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HOME > 遊戯王SS一覧 > 002:最強VS最弱

002:最強VS最弱 作:天2

002:最強VS最弱


「海馬セトだとッ!?」

一際大きな声を上げたのは、意外にも刈田だった。

「そ、そう言えば雑誌で見たことがあるッ! ありゃあ確かにあの海馬セトだッ! 海馬コーポレーションの社長ッ! この街ーーードミノの実質的な支配者じゃねーかッ!」

突然現れた2人の侵入者に騒然としていた集団の動きが止まる。
侵入者の正体が、まさかの超級VIPだと分かって思考が停止してしまったのだ。侵入者が有象無象の輩だったならセキュリティに連絡するなり力付くで排除するなりすれば良かったが、相手がここまでの大物となると現場で判断できる範疇を超えている。下手に手を出せば責任問題になりかねない。

それらを見やり、青年ーーー海馬セトは満足気に首肯する。

「見ろ、ドール。これだけ大勢の大人達が、俺が誰だか知った途端にこの様だ。分かっただろう? 何人たりともこの街でこの俺に逆らうことなど許されない。この俺の言葉はこの世界の王の言葉。俺の意思は世界の意思なのだ」

「……『王』じゃと?」

それまで軽い調子でいたドールがそこで初めて不快そうに表情を固めた。

「そうだ。この俺の意に反することに何の意味もない。弱者は弱者らしく、圧倒的強者に押し潰される運命を受け入れるがいいッ!!」

海馬の高飛車な物言いに、ドールは瞑目した。その頬は次第に紅潮していく。

静かに、そして多分に怒気を孕んだ調子で口を開いた。

「……調子に乗るなよ、痴れ者めが……!」

マグマが煮えたぎるようにドールの怒りが周りの空気すらも歪めるようだった。
美しい顔の女性が怒ると怖いというが、ドールも多分に洩れない迫力だ。

しかしその怒りが爆発することはなかった。

「ドール」

振り返ると、ユーイがまだ少し残る目眩のような感覚を払うように頭を軽く振っていた。
ドールの顔に柔らかさが戻る。

「戻ってきたか。どうじゃった?」

ユーイの顔は少し青ざめてはいたが、その瞳には強い光を湛えていた。

「酷い気分だよ。車酔いを通常の3倍速で喰らったみたいだ。だけど解った。どういう作りなのかは解らないけど、このピースから流れ込んできたあのデュエルの知識は、確かに俺の記憶の一部だ。このデッキもデュエルディスクも俺の物で間違いない。君の言っていたことは本当だった」

さらりとデュエルディスクに触れてみる。
丁寧に手入れがされていたらしく、新品同様とはいかないものの目立った傷らしき傷は一つもない。だけど、その手触りには確かに親しみ深い感触があった。

「君には聞きたいことが色々ある」

「そうじゃろうな」

ドールに視線を向けると、心得ているとばかりに彼女は頷く。

「しかし、このままでは落ち着いて話すことはできぬな。まずは邪魔者を排除せねばなるまい」

彼女はその邪魔者を指し示すように海馬に向けて視線を投げる。

ユーイにとって現在最優先するべきは、自分が何者なのか知ること。
そしてドールはその唯一にして最有力の手掛かりだ。元よりここで海馬に拐われるわけにはいかない。

ユーイはドールの前に出る。

「アイツは俺が倒すッ!」


☆☆☆


刈田はそんな2人のやり取りを少し離れた場所から見ていた。
その顔にはあからさまな困惑の色が浮かんでいる。

「やる……って、デュエルするってことかよ……。む、無理だ……勝てるわけねェだろうが……。相手はあの海馬セトだぞ……!」

海馬セト。
この街で一般的な教養を身に付けている者なら、その名を知らぬ者はいない。

ドミノは首都ではなく王都と呼ばれているが、別にこの国に王制が敷かれているわけではない。立派な民主主義国家だ。国民に選ばれた国会議員だっているし、首相もいる。
しかし彼らは国の代表ではあってもこの国の最高権力者ではないことを、ほとんどの国民が知っている。

この国を表裏で牛耳っているのは海馬コーポレーションだ。
元々は決闘傭兵派遣会社だった海馬コーポレーションは、海馬セトの父の時代にその圧倒的な経済力・技術力・デュエル力で瞬く間に超級の大企業へと成長し、それが必然であったかのようにその力は国の中枢へと食い込んでいった。
そうしてこの国のあらゆる分野における海馬コーポレーションの影響力は国内最大となり、インフラや医療、軍事、政治に至るまで国の根幹となる全ての部分がその支配下に収まることになったのだ。
つまり、この国は名目上は民主主義国家ではあるものの、その実状は海馬コーポレーションによる独裁国家なのである。

そして父よりその力の全てを引き継いだのが、現在の社長であり父を遥かに超える天才と目される海馬セトである。
若くしてその座についたセトは瞬く間に社内を掌握、その辣腕により組織の力を更に飛躍させた。
その経営手腕もさることながら、そのカリスマ性を支えていたのはデュエリストとしての圧倒的なまでの実力であった。公式の格付けではないが、その実力は『伝説(レジェンド)級』と言われ世界でも指折りのレベルと認められているのだ。

「そんな超一流のデュエリストにあのクズが勝てる見込みなんてあるわけがねェ!」

刈田が大声を上げる。

それを聞いていたサテライト行きの集団から、1人の少年が前に出る。
金髪の強い目付きの少年だ。

「んなこと、やってみなきゃ分からねーだろうが! デュエルには時の運てヤツもあらー! 前評判が全てじゃねー!」

ユーイと違いこちらはまだ両手の拘束は解かれていないが、金髪の少年はまるで親友が侮辱されたかのように強気に刈田へ食ってかかる。
しかしそれも刈田の意見を曲げるには至らない。彼は金髪の言葉を鼻で笑った。

「ハッ、何も分かっちゃいねェ! クズがクズ同士馴れ合いたいのは分かるがよォ! 現実っつーのは非情なもんだッ! 知らねェなら教えてやるよッ! いいか、デュエリストっつーのは自分の魔力を使ってモンスターを召喚したり魔法を発動したりするんだッ! 特にモンスターの召喚にはかなりの魔力を消費するッ! 当然魔力の総量によっては召喚に制限がかかるってこったッ!」

刈田の講釈に金髪はうんざりした表情を隠さない。

「んなこたぁ聞くまでもねーよ。子供でも知ってることだぜ」

「いいから黙って聞きやがれッ! つまり魔力量はデュエルの勝敗を大きく左右するってこったッ!」

刈田の言葉通り、モンスターの召喚には魔力が大きく影響を及ぼす。
レベル4以下の下級モンスターならばそれほどでもないが、それの上をいく上級モンスターになると話は変わる。更にレベル7以上の最上級モンスターを召喚するために必要な魔力量は、下級モンスターのそれとは比べ物にならない。

「さっき測ったテメェらの魔力量は揃いも揃ってカスみてェなもんだった。どいつもこいつも並み以下ばかりだ。だからテメェらはこの街からお払い箱になるわけだ。だがなーーー」

魔力の総量は外見からでは推測できない。専用の検査機器で測り数値化することで初めてその個人の持つ魔力量が証明される。
その数値が高いようならば、いくら浮浪者であろうともサテライト行きにはならない。高い魔力を持つ者は街にとって利用価値があるからだ。以前にはそのおかげでドミノでの市民権を獲得した例も少なくない。
デュエリストにとって魔力とは才能であり、ドミノにとって魔力とは資源なのである。

だが高い魔力を持つ者がいれば、当然その逆も存在する。

刈田は嫌らしく口の端を上げる。

「そんな中でもあのガキの魔力値は最低も最低ッ! 並みですらねェ、上級モンスターを1体すら召喚できねェ、デュエリストとして底辺の値だったんだよッ! 笑えるぜッ! 生意気な態度を取っちゃあいるが、その実あの野郎はクズ中のクズッ! それこそゴミみてェな存在だってことだッ!!」

刈田は何故か勝ち誇ったようにガハハハと笑う。
何しろ彼が最初にユーイを選んで絡んでいったのも、この検査結果を知っていたからだった。刈田のような奴は大抵見下す理由のある者しか狙わない。万が一にも反撃されない、またはその力がない相手をいたぶるのが好きなのだ。自分より格上かもしれない相手に挑んだりはしない。

そんな刈田に軽蔑の眼差しを向けながら、金髪は「それでも……」と続ける。

「……なんでかな、俺はアイツが勝つような気がすんだよ」

そう呟く金髪を刈田は馬鹿にするように笑った。

デュエリストとしての資質の話ならば、魔力の大小が大きな差となるのは確かだ。魔力がモンスターの召喚に限定的な影響を与える以上、資質としてユーイは海馬に大きく及ばない。
つまりこの闘いは、『最強のデュエリスト』対『最弱のデュエリスト』のデュエルということになるのだ。


☆☆☆


十数メートルの距離を取って、ユーイと海馬は相対していた。
回収業者達もサテライト行き達も、彼ら2人を取り囲むようにしてその動向を固唾を飲んで見守っている。

海馬はユーイが強い眼でこちらを見ているのを見て、フンと鼻を鳴らした。

「戻れ、ミノタウルス」と傍らで臨戦態勢のままだった牛の魔人をカードに戻す。
コンクリートの壁を破壊していたことから考えると、あのミノタウルスは実体化していたのだろう。
先述の通り、モンスターを召喚するには魔力が必要になるが、それを実体化させるのは更に強い魔力が要ると言われている。レベル4以下の下級通常モンスターであっても、実体化させるには最上級モンスターを召喚するのと同じくらいの魔力が必要だ。
やはり海馬の持つ魔力は並外れている。現在のユーイでは、魔力勝負では確かに勝ち目は無さそうだ。

「全く理解に苦しむな……」

ミノタウルスの姿が掻き消えると、海馬はそのカードをデッキではなくポケットに収めた。
どうやらあのミノタウルスは海馬の主力ではなさそうだ。あくまでも実体化して力仕事をさせるための下級モンスターに過ぎないらしい。とすると彼の主力モンスターは一体何なのか。

海馬がユーイに視線を送る。
その目には相手を値踏みするような強かさが感じられた。

「貴様とドールがどういう関係なのかは知らんし興味もないが、奴を救うためにこの俺と敵対するメリットが貴様にあるようには思えんが……」

「別に善意で彼女を助けようなんて思っているわけじゃない。彼女には色々と訊かなければならないことがあるんだ。ここでアンタに連れていかれるわけにはいかないってだけの話だ。俺としては、今だけでもアンタに引いてもらえるならそれで良いんだけどな」

ユーイの言葉に、海馬は訝しむように眉を寄せる。

「解せんな。たったそれだけのために貴様は海馬コーポレーションと敵対するというのか? 海馬コーポレーションに逆らうということは、この国に反逆するということだ。只では済まんぞ」

脅すような睨みを効かせる海馬だが、ユーイはそれを軽く受け流すように笑ってみせた。

「かもな。でも俺にとってはそれだけの価値があるってことさ」

物事の価値は往々にして一般論では語れないものだ。一般的にはどうでもいい無価値と一笑に付されるものでも、ある人にとっては何物にも代えがたい大切なものであったりする。それを他人同士が議論したところで、時間の無駄以外の何物でもない。

「話にならんな。低能のクズ相手に最早言葉など通じぬか。ならばデュエルで文字通り塵芥(ちりあくた)の如く蹴散らしてくれるわッ!!」

海馬がデュエルディスクを構えた。
ユーイもそれに倣う。

一度合間見えたならば、デュエリストの間に言葉など不要。語り尽くせぬ想いをカードに乗せ、互いの魂で斬り結ぶのみ。

2人の間で闘気が旋風のように渦を巻いた。

そして同時に叫ぶ。


「デュエル!!」


それはデュエル開始を告げる鬨(とき)の声。

叫ぶと同時に2人はデッキからカードを5枚引き抜いて手札とする。

ユーイ LP4000
海馬  LP4000

先攻はユーイだ。

「俺のターン!」

ドールからデッキを受け取ってから、ユーイにデッキの内容を確認する時間など無かった。
しかしあのピースに見せられた記憶の中にはこのデッキのことも含まれていた。よってこのデッキの動かし方はほぼ把握している。

だが相手はあの海馬セトである。半端な布陣では一瞬で粉砕されるのは目に見えていた。
ユーイは手札からモンスターカードを選ぶと、デュエルディスクに裏側横向きで置く。

「モンスターを裏側守備表示でセットし、ターンエンド」

ユーイのモンスターゾーンに裏側横向きのカードが姿を現した。
そこにモンスターの姿はない。

守備表示のモンスターは相手モンスターに攻撃され撃破されても戦闘ダメージは発生しない。加えて裏側表示の間は相手にそれがどんなモンスターなのかは分からない。
1ターン目、ユーイは中途半端に展開などせず、代わりに相手にこちらの情報を渡さないという選択をしたのだ。
最もシンプルな防御の型。見た者によっては、極めて消極的と映る先攻1ターン目だった。

事実、海馬はそれを見て馬鹿にしたように鼻で笑った。

「クックック、何だそれは。俺を倒すなどと息巻いていたわりに随分と日和った初手だなッ! 手札事故でも起こしたかッ!? であっても、こちらは容赦せんぞッ!! 俺のターンだッ!!」

海馬はデッキからカードを1枚ドローする。
後攻1ターン目からはターン開始時にドローフェイズが設けられ、カードを1枚補充できる。
6枚になった手札を見て、海馬はほくそ笑んだ。

「最初の邂逅から貴様に絶望的な力の差を見せてやろうッ!」

手札から魔法カードを発動させる。

「俺は魔法カード《古のルール》を発動ッ!」

海馬の前に緑色の枠に囲まれたカードのビジョンが現れる。



《古のルール》
通常魔法
手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。



「《古のルール》の魔法効果により、俺は手札からレベル5以上の上級モンスターを特殊召喚することができるッ! そしてこの効果で俺が特殊召喚するのは、このモンスターだッ!!」

海馬は手札のモンスターカードをデュエルディスクに叩き付ける。
デュエルディスクがそのカード情報とそこに流れ込んでくる海馬の魔力を受けて、そのモンスターを顕現させるために明滅する。

海馬のモンスターゾーンに青白い光が渦を巻くようにして立ち上る。

「現れろッ!! 我が最強のしもべッ!!《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!!!!」

海馬のフィールドに青き眼の白きドラゴンがその身を現した。

顕現した『絶望』は、酷く美しい姿をしていた。
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天2
遂に始まったユーイの初陣。しかしいきなり伝説級のモンスターが襲来してしまう。ユーイはこのピンチをどのように凌ぐのか!?

次回、遊戯王LOTD
「青眼の白龍」
お楽しみに! (2020-10-21 22:33)

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