降り注ぐ涙雨・２　作：ガーベージ・ドーロ

「ティアドロップ・スネークリークの効果を発動！ 手札のティアドロップカード1枚を墓地に送ることで、墓地のティアドロップモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚するわ！ 手札の魔法カード“ティアドロップ・ボルテックス”を墓地へ送り、墓地のティアドロップ・レインを表側守備表示で特殊召喚！」

　これまでのティアドロップモンスターはいずれも上位種を特殊召喚するためにフィールドの下位種のリリースを要求してきた。ティアドロップ・スネークリークのレベルが4であり、先ほどサーチしたティアドロップ・フラッドラゴンのレベルは8。となるとこの後の遊宇の取る行動は自ずと絞られる。

「私はティアドロップ・スネークリークとティアドロップ・レインの2体をリリース！」
（……来るか）
「来て、ティアドロップ・フラッドラゴン！！」

　現れたのは激流のように音を立てて流れる水でできた竜のようなモンスターだった。

ティアドロップ・フラッドラゴン
特殊召喚・効果モンスター（オリジナルカード）
星8/水属性/水族/ATK2400/DEF2400
「ティアドロップ・フラッドラゴン」は1ターンに1体までしか特殊召喚できず、このカードの②③の効果は1ターンに1度までしか発動できない。
自分フィールドに表側表示で存在する「ティアドロップ・スネークリーク」1体を含む水属性モンスター2体をリリースすることでこのカードは手札から特殊召喚できる。
①：このカードは罠カードの効果では破壊されない。
②：このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、墓地に存在する「ティアドロップ」カードを任意の数だけ選択して発動できる。そのカードを全て持ち主のデッキに戻す。このターン、このカードと戦闘を行うその相手モンスターの攻撃力・守備力はこの効果でデッキに戻した「ティアドロップ」カードの数×200ポイントダウンする。
③：このカードが相手によって破壊され、墓地へ送られた場合に発動できる。このカードをデッキに戻し、自分のデッキから「ティアドロップ・レイン」を2体まで選んで特殊召喚する。

「ティアドロップ・フラッドラゴンは罠カードの効果で破壊されない。私は墓地のティアドロップ・クラウドの効果を発動！ 墓地のこのカードを手札に戻し、デッキからティアドロップ・クラウド以外のティアドロップ魔法・罠カード1枚を選んで手札に加えるわ。私は“ティアドロップ・スコール”を手札に加える。そしてカードを1枚セットしてターンエンド！」


遊宇　LP4000　H：1
D：26　F：1（ティアドロップ・フラッドラゴン）M・T：1　G：11　B：0　EX：15
Sunset　LP4000　H：5
D：30　F：0　M・T：0　G：5　B：0　EX：15


（相手のフィールドには攻撃力2400のティアドロップ・フラッドラゴンが1体に伏せカードが1枚。フラッドラゴンの素のステータス自体は大したことはないが……）

　Sunsetはティアドロップ・フラッドラゴンの効果をデュエルディスクを通して確認する。彼の思うようにステータス自体は決して高くないモンスターではあるが、2つ目の効果は墓地のティアドロップカードをデッキに戻すことで相手モンスターの攻撃力を下げるというものであるため、単にステータスで勝るモンスターを出して攻撃すればいいという問題ではないだろう。

「まあいい、ドローしてから考えるか。ドロー」
「っ……随分と余裕なのね」
「あの程度のリーパーから逃げ惑っている相手だ。余裕に思わずなんと思うと言うんだ？」

　そう言ってSunsetは軽く遊宇を馬鹿にしたかのような表情を見せる。もちろん公式大会などで相手デュエリストに対する侮辱行為は場合によって即失格もあり得ることだ。だが、このウェイブレット・ネットワークにはそんなルールなど存在しない。

「俺は魔法カード、トレード・インを発動。レベル8モンスター1体を墓地へ送り、2枚ドローする。俺はレベル8の“永炎眼の転生竜（エタニティアイズ・リヴァース・ドラゴン）”を墓地へ送り、2枚ドロー」
（翔生竜とは違う永炎眼モンスター！？）

「そしてフィールド魔法、永炎眼の聖域を発動」

永炎眼の聖域（エタニティアイズ・サンクチュアリ）
フィールド魔法（オリジナルカード）
「永炎眼の聖域」は1ターンに1度までしか発動できず、「永炎眼の聖域」の効果はそれぞれ1ターンに1度までしか発動できない。
①：このカードの発動時の効果処理として、デッキから「永炎」モンスター1体を選んで手札に加える。
②：このカードがフィールドに存在する限り、自分は「永炎」モンスターの通常召喚を2回まで行うことができる。
③：このカードがフィールドに存在する限り、バトルフェイズの間「永炎」モンスター以外の効果モンスターの効果は無効化され、「永炎」モンスターの戦闘で自分が受けるダメージは半分になる。

「永炎眼の聖域の発動時の効果処理で俺は“永炎の狐火（エタニティ・フォックス）”を手札に加える。そして召喚」

永炎の狐火（エタニティ・フォックス）
効果モンスター（オリジナルカード）
星4/炎属性/アンデット族/ATK1400/DEF1600
「永炎の狐火」の効果はそれぞれ1ターンに1度までしか発動できない。
①：このカードをリリースして発動できる。自分のデッキまたは手札から「永炎の狐火」を2体まで選んで自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功した「永炎の狐火」の攻撃力・守備力は0になり、このターンの終了時にゲームから除外される。
②：このカードが「永炎眼」モンスターのR召喚のためにリリースされた場合に発動できる。このターンの終了時まで自分フィールドに存在する「永炎眼」モンスターの攻撃力・守備力は1000ポイントアップする。

「永炎の狐火の効果を発動。このカードをリリースし、デッキまたは手札から同名カードを2体まで選んで表側守備表示で特殊召喚する。そしてフィールドに同名カード以外の永炎モンスターが存在することで、墓地の永炎の鬼火の効果を発動。自身を墓地から特殊召喚する」

　自身の効果で2体に分裂した（厳密に言うと違うが）永炎の狐火と墓地から蘇った永炎の鬼火で3体の永炎モンスターがSunsetのフィールドに現れた。ゆらめく炎たちは何かを感じ取ったのか、一層その炎を煌めかせる。

「俺はフィールドに存在する永炎の狐火2体と、永炎の鬼火の3体の永炎モンスターをリリース！！」
「えっ！？ 召喚権はもう……」
「永炎の聖域が存在する限り、俺は1ターンに2回まで永炎モンスターを召喚できる。命の炎を糧に冥府より蘇れ！！ リバイブ召喚！！ 永炎眼の転生竜！！」

　墓地から舞い上がった永炎眼の転生竜は翔生竜が竜の骨格のような姿をしていたのに対し、こちらは腕が翼のようになっている神話の生物、ワイバーンの骨格のような姿をしていた。骨丸出しの姿は翔生竜同様やはり禍々しいものではあるが、その禍々しい中にも燃え盛る炎のような力強さを感じられた。

永炎眼の転生竜（エタニティアイズ・リヴァース・ドラゴン）
リバイブ・効果モンスター（オリジナルカード）
星8/炎属性/ドラゴン族/ATK500/DEF1500
「永炎」モンスター×3
このカードはR召喚および「永炎」カードの効果でのみ特殊召喚できる。「永炎眼の転生竜」は1ターンに1度までしかR召喚できず、「永炎眼の転生竜」の①の効果は1ターンに1度までしか発動できない。
①：このカードのR召喚に成功した場合に発動できる。ゲームから除外されているカードを全て持ち主の墓地に戻す。
②：このカードが相手モンスターとの戦闘で破壊され、墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、その相手モンスターと再度戦闘を行う。この効果で特殊召喚に成功したこのカードの攻撃力・守備力は次の相手ターン終了時まで倍になる。
③：このカードが自身の効果で特殊召喚に成功した場合に発動できる。互いの手札・墓地に存在するカードを全て持ち主のデッキに戻す。このカードの攻撃力は次のターンの終了時までこの効果でデッキに戻した互いのカードの数×200ポイントアップする。

「R召喚のためにリリースされた永炎の狐火、永炎の鬼火の効果をそれぞれ発動。チェーン2の鬼火の効果でそのセットカードを破壊する。そしてチェーン1の狐火の効果で転生竜の攻守を1000アップさせる」
「無駄に破壊なんてさせないわ！ 鬼火の効果にチェーンしてリバースカードオープン！ 速攻魔法“ティアドロップ・スコール”を発動！」

ティアドロップ・スコール
速攻魔法（オリジナルカード）
「ティアドロップ・スコール」は1ターンに1度までしか発動できない。
①：自分フィールドに表側表示で存在する「ティアドロップ」モンスター1体を対象として発動できる。自分のデッキから「ティアドロップ」カードを任意の枚数選んで墓地へ送り、選択したモンスターの攻撃力をターン終了時までこの効果で墓地へ送った「ティアドロップ」カードの数×200ポイントアップさせる。

「チェーン3のティアドロップ・スコールの効果で私はデッキからティアドロップカードを16枚墓地へ送る！ そしてティアドロップ・フラッドラゴンの攻撃力は3200ポイントアップするわ！」
「ふん……随分と奮発するんだな」
「あなたの永炎眼は戦闘破壊をトリガーに強くなって蘇るのはわかっているわ！ だからティアドロップ・フラッドラゴンを強化して一気に片を付ける！」

ティアドロップ・フラッドラゴン　ATK2400→ATK5600

「チェーン2の鬼火の効果でそのティアドロップ・スコールを破壊。チェーン1の永炎の狐火の効果で転生竜の攻守は1000ポイントアップする」

永炎眼の転生竜　ATK500/DEF1500→ATK1500/DEF2500

（よし、これでもう自爆特攻はできない！）
「バトル。永炎眼の転生竜でティアドロップ・フラッドラゴンを攻撃！」
「えっ！？ 攻撃力1500のモンスターで攻撃……！？」
「永炎眼の聖域の効果で永炎眼モンスターの戦闘で俺が受けるダメージは半分になる。そして永炎眼の聖域の効果でバトルフェイズの間永炎モンスター以外の効果モンスターの効果は無効になっている」

ティアドロップ・フラッドラゴン　効果無効

「ティアドロップ・スコールで肥やした墓地のカードをフラッドラゴンでデッキに戻して相手のステータスを下げる腹積もりだろうが、そう上手くはいかないということだ」

ティアドロップ・フラッドラゴン　ATK5600　VS　永炎眼の転生竜　ATK1500

Sunset　LP4000→LP1950

「……削り切れなかった」
「相手によって破壊された永炎眼の転生竜の効果を発動。このカードを墓地から特殊召喚する。そして特殊召喚に成功した転生竜の攻守のステータスは倍になる」

永炎眼の転生竜　ATK500/DEF1500→ATK1000/DEF3000

「更に永炎の狐火の効果はこのターンの終了時まで及ぶ。よって蘇生された転生竜の攻守もまた1000アップ」

永炎眼の転生竜　ATK1000/DEF3000→ATK2000/DEF4000

　墓地より舞い戻った転生竜の身体は輝く炎に包まれており、その様はまさに自分の身体を焼いた灰より蘇った不死鳥の如く神々しいものとなっていた。神々しい炎をその身に纏った転生竜はティアドロップ・スコールの効果で身体に水を取り込み巨大化したティアドロップ・フラッドラゴンを天空から見降ろす。

「そして自身の効果で特殊召喚に成功した永炎眼の転生竜の更なる効果を発動！！」
「えっ！？」
「互いの手札・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻し、その数×200永炎眼の転生竜の攻撃力はアップする！」

　Sunsetの手札は5枚で墓地は10枚、対する遊宇の手札は1枚で、墓地はティアドロップ・スコールの効果で28枚に達していた。奇しくも【ティアドロップ】というデッキのデッキと墓地のカードを循環させてデュエルを進めるデッキタイプが永炎眼の転生竜の効果を最大限に発揮させる環境を整えてしまっていたのだ。

「死せる命よ。天へと戻り新たなる目覚めを待て！“永炎なる昇天（エタニティ・アセンション）”！」

　転生竜の放った炎が地の底を焼き尽くす。浄化の炎によって冥府に眠るカードたちが皆生まれ変わりを待つかのように天へと昇っていったのだ。デッキに戻ったカードの総数は44枚。

永炎眼の転生竜　ATK2000→ATK10800

「攻撃力……10800！？ そんな……」
「永炎眼の転生竜にも翔生竜と同じく戦闘強制効果がある。永炎眼の転生竜でティアドロップ・フラッドラゴンを攻撃！！“永炎の不滅波（エタニティ・イモータル・ブラスト）”！！」

永炎眼の転生竜　ATK10800　VS　ティアドロップ・フラッドラゴン　ATK5600

　紅蓮の灼熱波を受けた水の竜は瞬時に蒸発させられる。そして水の守りを失った遊宇に炎はまるで生きているかの如く、荒々しく襲い掛かった。

（いや、いや、いや。私がここまで負けたら―――）


遊宇　LP4000→LP0


（だめ、なのに―――）