HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王WW(ワンダーワールド) > 67話 生きる覚悟

遊戯王WW(ワンダーワールド)/67話 生きる覚悟 作:名無しのゴーレム










「…………」






目覚めると、薄暗い部屋の中に居た……よく見ると、両手両足が鎖で壁と繋がれている。なら、ここは掟を破った忍を閉じ込める牢獄か。忍具も取り上げられている以上、脱獄は不可能だろう。周囲に見張りすら置かれていないことからも、拘束への自信が見てとれる。






「……やはり、駄目だったか」






元から勝ち目の薄い戦いだとは思っていたが、こちらの想定よりも相手が上手だった。その結果がこれだ……






「…………」






勇者たちは……日暮れまでに私が戻らなければフィアンマまで引き返すようクロノスに伝えてあるから、巻き込まれる心配はないだろう。勇者やマッハは反対するだろうが、そこはクロノスを信じるしかない。曲がりなりにも三賢者の1人、上手く説得してくれるだろう。






「っ…………すまない」






何も知らない2人からすれば、私の安否すら定かではない。プリンセスを救うためにと言っておきながらこの様……思わず、謝罪の言葉が口をついて出た。



























「…………」






……どれくらいの時間が経ったのか。この牢獄は忍を精神的に追い詰めるため意図的に日の光が差し込まないようになっているとは聞いていたが、こうして実際に体験すると……確かに厳しいものがある。









……御館様は、私をどうするつもりだろうか。一生里から出さないのは間違いないだろうが、『私』をどうするかは想像がつかない。考えうる最悪のパターンなら……数日以内に『私』は消えてなくなるだろう。






「っ…………」






覚悟はできていた、そのつもりだった。しかし……改めて命の危機に面すると、恐怖心を消しきることはできなかった。手が……微かに震えている。


















ドガッ!!



「…………?」



静寂を保っていた牢獄に、鈍い音が響く。近くで、戦闘が行われているのか……?



カツ、カツ、カツ……



「…………」



何者かがこちらへ歩いてくる。あらゆる可能性を想定するが……どの道、今の私に出来ることはない。姿を見せる人間によって、私の運命は決まる……!!






カツ、カツ……






「……よっ。さっきぶりだな、鋼」
「お前……スクアーロ!?」



何故、どうして……目的が全く理解できない。



「……はっ、酷いザマだなぁ。兄弟子様の有難いお言葉を無視した結果だ、精々反省しろよ」
「嫌味を言いに来た……それだけのために、ここまで忍び込んだのか?」
「まさか。……ある筋から依頼を受けてな。報酬も中々良かったから、つい引き受けちまった」
「依頼……だと?」



私の救出を依頼する人間……?



「…………まさか、お前!!」
「そんな格好で凄まれても全然怖くないっての。そこの看守から鍵も盗ったし、さっさとずらかるぞ」
「…………」



もはや私に出来ることはない。スクアーロが牢獄の鍵を開き、手足の枷も外され……あっという間に自由の身となった。



「よし、これでいいな。おい、里の外まで走れるな?」
「……ああ、問題ない」
「なら良かった。逃走経路は確保済みだ、行くぜ!」


















「逃亡者だ、捕まえろ!」
「絶対に逃がすな、回り込め!」



牢獄を脱出して間もなく、里内部を警備している忍たちに追われ始める。何とか距離は保っているが……このまま逃げ切るのは至難の業だ。



「おいスクアーロ、何か策はないのか!?」
「そんなの……あるに決まってるだろ! 今はとにかく走れ!」



とにかく、今はこいつを信じるしかない。だが、もはや……!!



「……クッ!!」



恐れていた通り、回り込まれた……!!



「スクアーロ、策はどうした……!!」
「さて……困ったな、俺はもう打つ手なしだ」
「なんだと!?」



もはや、ここまでか……!?









「おらおら、死にたくなかったら退きなさーい!!」






怒声をあげながら包囲網に突っ込んできたのは、1台の車……!?






「ほら、2人とも!!」
「おうっ!! 鋼、行くぞ!」
「なっ!?」



意味も分からないまま、爆走する車の後部座席へ飛び込み……



「……っ!!」



座席に勢いよく衝突しながらも、何とか乗り込むことに成功した。



「ふぅ……助かったぜ、影」
「あなたを助けに来た訳じゃないってば。偶然こーちゃんの近くに居たから拾ってあげただけ」



車を運転しているのは影なのか。後ろ姿や声では全く判別できなかった。変装術を得意とするとは聞いていたが、まさかここまでとは……



「鋼さん、無事ですか!?」
「なっ、勇者!?」



……スクアーロが来た時点で、なんとなく想像はできていた。でも、どうして勇者がここに……?



「このまま里の外まで逃げるよ。荒い運転になるから、しっかり掴まってて~!」
「わっ……!!」



疑問を口に出す暇もなく、車内は揺れに揺れる……


















「……どう? まだ追ってきてる?」
「いや、撒けたみたいだ。ふぅー、疲れた……」



追っ手の確認を終えたスクアーロは急速に脱力し、隣の私へもたれかかってくる。



「っ……」
「……あっ。悪いな鋼、ついうっかりしちまった」
「こーちゃん、嫌だと思ったらちゃんと言いなよ? 私がこの馬鹿を処刑するから」
「だからその口調で物騒なこと言うんじゃねえ!」
「……そんなことより、聞きたいことが山ほどある。まずは……どうして私を助けた」



処罰を受ける忍を連れ出すことが掟に背くのは、この2人も当然知っているはずだ。



「決まってるだろ、依頼を受けたんだ」
「依頼……誰からだ?」
「そこで伸びてる坊主からだ」



勇者か……今は、影の荒い運転でへとへとになっているが。



「私はねー……恩返し、かなぁ。こーちゃんたちは命より大事なご主人様を救ってくれたから、実質命の恩人ってわけ」
「ご主人様……?」
「たぶん、パイスさんのことだと、思います……」



疲労困憊の様子で、途切れ途切れに応える勇者。パイス……なるほど、そういうことか。



「2人の行動理由は分かった。しかし……勇者、お前は何故ここへ来た。待っていろと言ったはずだ」
「それは……すみません。スクアーロさんから鋼さんのことを聞いて、いてもたってもいられなくなって……」
「スクアーロ、お前は……」
「し、仕方ないだろ!? というか勇者を連れてきたのは俺じゃない、影だ!!」



……経緯はよく分からないが、2人が持ちかけた提案を勇者が受け入れた結果今に至ったのか。



「ともかく、これでお前も分かっただろ? 御館様はお前の話なんて聞いちゃくれない。仲間を助けたいなら別の方法を探せ」
「私も同意見かな~。あ、なんなら商会のツテでその手の専門家でも探してみよっか?」
「ま、そうする方がいいだろうな。ほれ、分かったらとっとと退くぞ。まずはお前たちの馬車へ戻って……」
「待て」
「…………?」



言葉を遮られ、不審気な表情を浮かべるスクアーロ。



「……御館様の言動に、引っ掛かるところがあった」
「なんだと……!?」
「スクアーロ、影。私が里を出ている間に、ゲドウが解放されたか?」
「は? ……いや、そんなはずはないだろ」
「私も聞いたことないかな~。というか、なんでそんなことを?」
「……私を捕らえた直後に、御館様が言っていた。『ゲドウの言う通りだった』と……」
「はぁっ……!?」



スクアーロの反応からしても、やはりこの状況は異常だ。つまり、それを引き起こすだけの何かがあった……?



「ま、まさか……脱獄したとでも!?」
「いや、それなら俺たちが知らないのはおかしい。御館様が俺たちにも内緒でゲドウに会っている……そうとしか考えられない」
「でも……何のために?」
「そ、それは……」
「あ、あのー」



それぞれが考えを巡らせる中、勇者がおずおずと手をあげる。



「どうした?」
「えっと……ゲドウって、人の名前なんですよね? その人がどうかしたんですか?」
「……ゲドウというのは、神代から生きている忍だ。里を興すきっかけを作った1人であったが、過去に大罪を犯したことで今に至るまで幽閉されている」
「幽閉……ですか?」
「本当なら処刑なんだろうが、あいつを殺せる人間が里にいないからな。下手にちょっかいをかければ術にかけられる可能性もあるってことで、地下牢に閉じ込めたまま見張りも直接接触しない形で最小限に留められてる。それで餓死しないんだから、化け物としか言い様がないな」
「…………」



信じられない、そんな顔のまま言葉を出すことも出来ないようだ。まあ、その反応も理解できる……私たちからしても、あいつの異常性は疑いようもない。



「外部との接触を断たれているはずのゲドウが、御館様と話をした。この事実だけで、本来あり得ない何かが起きている証拠になるんだ」
「何かって、一体どんなことが……?」
「……私は、御館様がゲドウの影響を受けたと考えている。接触を図ったのがどちらなのかは分からないが……どちらとしても、見張りの目を掻い潜ることは十分考えられる」
「おいおい、それが本当なら……マズいってレベルの話じゃねぇだろ」
「里の忍において、御館様の命令は絶対……そこを抑えられていると、内側からどうにかするのはほぼ不可能になるね~……」



あくまで推測、確たる証拠はない。だが……



「…………影、スクアーロ。頼みがある」
「頼み?」
「……言うだけならタダだ、言ってみろよ」
「もう一度、御館様に会いたい。自分の目で確かめて……ゲドウの術にかけられているなら、私が解術する」
「え……いや、無理だろ!! 」
「うーん、さすがに無謀すぎない? 超えなきゃいけないハードルが多すぎるような~……」
「無茶を言っているのは分かっている。しかし、私にしか出来ないことなんだ」
「お前……!!」
「…………鋼、1つだけ約束できる?」



先ほどまでとは違う、素に近い口調の影。つまり、それだけ……



「……なんだ」
「何があってもちゃんと生きて帰ってくるって、そう約束して。それが出来ないなら、私は協力しない」
「…………」
「それに関しちゃ、俺も同意見だな。お前は自分を軽視しすぎなんだ……命を捨てて守られた人間の身にもなれよ。そいつがお前に感謝するとでも思ってるのか?」



約束……できるのか? 口で言うのは簡単だ、しかし……



「…………」
「それが言えないなら、俺たちはここまでだ。お前の特攻に付き合ってやるほどのお人好しじゃないからな」
「……ああ、そうだな」



スクアーロの言う通りだ。2人には何の得もない上、下手を打てば一生を棒に振ることになる。これは私の問題、巻き込むことはできない。



「……なら、勇者をマッハたちのところへ連れていってくれないか」
「それで、お前はどうするんだ?」
「もう一度里へ戻る。警備体制が崩れている今なら、隙を突いて……」
「鋼さん!!」
「!?」



言葉を遮るように、勇者の声が響く。



「鋼さんは、その御館様って人のことを助けたいんですよね?」
「…………ああ。今がどうであれ、私が忍として生きていくことができるのは御館様のおかげだ。その恩を返すためにも、ここで逃げ出すことはできない」
「……鋼さんがその人を大切に思う気持ちは分かりました。でも……それと同じくらい、僕は鋼さんに生きていて欲しいんです。きっと、2人も同じだと思います」



そんなことは分かっている。でも……



「鋼さんは真面目だから、守れるかどうか分からない約束は出来ないんだと思うんです。だから……僕と約束してください。何があっても、生きることを諦めないって。最後まで頑張るって、そう言ってください!」
「…………!!」



生きることを、諦めない……



「…………以前、マッハにも同じようなことを言われたな」
「え……?」
「分かった、約束する。私は……お前たちのところに戻ってくるために全力を尽くす。だからそのためにも、力を貸してほしい」
「……へっ、最初からそう言っとけば良かったんだよ」
「もちろん、私たちも力を貸すよ。厳しい戦いになるだろうけど……まあ、私たちならだいじょ~ぶでしょ!」



スクアーロ、影……!!



「……恩に着る」
「鋼さん、僕にも手伝えることはありませんか?」
「勇者……駄目だ。お前を守ることは主からの最期の命令、死地へ連れていくことは出来ない」
「里で一番偉い人を敵に回すなら、こちらも人出は多いに越したことはないはずです。みんなで無事に戻ってくるために、僕にも協力させてください!」
「っ……」
「ハハハっ! いいじゃねえか、鋼。こいつの言う通り、こっちはどう考えても不利なんだからな。仕事なんて腐るほどあるだろ」
「別に、忍と正面切って戦う必要もないからね~。さっきみたいに陽動役として動いてもらってもいいし」
「スクアーロさん、影さん……ありがとうございます!」



私の許可もなく、勇者もこの作戦に参加することになっている……もはや、止める術はないか。



「……分かった。だが、決して無茶はするな。それだけは約束しろ」
「もちろんです。でも、鋼さんも同じですからね?」
「…………」
「ま~、こーちゃんが言う筋合いはないよね~」
「へへっ、言われてやんの」
「お前ら……あとで覚えておけよ」
「はいはい。それじゃ、作戦会議といくか。時間もない、手早く行くぜ」






スクアーロと影が主導して、作戦内容が組み立てられていく。今回は勇者も巻き込んでしまっている……絶対に、失敗は許されない。










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ギガプラント
久しぶりにしっかりと主人公らしいこと言ってくれたユージ君。
前回同様作戦に沿ってそれぞれ動き出しそうな予感。
そしてまた新しい名前も出てきましたね……名前通りの外道なのだろうか。 (2021-01-02 15:23)
名無しのゴーレム
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。

インダスト編でへこんでいたユージも何とか立ち直ったようです。今回こそは作戦を成功させることができるのか。
名前からしてヤバい雰囲気が漂うゲドウ。というか分かっている話だけでもかなりとんでもないし… (2021-01-03 23:54)

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