永炎なる眼・2　作：ガーベージ・ドーロ

　永炎眼の翔生竜（エタニティアイズ・ライジング・ドラゴン）。黒ずんだ外骨格のような鎧を纏ったドラゴンがまるで黄泉の国から舞い戻った亡者の如くおどろおどろしい咆哮をあげる。

「永炎眼の翔生竜。これが俺のデッキのエースにして、冥界より蘇った竜。俺はこのモンスターを“リバイブ召喚”した」

永炎眼の翔生竜（エタニティアイズ・ライジング・ドラゴン）
リバイブ・効果モンスター（オリジナルカード）
星8/炎属性/ドラゴン族/ATK2000/DEF1500
カード名の異なる「永炎」モンスター×2
「永炎眼の翔生竜」の①の効果は1ターンに1度までしか発動できない。
①：このカードがR召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキ・墓地から「永炎」魔法・罠カード1枚を選んで手札に加える。
②：？？？
③：このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地へ送った場合に発動できる。そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

「リバイブ……召喚？」

　デュエルモンスターズには様々な召喚法が存在する。通常召喚、特殊召喚に加えて存在するのがフィールドのモンスターを生贄に捧げることで上級以上のモンスターを召喚するアドバンス召喚が基本であったが、召喚権を消費せずに強力なモンスターを出す方法も存在する。
　古くからあるものでは融合魔法で2体以上のモンスターを1体のモンスターに合体させる融合召喚、そのモンスターのレベル分のモンスターを生贄に捧げて行う儀式召喚があり、新興の召喚法ではチューナーモンスターとそれ以外のモンスターのレベルを足したモンスターを召喚するシンクロ召喚、同じレベルのモンスター複数体で行うエクシーズ召喚、ペンデュラムモンスター2体の持つペンデュラムスケールの間のレベルのモンスターを特殊召喚できるペンデュラム召喚、一定数のモンスターを素材にEXデッキのモンスターの召喚範囲を広げることのできるリンク召喚。
　これらの召喚法によって召喚できるモンスターのうち、どの種類のモンスターを軸にするかによってデッキの構築も変わるのだ。故にデュエリストはあらゆる召喚法に対する知識が求められるのだ。

「……リバイブ召喚を人前で見せるのは初めてだったか」
「ね、ねえ！ リバイブ召喚って……」
「フィールドに存在する特定のモンスターをリリースし、墓地からそのモンスターを召喚権を使って呼び覚ますもの。それが“リバイブ召喚”だ」

　少年の説明は簡潔かつ短いものだった。しかし、少女はデュエルの素人というわけではない。その簡潔な説明であっても少年の言うリバイブ召喚というものがどんなものかはだいたい掴むことができた。

「永炎眼の翔生竜のリバイブ召喚に必要なモンスターはカード名の異なる永炎モンスター2体。俺は永炎の燈火と永炎の鬼火の2体をリリースすることで永炎眼の翔生竜のリバイブ召喚に成功した」
（なるほど、ということはシステムとしてはアドバンス召喚に近いのかな……）

　召喚権を消費するというところはリバイブ召喚はアドバンス召喚に近く、アドバンス召喚に比べるとリリースに必要なモンスターに条件があるのはデメリットと言わざるを得ない。
　しかし、アドバンス召喚は基本的に手札からしか行えないのに対し、リバイブ召喚は墓地からリバイブモンスターを呼び出すというもの。そのため戦闘破壊や手札コスト、デッキ破壊などで墓地に送られても召喚が行えるというのがリバイブモンスターならではの強みということだろう。

「リバイブ召喚に成功した永炎眼の翔生竜、そしてリバイブ召喚のためにリリースされた燈火と鬼火の効果を発動する。チェーンは燈火、鬼火、翔生竜の順で組ませてもらう」

　効果の詳細が一部不明であった燈火と鬼火であるが、少年の発言から少女のデータベースに永炎モンスターの虫食いの箇所が埋まる。

チェーン3：永炎の燈火
チェーン2：永炎の鬼火
チェーン1：永炎眼の翔生竜

「チェーン3の燈火の効果で俺は2体目の燈火を手札に加え、チェーン2の鬼火の効果でお前のフィールドの青眼の白龍1体を破壊。そしてチェーン1の翔生竜の効果で俺はデッキから魔法カード“永炎なる聖域”を手札に加える。そして……バトルだ！」
「えっ！？」

　少年はサーチした魔法カードを発動することなくメインフェイズ1を終了し、バトルフェイズに移行する。基本的に速攻魔法を除いた魔法カードはバトルフェイズ中に発動することはできない。

「待ってよ！ あなたの永炎眼の翔生竜の攻撃力は2000！ 青眼の白龍の3000には遠く及ばないわ！」
「……煩い。黙って見ていろ。永炎眼の翔生竜で青眼の白龍を攻撃！ “永炎の火弾（エタニティ・ブレイズ）”！」

永炎眼の翔生竜　ATK2000　VS　青眼の白龍　ATK3000

　デュエルモンスターズにおけるモンスター同士の戦闘で最も重要なステータスは攻撃力である。攻撃表示のモンスター同士が戦闘を行う場合、生き残るのはより攻撃力の高いモンスターである。

「……」

　攻撃力2000の永炎眼の翔生竜の攻撃は攻撃力3000の青眼の白龍に打ち消され、反対に青眼の白龍の攻撃が永炎眼の翔生竜を返り討ちにした。迸る光に飲み込まれた永炎眼の翔生竜は為す術もなく消えていった。

少年　LP4000→LP3000

「ああ、せっかくのモンスターが……」
「……確かに力では及ばなかった。だが、俺の……俺たちの炎は消えない。戦闘で破壊された永炎眼の翔生竜の効果を発動！！ 墓地より再び舞い戻れ！ 永炎眼の翔生竜！！」

　破壊され、浄土に還った永炎眼の翔生竜が自身の効果で舞い戻る。舞い戻った翔生竜の身体は真紅の炎で覆われており、その瞳の中には輝く炎が煌めいていた。

「永炎眼の翔生竜は死を経て、力を得て蘇る。リバイブ召喚された永炎眼の翔生竜は戦闘で破壊された場合、墓地から特殊召喚できる。そしてこのカードを戦闘で破壊したモンスターと強制的に戦闘を行う。更にこの効果で蘇った永炎眼の翔生竜の攻撃力・守備力は次の相手ターンの終了時まで倍になる！」


永炎眼の翔生竜（エタニティアイズ・ライジング・ドラゴン）
リバイブ・効果モンスター（オリジナルカード）
星8/炎属性/ドラゴン族/ATK2000/DEF1500
カード名の異なる「永炎」モンスター×2
「永炎眼の翔生竜」の①の効果は1ターンに1度までしか発動できない。
①：このカードがR召喚に成功した場合に発動できる。自分のデッキ・墓地から「永炎」魔法・罠カード1枚を選んで手札に加える。
②：このカードが戦闘で破壊され、墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、このカードを戦闘破壊した相手モンスターともう一度戦闘を行う。この効果で特殊召喚に成功したこのカードの攻撃力・守備力は次の相手ターンの終了時まで倍になる。
③：このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地へ送った場合に発動できる。そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。


永炎眼の翔生竜　ATK2000/DEF1500　→　ATK4000/DEF3000

「攻撃力4000！？」
「バトルだ！ 永炎眼の翔生竜で青眼の白龍を攻撃！ “永炎の翔火弾（エタニティ・ライジング・ブレイズ）”！！」

永炎眼の翔生竜　ATK4000　VS　青眼の白龍　ATK3000

リーパー　LP4000→LP3000

　蘇った翔生竜の放った炎が青眼の白龍を焼き尽くす。断末魔の叫びをあげながら消えていく青眼の白龍の彷徨える魂が力となって収束していく。

「永炎眼の翔生竜に戦闘破壊された青眼の白龍の力がそのままお前に向かう。浄化の炎よ、報われぬ魂に救いを！！」

リーパー　LP3000→LP0

　青眼の力をそのまま浴びたリーパーのライフが瞬く間に尽きていく。そしてライフの尽きたリーパーは声にならない叫びをあげながら消えていった。少年はそんなリーパーの末路を見届けることなく、背を向けるのであった。