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HOME > 遊戯王SS一覧 > 舞う黒き羽

舞う黒き羽 作:エスカル

「俺のターン!」

そして先攻は九谷君からだ。
さて、どのようなドラゴンを見せてくれるのか。

「俺はサファイアドラゴンを召喚!」

いいいいきなりサファイアドラゴンですと!?
青く美しい宝石サファイア。
そのサファイアで体が構成されているドラゴン。
その美しいサファイアの輝きと反比例するように相手を睨みつけるその荒々しさ。
そのコントラストがサファイアの美しさとドラゴンの雄々しさをそれぞれ引き出している。
他の宝石ドラゴンも魅力はそれぞれあるが、サファイアドラゴンほど相手を睨みつけているイラストの宝石ドラゴンは見たことが無い。

まさか、宝石ドラゴン主体のデッキとか……?
これは期待が高まっちゃうよ!


「……なぁ、岬君だっけ?」
「どうした、九谷君?」
「なんかさ愛流ちゃんに俺のドラゴンすごくガン見されてるんだけどさ」
「九谷君は3戦の間愛流さんの何を見てたんだ。あれほどのドラゴン好きだからサファイアドラゴンなんて召喚したらガン見されるに決まってるだろ」

うんうん、岬君の言う通り。
むしろいますぐ抱き着きに行きたいところだけど楠葉ちゃんに強く抱きしめられて動き封じられているからね。
むしろ様々な宝石ドラゴンを召喚されて興奮が冷め止まなくなったら楠葉ちゃんに制止すら抑えきれなくなってしまうかもしれない。

そうなったら……うん、大変だ。

「ま、まあ別にキモイとか言われてるわけじゃないし、いいか……俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

九谷 準 LP8000
モンスターゾーン サファイアドラゴン
魔法・罠カードゾーン セットカード2枚
手札2枚

「さて、俺のターンだな、ドロー!」

次は岬君のターン。
岬君はどんなデッキを使ってるんだろうか?

「俺は永続魔法・黒い旋風を発動! そして俺はBF―蒼炎のシュラを召喚し黒い旋風の効果発動! デッキから召喚した蒼炎のシュラの攻撃力より下のBFと名のつくモンスター1体を手札に加える! 俺はBF―疾風のゲイルを手札に加える!」

なるほど、岬君のデッキはBFか。
しかし、デュエルの最終戦にBF……

デュエルのトリなだけに、トリのデッキって奴ね。

そんなくだらないことを考えていると、楠葉ちゃんの手が私のお腹辺りから胸に移動し……って

「ちょちょちょ!? 楠葉ちゃん、なんで私の胸を揉んでるの!?」
「いや、愛流ちゃんがあまりにもくだらないオヤジギャグを言うからついイラっときて」
「今の声に出してたの!?」
「うん、思いっきり」

私が不破君を見ると、不破君も少し顔を赤くしながらうんうんと頷く。
うわ、オヤジギャグを言ってたの聞かれたのは恥ずかしい。
それから不破君、なるべく今の状態あんまり見ないで……

「っていうかイラっときたからってなんで胸揉むの!?」
「だって愛流ちゃん、ボクよりも胸大きいじゃん。どんな感触なのかなって」

確かに私のDカップの胸の方が楠葉ちゃんの、えっと、モンスターで例えるとクリフォート・アセンブラのような断崖絶壁よりも遥かにあるというものだ。

「どうやらまだ揉まれたいようだね。それとも不破君とボクにだけ見えるようにそのミニスカート豪快にめくろうか? 不破君、愛流ちゃんのミニスカートめくっちゃっていいよ? ボクが許すから」
「両方とも勘弁してくださいごめんなさい」

素直に謝罪すると、楠葉ちゃんが何度か私の胸を揉んだ後、再びお腹辺りに両腕を回していく。

「ところで不破君、少し残念そうな顔してない?」
「してねーよ!? 誤解されるようなこと言うな!」

その割には顔少し真っ赤だよ?

「不破君のエッチ」
「だから違うって! おい、八住! こういうときどう返すのが正解なんだ!?」
「知るかそんなもん! 俺に聞くなこの野郎!」

そして八住君に飛び火。
なんかごめんなさい、八住君。



「……なんか向こうが妙に楽しそうだけど、デュエル続行するぜ」
「あ、うん」
「俺はBF―疾風のゲイルを特殊召喚する! こいつは俺の場にBFと名のつくモンスターが存在していれば手札から特殊召喚できるぜ!」

次に顔が黄色の黒い翼をもつ小鳥が出現する。
忘れがちだけど、あの黄色いのって嘴じゃないんだよね。

「そして俺はゲイルの効果を使わせてもらう! サファイアドラゴンの攻撃力を半分にする! そしてバトルフェイズ! 蒼炎のシュラでサファイアドラゴンに攻撃!」

蒼炎のシュラがサファイアドラゴンに向かって飛んでいく。
このままいけば戦闘破壊されちゃうけど。
さすがに2枚も伏せカードがあって何もないとは考えづらい。

「俺は罠カード・ジャスティブレイクを発動! 俺の場の表側攻撃表示通常モンスターが攻撃対象に選択されたときに発動する! フィールドの表攻撃表示以外のモンスターを全て破壊する!」

サファイアドラゴンが口を大きく開けて大咆哮!
それにたまらず蒼炎のシュラとゲイルが耳らしき場所に手を当て、そのまま岬君の墓地へと飛んで行っちゃった。
それにしてもなんと雄々しい咆哮。
思わず聞き入っちゃったよ。
もっとも、BFたちには不評だったみたいだけど。

「破壊罠か」
「ミラフォと違って裏側守備モンスターも破壊出来たりするからこっちの方が都合がいいんだよね。で、どうする?」
「メイン2、俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

岬 黒人 LP8000
モンスターゾーン
魔法・罠カードゾーン 黒い旋風 セットカード2枚
手札3枚

「次は俺のターン! 俺は罠カード・凡人の施しを発動。2枚ドローしてその後通常モンスターを1枚ゲームから除外。俺は2枚ドローしてエメラルド・ドラゴンを除外。そして俺は魔法カード・融合を発動! 手札の神竜ラグナロクとロード・オブ・ドラゴン―ドラゴンの支配者を融合! 出でよ竜魔人キングドラグーン!」

上半身は魔法使いで下半身がドラゴンであり、しかもその上半身もドラゴンに侵蝕されかけてる魔人。
ドラゴンを支配する者が神龍の力を得て、更なる力を得た状態。
なんと格好良いのだ。

「キングドラグーンの効果発動! 俺は手札からマテリアルドラゴンを特殊召喚する!」

マテリアルドラゴンまで呼び出すなんて!
これで九谷君の場のドラゴンたちは対象に取られず、手札を1枚捨てることで破壊効果まで無効にしちゃう!
これはなかなか強固な場だよ。

「バトル! マテリアルドラゴンでダイレクトアタック!」

マテリアルドラゴンが先陣を切って岬君に襲い掛かっていく。

「速攻魔法・終焉の炎を発動! 黒焔トークンを2体特殊召喚!」

岬君の場に一つ目の黒い炎の生命体が出現したけど、マテリアルドラゴンとサファイアドラゴンにあっさりと潰されちゃった。

「竜魔人キングドラグーンでダイレクトアタック!」

キングドラグーンが両腕から炎を出し、岬君に直撃させる。

岬 黒人 LP8000→5600

「よっしゃ、メイン2! カードを1枚伏せてターンエンド」

九谷 準 LP8000
モンスターゾーン サファイアドラゴン マテリアルドラゴン
EXモンスターゾーン 竜魔人キングドラグーン 
魔法・罠カードゾーン セットカード1枚
手札0枚

「さてと、俺のターン、ドロー。俺は魔法カード・死者蘇生を発動! 墓地からBF―蒼炎のシュラを特殊召喚する! そして手札からBF―南風のアウステルを召喚!」

南風のアウステルはチューナーモンスター。
ってことはま、まさか!?

「俺はLV4の蒼炎のシュラにLV4の南風のアウステルをチューニング! シンクロ召喚! 舞い上がれ、ブラックフェザー・ドラゴン!」

黒き翼を頭にいくつも装備し、カラスのような嘴。
そして自身の特色ともいえる黒き美しい翼……
まさに烏とドラゴンの特色が華麗に組み合わさってる。

「来たな、岬の切り札」
「不破君、感心してないでちょっと協力して! 愛流ちゃん抱きしめて止めておくのきつくなってきた!」

はっ、しまった!
ついブラックフェザー・ドラゴンの降臨に感動して、己を抑えきれなくなってた。

「ご、ごめんね」
「いや、落ち着いてよかったよ」

楠葉ちゃんが正気に戻った私を見てほっと一息ついていた。
楠葉ちゃんに迷惑を賭けたみたいで申し訳ない。


「バトルだ! ブラックフェザー・ドラゴンでマテリアルドラゴンに攻撃! ノーブル・ストリーム!」

ブラックフェザー・ドラゴンから赤き光線が放たれ、マテリアルドラゴンが抵抗することも出来ず一瞬で蒸発した。

ブラックフェザー・ドラゴン ATK2800 VS マテリアルドラゴン ATk2400

九谷 準 LP8000→7600

「メイン2、カードを1枚伏せてターンエンド」

岬 黒人 LP5600
EXモンスターゾーン ブラックフェザー・ドラゴン 
魔法・罠カードゾーン セットカード2枚 黒い旋風
手札1枚

「俺のターン、ドロー。俺はモンスターをセットして、サファイアドラゴンとキングドラグーンを守備表示にしてターンエンド」

さすがにブラックフェザー・ドラゴンが出てきたら形勢が悪くなっちゃったか。
ドラゴンたちも九谷君を守るように守備体制になっちゃった。

九谷 準 LP7600 
モンスターゾーン セットモンスター1体 サファイアドラゴン
EXモンスターゾーン 竜魔人キングドラグーン
セットカード1枚
手札0枚

「俺のターン、ドロー! 俺はBF―黒槍のブラストを召喚! そして黒い旋風の効果でデッキからBF―極北のブリザードを手札に加える」

槍を持った鳥人の背後に黒い羽根が特徴的な白い烏……ブラックフェザーなのに白がメイン?
ま、ブリザード君は翼は一応黒いからブラックフェザーでいいのか(納得)

「バトル! 黒槍のブラストで守備モンスターに攻撃!」
「守備モンスターは洞窟に潜む竜、守備力2000!」
「あめーよ! ダメージステップ開始時に手札のBF―月影のカルートを捨てて攻撃力1400アップ! これで黒槍のブラストの攻撃力は3100だ!」

BF―黒槍のブラスト ATK3100 VS 洞窟に潜む竜 DEF2000

「そして黒槍のブラストには貫通効果がある!」

黒槍のブラストが回転しながら洞窟に潜む竜に突撃していき、その槍で洞窟に潜む竜の喉元を貫いた。
その勢いが九谷君すらもひるませる。

九谷 準 LP7600→6500

「そしてブラックフェザー・ドラゴンでキングドラグーンに攻撃! ノーブルストリーム!」
「くそっ……」

今度はキングドラグーンがブラックフェザー・ドラゴンによって焼きつくされ消滅していく。
EXモンスターゾーンで他のBFを率いて戦う姿はやはり格好いい。
とはいってもまだ1体だけなんだが、まあ、それはそれだ。

「メイン2、このままターンエンド」

岬 黒人 LP5600 
モンスターゾーン BF―黒槍のブラスト 
EXモンスターゾーン ブラックフェザー・ドラゴン 
魔法・罠カードゾーン セットカード2枚 黒い旋風
手札1枚

「俺のターン、ドロー! 苦肉の策だがしょうがない。俺は魔法カード・命削りの宝札を発動! デッキから手札が3枚になるようにドローし、このターン相手に与えるダメージは0になる。そしてエンドフェイズに手札を全て捨てなければならない」

手札が0枚のタイミングで命削りの宝札を引き当てるとは。
なかなかの強運に感心してると、相手はカードを2枚セットし、モンスターも1体セットした。

「俺はこれでターンエンド」

九谷 準 LP6500
モンスターゾーン セットモンスター1体 サファイアドラゴン
魔法・罠カードゾーン セットカード2枚 
手札0枚


「俺のターン、ドロー! 南風のアウステルを墓地から除外して効果発動! 相手の場のカード5枚が存在していることでブラックフェザー・ドラゴンに黒羽カウンターを5つ乗せる。これでブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力はカウンターの数×700ダウン、つまり3500ダウンして0になるが、このタイミングだ! 罠カード・あまのじゃくの呪いを発動! これによりブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力は逆に3500アップし」
「攻撃力6300!?」
「さらに装備魔法・流星の弓―シールをブラックフェザー・ドラゴンに装備! これで攻撃力が1000ダウンする代わりに直接攻撃できる効果も、このターン中攻撃力が1000アップし直接攻撃できる効果になる!」

ってことは攻撃力7300の直接攻撃持ち!?

まさかブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力がダウンする効果をこんな使い方するなんて!

「岬の奴、なかなか奇抜な戦い方するだろ?」

不破君の言う通り。
普通のBFデッキの動きとはかけ離れてるけど、ブラックフェザー・ドラゴンを切り札として据える上ならこの上なく奇抜だが、効果的な戦い方だ。

「そしてこのタイミングで使わせてもらう! 罠カード・デルタクロウ・アンチ・リバース発動! 俺の場にBFと名のつくモンスターが存在してる場合、相手の魔法・罠カードゾーンにセットされたカードを全て破壊する!」

破壊されたのは魔法の筒に奈落の落とし穴。
おお、危ない。
魔法の筒のダメージはブラックフェザー・ドラゴンの効果で無効にできるけど攻撃が無効になっちゃうから決着がつけられない。

「舞え、ブラックフェザー・ドラゴン! ダイレクトアタック!」

ブラックフェザー・ドラゴンが空中で美しい軌道で飛行した後、九谷君に向き直りノーブル・ストリームを放った。

「俺の負けか」

九谷 準 LP6500→0

「岬君!」
「何、愛流さん?」

デュエルが終わって消える前にせめて!

「まあ、終わったからいいだろ」
「そだね」

楠葉ちゃんが私を解放してくれたので全力猛ダッシュ!
そして羽が黒く染まったブラックフェザー・ドラゴンの尻尾にハグ!
尻尾は鳥に似たような翼のサフサフした感じ。
それでいて鋭利な部分もあって少し危ないがそれがシャープな体系にあってカッコよさを際立たせている。
なんとも素晴らしいドラゴン……

「な、もういいか」
「うん、私大満足」

岬君がブラックフェザー・ドラゴンのカードをEXデッキに仕舞うと姿を消していく。
大満足ではあるけども、やっぱり名残惜しいよ……

「いやそんな顔されても困る」

そんなにひどい顔してた、私?

「うん、まるでこの世の終わりみたいな」
「さすがにそれは言いすぎだけど落ち込んでたのはよくわかる」
「ボクも機械の修理終わって元の持ち主の元へと納品されていくときに同じような顔するから気持ちはわかるけどね」

そして今のも声に出てたらしい。

「ていうか楠葉ちゃんの家って何の仕事なの?」
「機械修理。私何度も手伝わせてもらっているから簡単な機械の修理ならお任せだよ。そしてロッサス校に合格できたからリアルソリッドビジョンのデュエルディスクの構造も調べて修理できるようになって家の人に教えられれば、プロデュエリストたちのデュエルディスクの故障も修理出来てあらに儲かるようになるかも」

なるほど、そんな思惑もあったのか楠葉ちゃん。
私と同い年なのに結構色々考えてるんだなぁ。

「結局俺達全員負けちまったけど、いーか! この次は絶対に勝つからな! 首洗って待ってろよ!」
「なんかテンプレみたいな負け犬キャラみたいなこと言ってるけど、やっぱ八住とのデュエルは楽しいからな! いつでもリベンジなら受けて立つぜ!」
「お前のそう言う余裕そうなところがむかつくんだよ! 俺が苦労して勝利してもお前はその勝利を素直に讃えるしさ! 少しは悔しがったりしろよコノヤロー!」
「いやそりゃ悔しいさ。だけど、それ以上に俺に勝つために努力を重ねてきたんだなってのがデュエルを通じてわかるからその喜びが勝ってな」
「お前は俺のお母さんか何かか!?」

うーん、なんか不破君と八住君の関係ってなんなんだろう。
最初は八住君が嫉妬から相手を挑んできたように見えた。
でも、中学2年生の時に一度クラスメートになっただけの割には仲良さげだし。

「どういうこと?」
「まあ、中学2年の時、デュエルの腕前は不破が当時のクラス1だったんだよ。で、八住の奴もデュエルの腕前は相当だったんだけど、不破に負けてるのが悔しかったんだろうな。デュエルを一生懸命頑張ってさ」

ふむ。

「それでなんとか不破に一度勝ったんだけど、さっき八住が言ってた通り、不破は八住が勝ったことを喜んだんだよ。それで八住の奴、内心不破に認められたって嬉しく思ったらしくってさ。それ以降あんな感じで八住の奴、事あるごとに不破に絡んでくるんだよ。今回の件にしたって多分建前だろうさ。それにもし俺や愛流さんが先に声かけてなくて、八住が他に人を誘ってなかったら、八住は不破と一緒の班になりたかったんじゃないか?」

うわ、面倒くさいツンデレだこれ。
しかも不破君たぶん八住君が本当は仲良くしてほしいのに気づいてないだろうし。

「男の子同士の友情……なのかな?」
「友情とは違うと思うぜ。仲悪いわけじゃないけどな。多分、あいつらのこの関係はずっと続くだろうな」

まあ、不破君のあの性格じゃ一生気づくことは無さそうだ。
岬君もなんか諦めたような顔してるし。

「おー、お前らの班やっと終わったか」
「あ、俺たちが最後だったんですね」
「ああ、その通りだ。監視カメラでそれぞれの班見てたけど、愛流さんのあのドラゴンにやたらと抱き着いたりしたせいでデュエルのテンポが遅かったのが原因だな」
「本当にごめんなさい!」

全力で頭を下げる。
なんなら日本伝統奥義・土下座でもしなきゃ。

「いや、別に謝ることじゃねーよ。それにあんなにドラゴン好きな奴、俺がこのデュエルアカデミア・ロッサス校で行使してきて初めて見たわ。というわけだ」

紅弥先生がにかっと笑い、デュエルディスクに1枚のカードを置く。

「なんなら抱き着いていいぞ?」
「先生、もう愛流さん抱き着いてます」
「早っ」

紅弥先生が少しばかり呆れたような面白そうな声が聞こえてきたけど、目の前で私が抱きしめているドラゴンの前にはそんな声など些末なことだ!

「まあ、俺のレッド・デーモンズ・ドラゴンが気に入ってもらえたのなら何よりだ」

角を生やし、紅蓮の体色を持つドラゴン。
蝙蝠のような黒き翼。
まさに悪魔の名を冠するのにふさわしいその姿。
そして、私が抱き着いてもまったく動じず堂々と振舞うその姿。
まさに王者の風格と言っても過言ではないよ~

それにしても今日のこのデュエルと先生の恩恵だけで。

古代の機械熱核竜。
アモルファージ。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。
宝石竜の内の2体。
ブラックフェザー・ドラゴン。
そしてレッド・デーモンズ・ドラゴン。

まさかこんな大量のドラゴンたちをリアルソリッドビジョンで迫力ある姿を拝むことが出来たなんて。
まだ入学初日なのに、すごく大興奮でこれからの学生生活が楽しみでしょうがないよ~!

「まあ、ロッサス校に入学してドラゴンたちの触れ合いを楽しんでもらえたのなら幸いだ。それからこれから普通に授業あるからな。電池切れ起こして授業中に眠るなんてことが無いようにしてもらいたいもんだな」

……それを言われると少し不安だったりする。
さすがに初日の授業から居眠りして目立つのはごめん被る。
ただでさえ変な目立ち方してしまってるのに。

「じゃ、教室戻るぞ。他の班の連中は皆教室に戻ってるからな」

そして最後に戻ってきた班としてまた別の注目を浴びてしまいそうだ。

「ま、いいか。楽しい時間を他の連中よりも長く過ごせたと考えればさ」

不破君のそのポジティブシンキングは見習う所が本当に多い。

「じゃ、さっさと教室に戻るぞ」

紅弥先生に案内され、再び教室へと戻っていく。


それから普通の授業が終わり、下校時間。
私と不破君、それから岬君と楠葉ちゃんは一緒に玄関に立っていた。

「じゃ、今日は帰る前に俺達4人、一緒の班になったということでどこかカードショップで寄ってデュエルしようぜ」

その不破君の提案を受け、不破君と岬君が行きつけのカードショップに行くことになった。
私は特に用事がなくて平気だけど。

「大丈夫、ボクも家の仕事は今日はお休みだから。たまに手伝う程度だからね」

それなら一安心。
不破君と岬君の行きつけのカードショップ。
そこで不破君か岬君、それか楠葉ちゃんの3人の誰かとデュエル出来ること。
そしてそのカードショップでもしかして面白いデュエリストに出会えるかもしれないし。

まさか入学初日から今のこの時までずっとワクワクドキドキが止まらないなんて!


というわけで、私たち4人は不破君と岬君の行きつけのカードショップへと向かって歩き出した。

果たしてどんな出会いが待ってるんだろう?






「ここ?」
「おう、俺と岬の行きつけのカードショップ『ホリダシディア』だ」

5階建てのビルの1F部分にカードショップがあるらしい。
外から見る限り、ビルそのものは少し古いが、カードショップの方は少し新しく感じる。

「早速中に入ろうぜ」

岬君にせかされ、不破君と楠葉ちゃんと岬君が店の中へと入っていく。
私も彼らの後に続き、店の中に入る。

「いらっしゃーい……おっ、不破君に岬君」
「おっす、店長」
「相変わらずだな」

2人が仲良さげに声をかけたのは黒髪に眼鏡の、こういっては何だがどこにでもいそうな感じの人だ。
だけど、この人から優しそうな雰囲気は感じる。
ん、なんか私と楠葉ちゃんに目を向けたよ。

「そういや今日がデュエルアカデミア・ロッサス校の入学日だったね。早速友達になった女の子2人を連れてきてくれたってわけかい?」
「イエス」
「そうかい。俺は弾 翔。よろしくね、えっと」
「遊紅 愛流です」
「葛城 楠葉です」
「そっか、愛流ちゃんに楠葉ちゃんか。これからよろしくね」

弾さんが丁寧に挨拶してきたから、私もちゃんと挨拶しなくちゃ。

「これからよろしくお願いします」
「お、丁寧だね。これからもっと友達が出来たら、か・な・ら・ずこのカードショップに案内してくれよ」

……やっぱり商売人なところはあるみたいだ。

「うん、もちろん!」

楠葉ちゃんも実家が機械修理をやっているからか、どこか共感した部分があったんだろう。
意気投合しお互いサムズアップをする。

「ま、それはさておき席空いていたからこっち来いよ」
「あ、うん」

私たち4人は空いていた机と席に座り、一息つく。
ロッサス校からここまでずっと歩いてきたから少し疲れちゃったや。

「ほい、どうぞ不破君たち」

え、これってペットボトルの麦茶!?

「新しく出来た友達と不破君と岬君の入学祝いだよ。どうぞ」

そういうことなら遠慮なくいただきます。
歩き疲れて乾いた喉が潤っていって、気持ちいいや。

「さえと、さっそくデッキ調整するか」

不破君ちょっと待って。
いきなりこんなところでデッキを全て開くの!?

「ちょっと不破君、私たちにデッキの中全て見せていいの?」

私が抱いた疑問を楠葉ちゃんが尋ねちゃった。
確かにこれからずっと一緒に頑張っていく仲間だけど、だからといっていきなりデッキの中を見せるなんて。

「構わねーよ。岬は長年の付き合いだからほとんど俺のデッキ構成知ってるしな。それに仲間であって、リベンジする相手の愛流さんにはデッキの中を知って、正々堂々と戦いたいからな」
「その正々堂々のスタイル何か違うんじゃないかな? 私、そのデッキに対する対策カードとかデッキに入れちゃうかもよ?」
「それはそれで構わないさ。メタを張ってきたなら、そのメタを突破し、勝利する。その方が最高に格好いいじゃん」

そ、そうなのかな?
あ、このカードは。

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンだ」

うーん、何度見てもやはり現物はいい物だ。
実際に手に取って店の中の光に当て、フォイル部分を光らせる。
綺麗に光ってオッドアイズの魅力がさらに増しちゃうよ。

「そういや不破、魔装戦士ドラゴディウスなんていつの間に入れてたんだ?」
「いや、オッドアイズの戦闘ダメージを倍にする効果とシナジーを考えたらこいつが一番良かったんだよ」
「収縮とかの速攻魔法の方がシナジーあるんじゃない? それに黒牙の魔術師だってペンデュラム効果は相手のモンスターの攻撃力半分にするんでしょ?」
「その2枚は対象を取る効果だろ? ドラゴディウスは手札を1枚捨てるだけで1ターンに何度でもペンデュラム効果を使える上に、対象を取らない効果だから優秀なんだよ」
「まあ、そう言われりゃそうなんだけどよ」
「手札コストひねり出すの、いくら魔術師デッキでもきつくない?」
「ドラゴディウスの効果とオッドアイズのモンスター効果と含めてそのターンでトドメをさせるなら手札なんていくら使っても構わないだろう? それに」

そこまで言ったところで、不破君は私の方を見てくる。

「ドラゴディウスはイーサルウェポンの体の一部を真似した鎧を身に着けてる。ドラゴンのコスプレに夢中な戦士……イイだろ?」

やはり、不破君は私の同士……!
今度は私と不破君とで同時にサムズアップし、お互いいい笑顔で見つめ合う。

「なるほど、愛流さんを喜ばせるために投入したのか」
「へぇ~」
「いや、そういうつもりじゃなくて、俺もドラゴンは好きだからな」

分かるよ不破君その気持ちは。

「ただ、愛流さんみたくいきなりリアルソリッドビジョンのドラゴンに抱き着くなんて行為は及ばなかったけどな……本当、あの時は先にやられて悔しいと思っちまったもんだぜ」
「なんかごめんね」
「謝ることじゃないって。まあ、八住とのデュエルの時に少し違和感はあったからな、やっぱりまだ調整必要だな」

不破君が手にしていた学校のカバンの中から黒い大きな箱が取り出され、中から大量のカードが出てきた。

「これじゃシナジー少ないしな……魔術師はペンデュラム中心だから……」

ふ、不破君?
なんか真剣な顔で箱の中のカードを見てるけど。

「ああなったら不破は何言ってもほとんど聞こえないから。まあ、調整終わるまで俺とどっちかデュエルするか?」

お、岬君とのデュエル。
となると、ブラックフェザー・ドラゴンがまたお目にかかれるチャンス!

「あ、来てた来てた」

岬君とのデュエルに立候補しようとした瞬間、セーラー服姿のポニーテールが特徴的な女の子が店の中に入ってきた。
可愛い子だなと思ってると、私たちの席にやってきた。

「不破君に岬君、そのブレザーの制服、デュエルアカデミア・ロッサス校に入学できたんだね、おめでとー!」
「ああ、ありがとよ数見」

どうやら数見さんというらしい。
その数見さんは私と楠葉ちゃんは眼中にないのか、岬君と不破君の方を見てる。

「不破君? ああ、いつものトリップ状態か」
「まあ、もうそろそろ戻ってくると思うけどよ。そういや数見はこの近くの聖・アンデル学園に入学したんだっけ?」

なんとハイカラな響きが学園……!
そんなハイカラな名前の学校、二次元にしか存在していないと思っていたけど本当にあるんだね。

「うん、そだよ。今日入学式終わって直行したところ」

そこまで言ったところで数見さんが私と楠葉ちゃんを見てくる。

「え……」

それだけ言ったところで急に数見さんの声のトーンが下がった。
え、何かあったのかな?」

「不破君、まさかいきなりロッサス校で彼女を2人とも作るなんて……なんてプレイボーイ。私の知らない一面だわ」
「違います!」
「ボクたち不破君の彼女じゃないですよ」
「え、じゃ、ままま、まさか岬君のかかか、彼女……!?」
「それも違います!」
「ボクたちは不破君と岬君と同じ班のメンバーになっただけです」
「同じ班のメンバーって、どどどういうこと?」

なんかすごく動揺してるけど、説明して理解してくれるかな……?
とりあえずここは私が説明するしかないか。

「えっとね、かくかくしかじか」
「まるまるうまうま……そ、そんな。岬君と1年間も身近に過ごせるってこと!?」
「あ、これってまさか」

間違いない。
数見さんは岬君のことが

「ちょっと何言おうとしてるの、えっと」
「愛流です」
「愛流さん、ちょっと外に出ましょうか」

数見さん力強っ!?
私が何の抵抗も出来ずに店の外に連れ出された。

「ままままさか私が岬君のことを好き、だって言おうとしてませんでした?」
「え、あそこまで露骨な態度取っておいて、全然違うの?」
「違わなくはないですけど、なんでそれを岬君本人にバラそうとするの!?」

え、まさかやっぱり声に出てた?
だとしたらさすがに申し訳ない。

「ごめんなさい、私、思っていることをつい声に出しちゃう癖があるみたいで」
「なんて迷惑な癖……いいですか、岬君には絶対に私が岬君のことを好きだなんてこと言わないでね」
「え、好きなら好きってはっきり言った方がいいと思いますけど」
「そんな、幼馴染として不破君と3人ずっと仲良くしてきたから、今更告白なんて恥ずかしい。って、岬君ってまさかロッサス校で女の子に言い寄られて」
「そんなことはなかったですけど」

自分の気持ちに素直になって好きって言わないと、もし岬君が他の女性と付き合いだしたとき後悔すると思うだけどな―。

「もしかして、やっぱり愛流さんは岬君のことを」
「いや、岬君よりは岬君のエースモンスターのブラックフェザー・ドラゴンの方が好意ありますけど」
「それはそれで女の子としてどうなの?」

うわぁ、本当に心の底から私のことを心配した目で見ちゃってる。

「女の子がドラゴン好きじゃダメかなぁ?」
「うーん、ダメってわけじゃないけど」
「でも、男の子とのお付き合いとかに興味がないってわけじゃないから。岬君を奪ったりしないから数見さんそんな目で見ないでくださいお願いします」
「それは良かった」

ふぅ、元気いっぱいな女の子に戻ったみたいだ。
今さっきの目、明らかに憎悪以外の感情が宿ってなかったし……

「というわけで岬君の前で私が岬君のことを好きだなんて言わないでね。あとそれと、岬君に近寄る女の子がいたら牽制して、私に報告しておいてね」
「分かりました」

ていうか断ったらまたすごい怖い目で睨みつけられそうだし、素直に従っておこう。

「じゃ、店の中に戻ろっか」

なんというか岬君、濃い女の子に好かれちゃったなぁ。


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コンドル
ドラゴン対決となりましたが、BFが勝利しました。「あまのじゃくの呪い」でデメリットをメリットに変えたのは予想外の一手で驚きました。
さて、最後に岬君に恋する乙女現る、のですが、なにやら一癖ありそうですねこの人...。
次回も楽しみにしています。 (2020-08-25 23:57)
エスカル
コンドルさん 感想ありがとうございます。

攻撃力を下げる効果においては『あまのじゃくの呪い』でメリットに変換できますからね。もっとも、攻撃力を下げる効果が少ないので不意打ちぐらいしか使えないですが。

まあ岬君に対する思いは分かりやすいですが、その表現方法が屈折してる子ですね。これからどう転んでいくか、お楽しみに。

これからも応援していただければ幸いです。ではまた。 (2020-08-26 00:07)

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51 黒竜と虹彩竜 431 0 2020-08-24 -
36 舞う黒き羽 367 2 2020-08-25 -
27 魔玩具の戯れ 262 0 2020-08-27 -
33 分岐する交差 360 2 2020-08-29 -
33 異端なる者 219 0 2020-09-01 -
26 時空門 278 0 2020-09-04 -
31 メイドさん、戦うですの 287 0 2020-09-06 -
24 夢の形 240 0 2020-09-09 -
35 勝負のスタンス 502 2 2020-09-11 -
40 情報駆け引き戦 215 2 2020-09-13 -
28 補う工夫 377 0 2020-09-15 -
25 欲望の竜 227 0 2020-09-19 -
35 覚醒は無意識に 315 0 2020-09-21 -
24 竜の恩返し 288 0 2020-09-24 -
27 幸せの望み 290 0 2020-09-28 -

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