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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第7話:見えたもの

第7話:見えたもの 作:カズ

~前回のあらすじ~
午前2時、永野真利愛に取り憑いた悪霊「Sherry」を退治すべく亜利沙がデュエルを挑んだ。【魔救】の展開力にも気圧されることなく、亜利沙は自身のデッキ【宿星巫女】の力を遺憾なく発揮し完勝。Sherryから引き出した情報によると、3年前に「パンドラ・プリズン」を解放したのは遊良の両親、『凪 誠』と『凪 吾子』だった─────





『次のニュースです。全国各地で発生している誘拐事件は教育委員会を始め、警視庁も捜査が困難の一途を辿っています。昨日未明、大阪府在住の───』




「やれやれ、折角の昼休みにネガティブな情報を見る我々が言える立場ではないが、一向に解決する見通しが立たんな……警察は何をやっているのだ?」
「あまりに情報が少なすぎるから、必要以上に捜査できないんですよ」


 Sherryから情報を引き出してから2週間が経った。世間では同月13日に公開された新作映画『ゼロの施行人』が大ブームとなっているのだが、それと同時に多発している誘拐事件もメディアでは取り上げていた。遊良と亜利沙も日頃ニュースを見ているのだが、全国規模で同時に起こっているこの誘拐事件は例がなかったため特に見入っていた。
 この事件の被害に遭っている人間の殆どが高校生であり、未だに監禁場所も犯人も特定されていない。被害に遭った学生の親族や各都道府県警も全力で捜索しているのだが、既に10日が経過しても一向に解決の目途が立たないのだ。
 亜利沙はこの事件が悪霊の仕業ではないかと睨んでいるのだが、証拠不十分な現状では死神の存在を世間に認知されるだけだとして調査不可能だと通告されている。しかし亜利沙がそれで納得するはずがなく、証拠を掴むための策を学校内で決行しようと企んでいた。


「仕方あるまい。放課後、私が籍を入れている同好会に顔を出そうと思う」
「『魔術同好会』……でしたっけ?それで何か分かるんですか?」
「昨夜の誘拐事件現場、そして今夜起こるであろう事件を視る。いくら人間の目に見えなくとも、我々なら全てを見透すことが可能だからな」
「視るってまさか、占いとかでよく見る水晶玉でも使うんですか?」
「ああ。その分野に恐ろしく長けている奴が同好会にいる。少年、お前も顔を出せ」
「押忍!」





──放課後──
 授業が終わり、遊良と亜利沙は4階の実験室の隣にある空き教室の前にいた。扉には『カオス・フォーム』と思われるイラストが貼られているが、そのクオリティもなかなかのものだ。その扉を開けると、校舎内からいきなり魔女の家に入り込んだかのような錯覚を起こすほど薄暗い光景が目に飛び込んだ。
 魔術同好会に籍を入れているのは亜利沙以外に1人しかいない。他に魔術に興味のある生徒がいないというわけではないが、その「もう1人のメンバー」の勧誘の仕方が悪かったせいで未だに新入生が入ってこない有様である。しかし亜利沙からすれば、この場所は目立たなくて落ち着けるので部員が増えすぎるのも困るとのことで、良くも悪くもそのメンバーに感謝しているらしい。


「久しぶりだな、法人」
「梓くん、週1回は顔を出す約束だというのに今月入ってから一度も……っておや?そちらの方は?」
「同じ中学の後輩でな。見学したいと言うから連れてきた」
「はじめまして。海神 侑です」


 牛乳瓶の底みたいなグルグル眼鏡をかけている人などこのご時世にいるわけがない、そんな常識を真正面から破壊してきたこの男こそ亜利沙のクラスメートであり魔術同好会の長、『真壁法人(まかべ のりと)』だ。左右にはねた寝癖のような髪型も本人にとってはナチュラルなものであり、これを維持するために散髪でもあまり短く切ったりはしていない。亜利沙も見かねて「まずはその丸尾君みたいな眼鏡は外した方がいいんじゃないか?顔立ちは悪くないのだから、その方が女子受けも大分良くなるぞ」と助言したのだが、中学からの知り合いが同じ学校に在籍している以上、急激なイメチェンは却って目立ってしまうといって取り合ってくれなかった。


「それで……梓くんが久々に来たということは、何かあるのですね?」
「ああ。例の連続誘拐事件は知っているな?その件で調べたいことがあるんだ」
「いいでしょう。ですが分かっていますね?」
「ああ。付き合ってやる。というかいい加減、他に相手を見つけたらどうなんだ?」
「僕がこういう事を頼めるの、君しかいないのは知っているでしょう」


 遊良はこの部屋に入った瞬間から、亜利沙と法人の様子が気になっていた。互いに名前で呼び合い、「付き合ってやる」「君にしか頼めない」という言葉の端々から滲み出ている、友人以上に親しく思われる間柄。以前、亜利沙は「男心はさっぱり分からない」と言っていたが、誰が見てもただの同好会メンバーの関係ではないなと変な勘ぐりを入れた遊良は、無意識の内に亜利沙に声をかけた。


「あの……2人ってまさか、恋人関係なんですか?」
「そんなわけないだろう。デュエルの相手に付き合え、という話だ」
「お恥ずかしながら、僕は極度の人見知りでして。この眼鏡をかけないとまともに会話も出来ないのです……」
「デュエルの時の性格は別人みたい……でもないか」
「そこは別人みたいだと言って欲しかったのですが!?」


 法人も亜利沙に対しては心を開いているのか、砕けた様子で話せている。しかしそれよりも重要なのが、この部屋にある魔導書を始めとする様々な道具を借りるための条件がデュエルを行うということだ。それが本当なら、遊良にとっては願ってもない機会だ。


「えっと……じゃあそのデュエル、俺が相手でもいいですか?」
「いいでしょう。僕も梓くん以外の相手と戦ってみたいと思っていたので」
「私も賛成だ。お互いにいい刺激になると思うからな」
「とか言いますけど梓くん、毎度僕が相手で退屈しているとか思ってないですよね?」
「お前、やっぱり自分の実力分かってなかったか」
「どういう意味です?」
「そのまんまの意味だ」



 この学校には様々なデュエリストがいる。クラスメートとならこの2週間で何度か対戦したことはあるが、違う学年とデュエルする機会は、どの部活にも所属していない遊良には滅多にない。あるとすれば1学期の期末テスト開けに行われる「デュエル合宿」くらいのものだ。
 神威高校でのデュエルにはスタンダードな8000ライフ制とスピーディーな4000ライフ制の2つがあり、部活や同好会で行われるデュエルは大半が4000ライフ制である。ライフが少ないため、より早く自分のペースに持ち込ませるかがより重要になってくるが果たして……。




(さて……このデュエルで気付く頃かな。少年、お前のデッキの弱点に)
「「デュエル!!」」


侑→LP:4000 手札:5 デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 魔法&罠ゾーン:0 フィールドゾーン:0 墓地:0 除外:0


 V S


法人→LP:4000 手札:5 デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 魔法&罠ゾーン:0 フィールドゾーン:0 墓地:0 除外:0



*TURN01
「先攻は貰います。手札から魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いは手札を全て捨て、捨てた枚数だけデッキからドローします」



○手札抹殺(通常魔法)(制限カード)
①:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。



「魔法カード『マーリンの予言』を発動。デッキから『憎悪の勇者パーシヴァル』を手札に加え、俺は400ダメージを受けます」
「見たことないカードを使うのですね。おまけにエクストラデッキが1枚もないとは」
「えっと……これ、祖父の遺したデッキなので。では改めて。『憎悪の勇者パーシヴァル』の効果発動!墓地の『憎悪の勇者ガラハッド』を手札に戻し、自身を特殊召喚します。そして、お互いにガラハッドの攻撃力の半分だけダメージを受けます」
侑→LP:3000
法人→LP:3400


 パーシヴァルをリリースすることでライフを回復させたが、遊良にとって4000ライフ制のデュエルはあまり望ましくなかった。『手札抹殺』によって判明したカードだけでも、法人のデッキは【ウィッチクラフト】だと分かった。そしてそのデッキの看板モンスター『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』は手札の魔法カードを捨てることでモンスター効果を無効にする効果を持っている。遊良の手札にはそれに対してメタを張れるカードはないが、出来ることもある。


「手札の『憎悪の勇者ランスロット』の効果発動!墓地のパーシヴァルと『憎悪の勇者イヴァン』を除外してこのカードを特殊召喚します。そしてイヴァンは除外された時、手札を1枚捨てることで特殊召喚できます。装備魔法『憎悪の剣(ヘイトレッドソード)-エクスカリバー』をランスロットに装備し、永続魔法『エレインの加護』を発動。これでターンエンド。そしてエンドフェイズに『エレインの加護』の効果によって、俺は1000ポイントのライフを回復します」
侑→LP:5500 手札:0 デッキ:30 メインモンスターゾーン:2 魔法&罠ゾーン:2 フィールドゾーン:0 墓地:4 除外:1




(む?この布陣は……。フッ、少年も容赦ないな。だが……)


 遊良が手札を全て使って築いた、「負けない」ための盤面を見た亜利沙は、心の中でほくそ笑んでいたのだが、その様子は彼に悟られることはなかった。



*TURN02
「では参ります。僕のターン、ドロー!」
「スタンバイフェイズ開始時、『エレインの加護』の効果を使います。これでこのターン、ランスロットは戦闘・効果では破壊されません」


 5枚の手札を捨てられたことは大きかったが、『ウィッチクラフト』と名のつく魔法カードは条件さえ満たせば手札・フィールドに戻す事ができる。そのため『手札抹殺』は法人にとっても大変好都合だったのだ。そしてそのおかげで、遊良が最も警戒していたあのカードを引く手助けにもなってしまった。


「手札から速攻魔法『ウィッチクラフト・デモンストレーション』を発動。その効果により、手札から我が敬愛せし女神『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』様を守備表示で特殊召喚!」
「めが…み?」
「おっと……。これは失礼。ヴェール様の効果を発動!手札から『ウィッチクラフト・サボタージュ』を捨てることで、相手の全モンスターの効果をターン終了時まで無効にします」
「ゲッ!それはマズい……ランスロットの効果発動!」
「無駄です。『ウィッチクラフト・デモンストレーション』の効果で特殊召喚したターン、君は魔法使い族モンスターの効果の発動に対して効果の発動は不可能。よってランスロットも、ただの木偶の坊に成りました」



○ウィッチクラフト・デモンストレーション(速攻魔法)
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:手札から「ウィッチクラフト」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したターン、自分の魔法使い族モンスターの効果の発動に対して相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「ウィッチクラフト」モンスターが存在する場合、自分エンドフェイズに発動できる。このカードを手札に加える。


○ウィッチクラフト・サボタージュ(通常魔法)
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:自分の墓地の「ウィッチクラフト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「ウィッチクラフト」モンスターが存在する場合、自分エンドフェイズに発動できる。このカードを手札に加える。


○ウィッチクラフトマスター・ヴェール(Lv8 光)
魔法使い族/効果
攻1000/守2800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分の魔法使い族モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。手札からカード名が異なる魔法カードを任意の数だけ相手に見せ、その自分のモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、見せた数×1000アップする。②:手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。相手フィールドの全ての表側表示モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。



 ランスロットは戦闘ダメージをお互いが受ける効果を持つ。そのままでは相討ちになってしまうが、遊良は『憎悪の剣-エクスカリバー』と『エレインの加護』によって自身に降りかかるダメージのみ半減し、法人に与えるダメージを倍にすることで敗北を回避しようと目論んでいた。しかしヴェールは魔法カードをコストにすることで、モンスター効果を全て無効にしてしまう。ランスロットをリリースすることでそのデメリットを回避しようと試みるも、『ウィッチクラフト・デモンストレーション』の効果によって封じられた。
 幸いな点があるとすれば、このターンはバウンスされない限りランスロットが遊良のフィールドに留まってくれていることだろう。


「続けて僕は『ウィッチクラフト・ポトリー』様を通常召喚し、ポトリー様の効果発動!このカードをリリースし、手札の『ウィッチクラフト・スクロール』を墓地へ送ることで、デッキから『ウィッチクラフト・ハイネ』様を特殊召喚。そしてハイネ様の効果発動。手札の『ウィッチクラフト・クリエイション』を墓地へ送ることで、『憎悪の勇者イヴァン』を破壊します!」
「くそっ…」
「続けて墓地のポトリー様の効果を発動。僕の手札が1枚もない時、このカードを除外することで、墓地の『ウィッチクラフト・クリエイション』を回収。そしてそのカードを発動し、デッキから『ウィッチクラフトゴーレム・アルル』様を手札に加えます。僕はこれにてターンを終了。エンドフェイズに墓地の『ウィッチクラフト・スクロール』は自身の効果で魔法・罠ゾーンに表で置かれ、『ウィッチクラフト・サボタージュ』『ウィッチクラフト・ドレーピング』は手札に戻ります」
法人→LP:3400 手札:3 デッキ:27 メインモンスターゾーン:2 魔法&罠ゾーン:1 フィールドゾーン:0 墓地:6 除外:1



○ウィッチクラフト・クリエイション(通常魔法)
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:デッキから「ウィッチクラフト」モンスター1体を手札に加える。②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「ウィッチクラフト」モンスターが存在する場合、自分エンドフェイズに発動できる。このカードを手札に加える。


○ウィッチクラフト・スクロール(永続魔法)
このカード名の②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:1ターンに1度、自分の魔法使い族モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。②:自分フィールドの「ウィッチクラフト」モンスターが効果を発動するために手札を捨てる場合、代わりにこのカードを墓地へ送る事ができる。③:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「ウィッチクラフト」モンスターが存在する場合、自分エンドフェイズに発動できる。このカードを自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置く。


○ウィッチクラフト・ドレーピング(速攻魔法)
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:自分フィールドの「ウィッチクラフト」モンスターの数まで相手フィールドの魔法・罠カードを対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「ウィッチクラフト」モンスターが存在する場合、自分エンドフェイズに発動できる。このカードを手札に加える。


○ウィッチクラフト・ポトリー(Lv2 地)
魔法使い族/効果
攻0/守2000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分・相手のメインフェイズに、このカードをリリースし、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキから「ウィッチクラフト・ポトリー」以外の「ウィッチクラフト」モンスター1体を特殊召喚する。②:自分の手札が0枚の場合、墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「ウィッチクラフト」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。


○ウィッチクラフト・ハイネ(Lv7 闇)
魔法使い族/効果
攻2400/守1000
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの他の魔法使い族モンスターは相手の効果の対象にならない。②:手札から魔法カード1枚を捨て、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。この効果は相手ターンでも発動できる。


○ウィッチクラフトゴーレム・アルル(Lv8 光)
魔法使い族/効果
攻2800/守0
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが手札に存在し、自分フィールドの魔法使い族モンスターが相手の効果の対象になった時、または相手モンスターの攻撃対象に選択された時、相手フィールドのカード1枚または自分の墓地の「ウィッチクラフト」魔法カード1枚を対象として発動できる。このカードを特殊召喚し、そのカードを持ち主の手札に戻す。②:相手スタンバイフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。


*TURN03
(この人、巧い……)
「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ開始時、『エレインの加護』の効果発動!」
「ならばここでハイネ様の効果を発動!フィールドの『ウィッチクラフト・スクロール』を墓地へ送ることで、『エレインの加護』を破壊します!」
「しまった……!」


 手札1枚。フィールドにはランスロット以外のモンスターがおらず、防御の要でもある『エレインの加護』を破壊されてしまい打つ手無し。墓地にはDnaとのデュエルで一役買った『トリスタンの悲運』も眠っているが、他にモンスターがいないため効果も使えない。法人は直前のターンでバトルフェイズを行っていないにも関わらず、魔法カードを駆使した戦法で遊良を少しずつ追い詰めている。ならばと思い攻撃を仕掛けるも、法人が前のターンでサーチした『ウィッチクラフトゴーレム・アルル』が立ちふさがることを遊良は失念していた。


「バトル!ランスロットで『ウィッチクラフト・ハイネ』を攻撃!」
「手札の『ウィッチクラフトゴーレム・アルル』様の効果発動!魔法使い族モンスターが攻撃対象に選択されたことで、アルル様を特殊召喚し、攻撃してきたランスロットを手札に戻します」
「くそっ。なら魔法カード『王の牧歌』を発動!デッキから新たに『憎悪の勇者ランスロット』を特殊召喚して、ターンエンド……」
侑→LP:5500 手札:1 デッキ:29 メインモンスターゾーン:1 魔法&罠ゾーン:0 フィールドゾーン:0 墓地:8 除外:1


*TURN04
「さて、決めさせてもらいます。僕のターン、ドロー!メインフェイズ1開始時、『強欲で金満な壺』を発動。エクストラデッキから6枚を裏側表示で除外し、デッキから2枚ドローします」


 【ウィッチクラフト】も【ヘイトレッドハート】同様、エクストラデッキを殆ど使わずに戦うことができるのだが、それを利用してドローソースに変換する方法もある。手札を5枚まで増やした法人は、一気に攻撃に転じた。
 同じくして遊良も、法人とのデュエルによって自身のデッキの弱点と、亜利沙が法人とのデュエルを勧めた理由に気付くことができた。【ヘイトレッドハート】はお互いが戦闘ダメージを受ける効果を持つモンスターを並べ、バトルフェイズ中に相手のライフポイントを削っていくことを前提としたデッキだ。相手をその土俵に立たせるためにはバトルフェイズが必要不可欠だが、法人は直前の自分のターンで一切攻撃せず、遊良のターンではランスロットの攻撃もアルルの効果で巧みに躱してみせた。
 攻撃一辺倒、その言葉がピッタリ当てはまるくらい純粋なビートダウン故に露見した最大の弱点を、これから遊良がどう克服していくのか。


「まずは『ウィッチクラフトマスター・ヴェール』様の効果発動。手札から『ウィッチクラフト・サボタージュ』を墓地へ送って、相手フィールドの全モンスターの効果を無効にします。続けて墓地の『ウィッチクラフト・ジェニー』様の効果発動!墓地からこのカードとサボタージュを除外し、『ウィッチクラフト・サボタージュ』の発動時の効果をコピーします」
「効果をコピー!?そんなカードが……」
「コピーしたサボタージュの効果により、墓地のポトリー様を特殊召喚!そしてポトリー様をリリースし、手札の『ウィッチクラフト・スクロール』を墓地へ送ることで、デッキから『ウィッチクラフト・シュミッタ』様を特殊召喚します」



○強欲で金満な壺(通常魔法)
①:自分メインフェイズ1開始時に、自分のEXデッキの裏側表示のカード3枚または6枚をランダムに裏側表示で除外して発動できる。除外したカード3枚につき1枚、自分はデッキからドローする。このカードの発動後、ターン終了時まで自分はカードの効果でドローできない。


○ウィッチクラフト・ジェニー(Lv1 風)
魔法使い族/効果
攻300/守500
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分・相手のメインフェイズに、このカードをリリースし、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキから「ウィッチクラフト・ジェニー」以外の「ウィッチクラフト」モンスター1体を特殊召喚する。②:自分の墓地からこのカードと「ウィッチクラフト」魔法カード1枚を除外して発動できる。この効果は、その魔法カード発動時の効果と同じになる。


○ウィッチクラフト・シュミッタ(Lv4 炎)
魔法使い族/効果
攻1800/守600
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分・相手のメインフェイズに、このカードをリリースし、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキから「ウィッチクラフト・シュミッタ」以外の「ウィッチクラフト」モンスター1体を特殊召喚する。②:墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「ウィッチクラフト・シュミッタ」以外の「ウィッチクラフト」カード1枚を墓地へ送る。



 ハイネの効果でランスロットも破壊され、遊良のフィールドからモンスターがいなくなった。ヴェール、アルル、ハイネ、シュミッタの4体が全て攻撃表示となり、その攻撃力の合計値は6200。それらのダイレクトアタックが全て通り、ライフポイントが5500もあった遊良が完全に法人の思い通りに操られ、完敗を喫した。


「ふぅ。梓くん以外とのデュエルは久しぶりでしたが、なかなか楽しめました」
「……ありがとうございました。完敗です」


 これがビギナーズラックを抜きにした、遊良の本来の実力だ。このままでは閻魔の遣いどころか、悪霊にさえ勝てるかどうか危うい。しかし遊良がデッキの弱点に気付けたことは大きな前進。亜利沙もここでは励ますことはせず、この敗北を糧に彼がどう成長してくれるのかを見守ることにした。


「約束だ。そこの魔導書と水晶玉、借りるぞ」
「使い終わったらちゃんと元の場所に戻してくださいね」


 魔術同好会にある1000冊近くの魔導書や水晶玉といったものは、全て法人の私物である。故に生徒会からは必要最低限の資金しか提供されていないのだが、廃部になることなく無事に続いているのだ。
 水晶玉は過去も未来も見透すことができるのだが、それは「人智の範疇」に限る。そこで魔導書の出番になるのだが、亜利沙が借りた魔導書の効果は「魔術が及ぶ範囲を拡大する」こと。これによって時間的・空間的な意味での拡大は勿論のこと、その範囲を人の及ばない霊的な意味での拡大も可能になった。その結果、午前0時~1時にかけて「人ならざるもの」が高校生を神隠ししている光景を2人とも視ることができた。


「……!先輩、これって」
「うむ。今夜は忙しくなるぞ。法人も助かった。また暇なときに顔を出す」
「…出来ることなら、毎日来て欲しいものですが。その気まぐれさが梓くんですからね」


 2人は魔術同好会の部室をあとにし、今夜決行する「悪霊一網打尽計画」に向けて準備を進めるのだった。




オリカ紹介
○憎悪の勇者イヴァン(Lv1 闇)
戦士族/効果
攻100/守100
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、②の効果はデュエル中に1度しか使用できない。①:このカードが手札に存在し、自分がレベル7以上の戦士族・闇属性モンスターの特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに発動できる。このカードを特殊召喚する。②:このカードが除外された場合、手札を1枚墓地へ送って発動できる。このカードを特殊召喚する。


○憎悪の剣-エクスカリバー(装備魔法)
「ヘイトレッドハート」モンスターにのみ装備可能。①:「憎悪の剣-エクスカリバー」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。②:装備モンスターが戦闘で相手に与えるダメージは倍になる。③:装備モンスターが戦闘でEXモンスターゾーンのモンスターを破壊した場合に発動する。相手の墓地のモンスター1体を選んで除外する。


○エレインの加護(永続魔法)
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分が受ける全てのダメージは半分になる。②:自分・相手のスタンバイフェイズ開始時、自分フィールドの「ヘイトレッドハート」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。③:自分エンドフェイズに発動する。自分は自分フィールドの「ヘイトレッドハート」モンスターの数×500LP回復する。


○王の牧歌(通常魔法)
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。①:自分のメインモンスターゾーンにモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキから「ヘイトレッドハート」モンスター1体を特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は1回しかEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。



キャラ紹介
○真壁 法人(Norito Makabe)(人間)(高2・男)
亜利沙のクラスメートであり、魔術同好会の設立者。彼の私物である1000冊近くの魔導書や水晶玉などは、衣服などを買うお金をはたいて買ったもの。それ故、ファッションセンスは皆無。愛用するモンスターには「様」と呼ぶ癖がある。
*個人情報
・生年月日:2002年4月13日
・年齢:17
・身長:177 cm
・体重:59kg
・血液型:A型
・使用デッキ:【ウィッチクラフト】



亜利沙の一言追伸
滅多に部活に顔を出さない奴のことを「幽霊部員」と呼ぶらしいが、私にピッタリじゃないか。
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