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HOME > 遊戯王SS一覧 > 2話 戦士と天使

2話 戦士と天使 作:19

 ヤマト「約束だ!とったカードを返してもらうぞ!」
 男「わ、分かったよ…、ほら!コレでいいんだろ!チクショウ!」

投げ捨てるようにカードを手放し、尻尾を巻いて逃げていった男を尻目に、端から見守っていた男性にカードを渡す。
 
 ヤマト「はい。貴方のカードです」
 男性「あ、ありがとうございます…!なんてお礼を言ったらいいか…」
 ヤマト「この街って、毎日こんなことが起きてるんですか?」
 男性「はい…、2週間ほど前からです。突如デュエルを挑んでくる『カードリーパー』と名乗る集団がいるとニュースで報道され始めました。私も初めて襲われて…」
 ヤマト「カードリーパー…。危険な集団なんですね。それにしても、人のカードを奪うなんて」
 男性「あの…私はそろそろ戻ってもいいでしょうか…?」
 ヤマト「ええ、情報ありがとうございました。気を付けてくださいね」

男性を手を振って見送ったヤマトはうーんと考え込む。
邪悪な気配はしたのにデュエルした相手からはそんな気は感じられなかった。それどころか、路地裏に入り込んでから気配が薄れていった…。どういうことだろう。
ヤマトも路地裏から出て、大通りに出る。その時、グゥゥと腹の音が鈍く響いた。

 ヤマト「あぁ…そういえばまだ何も食べてなかったかな…突然呼び出されたから…。何か食べよう。地上の食べ物って初めてだなぁ」

ワクワクしながら食べ物屋らしき場所を探す。すると、一つの露店を発見した。クレープ屋という場所らしい。甘い匂いが漂い、食欲をそそる。

 ヤマト「すいませーん。このチョコクレープっていうの一ついいですか!?」

初めて見る物。すごく美味しそうに見え、空腹な胃がより空っぽになっていく感覚に襲われる。

 店員「はい。どうぞ」
 ヤマト「ありがとうございます!」
 店員「それで代金は…」
 ヤマト「代金…? あ!」

ヤマトは地上で必要なお金の存在をすっかり忘れてしまっていた。店員は顔をしかめてヤマトを見つめる。

 店員「セキュリティを呼ぶしかなさそうだね…」

呆れながらも受話器を掴む店員を見て慌てる。ゼルや他の天使から聞いたが、地上にはセキュリティという組織が存在し、悪事を働いた者を捕まえるらしい。
天使の身分で犯罪者となればもう二度と天界に戻ることはできない。それだけは絶対に阻止しなければいけないのだ。

 ヤマト「え、えっと…ごめんなさい!」
 店員「今更謝ったって…払えないものは払えないんでしょ?だったらセキュリティを」
 ?「待って!」

背後から店員を引き留めたのは一人の少女だった。
緑色の髪と赤いベアトップを着こなす可愛い少女は店員にクレープの代金を渡し、ヤマトを引っ張って公園のベンチに座らせた。

 ヤマト「えっと…ありがとう…」
 少女「礼はいらないわ。困ってる人は見過ごせないのよアナタだってそうでしょ?」
 ヤマト「え…?」

不思議なヤマトに少女は一枚の写真を見せる。

 ヤマト「これって…僕?さっきのデュエル…見てたの?」

写真はヤマトの後ろから撮られたもので、ヤマトが召喚したヴァルキスが舞い降りている時のものだった。
その写真を少女はポケットに入れる。

 少女「ええ、そうよ。そしてアナタがカードリーパーを探してるのも分かったわ」
 ヤマト「それで…君は…?」
 クレア「クレア・アニードよ。アナタのデュエルの腕を見込んで力を貸してほしいの」

ヤマトの顔を横から覗きこむ少女に少し気圧されながらもクレープを一口食べる。

 クレア「私も一口頂戴♪」
 ヤマト「いいけど…」
 クレア「ありがとー!いっただきます!」

大きく丸かじりされたクレープには、ヤマトがふつうに食べれば倍にも及ぶ食べられた跡が残る。かなりの量を持っていかれた…。

 クレア「いいでしょ?どうせ私がお金払ったんだし」
 ヤマト「う、うん…」

少女はニコニコしながらヤマトを引っ張っていった。

 クレア「となれば…まずは腕試しね。アナタのさっきの勝利がまぐれだったのか…それとも本当か、確かめさせてもらうわよ!?」
 ヤマト「え、え…ちょっと…!」

ピンクに黒のラインが入ったディスクを腕に付けたクレアは意気揚々とデッキをセットする。
早くしなさい!と喝を入れられ、慌ててディスクを装備し、クレアと同じようにデッキをセットして突然のデュエルは開始された。

 ヤマト・クレア「デュエル!」

ヤマト LP8000
  手札5 デッキ35

クレア LP8000
  手札5 デッキ35

 ヤマト「僕のターンからだ。先攻はドローとバトルができない…か」

5枚の手札を確認する。危険な賭けはせず着実に展開することを決め、レベル4モンスターを召喚する。

 ヤマト「手札から『メドロウ・ケイロン』を召喚!」

メドロウ・ケイロン ☆4 攻撃力1700

 ヤマト「ケイロンには三つの効果があり、1ターンに一度手札の『メドロウ』モンスターを墓地へ送ってその内の一つを発動できる!」

手札の『メドロウ・ドリアー』を墓地へ送り、ヤマトは三つ目の効果を宣言した。

 ヤマト「三つ目の効果は、デッキからカードを1枚ドロー。そしてその後、ケイロンの表示形式を変更する。ケイロンを守備表示に」

メドロウ・ケイロン 守備力300

 クレア「守備力こそ低いけれど、余程攻撃表示でダメージを受けるよりはマシってことね」
 ヤマト「その通り。カードを1枚伏せてターンエンド!」

ヤマト 手札3
  場
メドロウ・ケイロン 守備力300
セット魔法・罠 1

 クレア「私のターン…ドロー!」

引いたカードをチラリと見て、クレアは不敵に笑う。まるで「勝ちは決まった」と言わんばかりの自信に満ち溢れた顔だ。

 クレア「相手の場にのみモンスターが存在する場合、このモンスターは手札から特殊召喚できる!来て!『H・C強襲のハルベルト』!」

H・C強襲のハルベルト ☆4 攻撃力1800

紫色の鎧を着た騎士が、長槍と斧を組み合わせたような独特な武器を構えながら召喚された。高めの攻撃力に少し驚きながらも、ケイロンを守備表示にしておいて良かったとホッとする。

 クレア「アナタがそのモンスターを守備表示にしたのは確かに正しい判断よ。けど…このハルベルトには、貫通効果があるの」
 ヤマト「そんな…!」
 クレア「バトルよ!いけぇハルベルト!メドロウ・ケイロンに攻撃!」
 ヤマト「くぅ!」

ヤマト LP8000 → 6500

 クレア「ふふ、ハルベルトは相手に戦闘ダメージを与えた時、デッキから「ヒロイック」カード1枚をデッキから手札に加える効果があるわ。「ヒロイック・チャンス」を手札に加える。カードを3枚伏せて、ターンエンドよ。こんな攻撃小手調べ程度…ちゃんと本気を見せてくれるんでしょう?」

クレア 手札3
  場
H・C強襲のハルベルト 攻撃力1800
セット魔法罠×3

 ヤマト「僕のターン、ドロー…!手札から『メドロウ・ガードイル』を召喚!」

メドロウ・ガードイル ☆3 攻撃力0

 ヤマト「このモンスターは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に守備表示になる。さらに、守備表示のこのモンスターは1ターンに一度だけ戦闘・効果じゃ破壊されない!」

メドロウ・ガードイル  守備力1900

悪魔のような外見の、ツバサの生えたモンスターが腕を組んで守備表示になる。するとガードイルは石像になって強固な壁となった。

 ヤマト「僕はこのままターンエンド」

ヤマト 手札3
  場
メドロウ・ガードイル 守備力1900
セット魔法罠×2

 クレア「壁モンスターを出しただけ…ね。それが本気じゃないって願ってるわ。ドロー!」
 クレア「私は手札から『H・Cダブルランス』を召喚!」

H・Cダブル・ランス ☆4 攻撃力1700

二つの槍を持った白と水色の鎧を着た戦士が登場する。そしてクレアはすかさずダブルランスの効果を発動した。

 クレア「ダブルランスが召喚に成功した場合、手札・墓地からもう1体のダブルランスを守備表示で特殊召喚できるわ。手札のダブルランスを特殊召喚!」
 ヤマト「レベル4モンスターが3体…でも、ガードイルは1ターンに一度ずつ戦闘と効果じゃ破壊されない」
 クレア「貴方、さっきのデュエルはシンクロ召喚してたわよね…。遊戯王は、シンクロ召喚だけじゃないのよ!EXからの特殊召喚は!」

クレアが右手を高く振りかざすと、それに呼応して2体のダブルランスが光となって飛び上がった。

 クレア「レベル4『H・Cダブルランス』二体で、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」
 ヤマト「え、エクシーズ!?」

光となったダブルランスは地面に出現した虹色の渦に入り込み、何色にも輝く爆発と共に新たなモンスターへと変わっていた。

 クレア「現れよ。最大最強の戦士『H-Cエクスカリバー』!!」

H-Cエクスカリバー ランク4 攻撃力2000

黒い鎧に赤いカブトを被り、今までのヒロイックモンスターとは1周りも2周りも大きな戦士が現れた。その戦士の周りには二つの球体がゆっくりとクロスしながら飛び交っている。

 クレア「エクシーズモンスターはシンクロモンスターと違い、素材をオーバーレイユニットとして下に重ねる。そして、そのユニットを使って効果を発動するモンスター達よ。エクスカリバーの効果発動!」

エクスカリバーの周りを飛び交っていた二つの球体はエクスカリバーに触れた途端弾け消え、エクスカリバーに只ならぬエネルギーを与える。

 クレア「エクスカリバーは素材を二つ取り除くことで、元々の攻撃力を倍にするわ!2000の倍…つまり4000!」
 ヤマト「攻撃力、4000!?」

H-Cエクスカリバー 攻撃力2000 → 4000

攻撃力が倍となったエクスカリバーは、背中から剣を抜き出し、元々持っていた物と合わせて二刀流の剣士へとなった。猛者のオーラを纏い、ヤマトを圧倒する。

 クレア「アナタにダメージを与えるのに、ワザワザモンスターを破壊する必要はないわ!エクスカリバーでガードイルを攻撃!一刀両断必殺真剣!」

二つの剣を大きく振り上げたエクスカリバー。石像のまま動かないガードイルは戦闘・効果で破壊されないが…。クレアは一枚のカードを発動した。

 クレア「エクスカリバーの攻撃宣言時、リバースカードオープン!罠カード『ストライク・ショット』発動!モンスターの攻撃宣言時に発動可能で、バトルを行っているモンスターの攻撃力を700ポイントアップ、そして、貫通効果を持たせるわ!」

H-Cエクスカリバー 攻撃力4000 → 4700

 ヤマト「まずい…!」
 クレア「それだけじゃない!もう一枚のリバースカード、速攻魔法『虚栄巨影』を発動!場のモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

H-Cエクスカリバー 攻撃力4700 → 5700

 ヤマト「うぐぅぅぅぁ!!」

ヤマト LP6500 → 2700

 クレア「エクスカリバーの効果は次の相手ターンまで継続されるわ。『ストライク・ショット』と『虚栄巨影』の効果は消えるけど、4000っていう攻撃力は超えれないでしょ。ターンエンド」

クレア 手札2
  場
H-Cエクスカリバー 攻撃力4000
H・C強襲のハルベルト 攻撃力1800
セット魔法罠 1

 ヤマト「僕のターン…」

この状況、逆転できるカード…カードを…。祈りながらゆっくりと、ドローする。しかしそのゆっくりとした動作は、ほんの一瞬の出来事だった。

 ヤマト「…よし、見せてやる…僕の本気!リバースカードオープン!罠カード『天聖の制裁』を発動!相手の場のモンスターの数が、自分の場に存在する『メドロウ』モンスターの数より多い場合に発動できる。相手は僕の場のモンスターの数と同じになるようにモンスターを手札に戻さなければならない」
 クレア「なるほど、場を薄めようっていうのね、なら『H・C強襲のハルベルト』を手札に戻すわ」
 ヤマト「手札から、チューナーモンスター『メドロウ・ドリアー』を召喚!」

メドロウ・ドリアー ☆2 攻撃力300

最初のデュエルでも召喚した植物を纏った美女が召喚された。ヤマトはすぐに効果を発動する。

 ヤマト「このモンスターが召喚・特殊召喚に成功した場合、自分はデッキトップのカード3枚を確認できる。その中にドリアー以外のレベル5以下のメドロウモンスターが存在すれば、そのモンスターを特殊召喚できる。3枚確認…!」

モンスター…罠カード…モンスター…。この状況を打破するための最大のコンボ。

 ヤマト「確認した中には、レベル5『メドロウ・グリフォニス』がいる。『メドロウ・グリフォニス』を特殊召喚!」

ドリアーの効果で召喚された雄々しい翼を持つ神話の獣。虎のようなガッシリした体に、鷹の顔、そして鋭い爪が生えた足をしているモンスターが舞い降りてきた。

 クレア「チューナーモンスター…シンクロする気ね…!いいわ。かかってらっしゃい!」
 ヤマト「レベル5『メドロウ・グリフォニス』に、レベル2『メドロウ・ドリアー』をチューニング!」

二体のモンスターからそれぞれのレベル分の☆が飛び出し、縦一列になる。その☆を光の筋が飲み込み。ヤマトを勝利へと導く力が生まれた!

 ヤマト「聖戦士が翼を広げ、剣を振るう!大いなる光!舞い踊れ!『Hメドロウ・ヴァルキス』!」

Hメドロウ・ヴァルキス ☆7 攻撃力1900

 ヤマト「ドリアーがメドロウモンスターのシンクロ素材にされた場合、自分は1000ポイントライフを回復する」

ヤマト LP2700 → 3700
 
 ヤマト「さらに、グリフォニスをシンクロ素材として召喚されたメドロウモンスターが戦闘を行う場合、ダメージステップ開始時に、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力または守備力を1000ポイントダウンさせる効果がある!」
 クレア「それでも、エクスカリバーには届かないわ!」
 ヤマト「何も、力比べで勝とうなんて思ってない…、ガードイルの表示形式を攻撃表示に!」

メドロウ・ガードイル 攻撃力0

 ヤマト「ガードイルの効果発動!攻撃表示のこのモンスターを守備表示にすることで、相手モンスター1体を守備表示にする!」

H-Cエクスカリバー 守備力2000

 クレア「なるほど…、確かに守備力アップは管轄外だわ」
 ヤマト「バトル!『Hメドロウ・ヴァルキス』で、エクスカリバーに攻撃!」

Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900 → 3400


空高く舞いあがったヴァルキスは剣を振り上げ、膝をついて防御の姿勢をとっているエクスカリバーに切り掛かる。エクスカリバーも剣を構えて防御するが

 クレア「く、エクスカリバーが…。でもこれが本気だなんて言わないんでしょ?」
 ヤマト「もちろん。カードを1枚伏せてターンエンド」

ヤマト 手札3 LP3700
  場
Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900
メドロウ・ガードイル 守備力1900
セット魔法罠×2

 クレア「私のターン、ドロー!」

クレアの場には攻撃力1800のハルベルトと、最初から伏せられたまま発動される時を待ち続けている伏せが一枚。
自分の場を一瞬で確認し、すぐにモンスターを召喚する。

 クレア「私は手札から『H・Cサウザンドブレード』を召喚するわ」

H・Cサウザンドブレード ☆4 攻撃力1300

背中に大量の刃を背負った鎧武者のモンスターが召喚される。すかさず効果が発動された。

 クレア「サウザンドブレードの効果発動!1ターンに一度、手札のヒロイックモンスターを墓地へ送ることでデッキからサウザンドブレード以外のヒロイックモンスター1体を特殊召喚し、このモンスターを守備表示にするわ」

手札から『H・C夜襲のカンテラ』が墓地へ送られる。それと同時にサウザンドブレードは背負っている刃数本を地面に投げつけ、それが召喚陣となって新たなモンスターを呼び寄せた。

 クレア「『H・Cスパルタス』を召喚!」

黄土色と白の鎧を着た細身の戦士が大きな盾と片手サイズの槍を持って出現した。これで先ほどと同じようにクレアの場には3体のモンスターが立ち並ぶ。

 クレア「確かにアナタのモンスターは強力…だけど、このモンスターならどうかしら!3体のモンスターで、オーバーレイ!」

先ほどのように3体のモンスターが虹色の穴へ入り込み、何色にも輝く爆発と共に全く違う姿へと変化した。

 クレア「エクシーズ召喚!現れよ、『H-Cクサナギ』!」

H-Cクサナギ ランク4 攻撃力2500

赤い鎧を纏い、兜を被っているサムライのような戦士が召喚される。エクスカリバーと違い、3つのオーバーレイユニットがクサナギの周りを浮遊している。

 クレア「バトルよ!クサナギでHメドロウ・ヴァルキスに攻撃!」
 ヤマト「なら、攻撃宣言時にリバースカードオープン!罠カード『天聖の訂正』発動!相手モンスターの攻撃宣言時、自分フィールド上に存在するメドロウモンスター1体をリリースすることで、その攻撃を無効にし、無効にした数値だけ自分のライフを回復する!ガードイルをリリース!」

フィールドにとどまり続けていたガードイルがついに墓地へ送られた。しかし、それを見越していたようにクレアも効果を発動する。

 クレア「残念だけどそれは通じないわ。クサナギの効果発動!罠カードが発動された場合、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、その発動を無効にし、破壊する!そして、クサナギの攻撃力は500ポイントアップするわ!」

オーバーレイユニットの一つがクサナギに触れ弾ける。その力を受けたクサナギは片手から光線を発射し、ヤマトの発動した罠カードを破壊した。

H-Cクサナギ 攻撃力2500 → 3000

 ヤマト「でも、ヴァルキスは、相手モンスターの攻撃力か守備力が変化している場合、その数値分攻撃力をアップする!」

Hメドロウ・ヴァルキス 攻撃力1900 → 2400

ヴァルキスが斬りかかってくるクサナギを迎え撃つ。振り下された赤く光るツルギを盾で防ごうとするが、脆くも盾ごと一刀両断されてしまった。

 ヤマト「ヴァルキスが…!」

ヤマト LP3700 → 3100

 クレア「私はこのままターンエンド。そろそろ潮時かしら…?次のターンで終わらせてあげる!」

クレア 手札1枚
  場
H-Cクサナギ 攻撃力3000
セット魔法罠×1

 ヤマト「僕のターン、ドロー!」

このターンでなんとかしなければ、焦りながらも手札から展開できる戦術を考え、モンスターを召喚する。

 ヤマト「手札から『メドロウ・ディーネ』を召喚!」

メドロウ・ディーネ ☆3 攻撃力1000

全体的に半透明な水色の髪と目をした少女が笑みを浮かべながら登場した。一か八かでヤマトはディーネの効果を発動し、形勢逆転を図った。

 ヤマト「『メドロウ・ディーネ』の効果発動!このモンスターが召喚に成功した場合、墓地に存在するディーネ以外のレベル4以下のメドロウモンスター1体を選択して特殊召喚する!戻ってきてくれ、『メドロウ・ドリアー』!」

メドロウ・ドリアー ☆2 攻撃力300

 ヤマト「『メドロウ・ドリアー』の効果発動!このモンスターが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキトップのカード3枚を確認できる。その中にドリアー以外のレベル5以下のメドロウモンスターが存在すれば、そのモンスターを特殊召喚する!」

ヤマトは強く祈りながらデッキトップをめくっていく。
魔法カード、魔法カード…モンスターカード!

 ヤマト「最後のカードは、『メドロウ・マーメイド』。そのまま特殊召喚!」

メドロウ・マーメイド ☆1 攻撃力700

下半身が桜色をした魚の少女が特殊召喚される。ヤマトのフィールドに並ぶ3人の美女を見て、クレアは目をしかめた。

 クレア「あなたのデッキって…そんな女の子しか入ってないの?ちょっと引くなぁ…」
 ヤマト「しょうがないじゃないか。ゼル様から貰った大事なデッキなんだ。それに、この状況を打破するためのモンスターは残ってる!レベル1『メドロウ・マーメイド』レベル3『メドロウ・ディーネ』に、レベル2『メドロウ・ドリアー』をチューニング!」

3人の美女は空に舞い上がり、それぞれのレベル分の☆に変化して立一列になる。

 クレア「レベル6…新しいシンクロね」
 ヤマト「不死身の闘志が、聖天の光を受けて舞い上がる。シンクロ召喚!舞い戻れ!『Hメドロウ・フェニクス』!」

1+3+2=6
Hメドロウ・フェニクス ☆6 攻撃力2200

全身に炎を纏い、グリフォニスよりも大きな翼を広げた神々しい鳥が舞い上がり、ヤマトのフィールドに登場した。

 ヤマト「バトル!『メドロウ・フェニクス』で、『H-Cクサナギ』を攻撃!」
 クレア「自爆特攻…!?何かあるわね!」

不死鳥フェニクスは自分より強力なクサナギに果敢に突撃する。クサナギが振り上げたツルギによって体を斬りつけられ、フェニクスは簡単に破壊されてしまった。

ヤマト LP 3100 → 2300

 ヤマト「破壊された『Hメドロウ・フェニクス』の効果発動!このモンスターがバトルフェイズ中に戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、墓地のこのモンスターを特殊召喚し、攻撃力を800ポイントアップさせる!さらに、この効果は1ターンに二度発動できる!」
 クレア「元々の攻撃力は2200、攻撃力が3000になって復活…なるほど、同士討ちを狙っているわけね」
 ヤマト「戻ってきてくれ、『Hメドロウ・フェニクス』!ループリバース!」

破壊され、散り散りになっていく数々の火の粉が突然燃え上がり始めた。意思を持っているように一つに集合し、元の形になる。体に纏っている炎は最初よりもより燃え上がり、攻撃力が上昇していることを示していた。

Hメドロウ・フェニクス 攻撃力2200 → 3000

 ヤマト「もう一度フェニクスで攻撃!」

先ほどとは違う!そういった鋭い目つきの不死鳥が一直線にクサナギに突撃する。もう一度返り討ちにするためにクサナギもツルギを掲げ、振り下す。
二体のモンスターが激突した。が、攻撃力は同じ。フェニクスはツルギで切り付けられ破壊された。クサナギも、フェニクスの炎によって燃え上がり倒れる。

 ヤマト「まだまだ!ループリバース!蘇れ『Hメドロウ・フェネクス』!ダイレクトアタック!」

Hメドロウ・フェネクス 攻撃力2200 →3000

一度破壊されリセットされた攻撃力はさっきと同じようにアップする。力を得た不死鳥がクレアを焼き尽くす。

 クレア「くぅ、いきなり大ダメージ…!でも、面白いわ!私は墓地の『H・Cサウザンドブレード』の効果発動!自分が戦闘ダメージを受けた場合、このモンスターを墓地から特殊召喚できるわ!」

クレア LP 8000 → 5000
H・Cサウザンドブレード ☆4 攻撃力1300

 ヤマト「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

ヤマト 手札2
  場
Hメドロウ・フェネクス 攻撃力3000
セット魔法罠カード×2

 クレア「私のターン、ドロー!手札から、『貪欲な壺』を発動!墓地のモンスター5体を選択し、デッキに戻す。その後デッキからカードを2枚ドローよ!」

H・C強襲のハルベルト
H・Cダブルランス
H・Cダブルランス
H-Cエクスカリバー
H-Cクサナギ

 クレア「エクシーズモンスターのエクスカリバーとクサナギはデッキではなく、EXデッキに戻るわ。デッキに戻るカードは3枚、これで、デッキ枚数を殆ど増やすことなくドローができる。2枚ドロー!」

折角倒した強力なモンスターが次々と戻っていく。これでもう一度あのモンスター達と対峙するかもしれないのだ。クレアの手札は3枚。どうでてくるか…。

 クレア「私は手札から、『ゴブリンドバーグ』を召喚!」

ゴブリンドバーグ ☆4 攻撃力1400

小さな飛行機に乗ったゴブリンが空中を旋回する。手札を見てニヤリと笑い、続けて言う。

 クレア「『ゴブリンドバーグ』が召喚に成功した場合、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚できるわ。『H・Cスパルタス』を特殊召喚!」

H・Cスパルタス ☆4 攻撃力1600

 クレア「レベル4『ゴブリンドバーグ』と『H・Cスパルタス』で、オーバーレイ!現れよ、最大最強の戦士、『H-Cエクスカリバー』!」

モンスター達のコンボでなんとか倒した黒い鎧の大きな戦士がまたもフィールドを起ち塞ぐ。効果を知っているだけに恐ろしい存在だ。

 ヤマト「素材をとって攻撃力を倍にする…でも、それだけじゃ、まだライフは0にならない」
 クレア「甘いわね。エクスカリバーの効果発動、攻撃力を倍にするわ!」

エクスカリバーの周りを浮遊していた二つのオーバーレイユニットがエクスカリバーに触れて弾ける。力を得たエクスカリバーはもう一つの剣を取り出し、二刀流に変化する。

 クレア「私の切り札は、こんなことじゃ収まらないわ!手札から魔法カード『ヒロイック・チャンス』を発動!私の場のヒロイックモンスター1体の攻撃力を、ターンの終わりまで倍にする!4000の倍…よって8000!」
 ヤマト「そんな…!」

H-Cエクスカリバー 攻撃力4000 → 8000

エクスカリバーから凄まじいオーラが発せられる。剣を握る手に力が入り、その一撃をより完全な物へとしていく。

 クレア「『ヒロイック・チャンス』で攻撃力を上げたモンスターはダイレクトアタックできない。けど、アナタのモンスターを相手にするなら問題はない!バトルよ、『H-Cエクスカリバー』で攻撃!一刀両断…必殺真剣!!」
 ヤマト「うあああぁぁ!」

ヤマト LP2300 → 0

   勝者:クレア


 ヤマト「イテテ…。あー、あんな攻撃力高いモンスター勝てっこないよ」
 クレア「ふふ、それがこの子の良い所よ♪」

ニコニコと太陽の笑顔で微笑む彼女は、エクスカリバーを嬉しそうにヤマトに見せる。黒い枠のカードはキラキラと光り、彼女の笑顔に呼応しているようだった。

 クレア「アナタは負けた…けど、その実力はたしかよ。私だって少しでも油断すれば負けてたわ」
 ヤマト「そうかなぁ…」
 クレア「ところで、アナタが最後まで伏せてたカード。いったいなんなの?」
 ヤマト「それが…僕もよくわからなくて…」

ディスクからカードを抜き出し、クレアに渡す。罠カードのようで、クレアはそれをマジマジと見つめた。

 クレア「『天聖の儀』…?何よこれ、白紙だし…テキストになにも書かれてないじゃない。エラーカード?」
 ヤマト「分からない。でもデッキに入ってたんだゼル様から貰ったカードだから、大事にしてるんだけど…」
 クレア「ゼル様?」
 ヤマト「うん。神様なんだ。僕はその下で働いてる」
 クレア「神様だなんて…そんな嘘バレバレよ~」

ヤダなぁと手をヒラヒラさせて信じないクレアだったが、証拠にと消していた翼を出現させた。

 クレア「…うそ」
 ヤマト「ほんとだよ」

今度はヤマトがニッコリと笑う。
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