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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第67話:約束という名の呪い

第67話:約束という名の呪い 作:

-------------------------------------------------
【美蘭】
LP5200 手札:3

【灯】
LP8000 手札:1

①ペイントメージ・オリーヴ(地) ATK1700
②ペイントメージ・ミレー(炎) ATK2400
③ペイントメージ・ゴッホ ATK2500
--------------------------------------------------

セカンド・コラプス計画を止めるため、なんでも屋「Next」は首都メインシティへと降り立つ。
イーサンが1人目の刺客「鄭 紫霞 (ジェン ズーシャ)」を破るが、灯と遊次の前に次なる刺客「七乃瀬美蘭」が現れる。

13年前の、灯と美蘭の間に生まれた小さな綻び。
それは今、世界の命運を握る戦いとして、再びここに顕現した。

美蘭は先行で2体のSモンスターを召喚するも、
いくつもの罠を掻い潜り、美蘭のモンスターを全て倒すことに成功する。

しかし灯は戦いの重圧に耐えるので精一杯だった。
震える彼女の手を見つめ、美蘭はなぜ戦うのかと灯に問う。
美蘭は灯の心の深部を見抜いていた。
彼女が戦うのは世界中の人々を守るためではない。
「ただ遊次に嫌われたくないからだ」と。

もし遊次が逃げることを選んだら、灯もその道を選ぶだろう。
灯は何よりも、遊次に心の暗部を見られたくなかった。
世界を救うための決意に、やましさや後ろ暗い気持ちがあるのだと、知られたくなかった。

そして遊次は、恐怖に耐える灯を見て、彼女を危険な戦いに巻き込んでしまったことに後悔を見せる。
しかしその葛藤こそが、灯の最も恐れていたものだ。

遊次に置いていかれる。自分が邪魔な存在になる。
それだけは、灯にとって何よりもあってはならないことだった。

「デュエルは始まったばっかりだ。カードを引けよ。
"俺"はお前に勝つ。お前を倒して、覚悟を証明する」

灯は強い口調へと戻り、その言葉に無理やり闘志を宿す。

「…そこまで言うなら、わかったよ。
もう戦おうなんて思えないぐらい、徹底的にブッ潰してあげる」

美蘭はデュエルディスクを構え、デッキトップに指を掛ける。

「アタシのターン、ドロー!」

引いたカードを見ると、美蘭の眉がぴくりと動いた。
そのカードを見つめた後、ほんの小さな笑みを浮かべ、前を向く。

「墓地の『リザージュ・オクルージョン』を除外して効果発動っ。
除外されてる『リザージュ』カードを1枚墓地に戻せる。
リザージュ・セイラウスちゃんを墓地に戻すよ」

「『リザージュ・ナイロ』を召喚!」


■リザージュ・ナイロ
 効果モンスター
 レベル4/地/爬虫類/攻撃力1600 守備力1000
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから「リザージュ」モンスター1体を墓地へ送る。
 ②:このカードがカードによって効果を得ていない場合、
 自分の墓地の「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 このカードはエンドフェイズまでそのモンスターと同じ効果を得る。


現れたのは、銀色の鋭角な鱗が鏡面のように輝いているトカゲのモンスターだ。
眼光は紫紺に明滅し、水面のように揺らめいて見える。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/d87looG
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


灯は現れたナイロを見つめ、素早く思考の網を広げる。

(あのモンスターは墓地のリザージュの効果をコピーできる。
セイラウスの効果をコピーすれば、今度はゴッホの効果がコピーされて、私のモンスターが破壊される…)

灯は一瞬、手札の1枚のカードに視線を送った後、前を向く。

「ペイントメージ・ゴッホの効果発動!フィールドのモンスターの属性を変更する!
デッキから地属性『ペイントメージ・ショコラ』を除外して、ミレーを地属性に変える!」

ゴッホが剣の形をした筆を振るうと、ミレーの姿は元の茶色いソバージュに落ち葉のような意匠の服へと戻った。
美蘭は一瞬だけ、考えるように右斜め上を見た。

「ペイントメージ・ミレーの効果発動!
ペイントメージ・カードルを素材にしたミレーは、同じ属性の相手モンスターを除外できる!
同じ地属性のナイロを除外!」

ミレーが手にする鋤を地面に向けて突き出すと、その直下、ナイロの足元から轟音と共に巨大な土の柱が立ち上がった。
柱が砕け散るとそこにはナイロの姿はなく、光の粒子が残るのみだった。
しかし美蘭にとってこれは想定内だった。
勢いを止めることなく、手札からカードをデュエルディスクに叩きつける。

「自分フィールドにモンスターがいない時、
『リザージュ・ペクティナータ』は手札から特殊召喚できる!」


■リザージュ・ペクティナータ
 効果モンスター
 レベル3/地/爬虫類/攻撃力1400 守備力1200
 このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
 ②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
 ②:自分の墓地のSモンスター以外の「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ③:このカードがカードによって効果を得ていない場合、
 自分の手札の「リザージュ」モンスター1体を対象として発動できる。
 このカードはエンドフェイズまでそのモンスターと同じ効果を得る。


そのモンスターは光を反射する群青色の皮膚を持ったトカゲだ。
背中から尻尾にかけて櫛状に並んだクリスタル状の棘が伸びている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/T5SRNE3
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「ペクティナータの効果発動っ!墓地のSモンスター以外のリザージュを復活できる!
帰ってきて、フラヴィマちゃん!」

■リザージュ・フラヴィマ
 効果モンスター
 レベル4/地/爬虫類/攻撃力1700 守備力600
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
 手札の「リザージュ」モンスター1体を特殊召喚する。
 ②:自分メインフェイズに発動できる。
 デッキから「リザージュ」チューナー1体を特殊召喚する。


現れたのは黒い肌に黄色い宝石が埋め込まれたトカゲのモンスターだ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/SpNgyzC
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


(フラヴィマの効果でデッキからチューナーを呼ばれたら、またセイラウスが現れる…。
そうはさせない!)

灯は手札に残された1枚のカードを表に向ける。

「手札のペイントメージ・フキサチーフの効果を発動!
自分または相手ターンに1度、フィールドの『ペイントメージ』Sモンスターと、
手札のこのカードでシンクロ召喚を行う!」


■ペイントメージ・フキサチーフ
 効果モンスター/チューナー
 レベル1/水/魔法使い/攻撃力100 守備力800
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分・相手ターンに手札から発動できる。
 このカードを含む自分フィールドのSモンスターを素材に
 「ペイントメージ」SモンスターをS召喚する。
 ②:自分の「ペイントメージ」モンスターの効果を無効にする効果が発動した時、
 墓地のこのカードを除外して発動できる。その効果を無効にする。


灯の目の前に、青いボディのスプレー缶に手足のついたモンスターが現れた。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/SA3crQW
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能

「手札からシンクロ…!」
美蘭は目と口を目一杯に開く。
その表情は驚きよりも期待に満ちているようだった。

「俺はフィールドのレベル6『ペイントメージ・ゴッホ』に、
レベル1『ペイントメージ・フキサチーフ』をチューニング!」

フキサチーフはすぐに1つの光の輪へと変わる。
ペイントメージ・ゴッホが高く飛び、輪に中へと入ってゆく。


「勇気携えし烈火の剣が、破滅の未来を塗り替える」

「シンクロ召喚!レベル7!
『ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ』!」


■ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ
 シンクロモンスター
 レベル7/炎/魔法使い/攻撃力2500 守備力2000
 チューナー + 「ペイントメージ・ゴッホ」
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分・相手ターンに発動できる。
 相手フィールドのこのカードと同じ属性を持つモンスター全てを破壊し、
 破壊したモンスターの中で元々の攻撃力が最も高いモンスターの元々の攻撃力分、
 相手にダメージを与える。
 ②:このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、
 自分の墓地の「ペイントメージ・ゴッホ」1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターは、相手ターンでも効果を発動できる。


それは、ペイントメージ・ゴッホの進化形態とも言うべきモンスター。
剣と盾は一回り大きな形となり、
それらにはひまわりを思わせる黄色い花びらの紋様が描かれている。
銀色の鎧には炎のような赤いペイントが施され、その姿はまさに騎士であった。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/aekOx30
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「そのコ…昔からいるよね。でも初めて見たよ。
ふふっ、カッコいいじゃん」

美蘭は相変わらず余裕の表情だ。
灯はどこか得体のしれぬ不安を抱きながらも、更なる効果を紡いでゆく。

「ペイントメージ・ミレーの効果発動!
デッキから地属性『ペイントメージ・ショコラ』を除外して、ソレイユを地属性に変える」

ミレーの持つ筆の形をした鋤の先に、茶色の絵の具が塗られる。
その筆を振るうと、ゴッホはたちまち茶色い髪と鎧へと変わる。

「ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユの効果発動!
自分・相手ターンに1度、このカードと同じ属性の相手モンスターを全て破壊し、
その中で最も高い攻撃力を持つモンスターの元々の攻撃力分、ダメージを与える!
これでお前のモンスターは全て破壊される!」

ゴッホ・ソレイユが両手で剣を下手に構え、今にも振りぬかんとする、その時。

「手札の『リザージュ・ミニマ』の効果発動っ!
デュエル中に1度、手札のこのコを特殊召喚して、さらにS召喚できる!」

■リザージュ・ミニマ
 効果モンスター/チューナー
 レベル2/地/爬虫類/攻撃力700 守備力100
 このカード名の、①の効果はデュエル中に1度しか使用できず、
 ②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドに「リザージュ」モンスターが存在する場合に発動できる。
 手札のこのカードを特殊召喚する。
 その後、このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材に
 「リザージュ」SモンスターをS召喚できる。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 ②:このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。
 カードを1枚ドローする。


「なんだって…!」
手札からの動的なシンクロ。それができるのは灯だけではなかった。
美蘭の余裕の態度は、手札に秘策を隠し持っているが故だったのだ。


フィールドに、宝石のように輝く鱗を持つ小さなトカゲが現れる。
頭から胸までは鮮やかな黄色、体は深い青で、背に小さな棘が並ぶ。
丸い瞳が光り、長い尾まで角度によって色が変わるような艶が走っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/iyT2zGV
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「アタシはレベル3『リザージュ・ペクティナータ』、
レベル4『リザージュ・フラヴィマ』に、レベル2『リザージュ・ミニマ』をチューニング!」

「レベル9シンクロ…!」
レベル9。それは、セイラウスを上回る新たなSモンスターの降臨を意味していた。

ミニマが光の輪へ変わる。
その輪を2体のモンスターが通り抜け、合計7つの星へと変換される。

「真実は虚構へと堕ち、世界は合わせ鏡の魔境へと変わる。剛竜よ、君臨せよ!」

「シンクロ召喚ッ!!
『ハイリザージュ・ギガンテウス』!」

■ハイリザージュ・ギガンテウス
 シンクロモンスター
 レベル9/地/爬虫類/攻撃力2900 守備力2500
 チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
 ①:このカードは戦闘・効果で破壊されない。
 ②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
 自分フィールドの「リザージュ」モンスターの攻撃力は、正面の相手モンスターと同じ数値となり、
 その効果を得る(その正面の相手モンスターの効果は無効化される)。
 この効果で得た効果がカード名・種族・属性を参照する場合、
 それらを「リザージュ」カードに変更する(参照するカードの種類は変更できない)。


フィールドに迸った光が、激しい輝きを放ちながら急速に収束していく。
その光の中から現れたのは、全身を黒と茶色の結晶の鱗で覆われた巨大なトカゲ…否、巨大な"竜"だった。
その巨体は地面を押し潰すように沈み込み、太い四肢がフィールドに深く食い込む。
背から尾の先まで鋭い結晶の棘がずらりと並び、体表のひび割れた隙間からは、赤い光が脈打つように漏れていた。
モンスターは、口を開いた顎に無数の牙を揃え、熱を帯びた息を荒々しく吐き出しながら咆哮を上げた。
その威容は、爪の一本まで硬質な結晶でできているように見え、空間全体に圧倒的な圧力を放っていた。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/XFhvuWm
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その竜にも等しき巨大なモンスターを目の前に、灯は思わず1歩後ずさる。
しかしそれを見た遊次が咄嗟に後ろから声を発する。

「押されんな灯!まだソレイユの効果が残ってる!」
その言葉に灯ははっとして、すぐに意識を前方へと向ける。

「チェーン1のゴッホ・ソレイユの効果!
同じ属性のギガンテウスは破壊される!」

ゴッホは剣を構え、ギガンテウスに向けて再び振り抜こうとする。
その瞬間、ギガンテウスの全身を覆う輝く鉱石のような鱗に、剣を振りかざしたゴッホ自身の姿が鏡のように映り込んだ。
ゴッホはそれに気づき僅かに動きを止めるが、その直後、剣はそのまま振り抜かれた。

しかし、剣は熱も光も帯びることなく、空を斬っただけだった。
静寂が夜の空き地を包む。

「なっ…」
ゴッホ・ソレイユの効果が不発に終わったことに、灯たちは驚きを禁じ得なかった。

「ざーんねん。ギガンテウスの正面にいるモンスターの効果は無効になっちゃうんだ」

「うそ…」
ソレイユは灯にとって奥の手だった。それが全く通用しなかったことに、悔しさがあふれ出る。

「灯はさ、さっきミレーでナイロを除外する時、わざわざゴッホの方の効果でミレーの属性を変えたよね?
ミレー自身じゃなくてわざわざ別のモンスターで属性を変えるってことは、そこになーんか理由があるんじゃないかなって思ってさ」

「だからわかっちゃったんだよね。
これからゴッホがS素材になるから、そっちを先に使ったんだって。
ゴッホ・ソレイユのことは昔から知ってたし」

美蘭は小さな情報から、灯が秘めていた奥の手を見抜いていた。
その洞察力と頭の回転は、彼女がニーズヘッグのエージェントたるゆえんであり、
「気に入らないものは全て潰して来た」という言葉の強い裏付けであった。

「S素材になったリザージュ・ミニマちゃんの効果発動。
カードを1枚ドローするよ」

「ギガンテウスちゃんがいる限り、リザージュは正面にいるモンスターの効果をコピーできるの」

美蘭の言葉に、灯はフィールドを見渡してあることに気が付く。
それは、ある1色がフィールドを支配しているということ。

「まさか…」

「ギガンテウスちゃんは今、正面にいるゴッホ・ソレイユの効果をコピーしてる。
ソレイユは、自分と同じ属性の相手モンスターを全て破壊して、ダメージを与えるんだよね?」

「でね、気付いたんだけど…たまたま、灯のフィールドのモンスターはみーんな地属性だね!」
美蘭のモンスターを除去するために、ペイントメージの属性を地属性に合わせた。
しかし、今はそれが仇となり自分へと刃を向けている。
美蘭は狂気をはらんだ笑みを浮かながら、両手を広げる。

「ゴッホ・ソレイユの効果をコピーしたギガンテウスの効果発動!
自分と同じ属性の相手モンスターを全て破壊して、一番攻撃力が高いモンスターの元々の攻撃力分、ダメージを与える!」

ギガンテウスが喉を震わせ、耳を劈くような咆哮を上げた。
その衝撃波がフィールドに叩きつけられると、灯の3体のモンスターは全身を黒く硬質な結晶に覆われた。
そして無数のひびが走り、轟音と共に黒い結晶の粒子となって砕け散った。
さらに、ギガンテウスの咆哮による衝撃波は、プレイヤーである灯をも襲った。

「うわぁあああ!!」
LP8000 → 5500

しかし灯は足に力を入れ、倒れる体を踏みとどまらせる。
デュエルディスクでギガンテウスの効果を瞬時に確認し、どう動くべきかを必死に思案する。

(ゴッホ・ソレイユが破壊された時、墓地のゴッホを復活させられる。
だけどギガンテウスはデッキからリザージュを呼び出す効果があるから、そのモンスターにゴッホの効果がコピーされちゃう)

灯の頭の中に複数の回路が走る。
そしてその中から、一つだけ正解を見つけ出した。

(それでも…打つ手はある…!)

灯は震える手をもう片方の手で掴みながら、美蘭と向き合う。

「ゴッホ・ソレイユの効果発動!
破壊された時、墓地からゴッホを特殊召喚できる!」

赤髪の若き炎の剣士が守備表示でフィールドに現れる。
ゴッホはギガンテウスの正面を避けたゾーンに特殊召喚されている。

「ふーん…ホントにいいのかな?そんなことしちゃって」

美蘭は不敵な笑みを浮かべデュエルディスクに触れる。

「ハイリザージュ・ギガンテウスの効果発動!
お互いのターンに1度、デッキからリザージュを特殊召喚できる!」

このままゴッホの正面にモンスターを特殊召喚されれば、ゴッホの効果は無効となり、その効果がコピーされてしまう。
遊次が不安げに見つめる中、灯は返す刀で効果を発動する。

「チェーンして、ペイントメージ・ゴッホの効果発動!
1ターンに1度、フィールドのモンスター1体の属性を先行する!
デッキから闇属性『ペイントメージ・ミュール』を除外して、ゴッホを闇属性に変更!」

ゴッホの持つ剣の柄についた筆が、紫色に変わる。
ゴッホが筆を振るうと、その髪や鎧は紫色へと変わる。

その一手は、美蘭にとっても意図を読み取れぬものだった。
しかしデュエルディスクによって浮かび上がるあるカードの情報を見つけると、その意図ははっきりと読み取れた。

「…なるほどね。アタシはデッキから『リザージュ・ヴィリディス』をゴッホの正面に召喚」


■リザージュ・ヴィリディス
 効果モンスター
 レベル4/地/爬虫類/攻撃力1600 守備力1300
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:お互いのスタンバイフェイズに、相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを相手フィールドに特殊召喚する。
 ②:自分メインフェイズに発動できる。
 自分フィールドのカードによって効果を得たモンスターの数だけ、自分はデッキからドローする。


現れたモンスターは、鮮やかな緑色の幾何学的な鱗で覆われ、宝石のように強く輝いている。
背中から尾の先にかけて太く鮮やかな黄色のラインが走っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/cJyVUS1
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これにより、ゴッホの効果は無効化され、ヴィリディスはゴッホの効果を得たことになる。

「この時、除外された『ペイントメージ・ミュール』の効果発動!
このカードが除外された場合、相手モンスター1体を対象として、このターン、そのモンスターの効果の発動を封じる!」

■ペイントメージ・ミュール
 効果モンスター
 レベル2/闇/魔法使い/攻撃力900 守備力500
 このカード名の①②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが除外された場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 このターン、そのモンスターは効果を発動できない。
 ②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
 デッキから闇属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを闇属性に変更する。


「俺が指定するのはリザージュ・ヴィリディス!
これにより、コピーしたゴッホの効果は発動できない!」

ヴィリディスの身体を、霧のような紫色の瘴気が包む。

「…凄いじゃん、灯。
自分を守るモンスターを呼びながら、ちゃーんとアタシが勝つルートを潰してくるんだもん。感心しちゃった」

自分の一手を見事に封じられた美蘭は、なおも嬉しそうな表情を見せる。

「だからぁ…もっと怖い思いさせてあげないと、ダメだね」
美蘭は右手を高々と挙げる。

「バトルフェイズ!リザージュ・ヴィリディスで、ペイントメージ・ゴッホを攻撃!」

ヴィリディスは優雅な動作で尻尾を鞭のように振り抜いた。
その軌跡は虹色の残光となり、ゴッホへと襲いかかった。
その体を煌びやかな光の刃となり、ゴッホを斬り裂いて破壊した。

「ハイリザージュ・ギガンテウスで、灯にダイレクトアタック!」

地響きと共に、太い四肢が地面を押し潰しながら前進し、灯の眼前にまで迫る。
口を開いた顎からは、灼熱の息が咆哮と共に溢れ、その口内には黒い結晶のエネルギーが禍々しく凝縮されていた。

灯は、その禍々しい光から目を離せなかった。
恐怖に喉が張り付き、呼吸を乱し、息を飲んだ。
そのエネルギーは純粋な破壊の力となって、灯へと放たれた。

「ああぁあああっ!!」
灯 LP5500 → 2600

灯は受けたダメージに耐え切れず、膝をつく。

「アタシはカードを伏せてターンエンド」

-------------------------------------------------
【美蘭】
LP5200 手札:1

①ハイリザージュ・ギガンテウス ATK2900
②リザージュ・ヴィリディス ATK1600

伏せカード:1

【灯】
LP2600 手札:0

--------------------------------------------------

「ギガンテウスちゃんはバトルと効果で破壊されないし、ギガンテウスちゃんがいる限り、リザージュはバトルする相手のモンスターと同じ攻撃力になるの。
しかもリザージュの目の前にいるモンスター効果は無効になって、リザージュはそれをコピーできる。
手札1枚でどうやって戦うのかなぁ?」

灯は震える足でなんとか立ち上がる。
明らかなる劣勢。敗北の予兆。
その恐怖が灯を支配する。
しかし恐怖の根源は、セカンド・コラプスによって危険に晒されることではない。

灯は振り向き、遊次の方を見た。
その目は、まるで縋るようだった。助けを求めているようだった。
そんな彼女に、遊次は強く胸が痛む感覚を覚えた。

(灯に、こんな顔させていいわけがねえ。
なんでそこまでして戦うんだ。なんのために…)

今すぐにでも解放してやりたかった。
しかし「戦わなくていい」と口にしようとした時、灯は強い拒絶を示した。

そして遊次自身も、強い違和感を抱いた。
ただ灯を戦いから遠ざけることが、本当に正しいのか。
しかし、その違和感の正体にはまだ気付いていなかった。

だが、それが答えではないことは、もはや確信に近かった。
遊次は自分を見つめる灯に、意を決して言葉を吐く。

「大丈夫だ、灯!
俺との修行が身に染みてるお前なら、こんな状況なんてことねえ!」

灯は振り向き、遊次の顔を見つめる。
そこに、先ほどまでの苦悩の感情は見えなかった。
見えないようにしているだけかもしれない。それでも、少しだけほっとしたのは確かだった。

「修行…」

灯は13年前に遊次と出会ってからの、修行の日々を思い出す。
遊次をいじめるクラスメイトに反撃するために、毎日、彼と特訓をした時のこと。

美蘭に少しは手ほどきを受けたものの、まだまだ基本すらままならない灯は、遊次からドローの仕方から徹底的にたたき込まれた。
最初は理解することが多すぎて頭がパンクしそうになったが、そのおかげで今では直感的にどうするのがベストか、体が勝手に判断できるほどまでになっていた。

そして、遊次と過ごす何気ないその日常の積み重ねこそが、灯にとって何よりも大切な日々だった。
灯は幼き頃の記憶を呼び覚まし、心に優しい温かさを取り戻してゆく。
手の震えが、少しずつ治まっていく。

(大丈夫…私には遊次がついてる。それに…)

特訓を思い出す中で、灯は再び記憶の中の大切な約束に触れた。
それは、幼い頃、遊次が公園で夢を語ったあの日のこと。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
だから、私も君の傍で、君を守って、君を支え続けられたらいいなって。

…おう!灯がいてくれたら俺もすげえ嬉しい!絶対に夢叶えような!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(戦うのが怖い?バカじゃないの?
君の隣に立てなくなることに比べたら、こんなバケモノ1匹…なんてことない!)

灯は前を向き、自分をじっと見下ろすギガンテウスを見上げる。

「…ありがとう。
私は、遊次がいてくれるから、戦えるんだよ。
遊次がいてくれれば、どんなことだってできる気がするから」

「灯…」

「だから、見てて。
私の"想い"は、こんなことじゃ変わらないから」

遊次は灯の背中を見つめる。
その姿に、はっとした。

(…俺だって、同じだ。お前がいるから、俺は…)

ただ灯を戦いから遠ざけることが答えじゃない。
その直感に、もうすぐ答えが出そうだった。

灯はデッキトップに指を掛ける。
美蘭は巨大な剛竜の後ろで、優雅に立っている。

「俺のターン、ドロー!」
引いたのは、1枚のモンスターカード。

「リザージュ・ヴィリディスちゃんの効果発動っ!
お互いのスタンバイフェイズに、相手の墓地のモンスターを1体、相手フィールドに特殊召喚できる!
アンタの墓地のゴッホ・ソレイユを、ギガンテウスちゃんの正面に特殊召喚する!」

「なんだって…!それじゃあ…」
遊次はその予想外の効果に驚き、目を見開く。
向日葵の鎧を纏う炎の騎士が、再び戦場に現れた。

「ギガンテウスちゃんの効果で、ソレイユの効果は無効。
さらに、ギガンテウスちゃんはソレイユの効果をコピーできちゃう!
これでアタシは、地属性のモンスターを全部破壊して、ダメージを与えられる。
さらにピンチになっちゃったね!」

(灯の墓地には、フィールドにモンスターがいない時、
デッキからモンスターを呼べる『ペイントメージ・ポリクローム』があった。
でもこれじゃその効果も使えねえ…)

その上、さらにデッキからリザージュを特殊召喚し、無効とコピーをもう1度使用できる。
これを、たった手札1枚で潜り抜けなければならない。
そんなことが可能なのか?
遊次は不安の眼差しで灯の背中を見つめる。

しかし、灯に迷いはなかった。
この光景は、前のターンから見えていたことだ。

「手札から『ペイントメージ・エヴァンタイユ』を召喚!」

■ペイントメージ・エヴァンタイユ
 効果モンスター/チューナー
 レベル2/闇/魔法使い/攻撃力800 守備力300
 このカード名の①②の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
 ①:このカードをリリースし、除外状態の自分のレベル4以下の「ペイントメージ」モンスター2体を
 対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
 ②:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
 デッキから「ペイントメージ」魔法カード1枚を手札に加える。


現れたのは、扇形ブラシの形をした小さなモンスターだった。
体は全体的に黒く、頭部は荒々しい黒い毛で構成され、オレンジ色に光る瞳が強い怒りを放つ。
胴体は木製の柄と、それを締める銀色の金属バンドでできており、短い手足で小さな拳を握りしめている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/UPHPfU5
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可能


「エヴァンタイユをリリースして効果発動!
デュエル中に1度、除外されているレベル4以下のペイントメージ2体を特殊召喚できる!」

フィールドからエヴァンタイユがリリースされる。
エヴァンタイユの正面にリザージュを特殊召喚しても、リリースされてしまえば効果は無効化されない。

「現れろ、ペイントメージ・カードル!ペイントメージ・ミュール!」

現れたのは1.5メートルほどの大きさを持つ額縁のモンスター。
そして三角帽子を被った、短い紺色の髪の少年だ。


「エヴァンタイユが墓地に送られた時、効果発動。
デュエル中に1度、デッキから『ペイントメージ』魔法カードを手札に加える。
俺が手札に加えるのは『ペイントメージ・シャッフル』!」

「ペイントメージ・カードルの効果発動!
除外されてるペイントメージをデッキに戻して、その数だけペイントメージのレベルを上げるか下げる。
除外されてるアールヌーヴォー、トワール、カラメルをデッキに戻して、
ソレイユのレベルを3つ下げる!」

灯には何か狙いがあるはずだ。
しかし、ここでカードルの効果を止めたところで、ミュールとカードルを素材に、除外効果持ちのレベル6シンクロが現れることは避けられない。
ギガンテウスのリザージュ特殊召喚効果はそこに対して当てるべきだ。

美蘭は結論を出し、何もせず優先権を渡した。
これによりソレイユのレベルは3つ下がる。

ペイントメージ・ゴッホ・ソレイユ ☆7→4

「魔法カード『ペイントメージ・シャッフル』発動!
ゴッホ・ソレイユをEXデッキに戻して、デッキから別の属性のペイントメージを特殊召喚する!」

■ペイントメージ・シャッフル
 通常魔法
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターをデッキに戻し、
 そのモンスターとは異なる属性の「ペイントメージ」モンスターをデッキから特殊召喚する。
 ②:墓地のこのカードを除外し、墓地の「ペイントメージ」モンスター3体を選んで発動する。
 選んだモンスターをデッキに戻し、自分はデッキから1枚ドローする。


「よし!ソレイユが正面からいなくなったことで、ギガンテウスは全体破壊効果を失う!」
灯の機転に、遊次は笑みを浮かべる。

「…つまんないの。全然思い通りになんないじゃん」
美蘭は露骨に不機嫌そうな表情になる。

「シャッフルの効果でデッキから光属性『ペイントメージ・シャンパーニュ』を特殊召喚!」

■ペイントメージ・シャンパーニュ
 効果モンスター
 レベル4/光/魔法使い/攻撃力1900 守備力1100
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
 自分の墓地のレベル4以下の「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを特殊召喚する。
 ②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
 デッキから光属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを光属性に変更する。

薄い黄色を基調とした金髪の燕尾服の少年のモンスターが現れる。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/hZhPWdu
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「シャンパーニュの効果発動!
特殊召喚した時、墓地のレベル4以下のペイントメージを特殊召喚できる!
来い、ペイントメージ・オリーヴ!」

オリーヴ色のマッシュヘアをした少年のモンスターが現れる。

「墓地のペイントメージ・シャッフルを除外して効果発動!
墓地のペイントメージ3体…ミレー、ミュール、シャンパーニュをデッキに戻して、カードを1枚ドロー!」

「ペイントメージ・オリーヴの効果発動。
デッキから風属性『ペイントメージ・プリューム』を除外して、ミュールを風属性にする」

オリーヴが筆を振るうと、ミュールの髪や服は緑色に染まる。

「除外された『ペイントメージ・プリューム』の効果発動。
デュエル中に1度、除外された時、ペイントメージ魔法カード1枚を手札に加える。
『ペイントメージ・ワンダーキャンバス』を手札に加える」

「フィールド魔法『ペイントメージ・ワンダーキャンバス』発動!」

■ペイントメージ・ワンダーキャンバス
 フィールド魔法
 このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体をリリースし、
 属性を1つ宣言して発動できる。
 自分の「ペイントメージ」モンスターは、次の相手ターン終了時まで宣言した属性になる。
 ②:自分の除外状態の「ペイントメージ」カード1枚を対象として発動できる。
 そのカードを手札に加える。
 ③:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスターが戦闘で破壊された場合に発動できる。
 そのモンスターと同じ属性の「ペイントメージ」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。


カードの発動と共に周囲の景色は一変する。
そこは、白く研磨された大理石を思わせる巨大な建物が立ち並ぶ空間だった。
いくつもの太い円柱が規則正しく並び、優雅なアーチを支えている。
まるで雪景色のように全てが純白で、静謐かつ荘厳な空気が場を満たしていた。

「ワンダーキャンバスの効果発動。
除外されてる『ペイントメージ』カードを1枚手札に加えられる。
俺は『ペイントメージ・ショコラ』を手札に加える」

この勢いに乗り、灯は次々と展開を進めてゆく。

「俺は闇属性レベル2『ペイントメージ・ミュール』に、
レベル4『ペイントメージ・カードル』をチューニング!」

カードルが光の輪へ変わる。
その輪をミュールが通り抜け、2つの星へと変換される。

纏わりつく漆黒の闇が、安寧を憂鬱に塗り替える。
シンクロ召喚!『ペイントメージ・ムンク』!」


■ペイントメージ・ムンク
 シンクロモンスター
 レベル6/闇/魔法使い/攻撃力2400 守備力800
 チューナー + チューナー以外の闇属性モンスター1体以上
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
 デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、選んだモンスターは宣言した属性になる。
 この効果は相手ターンでも発動できる。
 ②:このカードと同じ属性を持つ相手の墓地のモンスターが効果を発動した場合、
 またはこのカードと同じ属性を持つ相手の墓地のモンスターを対象とする効果が発動した場合に発動できる。
 その効果を無効にし、対象となった相手の墓地のモンスターを除外する。


現れたモンスターは、真っ黒なロングコートを纏った若い男のモンスターだ。
髪は黒く、前髪が片目を隠している。
鋭い目には黒いアイラインが引かれ、病的な雰囲気を醸し出している。
右手には銃を握っており、まるで筆のようなデザインだ。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/hw4EFqv
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-------------------------------------------------
【美蘭】
LP5200 手札:1

①ハイリザージュ・ギガンテウス ATK2900
②リザージュ・ヴィリディス ATK1600

伏せカード:1

□①□②□
 □ □
③□①□②


【灯】
LP2600 手札:1(ペイントメージ・ショコラ)

①ペイントメージ・シャンパーニュ ATK1800
②ペイントメージ・オリーヴ ATK1700
③ペイントメージ・ムンク ATK2400

フィールド魔法:ペイントメージ・ワンダーキャンバス
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「ムンクの効果発動。
1ターンに1度、フィールドのモンスターの属性を変える。
デッキから『ペイントメージ・カラメル』を除外して、自身を地属性に変える」

ムンクは筆の形をした銃を上に向けると、一発の銃声が鳴り響く。
するとムンクの髪や服が土色へと変貌してゆく。
もしギガンテウスが未だにソレイユの効果をコピーしていたら、この時点でムンクが破壊され、灯は大ダメージを負っていた。
正しい処理順で的確に全てをケアできるのも、また遊次との長年の修行の成果だった。

「カードルを素材にしたムンクの効果発動!
同じ属性のモンスター1体を除外する!ギガンテウスを除外!」

ムンクが眼前の巨大なモンスターに銃口を突き付ける。

「…手札1枚でここまで反撃できちゃうなんてね。ブッ潰し甲斐があるよ!
ハイリザージュ・ギガンテウスの効果発動っ!
ムンクの正面にデッキから『リザージュ・オセラトゥス』を特殊召喚!」

現れたのは、黒曜石のような鱗を持つトカゲのモンスター。

「これでムンクの除外効果は無効だよ。
しかもオセラトゥスちゃんはムンクの効果をコピーしてる」

ムンクは自分と同じ属性の相手の墓地のモンスター効果、または同じ属性の相手の墓地のモンスターを対象とする効果を無効にできる。

「でも、カードルを素材にして得た除外効果まではコピーできないよな。
コピーできるのはあくまで、ムンクが元々持ってる効果だけだ」

「そうだね~。残念」

美蘭は肩をすくめてみせるが、その表情にはまだ余裕があるように見えた。
灯は美蘭のフィールドに伏せられている1枚のカードに視線を送る。

(美蘭の余裕の理由は、たぶんあの伏せカード。
でも、今は行けるところまで行くしかない…!)

灯の瞳はまっすぐ勝利へと向けられている。
その焦点は定まっている。
彼女には明確に、目指す場所が見えているようだ。

「ペイントメージ・シャンパーニュの効果発動!
デッキから『ペイントメージ・クレーム』を除外して、オリーヴを光属性に変える!」

シャンパーニュが筆を振るうと、オリーヴの髪や衣服は鮮やかな黄色へと変わってゆく。

「除外されたペイントメージ・クレームの効果発動!
このカードが除外された時、デッキから『ペイントメージ』チューナーを特殊召喚できる。
来い、ペイントメージ・トワール!」

真っ白のキャンバスに、くりっとした目と赤い頬が絵の具で描かれたモンスターが現れる。
灯は高らかと右手を掲げる。

「光属性となったレベル4『ペイントメージ・オリーヴ』に、レベル2『ペイントメージ・トワール』をチューニング!」

トワールが光の輪へ変わる。
その輪をオリーヴが通り抜け、4つの星へと変換される。

「闇夜を照らす眩き光が、絶望を希望に塗り替える。
シンクロ召喚!現れよ!『ペイントメージ・モネ』!」

現れたのは、レモン色の縦巻きロールの髪を持つ女性のモンスター。
ローブは純白で、裾は足元まで長く、光を反射するかのように淡く輝き、清らかな印象を与える。
胸元と袖口には銀色の刺繍が施され、神秘的な雰囲気を醸し出しており、
手には杖を模した筆を持っている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/sCm4G0G
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「トワールを素材にしたモネは、フィールドの属性の数×300、攻撃力が上がる」
ペイントメージ・モネ ATK2000 → 2600

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【美蘭】
LP5200 手札:1

①ハイリザージュ・ギガンテウス ATK2900
②リザージュ・ヴィリディス ATK1600
③リザージュ・オセラトゥス ATK1800

伏せカード:1

③①□②□
 □ □
③□①□②


【灯】
LP2600 手札:2(ペイントメージ・ショコラ)

①ペイントメージ・シャンパーニュ ATK1800
②ペイントメージ・モネ ATK2600
③ペイントメージ・ムンク(地) ATK2400

フィールド魔法:ペイントメージ・ワンダーキャンバス
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「…なんかさ、だんだんムカついてきちゃった。
灯はなんでそんなに頑張るの?遊次クンのため?」

美蘭は髪をくるくると指で巻きながら、つまらなさそうに問いかける。

「…約束したから。遊次を支え続けるって」

灯は揺るぎない声で答える。
しかし美蘭はその言葉を鼻で笑う。

「約束?どの口が言ってるの?アタシとの約束は破ったくせに」

「それは…」

灯はすぐに言葉を返すことができなかった。
13年前、彼女に何も言わずに街を去ったのは、確かな灯の罪だからだ。
美蘭の言葉は、その優位性を利用して憂さ晴らしをするかのようだった。
それでも灯は、彼女の鬱憤すらも受け止め、静かに言葉を紡ぎ始める。

「…あの時、確かに私は逃げた。
だからこそ、もう何からも逃げたくないの」

「…違うよ、灯。
そのコを支えたいっていう約束は、"タテマエ"でしょ?」

(まただ。また心の中に、無造作に手を入れようとしてくる)

それでも、耳を塞いではいけない。
逃げてはいけない。向き合わなければならない。

灯は、おそるおそる遊次の方をゆっくりと振り返る。
遊次は心配そうな眼差しでこちらを見ている。

(デュエルは魂の会話…父さんが教えてくれた、俺が一番好きな言葉だ)

灯は、遊次のかつての言葉を思い出す。
心を隠していては、相手と本気でぶつかり合うことはできない。
この戦いで、躊躇いは命取りだ。
灯は再び前を向く。
全てを曝け出す覚悟を、決めなければならない。

「…そうだね。美蘭の言うとおり」
灯の言葉に、美蘭も一層、真剣な表情になる。

「あの時、遊次の夢を支えたいって、力になりたいって思ったのは本当。
でも…私の奥の奥にある"願い"は、ちょっとだけ違った」

ヴェルテクス・デュエリアで怜央に言われた。
「お前は本気で勝ちたいと思っていない」と。
そしてその理由は、怜央に敗北するその瞬間に気付かされたことだ。

「私は…」
灯は少しだけ俯く。手が小さく震えるのがわかる。
もう片方の手でそれを押さえながら、灯は言葉を吐く。

「私は…ただ遊次の隣にいられれば、本当はそれでいいの。
ニーズヘッグとの戦いだって…遊次がオスカーさんに負けて、ほんとはほっとしてたんだ」

「灯…」
今まで聞いたことのない、彼女の弱音だった。
彼女はいつも、何も言わずに自分についてきてくれた。
怒られることも、止められることもあった。
それでも、思い返せば大事な時はいつも傍にいてくれた。

町に危険を及ぼすチームとの戦いでさえも、裏社会で暗躍する組織との戦いでさえも。
彼女はその恐怖を口にすらしなかった。
しかし、彼女はずっと恐怖を抱えていたのだ。

(…俺はバカだ)

隣にいるのが当たり前だといつの間にか思っていた。
そんな自分に、腹が立った。
遊次は拳を強く握る。
しかし、そんな遊次の心を汲み取るように、灯は振り向いて言う。

「違うよ、遊次のせいじゃない!ほんとに、私が望んだことなの!」

その瞳には、涙が浮かんでいた。
俯瞰すれば、これは大した問題ではない。
それでも、彼女は言えなかった。

「ただ…怖かったの。遊次に、ほんとのことを知られるのが。
戦うのが怖いなんて言ったら、私は遊次にとって、邪魔な存在になる。
それだけは、耐えられない…っ!」

遊次にとって、それは衝撃的だった。
想像すらしていなかった。
幼馴染が、そんな思いを1人で抱えていたなんて。

「バカ野郎!俺がそんな思うわけ…」

「わかってる!それでも…遊次が誰かのために戦おうとしてる時に、
頭の片隅に私のことがよぎるだけでも…耐えられない」

遊次は言葉を詰まらせた。
何を言っても、灯を傷つけてしまう気がした。

「もし今、このまま一緒に逃げようって言われたら、私はそれに流されちゃうと思う。
でも、そんな人間だって、遊次に知られたくなかった。
口では綺麗なこと言ってるくせに、本当は他人のことなんてどうだっていいって思われるのが…」

「違う…!」
遊次は俯き気味にゆっくりと横に首を振った。
その言葉だけは絶対に否定したかった。

「誰だって怖ぇよ。俺だって、死ぬほど怖い。
オスカーと戦う時だって、ホントは内心ガクブルだったんだからさ」

「遊次…」

(……そっか。遊次も怖いんだ)

ほっとした。心の底から。
よく考えれば当然だ。
怖くないはずがない。
それでも気がつかなかった。

2人とも、お互いの心の奥の奥まで、見えていなかった。
そしてそれは、今も。

「でも、俺が一番怖いのは…。
灯、お前を失うことだ」

「…、っ、遊次…」

その言葉を聞いた瞬間、灯の胸の奥から何かが一気に押し寄せた。
それが何かはわからない。
哀しみか、怖さか、はたまた嬉しさか。

「あれれ?じゃあ結論は決まっちゃったね?」

美蘭のわざとらしい明るい声が空き地に響く。
灯はその声に反応し、前を向く。

「2人とも、ホントは戦いたくないんでしょ?
だったらさ…もうアタシらの邪魔しないでくれるかな?」

その声で、一気に現実に引き戻された。
これはまだ、世界の命運を懸けた戦いの真っ只中だ。

しかし、さっきまでとは明らかに何かが違う気がした。
理由はわからない。それでも、灯は力が湧いてくる気がした。
灯は美蘭に強い視線を向ける。

遊次は依然として俯いたままだ。
灯の心の底を知り、葛藤していた。
その心の隙間に、美蘭はするりと入り込む。

「ねえ遊次クン。灯は、ほんとにキミのことしか考えてないんだよ。
そろそろわかったよね?キミがどんだけヒドいことしてるか」

遊次は顔を上げらずにいた。
灯に、幾度となく怖い思いをさせてしまった。
それを、自分は何もわかっていなかった。
否定できない真実が、深い自責と自己嫌悪となって、その表情を歪ませた。

「アタシから灯を奪っておいて、なんてことしてくれるの?
アンタみたいな、パッパラパーな自己中に、灯は染められ……ッ…?!」

突然、美蘭の目の前が強く光り出す。
その光の奥で、ペイントメージ・モネが杖を構えていた。
それはまるで、灯の心に呼応するように。

「ペイントメージ・モネの効果発動。
デッキから『ペイントメージ・カラメル』を除外して、自身を地属性に変える」

モネが筆の形をした杖を大きく振るうと、髪と服の色は瞬く間に、深みのある茶色へと変わっていった。

「私のことはいくらでも蔑めばいい。
でも遊次のことをバカにするのは、死んでも許さない」

灯の眼差しには、静かで剥き出しの敵意だけが宿っていた。
それはもはや、殺意にも等しい。
その視線を受けた瞬間、美蘭は体中の血が冷えるのを感じた。

「…前を向いてよ、遊次。あの子に騙されちゃダメ」
灯の優しい声色に、遊次ははっとして前を見る。

「私、もう怖くないよ。だって、遊次も怖いんだって、わかったから。
それに…私のこと、大切に思ってくれてるの、わかったから」

灯の口調は、驚くほど静かで澄んでいた。
その声は、遊次の頭の中を覆っていた霧を晴らしてゆく。

「遊次といられれば、それでよかった。
そのために、自分を押し殺してた。
でも…今は遊次に、言いたいことがある」

自分の弱さを曝け出した。
遊次の心の奥の弱さを知った。
だからこそ、芽生える気持ちがあった。

「何かを諦めた遊次なんて、見たくない」

「灯…」
彼女の表情、そして声が、遊次を暖かく包み込む。
それは慣れ親しんだ温かさであり、赦しの光であった。

灯は再び前を向き、美蘭と対峙する。

「どんなに無茶な夢でも、絶対に諦めない。
誰も思いつかないような、ありえない方法で叶えちゃう」


「そんな遊次が……私は好きだから」


世界から雑音が消えたように、その言葉が遊次の胸に届く。
美蘭は爪を噛み、再び立ち上がろうとする灯に敵意の眼差しを向ける。

灯はデュエルディスクを構え、再び戦いへと足を踏み入れる。

「ペイントメージ・モネの効果!
このカードがいる限り1度だけ、自分と同じ属性の相手モンスターを素材にS召喚を行うことができる!
さらにこの方法でS召喚する時、相手モンスターをチューナーとして扱うことができる!」

灯は人差し指を前に突き出す。
その先には、リザージュ・オセラトゥスがいた。

「くっっだらない!!なんでアタシの思いどおりにならないわけ!?」

美蘭にはこの先、何が起きるかはっきりと想像できている。
故に、自分の言葉を受け入れず、立ち向かい続ける灯が、許せなかった。

「…遊次はね、誰かのことは笑顔にしたいって言うのに、自分のことは全然見えてないんだ。
遊次は諦められないよ、絶対。
別の道を選んでも、絶対に後悔する」

「だから…私が手を引いて、前に進む」

灯の決意の宿った瞳に、美蘭は信じられないといった様子で首を横に振り、拒否反応を示す。

「…ありえない。人は変わらないんだよ!
私だってそう!昔からなーんにも変わってない!
だからアンタも、あの時の弱虫のまんまなの!
そうじゃなきゃ"いけない"の!」

それはまるで、子供の駄々だった。
そうであってほしい。ただそれだけで、他人を定義づける。
自分の思うように、世界を変える。
それが彼女の歩んできた道だ。

「おかしいよ…。灯は無理してるだけ。意地を張ってるだけ。
引っ越すことすら伝えられなくて逃げたアンタが、なんでまだ、アタシに立ち向かってくるの…!」

灯は憐れみを帯びた瞳で、静かに言葉を返す。

「遊次は、ドミノタウンの皆を笑顔にする。
私は、遊次の笑顔を守る。
戦う理由は、それだけでいい」

「ハハハ…いつまでも、ちっちゃい時の約束に縋って、必死に自分を奮い立たせて…可哀想だよ。
そんなの、約束じゃない。"呪い"って言うんだよッ!」

美蘭の捨て台詞のような言葉が、灯の闘志に火を点けた。

「呪いなんかじゃない。私の、"願い"だ!」

灯はデュエルディスクから1枚のカードを取り、それを表に向ける。

「俺は、お前のリザージュ・オセラトゥスをチューナーとして扱う!
レベル4『ペイントメージ・シャンパーニュ』に、
レベル4『リザージュ・オセラトゥス』をチューニング!」

美蘭のフィールドの1体のモンスターが光の輪となって天へと上る。
美蘭は圧倒され、後ずさりする。

「数多の彩より生まれし華麗なる精霊よ、その手で悪しき魂を塗り潰せ」

「シンクロ召喚!降臨せよ!
『ペイントメージ・アールヌーヴォー』!」

■ペイントメージ・アールヌーヴォー
 シンクロモンスター
 レベル8/光/魔法使い/攻撃力3000 守備力2400
 チューナー + チューナーと異なる属性のモンスター1体以上
 ①:このカードがフィールドに存在する限り、
 このカードのS素材となったモンスターと同じ属性を持つ
 相手フィールドのモンスターの効果は無効化される。
 ②:このカードは、S素材となったモンスターと同じ属性を持つ
 相手フィールドのモンスター全てに攻撃できる。


光の中から現れたのは、虹色の羽を持つ錫杖を持った精霊だった。
白い肌に、白いドレスのようなローブを身に纏い、口元は布で隠されている。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/MKfQLWs
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-------------------------------------------------
【美蘭】
LP5200 手札:1

①ハイリザージュ・ギガンテウス ATK2900
②リザージュ・ヴィリディス ATK1600

伏せカード:1

□①□②□
 □ □
③□①□②


【灯】
LP2600 手札:2(ペイントメージ・ショコラ)

①ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK3000
②ペイントメージ・モネ ATK2600
③ペイントメージ・ムンク(地) ATK2400

フィールド魔法:ペイントメージ・ワンダーキャンバス
--------------------------------------------------

「信じらんない…」

光の中から姿を現したアールヌーヴォーの圧倒的な存在感に、美蘭は息を詰まらせる。
彼女は身動き一つできず、ただその輝く精霊に目を奪われていた。

「アールヌーヴォーがS素材としたモンスターと同じ属性の相手モンスターは、効果が無効となる。
地属性のオセラトゥスを素材にしたことで、お前のモンスターの効果は全て無効!」

アールヌーヴォーが錫杖を掲げると、美蘭の2体のモンスターが次第に色を失ってゆく。
そして石のように灰色となり、ギガンテウスの鱗の煌きも完全に失われる。

「…ハハ…」
遊次はその様子を見て、思わず乾いた笑いが出た。

(なに勝手に心配してんだ、俺。危険に巻き込む?自惚れんなよ。
灯は、こんなに強ぇんだ。俺の不安なんか、一瞬で吹き飛ばすぐらい!)

遊次の表情に、笑顔が戻った。
灯の凛々しく立つその背中が、再び遊次に勇気を宿した。

灯も、やっと元気を取り戻した遊次を見て、くしゃっと笑ってみせる。
そして再び前を向く。

「バトル!アールヌーヴォーは、S素材と同じ属性を持つモンスター全てに攻撃できる!
『リザージュ・ヴィリディス』に攻撃!」

アールヌーヴォーは錫杖を持ち上げると、頭上に大きな岩石の球が浮かぶ。
錫杖が鋭く振り下ろされると、頭上の巨大な岩石は、凄まじい轟音と共にヴィリディスへと射出された。
ヴィリディスは抵抗する間もなく、その巨体を岩石の直撃で打ち砕かれた。
無数の結晶片となって炸裂したヴィリディスの身体は、光の粒子となって瞬く間に霧散した。

「うあああっ!!」
美蘭 LP5200 → 3800

「まだだ!アールヌーヴォーで、ハイリザージュ・ギガンテウスに攻撃!」

アールヌーヴォーは再び錫杖を天に掲げた。
先ほどよりもさらに巨大な岩石の球が頭上に現れ、凄まじい速度でギガンテウス目掛けて叩きこまれる。
轟音と共に岩石の球が激突すると、ギガンテウスの巨体は、地面に強烈な衝撃で沈み込んだ。
そして熱を失った破片となって光の塵と共に消滅した。

「ッ…!」
美蘭 LP3800 → 3700

ギガンテウスが破壊された後、美蘭は逡巡した様子を見せる。
その瞳の奥には、強い憎悪や嫉妬が滲んでいる。

「…負けないよ。絶対、負けない。
ハイリザージュ・ギガンテウスが破壊された時、効果発動!
墓地のリザージュSモンスターを特殊召喚できる!
ハイリザージュ・セイラウスを特殊召喚ッ!」

「無駄だ!ペイントメージ・ムンクの効果発動!
相手の墓地の、自分と同じ属性のモンスターを対象とする効果を無効にし、その対象のモンスターを除外する!
ギガンテウスの効果は無効となり、セイラウスは墓地から除外される!」

ムンクが弾丸を放つと、それは美蘭のデュエルディスクを撃ち抜き、セイラウスが弾き飛ばされる。

それはまさに、致命傷の一手。
バトンは途切れ、美蘭のフィールドを守る存在はいない。
そして、まだ灯のフィールドには2体のSモンスターによる攻撃が残っている。

「ペイントメージ・ムンクで、美蘭にダイレクトアタック」

ムンクが銃口を美蘭へと向ける。
このまま連続でダイレクトアタックすれば、灯の勝利だ。
しかし、その瞬間、美蘭の口元が歪む。

「フフフ…ハハハハ…」
美蘭は突然、夜空を仰いで、両手を広げて笑い始めた。
灯の表情に戸惑いが浮かぶ。

「ハハハ…アハハハハハッ!」

美蘭の笑いは、ヒステリックな高笑いへと変わった。
その笑い声は空き地に不気味に響き渡り、狂気と愉悦が入り混じった異様な熱を帯びていた。
しかし、その声は突然途切れる。

「…わかったよ。灯は変わっちゃったんだ。
灯は、アタシを過去として切り捨てて、進むんだね」

「アタシの友達は、灯だけだったのに。悲しいな」
その表情は、先ほどまでの悪辣なものとは違い、寂しげで、無垢だった。

「美蘭…」
思わず、同情してしまいそうになる。
罪悪感すら抱きそうになる。
それほどまでに、子供のような顔をしていた。

「もう灯のこと、友達だと思わないから。
世界を滅ぼそうとする、ただの悪者。
悪い奴は、倒さなきゃいけないよね」

その感情を切り捨てたようなトーンの声に、灯は背筋が凍るような感覚を覚えた。


「相手がダイレクトアタックする時、手札の『リザージュ・アルマータ』の効果発動!
墓地のSモンスターを1体、除外してこのカードを特殊召喚する!
墓地のフライドラコを除外して、特殊召喚!」

「な…」
戦いはまだ、終わっていなかった。

■リザージュ・アルマータ
 効果モンスター
 レベル3/地/爬虫類/攻撃力1500 守備力2000
 このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードは戦闘で破壊されず、このカードがフィールドに存在する限り、
 自分の「リザージュ」モンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。
 ②:相手モンスターの直接攻撃宣言時、墓地のSモンスター1体を除外して発動できる。
 このカードを手札から特殊召喚する。
 その後、自分の除外状態の「リザージュ」モンスター1体を特殊召喚する。
 ③:自分・相手ターンに発動できる。
 ターン終了時まで、自分フィールド「リザージュ」モンスターの攻撃力は、
 自分フィールドのカードによって効果を得たモンスターの数×1000アップする。


現れたモンスターは、屈強な体躯を持つトカゲのモンスターだ。
皮膚は、オレンジと茶色を基調とした多角形の鱗で覆われ、宝石のように光を反射する。
背中から尾にかけては、鱗が変化した鋭いトゲ状の突起が並んでいた。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/6VvMyRh
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「さらにアルマータの効果で、除外されてるリザージュを特殊召喚する!
この効果は手札で発動する効果!アールヌーヴォーの効果じゃ無効にできないからっ!
現れろ!ハイリザージュ・セイラウス!」

「まさか…そのためにわざと、セイラウスをムンクで除外させたのか!?」

美蘭はしたたかに、反撃の機を伺っていた。
ギガンテウスの効果により、墓地のセイラウスが対象になった。
それに反応し、ムンクの効果でセイラウスを除外した。
しかし、それこそが美蘭の狡猾なる罠だったのだ。

灯の目の前に、黄金に輝く巨大なエリマキトカゲのモンスターが現れる。
全身の皮膚は光を反射してプリズムの如く輝いており、
頭部から左右に大きく張り出したフリルは、光を受けるたびに微細な万華鏡模様を浮かべる。
耳をつんざくような高い声で咆哮し、その存在感を示す。

「でもアールヌーヴォーの効果で、地属性の効果は無効だ!
しかも相手の地属性モンスター全員に攻撃できる!
破壊した後にまた罠カードで復活しようが同じだ!」

遊次は必死に抵抗する。
しかし自分自身もどこかで理解していた。
美蘭はそれを承知の上で、この一手を打ったのだと。

「その子との"約束"が、灯の願いなんだ?じゃあさ…」

「アタシとの"約束"を、灯にとっての呪いにしてあげる」

美蘭は目を見開き、真っ直ぐと灯を見つめる。
灯は蛇に睨まれた蛙のように、動けなくなってしまう。

その恐怖は、幼い頃に彼女に感じた潜在的な恐怖など、遥かに上回る。
「見てはいけないもの」を見てしまったような感覚。

「罠カード発動。『白光の導き』」

■白光の導き
 通常罠
 ①:自分フィールドのSモンスター1体をリリースして発動できる。
 そのモンスターをS素材として指定するSモンスターを、召喚条件を無視してEXデッキから特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターは、次のターン終了時まで相手の効果を受けない。


「…!そのカードは…!」
灯はまるで、心臓が止まるような衝撃を受けた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「じゃあこれ、約束の証」

「アタシも灯もシンクロ使いでしょ。なのにアンタ、結局1回もシンクロ召喚できなかったじゃん。
だから、あげる。そのカードがあれば、灯もちょっとは強くなれるから!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

それは、13年前の約束の証。
罪の意識から、灯が引き出しの奥にしまい続けていたカード。
それと同じカードを、今、美蘭はここで発動した。

「このカードは、自分フィールドのSモンスターをリリースして、
そのモンスターを素材に指定するSモンスターを、EXデッキから召喚条件を無視して特殊召喚できる!」

「アタシは、ハイリザージュ・セイラウスをリリース!」

それはつまり、セイラウスを素材として指定するカードが、EXデッキに存在するということ。

フィールドが、眩き白光に包まれる。
セイラウスの影が消え、光の奥で美蘭の両手を大きく広げた影だけが浮かび上がる。


「魔鏡の輝きが全てを奪う。
虚実を超越し至極の力をその身に宿せ」

「現れよ!『エクスリザージュ・ヴェリトゥス・セイラウス』!」


■エクスリザージュ・ヴェリトゥス・セイラウス
 シンクロモンスター
 レベル10/地/爬虫類/攻撃力3200 守備力2700
 チューナー + 「ハイリザージュ・セイラウス」
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:相手がモンスター効果を発動した場合に発動できる。
 その効果を無効にする。その後、このカードは無効にしたカードの効果を得る。
 この効果で得た効果がカード名・種族・属性を参照する場合、
 それらを「リザージュ」カードに変更する(参照するカードの種類は変更できない)。
 ②:自分・相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
 このカードはターン終了時までその効果を得る。
 この効果で得た効果がカード名・種族・属性を参照する場合、
 それらを「リザージュ」カードに変更する(参照するカードの種類は変更できない)。
 この効果は相手ターンでも発動できる。


閃光の中から、白銀の巨大な輝きが現れる。
それは、全身が鏡のような銀色をした、エリマキトカゲのモンスターだった。
頭部には、深紅の宝玉が連なる巨大なトゲ状のフリルが広がり、それは禍々しい王冠のように煌く。
セイラウスの進化態といえるそれは、これまでのリザージュとは明確に異なる、"神秘"であった。

分厚く強靭な肉体と、岩盤を砕くほど巨大な鉤爪を持つ。
眼窩に宿る宝玉の瞳は、周囲の闇を吸収するかのように輝き、灯の姿を射貫く。

モンスターデザイン:ttps://imgur.com/a/wRWPsE8
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を表示可

ヴェリトゥス・セイラウスが咆哮する。
その音は、巨大な鉄塊が打ち合うような悍ましい響きとなって、灯と遊次を本能的な恐怖で圧し潰す。

「なに、これ…」

完全なる想像の外の存在。
勝利を目前にした灯は、新たに現れた銀色の魔獣を見上げる。

「アハハッ!いい顔してるよ、灯ィ!
もっともっと、恐怖を刻み込んであげる!」

白光の導き。
あの日の約束は、13年後の今、灯の前に"呪い"として顕現した。

第67話「約束という名の呪い」 完



顕現した、美蘭の真の切り札。
そのモンスターは、存在するだけで命を刈り取るほどの強力な力を持つ。
灯は自らのモンスターを、自らの手で葬ってゆく。
そうすることでしか、命を繋ぎ止めることはできなかった。
希望は、たった1枚のセットカードだけだ。

ヴェリトゥス・セイラウスは猛威を振るう。
追い詰められる灯。
覆しようのないほど圧倒的な美蘭のフィールド。

それでも、灯は立ち上がる。
その背中に、遊次は葛藤に対する答えを出す。
そして灯と美蘭の因縁の激闘は、ついに決着する。


「その言葉を、ずっと、ずっと、待ってたんだよ。
そのたった一言のために、私は生きてきたんだ」


次回 第68話「夢を照らす灯り」
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