遊戯王トライ・フォース第二部 世界大会 後編/刹那の不安 作:はにわ改

 
ーー翌日、大会もいよいよ大詰め月近付いてきた。
4日の行程を終えて16校あった出場校も残るは4校で、更に2枠に絞るべく準決勝が行われる。

Aブロックを勝ち上がってきたのは透矢たち日本校。
ここまで一戦も落とさず勝ち抜き、前回準優勝校の実力を観客に見せ付けている。
対する相手はフランス校。
前大会ではベスト8であったが、今大会はこの準決勝まで勝ち上がり、着実に一歩を積み重ねている。

そんなフランス校に臨むべく選抜された日本校のメンバーは、まず先鋒に真希、そして中堅に透矢、と今大会初出場組の二人。
1回戦で対イギリス校でその存在感を見せつけた二人が再登場となる。


「ーー『ミサギ』で攻撃!
『ブラッディー・ディスマーダー』!」

真希のエース、『ミサギ』がデュエルリングを疾風と共に駆け抜ける。

ーー電光石火の速攻。
『1ターンキルの女王』・真希がイギリス校との戦い同様に、後攻を持っての手札を余さず使いきる無駄のない戦術で、相手の抵抗を許さずに押しきった。
これに対してフランス校先鋒を情けない、と言うのはあまりにも酷だと言えるだろう。
真希の組み上げた速攻を旨とするデッキが、世界に充分通じると知らしめたのだった。


「ーー頼むぜ、『リューゼリッド』!
四の型・奥義!『龍星衝』!」

蒼の騎士・『リューゼリッド』の槍から、龍を模したエネルギーが打ち出され、相手モンスターを食らう。
中堅戦は透矢の豊富な『女帝』カードを駆使して、『三騎士』の展開に繋ぐ定石通りの流れ。
だが相手も厳しく反撃して一時はあわやという場面もあったが、最後は透矢と騎士団の絆が勝ったか。
無事勝利を掴んだ透矢も、観客たちの記憶にその姿を刻み付けたのだった。

「イェイ、透矢!お疲れ!」

「おう、真希!
これで俺たち決勝進出確定だぜ!」

透矢と真希が恒例のハイタッチを交わして互いの勝利を祝福。
同時に自分たちの手で決勝進出を決めた事を喜び合う。

「おっしゃあ、二人ともよくやった!
さすがあたしの頼れる後輩だぜ!」

続けて炎魅子がそんな二人を両脇に抱え込んだ。
抱えられた二人の頭がぶつかり、痛そうにしつつも笑顔を向け合う。

「次は炎魅子先輩っすよ」

「先輩、頑張ってね!」

炎魅子に抱えられたまま二人が声を掛ける。
ーーそう、大将戦は炎魅子。

「あいよ!
あたしに任せておきな!

ーーま、お前たちが勝ってくれたから、消化試合になっちまったけどな」

「いやいや、どうせなら全勝で決勝戦に繋げてくださいよ!」

「かっかっかっ!
あたしに絶対に勝て、ってか?
透矢も言うじゃないかっ!」

「先輩なら大丈夫だって!」

「ありがとよ、真希。
二人にそう言われちゃ気合を入れないわけにゃいかないねぇ」

炎魅子がデュエル・ディスクを付けた左腕を上に上げて構えて見せると、力強い笑顔を見せる。
そうして彼女はデュエル・リングへと足を進めるが、ふと何かに気付いたように後ろを振り向いた。

「ーー刹那!」

「え?
あ、何、炎魅子?」

視線の先には刹那。
決勝進出を決めたというのに、刹那は透矢たちの輪には加わらず、何故かクロエの傍にぼんやりと突っ立ったままであった。

「ありがとよ、刹那。
あたしに大将任せてくれてさ」

「どうしたの?
何もお礼を言われるような事なんてしてないわ」

「透矢と真希が勝ってくれたから消化試合になっちまったけど、
もしどっちかが負けてたら、この大将戦は負けらんなかった。
そんな役にお前じゃなくて、あたしを選抜してくれたんだからな」

「炎魅子の実力は私がよく知ってる。
それだけの事よ」

「あたしゃ、この大会が最後だからね。
たとえ消化試合でも、大将張ってデュエル出来るのはいい思い出になるさ。

ありがとな、刹那」

喜怒哀楽の強い炎魅子が見せた神妙な面持ち。
自分に舞台を与えてくれた刹那に対する紛れもない感謝であった。

「ま、あたしのことはどうでもいいけどよ。
お前もボケッとしてないで、透矢と真希にお疲れ様の一言ぐらいかけてやれよな。
それもお前の大事な仕事なんだからさ」

「あ、うん……そう、だね」

「んじゃ、行ってきまーっす」

一瞬だがきっとした顔付きで刹那に釘を刺した炎魅子。
だがすぐにいつもの明朗な彼女に戻ると、そのままリングへと向かっていった。
その炎魅子と入れ替わりに透矢と真希が刹那の傍に寄る。

「刹那?
先輩となに話してたの?」

「ううん、何でもない。
それよりも二人ともおめでとう。
二人のお陰で、日本校は今年も決勝進出だね」

「ああ、やったな、刹那!
俺たち決勝まで来たんだよな!」

遅ればせながら、という刹那の二人への祝福。
二人は特に気にした様子もなく笑顔を見せた。

「ま、俺にはこのダニエル・スティーブン様のサイン付きシャツがあるからよ!
正直、怖いものなし!って感じだぜ!」

「はいはい、もう自慢は聞き飽きたわよー。
……ったく、あんた一人だけおいしい思いしちゃってさ?」

昨日サインしてもらったシャツの裾を伸ばして見せびらかす透矢。
刹那は内心、透矢に同情していた。

ーー昨晩起きた悲劇。
彼はまだ知らないが、もし知ったならきっと悲しむことだろう。

そしてーー。

「(蓮華さん……)」

刹那はどこかで自分を見守ってくれているだろう、蓮華に思いを馳せた。
蓮華はダニエルの事を聞かされて、表情こそ変えなかったが、その心中は如何なものだろうか。

「(どうしよう……嫌な胸騒ぎが止まらない……)」

刹那は胸を押さえる。
やたら身体に響く動悸。
それは彼女の中で膨れ上がる不安と緊張からくるものだった。

そんな中、いよいよリングへと上がった炎魅子の準決勝大将戦が始まろうとしている。
だが今の刹那にはとてもそのデュエルに集中出来るような余裕はなかったのだった。
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