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HOME > 遊戯王SS一覧 > ⑦:自分はカードをドローできない。

⑦:自分はカードをドローできない。 作:szmt

『黒理の連中の目的は正直わからん。俺たちみたいな島の住民を襲撃しているのはそうだが、かといって俺たちを全員殺す、なんて物騒な考えをしている訳でもなさそうだからな。ともかく、今日は見回りに行ってくれ。十分気を付けてな。』

 そんな心配性なカイの言葉を思い出しながら、リュックを揺らしながら街を歩く。元は島の学園だというが、地図を見る限り広すぎてとても1日で全て回り切れる気がしない。……ここは比較的被害は少なさそうだ、と形を保ったままの街を歩く。当たり前だが、人の気配は殆どない。カイ曰く、被害が一般人に行かないようにレジスタンスのアジトと難民キャンプは離しているらしい。キャンプの場所は変えているらしいが、積極的な襲撃はないという。本当に黒理は何がしたいのかがわからない。ユミが心配だ。

 そんなことを考えながら歩いていると、カン高い声が聞こえてきた。
「む~~!誰か助けてくれませんか~~~!?」

 デュエルディスクを構え、声の方へ走る。この辺りに人はいないといったが、例外もいるようだ。
 少し開けたところに出る。袋小路になっていて、追い詰められたらしき少女が黒い服の二人組に追い詰められていた。

「大丈夫か!」

「助けてください!私、ちょうどディスクを持ってきてなくて……」

声を上げると、少女から返事が。二人組もこちらを見て、舌打ちをしてくる。

「邪魔をするな。俺たちの目的はそこのガキだ。」
「大人しくしていれば、貴様に危害は加えない。」

怯える少女の姿が、妹と重なる。……助けなければ!
「少女!こっちだ!」と声を上げて、空の……予備のデュエルディスクを放り投げる。
「おっとと……」と受け取った少女が、ありがとう!と言って持っていたらしきデッキを差し込む。カイの心配性が……壊れた時用の予備ディスクが、さっそく役に立ったようだ。

「チッ……面倒な。ガキ1匹を捕らえるだけの任務が、面倒なのが増えやがった……」
「ベル、どちらにせよ予定通りだ。2vs1が2vs2に増えただけ……むしろ、正々堂々とうちのめすことが出来る。そうだろう?」
「これだから騎士道野郎は……まあいいラン。構えろ。二人纏めてぶっ潰してやる。」
そう言って、ディスクを構えてくる二人組。
「ずいぶん安っぽい挑発だな。大丈夫か?」
「ええ……私だって、戦えますよ!」
「ならやろうか。こちらこそ、二人纏めてぶっ潰してやる。」


「「「「デュエル!」」」」

ベルLP4000&ランLP4000

VS

ユウシLP4000&少女LP4000


「先攻は私からだな。ふむ、モンスターを1体セット。1枚伏せてターンエンドだ。」
さっそく、二人組の片方……先ほどランと呼ばれていた方がカードをディスクに置く。大分消極的な戦法だ……

そして一枚が伏せられ、ターンが終了。次のターンはどうやら自分らしい。不気味すぎるモンスターだが、やるのはいつも通りのデュエルだ。
「俺のターン、ドロー。復囚のキンを召喚し、そのままそのモンスターに攻撃する。」

まずは牽制。トラップが攻撃反応であっても、復囚モンスターは後続を呼び寄せる。むしろ加速剤となるから、迎撃されるつもりで行っても構わない。

「……何もない。いいよ、破壊される。」
「何……?」

「それじゃあトラップ発動。永続罠”プラント・フルール・ルーツ”……破壊されたフルール・ルーツ クリソミリアを、私のデッキの一番上に戻そう。……それだけだ。」

淡々と処理を行う女性……ラン。非常に不気味、としか言いようがない。

しかし、困ったことになった。何らかの反撃策をもってあんなことをしたのかと思ったが、どうやら何もないらしい。おかげで目算が少しずれた。くそう。

「それじゃあ、俺は2枚伏せてターンエンドだ。」

「ふん、ランめ。適当なデュエルしやがって……俺のターン、ドロー!」


TURN 3 PLAYER:ベル

「俺は手札からテラ・フォーミングを発動、スペクトラーズ・レイクを手札に加えそのまま発動だ。」

一気に霧が立ち込める。気のせいでなく、気温が下がったように肌が感じる。

「それじゃあスペクトラーズ・レイクの効果。手札からスペクトラーモンスターを1枚捨てる。俺は……レベル7のスペクトラー・レヴナントを捨て、そのレベル分、アンタのデッキのカードを墓地に送る。おら、そっちの男。7枚送れ。」

「チッ……デッキ破壊カードか。」

「ふん。これで墓地に送られたモンスターは……3体か。ちょうどいい。スペクトラー・レイスを召喚し、効果を発動。デッキの上から、お前の墓地のモンスターの数までカードを見て1枚手札に加える。それじゃあ、スペクトラー・プリズムを手札に加えてそのまま発動。スペクトラー・レイスを墓地に送り、そいつのレベル分墓地に送る。レイスのレベルは3。もう3枚カードを墓地に送れ。」

「クソ……」
残りのデッキは25枚。かなりの速度でデッキを削っている……!

「それじゃあ1枚セットしてターンエンド。ほらよ、ガキのターンだ。」

TURN 4 PLAYER:少女

「私のターン……ドロー!お兄さんありがとう、ディスクがなかったら何もできなかったから……私も十分戦えるんですよ?私は、リリストーム・ナイトを発動!」


霧を晴らすような突風が吹く。次の瞬間、少女が言ったその効果を聞いて、自分は耳を疑った。



「私は、デッキのカードを全て墓地に送る!」



NEXT 》⑧:デッキが0枚の場合にのみ発動できる。


――あとがき

新登場のカテゴリー
「フルール・ルーツ」、「スペクトラー」、そして「リリストーム」。あとがきを書きながら思いましたが、今回出てきたスペクトラーモンスターの名前、二つともapexのキャラと一緒ですね。一切元ネタじゃないですし、ちゃんと別の命名法則基準です。ホライゾンとかは出てきませんよ。念のため。
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52 ④:相手はカードの種類を宣言する。 465 2 2020-11-25 -
45 ⑤:お互いにカードを確認する。 416 2 2020-12-14 -
43 ⑥:確認したカードを魔法として扱う。 399 2 2021-03-15 -
50 ⑦:自分はカードをドローできない。 473 0 2021-04-22 -

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