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遊戯王 ーDuelーDualーAriseー/8話 タッグデュエル-その0- 作:コングの施し

いつもと何ら変わらない昼休み、普段1人で昼食をとる遊大は龍平と嬢を引っ張ってきて食堂に集めた。

「…デュエル部?」

椅子に腰掛け、片手でいちごミルクを飲んでる龍平は、もう片手に持っていた本から目を離すことなく、遊大の言葉を聞き返す。

「…ああ。去年まで非公式だった部活だけど、今年から公式に部として認められるようになったんだ。」

「ヘェ〜。私も入ってみよかなモグモグ。」

嬢は弁当箱を片手に、遊大の前の席から身を乗り出している。

「アレっ、でも嬢、大会には出ないんじゃなかったか?」

「ングング、いや、ほかのメンバーさんがいるなら、私も出てもいいかなあ〜って、デュエルはそんなに経験ないけどね。」

その言葉を聞いて、遊大は目をキラキラさせた。

「ほんとか!?
よぉーし!メンバー1人けってぇーい!
ってわけで龍平、お前も」

そう言いかけたとき、龍平が本から目を離して遊大の方を冷たく見つめていることに気づいた。

「…俺は入らない。」

「え…、」

「そもそもデュエルは好きじゃないって、前にも言ったじゃないか。」

龍平はまた机の上の方を開き、目を向けた。
なんだかバツが悪くなった遊大は、少し俯いた。

「そ、そうか。ごめんな。」

また龍平は本から目を離すことなく返した。

「いいよ別に。大会に出るのは事実だしな。」

「あ、ああ。ありがとう。
でも、もし大会で」

「わかってるよ。『俺と戦ってくれ。』だろ。」

そう言って龍平は本を片手に席を立ち、食堂から去っていった。

その様子を見つめていた2人は目を合わせ、肩を竦めてため息を吐いた。

「まァ嬢、放課後になったら旧部室棟のデュエル部の部室に来てくれな。
俺は次の時間LLだから、これで。」

1人残った嬢は、ご飯を摘みながらデュエル部についてとりとめもなく考えていた。

自分のデュエルの経験が特殊だということ、そして自分の実力をどのようにかざせば良いのかということ、限られた人間としか戦うことのなかった彼女には、さほど大きくはないが、そういった不安があった。













空が少しずつ緋色に染まり始めたころ、遊大は部室に足を進めた。

ただ、龍平を勧誘できなかったことが気にかかるようで、ため息を漏らしながらドアを開けた。

誰も中にはいないと思っていた遊大は、そこに座っていた律歌の姿に少し驚いた。

「や。」

「あ…、こんにちは、です。」

律歌はパーカーを深く被っていて、遊大のほうへ一瞬顔を見せると、手に持ったデッキのほうにまた目を向けた。

「座りなよ。」

そう言って、足で向かいのパイプ椅子を軽く押した。

「えっと、じゃあ、失礼します。」

遊大はやはり緊張しているようで、普段大きな声も、つぶやくにも満たないほど小さくなっていた。

デッキのカードを1枚、また1枚とめくりながら、律歌は遊大にたずねた。

「遊大くん、いや後輩だもん遊大でいいよね。
遊大はさ、どうしてデュエルを始めたの?」

なんだかその話し方に覚えがあるような気がして、遊大は返答そっちのけでぼんやりとしている。
数秒、視線を感じて遊大はハッとした。

「あっ!
デュエルのきっかけ、きっかけですよね…あれ?」

我に帰って理由について考え始めたが、改めてみると、遊大はどうしてデュエルを始めたのかわからなかった。

最近始めたばかりのような気もするし、昔からやっていた気もする。
そもそも最近になって興味を持ったとしても、なにか事前のきっかけのような物もあった気がしていた。

そこの部分、きっと過去にあった動悸の部分がすっぽりと抜け落ちているように感じた。

「きっかけ…、すんません。
なんかあったと思うんですけど、ド忘れしちゃったかな…。」

「…そっか。」

「あっでも、デュエルは本当に好きです。だから、先生が勧めてくれた、このデュエル部にも入ったんですし。
じゃあ先輩、律歌先輩はどうしてデュエルを始めたんですか?」

律歌はカードを机に置いて、頬杖をついた。

「…私はね。」

言いかけたとき、「うぃーっす」という声と同時に阿原が部室のドアを開けた。

「あっ阿原さん、おつかれさまっす」

「…2人ともはえーな。」

1人入室すれば次、また次とメンバーが入ってきた。

入口で立ち往生する阿原を押しのけるように、顧問のましろが突っ込んでくる。

「やあお前ら。
新入部員連れてきたぞ。」

肩をぽんっと押して、新入部員を部室に入れた。

「1年の龍剛院 嬢です。よろしくお願いいたします!」

遊大のクラスメイトの嬢は少し恥ずかしそうにお辞儀をした。

「嬢!
よかった!来てくれたか!」

昼休みのときみたいに遊大は目をキラキラさせた。
あまり表情をみせない律歌もどこか嬉しそうにしているようだった。

「ここは女子が私しかいなかったからね。私は2年の花海 律歌。よろしく、嬢ちゃん。」

「はいっ!よろしくお願いします!」

各々挨拶を済ませて、パイプ椅子に腰掛けると、ましろがぽんと手を叩いた。

「はいっ、じゃあ今からミーティングなんだけど、まずさ、デュエル部って何してたの?」

阿原は呆れたようにましろの方へ返す。

「部だからな、一応。
デッキ構築とか部員同士で手合わせとかだ。」

「はァ?なんだそれ。
よくそれで1年持ったなぁ。よし!今年からは他校との練習試合も入れよう!」

「へぇー練習試合か。
いいんじゃないですか?私は賛成ですよ。」

遊大はテンションが上がりっぱなしで手を高くあげて言った。

「俺も賛成です!」

「じゃ、じゃあ私も…。」

「う…まあ経験は必要だしな。異論はないぜ。」

ましろはホワイトボードに書き出した。

「じゃあ決定な〜。
と、でもいきなりはできなので、今日はこうしよう!」

『練習試合』、その後に書いた文字の筆圧が明らかに強くなっている。

『タッグデュエル!』

「…タッグデュエル?
でもお互いのデッキとか、わからないんじゃ…」

嬢は少し不安そうに言った。

ましろは得意げに返す。

「わからないからやるんだよ。
タッグデュエルで、自分のメンバーのデッキに目を通して、高め合うきっかけにしようと、そういう狙いよ。」

何かとデュエルの話となると熱くなって突拍子もないことを言い出すましろだが、今回のことは的を得ていると遊大は思った。

「おぉ!
俺は賛成です!」

阿原と律歌は何も言わなかったが、お互いに目を合わせて、「なんだかめんどくさそうな人だな。」と苦笑いをしていた。









旧部室棟の屋上は、横長の長方形で、ちょうどデュエルをするために先代のデュエル部員達が白線でフィールドを区切ったデュエルスペースになっている。

4人は夕日の照らす屋上に立ち、デュエルディスクを構えた。

ましろはパイプ椅子をもちこんで、コーヒーとメガホンを手に、監督気分を満喫している。

「ペアは2年vs1年でいいだろー!?
阿原は遊大に負けてるんだしー!」

阿原の肩がビクッと動く。

「ぐっ…うっせえっすよ!」

「え、なに…
阿原、遊大に負けたの?」

「…。」

対する遊大と嬢のペアは、真剣な面持ちで作戦会議をしていた。

「よーし各々準備はできたなー?
デュエル開始ー!」


その合図と共に全員同じ言葉を叫ぶ。

『デュエル!』
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