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HOME > 遊戯王SS一覧 > 8Turn 境階の学び舎

8Turn 境階の学び舎 作:ジェム貯めナイト

 ――マスター! おはよう!

 6畳程の広さをした部屋を、カーテン越しに朝の光が差し込んでいる。

 壁に沿うように家具が配置された遊陽の部屋では、先に畳まれた布団の上に沈み込むことなく座ったヨリマシが、ようやく目覚めた遊陽を見て、早く下に降りようと急かしていた。


 「おはようヨリマシ。遊無は――先に降りたのか?」

 ――マスターよりもはやくおきて、したにおりていったよ――。

 「そうか。なんたって“初登校”の日だからな。今日を楽しみにしていただろう
ぜ」


 部屋を後にして階段を下りながら遊陽とヨリマシは会話しつつ、リビングへと顔を出す。


 「あら? おはよう遊陽」

 「おはよう母さん。遊無はまだ、来ていないのか?」


 食卓では遊陽と遊無――2人分の朝食を用意した母が、先に自らの茶碗へと炊き立ての白米をよそッていた。


 「女の子は支度に時間がかかるのよ? 先に食べちゃいなさい」

 「はーい。……あっ、俺も入れたてのコーヒー頂くぜ?」


 遊陽は食卓に座り、自らのマグカップの縁にドリップバッグを引っ掛け、ポットから湧かしたてのお湯を注ぎつつ、自分の茶碗に白米をよそった。


 「おはようございます。……どうでしょう? おかしくないですか……?」


 しばらく経って、洗面所で身なりを整えた遊無がやや緊張気味に、遊陽が座る食卓へとやってきた。

 目の前に現れた遊無は遊陽達も着用する制服に袖を通しており、髪を後頭部で結んでひざ丈のプリーツスカートに真新しいブレザーと胸元のリボンがよく似合う――初々しい姿を披露した。


 「あらーっ! 可愛いじゃない! ほら、あんたもそう思ったでしょ?」

 「あ……ああ、よく似合っているぞ」

 ――ゆーむちゃんがせいふくきてる!

 「そうだ! 折角だし遊無ちゃんの制服姿、写真に収めましょ!」


 遊陽の母はカウンターの上に置かれているD・フェースに手を伸ばすと、手を前で組んで佇む遊無の姿をカメラに収めていく。


 「じゃあ次は――あんたも早く着替えて入んなさい!」

 「いや、俺食事中なんだけど……」


 母に言われるがまま、遊陽は食事の手を止め洗面所に向かうと、顔を洗い制服に着替えて遊無の隣に並ぶとともに、再びシャッター音が切られていく。


 「ごめんな遊無。母さん女の子も欲しかったって昔から言ってたからさ……」


 しばらくして、ようやく解放された2人は椅子に着くと、用意された朝食へと手を付ける。


 「いえ……そういうことなら、お役に立てて何よりです」

 「はぁ……いっそこのまま遊無ちゃんが嫁入りしてくれたら、お母さんもう思い残すことは無いのになぁ……」


 画像ファイルに収めた写真を眺めつつ、ふと呟いた母の言葉を聞いた遊陽は、口に含んだコーヒーを吹き出しそうになるのを堪え、チラッと横目で味噌汁に手を付ける遊無を見ると咳払いをする。


 「ほ……ほら、初日だし早く食べ終えて学園に向かうぞ」

 「あっ! 孫の顔を見るまでは生きなきゃ……!」

 「まだ引っ張るかその話題……!」





 「遊陽さんとカズさん、留音さんは同じクラスなのですね」


 ヨリマシも引き連れつつ、家を出た2人が学園への通学路を進む途中、遊無は学園の事について遊陽と会話を交わしていた。


 「ああ。俺達の担任は“帷 経香”(かたびら きょうか)先生って言うんだ。国
語6科目が担当で、秋にやる祭り――“跨境祭”の委員も務めていてな――」

 「跨境祭……?」

 ――おいらたちのまちはすっごくゆたかでしょ? それは“うじがみさま”のお
かげなんだ。だから1ねんに1かいかんしゃのきもちをつたえるため、おそなえものをあげたりするんだ!


 ヨリマシの説明に遊無は頷いて、祭りについて大まかな概要を把握する。


 「私もあの場所で何度も目にしました。あの神社まで神輿を担ぎつつ、練り歩くのですね」

 「俺も全体の指揮を執る経姉――先生に合わせて、祭囃子を奏でながら一緒に練り歩くんだ」

 ――マスターのふくふえのおと、すっごくきれいだよね――。

 「先生に小さい頃から指導されたからな。……お、カズが来たぜ」


 遊陽が手を振ると、遠方にいたカズは遊陽と遊無の姿を視界に捉え、2人の元へと駆け寄って来た。


 「はよーッス。遊無ちゃん――制服姿、すっげー似合ってるじゃん!」

 ――カズくんだ! おはよう!

 「カズさん、おはようございます」

 「おはよう。遊無も一緒だから、今日から“賑やか”になるな」


 カズも加わり、3人とヨリマシは再び学園へと歩みを進める。

 やがて校門にたどり着くと、ヨリマシはまたあとでね。と姿が薄れて、元の精霊の住む世界へと戻っていった。


 『先生! おはようございます!』


 3人が校門の前に来ると、先程話題に上がっていた――明るいベージュブラウンの髪色をしたカラッとした印象を与えるスーツ姿の女教師が、登校する生徒の服装に目を凝らしつつ生徒からの挨拶に応じていた。


 「おう! ……あっ、こら葉柴(はしば)! シャツのボタンは全部留めろ! 双波(そうは)もジャージを腰に巻くな!」


 今日は朝から帷先生が生徒の服装指導をしているらしく、声を張り上げてだらしなく制服を着こんだ生徒に激を飛ばしている。


 『わっさいびーたん(すいませんっ)……!』


 先生に指摘され、薄紫の髪に放射状に広がる黄色の前髪をした――方言を話す男子生徒は慌ててシャツの第一ボタンを閉め、日に焼けた肌と黄緑色のベリーショートをしたボーイッシュな女子生徒も、腰に巻いたジャージを鞄にしまう。


 「ったく、久々の当番だってのにだらしない奴ばかり――おっ、遊陽! それに商本も!」

 「経ね――先生、おはよう。今日は服装指導で来ていたのか」

 「そう言うこと。……ところで、初めて見る顔だけどその生徒は……?」


 遊無に気付いた帷先生は、興味津々といった様子で遊無の姿を頭から足の先までさりげなく服装チェックもしつつ、見慣れない顔だと遊陽に問いかけた。


 「ああ――刹那遊無っていって、今日から1年のクラスに転入するんだ」

 「おはようございます先生。刹那遊無と申します」

 「ああ……この子が噂の――教師の間じゃ話題になってたぞ? この前神社で火事があった時、真っ先に気付いて消火に役立ったって……」

 「……なぁ遊陽――いいのか? 訂正しなくて……」


 カズが事実誤認だと、肘で遊陽の脇腹を小突きながらヒソヒソと呟いた。


 「い……いつか誤解は解くって――」


 いつの間にか噂に尾ひれがついて、あの戦いは偶然通りかかった遊無も消火に関わったという認識が、既に広まりつつあった。

 急に顔を示し合わせて、ひそひそと話をする遊陽とカズに帷先生は不審に思いつつも、3人とも服装は問題ないということで再び業務に集中する。


 「おはよう浪花。……岡! その髪いつ切ったんだよ! 短くしてこい!」

 「……そう言われましても、先週短く切ったばかりなんですよ……」


 帷先生に呼び止められた肩まで届く黒い長髪を注意された生徒――“岡 謙太郎
”(おか けんたろう)に、彼と談笑していた“浪花大我”(なにわ たいが)は2
人のやり取りを見てやれやれといった様子で、鞄から何かを取り出すと先生に手渡した。


 「まあ先生、こいつは間違いなくこの前切ったばかりだし――いいじゃないっすか」

 「……! そうか……切ったことには変わりないようだし、行っていいぞ」


 受け取った焼きたてのたい焼きを口に運ぶ帷先生を横目に、2人の男子生徒は礼を言うとそそくさとその場を立ち去って行った。


 「岡の奴、本当妙な体質だよな。……これ、うまっ!」

 「先輩達も大変だな。てか先生……何食ってんですか」

 「ああ――これな。浪花がくれたんだよ。商本も食うか?」

 「俺は食いませんが、後で留音に渡すため受け取っておきます」


 半分に割ったたい焼きをカズは受け取り、冷めないよう弁当と一緒にしまうと、今度は驚き交じりの声色で、帷先生は再び声を張り上げた。


 「お……おい! 笑原(えみはら)!」

 『……? 何ですか先生……?』


 先生の声に遊無よりも少し小柄な――お揃いのショートボブの黒髪と青い瞳に、前髪をヘアピンで流して留めた2人の女子生徒が、先生へと振り向いた。


 「笑原が2人――こっちに来るぞ……!?」

 「あー、“そう言う事”か……」


 同じ顔をした2人の生徒に困惑している先生とは対照的に、遊陽とカズはまたか。といった表情で、他の教師とも繰り広げられた一連のやり取りを眺めている。


 「えーっと、その――分身するのは校則違反だぞ……?」

 「プーッ! 聞いたか遊陽! 今度は分身だってよ……!」

 「経姉……左耳が出ている方が織姫先輩で、右耳を出しているのが妹の千夜さんだよ……」


 遊陽に指摘されて、帷先生は目をキョトンとさせた2人をジッと見つめる。

 確かによく見ると遊陽の指摘した通り、2人の姉妹は流した前髪以外にもそれぞれ目尻が異なり、上向きのパッチリした眼と、下向きの柔らかい丸みのある眼に分かれている。


 「ブッブーッ! 今日は千夜ちゃんと逆にしてみたの」

 「えっ……それは失礼しました。織姫先ぱ――」

 「ウッソ! 遊陽先輩騙されちゃったぁ……! あたしがお姉ちゃんの妹の“
笑原 千夜”(えみはら ちよ)だよっ!」

 「あたしが先生も知ってる――姉の“笑原 織姫”(えみはら おりひめ)です」

 「そ……そうだったのか。これは失礼した――すまん」


  申し訳なさそうな表情で謝る帷先生にいえいえ。と返しつつ、織姫は遊陽に向けて舌を出し、からかう妹を窘める。


 「お前っ……! あんまり人をからかってると、いつか痛い目見るぞ?」

 「やだーっ! 遊陽先輩怖っわーい!」

 「千夜ちゃん……後輩君をからかうのはそれくらいにね? ……ところでそちらの方は?」

 「今日から転入します――刹那遊無です。1年の2組で学ばせていただきます」

 「2組……千夜ちゃんと同じだねぇ」


 遊無のクラスを聞いた途端、織姫は驚いたといった様子で妹の千夜を見た。


 「遊無ちゃんも2組なんだ! じゃああたしが案内してあげるから、一緒に行こっか!」

 「千夜さんとですか……?」

 「同じクラスでしょ? 千夜ちゃんに教えてもらいなよ! 大丈夫! そこんとこお姉ちゃんのあたしが一番わかってるし!」


 妹なら心配ない。と織姫からも言われ、遊無は千夜の申し出を了承する。


 「分かりました。よろしくお願いします」

 「任せて! それじゃ行こっか――遊無ちゃん!」


 そのまま千夜に案内され、遊無は校舎へと案内されていく。


 「俺達もそろそろ行こうぜ。そんじゃ先生、また教室で!」


 カズの一言で遊陽もすれ違った学園の個性豊かな生徒達に続いて、引き続き服装チェックを行う先生と別れ、校舎へと向かって行くのであった。





 「はい。という訳で今日からクラスに加わる刹那遊無さんです。皆さん仲良くしてくださいね?」


 自己紹介を終えた遊無が頭を下げると教室中から割れんばかりの拍手が巻き起こり、担任を勤める頭髪が白くなりかけの中年教師の指示通り、遊無は黒板前から用意された席へと移動する。


 「席はあたしの隣ね。分かんないことがあったら何でも聞いてね?」

 「はい。ありがとうございます。千夜さん」


 千夜の隣の席になったことで、遊無はホッと一安心する。

 その後の授業でも千夜に案内されつつ、午前の授業が小休憩に差し掛かると、遊無の席の周りにはクラスの女子生徒達が、興味津々といった様子で集まっていた。


 「これからよろしくね! ねえ、遊無さんは何が得意なの……?」

 「えっ……えっと……」

 「この前の火事の時、バケツ片手に活躍したってマジ!?」

 「えっと……その……」


 自らの事について根掘り葉掘り聞こうとするクラスメイト達からの質問攻めから逃れようと、遊無は目を泳がせて教室を一望する。

 教室内には多くの生徒がいるが、その中には辺りなど気にしないといった様子で広げたスケッチブックに鉛筆を走らせる――白髪に赤や青、緑のメッシュが混じった男子生徒や、読書に耽っているミディアムボブの外ハネした黒髪をした女子生徒の姿もあった。


 「ふぅースッキリ。ありゃりゃ、遊無ちゃん人気だねぇー」

 「千夜さん!」


 生乾きの手を拭きながら教室に戻ってきた千夜は、女子生徒達に囲まれていた遊無を見かけて駆け寄って来る。


 「みんな遊無ちゃんの事知りたいんだよ! ……まあ須浦(すうら)君みたいな我が道を行く人もいるけど」

 「……何か文句でもあるのか? 笑原――」

 「別っつにー? 未来の芸術家様の才能には惚れ惚れしちゃうってこと!」


 千夜は須浦の元に向かうと、スケッチブックに描かれた迫力あるデュエルが表現された絵を覗き込もうとするが、邪魔だと言わんばかりに須浦は肩に置かれた手を払いのけようとする。


 「……須浦君、これはこの前行なった――私のデュエルだろうか?」


 読んでいた本を閉じて、須浦の元にやって来た長身で大人びた雰囲気を纏う――ミディアムボブの黒髪をした女子生徒も須浦の絵を覗き込むと、千夜は意外だという顔でその女子生徒に問いかけた。


 「あっ! そっかこれ八千代(やちよ)ちゃんと遊陽先輩のデュエルだ! 八千代ちゃん遊陽先輩に興味あるの……?」

 「このデュエル大会に誘ったのは、千夜だっただろ?」

 「あの――遊陽さんとデュエルしたのですか?」


 3人の会話が気になった遊無は、大会で遊陽とデュエルした相手――八千代をジッと見つめる。


 「あっ! 遊無ちゃん、この人は“石井 八千代”(いしい やちよ)さんってい
って、あたしと同じ演劇部で親友なんだよ!」

 「八千代さん――遊陽さんとデュエルしたことあるのですね……」


 自らを真剣な表情で見つめる遊無の視線に気づき、八千代は困ったような表情をしながらも、遊無に答える。


 「少し前に大会でね。その時は私の勝利で幕を閉じたな。君は先輩とデュエルしたことはあるのかい?」

 「いえ――中々言い出すきっかけが無くて……」

 「そうか。先輩は中々強かったよ。きっかけがなくとも、気軽にデュエルしたいと伝えればいいんじゃないか?」


 八千代の何気ない一言に、遊無は須浦が描いた彼女と遊陽が行ったデュエルの一場面に視線を落とすと、再び顔を上げ八千代に返答する。


 「そうですね。……ですがその前に私、八千代さんともデュエルしてみたいです!」

 「私と……? 分かった。折角同じクラスになれたのだから、デュエルを通して君とも通じ合おうじゃないか」

 「八千代ちゃんに挑むの? 八千代ちゃん強いよー? 同学年で勝てるの須浦君ぐらいじゃない?」


 再びスケッチブックに鉛筆を走らせる須浦を横目で見つつ、千夜が2人のデュエルに興味を引かれたところで授業の再開も差し迫り、遊無は昼休みにデュエルする約束を八千代と取り付けると、千夜とともに自分の席へと戻っていった。





 「遊無ちゃん! 八千代ちゃん! どっちも頑張れーっ!」


 午前の授業は終わり、千夜と共に昼食を食べ終えた遊無は、既に数組の生徒がデュエルを行っている学園の中庭で、先に2人を待ち受けていた八千代と相対する。


 「あの転入生。いきなり石井さんに挑むって、すっごい自信だよねー」


 観戦する生徒達がそれぞれ声援を送る中、遊無と八千代はそれぞれD・フェースを構えた。


 「……遊無さんのは旧式か。何か思い入れでもあるのかい?」

 「これは――遊陽さんがこの前まで使っていたそうです。出来ることは最新のとほぼ変わらないから、問題ないって」

 「確かに、デュエルに支障はない。……そういえば私が遊陽先輩とした時は、まだその機種を使っていたな」

 「……それを聞いて、ますます負けられなくなりました。行きます!」


 『デュエル――』


 遊無LP4000 八千代LP4000。


 「先行は私だ。……フフッ。早速君に、我が“劇団”が誇る歌劇場への招待券を
発券しようではないか!」


 突然八千代が大げさともいえる身振り手振りを見せつつ、手札から1枚のカードを発動させると、2人を中心に観客席が立ち並び、ライトアップされた舞台が地面からせり出してきた。


 「でっ……出た! 八千代ちゃんの“支配人”モードだよっ……!」

 「これから君を“八夜”に渡って上演される――歌劇へと招待しよう。魔法カー
ド《影鬼モギリ》を発動したことで、デッキから我が“影鬼団”の主催する《影鬼
劇場-シャドオペラ・シアター》へと、今宵導こうではないか!」


 影鬼モギリ 速攻魔法
 (1):自分フィールドにカードが存在しない場合に発動できる。
 デッキから「影鬼劇場-シャドオペラ・シアター」1枚を選んで発動する。
 この効果を発動するターン、自分はモンスターを召喚・特殊召喚できない。
 (2):自分フィールドに「影鬼劇場-シャドオペラ・シアター」が存在する場合、
 相手メインフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。
 相手フィールドの表側守備表示モンスターを攻撃表示にする。
 このターン攻撃可能な相手モンスターは攻撃しなければならない。


 影鬼劇場-シャドオペラ・シアター フィールド魔法
 (1):自分フィールドの「影鬼団」モンスターは戦闘では破壊されない。
 (2):1ターンに1度、元々の持ち主が相手のモンスターが相手モンスターの攻撃
 対象となった場合「影鬼団」モンスター以外の自分フィールドのモンスター1体
 をリリースして発動できる。その攻撃を無効にする。
 その後攻撃モンスターのレベルがリリースしたモンスターより高い場合、そのモ
 ンスターのコントロールを得る。


 「この劇場こそ、八千代さんにとっての“戦う舞台”ということですか」

 「そして準備期間を終え、いよいよ開幕だ! 私はモンスターをセット」


 八千代の場にカードの裏側を上にした状態でモンスターが現れると、観戦している千夜が何かおかしいと、疑問を呈する。


 「あれ? 影鬼モギリを発動したターン、モンスターは出せないんじゃないの?」


 出せないはずのモンスターの出現に千夜が小首を傾けると、疑問を浮かべた千夜の元に織姫がやって来て、召喚に関する細かなルールを解説する。


 「……それはね千夜ちゃん。セットは通常召喚だけど召喚じゃないからだよ」

 「あっ! お姉ちゃん……!」

 「通常召喚の中の召喚ではなく、セットの方は有効なのさ。板付きでのスタートなのでね」


 八千代は更にカードを1枚伏せてターンを終えた。

 彼女の場に伏せられた“見えるけど見えない”モンスターに、遊無は一体どんな
モンスターが伏せられたのか。と警戒心を抱きつつ、カードをドローする。


 「私は《傘幽鬼 唐傘小僧》を召喚します! このモンスターの存在により、私の「幽鬼」達は守備モンスターに対して貫通能力を発揮します! そして唐傘小僧で八千代さんの伏せたモンスターに攻撃……!」


 使い古された傘に足の生えた妖が回転しながら突撃を仕掛け、伏せられたモンスターを貫く。


 「シャドオペラ・シアターに立つ「影鬼団」は、決して降板しない!」

 「ですがダメージは発生します!」


 攻撃に反応して姿を現した――手足に糸を付けられ、宙から吊られている少女の人形をすり抜けて、八千代に攻撃の余波が襲い掛かる。


 八千代LP4000→3200。


 「……フフッ、しかし今の攻撃で“舞台を彩る役者”が本日初登場したことによ
り、その“リバース”効果が発動する……!」


 表側表示になったことにより、宙吊り人形は傘の妖に狙いを定め、両手に巻き付けた糸を勢い良く伸ばした。


 「“リバース”効果……!?」


 ここからが真骨頂とばかりに静かな笑みを浮かべる八千代に対し、初めて耳にする単語に遊無は困惑を浮かべ、彼女のモンスターに翻弄されていくのであった。





 「遊陽と――」

 「遊無の――」

 『二人はビナリウス!』


遊陽「今回は新たに境階学園の生徒達や、俺のクラスの教師が初登場したぜ」

遊無「先生も加えて9人も登場人物が増えましたね。では前回の最後でも触れた通り、一人一人について登場順に軽く解説します」

遊陽「まずは帷 経香(かたびら きょうか)先生――俺は経姉って呼んでいて、俺達のクラス担任で町の祭りの委員もやっている」

遊無「優しそうな先生でしたね。遊陽さんとはお祭りを通して付き合いが長いそうです」

遊陽「次に方言混じりな喋り方をする葉柴 光希(はしば こうき)と、体育会系の双波 歩(そうは あゆむ)の2人――俺やカズ、塰里と同じクラスだ」

遊無「お二人とも運動系の部に属していて、葉柴さんはバレー、双波さんは陸上の短距離走ですね」

遊陽「次が3年の先輩――岡 謙太郎(おか けんたろう)と浪花大我(なにわ た
いが)の二人だ。岡先輩は実家が美容院で、浪花先輩は和菓子屋だ」

遊無「岡さんは髪が伸びるのが早い特異体質で、浪花さんは常に焼き立てのたい焼きを持ち運ぶ変――いえ、変わった能力をお持ちです」

遊陽「そして笑原(えみはら)姉妹――姉の衣服を仕立てるのが得意な織姫(おりひめ)先輩と、生意気な性格をした妹の千夜(ちよ)の二人だ」

遊無「遊陽さん、まだ怒っていますか? お二人とも演劇部の所属で、織姫さんは劇の総指揮を執ることもあり、千夜さんは学園での初めての友達でもあります」

遊陽「最後に美術部の1年――須浦 藤次(すうら とうじ)と、同じく1年の石井 八千代(いしい やちよ)だ。石井も演劇部で、須浦や岡先輩、浪花先輩は美術部所属だ」

遊無「須浦君は絵が上手くて、デュエルも学年で一番強いとの噂です。その次に強いとされる八千代さんと、今回私がデュエルを開始したところまでが今回のお話しでしたね」

遊陽「長くなったが――これで新たな登場人物は、全員紹介し終えたな。他にも細かなプロフィールを公開するつもりだ。そして次回! 石井のリバース効果を持つモンスターに遊無は翻弄されつつも、立ち向かっていく」


  『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -開幕! 影鬼劇場!- お楽しみに!』
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