誰が死のうが知ったこっちゃねえ」
その言葉に、ルーカスは、汚いものを見るような眼差しで吐き捨てた。
「最低のカスだな」
「かもな。だが、だからこそ折れねェ。血ヘド吐こうが手足が引きちぎれようが、それが叶うんなら構わねえ。
俺らはそういうモンのために、テメェらをブッ潰しに来てんだ」
怜央の真っ直ぐな視線が、ルーカスを逃さず捉える。
そして彼の言葉は、客席の遊次や灯、イーサンの心に火を点けた。
彼らは、たとえ世界を危険に晒してでも、心に根付く"願い"のために、戦う道を選んだ。
ある者は、皆の笑顔を守るために。
ある者は、大切な人の傍にいるために。
ある者は、"居場所"を守るために。
そしてある者は、傷だらけになりながら共に歩んできた"家族"との今を守るために。
それは全員がバラバラで、一つたりとも同じ形をしていない。
しかし、目指すべき道だけは同じだった。
それが、彼らが今ここに立つ理由だ。
怜央は一歩踏み出し、真正面からルーカスを見据えた。
「テメェが誰かをぶっ殺そうが本気で世界を救いたいってんなら、血眼でかかってくりゃあいい。そういう奴のデュエルは、痛ェほど気迫が伝わってくるモンだ。当然、俺らは全力でブッ潰しにかかる。それでも、その"信念"だけはこっちも認めざるを得ねえだろ」
「だがテメェの場合、熱も信念もあったもんじゃねえ。あんのは"使命"とかいう、くっだらねえモンだけだろうが。そんな奴がいくら理屈とモンスターを並べようが、なんにも響かねェんだよ」
こめかみを指で突き、剥き出しの敵意を込めて言い放つ。その殺気に押されたのか、ルーカスの眉間には深い皺が刻まれた。
「ガッハッハ!これは困ったな、ヴラッドウッド弟くん!
何も言い返せないじゃないか!」
ハイドは手を叩きながら豪快に笑い声を響かせる。ルーカスは奥歯を食いしばり、込み上げる怒りを必死に堪えている。だがその瞬間、怜央は鋭い視線をハイドに向ける。
「テメェもだぜジジイ。なに高みの見物決め込んでんだ?」
叩こうとした両手を宙に止めたまま、ハイドは口を閉じる。しかしその唇の端には依然として不気味な余裕が張り付いていた。
「閣下への無礼は許さぬ!何様のつもりだ!」
アリシアはよく通る声で怜央を威圧するも、彼は構わず言葉を吐き続ける。
「テメェがパラドックス・ブリッジとかいうモン造らせたせいで、こっちは人生ブッ壊されてんだ。裏で何企んでんのか知らねえが、思い通りにはさせねえぞ」
その言葉にアリシアも一瞬だけ、目を見開いた。
血走った眼で大統領を睨みつける怜央の脳裏に、自らの過去がフラッシュバックする。虚空を力任せに引き裂き、這い出してきた金色の鎧。崩落した屋根の隙間から溢れ出していた、人としての形すら留めぬ赤黒い肉の塊。カビ臭い廊下を引きずり回され、肺の空気が弾け飛ぶまで殴りつけられた壁の硬い感触。
ハイドの真の思惑を探るような怜央の言葉に、ハイドは言葉を返す。
「君はコラプスの被害者遺族だったか。…うむ、そうだな」
ハイドは目を瞑り、数秒の静寂を置いてから口を開いた。
「"事故"とはいえ、責任は私にある!申し訳ないことをした!」
ハイドは一切姿勢を崩さず、赤いシートに深く腰掛け足を組んだまま、堂々と言い放った。
遊次は、ハイドの背中を射抜くように睨んでいる。
一時は自分達に協力し、世界を救うために欠かせない存在である、マキシム・ハイド。
しかし、やはり彼は自分達とは相容れぬ存在だ。
今、遊次達はその事実を再認識した。
怜央はただ静かに、強く、拳を握る。
「テメェらはいつも、高ェとこから神様気取って見てるだけだ。いっぺん、俺らと同じ地面に足つけりゃあ、見方も変わるかもな。だから…」
そして、再び正面に視線を向ける。
「全部、ぶっ壊してやるよ。そうすりゃ"神様"の指先で弾かれる奴らの気持ちも、ちったぁわかるだろうぜ」
怜央は前方の空間を握り潰すように、その掌を力強く突き出した。その言葉を真っ向から受けるルーカスの表情には、すでに不気味なまでの静寂が戻っている。
「…そもそも僕は最初から、君の町の住民も守ってやると言ってるんだ。感謝されこそすれ、口汚く罵られる筋合いはないな。愚民はいつもこれだから困る」
怜央の怒りを受け流すように、ルーカスは芝居がかった明るい声を響かせる。
「世界を救うなんて、僕が好きでやってることじゃない。でも勘違いしてもらっちゃ困るな。僕にだって"願い"くらいはあるさ」
ルーカスの耳元でまた、土砂降りの音が鳴り響く。刹那、弾んだ声音は消え、その顔から一切の温度が失われた。
「知能の低いドブネズミが、世界にのさばらないことだ」
オーケストラホールを、刺すような沈黙が通り抜ける。
怜央は無言のまま、ゆっくりとデッキトップに指をかけた。
その脳裏には、ある者達の笑顔や涙が浮かぶ。
リアム、ミオ、星弥、ランラン、治、トーマス、リク。
そして、ドモンとダニエラ。
泥にまみれながら共に歩んできた、"家族"の顔だった。
「俺の…ターン!!」
怜央は勢いよくデッキトップからカードを引く。
そのカードに視線を送り手札に押し込むと、怜央はフィールドを見渡す。
そして、大きく息を吐き呼吸を整える。その簡単な動作が、怜央の脳内に血液を循環させ、自らの感覚を研ぎ澄まさせる。激しい戦火の中に身を投じるには十分だった。
怜央は手札の1枚のカードを見つめ、怜央は不敵な笑みを浮かべ、呟く。
「…そうだな。もう今更、命なんざ惜しくねえ」
怜央は、1枚のカードを表へ向ける。
「速攻魔法発動!『スチームアーミー・アサルト』!
デッキからスチームアーミーを特殊召喚する!」
■爆焔鉄甲強襲作戦(スチームアーミー・アサルト)
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚する。
ターン終了時、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のLPを失う。
②:墓地のこのカードを除外し、自分の手札を1枚捨て、
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
「来い、スチームアーミー・バーン・スナイパー!」
■爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1800 守備力900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を手札に加える。
③:相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、相手に800ポイントのダメージを与える。
肩から腕にかけてライフルが取り付けられた銅色の機兵が姿を現す。
目にはゴーグル型のレンズが装着されている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sp2cODa
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「ただしこの速攻魔法を使ったターン終了時、俺はこの効果で特殊召喚したバーン・スナイパーの元々の攻撃力分、ライフを失う」
その効果に、遊次達は思わず息を呑んだ。
「それじゃあ……」
怜央のライフはわずか300。バーン・スナイパーの攻撃力1800のライフを失えば、その時点で怜央の敗北となる。
つまりこのターンで決着を着ける以外に、怜央が勝利する道はないということだ。
ルーカスは口端を吊り上げ、冷淡な笑い声を漏らした。
「これでわざわざ僕が駆除しなくても、ただ待つだけで勝手に死んでくれるわけだ。手間が省けて助かるよ」
「待つ?なに呑気なこと言ってんだ。
必死に抵抗しなきゃ、死ぬのはテメェだぜ」
しかし怜央はその言葉をもろともせず、指先をルーカスへと突きつける。
「バーン・スナイパーの特殊召喚時、効果発動。
デッキからスチームアーミーを1体、手札に加える。
俺が手札に加えるのは、スチームアーミー・キー・ロケットボム」
ルーカスは対面に存在する錆びた鉄の狙撃兵を見つめ、デュエルディスクに触れる。
「その処理後、ヘヴンアイズ・オスティアリウスの効果を発動。
自分フィールドのヘヴンアイズを破壊し、デッキからヘヴンアイズPモンスター1体を手札に加える。
ヘヴンアイズ・ヴァーチュスを破壊し、デッキからヘヴンアイズ・プロフェットを手札に加える」
オスティアリウスが地に手をつくと、ヴァーチュスの周囲を青い光の結界が包む。その結界は容赦なく収縮し、ヴァーチュスを跡形もなく破壊した。
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【ルーカス】
LP6600 手札:1(プロフェット)
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5900
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、ドミニオンズ、アルケー、ヴァーチュス、アポロジスト×3
▲□□□■
③□②□④
□ ①
□⑧⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP300 手札:2(キー・ロケットボム)
⑦スチームアーミー・バリケイド・ビルダー DEF1800
⑧スチームアーミー・バーン・スナイパー ATK1800
--------------------------------------------------
フィールドを見つめ、蒼月が呟く。
「周到ですね。これでヘヴンアイズ・ヴィータのリンク先が2つ空いている状態。ヴィータの効果により、2体のモンスターを好きなタイミングでP召喚できます」
ヘヴンアイズ・ヴィータはフリーチェーンでP召喚を行う効果を持つ。ルーカスのEXデッキには、EXデッキから特殊召喚された時に効果を発揮する2体のモンスターがいる。1体は相手の表側カードを無効にするドミニオンズ。もう1体は相手のモンスターを全て手札に戻すオファニムだ。これらのモンスターが同時に降臨できる状況をルーカスは即座に創り出したのだ。
灯はステージ上の怜央へ視線を注ぎ、戦局を反芻する。
(ルーカスさんのフィールドには完全耐性モンスターが2体。EXデッキのアポロジストが1枚でも減れば耐性は崩れる。でもEXデッキにはまだまだカードがあるし制圧効果も残ってる。そんな中このターン中に勝つなんて…)
視線の先の怜央に、膝を折る気配はない。窮地にあってもなお揺るがぬ雄姿は、これまで通りの静かな熱を帯びている。しかしルーカスの布陣は、絶望的なまでに完成されていた。鉄壁の守護を貫き、この1ターンで全てを覆す道筋を、灯はどうしても思い描くことができなかった。
怜央は、ルーカスの頭上で浮遊する老騎士を指先で捉えた。
「バーン・スナイパーの効果発動。1ターンに1度、魔法・罠カード1枚を破壊し、800ダメージを与える。
Pカードは魔法カード扱いだ。Pゾーンのヘヴンアイズ・ゲートキーパーを破壊」
バーン・スナイパーが腕のライフルを構え、スコープ越しに標的を照準に収める。引き金が引かれた瞬間、激しい破裂音が響き渡った。弾丸は正確にゲートキーパーを貫き、老騎士は低く呻きを漏らして爆散した。
ルーカス LP6600 → 5800
「よし!Pスケールが揃ってなきゃ、ヴィータの効果でP召喚はできねえ!」
遊次は歓喜の声を上げるも、ルーカスと交戦したイーサンが首を横に振る。その答えを示すようにルーカスは手札のカードを1枚表へ向ける。
「手札のヘヴンアイズ・プロフェットの効果を発動。ヘヴンアイズPカードが破壊された時に手札から特殊召喚し、破壊されたカードをPゾーンに再びセットする」
■天界眼の代弁者(ヘヴンアイズ・プロフェット)
ペンデュラム
レベル3/光/天使/攻1100 守800 スケール1
【P効果】
このカード名の①②のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのLモンスター以外の「ヘヴンアイズ」モンスター1体をリリースして発動できる。
そのカードと同じレベルの、カード名が異なる「ヘヴンアイズ」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
②:Pゾーンのこのカードを破壊し、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを自分のPゾーンに置く。
この効果は相手ターンでも発動できる。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「ヘヴンアイズ」Pモンスターまたは「ヘヴンアイズ」Pカードが破壊された場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、破壊されたカードを自分のPゾーンに置く。
②:このカードがEXデッキに表側で加わった場合、
このカード以外の自分のEXデッキ(表側)のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
フィールドに、紺青の長髪をなびかせた女性のモンスターが現れる。白銀の装飾が施された白の法衣を纏い、鮮やかな紅の帯が斜めに走る。頬には神秘的な青い紋様が刻まれ、鋭く澄んだ水色の瞳が静かに周囲を射抜いていた。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/4CwNMmb
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オーケストラホールの影に潜み、ジェンが淡々と現状を分析する。
「これで再びP召喚が可能となりましたが…リンク先が埋まったことで、呼び出せるのは1体のみ。鉄城怜央も、これを意図して銃弾を放ったのでしょう」
「このターンを耐えるだけでルーカスちゃんの勝ちなんだよ。どんなに頑張ったって、無理なもんは無理でしょ」
美蘭が言葉を重ねるが、その表情は険しい。口にした楽観論とは裏腹に、彼女の顔から余裕は剥がれ落ちていた。
「墓地のスチームアーミー・スチールディゾルブの効果発動。このカードを墓地から除外して墓地のスチームアーミー3枚をデッキに戻すことで、デッキからスチームアーミー魔法・罠カードを1枚、墓地へ送ることができる」
■爆焔鉄甲錆処理槽(スチームアーミー・スチールディゾルブ)
通常魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の表側の「スチームアーミー」魔法・罠カード1枚を墓地に送って発動できる。
自分はデッキから2枚ドローする。
②:墓地のこのカードを除外し、
墓地の「スチームアーミー」モンスター3体を対象として発動できる。
それらのカードをデッキに戻し、
デッキから「スチームアーミー」魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。
「墓地のレイル・エクスプレス、メルト・コーポラル、モールス・シグナラーをデッキに戻し、罠カード『スチームアーミー・スモルダーリバイバル』を墓地へ送る」
「今墓地に送ったスモルダー・リバイバルを除外して、効果発動。墓地の『ランクアップマジック』を手札に加えることができる」
怜央は墓地から「RUM-リラプス・フォース」を相手に示し、手札に加えた。
「『RUM-リラプス・フォース』発動!ライフを半分払い、墓地のスチームアーミーXモンスターをランクアップさせる!対象はスチームアーミー・エクスプロード!」
怜央 LP300→150
■RUM-リラプス・フォース
速攻魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:LPを半分払い、自分の墓地の「スチームアーミー」Xモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターよりランクが1つ高い「スチームアーミー」Xモンスター1体を
X召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚し、このカード及び対象のモンスターをそのX素材とする。
②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「スチームアーミー」Xモンスターが存在する場合、
フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
自分のフィールド・墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(何が現れるかわからない。選択肢は1つだ)
ルーカスは鋭い視線を発動された魔法カードへ据え、EXデッキの表側から1枚を抜き取った。
「ヘヴンアイズ・ヴィータの効果発動!お互いのターンに1度、P召喚を行う!」
ヴィータの白い幹に並ぶ無数の瞳が、冷徹な青い光を放つ。それに応じるように、ルーカスの頭上で振り子が大きく弧を描き始めた。
「ペンデュラム召喚!現れよ、ヘヴンアイズ・ドミニオンズ!」
■天界眼の勧告者(ヘヴンアイズ・ドミニオンズ)
ペンデュラム
レベル7/光/天使/攻2400 守2700 スケール1
【P効果】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:もう片方のPゾーンに「ヘヴンアイズ」Pカードが存在する場合に発動できる。
Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。
【モンスター効果】
このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがEXデッキから特殊召喚された場合に発動できる。
相手フィールドの全ての表側カードの効果を、ターン終了時まで無効にする。
②:相手がモンスター効果を発動した場合、自分のEXデッキ(表側)のPカード1枚をデッキに戻して発動できる。
その効果を無効にして破壊する。
降り注ぐ一筋の光より現れたのは、翼の先端を赤く染めた多翼の上級天使。金色の冠と白い仮面、金装飾を施した白い法衣に赤い帯を垂らし、瞳は水色に発光している。その手には、巨大な紅玉を冠した金色の長杖を携えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/O2IHFKC
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「チェーン1のリラプス・フォースの効果!墓地のエクスプロードを素材に、1つ高いランクのモンスターをX召喚する!」
赤と黒の金属板で構成された機兵が姿を見せ、刹那、その全身を激しい火炎が呑み込んだ。
「焼け焦げた鎧は血戦の証。燻る執念を憤怒の白煙へと昇華せよ!」
口上と共に怜央の足元に黒い銀河の渦が広がり、機兵を包んでいた爆炎が天を衝く火柱となって爆ぜる。
「ランクアップ、エクシーズチェンジ!
現れよ、ランク5!スチームアーミー・デトネイト!」
■爆焔鉄甲 蒸機焼軍(デトネイト)
エクシーズモンスター
ランク5/炎/機械/攻撃力2800 守備力2600
レベル5モンスター×3
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがX召喚した場合に発動できる。
相手フィールドの全てのモンスターの効果を無効にする。
②:このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
この効果で破壊したモンスターが「スチームアーミー」モンスターを装備していた場合、
相手フィールドのカードをもう1枚破壊できる。
このカードが炎属性モンスターをX素材としている場合、この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードが破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
自分の墓地の「スチームアーミー」Xモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚し、
その後、墓地の「スチームアーミー」モンスター1体をそのモンスターのX素材とする。
現れたモンスターは、黒く焼け焦げた鉄の鎧で全身を覆っていた。その鎧にはパイプが張り巡らされており、それぞれから炎が噴射されている。鎧の各部から絶え間なく蒸気が噴き出し、周囲に熱気を放つ。肩の部分には大きな歯車、背中には大型の噴射口が装備されている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/RLUlao2
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「デトネイトがX召喚した時、効果発動!
相手フィールドのモンスター効果を全て無効にする!」
怜央の咆哮のような声に抗うように、ルーカスは凛とした立ち姿のまま腕を振るう。
「ヘヴンアイズ・ドミニオンズの効果発動!EXデッキから特殊召喚された時、相手の表側カードの効果を全て無効にする!」
この効果によってデトネイトの全体無効は打ち消されてしまう。RUMによる未知なるモンスターの特殊召喚に対して、牽制としてドミニオンズをP召喚したことがまさに功を奏したと言える。しかし、怜央にもこれは想定済だった。
「その効果にチェーンして、デトネイトの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのカード1枚を破壊できる!」
「だがゲートキーパーがPゾーンにいる限り、僕のカードは破壊されない!」
ルーカスは食い気味に言葉を返す。
「破壊するのはお前のカードじゃねえ。デトネイト自身だ!」
ルーカスは不可解そうに眉間に皺を寄せる。そしてソリッドヴィジョンで浮かび上がるデトネイトのカード情報に目をやると、一瞬でその意図を理解した。
(なるほど…破壊したモンスターがスチームアーミーを装備していれば、追加でもう1枚のカードを破壊できるのか。スチームアーミーをデトネイト自身に装備して自爆すれば、追加の破壊効果でゲートキーパーを破壊して、僕のモンスターから破壊耐性を奪えるわけだ)
ルーカスはデュエルディスクに触れ、EXデッキに上向きで装填されているカードの枚数を数える。
(EXデッキの表側には、アポロジスト以外にカードが3枚。なんでもかんでも効果を使うわけにはいかない)
ルーカスの中に迷いが生じる。エターナルドラゴンとヴィータの完全耐性と高打点を維持するためには、EXデッキにアポロジストを3枚残す必要がある。よってヘヴンアイズの効果のコストには、残りの3枚のカードしか使用できない制約が付く。
(デトネイトの破壊効果を止めれば破壊耐性は維持される。奴がそれを突破するには、墓地のディメンションタワーを再利用するぐらいしかないだろう)
ディメンションタワーはスチームアーミーによる破壊を除外に書き換える永続魔法だ。今は破壊され墓地に眠っている。
(奴はバーン・スナイパーの効果で、キー・ロケットボムを手札に加えた。あのカードは手札から捨てられると墓地のカードを回収できる。これはまさしく、墓地のディメンションタワーを再利用するために他ならない)
ルーカスは叩き込んだ盤面情報を基に相手の意図を推察する。
(だが逆に言えば、ここでゲートキーパーが破壊されてしまえば、ディメンションタワーは不要。キー・ロケットボムで他のカードを墓地から回収されてしまう。奴にとっての最も有効な勝利条件は、エターナルドラゴンを上回る攻撃力を叩き出すことだ。更なる展開を許せば、その勝利条件を満たす危険性を上げるだけ…)
怜央の手札にはまだ未知のカードが隠されている。相手の戦力を図り切れない以上、EXデッキのカードを温存するためだけに、怜央にさらなるリソースを与えるような判断はできなかった。ルーカスは頭の中で即座に結論を出す。
「ヘヴンアイズ・ドミニオンズの効果発動!EXデッキのヘヴンアイズ・アルケーをデッキに戻し、その効果を無効にし、破壊する」
しかし怜央はそれを待ち構えていたかのように、すぐさま言葉を重ねた。
「スチームアーミー・バリケイド・ビルダーの効果発動!自身をデトネイトに装備する!」
重厚な錆に包まれたバリケイド・ビルダーがデトネイトの背後へ寄り添い、巨大な盾を真っ向に構えた。
「え、これから破壊されるモンスターに、なんでわざわざ装備するの?フィールドのモンスターが減っちゃうだけじゃん…」
激しい応酬に、美蘭はただ呆然と戦場を見つめ、ぽつりと声を漏らす。
「ドミニオンズの効果によって、デトネイトの効果は無効となり、破壊される」
ルーカスの冷徹な声が響く。ドミニオンズがその黄金の錫杖を高く掲げた刹那、頂から苛烈な光の奔流が放たれた。
極光は2体の機兵を無慈悲に呑み込み、その装甲を根こそぎ灼き貫く。悲鳴のような金属音を置き去りにして、デトネイトとバリケイド・ビルダーの巨躯は激しい爆炎とともに四散した。
「さらにチェーン1のドミニオンズの効果。
お前の表側カードの効果は無効となる」
ドミニオンズが掲げた錫杖を振り下ろすと、眩い魔力の波が怜央のフィールドを襲った。
バーン・スナイパーの三つの赤い瞳は、抗うように激しく点滅を繰り返した後、泥を被ったように暗転した。
光の波動を振り払い、怜央は前へ1歩踏み出す。
「デトネイトが破壊された時、効果発動!墓地のスチームアーミーXモンスターを1体特殊召喚して、墓地のスチームアーミー1体をその素材にする。エクスプロードを特殊召喚して、バリケイド・ビルダーをその素材とする!」
轟音とともに火球がフィールドを叩き、激しく弾け飛ぶ。
立ち込める白煙の中から、黒と金の装甲の機兵エクスプロードが再びその姿を現した。
その周囲には一つの光球が浮遊している。
「バリケイド・ビルダーを素材にしたモンスターは、相手の効果の対象にならない。
エクスシーアの破壊効果は通用しねえぜ」
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【ルーカス】
LP5800 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5500
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・プロフェット DEF800
⑥ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、ヴァーチュス、アポロジスト×3
▲□□□■
③⑥②⑤④
□ ①
□⑧⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP250 手札:2(キー・ロケットボム)
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材1) ATK2600
⑧スチームアーミー・バーン・スナイパー ATK1800
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ルーカスは眼前の機兵を見据え、小さく舌打ちをする。その理由は、自分でもわからなかった。デュエルディスクにセットされたEXデッキに再び視線を向ける。一瞬だけ耳元で、時計が進む音が聞こえた気がした。
怜央は数多の妨害を潜り抜け、ようやく切り札エクスプロードを呼び出した。しかしPゾーンにゲートキーパーがいる限り、得意の破壊効果は機能しない。
「墓地のスチームアーミー・アサルトを除外して効果発動。手札を1枚捨てることで、墓地のスチームアーミーを1体復活させる。来い、スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス!」
轟音と共に白煙が噴き上がり、深紅の重装甲に覆われた鋼鉄の塊が姿を現した。鋭角的な流線型のフロントが熱気を帯びて眼光のように輝き、地響きを立てて線路と共にフィールドに現れる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/BcwMtxm
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「ブレイブロードがいる限り『スチームアーミー』カードは相手の効果で破壊されない。これでエクスシーアの破壊効果は効かねえ。あとはその白ウナギをどうにかすりゃいいだけだ」
怜央は眼前のエターナルドラゴンへ指を突きつけ、不敵な笑みを深く刻む。
「お前、自分が置かれてる状況がわかってないんだな」
その一言の重みに、イーサンの思考が即座に盤面へと走る。現状を整理し、勝機を計算するが、導き出される答えはあまりに絶望的だった。
(仮になんとかエターナルドラゴンを倒せたとしても、このターン中にルーカスのライフを0にしなきゃ、ライフコストによって怜央は負ける。本当に可能なのか?そんなことが…)
イーサンは思わず口元を押さえ、険しい表情でステージを見つめ続けた。
「キー・ロケットボムの効果発動。こいつが手札から捨てられた時、墓地の『スチームアーミー』カードを手札に加える」
墓地から1枚のカードが出力される。それは永続魔法「スチームアーミー・ディメンションタワー」。ルーカスの予想通りの一手だ。
「永続魔法『スチームアーミー・ディメンションタワー』を発動!」
■爆焔鉄甲次元塔(スチームアーミー・ディメンションタワー)
永続魔法
このカード名の③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
自分の「スチームアーミー」モンスターとの戦闘で破壊された相手モンスターは墓地へ行かず除外され、
自分の「スチームアーミー」モンスターの「カードを破壊する」効果は「カードを除外する」効果となる。
②:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
自分の「スチームアーミー」モンスターの「装備モンスターが破壊されることで墓地へ送られた場合」の効果は、
「装備モンスターが除外されることで墓地へ送られた場合」の効果となる。
③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、
自分の除外状態の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのカードを特殊召喚するか、手札に加える。
④:お互いのエンドフェイズに発動できる。
このターン、フィールドから除外されたカードの枚数×500のダメージを相手に与える。
地鳴りとともに、怜央の背後からどす黒く煤けた鉄塔がせり上がった。螺旋を描いて天へと伸びるその塔は、無骨なリベットと赤錆に覆われている。装甲の隙間からは重苦しい黒煙が絶え間なく噴き出し、戦場を鉄臭い威圧感で塗り潰した。
説明するまでもなくその力はルーカスも理解している。スチームアーミーによる破壊を除外に変える効果だ。さらにスチームアーミーの爆弾モンスターには「装備モンスターが破壊された場合」に、周囲のカードを破壊する共通効果を持つが、この効果は「装備モンスターが除外された場合」に変更される。
これによりルーカスの場に与えられた破壊耐性は意味を成さなくなる。しかし依然として完全耐性を持つエターナルドラゴンとヴィータには効果はない。
怜央は手札から残された1枚のカードをデュエルディスクに叩きつける。
「手札からスチームアーミー・ライター・テルミットを召喚!」
■爆焔鉄甲 点焼鋼弾(ライター・テルミット)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1500 守備力900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法&罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:このカードが手札から墓地に送られた場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」通常魔法カード1枚を手札に加える。
②:装備カード扱いとして装備されていたこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
装備モンスターのコントローラーに1000ダメージを与える。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
激しい火花を散らし、巨大なオイルライター型の爆弾型モンスターがフィールドに降り立つ。真鍮色の装甲に歯車とパイプが複雑に絡み合う。跳ね上がった蓋の奥からは、周囲を赤く染めるほどの猛火が噴き出している。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/a58WE1c
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ルーカスは網の目のように頭の中でルートを張り巡らせ、思考する。
(奴にとってエターナルドラゴンを倒さずとも、他の攻撃表示モンスターへの一撃か、効果ダメージで僕のライフを0にするという手がある。おそらく、これが最も現実的な策だ)
ルーカスはデュエルディスクから浮かび上がるソリッドヴィジョンの盤面情報に目を通した後、目の前のタイプライター型爆弾を一瞥する。
(あのモンスターが僕のモンスターに装備されれば、奴の場のブレイブロードによって、僕のモンスターの攻撃力は1500ダウンする。さらに装備モンスターが戦闘破壊か除外されれば、効果により僕は1000のダメージを受けることになる。ディメンションタワーによるエンドフェイズの効果ダメージも考えれば、軽視はできない)
怜央の場に破壊耐性を与えるブレイブロードがいるため破壊はできないが、エターナルドラゴンによってこのライター・テルミットの召喚を無効にすることができる。その一手をここで使うべきか、ルーカスは迷いを見せた。
ルーカスはデュエルディスクに装填されたEXデッキの表側に視線を送る。アポロジストによって付与した完全耐性を維持するためには、EXデッキの表側カードはあと2枚しか使えない。耳元で、時計の針が進む音が聞こえる。
ルーカスは真っ直ぐと前を見据える怜央の姿を捉える。一切揺らがぬ彼の眼差しには、何か根拠があるように見えた。
完全耐性かつ攻撃力5000オーバーのエターナルドラゴンを突破するのが現実的でない以上、怜央はダイレクトアタック以外の手段で勝利を狙う可能性が高い。ライターテルミットの1000のバーンダメージが、怜央の勝率を押し上げる可能性を否定できなかった。
(仮にエターナルドラゴンの効果でこの召喚を無効にしても、エクスプロードの効果により、墓地から再びライター・テルミットを装備させられる。だがその装備先をエクスシーアで破壊してしまえば、少なくとも1000のダメージは回避できる)
スチームアーミーは共通効果として、フィールドのスチームアーミーを相手に装備させる効果を持つ。もしここでライター・テルミットの召喚を許せば、そのままルーカスのモンスターに装備されるだろう。
ディメンションタワーの効果により、ライター・テルミットが起爆するのは、装備モンスターが"除外された場合"に変わっている。つまり、装備モンスターをエクスシーアで自ら破壊すれば、1度爆発を免れることが可能だ。しかしエクスプロードによって再度ライター・テルミットが墓地より装備されれば、効果ダメージを受けることは免れない。
しかしここで召喚そのものを止めてしまえば、墓地からライター・テルミットを装備された後に、エクスシーアによる自壊で爆弾を解除すればいい。これによりライター・テルミットでのバーンダメージを与える手段は潰え、怜央がルーカスのライフを削り切る可能性は各段に下がる。
(奴の墓地のヒート・エンジニアは、墓地からの自己蘇生と、効果によるX召喚が可能。効果によるX召喚である以上、チェーンブロックを組むためエターナルドラゴンでは無効にできない)
エターナルドラゴンが無効にできるのはチェーンブロックを組まない召喚・特殊召喚のみだ。この召喚を止めなければ、おそらくエターナルドラゴンの効果を使用する機会はないだろう。
ルーカスはさらなるシミュレーションを進める。徹底的にリスクを弾きだし、どう動くべきかを判断する。簡単には結論を出さない。
(仮にレイル・エクスプレスがX召喚されたとすれば、奴はデッキから更なるモンスターを呼び出せる。ここでファーネス・メディックが呼び出されれば、墓地のライター・テルミットを復活させ、僕のモンスターに装備することができる。だが奴が動けるのはそこまでだ。僕を一撃死させる手段がない以上、奴にそのルートは選べない)
時計の針が、また頭の中で進む。
(つまり僕にとってのリスクは、次なるX召喚で僕にとって未知のモンスターが呼ばれるか、レイル・エクスプレスによる更なる展開で攻撃力を上げる手段が確保されるか。ここでライター・テルミットの召喚を無効にすれば、以降はこのモンスターによる効果ダメージを受ける機会は無いに等しい)
ディメンションタワーはエンドフェイズに、フィールドから除外されたカードの数×500のダメージを与える効果もある。その効果と戦闘ダメージを合わせて、ルーカスのライフを焼き切る戦術に出る可能性がある。その場合、ここでその召喚を無効にすれば、怜央の勝利条件を奪えるかもしれない。しかしそれには、EXデッキのカードを1枚消費し、完全耐性が剥がれるリスクが潜んでいる。
完全耐性を失うリスクを冒して1000のダメージを回避するか。それともEXデッキのカードを温存して完全耐性を維持するために、この召喚を身送るか。この時点で、明確な答えなどない。
ルーカスの選択が、勝敗を分かつ。
再び耳元で、時計の針が進む音が聞こえる。
この時、ルーカスの脳裏に、怜央の言葉が蘇った。
『知らねえようだから教えてやる。デュエルモンスターズってのはモンスターを全部倒すゲームじゃねえ。相手のライフを0にするゲームだぜ』
それは完全耐性を得たエターナルドラゴンに対して、怜央が口にしたアンサーだ。その一言が、ルーカスの決断を後押しした。
「ヘヴンアイズ・エターナルドラゴンの効果発動。EXデッキのヘヴンアイズ・ヴァーチュスをデッキに戻し、その召喚を無効にする」
エターナルドラゴンが紅く染まった翼を大きく広げる。その双翼から放たれた白銀の光が、実体化しようとするライター・テルミットを包み込む。真鍮の装甲は凄まじい輝きに焼かれ、形を保てずにさらさらと分解されていく。
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【ルーカス】
LP5800 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5300
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK1600
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・プロフェット DEF800
⑥ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、アポロジスト×3
▲□□□■
③⑥②⑤④
□ ①
⑨⑧⑦□□
□□□□□
【怜央】
LP250 手札:0
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材1) ATK2600
⑧スチームアーミー・バーン・スナイパー ATK1800
⑨スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
永続魔法:スチームアーミー・ディメンションタワー
--------------------------------------------------
遊次は目を見開いてステージ上を見つめる。同時に、怜央はその表情に陰を作る。果たしてこれは、怜央の勝利の道を断つ一手だったのだろうか。
怜央のデュエルディスクの墓地ゾーンから、1枚のカードが飛び出る。
「墓地のスチームアーミー・ヒート・エンジニアの効果発動。自分フィールドにスチームアーミーがいる時、コイツはデュエル中に1度、墓地から特殊召喚できる」
■爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1400 守備力1500
このカード名の、②の効果はデュエル中に1度しか使用できず、
①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「スチームアーミー」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れた場合、
またはX素材となったこのカードが墓地へ送られた場合、ゲームから除外される。
③:自分・相手ターンに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材として「スチームアーミー」Xモンスター1体をX召喚する。
赤錆の浮いた重厚な装甲を纏い、巨大な機械の塊が姿を現した。胸部から四肢にかけて刻まれた鮮烈な炎の紋様が、内側から溢れ出す熱量を示すように赤々と輝いている。右腕に携えた巨大なレンチは威圧的な重量感を湛え、握りしめられた左拳からは細かな火の粉が舞い上がる。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/2TvljEP
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「俺はヒート・エンジニアとバーン・スナイパーでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
足元に現れた漆黒の銀河が、2体のモンスターを呑み込んでいく。2体は光を放つエネルギーへと凝縮され、渦巻く深淵の奥底へと収束していった。
「エクシーズ召喚!再び現れろ!
ランク4、スチームアーミー・レイル・エクスプレス!」
■爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)
エクシーズモンスター
ランク4/炎/機械/攻撃力2000 守備力2500
レベル4モンスター×2
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがX召喚した場合に発動できる。デッキから「スチームアーミー」罠カード1枚を手札に加える。
②:このカードのX素材を1つ取り除き、このカード以外の自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。
フィールド・墓地から2体までモンスターを選び、そのモンスターの下に重ねてX素材とする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
黒い渦が爆ぜ、もうもうと立ち昇る黒煙と共に、無数の配管と歯車を露わにした蒸気機関車が降り立つ。煙突からは赤々とした火柱が吹き出し、煤に汚れた重厚な車体は周囲の熱気を孕んで鈍く光る。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/LXkoeMH
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ここまでは彼の想定通りの動きだ。
ルーカスは眼前の蒸気機関車を冷たい瞳で見据える。
「レイル・エクスプレスの効果発動。オーバーレイユニットを1つ使い、フィールド・墓地のスチームアーミー2体を、他のスチームアーミーXモンスターのX素材にすることができる。墓地のキー・ロケットボムとファーネス・メディックを、エクスプロードの素材とする」
レイル・エクスプレスが白い蒸気を上げると、エクスプロードの周囲を漂う光球が2つ増える。
「さらに墓地のスチームアーミー・ランタン・ナパームの効果発動。コイツは1ターンに1度、墓地からフィールドのスチームアーミーのオーバレイユニットにできる。エクスプロードの素材とする」
エクスプロードの周囲の光球がこれで計4つとなる。
「エクスプロードはオーバーレイユニット1つにつき、攻撃力が200アップする」
スチームアーミー・エクスプロード ATK3200
赤く光を放つエクスプロードの機体を見つめ、ルーカスは鼻先で笑った。
「フッ、その程度の攻撃力じゃヴィータにすら及ばないな。威勢よく吠えてたくせに、チンタラと何をやってるんだ?」
その無力さを憐れむように、ルーカスは不遜な独白を続ける。
「…いや、これも仕方ないか。あと8ヶ月で地球が滅びるのに、無駄に足掻いて時間を無駄にする知能の低い生物だからな。なら、1度味わってみればいい。何もできず、ただ"リミット"を迎えて死ぬしかない、世界中の人々の気持ちをね」
ルーカスの悪辣な言葉に、怜央は嘲笑うように口角を上げた。
「何言ってんだ?リミットを迎えてんのはテメェだぜ」
「…は?」
投げかけられた一言を理解できず、ルーカスの表情に苛立ちが滲んだ。そんなルーカスを他所に、観客席で静観する遊次の唇が、不敵な笑みへと形を変えた。まるで、全てわかっているかのように。
「レイル・エクスプレスのオーバーレイユニットを1つ使い、効果発動!デッキからスチームアーミーを1体特殊召喚する。来い、スチームアーミー・メルト・コーポラル!」
■爆焔鉄甲 溶解兵長(メルト・コーポラル)
効果モンスター
レベル5/炎/機械/攻撃力2100 守備力1900
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選び、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「スチームアーミー」速攻魔法1枚を手札に加える。
③:このカード以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルを1つ上げる。
白煙を吹き出す蒸気機関車から、1体の機兵が降り立った。そのモンスターは右腕には多砲身の回転式機関砲、左腕には巨大な三本爪を備えている。
モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/D0y8dXa
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「メルト・コーポラルの効果発動。特殊召喚した時、デッキからスチームアーミー速攻魔法を1枚手札に加える」
怜央はデッキから、1枚の速攻魔法を手札に加え、表へ向けた。そして、瞬時にそのカードをデュエルディスクへと装填し、発動した。
「速攻魔法発動!スチームアーミー・ブーストフレイム!」
■爆焔鉄甲加速纏炎(スチームアーミー・ブーストフレイム)
速攻魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「スチームアーミー」Xモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●そのモンスターの攻撃力はそのモンスターのX素材の数×500アップし、
1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。
また、そのモンスターとの戦闘で破壊されなかった相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊される。
●そのモンスターはこのターン、戦闘・効果で破壊されず、
そのモンスターと戦闘を行った相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊される。
「このカードは、スチームアーミーXモンスター1体を対象に発動できる。エクスプロードを対象に、そのモンスターの攻撃力はオーバーレイユニットの数×500アップし、このターン2回攻撃できる!」
エクスプロードの装甲に火の粉が散り、激しい炎がその身に宿った。燃え盛る熱量に呼応し、機体に秘められた力が高まっていく。
スチームアーミー・エクスプロード ATK5200
「なっ…」
その圧倒的な出力の高さと2回攻撃というオプションに、ルーカスは目を見開く。
「さらにエクスプロードの効果発動。オーバーレイユニットを2つ使い、墓地のライター・テルミットをヘヴンアイズ・プロフェットに装備し、墓地のランタン・ナパームをオスティアリウスに装備する。ブレイブロード・エクスプレスの効果により、モンスターを装備した相手モンスターは、その装備カードの攻撃力分ダウンする」
エクスプロードの周囲を漂う光球が2つ弾け、その瞬間、ルーカスのフィールドの2体のモンスターの背後に蒸気が上がる。プロフェットの身に、その体躯よりも巨大なライター型の爆弾が巻き付けられる。鉄の塊が放つ圧倒的な質量が、華奢な肩へと容赦なく食い込んでいく。そしてオスティアリウスの身にも、ランタン型の爆弾が鎖を巻き付ける。
そしてオーバーレイユニットが2つ減ったことで、エクスプロードの攻撃力は400下がる。
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP5800 手札:0
①ヘヴンアイズ・エターナルドラゴン ATK5300
②ヘヴンアイズ・ヴィータ ATK3600
③ヘヴンアイズ・オスティアリウス ATK100
(ランタン・ナパーム装備)
④ヘヴンアイズ・エクスシーア ATK2500
⑤ヘヴンアイズ・プロフェット DEF800
(ライター・テルミット装備)
⑥ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):オファニム、アポロジスト×3
▲□□□■
③⑥②⑤④
□ ①
⑨⑧⑦⑩□
□□□□□
【怜央】
LP150 手札:0
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材2) ATK4800
⑧スチームアーミー・レイル・エクスプレス(X素材0) ATK2000
⑨スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
⑩スチームアーミー・メルト・コーポラル ATK2100
永続魔法:スチームアーミー・ディメンションタワー
--------------------------------------------------
これが、怜央の盤面の完成系だ。エクスプロードの攻撃力は驚異の数値を叩きだしている。
灯は明るい声で希望を紡ぐ。
「ブレイブロードの攻撃力ダウンと、ライター・テルミットの効果ダメージもある。このまま攻撃力5000で2回攻撃すれば、怜央の勝ちだよね…!」
しかしイーサンが隣で首を振る。
「オスティアリウスには攻撃を1度無効にする効果がある。それにエクスシーアで自分のモンスターを破壊することもできる。そう単純じゃないはずだ」
あまりにも想定できるルートが多すぎる。外野には、この現状を瞬時に分析することなど不可能に等しかった。
しかし、当事者にとってはそうではない。
ジェンは気付いていた。
ルーカスの顔色が明らかに変わったことに。
だが、ルーカスは何も言わない。
まだ怜央が正しいルートを導き出せる保証などない。
否、瞬時に膨大なルートからたった1つの正解を弾き出すことなど、不可能だと考えているからだ。そんな芸当が、目の前の男にできるはずがないと。
暫しの静寂の後、怜央が腕を前に突き出す。
それこそが激戦の火蓋を切る合図だった。
「バトル!エクスプロードで、オスティアリウスに攻撃!」
このままだと、戦闘ダメージと、ライター・テルミットとディメンションタワーの効果ダメージの合計で、ルーカスのライフは0となる。敗北の寸前、王手がかかった状況だ。つまり、ルーカスは敗北を避けるための行動を取らざるを得ない。
ルーカスは自らのデュエルディスクに視線を送る。EXデッキの表側カードは4枚。その内3枚は、ルーカスのモンスターに完全耐性を与えるアポロジストだ。つまり、完全耐性を崩さずに効果を使えるのは、あと1度だけだ。
仮にエクスシーアの破壊効果でオスティアリウスを破壊したとしても、エクスプロードには2度の攻撃が残されている。エクスプロードでエクスシーアとヴィータを攻撃すれば、戦闘ダメージの合計は3500。さらにプロフェットをエクスプロードの効果で除外すれば、ライター・テルミットにより1000の効果ダメージが入る。これらのカードは全てディメンションタワーにより除外されている。エンドフェイズにディメンションタワーによって除外されたカード×500のダメージが入り、ルーカスのライフは0となってしまう。
つまり敗北を避ける手段は一つ。選択肢はなかった。
ルーカスは奥歯を噛み、切り裂くように声を上げる。
「ヘヴンアイズ・オスティアリウスの効果発動!EXデッキのヘヴンアイズ・オファニムをデッキに戻し、その攻撃を無効にする!」
エクスプロードは拳に炎を宿らせ、空気を焼きながら突き進む。羽交い絞めにされたままのオスティアリウスは、のしかかる重圧に抗い、指先を地面へ突き立てた。その瞬間、地から噴き上がった蒼い壁が、エクスプロードの攻撃を弾き飛ばす。
すかさずエクスプロードの2撃目が放たれると思われたが、怜央の視線は黒き蒸気機関車へと映る。
「スチームアーミー・レイルエクスプレスで、ヘヴンアイズ・プロフェットに攻撃!」
耳を貫く汽笛を合図に、巨大な動輪が火花を散らして回転を始める。すると、怜央の背後にそびえるディメンションタワーから、溢れ出した黒煙が戦場を覆う。その煙は走り出した機関車を追い抜く勢いで纏わりつき、鉄塊を影の弾丸へと変貌させた。
逃げることも、叫ぶこともできない。凄まじい速度で迫った鉄の塊が彼女を撥ね飛ばし、その姿を瞬時に粉砕する。凄まじい風圧を残してルーカスの横を通り抜けた機関車は、空中に現れたレールを辿って怜央の傍らへと滑らかに帰還した。
霧散する煙が晴れると、ライター・テルミットが先端から火花を散らし、今にも弾けそうな震動を繰り返しながら、決発の時を待っていた。
この時、それまで静観を貫いていたオスカーが不意に壁から背を離した。何かに導かれるように、一歩、また一歩とステージへ歩を進める。その張り詰めた背中を、隣にいた美蘭とジェンが息を呑んで見つめた。
苦渋を滲ませるルーカスに対し、怜央は容赦なく次の一手を突きつけた。
「ライター・テルミットの効果発動。装備モンスターが除外された時、同じ縦列と隣のカードを全て除外する」
プロフェットが存在していたモンスターゾーンの周囲には、破壊効果を残しているエクスシーアと、完全耐性を持つエターナルドラゴン、ヴィータが存在する。この時、全ての観衆達は怜央の意図に気が付いた。
美蘭、ジェンは目を見開き、アリシアは驚きの声を漏らす。蒼月は静かに笑みを浮かべ、ハイドはまさに観客の如く背もたれに腰掛ける。
怜央はじっと据わった目で、言い聞かせるようにルーカスに言う。
「さらにライター・テルミットの効果発動。装備モンスターが除外されたことでこのカードが墓地に送られた時、相手に1000のダメージを与える」
「このままエクスシーアが除外されれば、俺はエクスプロードでオスティアリウスを攻撃する。ライター・テルミットのダメージと合わせりゃ、テメェは死ぬ。どうすべきかは、わかってるよな?」
怜央は感情を交えず、ただ冷徹に言葉を吐く。射貫くような視線を返すルーカスだったが、最適解を選ぼうとする理性とは裏腹に、強張った身体がその決断を拒んでいる。
どうすべきか。怜央は問う。
しかしなぜルーカスが決断できないのか。
その答えはこの場の誰もが理解していた。
(今エクスシーアの効果でオスティアリウスを破壊しなきゃ、オスティアリウスに攻撃されてルーカスちゃんの負け。でもそのためには…)
美蘭が目を細めるステージの上、ルーカスはデュエルディスクに視線を向ける。その耳元では、はっきりと時計の針が進む音が聞こえている。
「俺が引いたレールを進んでもらうぜ。
それか今、ここで死ぬか?」
タイムリミットは、すぐそこに迫っている。
否、もうリミットを迎えている。
それはルーカスも気づいていた。
そしてルーカスは苦悶の表情でEXデッキから1枚のカードを取り出す。
「…ヘヴンアイズ・エクスシーアの効果発動…。EXデッキのヘヴンアイズ・アポロジストをデッキに戻し、ヘヴンアイズ・オスティアリウスを破壊する…!」
それはルーカスにとって最後の砦。エターナルドラゴンとヴィータの完全耐性を維持するための心臓部。しかしルーカスのEXデッキにはもうアポロジスト3枚しか残っていない。心臓にメスを入れる以外、生き残る術がないのだ。
苦肉の宣言に応じ、エクスシーアはその足を進め、オスティアリウスの前に立つ。立ちはだかるエクスシーアを前に、オスティアリウスは静かに膝をついた。最期の時を悟ったように深く瞼を閉じると、迷いのない一太刀がその身体を容赦なく両断する。衝撃と共に弾けた少年の姿は、眩い光の粒子へと散り、戦場から静かに消え失せた。
しかしそれは悲劇の序章に過ぎない。
「アポロジストがEXデッキに3枚ある限り、ヴィータとエターナルドラゴンはモンスター効果を受けなかった。だが…ようやく化けの皮を剥がせるぜ」
怜央の眼光がさらに鋭くなる。
「スチームアーミー・ライター・テルミットの効果!テメェに1000のダメージを与える!さらにエクスシーア、ヴィータ、エターナルドラゴン!そいつら全員、俺の目の前から消えてもらう!」
耳をつんざく爆音が炸裂し、ライター・テルミットがその内側に秘めた破壊エネルギーを一気に解放した。視界は真っ白な閃光に塗りつぶされ、凄まじい衝撃波が同心円状に広がる。
「うあああ!!」
ルーカス LP 5800→4800
噴き上がった爆炎は、天を衝くほどの火柱となって荒れ狂い、大気そのものを焦がしながらいつまでもその場に留まり続けた。揺らめく熱波が逃げ場を失い、視界を遮るほどの火の粉が舞い散るなか、地獄のような焦熱の向こう側に、ようやく3体の影が絶望的な姿を現す。
エクスシーアは全身の装甲に亀裂を走らせ、折れかけた剣を支えに立っていたが、すぐに力なく崩れ落ちた。白く輝いていたヴィータの幹は、猛火に晒されて無残な炭火へと変わり、埋め込まれていた無数の瞳は全て塞がっている。
そして、絶対的な威容を誇っていたエターナルドラゴンが、苦悶に満ちた呻きを上げながら、その巨躯を地響きと共に沈めた。
破壊の余韻を塗りつぶすように、怜央の背後にそびえるディメンションタワーから、粘り気のある濃密な黒煙が噴き出す。意志を持つ獣のように蠢く煙は、炎すらも呑み込みながら満身創痍の3体へと這い寄り、その身をまとめて闇の深淵へと引きずり込んでいった。
-------------------------------------------------
【ルーカス】
LP4800 手札:0
①ヘヴンアイズ・ドミニオンズ DEF2700
Pゾーン:▲カントル、■ゲートキーパー
EXデッキ(表):アポロジスト×2
▲□□□■
□①□□□
□ □
⑨⑧⑦⑩□
□□□□□
【怜央】
LP150 手札:0
⑦スチームアーミー・エクスプロード(X素材2) ATK4800
⑧スチームアーミー・レイル・エクスプレス(X素材0) ATK2000
⑨スチームアーミー・ブレイブロード・エクスプレス(X素材0) ATK2500
⑩スチームアーミー・メルト・コーポラル ATK2100
永続魔法:スチームアーミー・ディメンションタワー
--------------------------------------------------
絶対的な支配力を誇っていたルーカスのフィールドは、ただ1体のモンスターをモンスターを残すのみ。対する怜央のフィールドは、漆黒の錆びた鉄塊で埋め尽くされている。
あまりに急激のことに、美蘭やアリシアはステージを見つめたまま固まっている。ルーカスは膝を折り、怜央を睨みつける。
「なんで…お前みたいなドブネズミが…」
怜央はフィールドの中央を悠然と渡り歩き、ルーカスの前に立つ。
「追い詰められたドブネズミは何をしでかすかわかんねえからな。窮鼠……なんとかってヤツだ」
ルーカスは腑に落ちない様子で、オーケストラホールの床の木目を見つめる。
怜央がライター・テルミットを召喚した際、ルーカスはライター・テルミットの効果ダメージがあることで、怜央が完全耐性を攻略せずともライフを削りきることを警戒し、その召喚を無効にした。一度召喚を無効にしてしまえば、エクスプロードの効果で再度装備されても、装備先のモンスターを破壊すれば効果ダメージは受けないからだ。
実際はエクスプロードの圧倒的な攻撃力と2回攻撃という、ルーカスの予想を上回る火力が出力されたことで、効果ダメージのケアに手がまわらず、ただエクスプロードの攻撃を凌ぐためだけに、攻撃無効と破壊効果を使わされてしまった。そこでEXデッキのリミットを超え、アポロジストを消費せざるを得ず、完全耐性が崩壊するに至った。
これこそが怜央の策略。唯一の勝利への道筋。
常に攻めの手を撃ち続け、EXデッキの表側カードという命綱に負担をかけ続けた。そしてトドメに相手の予想を上回る詰めの「ブーストフレイム」により、ついにその命綱は切れた。
ルーカスは弾けたように立ち上がり、怜央に詰め寄る。
「そもそも、EXデッキが足りなくなったのは、ライター・テルミットの召喚を無効にするという僕の"判断"があったからだ!もしあの召喚を無効にしていなければ、お前のプランは破綻していた!」
もしライター・テルミットの召喚を無効にしていなければ、EXデッキにはあと1枚、アポロジスト以外のカードが残っていた。そうなればエクスプロードの攻撃を2度防いでも、エターナルドラゴンとヴィータの完全耐性は維持され、怜央にはルーカスのライフを削り切る手段はなかった。
つまりルーカスがライター・テルミットの召喚を無効にしていなければ、怜央は敗北していた。あのルーカスの判断一つが、明確に勝敗に結びついていたのだ。故に、ルーカスは腑に落ちない。その不確定要素を怜央に計算できるはずがないと。
しかし怜央は、ルーカスを見上げながら淡々と言う。
「テメェなら、止める。"もしものこと"を想像して、当然のように一部を切り捨てるテメェならな」
突きつけられた言葉が、ルーカスの奥底にある何かに火をつけた。怒りに任せて怜央の胸ぐらへと荒々しく掴みかかる。
「これで自分が正しいと証明したつもりか!?こんなことで…!!」
「正しい?んなこたァ知るか。気に食わねえからブッ潰すだけだ」
2人の視線が真正面からぶつかり合う。胸ぐらを掴んだルーカスの右手が小刻みに震える。
「お前のような浅はかな凡人が、いつも世界を狂わせるッ…!お前達のせいで、世界中の人が死ぬんだぞ…!」
怜央もまたルーカスの胸ぐらに迫り、真っ向から言葉を叩きつけた。
「それはテメェらの頭ン中だけの話だろうが。俺からしてみりゃ、モンスターワールドから何十も何百もモンスターが流れ込んでくる時点で、隕石が落ちる前に地球が終わるとしか思えねェな…!」
それは、かつてコラプスの地獄をその身で味わった者だけが持つ、重く鋭い実感だった。ルーカスは次の言葉を紡ぐことができず、ただ苦渋に満ちた表情で奥歯を噛み締める。
「ウム、あながち否定はできん。一体で町一つが壊滅したのだからな」
静まり返る場の空気など意に介さず、ハイドは他人事のように冷淡に頷いた。
怜央は掴んでいた胸ぐらを無造作に放すと、デュエルディスクのブレードに指を走らせた。
「エクスプロードの効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、フィールドのモンスターを1体破壊する。ヘヴンアイズ・ドミニオンズを破壊」
宣告と共に、背後に控えていたエクスプロードが噴射炎を上げて急加速した。逃げ場を奪うようにドミニオンズの翼を力任せに鷲掴みにすると、左腕のバーナーをその喉元へ零距離で突きつける。そして放たれた猛烈な火炎が標的を芯から焼き尽くし、ドミニオンズは悲鳴を上げて燃え尽きた。火の粉が舞う盤面には、ルーカスを守る盾はもう一枚も残されていない。
エクシーズ素材が減ったことでエクスプロードの攻撃力は4600に下がる。
「デュエルモンスターズは、モンスターを全て倒すゲームじゃない。そう言ってたじゃないか…」
ルーカスは弱弱しい声で呟く。
「だがこうも言ったはずだぜ。全部ぶっ壊すってな」
怜央は揺るがぬ声で言葉を返す。
その場に項垂れるルーカスを、怜央と背後に控えるエクスプロードが威圧する。不気味に輝く二対の赤い眼が、逃げ場のない敗者を無慈悲に見下ろしていた。
「テメェみたいな野郎は、涼しいツラして、いつも頭ン中で勝手に結論を出しやがる。"今から新しい道を探すなんて無理"?違ェだろ。テメェらはどうせ最初っから、そんな道なんざ眼中になかっただろうが」
戦いの憔悴ゆえか、それとも返す言葉が見つからなかっただけなのか、ルーカスは何も言わない。
「地べた這いずって、足掻いて、指一つ動かせなくなって…それでもどうしようなかった時に初めて"無理でした"だろうが。泣きながら世界中に頭下げて"どうしても犠牲が出ちまいます、スイマセン"だろうが。そこまでやったらこっちも多少は納得するかもな」
その言葉はあまりにも愚直だった。しかしかつてならば鼻で笑い、流していたであろう彼の言葉を、今のルーカスは受け止めざるを得なかった。デュエルがまるで刃のように、自分の喉元に突き立てられている感覚だった。
(なんだ、この状況は…。
まるで僕が…間違っているみたいじゃないか…!)
怜央の言葉を受け、観客席に立つ蒼月が静かに口を開く。
「足掻く前に正しき決断をする…それが指導者のあるべき姿ですがね」
その言葉を、深く椅子に腰を据えたままのハイドが引き取った。
「所詮は机上の空論、答えなどないのだよ。どちらも正しく、どちらも間違っている。だが…そこに唯一正負を付けられるのがデュエルだ。
勝者こそが正しい。なんと明快なことか!」
怜央を見つめ、遊次たちの胸の奥底で抗いようのない何かがせり上がった。それは、魂を直接揺さぶるような、激しく燃え滾る熱だ。
どう足掻いても覆すことなど不可能と思われた状況を、怜央は文字通り「命」を掛けて、足掻き、ここまで辿り着いた。
彼のデュエルこそが、遊次達に感じさせた。
自分達の進むべき道は間違っていない、と。
「何かを切り捨てる前に、血ヘド吐くほど足掻いてみやがれ。その発想すらねえお坊ちゃまが、世界の舵を握るだ?笑わせんな」
怜央は力強く一歩を踏み出した。呼応するように、背後のエクスプロードが機体から紅蓮の炎を噴き上げ、周囲の空気を歪ませるほどの威圧感を放つ。
だが、ルーカスもただでは倒れなかった。絶望的なプレッシャーを跳ね除けて立ち上がると、真正面から怜央の瞳を睨み据える。
「勝った気でいるなよ、ドブネズミ。お前達じゃ兄さんには勝てない。世界を動かすのは、僕達だ…!!」
その叫びは、これまで積み上げてきた己の正義と歩みを否定したくないが故の、悲痛な拒絶だった。怜央は何も答えず、ただ強く握り締めた拳を前方へと突き出した。
「ブレイブロード・エクスプレスで、ダイレクトアタック」
ブレイブロード・エクスプレスが全身から猛烈な蒸気を噴き上げ、その重厚な車躯を紅蓮の炎で包み込む。眼前に迫り来るブレイブロード・エクスプレスの圧倒的な速度に、ルーカスは息を呑み、驚愕に目を見開いた。
次の瞬間、車体から噴き出した蒸気が猛烈な紅蓮の炎を纏い、巨大な業火の渦を形成する。大気を引き裂く轟音と共に灼熱の螺旋が正面から激突し、ルーカスの姿は瞬く間に猛烈な熱波の中へと呑み込まれていった。
「うああああああ!!」
ルーカス LP4800 → 2300
崩れ落ちたルーカスは、床に膝をついたまま頭上の怜央を仰ぎ見る。鋭い憎悪を向けながらも、その瞳の奥には拭いきれない怯えが色濃く張り付いていた。
しかし怜央は問答無用で手を伸ばすと、胸倉を力任せに掴み取り、抗う間も与えずその体を強引に引きずり上げた。
そして怜央は無言のまま、右の拳を硬く握り締めた。肩を大きく引き、今にも叩きつけんばかりの勢いで拳を後方へと溜める。
呼応するように、背後に立つエクスプロードもまた、右腕に猛烈な火炎を爆ぜさせた。主の動きをなぞるようにその拳を深く引き、放たれる一撃の重みを予感させる。
「やめ…ろ……」
ルーカスは思わず、震えた声を上げる。
しかし、怜央は無慈悲にも、最後通告を放つ。
「トドメだ。スチームアーミー・エクスプロードで、ダイレクトアタック」
エクスプロードの巨大な拳に紅蓮の火炎が猛烈な勢いで集束していく。大気を焦がす熱波の中、怜央は射抜くような鋭い眼差しをルーカスへ向け、引導を渡す言葉を叩きつけた。
「ノブレスなんとかだか知らねえが…世界はテメェらなんざお呼びじゃねえんだよ」
溜められたエネルギーが爆発し、エクスプロードの拳が真っ直ぐに振り抜かれる。怜央に胸倉を掴まれていることで、ルーカスは逃げ場のない衝撃を真正面から浴びる。
迫る拳に目を見開いたのも束の間。気付けばルーカスは激しく舞い散る火花の中に呑み込まれ、抗う術もなく宙へと弾き飛ばされていた。
ルーカス LP2300→0
怜央は振り抜くことのなかった右拳を、ゆっくりと降ろす。
ルーカスの体は、凄まじい衝撃と共にステージの床へ叩きつけられた。見上げる視界を支配するのは、天井に吊るされた豪華なシャンデリア。白銀の光だけが、朦朧とする彼の意識を無慈悲に照らし出す。
「勝者、鉄城怜央。契約に基づき、パラドックスブリッジ"デーヴァ"の生体認証使用権はイーサン・レイノルズへ返還されます。また、ルーカス・ヴラッドウッドに対し、Nextのメンバーへの強制オースデュエルの発動を禁じます」
静寂が支配するオーケストラホールに、DDASの機械音声だけが響き渡った。
第73話「リミット」 完
怜央の勝利により、両者は互いに3つの鍵を有する。
オスカー以外の3人は契約により強制オースデュエルを封じられている。もしオスカーが敗北し強制オースデュエルが使用できなくなれば、ニーズヘッグがNextから鍵を奪う手段は存在せず、セカンド・コラプス計画は破綻を禁じ得ない。
追い詰められたオスカーは、全てを懸けた一手を打つ。
そして開幕する、遊次とオスカーの決戦。
遊次はオスカーの戦術を徹底的に潰す、ある戦略を仕掛ける。
「もし道を違えれば…神楽遊次は破滅する」
次回 第74話「悪魔の心臓」
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