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遊戯王Binarius(ビナリウス)/1Turn 幽明を賑わす者 作:ジェム貯めナイト

 太陽が水平線の向こうに沈み始めた海沿いの町――“境階町”では、小高い山の
上に建てられた神社で、平穏な日常を揺るがす異変が生じていた。


 「っ……!」


 頂上へと続く長い坂道を、無地の着物を身に着けた少女が駆け登っており、背後からは全身が炎に包まれた――鳥の姿をした化け物が少女を捕まえようと迫って来る。

 
 『火ャハハハ! ボヤっとしてると、“また”焼け焦げちまうなぁ……!』


 化け物は口を開き、少女の足元へと火球を吐いた。

 狙いの逸れた火球が地面に着弾すると、たちまち火柱が上がって周囲の木々を巻き込みながら消失させる。


 『ほぅら、走れ走れぇ! てめぇを“蘇らせた”張本人の元へと案内しなぁ……
!』


 訳が分からない――と言わんばかりに、腰まで届く長さの薄い浅葱色の髪を振り乱しながら、日没後の夜空を思わせる青味がかかった瞳で山頂までの道を見据えて走る少女は、化け物の猛攻から逃れようと頂上を目指して駆け上がるのであった。





 「行くぜ! 俺はフィールドの《複翅水蝎(ドラゴニュンヘ)アレトゥーサ》の効果で“アドバンス召喚”だ……!」


 快晴の空の下方に広がる――境階町の中心部に構えた“境階学園”では、休み時
間を利用して中庭に多くの生徒が集まっていた。

 腕に装着された端末型の機械に、縁が緑の眼鏡を掛けて根元が緑――毛先が金色の髪をオールバックにしている生徒が、高く掲げた1枚のカードを勢いよく読み込ませる。


 「来るぞ遊陽(ゆうひ)! 一斗(かずと)の切り札が……!」


 観客の1人が叫ぶと、“遊陽”と呼ばれた赤いメッシュが入った白い前髪に、後
頭部で逆立った黄土色の髪をした生徒は身構えた。

 彼のフィールドにいるお揃いの狩衣に紫色の袴を身に着け、頭に烏帽子を被った2体の立体映像化された人物も、遊陽と共に消滅していく一組のヤゴとトンボを見届ける。


 「さあ、出撃だ! 交わり現れろ! 《三翅キ(ドライゴニック)ウォッカー・バロン》……!」


 ウォッカー・バロン攻撃力2600。


 ――きたよマスター! カズくんのきりふだが――。

 「“賑やか”しくなってきたな! 大丈夫だヨリマシ。奴への対抗手段はある!



 遊陽は自らに話しかける和装の童子へと返答するが、カズと呼ばれた生徒はその童子との会話が“聞こえていない”ようで、明後日の方を向き喋る遊陽に困惑する。


 「……またいつもの“カードの精霊”って奴か? 何を相談しようが、この攻撃
は止められねぇよ……!」


 カズの攻撃宣言により、トンボを模った機体の首から後尾まで真っ赤に染まった複葉機は、もう片方の祭祀を司る神職者へと急降下しながら機首の機関銃を連射し浴びせかけるのであった。





 「いやー――いい“デュエル”だったぜ」


 先程まで行われていた戦いを振り返りながら、カズは遊陽と共に新たに始まった戦いを、校舎へと続く扉近くの日陰で観戦する。


 ――マスター! つぎはおいら、もっとかつやくするからね!

 「ああ。お前は神霊を依り憑かせられる――“賑やか”な祭りにとって重要な役
だからな」


 カードに埋め込まれたチップを基に、現実世界に立体映像を展開可能な多機能タブレット型端末――D・フェースによる出力を得ていないにも関わらず、半透明の姿で実体化しているヨリマシに、遊陽はそう呼びかけた。


 「……またヨリマシとかいう、子供の幽霊と話してるのかよ」

 「お前――カードの精霊は信じないのに、幽霊は信じるのか?」

 「そりゃカードの精霊よりかは信じるね。こういう広告も出てくるくらいだしさ



 手元のD・フェースで開いていた動画がCMに切り替わると、教会の神父らしき橙の髪に、顔の輪郭に沿ってワインレッドの前髪をした人物が、憑りつかれたように正気を失った人物へと十字架を突き付けている。

 映像が切り替わると正気を取り戻した人物は、ベールからスカーレットとアイボリーの合わさった髪を覗かせているシスターの看病を受けて、神父とともに元気な姿を見せていた。


 ――おいら、わるいせいれいじゃないよ!


 背伸びしてカズのD・フェースを覗き込んでいたヨリマシが憤慨する。

 その時だった。校舎の廊下から、内側に濃い藍色が掛かった珊瑚礁を思わせる髪色をした少女が、カズの下へと足早に駆け寄って来た。


 「一斗! ここにいたのね!」

 「留音(るいね)……! どうした? そんなに慌てて――」

 やっと見つけた。と言わんばかりに、鼻先まで健康的に焼けた褐色の肌を赤く上気させた少女――留音が自らのD・フェースを立ち上げて、カズの目の前に通知されたメッセージを突き付けた。


 「あんたのお母さんから、連絡がつかないから伝えて欲しいッて――」

「えーっと――放課後にまだ終わってない畑仕事を手伝いに来なさい? こりゃ気付かなかった。てかなんでお前に連絡来てるんだよ!」

 「それは……私も両親の手伝いで、放課後海まで行くからよ」


 そう言いながら留音は懐から磯メガネを取り出し、制服のシャツを押し上げるほどに主張する胸元の前で掲げると、そのまま掛ける仕草をしつつ、その場を立ち去って行った。


 「……漁の手伝いなら、お前の向かう畑とは逆方向の筈だけど――」

 「大方、俺の母ちゃんに声かけるよう言われてたんだろ。ってなわけで今日はお前と一緒に帰れねぇから」

 ――ありゃ、でもだいじょうぶだよマスター! おいらといっしょだもん!

 「……そうか。じゃあ頑張って手伝って来いよ」


 一瞬ヨリマシへと目線を落とすと、家業を頑張るよう遊陽が励ましたところで、予鈴が鳴り響いた。


 ――っ……!? いま、へんなかんじが――。


 教室に戻る遊陽とカズに続こうとするヨリマシは、一瞬感じた妙な気配に振り向くも、気のせいだと思い直して2人を見失わないよう、再び校舎へと駆け出して行った。





 ――おつかれマスター! きょうはカズくんいないけど、おうちにかえるの?


 校庭で部活動に勤しむ生徒を横目に学園を後にして、遊陽はヨリマシとともに小高い山々の方角へと続く坂道を進んでいた。

 「今日は“賑やか”しさとは程遠いけど、神社にお参りして帰ろうかなって。来
年は受験するからな」

 ――やったぁ! あそこにいると、おいらげんきがみなぎってくるんだ!

 「精霊は“賑やか”じゃなく、厳かな場所の方を好むのか? ……!? お、お
い!」


 遊陽が指差した神社の方角では、日が傾き、すっかり赤く染まった空に黒い黒煙が立ち昇っていた。


 ――もえてる!? これってまさか――。

 「さっきまで何も無かったはずだよな!? 急ぐぞヨリマシ……!」

 煙の真下には町唯一の神社が建っていることを思い出して、2人は嫌な予感がする。と同時に顔を見合わせると、慌てて神社へと駆けだした。





「はぁ……はぁ……着いた」


 遊陽は息を切らしながら、神社まで辿り着いた。

 周囲より隆起している小高い山の上にそびえたつ神社の麓――頂上へと向かう鳥居の立った階段の前は、異変に気付いて駆け付けた野次馬でごった返していた。


 「一体、どうなってんだよ!」

 「頂上で爆発が起きたみたい。神社は大丈夫なのか!?」

 「おい! 境内に向かう道が燃えているぞ……!」


 頂上へと向かう2本の道――参拝客用の長い階段と、山車が練り歩く遠回りの道の両方とも、地面から火柱が上がって行く手を遮っている。


 「おい野次馬ども! 道を開けろ! 俺達は消防隊だ!」

 「一般人は避難した方がいいぜ! 今この神社は、俺達消防士の戦場と化してるからよ……!」


 野次馬を押しのけ、消防車とともに町の消防士が通報を受けて駆け付けた。

 彼らは頂上への道を遮るように燃えている炎に向けて、手際よく消防車から放水をかけるものの、燃え盛る炎は大量の水を浴びても尚、一向にその勢いを衰える気配を見せない。


 「なっ……何故だ!? 一体どうなっている……!?」

 「熱さに水の方が先に蒸発してるのか……? 何か消火する方法はないのか……!」


 消防士達が戸惑う中、怯えた表情のヨリマシが遊陽の後ろに身を隠しながらも、立ち昇る火柱を指差した。


 ――このほのお、このせかいじゃありえない……おっきなちからをかんじるよ――。

 「まさか――カードの精霊が現実に起こしているのか!?」

 ――それにすごくくるしそうなこえがきこえる。だれかがあのうえにいるんだ!


 果たしてこの事態は収まるのか。遊陽の頭にそんな不安がよぎるが、ヨリマシが再び遊陽の前に出て、彼の顔を見上げながら話を続けた。


  ――ただ、おいらならこのほのおをけすのはむりでも、みちをあけるくらいはできるとおもう――。

 「それは――俺ならこの炎を通り抜けられるということか……!?」

 ――でもおいらだけじゃ、てっぺんにいるあいてをとめられないよ――。

 「それでも――頂上まで行ける俺が何とかするしかないんだ……!」


 頂上へと向かう決意を固めた遊陽は早速、人混みをかき分け消防士の制止を振り切ると、意を決してヨリマシとともに燃え盛る炎へと飛び込んだ。


 「うおおぉぉっ……!」

 「なっ!? 嘘だろ……!? あの炎を通り抜けたぞ……!?」


 遊陽の身体が燃えることもなく――鳥居を越えて頂上へと続く階段を登って行ったのを目撃して、周りにいた消防士の1人が恐る恐る燃える炎に触れた瞬間――たちまち炎が全身を覆い隠すほどの勢いで燃え移った。


 「うわああぁ……!? 消せ! 早く消せ……!」


 燃え上がった消防士は地面を転がり、慌てて近くの人達が水をかけて何とか消火したものの、もし消防服を着ていなかったら――と考えさせられるほどの激しい炎に、その場にいた全員が背筋の凍る思いをする。


 「あいつ……無茶しやがって。どうか無事でいてくれよ……!」


 消防士達は消火活動を再開しながらも、不安に怯える住民とともに、遊陽が無事に戻れることを祈るのであった。





 「はぁ……はぁ……着いたぞ」


 遊陽は階段を登りきり、鳥居をくぐるとヨリマシとともに、嫌な気配の漂う境内へと足を踏み入れる。

 夕日が照らす境内はどんよりとした空気に覆われており、周囲の木々も普段の厳かな雰囲気とは打って変わって、不気味な赤黒い影を落としていた。


 ――あっ! あれは……!


 ヨリマシが指差した先には、地面に座り込んだ白い着物姿の1人の少女がいた。


 「女の子……!? おい! 大――!?」


 遊陽は彼女の元に駆け寄ろうとするも、彼女から少し離れた距離に立っている者が手の中に火球を生成するのを見て、一瞬立ち止まる。


 「に……逃げて……くださ――!」


 焼け焦げた白い着物から露出した右の肩を押さえ、痛々しい火傷の痕を覗かせる少女が言い終わるのを待たずに、翼人のように背中から翼を生やした化け物は巨大な火球を生み出すと、少女めがけて撃ち出した。


 ――あぶないっ……!


 ヨリマシの叫びを耳にした瞬間――遊陽の硬直した身体は再び動作を取り戻して、咄嗟に少女を守ろうと地面を蹴り、彼女の身体ごと参道の小脇へと転がった。


 「神社が――」


 少女の無事を確認して安堵の表情を浮かべた遊陽が再び顔を上げると、2人をかすめた火球は背後の木々に着弾して、あっという間に火柱を上げて燃え上がった。

 
 『人間? ……そういうこと火ぁ! その精霊が焦盛(しょうせい)が張ったファイアウォールを突破して、人間が辿り着く手助けをしたわけ火ぁ……!』


 木々が一瞬で焼け落ち、灰になって崩れ落ちた光景を目の当たりにして、遊陽は拳を握りしめて怒りを露わにすると、翼の生えた化け物へと向き直る。


 「ふざけるな…っ…! おい鳥野郎! お前がこの騒ぎの元凶だな! 攻撃を止めないとその眉間に豆鉄砲を食らわすぞ……!」


 深紅の翼を背中から生やし、鳥を模した仮面で顔を覆った化け物に向けて、遊陽は指を鉄砲の形にして突き出す。


 『人間風情が焦盛に命令する火ぁ! てめぇこそ焦盛の気に触れ着火する前に、火れ伏し詫火を述べてから立ち去ってしまいなぁ……!』


 火花の爆ぜるような擦れた声を響かせながら、鳥の化け物は憤慨して、全身から炎を燃え上がらせる。

 パチパチと音を立てながら焦熱の炎を纏った翼を震わすと、周囲の木々が悲鳴を上げるかのように音を立て、枝を擦り合わせて不気味な音が木霊した。


 「……どうやら、話すだけ無駄なようだな」

  ――えっ? マスター!? むりだよ! こんなつよいあいて、かないっこないよ!


 ヨリマシが怖気付く中、遊陽はもう一度背後を振り返り、焼け落ちた木々を目に映す。

 なんとしてでもこの化け物を追い払おうと――懐からデッキを取り出して、先程のように腕のアームカバーに装着したD・フェースに差し込んだ。


 「一体何を……?」

 「“デュエル”だよ。この世界に現れるなんて、カードの精霊くらいなものだか
らな」

  『確火にてめぇの考え通り、焦盛の本体は“この時代”において、デュエルモ
ンスターズとして顕現している。よ火ろう。焦盛が焼き尽くすまで、煙を立てず静かに燻っていれば済んだと、後悔させてやる火ぁ……!』


 遊陽がD・フェースを構えた姿を視界に映すと、化け物も同じく左の翼をD・フェース状に変形させる。

 ヨリマシも覚悟を決め、姿が薄れて消えていくと同時に、遊陽と化け物はデッキから5枚のカードを引き、互いのD・フェースに4桁の数字を浮かび上がせて戦いの準備を整えた。


 『デュエル――』


 遊陽 LP4000 ? LP4000。


 『焦盛が後攻だ。さあ、ターンを始めやがれぇ!』

 「言われなくても……! 俺のターン!」


 遊陽は引いた5枚のカードを目で追うと、その中から1体のモンスターを選び出し、D・フェースの液晶盤に置いた。


 「俺は《ワッショイ・カツギテ》を召喚だ! 現れろ! 《ワッショイ・カツギテ》……!」


 遊陽の宣言によってD・フェースが認識したカードが形を持って、金箔を張りつめた神輿を背負う筋骨隆々の男が、立体映像となり場に現れた。


 ワッショイ・カツギテ
 効果モンスター
 /レベル4/地/戦士/攻撃力1500。
 (1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。
 デッキの上から3枚をめくり、その中のレベル4以下の「ワッショイ」モンス     
 ター1体を特殊召喚する。


 「これは……!? 彼は一体、どこから現れたのでしょうか……!」


 現れた神輿の担ぎ手に呼応して、どこからか歓声が巻き起こって鬨の声が境内に響き渡った。


 「立体映像により、目の前で互いのモンスターが迫力ある戦いを繰り広げる――これが“デュエル”だ!」


 そして遊陽はカードを1枚伏せると、化け物にターンを明け渡す。


 『火ぁ! その程度の僕なんざ、焦盛の忠実たる下僕が喰い散らかしてやるよ
ぉ! 焦盛のターン……!』

 
 遊陽が呼び出したモンスターを見て、化け物はその程度かと言わんばかりに呆れた態度を見せる。

 そしてデッキに鉤爪の付いた手を置き、ドローとともに完璧な布陣だ。と言わんばかりにニヤリと笑うと、2人を燃やし尽くそうと動き始めた。


 『焦盛はまず、魔法カード《妖魔彷徨》を発動! これにより手札からレベル4以下の「幽鬼」1体を呼び出す。現れるがいい。《逆幽鬼 天邪鬼》……!』


 化け物が唱えた魔法により、薄暗くなってきた境内に不吉な気配が漂い始める。

 逢魔が時の訪れとともに――頭に1本の角を生やして、爪と牙を剝きだした小鬼が現れた。


 妖魔彷徨 通常魔法
 このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
 (1):手札からレベル4以下の「幽鬼」モンスター1体を特殊召喚する。
 その後この効果で特殊召喚したモンスターより、レベル・攻撃力の低い「幽 
 鬼」モンスター1体をデッキから墓地に送る事ができる。


 逆幽鬼 天邪鬼
 効果モンスター
 /レベル4/闇/アンデット/攻撃力1200。
 このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):このカードが戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。
 バトルフェイズ終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの効果を無効にして、
 自分フィールドの「幽鬼」モンスターの攻撃力・守備力は元々の数値となる。
 (2):「幽鬼」モンスターをアドバンス召喚したターンに発動できる。
 墓地のこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れる場合、デッキの一番
 下に戻る。


 「幽鬼――随分と変わったモンスターだな」

 『そこらの野良精霊とは違ぇ――焦盛達“秘号”(エンクレーブ)が直々に従え
し、“消耗垢”(スローアウェイ)よ。呼び出した天邪鬼以下の「幽鬼」を黄泉に
送り、更に《憑幽鬼 飯綱》を焦盛の下に召喚する……!』


 小鬼と並び立つように、新たに二又の尾を持つ狐が唸り声を上げて、化け物の場に音もたてずに現れると遊陽を威嚇する。


 憑幽鬼 飯綱
 効果モンスター
 /レベル4/闇/アンデット/攻撃力1400。
 このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
 (1):1ターンに1度、相手モンスター1体を対象に発動できる。
 そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで、自分フィールドの「幽鬼」モン
 スターの数×400ダウンする。
 (2):「幽鬼」モンスターをアドバンス召喚したターンに発動できる。
 墓地のこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れる場合、デッキの一番  
 下に戻る。


 「だが攻撃力は、俺のカツギテの方が上だ!」

 『火ぁ! 分火ってねぇな、何も分火ってないぜぇ――焦盛は飯綱の効果を発動! てめぇが従えるカツギテの攻撃力を、このターン中焦盛が従える「幽鬼」の400倍削り取る! 狐の管憑き……!』


 化け物が二又の狐に目くばせすると、甲高い鳴き声とともに二又の尾から怨念がこもった2つの黒い塊が続けざまに――神輿の担ぎ手に直撃する。

 被弾した担ぎ手は全身の気力を失い、弱々しく地に膝を付けた。


 ワッショイ・カツギテ 攻撃力1500→700。


 「くっ……! これじゃ祭りを“賑やか”せられない――」


 『“賑やか”す……? “燃料”を注ぐ前だというのに、“賑やか”せられる訳
がな火ろう。バトル! 焦盛は天邪鬼でカツギテを攻撃! 曲筆舞文……!』


 化け物の攻撃宣言とともに、小鬼は高く飛び上がると回転しながら勢いを増して、神輿めがけて飛び掛かる。


 「いくら“賑やか”しくとも、神聖な神輿への接触はお断りだ! 罠カード《催
事警備》発動!」


 暴徒化した観客から祭りの安全を守るべく――襲い来る小鬼の前に法被を纏った祭りの警らを担当する集団が、神輿を守るように行く手を遮った。


 催事警備 通常罠
 (1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
 相手フィールドの全ての攻撃表示モンスターの攻撃力は、ターン終了時まで相 
 手フィールドの攻撃表示モンスターの数×400ダウンする。
 (2):このカードが墓地に存在する状態で、自分フィールドの「ワッショイ」 
 モンスターが破壊され墓地に送られた場合、墓地のこのカードを除外して発動
 できる。
 デッキの上から3枚をめくり、その中のレベル4以下の「ワッショイ」モンス
 ター1体を手札に加える。


 「相手の攻撃宣言時、相手モンスターの攻撃力をその数だけ400下げる……!」


 天邪鬼攻撃力1200→400。飯綱攻撃力1400→600。


 『その程度の擁護なんざ――新たな火種の投下なんだよぉ! 天邪鬼が攻撃する時、バトルが終わるまで「幽鬼」に掛けられた“呪い”を逆効果にする!』


 警ら達により強固な壁が形成されて、突撃は凌げるかのように思えた。

 しかし迫り来る小鬼が眼を怪しく光らせると、警ら達は次々と糸の切れた人形のように倒れ伏せる。


 天邪鬼攻撃力400→1200。飯綱攻撃力600→1400。


 「攻撃力が戻った……!?」


 力を取り戻した小鬼は鋭い爪と牙でそのまま神輿を引き裂き、その担ぎ手を嚙み千切る。


 「ぐっ……!?」 遊陽LP4000→3500。


 『続けざまに類焼しやがれ! 飯綱で攻撃だぁ……!』


 遊陽を守るモンスターが消滅した今、二又の尾を持つ狐の攻撃は遊陽に直接襲い掛かり、鋭い歯を剥き出しにした狐の牙は、遊陽の腹に深く突き刺さった。


 「ぐああっ……!?」 遊陽LP3500→2100。

 「だ――大丈夫ですか……?」


 噛まれた痛みを堪えて額の汗を拭いつつ、立体映像による物とは思えない痛みに“何かがおかしい”と、遊陽は疑問を抱いた。


 「ぐっ……だが俺は、墓地の《催事警備》を除外して効果発動。デッキから《ワッショイ・ハヤシフルート》を手札に加える……」


 小鬼によって倒れた警らのうち、1人が懐から取り出した無線に増援を要請したことで、遊陽のD・フェースが選んだ1体のモンスターが遊陽の手札に加わった。


 「痛って……この感覚、まさかこのデュエル――“ダメージが実体化”している
のか……!?」

 『今さら気付いた火ぁ! このデュエルの敗者は、その身を業火に焼き尽くされちまう。古より伝わる焦盛らと――人間どもの生死を掛けた決闘に比べれば、てめぇらがやるデュエルなんざ、生温いお遊戯なんだよぉ……!』


 いつまでも収まらない痛みに遊陽が表情を歪める中、化け物はカードを1枚伏せてターンを終えた。

 石畳が敷かれた神社の本殿の前で、遊陽と少女――化け物は対峙している。

 激しさを増すデュエル――敗者は炎に焼かれる“闇のデュエル”において、今ま
でに感じたことのない恐怖に戸惑う遊陽をあざ笑うかのように、化け物は高らかに笑うのであった。





 「遊陽と――」

 「“私”の――」

 『二人はビナリウス!』


遊陽「遂に始まったな。俺達の物語が」

遊無「作者さんが去年の年末から構想を始めて……約1年近く経っての投稿となりますね」

遊陽「まあ実際は遊んでいた期間も多かったけどな。マスデュエとか色々。……つーか1話作るのに時間かかりすぎだろ」

遊無「いえ――構想を立てる中で、大まかな話の流れや伏線等――設定を作りこんでから執筆されていたので、実際はかなり話数が貯まっています」

遊陽「……つまり?」

遊無「この物語の第一章分――24話分は既に完成してて、後は細かな修正や読者の反応を見て手直しするだけですね」

遊陽「マジかよ!? そりゃ時間掛かる訳だ」

遊無「作者さんは第一章分、本当によく書き上げたものだと思います。そんな私達の住む物語の舞台――境階町の境階学園には遊陽さんを始め、様々なデュエリストがいるみたいですね」

遊陽「カズに留音――この2人や他に容姿に言及のあった“2人”を中心に、この
物語は進んで行くぜ」

遊無「拙い文章等まだまだ未熟な部分もありますが、もしよければ今後も読んでいただけると作者として冥利につく。とのことです」


 『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -掛け声響く祭りの竜- お楽しみに!』
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ジェム貯めナイト
あれ~? 投稿した途端改行の位置がズレてる……
手の空いた時にでも修正しておきます。なぜだろう……? (2022-11-12 21:26)

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