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HOME > 遊戯王SS一覧 > 序・忍び寄る『魔の手』

序・忍び寄る『魔の手』 作:はにわ改

 
ーー日々の進化と共に、それに携わる人間も増え続け、賑わいも高まるデュエル・モンスターズ。
そして今の時期は、デュエル・モンスターズの養成校・デュエル・アカデミアの選りすぐりのメンバーを世界中から集めた大会がアメリカに於いて執り行われていた。
巨大なドームを使ったその大会には、デュエル・モンスターズをこよなく好む観客を初め、各界の有名人やスポンサーも集い、
マスメディアを通して世界中に配信されるという一大イベントの1つである。

今大会で優勝校候補とされるのは、日本校とアメリカ・ワシントン本校。
前大会の決勝の組み合わせであり、準優勝に甘んじた日本校が今年は優勝カップを獲得するか、あるいはワシントン校がチャンピオンの座を守るか、1つの焦点でもあった。
その期待通り、2校は準決勝へと駒を進めており、
このまま行けば2年連続で同じ組み合わせでの決勝である。
あるいは他校が番狂わせを演じ、この2校の進撃を食い止められるか、
デュエル・モンスターズ界は少なからずこの話題に注目していた。


ーーその優勝を目指して奮闘する日本校。
アメリカに遠征したメンバーたちを、残った生徒たちは先生たちと共に日々その行方を見守り、健闘を祈り続けている。
そして日本校が勝ち上がる度、その吉報が伝わるや校内は喜びに湧いた。

「ーー日本校、メチャメチャいい感じだな!
内容も圧倒的だし、少なくとも決勝は絶対間違いないぜ!」

ーー下校時間。

友人たちを引き連れてそんな声をあげたのは流石 凌斗(さすが りょうと)。
1年生ながらその実力は早くも頭角を現していて、上級生を相手にしても全くひけを取らないほどである。

「2回戦は会長や副会長が圧倒してたけどさ、
これもやっぱ1回戦で透矢先輩や千歳先輩が流れを作ってくれたからだよな!」

自分の事のように喜び、猛る凌斗。
その中に出てきた透矢先輩とは、ある揉め事において凌斗と二人、渦中の人物であった。
だが透矢がそれを解決することによって、凌斗は彼を以後、先輩として尊敬すると共に、いつかデュエルでリベンジを果たしたいと願う相手でもある。

加えて願わくば、来年の大会で透矢と一緒に自分も参加出来ればと夢を抱いてすらいたのだ。

そんな慎ましやかな希望を持つ凌斗にーー。

今、『魔の手』が迫ろうとしていた。



「ーーねぇ、君?
ちょっと……いいかな?」

「は?」

友人とそれぞれの帰路で別れ、1人歩いていた凌斗に後ろから話しかけてきたその人物。
白いインナーの上に、薄紅の羽織もの、ベージュのロングスカート。
そして目元が隠れる大きな麦わら帽子からは、緩やかな金髪がこぼれている。

「君……透矢くんの知り合い?」

「いきなり何すか?
あんたこそ、透矢先輩の知り合いっすか?」

「うん。
透矢くんとはね、透矢くんが前に住んでた場所で知り合ったの」

「へぇ?」

「それで、私もこっちの方に用事があったから、透矢くんに会いに来たんだけどーー」

確かに透矢は1ヶ月ほど前にこっちへ引っ越してきている。
凌斗は透矢が転校してきたその初日に出会い、デュエルもしているわけだがーー。

「いや、ていうか何で俺に先輩の事を聞くんすか?」

口調が柔らかい女性。
だがどこか得体のしれない雰囲気に、凌斗の語意にやや警戒の念が表れている。

「実はさっきまでアカデミアで透矢くんが出てくるのを待ってたの。
その時偶然、あなたの口から透矢くんの名前が聞こえたから」

「はぁ?
じゃ何ですか?
俺に先輩の事を聞こうと、アカデミアからここまで付いてきた、って事すか?」

「ごめんなさい。
でもどうしても、透矢くんに一目会いたくて」

凌斗は更に警戒を強めた。
透矢に会いたいならば、わざわざ自分に聞かずとも、他にいくらでも方法はあるはずだ。
それに聞くなら聞くで、何故すぐその場で聞かないのか。

女性の言う事には解せぬ部分が多い。

だが同時に察する。
彼女は透矢と会いたいと語っているが、現状それは無理な話なのだ。

「先輩に会うのは今は無理だと思いますよ?」

「え?」

「だって先輩、今、世界大会でアメリカに行っちゃってますから」

「そうなの?」

「先輩から聞いてないんすか?」

そのぐらいなら話しても問題あるまい、と凌斗はその旨を語った。
無論、それ以上の事については何も語るつもりはない。

「そう……それじゃ、今すぐに会うのは無理そうね。

ありがとう。
透矢くんに会うのはまた今度にする」

「そ、そうっすか」

会えないと知り、残念そうに語る女性。
色々と腑に落ちない点はあるが、案外本当に透矢に会いたいだけだったのだろうか、と凌斗は思い直してもいた。

「ところで……君は透矢くんとお友達なの?」

「え?ま、まぁ、そうっすね」

「そう。
じゃあ、君もデュエルが大好きなんだね」

「へ?ど、どうしてっすか」

「だって、透矢くんってデュエルしている時はいつも以上に明るくなるでしょ?
透矢くんはデュエルが大好きなのよ。
そんな透矢くんとお友達なんだから、君もそうなんじゃないかって」

話している内に徐々に不思議な感覚に襲われる凌斗。
女性の話し振りはまるで透矢の母親か姉のようにも思えてくる。

「良かったら……私と今、デュエルしない?」

「は、はぁ?
いや、だっていきなりそんなーー」

「だって君、透矢くんのお友達なんでしょ?

だったらーー」

不意に女性の身体全体から発せられた『灰色』が背景を同じ色に染める。
そしてそれは凌斗の方にも一瞬にして広がり、彼のその『灰色』に閉じ込めるように蝕んだ。

「ーー利用価値、ありそうだもの」

「な、なんなんだ、こりゃっ?!」

凌斗を襲うとてつもない不安。
無意識に女性とは反対の方角へ足を駆け出させた。
だが『見えない壁』に身体を衝突させ、彼は勢いよく尻餅を着いてしまう。

「ーー逃がさない。
君は選ばれたのよ。
透矢くんへの当て馬、試練に、ね」

「ど、どういうことだっ?!
これは何なんだっ!?
俺をどうするつもりなんだっ!」

「デュエル、しましょ。
勝てても、負けても、君には力をあげる。
君、強くなりたいんでしょ?
私、分かるのよ?
デュエリストのそういう気持ち」

凌斗の質問にまるで答えない女性。
よく見るとその左腕にはいつの間にかデュエル・ディスクが装着されている。

おとなしい服装には似合わぬーー『黒いデュエル・ディスク』を。

「ほら、強くなりたくないの?
君を馬鹿にしている人たちを見返したくはない?」

「あ、あんた、俺の何を知ってるって言うんだっ!」

「何も知らない。
……でも、分かるの。
君の中にある、1番になりたいという強い願い。
デュエリストに最も必要な強い、強い向上心をね」

「な、何だよ……何も知らなくてそんな……わけわからねぇよ!」

「ーーさ、早く君もディスクを構えて。
私とデュエルをしたその後、君の世界は変わる。
それも……大きく、がらりとね」

しきりにデュエルを申し込む、いや強要してくる女性。
凌斗には自分の身に何が起きているのかまるで理解できない。
あるいはこれは悪い夢なのか。

ふらふらと立ち上がり再度逃げようとするも、やはり『壁』がそこにある。
その『壁』を叩いてみても、助けを呼んでみても、状況は変わらない。

当然だ。

彼にもう逃げ道はない。
女性に見入られたその瞬間から。

「さあ、ディスクを構えて」

再三、同じ要求をしてくる女性。
すると凌斗はすくむ足を庇いながら、ある種の決意を持って再び向かい合う。

「デュエルしたら、解放してくれるんだろうなっ?!」

どんな方法かはわからない。
だがこの灰色に包まれた景色は、女性の所業に間違いはないだろう。
だとするなら、そこから抜け出すためには、女性の意に従うしかない、とーー。

女性はーー頷いて、応える。

「や、やるよ、やりゃいいんだろっ!」

凌斗はバッグからディスクを取り出すと、バッグを投げ捨てて半ば自棄を起こしたようにディスクを力強く構える。

「ありがとう。
大丈夫、君に危害は加えないしーー後悔もさせないわ」

「うるせぇっ!
とっとと終わらせてやる!」

不安と恐怖に押し潰されないよう、懸命に気を張る凌斗。
そんな彼の姿に、笑みを見せる女性。

そして互いにデッキをセットーー。

『ーーデュエルっ!』

凌斗にとって思いも掛けない、謎の女性とのデュエルが今、始まる。
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