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HOME > 遊戯王SS一覧 > 23話 原初の雄叫び その②

23話 原初の雄叫び その② 作:コングの施し

輝久「僕は、『活路への希望』を発動ッ!」


優勢から劣勢に転じた輝久は、たった1枚の罠カードに望みを託した。まるで『絶帝に負けたくない』と叫ぶように、そのカードを天高く掲げる。

遊大「活路への希望、、っ!」

このターン中での輝久の笑みの意味を理解したように、遊大はハっとした。

輝久「『活路への希望』の効果!自分のLPが相手より1000ポイント以上少ない時、さらにLPを1000ポイント払うことで、その差2000につき、カードを1枚ドローする!」

遊大 LP:7400
輝久 LP:4000→3000

遊大「俺たちのLPの差はこれで4000、、!」

輝久「つまり僕はカードを2枚ドローするッ!」

流れが完全に輝久の方へと転じたのを察し、遊大は顔を顰めた。それがどれほど逆転の目を掴まれ得る一手だったとしても、遊大にはターンエンドを宣言するほかない。


遊大
LP:7400
手札:1
モンスター:『フェニックス・ギア・フリード』『No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング』
魔法罠:セット×1 『武装鍛錬』


輝久「僕のターン!!」


輝久
LP:3000
手札:3
モンスター:
魔法罠:セット×1『機甲忍法–フリーズ・ロック』『隠れ里–忍法修練の地』



ドローしたカードへと横目を合わせると、また不敵な笑みを浮かべ口を開いた。

輝久「やっぱりそうだ、、!僕にはこのデュエルの流れを掴めるだけど才能がある!
僕は魔法カード『マジック・プランター』を発動する!僕のフィールドの永続罠『機甲忍法–フリーズ・ロック』を墓地に送り、さらにカードを2枚ドロー!」

遊大(これであいつの手札は4枚!でも、こんなとこで終わるなんて!)
「俺はお前が魔法カードを発動したことで、フェニックス・ギア・フリードの効果を発動!墓地からデュアルモンスター1体を特殊召喚する!守備表示で来てくれ!『クルセイダー・オブ・エンディミオン』!」


クルセイダー・オブ・エンディミオン
☆4 光属性・魔法使い族/デュアル/効果
1900/1200


遊大(フェニックスギアフリードのこの効果にはターンに1度の制限がない!だが、これで墓地のデュアルモンスターはゼロ!牽制としての役割は担えないのかっ、、!)

輝久「お?後続じゃなくて壁モンスターを増やしたか。まあ懸命な判断だよ。だって僕が発動するカードは、『これ』だからさあ!!」

輝久は手札から1枚のカードを取り出し、それを再び天高く掲げた。

「『死者蘇生』を発動ッ!」

輝久「僕は墓地から『忍者マスターHANZO』を再び特殊召喚!」

隠れ里に月光が差し、先刻に討ち取られたはずの忍びが再び姿を表す。

輝久「HANZOが特殊召喚に成功した時、デッキから『忍者』モンスターを1体選び、手札に加える。僕が手札に加えるのは『黄昏の忍者将軍–ゲツガ』!この瞬間フィールド魔法『隠れ里–忍法修練の地』の効果で、墓地の『機甲忍法–フリーズ・ロック』を手札に戻させてもらうよ。さらにHANZOをリリースし、ゲツガをアドバンス召喚!」


黄昏の忍者将軍–ゲツガ
☆8 闇属性・戦士族/効果
2000/3000


遊大「ばかなっ!?そのモンスターのレベルは8だ!なんで、、」

そこまで言いかけた時、輝久が得意げに割り込む。

輝久「ゲツガは忍者モンスターをリリースしてアドバンス召喚する時、1体のリリースだけで召喚できるんだよ。細かいことに口出さないでくれるかな?」

遊大は隠れ里の月光が再び差み、霧が立ち込めたかと思えば、紺碧の鎧を纏った巨躯が仁王立ちしていることに気づいた。さらに、霧の奥から赤く輝く二つの視線を感じ取り、頬を生暖かい汗がつたる。

輝久「ゲツガの効果、攻撃表示の自身を守備表示にすることで、墓地から『忍者』モンスターを2体特殊召喚する。再び隠れ里に舞い降りろ!『忍者マスターHANZO』『成金忍者』!」

霧が晴れ、3人の忍びが遊大へと睨みを効かせる。

輝久「どう?逆転もまんざら嘘じゃなくなってきたでしょ?当然こんなもんじゃ終わらない!僕は特殊召喚したHANZOの効果を発動!デッキから『黄昏の忍者–ジョウゲン』を手札に加え、その効果によりさっき手札に加えた『機甲忍法–フリーズ・ロック』を公開し、特殊召喚!」


黄昏の忍者–ジョウゲン
☆7 闇属性・戦士族/ペンデュラム/効果
2000/1000


輝久「まだまだ!『成金忍者』の効果で手札のフリーズ・ロックを墓地に送り、デッキから『機甲忍者フレイム』を特殊召喚!」


機甲忍者フレイム
☆4 炎属性・戦士族/効果
1700/1000

死者蘇生の1枚から一気に5体のモンスターを展開され、遊大は唖然とした。さまざまな考えが頭の中で混じり合い、熱い喉元には言葉が詰まり、ただただ胸の中は焦燥が溢れ出していたの感じた。


輝久「僕は特殊召喚に成功したフレイムの効果を発動。ジョウゲンのレベルを1つ上げ、レベル8にするよ。そして闇属性レベル8のゲツガとジョウゲンをオーバーレイ!!」

2人の忍びは共に紫の閃光となり、交差し合いながら光の渦へと吸い込まれてゆく。

輝久「エクシーズ召喚!ランク8!粉砕と暴虐の化身!『No.22 不乱健』!」

低く重たい唸り声が大地を突き上げ、隠れ里の月光にその巨体が蒼く照らされる。


No.22 不乱健
★8 闇属性・アンデット族/エクシーズ/効果
4500/1000


遊大をはじめ、その会場にいたほとんどの人間が初めて見るほどの巨体を誇るそのモンスターは、岩石のように硬いであろう拳を握りしめ、天へと大きく咆哮した。爆音と衝撃が会場を揺らす。

輝久「もう諦めてもいいんじゃないかな?才能のない君がよくやったよ。でもね、小型犬はいくら頑張っても大型犬にはなれないし、ペンギンだってどんなに頑張っても他の鳥みたいに空なんか飛べないんだよ。今の君、そんな子犬よりも惨めだ。」


一方で、龍平と輝久の妹の典子はあいも変わらずにそのデュエルを見つめていた。典子はしゅんと視線を落とし、ぽつりと言葉を漏らした。

典子「やっぱり、兄の才能には勝てませんのね、。」

龍平そっと目を閉じ、デュエルが始まった時のように重たい口を開いた。

龍平「俺はさっきの問いの答えなんか言うつもりはない。でも、アイツ、遊大の答えは絶対に『才能』の一言では済まされない。それはアイツもそう思ってるし、だからこそ、きっとアイツは諦めない。諦めてない。」

典子はポカンとして龍平を見つめた。妙な視線に気づき、龍平も見つめ返す。

龍平「、、なんだよ。」

典子「いえ、、そんなに話せるんですのね。」

龍平は呆れたような、照れを隠すようなため息でごまかしを挟み、何も言わぬまま雄大たちへの方へ視線を戻した。


遊大は不乱健の威圧をビリビリと全身で感じ取り、ただただ立ち尽くしていた。焦りが視界を狭くし、ただただ現状を抜け出そうと思考の泥沼でもがき続けていた。
答えを探すように記憶の泥を掻き分ける。

遊大(俺はどうすればいい!あれじゃない!これじゃない!どうすれば!どうすれば!)

そう躍起になったとき、自然と自分の体が沈んでいくのを感じた。顔まですっぽりと記憶に浸かった時、目の前に広がったのは鮮明に残る仲間たちの言葉であった。両手でかき集めたそれは、腕の中で心臓のように鼓動し始める。

『どんな状況でも厳しい空気に飲まれるな。負けても学んで、成長する自分を楽しめ。』『だいじょおーーぶ!だいじょーぶだよ!ゆうだーーい!』

気づけば記憶は泥ではなく透明な水へと変わっていた。自分はまだ諦めていない。負けたくないから記憶を漁っていたのがその証拠であることに気づけば、自然と体は水面へと浮上していた。


遊大「まだ諦めたわけじゃない!大丈夫だ!」

眼前に聳える巨躯は相手の本気の証拠。そう思った瞬間、笑みが溢れた。

遊大「本気で来い!俺はまだ、諦めちゃいない!!」

輝久はその笑みを見るや否や、その理由を考える前に汗を一滴垂らしたことに気がついた。押し返そうと思った自分のデュエルの波が、また高い堤防に押し返されるような感覚。
虚勢なのか、はたまた逆転の目があるのか、しかしそんな憶測は意味をなさないことは理解していたし、波に足を取られないようにただただ足に万力のような力を込めて立ち続けた。もう引くことはできない。
自分は意地で立ち続けて、波を起こして飲み込むだけ。そうして再びカードへと手を伸ばす。

ここがお互いに正念場だと、覚悟を決めたように目を見開き、EXデッキから1枚のカードを取り出した。

輝久「僕は『機甲忍者フレイム』『忍者マスターHANZO』をリンクマーカーにセット!サーキットコンバイン!!」

2体の忍者は赤い閃光と共にリンクマーカーへと収束し、また1体の戦士の影が光の奥より姿を見せる。

輝久「リンク召喚!リンク2!『忍者マスターSAIZO』!!」


忍者マスターSAIZO
光属性・戦士族/リンク/効果 
2000/LINK2・↙︎↘︎


輝久「SAIZOの効果を発動!デッキから『忍法–超変化の術』を僕のフィールドにセットする!
そんな虚勢、僕が攻めるのを止める理由になんかならない!このカードで終わらせてやるよ!永続魔法『王家の神殿』!」

月光に照らされる隠れ里に、金色のオブフェクトが青白く光る。

輝久「僕はこの効果で、セットされた罠カードをこのターンの間に発動できる!」

遊大「だが、フェニックスギアフリードには、フィールドのモンスターを対象とする魔法罠カードの発動を無効にして破壊する効果がある!」

輝久「そんなことは十分承知さ!だから僕は、ここでバトルだ!!!」

バトルの開始を宣言すると、不乱健はその巨木のような足を一歩一歩前へと進め、フェニックスギアフリードへと拳を振り下ろす。炎の戦士は大剣を構え、その重撃を正面から受け止める。踏ん張り続けるその脚は大地を砕き、ついには遊大のもとへと吹き飛ばされた。

遊大「フェニックスギアフリードが破壊される時、発動した『クロス・オーバー』の効果を適応する!フェニックスギアフリードの破壊を無効にし、代わりに装備カード扱いの『竜巻竜』を墓地に送る。」

輝久「だがダメージは受けてもらうよ!」

衝撃が地面を伝わり、遊大も背後へと吹き飛び倒れ込む。

遊大「だはっ、、、!」
LP:7400→5700

輝久「フェニックスギアフリードの装備カードは無くなった。これで僕はこのカードを発動できる!!『忍法–超変化の術』!
僕は君のフィールドのフェニックスギアフリードと僕の機甲忍者フレイムを墓地に送り、その合計レベル以下のレベルを持つ海竜族、恐竜族、ドラゴン族モンスターをデッキから特殊召喚する!」

遊大「こっちのモンスターを墓地に送って発動するのか!?」

フレイムが大地へと手をつくと、フィールドに金色の煙が立ち込める。それは炎の戦士を巻き込み膨れ上がり、雷撃と火花を持って炸裂した。

輝久「現れろ!『グランドタスク・ドラゴン』!」


グランドタスク・ドラゴン
☆8 地属性・ドラゴン族/効果
1400(→2600)/2100


大地が裂け、巨大な竜が雄叫びを上げる。その咆哮は雷鳴を巻き起こし、遊大のフィールドへと直撃した。

輝久「グランドタスクドラゴンが特殊召喚に成功した時、フィールドのカードを2枚破壊し、その数×600ポイント攻撃力をアップする!クルセイダーオブエンディオンとダイヤモンドクラブキングにはその礎になってもらうよ!」

遊大「くっ!」

輝久「さあ、忍者マスターSAIZOとグランドタスクドラゴンでダイレクトアタックだ!!」

遊大
LP:5700→3700→1100

銀色に輝く刃が遊大のLPを刈り取り、慈悲なき竜の牙が襲い掛かる。致命的とも言えるダメージを負い、遊大は先ほどよりも大きく吹き飛ばされた。
会場の壁面へと叩きつけられ、そのままバッタリと倒れた。

もう立ち上がることはないと、そうたかを括った輝久を前にして、遊大はまた力を込めて体を起こそうとする。

輝久の額にまた1筋の汗が流れる。なぜ立てる。モンスターはいない。手札も1枚。打点がないSAIZOは攻撃対象にならず、不乱健の1妨害も残っている。なぜその状態で立てる。そんな考えが輝久の脳内を掻き乱す。

輝久「なんで立てるんだよ!なんで立とうとするんだよ!才能もないお前が!もうやめろよ!」

懇願するように叫ぶ。
遊大はふらつきながらもしっかりと2本の足で立っていた。

遊大「まだ大丈夫なんだよ!諦めないって言ったじゃねえかよ、、!!」

輝久「わかってるのか!?言ったはずだ!お前じゃ僕には勝てないんだよ!」

遊大は再び笑みを浮かべる。その目にはまるで不死鳥のような炎が煌々と宿っていた。

遊大「それ、さっきの子犬とかペンギンのたとえの話をしてんのか?だったらそれはちげえよ。俺たちは同じデュエリストだ。絶対に勝てないデュエルなんてない!だからまだ、大丈夫なんだよ!!」

輝久は遊大の姿にひりつくような熱を感じた。そこで自分もまだ2本の足で立ち、この男を意地で打ち倒そうとしていることに気づく。
この男は強い。自分よりも強いかもしれない。だが、負ける訳にはいかない。それが矜持だから。
真っ直ぐと視線を据え、正面から迎え撃つと言わんばかりに1枚のカードをセットした。

輝久「わかったよ、、だったら来い。」


輝久
LP:3000
手札:1
モンスター:『忍者マスターSAIZO』『No.22 不乱健』『グランドタスク・ドラゴン』
魔法罠:セット×2『忍法–超変化の術』『王家の神殿』『隠れ里–忍法修練の地』


遊大「俺のターン!!!」

遊大はドローする手を途中で止め、代わりに魔法罠ゾーンのカードへと手を伸ばす。

遊大「俺は、通常ドローを行う代わりに発動中の『武装鍛錬』の効果を発動!デッキから装備魔法カード『ライジング・オブ・ファイア』を手札に加える!」

デッキが炎の渦を纏い、遊大の掴んだカードが紅蓮に燃え上がる。

遊大「俺は装備魔法カード『ライジング・オブ・ファイア』を墓地に存在する『フェニックス・ギア・フリード』を対象として発動!」

輝久「墓地のモンスターを対象にして発動!?」

遊大「『ライジング・オブ・ファイア』は、俺フィールドにモンスターが存在しない時、墓地の炎属性モンスターを対象として発動できる装備魔法!対象モンスターを特殊召喚し、このカードを装備する!不死鳥の戦士、不屈の闘志で甦れ!『フェニックス・ギア・フリード』!」

炎は翼のような形を呈しながら1人の戦士を呼び覚ます。炎が白銀の鎧に反射し、フィールドを紅色に染める。


フェニックス・ギア・フリード
☆8 炎属性・戦士族/デュアル/効果
2800/2200


遊大「俺は、永続魔法『武装鍛錬』のもう一つの効果を発動!俺のフィールドに装備魔法が存在する時、墓地のデュアルモンスター『クルセイダー・オブ・エンディミオン』1体をデッキに戻すことで、カードを1枚ドローする!」

万力のような力を込め、デッキトップの1枚を手札へと加える。目を向けたそのカードで遊大の瞳にさらに大きな炎が宿る。

輝久「何をしたところで、君は4500の攻撃力を突破しなきゃ僕には勝てない!やれるものならやって見せろよ!」

遊大「永続罠『正当なる血統』を発動!墓地に存在する通常モンスター扱いの『エヴォルテクター エヴェック』を攻撃表示で特殊召喚!」


エヴォルテクター エヴェック
☆4 炎属性・戦士族/デュアル/効果
1500/1000


紅蓮の鎧と白銀の鎧の戦士が肩を並べて構える。

遊大「俺はこのカードで決めるっ!魔法カード『融合』を発動!」

『融合』、そのカードを大きく前へと掲げ、遊大のEXデッキがガチャリと開いたその刹那、輝久が1枚のカードを取り出し叫ぶ。

輝久「そうくると思っていたよ。僕は速攻魔法『エクストラゲート』を発動。
レベルを1つ宣言し、君はエクストラデッキから宣言されたレベルのモンスターを1体除外しなければならない。
君のデッキにはシンクロモンスターは採用されてない。だから必然的にレベルを持っているのは融合モンスターだけ。それにその答えも1回戦で明かしているはずだ。」

遊大「俺のEXデッキのモンスターを除外、、!」

輝久「『超合魔獣ラプテノス』。僕はレベル8を宣言する。」

その存在を看破されていた遊大は震える手でラプテノスのカードを除外ゾーンへと移した。



輝久「、、終わったかい?君の手札は1枚、あと1枚のカード何ができると、、」

そこまで言いかけた時、遊大の声が力強くそれを打ち消した。

遊大「何を勘違いしてんだよ、、!」

輝久「、、、は!?」

フィールドに目を向けた輝久は驚きを隠せなかった。
『融合』のカードを映し出すソリッドビジョンは、まだそこにはっきりと残っている。

遊大「『融合』は不発じゃない。俺のデッキには通常モンスターのみを素材として融合召喚できるモンスターがいる!
俺は『フェニックス・ギア・フリード』と『エヴォルテクター エヴェック』を融合!」

輝久「通常モンスターのみを素材として融合だと!?」

フィールドで構える2人の戦士はその炎を交差させ、紅の光へと収束する。光はビックバンのようにさまざまな色を交えながら弾け、1匹の竜へと姿を変える。

遊大「原初の魂携し兵たちよ、その力を交わらせ、始まりの竜を呼び覚ませ!!」

美しくも雄々しい雄叫びが会場を揺らす。竜は紅い瞳をギラギラと輝かせ、巨大な翼をはためかせた。

遊大「融合召喚!『始祖竜ワイアーム』!!」


始祖竜ワイアーム
☆9 闇属性・ドラゴン族/融合/効果
2700/2000


輝久「これが君の隠し弾の融合モンスター、、!だが、その攻撃力じゃ僕のライフは削りきれないよ!」

遊大「今の俺達には、お前を倒せるだけの力がある!バトルだ!!」

その宣言で、輝久は戦慄した。手札に残った1枚のカードにさまざまな憶測が飛び交う。

遊大「『始祖竜ワイアーム』で、『No.22 不乱健』を攻撃!」

輝久はすかさず攻撃宣言を行ったワイアームの効果を確認する。


このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
①:「始祖竜ワイアーム」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。
②:このカードはモンスターゾーンに存在する限り、通常モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されず、このカード以外のモンスターの効果を受けない。


輝久(効果モンスターとの戦闘で破壊されないモンスター!だが、攻撃力はこっちの方が上なんだぞ!何を考えているんだ!
不乱健の効果を使えば自身が守備表示になる!だが、それこそ戦闘破壊される!だったらこれは不乱健の効果の誘発を狙ったハッタリなのか!?)

ワイアームの牙と不乱健の拳がぶつかり合い、凄まじい衝撃が辺りを伝う。

遊大「俺は速攻魔法『Ai打ち』を発動!」

遊大の手札の最後の1枚、渾身の1枚。発動されたそのカードにより、ワイアームの攻撃力はみるみるうちに上昇していく。

輝久「『Ai打ち』!!?」

遊大「速攻魔法『Ai打ち』は、モンスター同士が戦闘を行う時にのみ発動できる速攻魔法!戦闘する自分モンスターの攻撃力を相手のモンスターと同じ値にする!」

輝久「そ、そんなの文字通り相打ちじゃないか!!」

両モンスターは一歩も引かずにぶつかり合う。そしてついに不乱健の拳にヒビが入る。

遊大「このカードを発動しても相打ちにならない状況がある!」

輝久はハッとした。
(効果モンスターとの戦闘でワイアームは破壊されない!!くそっ!)

ワイアームの牙は巨人の腕を完全に粉砕し、崩壊は腕から全身に伝播し、ついにその巨体は完璧に崩れ去った。

輝久「だが、僕のライフはまだ残っている!SAIZOも、王家の神殿も残ってる!今度こそ、、」

遊大「まだだ!『Ai打ち』の効果を適応した戦闘終了時、モンスターが破壊されたプレイヤーは、その攻撃力分のダメージを受ける!!」

ワイアームは紅の眼光で輝久を睨みつけ、天高く飛翔する。その身を翻し、轟音と共に赤い炎を輝久のもとへと放った。

遊大「破壊された不乱健の攻撃力は4500!その分のダメージを受けろ!原初の炎、プライマル・ブレイズ!!」

紅蓮の熱線が輝久の元へと降り注ぐ。輝久は目を閉じ、決闘の終了を告げるデュエルディスクを携えて膝をついた。


輝久
LP:3000→0


Winner:樋本遊大

勝敗は決した。ボロボロの2人は、お互いに目を合わすと立ち上がり、その顔に笑みを浮かべながら歩み寄った。

輝久「わかったよ。これが君が磨いたデュエルなんだな。」

握り拳をつくり、遊大の前へと差し出す。遊大も拳を作り、お互いにコツンと拳を合わせた。

遊大「今回は俺が勝ったけど、次はわかねえなこりゃ。」

輝久「そうだね。僕もこれで強くなれる気がする。才能が全てじゃないってのもまんざら嘘じゃないみたいだからさ。
惜しいけど、今回は僕の負けだよ。」

そう言って輝久はふらついた足取りで1回のホールを後にした。
遊大も背を向け、ホールの出口へと歩み出す。

『よくやったぞおおー!!!』『ゆうだーい!!!』

聞き覚えのある仲間達の声に足が止まる。2階ギャラリーから顔を覗かせる律歌、マシロ、阿原、嬢は遊大よりも嬉しそうに手を振っていた。
足がふわふわする感覚、途中で泥沼の自分を助けてくれた仲間の声、胸が熱くなるのを感じると、出口へ、仲間の元へと駆け出した。



続く
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ランペル
デュアルにエクシーズ、融合…磨き上げた彼のデュエルが遂に才能の塊を打ち破った。そして、敗北した輝久もしっかり相手の実力を認め己の糧とする…。彼が持ち得る才能の中には、たくさんの経験から培われたものもある事が感じられますね。
決め手となったAi打ち…なんとも遊大らしい一枚な気がしますねぇ。彼との勝敗は一勝一敗と、このデュエルでイーブンに持っていけましたね。次がもしあれば、その行く末も気になるところ。

とても熱いデュエルとその描写に思わずコメしてしまいました。引き続き最新話に追い付けるよう読ませていただきます! (2023-08-13 01:44)
コングの施し
ランペルさん閲覧&コメントありがとうございます!本当にモチベに繋がるので嬉しいです!書きたかったことをそのまま汲み取っていただいてるようで本当に書いて良かった;;
戦績がイーブンなことに気づきましたね!ゆったりと更新していくので、2人の行く末も含めてぜひお楽しみに! (2023-08-13 12:20)

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