第1話「始まり」　作：吉田

進化という言葉を良く耳にする。生き物というのはその場その場の環境に合わせて進化を続けて来た。人間もまたそうである。
…さて、この世界の人間は果たして進化と呼んでいいのか、よくわからない変化を遂げていた。始まりはたった一つのTCGだ。デュエルモンスターズ。それだけのためにこの世界の人間はある力を手に入れた。それはデュエルモンスターズに登場するモンスター達と実際に交流できる力である。

「ぶっちゃけさ、俺はこの力に全く納得してないんだよね」

こう発言するのは、この街の高校生である龍ヶ峰遊牙である。彼もまた、その力を持っている。…とは言っても全世界の人間が持っているのだが。

「あー…うん、そうだな！突拍子ないもんな！」
「いやそうじゃなくて、たかがカードゲームの為にこんな意味不明な進化した人間に納得いかないんだよ」

「たかがカードゲーム」とデュエリストにあるまじき発言をしたが、言っていることは正しい。周りの人間は何も不思議に思っていないが、考えても見ればよくわからない話である。

「それにさ、モンスターと交流ってなに？俺も自然と交流してるけどさ、改めて考えると意味不明を超えてもはや凄いわ」
「う、うーん？いやまぁ…うん」

遊牙の言葉に言い返す事ができないでいるのは彼の親友である、青木星矢だ。彼もまたデュエリストである、

「そうは言うけどさ、進化したのは事実だろ？なに言ったってしょうがないさ」
「あるはずもない物を作り出すのが果たして進化と言えるのか？」
「…。」
「まぁいいさ。確かにそうなったのは事実だ。納得はいかないが…まぁ認めるか。」
(適当な奴…。)

星矢の心の声を聞き取れるわけもなく、遊牙は立ち上がるとデュエルスペースへ歩き出した。

「…やるか？」
「久々にやろうぜ、退屈だし。」

二人のデュエリストがデュエルスペースで顔を見合わせたらやる事は一つ。デュエルである。
デュエルであるのだが…この世界では普通のデュエルとは違うデュエルを行うのであった。スタンディングデュエルでないのなら何か。ライディングか？アクションか？否、この世界のデュエルはそんな生易しいものではない。

「「デュエルフィールドオン！！バトルセットオーケー！！ファイトリング…設置完了！！！」」

実は人間はもう一つ、進化を遂げとある能力を手に入れている。モンスター達との交流の中で生まれたものだ。それは…モンスターと一体化しその力を扱う能力だ。

「俺に力を貸せ！機械龍フルメタルドラゴン！！」
「相手をぶっ潰すぞ！波動竜騎士ドラゴエクティス！！」







この世界のデュエルは人間がモンスターの力を借りて直接対決するのがルールである。その名もデュエルファイト。従来のデュエルとは全く異なったデュエルは…まさに殺し合いとも言われている。
そしてこのデュエルは、全てを巻き込む大きな歯車となる。