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蓮華の過去 作:はにわ改

 
ーー2回戦終了直後。
ホテルへと戻ってきた透矢たちは、夕食までの一時の自由時間を過ごしていた。
そんな中で暇をもて余した透矢が休憩室に足を運ぶと、そこには丁度刹那と蓮華の姿があり、団欒を交わすことにした。

「ーーへー、蓮華さんってそんなに前から刹那のところにいるんだ?」

「うん、初めて家に来たのが私と久遠が6歳の時かな。
それからずっと面倒見てくれてるの」

ふと持ち上がった侍女・蓮華の話。
刹那の側を付いて離れないその姿は、もはや見慣れた光景である。

「私の両親、ずっと忙しいでしょ?
だからね、子供の頃から話し相手とか遊び相手になってくれてね。
デュエルを鍛えてくれたのも蓮華さんだもんね」

「いえ……鍛えるだなんてそんな。
お嬢様の才能があればこそでございます」

「困った時もすぐに相談にのってくれるし……本当、私もついつい甘えちゃって。
ダメだよね、お蔭で蓮華さんには迷惑ばかり」

主の娘の言葉とあってか、蓮華も反応に苦慮しつつもその表情はどこか嬉しそうでもある。
刹那も家族同然の思いを持ってるのが透矢にも大いに伝わる。

「久遠も……昔は蓮華さんにべったりだったのにーー」

「お嬢様……」

哀しげに笑う刹那。
透矢も久遠の事はかなり知っているからか、刹那が心から笑うことが出来ないのが何となく分かっていた。

「ごめん、ちょっと席、外すね?」

「お嬢様?」

「大丈夫。
すぐに戻ってくるから」

そう言って刹那がどこかへ姿を消す。
方角的にトイレだろうか、と透矢は思い、そのまま見送った。

そうして刹那がいた席1つ分を空けて、二人になる透矢と蓮華。

透矢は初めて蓮華と会ったときに、厳しい視線を向けられた第一印象があるからか、やや緊張気味である。

「(お嬢様……彼と話してる時が一番、楽しそう。
あんな風に笑うのを見るの、私ですらそうはないのにーー)」

無意識とはいえ透矢をじっと見つめる蓮華。
その視線に気付いているからか、透矢は更に緊張してしまう。

「(それに……彼が居てくれたから、お嬢様は無事に帰る事が出来た。
彼には……感謝してもしきれない)」

普段の彼女ならば、意味もなく他人をじっと見るなど失礼な行為と捉えて、そんな事はしない。
だが透矢は刹那、そして久遠の命の恩人である。

もっとも、彼はそれを覚えてはいないだろうがーー。

「あのー、1つ聞いてもいいっすか?」

「……え?
あ、はい、何でございましょう」

透矢の声に一拍遅れた蓮華。
透矢にしてみれば、見られるのが耐えられず思い切って切り出した話題であった。

「刹那とか真希に聞いたんですけど、蓮華さんって元、プロデュエリストなんですよね?」

「はい。
もう、10年以上も前の話でございますが」

「へぇー。
それって刹那んところに来る前、って事ですか?」

「はい、そうなります」

「しかも結構、活躍してた、って話ですよね?」

「あの頃は今と比べて、まだプロデュエリスト界もそこまで規模が大きくはございませんでした。
ただ、私も好きでしたので、必死に励んで……。

……懐かしい思い出でございます」

「凄いなーっ!
俺、プロデュエリストなんてテレビとかでしか見た事がないですからね!
昔の話って言ったって、プロで活躍してたなんて尊敬してしまいますよ!」

話す内に、徐々に緊張の糸をほどいていく透矢。
ただ蓮華は遠い目をしたまま、表情にあまり変化はない。

「遊戦名さまは……将来、プロデュエリストに?」

「え、俺っすか?
まぁ、なれたらいいなとは思ってますけどね!
でも、俺、あんまり頭良くないですし、ちゃんと今のアカデミアを卒業出来るのかな、とか思ったりしてまして」

冗談混じりに笑いながら答える透矢。
すると蓮華は更に透矢に突っ込んだ話を始める。

「遊戦名さま。
プロになる、という事は、
あなたはデュエルモンスターズを自分の生業とし、そして生計を立てていく事になります」

「は、はい、そう、なるんですかね」

「そこは『勝つ』事で全てが肯定される世界。
自分のデュエル、とか、信念を貫こうとしても、『負け』て結果を出せなくては誰も認めてはくれません」

「……勝たないと、認めてくれない……」

その一言が突き刺さる透矢。

今のデッキと出会うまでは伸び悩みに苦しんでいた彼。
その頃の経験と、今の蓮華の言葉が重なる部分があるのだろう。

「プロになるだけならば、誰にでも出来ましょう。
ですが入ってからは、弱肉強食の世界。
勝負に辛くならなければ、生き残ることは出来ません」

「……」

きっぱりと言い切る蓮華。
元プロデュエリストの言葉であるため、透矢は返す事も出来ず、その重みに押し黙ってしまう。

「……ですが、遊戦名さまなら大丈夫でございます」

「え?
何が……大丈夫なんですか?」

「あなたはきっと、この世界でなくてはならない存在となるはずでございます。
あなたのデュエルを拝見して……そう思いました」

「俺の、デュエルを見て……?」

蓮華の言葉とあっては、光栄以外の何物でもないはずだが、
何故そこまで感じたのかと、逆に問いたい透矢。

『ーーやあ、探したよ。レンゲ』

そこへ不意を突くように、男性が二人の前に立つ。
灰色の縦縞模様の背広に身を包んだ、三十代くらいの金髪のオールバックに顎髭を生やした精悍な顔つきのその男性。
同時にその男性を見るが、その顔を見た蓮華がはっと小さく口を開く。

「スティーブン……?」

「スティーブンって……ああっ?!

まさかあの『ダニエル=スティーブンス』?!」

まじまじとその顔を見ていく内に、透矢もまさかという思いに駈られる。
さっき自ら口にした、テレビでしか見た事がないプロデュエリストの顔がそこにはあったのだ。

「プロ界の5本の指に入るっていう、あの『ダニエル=スティーブンス』さんかよ?!
やべ、是非サインほしい!
あ、でも色紙もペンもねぇや!
だーっ、折角のビッグチャンスなのに!?
こんなことなら用意しとくんだったーっ!」

立ち上がって興奮の熱を噴出する透矢。
日本語が少しは分かるのだろうか、困ったようにしつつも、穏やかに笑って見せるダニエル。
すると透矢とは逆隣りの蓮華の横に座ると、自然な動きでその片手を両手で握る。

『君が来日してると、Mr,カグラザカにたまたま聞いてね。
逢えないかと思って、来てみたんだよ』

「……スティーブン」

『昔のように“ダニー”と呼んでほしいな。
まあ、でもこうして逢うのは10年振り、いやそれ以上だからね』

英語なので透矢には何を言っているかは分からない。
だがその様子からお互い知らぬ仲ではないというのは、透矢にも分かる。

「あ、あの、蓮華さん?
この人と知り合いなんですか?」

「……はい。
プロ時代にちょっとーー」

「へぇー!
世界のトップデュエリストと知り合いなんてさすがっすね!」

興奮冷めやらぬ透矢に対して、蓮華は変わらず感情を面に出さない。

『彼は?』

『お嬢様の御級友でございます』

『なるほど。
という事は今やってる世界大会の日本校のメンバーかな?』

『はい』

ダニエル側も透矢の事を聞くと、立ち上がり透矢の前に立つ。

『初めまして、君の名前は?』

手を差し出すダニエル。
握手を求めているのは分かるが、英語が全く聞き取れず、受け答えに苦難する透矢。

「名前を訊いております」

「あ、そうか!

あ、あの遊戦名、透矢!
いや、違う、この場合は『トーヤ・ユセナ』、か?!」

蓮華の助力を得て、名乗りながら握手をする透矢。

『トーヤ!
ダニエルだ、よろしく』

「あ、あの!
いつもテレビとかで、よく見てます!
是非、サインを……って、ペンがないんだよな~。
うー……」

『……彼は何と?』

『サインが欲しいそうですが、ペンも色紙もないそうです』

ダニエルも蓮華に聞いて、透矢の意志を感じ取ると、
背広の胸ポケットからサインペンを取り出すと、透矢のシャツの裾を持ち上げてそこに書き慣れたサインを刻む。

『これでいいかな?』

「うぉおおーっ!?
感激!
やべぇ、このシャツ、一生の宝物にしねぇと!
ていうか後で、真希や千鶴とかに見せねぇとな!

ーーあ、すいません。
サインしてくれてありがとうございます!
さ、サンキュー、ベリー、マッチ……?」

拙い、英語というのにもおこがましい透矢の言だが、ダニエルは爽やかに笑いながら透矢の肩を叩くと、再び蓮華の隣りに座る。

『ーーレンゲ。
今日は君に逢えて嬉しいよ。
何せ、あんな別れ方では俺も納得してはいなかったからね』

『スティーブン……』

『俺の気持ちは10年前と変わっていない。
ずっと君と再会出来ると信じてたからね。
だからこそ、俺は誰とも付き合う事なく、今日まで頑張ってきたんだ』

『でも、私には……』

真剣な眼差しで蓮華に語るダニエル。
蓮華は困ったような表情を見せているが、いかんせん透矢には言葉が分からないため、ただ立ち尽くすだけだ。

「ーー透矢くん?
何をぼんやり突っ立ってるの?」

「あ、刹那、お帰り」

そこへ刹那が戻ってくる。
後ろから透矢の肩を叩くと、その指が差す方向を見る。

「あら、ダニー!
いつのまに来てたの?」

『やぁ!
えっと君は……お姉さんの方かな?』

『そうそう、お久しぶり!』

そして友達のように挨拶を交わす二人。

「おいおい、刹那!
お前も知り合いなのかよ」

「うん。
だってダニーのスポンサーに、うちの会社が付いてるから」

「あ、なるほど……」

流石に財閥の令嬢は、顔がとことん広い。
透矢はそんなことを素直に感じた。

『それで今日はどうしたの?
何か用事でも?』

『レンゲに逢いに来たのさ』

『あっ、そっか……。
それじゃ私たち席を外した方がいいかしら』

「お嬢様、その必要はございません」

口を押さえて気を利かせようとした刹那だが、蓮華がそれを止める。

『ーースティーブン。
私たちはもう昔の関係には戻れないわ』

『どうしてだ。

……まさか、君には他に想う男性がいるのかい?』

『いや、そうじゃないけどーー』

『俺はこの10年、君を忘れた事はない。
それに君に相応しい男になれるよう、努力もしてきたつもりさ』

『あなたの活躍は……知ってる。
でも、でもね、スティーブン……』

『何度、君に逢いに行こうと思った事か。
でも俺もMr,カグラザカにスポンサーになって頂いた身だ。
プロ界に全力を注ごうと決心してきたんだ。
でも、だけどやっぱり俺はーー』

ーー熱く語るダニエル。
英語が分かる刹那はそれを聞きながら、考え込むように眉間にしわを寄せている。

「なぁなぁ、刹那?
二人でさっきから何を話してるんだ?」

「うん?
うーん、そうね。
一言で言うと、愛の告白?みたいな」

「マジかっ?!
あのダニエル=スティーブンが、蓮華さんにっ?!」

「うん。
蓮華さんがプロ時代、凄く仲が良かったって話よ」

「ふえ~。
蓮華さんって、やっぱりただ者じゃ無かったんだな」

「うーん……でも、あんまり話はうまく行ってないみたい」

「うまく行ってない?」

刹那が言うと、透矢はまた二人を見る。
相変わらずダニエルが蓮華に必死に訴えているが、蓮華は俯くばかりで言葉数は少ない。

すると少し疲れたか、ダニエルがため息を付いた。

『なあ、レンゲ。
久しぶりに俺とデュエルしてくれないか?』

『え?』

『もし俺が勝ったら、俺との事を真剣に考えて欲しい』

『何を言い出すの?
そんな事出来るわけないわ』

意表とも言える申し出に、蓮華はきっぱりと断る蓮華。

『君だって引退したとはいえ、デュエリストだ。
俺は君に正式にデュエルを申し込んでいる。
それなのに君は尻尾を巻いて逃げるのか?』

『スティーブン……』

『何も君が負けたら付き合えとか、結婚してくれとは言っていない。
ただ、もう1度俺にチャンスが欲しいんだ。

ーーそれに俺も“負けたまま”ではいられないからね』

真っ向から想いをぶつけてくるダニエルに、蓮華も考えるところがあるのだろうか、言葉を失う。

「ーー蓮華さん。
ここはやるしかないと思います」

「お、お嬢様……っ」

「負けた時の事云々は別にしても、ダニーの気持ちもある程度、受け止めてあげないと」

「で、ですがーー」

ダニエルの言葉を後押しする刹那だが、蓮華はやはり今一歩踏ん切りが付かないようだ。

「なぁなぁ、今、どういう話になってんだ?」

「うん?
えーと、これから蓮華さんとダニーがデュエルして、蓮華さんが負けたらダニーと付き合う、的な?」

「うおお!?
何だよ、それ?
なんかとてつもない話になってるじゃねぇか?」

「くす。
まあでも、蓮華さんの意志次第、なんだけどーー」

結局、最後は蓮華の意志1つ。
勿論、こんな突拍子もない話は御免、付き合う必要なしと断るのが普通であろう。
だがそんな簡単にダニエルを突っぱねる事は出来ない。
蓮華にもまた、それだけの思いというものがあるからだ。

『ーー分かりました。
そのデュエル、お受けいたします』

熟慮を重ねた蓮華の結論がそれだった。
かくしてダニエルの想いを懸けたデュエルがある種、唐突な展開により始まろうとしていた。
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