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遊戯王WW(ワンダーワールド)/69話 正反対の2人 作:名無しのゴーレム









影 LP7000 手札4 モンスターゾーン 影忍・無風(裏側守備表示)、上影忍・鬼火(裏側守表示)
スクアーロ LP3000 手札1 モンスターゾーン 潜咬忍者「箕作」、潜咬忍者「鋸」 魔法・罠ゾーン 潜咬忍法 追狙の印、伏せカード1枚



「私のターン、ドロー」



ライフと手札で見れば圧倒的にこちらの不利だが、勝ち筋が全くないわけではない。裏守備表示を多用する影に対して、毎ターンセットカードを破壊する鋸の効果は絶大だ。このまま持久戦にさえ持ち込めば……



「メインフェイズに入る前に、鋸の効果発動! 自身を除外して、裏守備表示モンスター1体を破壊する!」
「……メインフェイズに入るわ。フィールド魔法『影忍黙暗城』発動。このカードがフィールドに存在する限り、下にカードが重ねられている裏側守備表示モンスターは攻撃・効果の対象にならない」



さっそく、鋸の除去が封じてきやがった……!!



「『影忍・黒薔薇』を召喚。黒薔薇の効果発動。裏側守備表示モンスターの下に重ねられているカードを墓地に送り、デッキから『影忍・斬水』を特殊召喚!」
「今度は、レベル4が2体……!?」
「レベル4の黒薔薇と斬水でオーバーレイ! エクシーズ召喚、『影忍の肆・号令忍者』! このカードは自分フィールドに裏側守備表示モンスターが存在する限り、攻撃・効果の対象にならないわ。号令忍者の効果発動! 自身のオーバーレイユニットを1つ取り除き、手札・墓地から影忍モンスターを可能な限り特殊召喚するわ。蘇れ、鬼火・轟・驟雨!」



上級モンスター3体が、一斉に……せっかく破壊したのが台無しじゃねえか!



「この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、ターンの終了時にデッキへ戻るけれど……3体の効果発動! それぞれのモンスターに、デッキの上のカードを重ねて裏側守備表示に変更する」
「これで全てのデメリットを踏み倒すってか……ケチ臭い真似をしやがる」
「勝手に言ってなさい。通常魔法『太陽の書』発動。裏側守備表示の轟を表側攻撃表示に変更。轟の効果発動。このカードの下に重ねられたカードをリリースして、相手の魔法・罠カードを2枚まで破壊する。私が選ぶのはもちろん、追狙の印と伏せカード!」



展開の要となる、追狙の印が……!!



「……チッ、リバースカードオープン! 箕作をリリースして、通常罠『フィッシャーチャージ』発動! 轟を破壊してカードを1枚ドロー、さらにこのタイミングで追狙の印の効果発動! デッキから『潜咬忍者「白鰐」』を特殊召喚!」
「被害を最小限に抑えた訳ね……なら。手札の『上影忍・神風』の効果発動! 裏側守備表示の驟雨に重ねられているカードを手札に加え、自身を特殊召喚。神風の効果発動、デッキの一番上のカードを自身に重ねる」



手札補給をしながら最上級モンスターを出しやがった……全く、無茶苦茶しやがる。



「バトル。神風で白鰐を攻撃!」
「チィッ……」



本当なら攻撃を無効化できる猫を持ってきたかったが、鼬の効果で墓地に送られてしまったようだ。これ以上ライフを削られるのはキツいし、ここは破壊させるしかない……



「バトル終了。そのままターンエンド」
「このタイミングで、鋸をフィールドに戻す。鋸の効果で手札を1枚捨てて1枚ドローだ」



影 LP7000 手札2 モンスターゾーン 影忍・無風(裏側守備表示)、影忍の肆・号令忍者(表側守備表示)、上影忍・驟雨(裏側守備表示)、 上影忍・鬼火(裏側守備表示)、上影忍・神風 フィールド魔法 影忍黙暗城
スクアーロ LP3000 手札2 モンスターゾーン 潜咬忍者「鋸」



「俺のターン、ドロー!」



ポンポンモンスターを並べてくるあちらと違って、こちらは展開力がさほど高くない。何とかして、こちらのペースに持っていかないと……



「……バトル。鋸で裏側守備表示の無風を攻撃!」
「…………」



黙暗城の効果で守られているのは下にカードが重ねられているモンスターのみ。数を減らさないことには、俺に逆転のチャンスはない。



「バトル終了。通常魔法『潜咬忍法 隠実凶原』発動。デッキの『潜咬忍者ノ姫「神楽」』を除外して、デッキから潜咬忍法を手札に加える。さらに今手札に加えた速攻魔法『潜咬忍者 疾汰連携』発動。フィールドの白鰐をエンドフェイズまで除外して、除外されている神楽を特殊召喚。神楽の効果発動。自身を除外してデッキから『潜咬忍者「達磨」』を特殊召喚。さらに『潜咬忍者「葦切」』を召喚」
「色々やって下級モンスターを並べて……それで私に勝てるとでも?」
「うるせぇよ。ターンエンド、そして除外されている鋸と神楽をフィールドに戻す。神楽の効果でデッキから潜咬と名のつく魔法・罠カード1枚を手札に加える」



影 LP7000 手札2 モンスターゾーン 影忍の肆・号令忍者(表側守備表示)、上影忍・驟雨(裏側守備表示)、 上影忍・鬼火(裏側守備表示)、上影忍・神風 フィールド魔法 影忍黙暗城
スクアーロ LP3000 手札2 モンスターゾーン 潜咬忍者「鋸」、潜咬忍者ノ姫「神楽」(表側守備表示)、潜咬忍者「達磨」(表側守備表示)、潜咬忍者「葦切」



「私のターン、ドロー」
「このタイミングで、神楽の効果発動! 自身を除外して、デッキから『潜咬忍者 橦木』を特殊召喚! さらに橦木の効果発動! 自身をエンドフェイズまで除外し、相手の魔法・罠カード1枚を破壊する。黙暗城を破壊だ!」



これで裏側守備表示モンスターを守る盾はなくなった。



「続けて鋸の効果発動! エンドフェイズまで自身を除外し、お前の裏側守備表示モンスターを破壊する!」
「本当、こちらのターンでよく動くものね……メインフェイズに入るわ。神風の効果発動、デッキの一番上のカードを自身の下に重ねる。号令忍者の効果発動! オーバーレイユニットを1つ取り除き、墓地の驟雨と轟を特殊召喚! 驟雨と轟の効果発動、デッキの上のカードをそれぞれに重ねて裏側守備表示に変更」



破壊したモンスターがすぐに戻ってきた……しかし、このターンの動きを封じられれば十分だ。



「鬼火を反転召喚。バトル、鬼火で葦切を攻撃!」



あのモンスターはモンスターとの戦闘時に自身の攻撃力を倍にする効果がある。ここは……



「葦切の効果発動!エンドフェイズまで自身を除外して、鬼火の攻撃力を600ダウンする!」


上影忍・鬼火 攻撃力2500→1900


「……攻撃対象変更。鬼火で達磨を攻撃!」
「まっ、さすがにそれは通すぜ」
「これであなたのフィールドにモンスターはいなくなった。神風でダイレクトアタック!」


スクアーロ LP3000→400


「くっ、追い詰められたか……!!」
「圧倒的すぎて話にならないわね。あなた、こんなに弱かったの?」
「はっ、言ってろ」
「……バトル終了、そのままターンエンド」
「除外されていた鋸、橦木、葦切の3体をフィールドに戻すぜ」



影 LP7000 手札3 モンスターゾーン 影忍の肆・号令忍者(表側守備表示)、上影忍・驟雨(裏側守備表示)、 上影忍・轟(裏側守備表示、上影忍・鬼火、上影忍・神風
スクアーロ LP400 手札2 モンスターゾーン 潜咬忍者「鋸」、潜咬忍者「橦木」、潜咬忍者「葦切」



「俺のターン、ドロー」



…………さて、ここが正念場だ。相手フィールドにはモンスターが5体。言うまでもなく窮地だ……しかし、まだ負けてない。ギリギリの活路を、見いだしてやる……!!



「……墓地の『潜咬忍法 集散自在』の効果発動。このカードを除外して、墓地の潜咬忍者を特殊召喚する。蘇れ、『潜咬忍者祖 冥奴』! さらにフィールドの鋸・橦木・葦切を除外することで、融合召喚を行う。仄暗い影より現れろ、抉り裂く刃持つ偉大なる忍! 融合召喚、『潜咬忍者祖「縁弧」』!!」
「一気に融合モンスターを2体……それでも、私のフィールドを崩すには力不足よ」
「そんなことは承知の上だっての! 手札から通常魔法『潜咬忍法 転骸輪生』発動! 墓地の潜咬忍者5体をデッキに戻し、それらのモンスターと同名のモンスター1体をデッキから特殊召喚する。来い、達磨! 続けて『潜咬忍者「尾長」』を召喚! そして……フィールドの縁弧・達磨・尾長の3体を除外!」
「融合モンスターを、さらに融合素材に……!?」
「お前が見るのは初めてだったか? なら覚えておきな……これこそが、俺の本当の切り札だ!!」



『忍の戦いに派手な切り札は必要ない』……それが俺の流儀。だが、忍である以上どうしたって退けないこともある。どんな死地だろうと生き残るだけの力を、『あいつ』が消えてからずっと磨き続けてきた。まさか、こんなところで披露することになるとはな……!!



「仄暗い影より現れろ、全てを喰らい終焉へ導く忍! 融合召喚、『潜咬忍者祖「命牙弄」』!!」
「攻撃力、3200……!!」
「さらに装備魔法『潜咬忍具 天狗爪』を命牙弄に装備。バトルだ! 命牙弄で裏側守備表示の轟を攻撃!」
「守備表示の轟は、1度だけ戦闘で破壊されない……あなたも知っているはずなのに、何故……?」
「命牙弄は全てのモンスターに1度ずつ攻撃できる! 命牙弄で裏側守備表示の驟雨を攻撃!」
「驟雨も同様に、戦闘で破壊されない!」
「これで裏側守備表示のモンスターはいなくなった……命牙弄で号令忍者を攻撃!」
「号令忍者は破壊される……まさか、これが狙いだとでも?」
「いや、まだだ。命牙弄の効果発動。戦闘で相手モンスターを破壊したとき、自身の攻撃力を400アップする!」


潜咬忍者祖「命牙弄」 攻撃力3200→3600


「命牙弄で鬼火を攻撃!」


影 LP7000→5300


「命牙弄の効果発動、攻撃力を400アップ! さらに天狗爪の効果発動! 装備モンスターが相手に戦闘ダメージを与えたとき、相手の手札を1枚捨てる!」


潜咬忍者祖「命牙弄」 攻撃力3600→4000


「命牙弄で神風を攻撃!」


影 LP5300→3900


「神風は戦闘・効果で破壊される代わりに自身の下に重ねられているカードを手札に加えることができる」
「っ、天狗爪の効果発動! 装備モンスターが相手に戦闘ダメージを与えたとき、相手の手札を1枚捨てる!」



破壊を防ぎながら手札を増やす神風の効果は厄介だ。だが、このまま削れるだけ削り取ってやる。



「冥奴で驟雨を攻撃! 」
「驟雨が戦闘を防げるのは1ターンに1度だけ……2度目は破壊される」
「バトル終了、そして冥奴の効果発動! エンドフェイズまで自身を除外して、相手フィールドの攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する! 轟を破壊だ!」



手札も減らし、あいつのフィールドに残るのは神風のみ。攻撃力4000の命牙弄と自由自在に逃げ回りつつモンスターを破壊する冥奴……この布陣はそうそう破られない。返しのターンで、トドメをさしてやる……!!



「俺はこれでターンエンドだ! 冥奴の効果発動! 自身をフィールドに戻し、カードを1枚ドローする」



影 LP3900 手札2 モンスターゾーン 上影忍・神風
スクアーロ LP400 手札1 モンスターゾーン 潜咬忍者祖「命牙弄」、潜咬忍者祖「冥奴」



「私のターン、ドロー。…………」



ドローしたカードを見つめたまま、動きを見せない影。一体、何を引いた……?



「……そろそろ、このデュエルも決着ね」
「だろうな。だが……勝つのは俺だ!」
「……残念だけど、そうはいかないわ。永続魔法『影忍法・影縫いの術』発動! 自分フィールドの神風を表側守備表示に変更し、あなたの冥奴を裏側守備表示にする!」
「!?」



この効果に対して冥奴の効果を使っても、神風は破壊できずに相手の手札を増やすだけ。かといって効果を使わなければ、冥奴は無力化される……どっちだ、どっちを選ぶ!?



「どうするの? 冥奴の効果を使うなら今のうちよ」
「…………いや。冥奴の効果は……使わない」



ここで冥奴を逃がせば、俺のフィールドには命牙弄のみとなる。あと2枚の手札で命牙弄を突破されたら俺の負け……それなら、冥奴を無力化されてでも壁となるモンスターを2体残した方が負けの目が少なくなる。ここは、何としてでも次のターンへ……!!



「そう。なら……通常魔法『死者蘇生』発動! 墓地の鬼火を特殊召喚。そして『影忍・風華』を召喚。風華の効果発動。このカードのレベルを鬼火と同じ7に変更する」


影忍・風華 レベル1→7


「レベル7の鬼火と風華でオーバーレイ! 戦場を駆けよ、敵の背を刺す幻の影! エクシーズ召喚、『幻影忍・源蔵』!!」
「ここでエクシーズ召喚かよ……!?」
「源蔵の効果……自身のオーバーレイユニットを全て取り除くことで、1枚につき1200のダメージを相手に与える。つまり2400のダメージね」
「…………!!」



源蔵の効果を止める手段はない……ここまでか。



「さあ、言うべき言葉があるでしょう?」
「…………分かったよ。俺の負けだ、降参する」
「……何してるの、早く拘束を!」
「は、はいっ!」



降参宣言から間もなく、取り囲んでいた数人の忍たちにより縄で両手を縛られる。さすがに同業者、ちょっとやそっとの小細工じゃ解くのは無理そうだ。



「ご苦労様。尋問は私がするから、あなたたちは警備に回った班に合流して」
「ひ、1人で大丈夫ですか……?」
「ここまでして逃げられるはずがないでしょ。それに、同期の私相手だからこそ話せることもあるでしょ。それより、邪魔が入らないよう境目の警備をお願いね」
「……了解!」



影の命令を受け、取り巻きたちは散開する。これで、この場には俺と影の2人だけ……



「じゃ、牢獄まで行きましょうか」
「はぁ!? なんで!?」
「なんでって……あなたは里に損害を与えた罪人だから牢獄に入ってもらうんだけど。何かおかしいことでも?」
「いや、え……」



手筈通りなら、ここで拘束を解かれて作戦終了まで里内で潜伏する予定だったはず。影の奴、何を考えている……?



「あのー、影? 監視の目もなくなったことだし、まずはこの拘束をもうちょっと緩めたりは……」
「は? なんで私がそんなことしなきゃいけないの?」
「……ま、まさかお前……!!」



こいつ、本当に俺を牢獄に閉じ込めるつもりか!? だとしたら……マズイって話じゃねぇ、最悪俺だけが処刑される!!



「く、クソっ……!!」
「あら、ようやく自分の立場が分かった? まあ、あなたに出来ることは何もないんだけど。ほら、さっさと歩いた歩いた」



影に引きずられる形で、無理やり牢獄の方へ歩かされる……やっぱり、こいつは本気だ。



「でも、まあ……私からの提案を受けてくれるなら、見逃してあげてもいいかな」
「提案、だと?」
「そう。実は、こっちへ戻ってきたのもそれが理由だったんだけど……」



つまり、こいつは俺が首を縦に振らざるを得ない状況を作るために作戦を練っていたってことか。それにまんまと嵌められるとは……俺も落ちたものだ。



「……あんたも知っての通り、今の世界情勢はかなり不安定よ。それこそ、時代が変わるような大変革すら起こりかねないほどの」
「それがなんだってんだ。時代なんざ、これまでに何回も変わってきてるだろ」
「私の主様……ひいてはその上司にあたる商会は、その大変革を恐れている。正確に言えば、ようやく世界中に張り巡らせた商会のネットワークが破壊されることを、ね。だから私たちは変革の主導者であるマキナに関する情報を集め続けてきた……もちろん、あなたが彼女の依頼を受けたことも把握済みよ」
「……だからどうした。俺に二重スパイでもしろと? 悪いが、あいつとの契約はとっくの昔に切れてるし、再契約の予定もない。自分から売り込みに行っても怪しまれるだけだと思うがな」
「別に、そんなことは望んでないわよ。ただ、自分で蒔いた種は自分で回収して欲しいってだけ」
「ハッ、正義の味方気取りかよ」



マキナの狙いを全部知っていた訳じゃないが、何をしようとしてるのかくらいは薄々感づいていた。だが、そんなこと俺には関係ない。もう一度世界が戦乱の渦に呑まれようと、俺は俺の……忍としての生き方を続けるだけだ。



「そもそも、商会があいつを止めようとしてるのもおかしな話だ。時代が動けば物も動く、物が動けば金も動く。むしろ裏で手を貸してそうなもんだが」
「まあ、その辺りはあなたの想像通りよ。商会は平和を望んでなんかいない。あくまで決定的な破滅だけは避けたいというだけ……でも、主様の願いは違う」
「……ふぅん」



そりゃあ、商人の中にも甘ちゃんの1人くらいは居るだろう……そいつの願いを叶えるために、俺を利用しようってか。



「忍が必要な仕事ならお前がやればいいだろ」
「……私じゃ駄目だから、あなたに言ってるの。命がいくつあっても足りないような激戦になるだろうから、頼める相手は限られる。その点、あなたなら適任ってわけ」
「俺なら死んでもいいってことかよ……」
「それで、どうするの? 私からの依頼を受けて牢獄行きを免れるか、断って処刑を待つ身になるか。牢獄に着くまでには答えを出しなさい」
「そうだな……」






いくら気に入らない提案だからといって、自分から命を捨てるような真似をする馬鹿になるつもりもない。だから、ここは……






「…………ここから逃げ切って、お前に恥をかかせることにするか」
「はぁ、何を言って……あんた、いつの間に縄を!?」
「気付くのが遅いっての。お前が悠長におしゃべりしてる間に、拘束は解かせてもらったぜ」



里で学ぶ拘束術は確かに脱出困難だが、仕組みを知っていればその穴も分かる。とはいえどうしても時間がかかるから、ここまで追い詰められたわけだが……



「さあ、どうする? 今から応援を呼んでも遅いし、警備の隙を突いて里の外へ出るのも容易くなる。取引をするために2人っきりになったのが裏目に出たなぁ?」
「くっ……!!」
「取引だったか? いいぜ、受けてやるよ。ただし前金は通常の50倍、報酬は100倍だ。命を賭けさせるんだから、これでも安いと思うがな」
「この、金の亡者め……」
「商人の護衛にだけは言われたくねぇ台詞だな」



……取引の成立不成立はともかくとして、今の俺たちは互いに互いの足を引っ張りあってる状況だ。どちらかが身の安全を確保しようとすれば、もう片方は危機に陥る。我ながら馬鹿馬鹿しい話だとは思うが、あちらが仕掛けてきた以上仕方がない。どう転んでも里の目は俺たちに向くから、作戦自体には影響がないってのが面白いところだ。



「……本当、あなたのそういうところが嫌いなのよ。誰にも弱みを見せないで、自分の力だけで何でも出来ると思ってるところが……英雄にでもなったつもり?」
「俺だってお前の、周りの全てが自分の思い通りになると思ってる傲慢なところが大嫌いだ。女王様にでもなったつもりか」
「…………」
「…………」






俺たちが何もかも正反対なことなんて、ずっと前から知っていた。例えこんな状況だろうと……絶対に相容れない。






「……やっぱり、俺たち2人じゃ駄目だな。水と油は混ざらねぇ」
「ええ、そうね。……でも、知ってるかしら? 水と油は混ざるのよ。間に卵を入れればね」
「…………はっ、屁理屈を言いやがる。なら俺たちにとっての卵は……鋼ってことか」
「あの人が居たから、私たちは何とかやっていけた。だから……」
「仕方ねぇ。あいつの忘れ形見を、くだらない喧嘩のせいで失うわけにもいかないからな」






俺と影を結ぶ、たった1つの繋がり……それを守るためなら、命だって賭けられる。その一点だけが、俺たちの共通点。






「鋼の奴……まだ時間がかかってるみたいだな。全く、世話の焼ける弟弟子だ」
「あの子が一人前になるまでは、私たちも死ぬわけにはいかないわね。あんたも精々頑張りなさい」
「お前もな。さて、それじゃあ……」



まだ時間を稼ぐ必要があるなら、こんなところで捕まってはいられない。かといって早々に脱出しても駄目……面倒だが、やるしかないか。















「最後にもう1回、暴れまわってやるとするかぁ!!」










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ギガプラント
下に重ねたカードを利用するのはやっぱりテクニカルですな。
この二人の関係性……なんというか好きです。
なんかうまく言語化はできないんですけど好きです。 (2021-01-19 18:04)
名無しのゴーレム
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。

忍者らしく、両者ともに一筋縄では行かない戦いとなりましたね。
喧嘩するほど仲がいい…とはならず本気で互いを嫌い合ってはいますが、共通の目的のためなら手を結ぶのも忍者らしいと言うべきか。 (2021-01-20 17:17)

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40 第2戦:真の強さとは 919 14 2016-07-02 -
31 第3戦:舞い踊る武具 784 10 2016-07-03 -
34 第4戦:不滅の決闘 812 15 2016-07-04 -
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