遊戯王WW(ワンダーワールド)/52話 強襲 作:名無しのゴーレム










ドリーの隠れ家から出発して数十分。特に問題もなく、俺たち3人は所定の潜伏場所に辿り着いた。






「……すげぇな。まさか本当にあのロボットどもに会わずにここまで来れるとは思ってなかったぜ」
『警備ロボットの巡回路は把握済みだ。時間とルートを間違えなければ、接触を避けることは容易い』
「なるほど、まさに機械相手だからこそって感じだな」
「こんなところで話してないで、早く入りましょう」
「ああ、そうだな」



プリンセスに急かされて扉を開ける……施錠されていないのは、ドリーが破壊したということなのだろうか。口振りの割りにはかなりの荒らしっぷりだと思うが……



「……まあ、何もないわね」
「そりゃあ、住んでた人間がどこかに行っちまったんだからな。しかし、ここからどこへ逃げるんだって話だが」
『研究者の多くは、フォーチュンシティに亡命したというデータがある。他の住民たちもそれに随伴した可能性が高いだろう』
「フォーチュンシティに……?」
「そういえば、あそこにはヴァルキリオンが居たな。あいつも、インダストの科学者たちが作ったってことか」



だが、ヴァルキリオンはフォーチュンシティを襲ったフォウルと戦った。あいつがマキナの刺客だとすれば、同じインダストの人間どうしが敵対していることになる……全く、面倒な話だ。



「もうすぐ夕方ね。作戦開始は明日の朝として、今日することは……」
「作戦内容の確認くらいだな。今日は早く寝て、明日に備えるとしようぜ」
「そうね。……」



やはり、先ほどの話し合いの時からプリンセスの様子がおかしい。何か、クイーンに思うところがあるようだが……



「なあプリンセス。お前、どうしてこっちに来たんだ?」
「どうしてって……さっき話した通りよ」
「でもよ、俺たちがインダストに来たのはマキナとグレイスの関係性を確認するためだったはずだろ? なのに、一番気にしてるはずのお前が……」
「そんなこと分かってるわよ。でも……クイーンのことを聞いたら、何故か放っておけなかったのよ」
「なんだよそれ、意味分かんねぇ」



様子からしても、プリンセス自身どうしてこんな行動をとったのかよく分からないようだ。これも、グレイスのことが関係しているのか……?



「……あぁもう!! 今日一日で色々ありすぎなんだよ!!」
「そうね……私も疲れたみたい。少し休みましょうか。シークも、それでいい?」
『構わない。俺は自己調整を行う、用があれば声をかけてくれ』
「分かったわ。マッハ、私はそこのベッドで横になるから」
「お、おう……」



勝手に話をまとめ、奥の部屋へ入っていくプリンセス。……俺も、少し休むか。











































「ふぁぁ、もう朝かぁ……」



マッハたちと別れて別の隠れ家に移動した僕たちは、作戦内容を確認したあとすぐに休息をとった。おかげで身体の疲れもほとんど無いし、これなら作戦も……



「……アルム、いよいよだね」
『ええ。でも、マキナは素直に話し合いに応じるようなタイプじゃないわよ。むしろ、問答無用でデュエルを挑まれるんじゃないかしら』
「え……マキナさんって、デュエルは強いの? 確か、何回か戦ったことがあるって聞いたけど……」
『強いわよ。なんたって、戦乱の時代に己の力だけで国を建てたような相手ですもの』
「それはそうだけど……」



アルムの話では、マキナさんには一度も負けていないと言っていた。つまり、アルムと同じデッキを使う僕なら勝てる可能性くらいはあるはず……それがどれくらいなのかはともかく。



『その考えは甘いわ。私が彼女と戦った時から長い時が経っているんだから、当時と同じなんて思っていたら足元を掬われるわよ』
「う、うん……って、僕の考えを読んで答えないでよ」
『親切心での忠告よ、精々感謝しなさい』
「ぐむっ……」



もはや、デュエル時でなくても心の中を覗かれているのか……そう考えると少し怖い。



『それに……』



アルムが何か言おうとした、ちょうどその瞬間。ガチャンという音とともに寝室のドアが開かれた。



「……あ、もう起きてましたか。おはようございます、ユージさん」
「おはよう、クロノス。どうかしたの?」
「朝食の準備ができたので、呼びに行くようにとクリムさんから。もう一度今日の流れを確認するので、出来るだけ早く来るように……とのことです」
「分かった、今行くよ」



急いで立ち上がり、扉の方へと歩いていく。遅れたら、クリムに何を言われるか分からないからなぁ……


















「では、最後に確認を。私たちの目的はマキナたちの足止め、そのために先制攻撃を仕掛けることになるわけですが……」
「相手は5人、そしてこちらも5人。誰が誰と相対するかが問題なのですよ」



相対する……つまり、クリムは最初からデュエルをするという想定をしているのだろう。人員的な余裕がないから、デュエルになっても負けない組み合わせを考える必要があるということか。



「幸い、私たちの情報を擦り合わせることで相手の手の内は大まかに知ることができています。マキナはともかく、他の4人の素性を把握できているのは心強いですね」
「フォウル、エリニス、シザー、ロード……特に厄介なのはエリニスとシザーといったところでしょうか」
「……エリニスはミネルバでもかなりの実力者でした。彼女が今まで鍛練を続けてきたとなれば、並のデュエリストでは相手にもならないでしょう」
「傭兵ならではの搦め手を用いるシザーも、注意を払うべき相手になるだろうな」
「フォウルはフォーチュンシティでヴァルキリオンと戦ったそうですが……いまいち詳細が掴めていないのが怖いと言えば怖いのです」
「ロードは何か特別な力を持っている訳では無さそうだったけど、デュエルの腕は確かでした」
「つまり、全員気を抜けない相手ってことになりますね……」



クロノスが端的にまとめたように、誰一人として楽に戦えるような相手はいない。だからこそ、こうやって作戦を練っているんだけど……



「……すみません。僕は、マキナさんと直接話し合うためにここへ来たんです。だから……」
「ええ、そうですね。ではユージはマキナに。他については……」
「私がエリニスと戦いましょう。……指南役として、彼女のデュエルは何度も見てきました。確実に勝つためにも、私が適任と言えるでしょう」
「シザーは私がやる。昨日の不意打ちはしてやられたが、二度と同じ手は食らわない」
「……分かったのです。ドリーがエリニスと、鋼がシザーと。残りはフォウルとロードなのですが……まあ、私がフォウルに当たるのが無難でしょう。クロノスはロードと、それでいいのですか?」
「は、はい。大丈夫です!」
「担当も決まったことですし、そろそろ時間です。ここを出発して、所定の位置まで……」
「待て。……どうやら、罠が作動したようだ」
「え、罠……ですか?」
「勇者たちが眠っている間に、この隠れ家周辺に仕掛けたものだ。つい先ほど、何者かがここに近付いたようだな」
「そんな……ここ一帯は警備ロボットの巡回ルートから外れています。まさか……!?」



警備ロボット以外で、ここへ来る可能性のある存在……どう考えても、その候補は1つしかない。



「……敵はこの国の創設者だ。こちらがシークによって監視カメラの映像を覗き見ていたように、機械の制御を奪うことは可能性として十分だろう。なら、相手が打つ手も自然と見えてくる」
「私たちの、裏をかく……まさか、彼女たちも管理塔に!?」
「しかも私たちの足止めまでして、な。全く同じ手を食らった訳だ」
「そ、そんな……!?」
「……確証はありませんが、何かが起きていることは間違いありません。想定とは異なってしまいましたが、私たちのやることは同じ……これより、作戦を開始します」
「待ち構えられているこの状況で、どうやってマキナたちを追うのですか……?」
「私が先に出て安全を確保します。その後合図を送るので、皆さんはそれに合わせて外へ出てきてください」
「分かったのです。ユージたちも、それでいいですか?」
「……う、うん」



ドリーさんだけが危険な目に遭うというのは嫌だ……けど、僕がしゃしゃり出ても足手まといにしかならないことも分かっている。だから、ここはドリーさんに任せるしかない……!!



「……フフ、ユージは優しい子ですね」
「え……」
「そんな悲しい顔をしなくても大丈夫ですよ。……こう見えて私、結構強いんですから」



僕の不安を見抜いたように、ドリーさんは穏やかな顔で微笑み……そして、扉を開け放つ。



「……なるほど、そう来ましたか……!!」



隠れ家から出たドリーさんは、しかしそこから一歩も動こうとしなかった。一体、何が……?












「久しぶりね、ドリーム。こんなところで会うなんて思ってもいなかったけれど」
「……それはこちらの台詞ですよ、エリニス」












「……外に居るのは2人。エリニスとフォウルのようだな」



扉の隙間から覗き見た鋼さんが、外の様子を教えてくれた。2人ということは、他の3人は……



「……罠がある気配も無し。それなら、話は早いのですよ」
「えっ……クリム!?」
「手はず通り、彼らは私とドリーで対応します。適当なタイミングで出発し、マキナたちを止めるのですよ」



止める間もなく、クリムは扉の先へと歩きだし……ドリーさんの横へ並び立つ。



「クリム……」
「感傷に浸るのはいいですが、時と場合を弁えて欲しいのですよ。……早いところ、彼らを行かせるための隙を作るのです」
「……そうですね、すみません。エリニス、始めましょうか」
「ええ、もちろん」
「さて……フォウル、と言いましたか。あなたの相手は私が務めるのですよ」
「……いいだろう」












「「デュエル!!」」












「今だ。勇者、クロノス、行くぞ」
「は、はい!」
「分かりました!」



クリムたちがデュエルを始めた瞬間を狙い、僕たちも隠れ家から出る……元々こちらの妨害をするつもりもないのか、あっさりと足止めに来た2人の傍を通過できた。












「……そろそろ目標の地点に到達する。2人とも、まだ走れるか」
「はい、何とか……」



ドリーさんによると、マキナさんたちの潜伏先から管理塔に向かうには必ず通らなくてはいけない場所が数ヶ所存在しているという。今向かっているのもその1つだけど……



「もし、先を越されていたら……」
「あちらの潜伏先よりも、私たちの隠れ家の方が管理塔に近い位置にある。多少出遅れていても問題はないが、最悪の場合は……止まれっ!!」
「っ!?」



鋼さんの叫びに対して、半ば反射で足を止める。それと同時に、上方から何かが……!!



「同じ手は、食わないっ!!」



ガキンッ!!



こちらへ飛来した複数の刃物を、鋼さんは全て撃ち落としてみせる。ついこの前と似たような展開……なら、この先に居るのは……






「……再び会ったか、忍」
「この前の借りは返すぞ、傭兵」






2人の間にまさに一触即発、今すぐにでも闘いを始めてしまいそうな空気が漂う……しかし、他の2人はここには居ないようだ。



「2人とも、先に行け。……絶対に、無事で帰って来い」
「……はい。鋼さんも、気をつけて……!!」



この場を鋼さんに任せ、クロノスとともに目標地点へ向けて走り出す。間に合わせるためにも、急がないと……!!















「次の角を曲がれば、到着です!」
「よし、急ごう……!」



ここまで走り続けたこともあって、少しずつ疲労も出てくる。でも、みんなのためにも間に合わせないと……



「あ、あれは……」
「なっ……!!」



作戦では、先回りすることで待ち伏せする予定だった目標地点……そこには、1人の少年が立っていた。



「……どうも、久しぶりですね」
「ロード……どうして、君がここに?」
「もちろん、あなたたちを足止めするためです」
「くっ……」
「……でも、ユージ。君だけは通してもいいと、マキナさんに言われています」
「え……僕を?」
「はい。マキナさんはこの先にいます……追いかけるなら、早く行った方がいいですよ」
「……クロノス」
「大丈夫です。ここは、私に任せてください」
「ありがとう……クロノス、無理はしないでね」
「ユージさんこそ。……さあ、行ってください!」
「……うん!」



























「はぁ、はぁ……」



息が上がりながらも、管理塔への道を走り続ける。ロードによるとマキナさんは僕と会うことを避けてはいないようだけれど……それでも、万が一先を越されてしまえばみんなの努力が無駄になってしまう。それだけは、なんとしてでも避けないと……!!


















更にしばらく走り続け……足に痛みを感じ始めた頃、1人の女性の影が視界に入った。



「……ようやく、辿り着いたようね」
「……マキナさん」



直接会うのはアミューズぶりの2度目……その時だってほんの少ししか話していないはずなのに、何故かそんな気がしない。これは『僕』の感覚なのか、それとも……



「僕を、待ってくれていたんですか?」
「おかしなところで追い付かれても困るから。さっさとあなたを追い払って、管理塔へ向かわせてもらうわ」
「管理塔へ行って……どうするつもりなんですか?」
「あそこがどんなところか知っているなら、私の目的も分かるでしょう?」



……やはり、マキナさんの目的は機械兵の掌握なのか。



「……僕は、あなたと戦いに来たんじゃありません! まずは話しを……」
「言ったはずよ。私はあなたと話すことなんてない、そして……次に会ったら容赦しないと」
「っ……メシアさんへの襲撃は、あなたの指示なんですか!?」
「それに答えて、私に何の得があるとでも?」
「グレイス……メシアさんを倒した女性は、プリンセスさん……僕の仲間と全く同じ顔をしていました! これは一体、どういうことなんですか!?」
「同じ、顔…………まさか」
「……?」



明確な答えこそなかったものの、グレイスについての質問に対して何か考え込むような様子を見せるマキナさん。このことが意味するのは……



「……わざわざそんなことを聞くためにここまで来たの? 勇者サマってのは案外暇なのね」
「それだけじゃありません。マキナさん……多くの人たちを巻き込んで、そこまでしてあなたが目指すものは何なんですか!?」
「……それが知りたいなら、私とデュエルすることね」
「デュエル……どうしても、戦わないといけないんですか?」
「くどいわ。私に勝てたなら、あなたが知りたいことも全部話してあげる。欲しいものがあるなら、力を以て手に入れなさい」



そう言ってデュエルディスクを構えるマキナさん。もはや、話すことはないということなのか……



「っ……」
『ユージ、言葉だけでは彼女には何も伝わらないわ。彼女と対話するなら、デュエルは避けられない』
「アルム……分かったよ」



アルムの後押しを受けたこともあり、覚悟を決めてデュエルディスクを構える。



『……彼女は強いわよ。一瞬も気を抜かないようにしなさい』
「うん……」









「準備はできたみたいね。それじゃあ始めましょうか」
「……はい」



アルムのアドバイス通り、このデュエルは今までのどれよりも厳しいものになるだろう。でも、負ける訳にはいかない……!!


















「「デュエル!!」」







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ギガプラント
これあれだ!少年漫画でよく見るやつだ!
王道なだけあって燃えますね~
偽プリンセスについてはもう少し何かありそうですね…… (2020-09-12 07:14)
名無しのゴーレム
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。

「ここは俺に任せて先に行け!」ってやつですね。仲間がいるからこそ出来る展開、燃えますよね。
ユージたちがここまで来る原因となったグレイス。彼女の素性は一切不明ですが、マキナと会うことでその一端が明らかになるか…その辺りもお楽しみに。 (2020-09-12 13:26)

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