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ふぁ……
昨日のドタバタした日からもう1日が過ぎたんだ。
今日もアカデミアで授業があるんだった。
早く起きなきゃ。
「おはようございますですの、愛流お嬢様」
……ここは私の家だよね?
まさか積年の思いだった『ドラゴンメイドに朝、笑顔で起こされる』が叶うとは。
ラドちゃんがニコニコと笑顔で私を見てくる。
おいおいおい、ラドちゃんはドラゴン族だけじゃなくて天使族としても扱うというテキスト外効果があるんじゃないの?
「おはよう」
「もう抱きつかれるのは慣れたですの」
とりあえず朝一番にハグ。
ラドちゃんも特に慌てることなく私を抱きとめてくれた。
今、この近辺で幸せな朝を迎えているのは私だけではないかという錯覚すら覚えてしまう。
「お着替えしてから朝食食べてるですの? それともパジャマのまま下に降りてから食べるですの?」
「んー、着替えてからにする」
「お手伝いするですの?」
「さすがにそこまでは大丈夫。お母さんの手伝いしてあげて」
「了解ですの」
ラドちゃんが敬礼のポーズを取り、部屋から出て行く。
昨日の夜、お母さんとお父さんにラドちゃんのことを説明したらすごく驚いてたっけ。
とりあえず現物の『ドラゴンメイド・ラドリー』が現実で具現化して私の傍にいてくれるって説明したけども、やはり怪訝そうな顔をしていたからなぁ。
「家事などのお手伝いをするですの。だから追い出さないで欲しいですの」
ラドちゃんが必死に懇願して、危害を加えるような子じゃないというのがわかってようやく納得してくれたからなあ。
それにしてもさまざまなカードイラストだと少し失敗してるようなドジな子って言う印象だったけど、前のご主人様のところである程度仕事は出来るようになってたんだろう。
特にドジなところを見せず、現代の家電も使いこなしていた。
「家事の手伝いをしてくれるし、こんなに可愛い子ならいてほしいわ」
お母さんが専業主婦で昼は1人きりというのもあって、話し相手も欲しかっただろうからそれも追い風だった。
私が危機を感じたらすぐに来てくれるらしいので、別にずっと一緒にいる必要はない……というか学校でも傍にいられたら間違いなくラドちゃんにだけ眼を向けて授業を聞かないだろう。
そうなって成績が下がったら元も子もないからそればっかりはしょうがない。
さてと、制服に……昨日はラドちゃんにスカートめくられて不破君にパンツ見られちゃったからなぁ……恥ずかしかったぁ。
それにこれからもいろいろなドラゴンとの出会いを堪能するたびにいろいろと動くだろうから……
「あったあった」
タンスの奥にあったスパッツ。
だいたい3つぐらいあった。
これだけあればちゃんとローテーション組める。
これで下着を見られる心配は無い。
「さてと、朝ごはん朝ごはん」
今日の朝ごはんは何だろう。
心躍らせながら階段を下りていく。
「おはよう」
「どうぞですの」
私が席に座ると、ラドちゃんが朝ごはんが載ったお盆を持ってきてくれた。
白いご飯にほうれん草のおひたし。
そして鮭の焼き魚。
味噌汁もいいにおい……それにコーンスープにコンソメスープにお吸い物に……って飲む系の食事多いね!?
「昨日の深夜に仕込みをして置いたんですけど、つい作りすぎちゃったですの」
「まあ、昨日止めなかった私も悪かったわ。まさか家にあった鍋全て使ってここまでスープ系の食事を作るなんて」
お母さんもやっぱり苦い顔だ。
まあラドちゃんが作ってくれたものを残すなどありえない。
「確かにおいしい」
お父さんに褒められ、ラドちゃんがふふんと得意げな顔になる。
「確かにおいしいが、夜はお前の作る食事を楽しむとしようか」
「ま、あなたったら」
まあお母さんはお父さんと結婚して専業主婦になる前は料理店で調理補佐をしてたらしい。
私も何度かお母さんやお父さんのために料理は作ったことはあるけども、お母さんよりも上手に作れたことは無い。
「夫婦仲良くてラブラブですの」
そしてラドちゃん、どストレート。
お父さんもお母さんも顔を赤くしてわざとらしく咳しちゃってるし。
まあお父さんは私もお母さんも愛してくれてるし、その気持ちはうれしい。
前にも思ったが、私のこの行き過ぎた愛の形はお父さん譲りなところだろう。
まあ私ほど暴走して無いけども。
とりあえずラドちゃんが作った朝ごはん、スープ系が確かに多いけどいいにおいが渋滞している。
空っぽなお腹が刺激されるし、早速いただくとしよう。
「それではいってらっしゃいですの」
ラドちゃんとお母さんに見送られ、私とお父さんは同時に家を出る。
自転車を漕いでアカデミアまで行く。
昨日もドキドキワクワクが止まらなかったが、今日はまた新しい出会いがあるかもしれない。
そう思うと通学路も華やいで見える。
「おっす」
自転車を漕いでる途中、不破君に後ろから声を掛けられる。
特に体調の悪そうな顔ではない。
昨日あれほどの戦いをして、怪我は一切なかったがもしかしたら具合が悪くなったりとかそういうことを考えていたが、杞憂だったみたいだ。
「おはよう、不破君」
「おう。ラドリーちゃんの気配は感じないみたいだけど」
「うん、お母さんの家事のお手伝いしてる」
「そうか。てっきり愛流さんのことだから学校にも連れて行って一日中べったりするつもりじゃないかと思ってた」
確かに私も最初はそう思った。
「でも不破君、1日中べったりして授業聞けなくなるというデメリットがあるよそれは」
「授業じゃなかったら1日中べったりするつもりなんだな」
不破君が呆れつつも軽快な声で話しかけてくれる。
そりゃあんなに可愛いドラゴンメイドさんがいたら一日中べったりしてても退屈することは無い。
一緒に家事のお手伝いとかも出来たらもはやファンタスティックの一言に尽きちゃうよ。
「まあいいや。それよりもちゃんと宿題とかしたか?」
「もちろん。不破君は?」
「大丈夫」
不破君が隣に来て自信満々にVサインをする。
答えが間違えてなけりゃいいけど、何度か見直しや計算しなおしもしたから大丈夫。
不破君と一緒に自転車を漕ぎ、アカデミアへと向かっていく。
「おはよう、2人とも」
「おっす、楠葉さん」
「楠葉ちゃん、おはよう」
教室に入ると、楠葉ちゃんがいきなり挨拶してきた。
なんでかニヤニヤ笑ってるのが気になるけど……
「どうやら昨日の帰り道の間に2人で親密な仲になったみたいだね。さすがの僕でもまさか2日目でカップルになれたりしないよ」
かかかカップル!?
確かに昨日は不破君とはいろいろな経験を共にしたけど、そういったお付き合いみたいな関係にはまだなってないよ!?
「まあ愛流さんほどじゃないにしろ、俺もドラゴンは好きだからな。お互いドラゴン隙ということで話も合う、いわば同志みたいなものだ。そういった浮ついた関係じゃないさ」
「なんだ、それは残念」
私がどう答えようか戸惑っている間に不破君がフォローしてくれた。
そう、私も不破君もドラゴンが好きな者同士。
今度小説の貸し借りも約束したし、不破君がドラゴンと魔術師の力を借りて変身するようなドラゴンとの絆の深さも確認できた。
不破君も言ってたけど、ドラゴン好きという強固な絆であって、決して浮ついた関係ではないのだよ、うん。
「まあ今はそういうことにしておいてあげるけど」
今はって何?
楠葉ちゃん、絶対わかって無いでしょ!
「助かる」
……それに比べて不破君は結構冷静に受け答えしてる。
なんか私1人だけ慌ててバカみたい……あ、不破君耳赤い。
言葉では取り繕ってるけど、意識してくれてるんだ。
…………なんでうれしいと思ってるんだろ、私?
「おはよう、3人とも早いな」
そして岬君が最後に教室に入ってきて私たち3人の集まりのところへとやってくる。
「岬が遅いんだよ」
「言ってくれるな、不破」
岬君と不破君がお互い言い合いしながらも笑顔を浮かべている。
さすがは幼馴染の仲の深さといったところだろうか。
「ところで今日の宿題やってきてあるか? 不破、泣きつくなよ?」
「ちゃんとやってきてるっての」
岬君が挑発するように言うが、不破君がドヤ顔で言い返す。
「楠葉ちゃんは?」
「もちろん僕だってちゃんとやってきてるよ」
どうやら私の班のメンバーは皆マジメらしい。
そして皆で答え合わせをしてみたが楠葉ちゃんと不破君が少し間違ってたぐらいでなんとか修正できた。
「これでよしっと」
不破君が一息ついて少しして始業のチャイムが鳴り、それぞれの席へと戻っていく。
「ほい、これ」
本日の授業が終わり、最後のHRのときに紅弥先生から1枚の紙が手渡された。
「進路調査書、ですか?」
「おう。デュエルモンスターズに関わる仕事をするのかそれ以外の仕事をするのか、生徒の夢を知るためだ」
こういうのって中学生のときにもやったけども、それは3年生のときだった。
まさか入学して2日目でいきなり書かされるとは。
「まあ今はどんな夢を抱いてるのか知りたいからな、今は重く考えなくていい。明日までに提出するように。じゃ、今日の授業は終わり」
紅弥先生が教室から退室していき、それを合図に他の生徒たちも動き始める。
帰宅部で家へと帰ろうとするもの、部活動がどんなものがあるのか見学に向かおうとするもの。
私は今のところ部活をしようとは考えてはいないので、すぐに帰るつもりだったが。
「進路か」
前の席にいた不破君が私に話しかけてくる。
不破君は今は家族が行方不明で、探し出すのが夢だっけ。
「不破君の両親が見つかったら、どうするの?」
「本当の夢……リアルソリッドビジョンの研究者になる。父さんがやってたみたいに、今以上にリアルな体感が出来るソリッドビジョンを作り出す。それでデュエリストが皆楽しんでくれればそれでいいかなって」
それはいい夢だ。
「愛流さんの夢は?」
「私の夢は『不破君のお嫁さん』」
この声は楠葉ちゃん!
何根も葉もないことを言ってるの!
「おや、違った?」
「ち、違うよぉ」
「愛流さん、いちいちそうやって反応するからからかわれる」
不破君が冷静に言い、楠葉ちゃんが少々不機嫌そうな顔を不破君に向ける。
不破君の耳は……やっぱりちょっと赤い。
でも楠葉ちゃんがこんなリアクションしてるって事は、気づいて無いんだろう。
不破君ってこういうところすごいなぁ。
「で、2割冗談はさておき」
2割しか冗談じゃないの!?
「愛流ちゃんの夢って何?」
「私の夢はね、デュエルモンスターズのカードデザイナーになる」
「へぇ、カードデザイナーか。いい夢だな」
「そうだね」
不破君も楠葉ちゃんも褒めてくれた。
夢を認めてくれる人がいるってのはうれしい。
「私の頭の中にあるドラゴン族モンスターの魅力を全て詰め込んだようなすっごいドラゴン族のモンスターを世の中に送り出してみたいの。いや、ドラゴン族だけじゃなくて魔法使いとか機械とか、とにかく私の中に浮かんでいる絵を全て形にしてみたいの」
「あ、良かった。前半だけだったらいつもの愛流さんだったかって思ったけど」
「ちゃんと他のモンスターのイラストも考えてるみたいで安心したよ」
もう、どういう意味!
そりゃドラゴン族だけしか考えられないんじゃ、ありとあらゆる種族や魔法・罠カードのイラストを書き起こすようなカードデザイナーにはなれっこないよ。
「にしても愛流ちゃんがカードデザイナーで不破君がリアルソリッドビジョンの研究者か……愛流ちゃんがデザインしたカードを不破君が実体化させる……やっぱり夫婦の共同作業じゃない」
「…………」
「…………」
確かにその通りだ。
不破君もさすがに何も言い返せず絶句してしまってる。
「わ、私たちのことはいいの。それよりも楠葉ちゃんは?」
どう考えてもごまかしてるようにしか見えないだろうけども、楠葉ちゃんの夢も気になるところだ。
「誤魔化したね……私は家業の家電修理店を継ぐけども、デュエルディスクの修理も出来るようになりたいな。今のところデュエルディスクの修理が出来るのはデュエルディスクの開発会社だけじゃない。僕の家の店がそれが出来るようになったら、きっとお客様もいっぱい来るようになるよ」
楠葉ちゃんもちゃんと将来のことは考えてるんだ。
そういや岬君の将来は……あれ、いない。
もう帰っちゃったのかな?
「確かにもういないな」
「岬君の夢は聞いたことあるの?」
1人だけ知らないというのはなんかもやもやしちゃう。
まあ不破君なら何か知ってるかもしれないし、尋ねてみよう。
「小学生のころに1度聞いたけど、そのときに『もう叶ってるけど……強いて言うなら見届ける、かな』って言ってた」
小学生のときに叶った夢?
それと、見届ける?
何がなんだかさっぱりだよ。
「確かに何がなんだかさっぱりだね」
「だよなぁ。当時の俺も小学生だから分からないかと思ってたんだけども、やっぱり2人も分からないか」
楠葉ちゃんも不破君も首を傾げてる。
一体何のことなんだろう?
やっぱり今度本人に聞いてみたほうが早そうだ。
「じゃ、愛流ちゃんの夢の第一歩として僕が想像して考えたモンスターのイラストも教えていいかな?」
「あ、俺も俺も」
楠葉ちゃんも不破君もノリノリだ。
応援してくれるのはうれしいけど、少し照れくさい。
「そういや僕たち、誰もプロデュエリストとか考えてないよね」
TV中継とかでデュエルモンスターズの全国大会やランキング戦を行ってるのは見てる。
確かにTVとか出れるのは華やかだけども。
「いや私がTVとか出たらさ、ドラゴン族モンスターが出ても思う存分愛でることが出来ないじゃん。抱きついたりも出来ないし、よしんば抱きつけたとしてもそういった行いが全国中継されると思うと」
「「確かに」」
そう。
プロデュエリストになるというのは、勝つことや人々を楽しませることもあるが。
私の場合、ドラゴン族モンスターに抱きついたりしたり愛を語ったりと、とてもTVでは流せない行いをするので、無理なのである。
それにプロデュエリストは人々を楽しませたりとか言ってはいるけど、その目は勝つことでギラギラしてるから正直、なんか好きになれない。
「俺は気楽に『デュエルモンスターズ』をすることは好きだけどな。プロにはそういった気楽さは一切無いんだよ。成果だけを求められ、過程は評価されない。プロデュエリストってのは自分の地位を守るために、同じ境遇に立ってるかもしれない誰かを蹴落とすみたいな弱肉強食の世界だろ。そんな息苦しい窮屈な世界、少なくとも俺はごめんだね」
確かに。
自分が弱小でこの試合を勝たなきゃ次が無い。
それが対戦相手も同じ気持ちを背負っているのだとしたら、戦って勝ててもあんまりうれしくは無い。
「まあ俺がリアルソリッドビジョンの研究をもっと進められたら、デュエルの勝敗なんかどうでもよく感じられるぐらいの迫力を出せるようにしたいな」
「私も。みんなの印象に残るようなイラストを描いて、それがカードになって表舞台に出たらそれで満足かな」
「なるほどねー、そういう考えもあるんだ」
ん、誰だろ?
振り返ると、眼鏡をかけてニコニコしてる女の子がそこにいた。
「あっ、ごめんね。なんか興味深い話をしてたみたいだから、それ聞いちゃってさ。私は『宝田 祭』。よろしくねー、愛流さんに不破君」
「あっ、私の名前知ってるんだ」
「そりゃあね。入学試験のとき、ドラゴンに抱きつくなんてことをやってた子、嫌でも覚えるって」
あっ、あの時残ってた受験生だったんだ。
うわー、こりゃ恥ずかしい。
「でさ、本題に戻るね。私の両親さ、私がプロデュエリストになってほしいって思ってるわけ。確かに華やかだし」
あっ、プロデュエリスト志望だったんだ。
そんな子がいるのにプロデュエリストがあんまり好きになれないみたいな話をしちゃってたんだ。
「でも、私の両親の夢であってさ、もちろん親が私に期待してくれてることだから私は叶えてあげたいと思うわけよ。でも、私には他に夢があるんだ。だからいろいろ話してた3人に興味がわいたんだ。だからさ、私とデュエルしない、愛流さん?」
え、私?
別にデュエルなら受けて立つよ。
「愛流さんのようにドラゴンが好きな子なら窮屈なデュエルはしないかなーって思ってさ。話も気軽にしながらデュエルをしたいんだ。受けてくれる?」
「もちろん!」
相手がドラゴンを使うのならそれは最高だが、それ以外の使い手でもどんなデュエルをするのかワクワクが止まらない。
「おっ、デュエルするみたいだな」
「いいぞー」
私たち同じようにおしゃべりしてたほかの生徒も私たちを見てる。
よーし、がんばろうっと。
「「デュエル」」
遊紅 愛流 LP8000 VS 宝田 祭 LP8000
「先攻は私からだね。私は『トゥーンのしおり』を発動」
トゥーン。
既存のモンスターがコミカルな漫画チックなイラストになったカテゴリ。
一番私が親しみを感じている『真紅眼の黒竜』も『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』としてカテゴリ化されている。
これはもしかしたら。
「『トゥーンのしおり』はカードテキストに『トゥーン・ワールド』が書かれているカードか『トゥーン・ワールド』そのものを手札に加えるよ。私が加えるのは『トゥーン・フリップ』。そして1000LP払って『トゥーン・ワールド』を発動」
宝田 LP8000→7000
宝田さんの場に巨大な漫画本が現れる。
もしかしたら宝田さんの夢は。
「そう、漫画家だよ。『デュエルモンスターズ』を題材とした漫画を描いてみたいんだ、私。速攻魔法『トゥーン・フリップ』発動。デッキから異なる種類の『トゥーン』モンスター3体を選ぶ」
選ばれたのは『トゥーン・ブラック・マジシャン』『トゥーン・カオス・ソルジャー』『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』
「レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン、レッドアイズレッドアイズレッドアイズ」
「やっぱりそうなるよねぇ……でも残念ながらランダムなんだ。相手がランダムで選んだモンスターが特殊召喚されるんだ」
3枚が裏になり、トゥーン・ワールドに吸い込まれていく。
ここは私のドラゴン愛にかけてレッドアイズを引き当てる!
「さぁ『右!』……即決過ぎるよ……」
宝田さんが選ばれたカードを見てさらに顔を引きつらせる。
「……レッドアイズ・トゥーン・ドラゴンを特殊召喚!」
わーい、やったぁ!
デフォルメされたとはいえ、レッドアイズの鋭利な体は魅力を失わない。
むしろデフォルメされたことで元々合った格好良さに加えて可愛らしさまで手にいれた。
『トゥーンはパーフェクトな生命体デース』とどこかで聞いたことがあるが、今ならその言葉に同意できる。
このレッドアイズ・トゥーン・ドラゴン……かっこいい、かわいい、カートゥーンの3Kの持ち主!
私をメロメロにするのにふさわしい逸材だよ~!
「……速攻で引き当てた挙句、私の『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』に遠慮なく抱きついて……本当、愛流さんは自分に正直だね」
宝田さんが少し呆れつつも感心した目で私を見つめていた。
昨日のドタバタした日からもう1日が過ぎたんだ。
今日もアカデミアで授業があるんだった。
早く起きなきゃ。
「おはようございますですの、愛流お嬢様」
……ここは私の家だよね?
まさか積年の思いだった『ドラゴンメイドに朝、笑顔で起こされる』が叶うとは。
ラドちゃんがニコニコと笑顔で私を見てくる。
おいおいおい、ラドちゃんはドラゴン族だけじゃなくて天使族としても扱うというテキスト外効果があるんじゃないの?
「おはよう」
「もう抱きつかれるのは慣れたですの」
とりあえず朝一番にハグ。
ラドちゃんも特に慌てることなく私を抱きとめてくれた。
今、この近辺で幸せな朝を迎えているのは私だけではないかという錯覚すら覚えてしまう。
「お着替えしてから朝食食べてるですの? それともパジャマのまま下に降りてから食べるですの?」
「んー、着替えてからにする」
「お手伝いするですの?」
「さすがにそこまでは大丈夫。お母さんの手伝いしてあげて」
「了解ですの」
ラドちゃんが敬礼のポーズを取り、部屋から出て行く。
昨日の夜、お母さんとお父さんにラドちゃんのことを説明したらすごく驚いてたっけ。
とりあえず現物の『ドラゴンメイド・ラドリー』が現実で具現化して私の傍にいてくれるって説明したけども、やはり怪訝そうな顔をしていたからなぁ。
「家事などのお手伝いをするですの。だから追い出さないで欲しいですの」
ラドちゃんが必死に懇願して、危害を加えるような子じゃないというのがわかってようやく納得してくれたからなあ。
それにしてもさまざまなカードイラストだと少し失敗してるようなドジな子って言う印象だったけど、前のご主人様のところである程度仕事は出来るようになってたんだろう。
特にドジなところを見せず、現代の家電も使いこなしていた。
「家事の手伝いをしてくれるし、こんなに可愛い子ならいてほしいわ」
お母さんが専業主婦で昼は1人きりというのもあって、話し相手も欲しかっただろうからそれも追い風だった。
私が危機を感じたらすぐに来てくれるらしいので、別にずっと一緒にいる必要はない……というか学校でも傍にいられたら間違いなくラドちゃんにだけ眼を向けて授業を聞かないだろう。
そうなって成績が下がったら元も子もないからそればっかりはしょうがない。
さてと、制服に……昨日はラドちゃんにスカートめくられて不破君にパンツ見られちゃったからなぁ……恥ずかしかったぁ。
それにこれからもいろいろなドラゴンとの出会いを堪能するたびにいろいろと動くだろうから……
「あったあった」
タンスの奥にあったスパッツ。
だいたい3つぐらいあった。
これだけあればちゃんとローテーション組める。
これで下着を見られる心配は無い。
「さてと、朝ごはん朝ごはん」
今日の朝ごはんは何だろう。
心躍らせながら階段を下りていく。
「おはよう」
「どうぞですの」
私が席に座ると、ラドちゃんが朝ごはんが載ったお盆を持ってきてくれた。
白いご飯にほうれん草のおひたし。
そして鮭の焼き魚。
味噌汁もいいにおい……それにコーンスープにコンソメスープにお吸い物に……って飲む系の食事多いね!?
「昨日の深夜に仕込みをして置いたんですけど、つい作りすぎちゃったですの」
「まあ、昨日止めなかった私も悪かったわ。まさか家にあった鍋全て使ってここまでスープ系の食事を作るなんて」
お母さんもやっぱり苦い顔だ。
まあラドちゃんが作ってくれたものを残すなどありえない。
「確かにおいしい」
お父さんに褒められ、ラドちゃんがふふんと得意げな顔になる。
「確かにおいしいが、夜はお前の作る食事を楽しむとしようか」
「ま、あなたったら」
まあお母さんはお父さんと結婚して専業主婦になる前は料理店で調理補佐をしてたらしい。
私も何度かお母さんやお父さんのために料理は作ったことはあるけども、お母さんよりも上手に作れたことは無い。
「夫婦仲良くてラブラブですの」
そしてラドちゃん、どストレート。
お父さんもお母さんも顔を赤くしてわざとらしく咳しちゃってるし。
まあお父さんは私もお母さんも愛してくれてるし、その気持ちはうれしい。
前にも思ったが、私のこの行き過ぎた愛の形はお父さん譲りなところだろう。
まあ私ほど暴走して無いけども。
とりあえずラドちゃんが作った朝ごはん、スープ系が確かに多いけどいいにおいが渋滞している。
空っぽなお腹が刺激されるし、早速いただくとしよう。
「それではいってらっしゃいですの」
ラドちゃんとお母さんに見送られ、私とお父さんは同時に家を出る。
自転車を漕いでアカデミアまで行く。
昨日もドキドキワクワクが止まらなかったが、今日はまた新しい出会いがあるかもしれない。
そう思うと通学路も華やいで見える。
「おっす」
自転車を漕いでる途中、不破君に後ろから声を掛けられる。
特に体調の悪そうな顔ではない。
昨日あれほどの戦いをして、怪我は一切なかったがもしかしたら具合が悪くなったりとかそういうことを考えていたが、杞憂だったみたいだ。
「おはよう、不破君」
「おう。ラドリーちゃんの気配は感じないみたいだけど」
「うん、お母さんの家事のお手伝いしてる」
「そうか。てっきり愛流さんのことだから学校にも連れて行って一日中べったりするつもりじゃないかと思ってた」
確かに私も最初はそう思った。
「でも不破君、1日中べったりして授業聞けなくなるというデメリットがあるよそれは」
「授業じゃなかったら1日中べったりするつもりなんだな」
不破君が呆れつつも軽快な声で話しかけてくれる。
そりゃあんなに可愛いドラゴンメイドさんがいたら一日中べったりしてても退屈することは無い。
一緒に家事のお手伝いとかも出来たらもはやファンタスティックの一言に尽きちゃうよ。
「まあいいや。それよりもちゃんと宿題とかしたか?」
「もちろん。不破君は?」
「大丈夫」
不破君が隣に来て自信満々にVサインをする。
答えが間違えてなけりゃいいけど、何度か見直しや計算しなおしもしたから大丈夫。
不破君と一緒に自転車を漕ぎ、アカデミアへと向かっていく。
「おはよう、2人とも」
「おっす、楠葉さん」
「楠葉ちゃん、おはよう」
教室に入ると、楠葉ちゃんがいきなり挨拶してきた。
なんでかニヤニヤ笑ってるのが気になるけど……
「どうやら昨日の帰り道の間に2人で親密な仲になったみたいだね。さすがの僕でもまさか2日目でカップルになれたりしないよ」
かかかカップル!?
確かに昨日は不破君とはいろいろな経験を共にしたけど、そういったお付き合いみたいな関係にはまだなってないよ!?
「まあ愛流さんほどじゃないにしろ、俺もドラゴンは好きだからな。お互いドラゴン隙ということで話も合う、いわば同志みたいなものだ。そういった浮ついた関係じゃないさ」
「なんだ、それは残念」
私がどう答えようか戸惑っている間に不破君がフォローしてくれた。
そう、私も不破君もドラゴンが好きな者同士。
今度小説の貸し借りも約束したし、不破君がドラゴンと魔術師の力を借りて変身するようなドラゴンとの絆の深さも確認できた。
不破君も言ってたけど、ドラゴン好きという強固な絆であって、決して浮ついた関係ではないのだよ、うん。
「まあ今はそういうことにしておいてあげるけど」
今はって何?
楠葉ちゃん、絶対わかって無いでしょ!
「助かる」
……それに比べて不破君は結構冷静に受け答えしてる。
なんか私1人だけ慌ててバカみたい……あ、不破君耳赤い。
言葉では取り繕ってるけど、意識してくれてるんだ。
…………なんでうれしいと思ってるんだろ、私?
「おはよう、3人とも早いな」
そして岬君が最後に教室に入ってきて私たち3人の集まりのところへとやってくる。
「岬が遅いんだよ」
「言ってくれるな、不破」
岬君と不破君がお互い言い合いしながらも笑顔を浮かべている。
さすがは幼馴染の仲の深さといったところだろうか。
「ところで今日の宿題やってきてあるか? 不破、泣きつくなよ?」
「ちゃんとやってきてるっての」
岬君が挑発するように言うが、不破君がドヤ顔で言い返す。
「楠葉ちゃんは?」
「もちろん僕だってちゃんとやってきてるよ」
どうやら私の班のメンバーは皆マジメらしい。
そして皆で答え合わせをしてみたが楠葉ちゃんと不破君が少し間違ってたぐらいでなんとか修正できた。
「これでよしっと」
不破君が一息ついて少しして始業のチャイムが鳴り、それぞれの席へと戻っていく。
「ほい、これ」
本日の授業が終わり、最後のHRのときに紅弥先生から1枚の紙が手渡された。
「進路調査書、ですか?」
「おう。デュエルモンスターズに関わる仕事をするのかそれ以外の仕事をするのか、生徒の夢を知るためだ」
こういうのって中学生のときにもやったけども、それは3年生のときだった。
まさか入学して2日目でいきなり書かされるとは。
「まあ今はどんな夢を抱いてるのか知りたいからな、今は重く考えなくていい。明日までに提出するように。じゃ、今日の授業は終わり」
紅弥先生が教室から退室していき、それを合図に他の生徒たちも動き始める。
帰宅部で家へと帰ろうとするもの、部活動がどんなものがあるのか見学に向かおうとするもの。
私は今のところ部活をしようとは考えてはいないので、すぐに帰るつもりだったが。
「進路か」
前の席にいた不破君が私に話しかけてくる。
不破君は今は家族が行方不明で、探し出すのが夢だっけ。
「不破君の両親が見つかったら、どうするの?」
「本当の夢……リアルソリッドビジョンの研究者になる。父さんがやってたみたいに、今以上にリアルな体感が出来るソリッドビジョンを作り出す。それでデュエリストが皆楽しんでくれればそれでいいかなって」
それはいい夢だ。
「愛流さんの夢は?」
「私の夢は『不破君のお嫁さん』」
この声は楠葉ちゃん!
何根も葉もないことを言ってるの!
「おや、違った?」
「ち、違うよぉ」
「愛流さん、いちいちそうやって反応するからからかわれる」
不破君が冷静に言い、楠葉ちゃんが少々不機嫌そうな顔を不破君に向ける。
不破君の耳は……やっぱりちょっと赤い。
でも楠葉ちゃんがこんなリアクションしてるって事は、気づいて無いんだろう。
不破君ってこういうところすごいなぁ。
「で、2割冗談はさておき」
2割しか冗談じゃないの!?
「愛流ちゃんの夢って何?」
「私の夢はね、デュエルモンスターズのカードデザイナーになる」
「へぇ、カードデザイナーか。いい夢だな」
「そうだね」
不破君も楠葉ちゃんも褒めてくれた。
夢を認めてくれる人がいるってのはうれしい。
「私の頭の中にあるドラゴン族モンスターの魅力を全て詰め込んだようなすっごいドラゴン族のモンスターを世の中に送り出してみたいの。いや、ドラゴン族だけじゃなくて魔法使いとか機械とか、とにかく私の中に浮かんでいる絵を全て形にしてみたいの」
「あ、良かった。前半だけだったらいつもの愛流さんだったかって思ったけど」
「ちゃんと他のモンスターのイラストも考えてるみたいで安心したよ」
もう、どういう意味!
そりゃドラゴン族だけしか考えられないんじゃ、ありとあらゆる種族や魔法・罠カードのイラストを書き起こすようなカードデザイナーにはなれっこないよ。
「にしても愛流ちゃんがカードデザイナーで不破君がリアルソリッドビジョンの研究者か……愛流ちゃんがデザインしたカードを不破君が実体化させる……やっぱり夫婦の共同作業じゃない」
「…………」
「…………」
確かにその通りだ。
不破君もさすがに何も言い返せず絶句してしまってる。
「わ、私たちのことはいいの。それよりも楠葉ちゃんは?」
どう考えてもごまかしてるようにしか見えないだろうけども、楠葉ちゃんの夢も気になるところだ。
「誤魔化したね……私は家業の家電修理店を継ぐけども、デュエルディスクの修理も出来るようになりたいな。今のところデュエルディスクの修理が出来るのはデュエルディスクの開発会社だけじゃない。僕の家の店がそれが出来るようになったら、きっとお客様もいっぱい来るようになるよ」
楠葉ちゃんもちゃんと将来のことは考えてるんだ。
そういや岬君の将来は……あれ、いない。
もう帰っちゃったのかな?
「確かにもういないな」
「岬君の夢は聞いたことあるの?」
1人だけ知らないというのはなんかもやもやしちゃう。
まあ不破君なら何か知ってるかもしれないし、尋ねてみよう。
「小学生のころに1度聞いたけど、そのときに『もう叶ってるけど……強いて言うなら見届ける、かな』って言ってた」
小学生のときに叶った夢?
それと、見届ける?
何がなんだかさっぱりだよ。
「確かに何がなんだかさっぱりだね」
「だよなぁ。当時の俺も小学生だから分からないかと思ってたんだけども、やっぱり2人も分からないか」
楠葉ちゃんも不破君も首を傾げてる。
一体何のことなんだろう?
やっぱり今度本人に聞いてみたほうが早そうだ。
「じゃ、愛流ちゃんの夢の第一歩として僕が想像して考えたモンスターのイラストも教えていいかな?」
「あ、俺も俺も」
楠葉ちゃんも不破君もノリノリだ。
応援してくれるのはうれしいけど、少し照れくさい。
「そういや僕たち、誰もプロデュエリストとか考えてないよね」
TV中継とかでデュエルモンスターズの全国大会やランキング戦を行ってるのは見てる。
確かにTVとか出れるのは華やかだけども。
「いや私がTVとか出たらさ、ドラゴン族モンスターが出ても思う存分愛でることが出来ないじゃん。抱きついたりも出来ないし、よしんば抱きつけたとしてもそういった行いが全国中継されると思うと」
「「確かに」」
そう。
プロデュエリストになるというのは、勝つことや人々を楽しませることもあるが。
私の場合、ドラゴン族モンスターに抱きついたりしたり愛を語ったりと、とてもTVでは流せない行いをするので、無理なのである。
それにプロデュエリストは人々を楽しませたりとか言ってはいるけど、その目は勝つことでギラギラしてるから正直、なんか好きになれない。
「俺は気楽に『デュエルモンスターズ』をすることは好きだけどな。プロにはそういった気楽さは一切無いんだよ。成果だけを求められ、過程は評価されない。プロデュエリストってのは自分の地位を守るために、同じ境遇に立ってるかもしれない誰かを蹴落とすみたいな弱肉強食の世界だろ。そんな息苦しい窮屈な世界、少なくとも俺はごめんだね」
確かに。
自分が弱小でこの試合を勝たなきゃ次が無い。
それが対戦相手も同じ気持ちを背負っているのだとしたら、戦って勝ててもあんまりうれしくは無い。
「まあ俺がリアルソリッドビジョンの研究をもっと進められたら、デュエルの勝敗なんかどうでもよく感じられるぐらいの迫力を出せるようにしたいな」
「私も。みんなの印象に残るようなイラストを描いて、それがカードになって表舞台に出たらそれで満足かな」
「なるほどねー、そういう考えもあるんだ」
ん、誰だろ?
振り返ると、眼鏡をかけてニコニコしてる女の子がそこにいた。
「あっ、ごめんね。なんか興味深い話をしてたみたいだから、それ聞いちゃってさ。私は『宝田 祭』。よろしくねー、愛流さんに不破君」
「あっ、私の名前知ってるんだ」
「そりゃあね。入学試験のとき、ドラゴンに抱きつくなんてことをやってた子、嫌でも覚えるって」
あっ、あの時残ってた受験生だったんだ。
うわー、こりゃ恥ずかしい。
「でさ、本題に戻るね。私の両親さ、私がプロデュエリストになってほしいって思ってるわけ。確かに華やかだし」
あっ、プロデュエリスト志望だったんだ。
そんな子がいるのにプロデュエリストがあんまり好きになれないみたいな話をしちゃってたんだ。
「でも、私の両親の夢であってさ、もちろん親が私に期待してくれてることだから私は叶えてあげたいと思うわけよ。でも、私には他に夢があるんだ。だからいろいろ話してた3人に興味がわいたんだ。だからさ、私とデュエルしない、愛流さん?」
え、私?
別にデュエルなら受けて立つよ。
「愛流さんのようにドラゴンが好きな子なら窮屈なデュエルはしないかなーって思ってさ。話も気軽にしながらデュエルをしたいんだ。受けてくれる?」
「もちろん!」
相手がドラゴンを使うのならそれは最高だが、それ以外の使い手でもどんなデュエルをするのかワクワクが止まらない。
「おっ、デュエルするみたいだな」
「いいぞー」
私たち同じようにおしゃべりしてたほかの生徒も私たちを見てる。
よーし、がんばろうっと。
「「デュエル」」
遊紅 愛流 LP8000 VS 宝田 祭 LP8000
「先攻は私からだね。私は『トゥーンのしおり』を発動」
トゥーン。
既存のモンスターがコミカルな漫画チックなイラストになったカテゴリ。
一番私が親しみを感じている『真紅眼の黒竜』も『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』としてカテゴリ化されている。
これはもしかしたら。
「『トゥーンのしおり』はカードテキストに『トゥーン・ワールド』が書かれているカードか『トゥーン・ワールド』そのものを手札に加えるよ。私が加えるのは『トゥーン・フリップ』。そして1000LP払って『トゥーン・ワールド』を発動」
宝田 LP8000→7000
宝田さんの場に巨大な漫画本が現れる。
もしかしたら宝田さんの夢は。
「そう、漫画家だよ。『デュエルモンスターズ』を題材とした漫画を描いてみたいんだ、私。速攻魔法『トゥーン・フリップ』発動。デッキから異なる種類の『トゥーン』モンスター3体を選ぶ」
選ばれたのは『トゥーン・ブラック・マジシャン』『トゥーン・カオス・ソルジャー』『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』
「レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン、レッドアイズレッドアイズレッドアイズ」
「やっぱりそうなるよねぇ……でも残念ながらランダムなんだ。相手がランダムで選んだモンスターが特殊召喚されるんだ」
3枚が裏になり、トゥーン・ワールドに吸い込まれていく。
ここは私のドラゴン愛にかけてレッドアイズを引き当てる!
「さぁ『右!』……即決過ぎるよ……」
宝田さんが選ばれたカードを見てさらに顔を引きつらせる。
「……レッドアイズ・トゥーン・ドラゴンを特殊召喚!」
わーい、やったぁ!
デフォルメされたとはいえ、レッドアイズの鋭利な体は魅力を失わない。
むしろデフォルメされたことで元々合った格好良さに加えて可愛らしさまで手にいれた。
『トゥーンはパーフェクトな生命体デース』とどこかで聞いたことがあるが、今ならその言葉に同意できる。
このレッドアイズ・トゥーン・ドラゴン……かっこいい、かわいい、カートゥーンの3Kの持ち主!
私をメロメロにするのにふさわしい逸材だよ~!
「……速攻で引き当てた挙句、私の『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』に遠慮なく抱きついて……本当、愛流さんは自分に正直だね」
宝田さんが少し呆れつつも感心した目で私を見つめていた。
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