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HOME > 遊戯王SS一覧 > 覚醒は無意識に

覚醒は無意識に 作:エスカル

今まで見たこと無い。
あんなドラゴンと昆虫が見事に織り交じったカテゴリ。
いくら夢の中とはいえ、こんな相手と戦えるなんて光栄の極み。

「私のターン、ドロー」

引いたカードはこれまた優秀なカード。
最初から全力で飛ばしていこう。

「私は魔法カード『真紅眼融合』を発動します」

今日、寝る寸前でドラグーン・オブ・レッドアイズが使えなくなる代わりにまたデッキから3枚入れることを許されたカード。
さぁ、行こう。

「デッキから『真紅眼の黒竜』と『真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン』の2体を墓地へ送り『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』を融合召喚します」

メテオ・ドラゴンの顔が胴体に装備され、炎を身に纏う漆黒の竜が私の場に舞い降りる。
今まで見たことが無い未知の相手、やる気全開でがんばってきて!

流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン ATk3500

「いきなり攻撃力3500をデッキ融合で呼び出すか」

ドラグラさんも目を見張って私の竜を見ている。
そしてその口からドラグラさんめがけて炎が放たれる。

「融合召喚に成功したことでデッキから『真紅眼の黒炎竜』を墓地へ送り、1200ダメージを与えます」
「いいだろう」

ドラグラさんは炎に包まれるが一切慌てておらず、むしろ不適な笑みを浮かべてる。
その余裕な態度……さすがは本性は竜なだけあるよ。

ドラグラ LP8000→6800

「そして私はこのままバトルフェイズに入ります。『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』で『ドラゴザイア・ガタッカー』に攻撃します」

リンクモンスターが存在していればそのリンク先に新たにリンクモンスターが展開される。
だとしたら狙うのに最適のはず。

「残念だが『ドラゴザイア・センティピードーラ』はドラゴザイアリンクモンスターが存在している場合、こいつにしか攻撃できないぞ」
「だとしたらセンティピードーラに攻撃します!」

センティピードーラめがけて胸の竜が炎を吐き、センティピードーラを焼き尽くした。

「破壊された『ドラゴザイア・センティピードーラ』の効果発動。このカードが破壊された場合、相手モンスター1体を選択し永続的に攻撃力を半分にし、さらにドラゴザイアリンクモンスターが存在している場合、ドラゴザイアエッグトークンを守備表示で1体特殊召喚する」

ガタッカーの後ろに緑色の卵が残され、そしてメテオ・ブラック・ドラゴンの胴体にセンティピードーラの足が無数に突き刺さり、苦しそうにうめき声を上げていた。

ドラグラ LP6800→5900

「メイン2、私はカードを2枚伏せてターンエンドします」

愛流 LP8000

モンスターゾーン 流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン
魔法・罠カードゾーン セットカード2枚
手札3枚

「さて、俺のターンだな。場の『ドラゴザイアエッグトークン』の効果発動。この卵をリリースし、墓地から『ドラゴザイア』と名の付くモンスター1体を攻撃力0にして特殊召喚する。『ドラゴザイア・ガルモース』1体を守備表示で特殊召喚する」

百足竜が残した卵から蛾竜が生まれた。
まあ蟲の卵に寄生して卵を産みつけ、中身を喰らって産まれる寄生虫の類だと思えばそれほどおかしくはない。
少なくとも乗っただけなのに融合とか言い張るよりはまだ分かりやすい。

「俺は『ドラゴザイア・ガタッカー』と『ドラゴザイア・ガルモース』をリンクマーカーにセット。召喚条件は『ドラゴザイアモンスター2体以上』」

ガタッカーとガルモースの2体がリンクマーカーにセットされていく。
次に来るのはリンク3のモンスターだ。

「リンク召喚。空羽ばたく蟲の強襲者、『ドラゴザイア・ビーフォーサー』!」

尻尾に鋭利な紫色の針。
刺されたら間違いなく猛毒が回るだろう。
そして黄色と黒が見事に織り交ざった体色のグラデーション。
まさに蜂が竜へと変貌したらこうなるんだろうという見事なデザインだ。
カードデザイナーを志す者として、これほど見事なモンスターを見せられて、しかもドラゴンなのだから興奮が止まらないよ!

ドラゴザイア・ビーフォーサー ATK2500

「ふふ、抱きついてるな。だが効果処理を進めさせてもらおうか。ビーフォーサーが特殊召喚に成功したとき、相手のモンスター1体を破壊してその攻撃力分のダメージを相手に与える」

ビーフォーサーの尻尾がメテオ・ブラック・ドラゴンの胴体に突き刺さる。
体の色が見る見るうちに紫色へと変化し、そのまま大爆発を起こした。

「きゃあっ!」

遊紅 愛流 LP8000→4500

「だけどもただじゃ終わらない。『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』は破壊された場合、墓地から通常モンスター1体を特殊召喚します。蘇れ『真紅眼の黒炎竜』」

先ほどメテオ・ブラック・ドラゴンが爆発を起こして消えた場所から『真紅眼の黒炎竜』が飛び上がっていき、空中で咆哮をあげる。
さぁ、その炎を宿す体で私の場を照らして。

真紅眼の黒炎竜 DEF2000

「なるほどね。継戦能力もあるのか。『生存欲』も強いみたいだな。『ドラゴザイア・ヘラクレイザス』を手札から特殊召喚する」

昆虫の王者とも名高いヘラクレス。
その立派な角を戴く漆黒の竜がドラグラさんの場に降り立つ。

ドラゴザイア・ヘラクレイザス ATk3000

「俺の場にリンク3以上の『ドラゴザイア』モンスターが存在しているとき、そのリンク先に特殊召喚できる。そしてこいつが特殊召喚に成功したとき、デッキから1枚ドローし、このターンこれ以上特殊召喚は出来ない」

さっきのガタッカーといい、甲虫系のドラゴザイアはドロー効果持ちらしい。

「そしてバトルフェイズだ。『ドラゴザイア・ヘラクレイザス』で『真紅眼の黒炎竜』に攻撃」

ヘラクレイザスが空中高く飛翔し、そのまま角で獲物を刺すため急降下していく。

「ヘラクレイザスは守備表示モンスターと戦闘する場合、倍の貫通ダメージを与える」

それって不破君の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』とほとんど同じ効果。
それが3000で襲い掛かってくるのだから……まずい。

「罠カード『和睦の使者』発動。このターン私のモンスターは破壊されないで、戦闘ダメージも0になるよ」

真紅眼の黒炎竜が炎を床に吐きつけ、自身を炎に包み込み身を隠す。
ヘラクレイザスは炎に触れる前に急旋回し、ドラグラさんの場へと戻っていく。

「モンスターを守ったか」
「ええ。それに『和睦の使者』で耐えれば相手のモンスターや戦術を更に見られる。それにチャンスに繋がる、情報アドバンテージを稼ぎつつ私や相手の場のドラゴンを更に見られるんですよ」

はっ、しまった。
最後のほうに本音が漏れてしまった。

「はっは、なるほどね。いいさ。メイン2、俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

ドラグラ LP5900

モンスターゾーン ドラゴザイア・ヘラクレイザス
EXモンスターゾーン ドラゴザイア・ビーフォーサー
魔法・罠カード セットカード1枚
手札2枚

「私のターン、ドロー」

なんとか『和睦の使者』で次のターンに繋げることが出来た。
もしあれがなければヘラクレイザスの貫通ダメージ2000とビーフォーサーの貫通効果で敗北していた。

「魔法カード『レッドアイズ・インサイト』を発動します。デッキから『真紅眼の飛竜』を墓地へ送り、デッキから『レッドアイズ・スピリッツ』を手札に加えます。そして私の場の『真紅眼の黒炎竜』を除外します」

黒炎竜を除外するのは少しもったいないがしょうがない。

「真なる炎で焼かれ、竜の体は闇の鋼となりて君臨します! 『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を特殊召喚します!」

闇の鋼で空中を飛ぶワイバーン型の竜。
美しい黒の光沢が私の心を勇み奮わせる。
その力でこの状況を切り開く。

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ATK2800

「美しいですの~」

迫力あるデュエルによって無言で観戦していたラドちゃんがポツリと呟いてる。
集中していた者の視界すらも魅了するとは、やはりドラゴンは偉大だ。

「仲間を呼び戻します。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動。手札か墓地からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚します。『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』、戻ってきて!」

ダークネスメタルの咆哮に応え、空からメテオ・ブラック・ドラゴンが飛翔してくる。

「一気に攻撃力2800と3500のモンスターが並び立つとは。だがここで罠カード発動だ。『ドラゴザイア・バトル』。相手がこのターン2回以上召喚、特殊召喚を行ったメインフェイズ1に発動できる。強制的にバトルを行う」

強制的にバトル!?
展開して場を整えさせることもさせず、強制的に戦闘に持ち込むとは。

「ですが! 『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』で『ドラゴザイア・ビーフォーサー』に攻撃します!」

ダークネスメタルの口から放たれた闇の炎がビーフォーサーの体を焼き尽くす。
ビーフォーサーは蟲の羽ばたく音を立てながら消滅していく。

ドラグラ LP5900→5600

「そして『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』で『ドラゴザイア・ヘラクレイザス』に攻撃!」

メテオ・ブラック・ドラゴンの炎がヘラクレイザスの体を一瞬で焼き払う。
なんとかバトルで勝利には持ち込めたけど……違和感が拭えない。
確かに大量展開されて1ショットを防ぐのであれば問題は無いはずなのだが。

「罠カード『ザイア・リベンジ』を発動。このターンに破壊された『ドラゴザイア』モンスターを特殊召喚し、特殊召喚したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。蘇らせるのは『ドラゴザイア・ビーフォーサー』だ」

強烈な羽音が私の後ろで響く。

「あっ」

悲鳴を上げる暇もなくビーフォーサーの尻尾が容赦なく私の背中を貫く。

「うっ」

愛流 LP4500→2000

「そしてビーフォーサーは特殊召喚に成功した場合、相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える。『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』を破壊し3500ダメージを与える」

負けた。
未知のドラゴンと戦えたこと自体に悔いは無いけど、もっともっとこの楽しい時間を長く続けたかったな。
ビーフォーサーの尻尾がメテオ・ブラック・ドラゴンを貫き、先ほどと同じように大爆発を起こし、私はその爆発に巻き込まれる。

愛流 LP2000→0


「なら『欲望』を解放しろ」

息をついてデュエルを終わらせようとした私にドラグラさんが声を掛けてくる。

「どういうことですの? デュエルは愛流お嬢様の負けですの」

そう。
私はこのデュエルで負けた。
だからこれ以上続きは出来ないのに。

「言葉はいらない。欲望は本能だ。その欲望があれば『χ Card』は応える」

気づいたとき、私の目の前に灰色のカードは浮かんでいた。
無意識だったのか、意識的だったのか。
本能的にそのカードを手に取る。

『Master Airu Approval』

そして脳内に宿るのは、3つの組み合わせ。
そしてそのうち1つの組み合わせは。

「ラドちゃん」
「どうしましたの?」
「私と一緒に来てくれるかな?」

ラドちゃんに向かって手を伸ばす。
その手をラドちゃんは取ってくれる。

「愛流お嬢様が望むなら」

その瞬間、ラドちゃんの体は一瞬で『ドラゴンメイド・フルス』のカードになる。

『ドラゴンメイド・フルス』
『真紅眼の黒竜』

2枚のカードが私の手を離れ、『χ Card』に吸い込まれていく。

「水と炎の相反する存在が交差するとき、異端なる竜は君臨する」

私の体も水と炎に包まれていく。
そして上空につい最近見た『時空門』みたいな穴が現れる。

『メイディング・ドラゴニウス』

穴の中から炎の紋様が体に刻まれた、『ドラゴンメイド・フルス』によく似た竜が飛び出してきた。
目つきはきりっとしており、瞳の色もまた紅に染まっており、角も黒くなっている。

「なんか体が熱いですの~。あれ、愛流お嬢様、その格好は」

私の格好……ってうわぁ!
真紅眼の黒竜の頭を模したヘルメットを被ってる。
おまけに黒と赤を基調としたスーツみたいな服を着てる。
しかも手にしてるのは……ドラゴンの頭部を模した銃!?
うわ、これはテンションがあがる。


「ほう……傍にいたドラゴンの娘を守りたいだけでなく、ドラゴンと共に戦いたいという気持ちが『欲望』と交差したか。いい姿だ」

ドラグラさんがうんうんとうなずいて褒めてくれている。
…………あれ?

メイディング・ドラゴニウス AP20000

なんだろう、この数値?
それにデュエルは終わったはずなのに、ドラグラさんの場にはまだ『ドラゴザイア・ビーフォーサー』と『ドラゴザイア・ヘラクレイザス』が残ってる?

「相手が異質な力……『闇のデュエル』やら『サイコデュエル』とか『精霊のカードを使うデュエリスト』……まあ君を傷つける力を持つデュエリストが相手なら、その姿になって戦いを続けることが出来る」

?????
えーと、どういうことなんだろう。

「まあ要するに『デュエルモンスターズ』を悪用する者にたとえ負けても『χ Card』が君を守ってくれる」

……つまりは自分自身がモンスターへと変貌して、デュエルを続けることが出来るということかな?

「まあ簡単に言えばね。さぁ、ためしに俺の場のモンスターと戦ってみようか」

え?
と言われても。
私のターンで相手の罠にかかって返り討ちにあったから私のターンだよね……?

「いくですの」
「待ってラドちゃん」

メイディング・ドラゴニウスに変身したラドちゃんがそのまま『ドラゴザイア・ビーフォーサー』に向かって飛んでいく。

「さっきはよくも愛流お嬢様の背中を貫いたですの……成敗するですの!」

ラドちゃんの体から水と炎が同時に放出され、ビーフォーサーがそれに飲み込まれ爆発し消滅する。

「ほう、なかなかの力だな」

ドラグラ LP5100→4600

えっと、今のは攻撃力2500の相手を倒したから、ラドちゃんの魂を継いだドラゴンの攻撃力は3000ってこと?

「攻撃力は主の精神力で決まる。とある異世界では『次元領域デュエル』と呼ばれる特殊なデュエルで、モンスターの攻撃力はあらかじめ決められた数値より上に行く事は無いが、精神力によって攻撃力が決まるというルール。それと同じだと考えてくれればいい。まあ君の『欲望』がもっと高まればさらに攻撃力が上がるかもしれないな」

なるほど。
にしてもラドちゃんが『χ Card』と交差して変わったこの姿もなかなかいい……

「愛流お嬢様」

ラドちゃんの背中を撫で回していると、意識が少し遠くなっていく。
あれ、どうしたんだろ?

「さすがに夢の中での初変身は精神力が削られていったか……俺も非常に残念だが、ここまでのようだ。君の親友もその『χ Card』を使っているからいろいろと知っているだろう。彼から更に詳しく話を聞いてみたまえ。君と親友がその力を使い『欲望』のまま進んでいけば、また俺とも会う機会があるだろう。で……また」


ドラグラさんの姿も薄れていく。
夢が覚め……る……のかな?



「おはようですの、愛流お嬢様」

眼を開くと、ご機嫌そうな笑みを浮かべたラドちゃんが私の視界に入ってきた。
可愛いなぁラドちゃん。
思わず抱きしめると、ラドちゃんの尻尾がぱたぱたとご機嫌そうに振られているのが眼に入る。

「おはよ、ラドちゃん」
「おはようですの。なんか愛流お嬢様の力になって『真紅眼の黒竜』の力を継いで戦った夢を見た気がするですの」

ラドちゃんも?
私もなんか蟲とドラゴンがベストマッチングした見た目のドラゴンデッキを使う相手と戦って、負けちゃうんだけど不破君が使ってる『χ Card』を私も使って、ラドちゃんと一緒にデュエルモンスターズのモンスター相手を戦う夢を見た気がする。
ここまで鮮明に覚えてられるのも、やっぱり相手が見たことが無いドラゴンだったというのもあるだろう。

でも、多分あれは夢。
不破君や皆に話したらきっと笑われるだろう。


「朝ごはんの準備が出来たから降りてきてほしいですの」

ラドちゃんが私から離れ、先に下の階へと降りていった。
…………?
なんか今一瞬だけ私の目の前に『χ Card』が現れたような気がしたけど……気のせいだよね。


さてと、今日も1日、楽しいことが起こりますように。
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