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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第5話:生徒会長に潜む影

第5話:生徒会長に潜む影 作:カズ

~前回のあらすじ~
遊良は亜利沙の計らいで私立神威高校に入学し、1年4組に入った。亜利沙の知人、四月一日 龍二が管理人を務めるアパート「わたぬき荘」の一室を借りることとなり、新たな生活拠点を確保するのだった。




 入学式から2日後、神威高校では毎年恒例となる「オリエンテーション」が行われていた。新入生のために校舎の案内や部活動の紹介など、期待の気持ちを強く持ってもらうために学校側が一丸となって運営しているのだが、その司令塔ともいうべき生徒会の長が「永野 真利愛」になってからは全てが円滑に運ぶようになった。


「ごきげんよう、新入生の皆様。私、生徒会長を務めている『永野 真利愛(ながの まりあ)』と申します。この度は私立神威高校へのご入学、おめでとうございます。我が校はデュエル先進校として様々な場所で名を馳せており……」


 真利愛は他に類を見ないほどの秀才であり、入学試験を満点通過するほどの頭脳を持つ。実際、彼女は永野財閥の跡取りであるため、高校生が学ぶ範囲の知識は勿論、スポーツ、芸術などの教養も多才。また、小学生の頃には子役として活動していた経験もあったことで、タレント界隈にも顔見知りが何人か存在する。
 遊良もその事は「神威高校の生徒会長はとんでもない人物だ」と予め亜利沙から情報を聞かされていたが、初めて聞いた際は開いた口が塞がらなかった。そしてその可憐さに再び口が塞がらなくなったのは、生前・死後を含めても二度とない経験になったという。





「はぁ~……真利愛様、今日も麗しかったな」
「俺なんて知り合いの先輩に頼み込んで、ぞろ目のファンクラブナンバー貰えたんだぞ。いいだろ?」
「なんですと!?僕なんて4567のストレートだというのに!」
「私なんて4666!何やら不吉な予感しかしませんぞ……」


 オリエンテーション終了後、新入生男子の間は真利愛の話題で持ちきりになっていた。この学校には非公認だが「真利愛様ファンクラブ」が設立されており、その会員数は優に5000人以上。在校する殆どの男子生徒や未婚の男性教師だけでなく、神威高校近辺に位置する他校にまでその会員になっている。あくまでも噂だが、このファンクラブは真利愛が中学に進級する頃には既に出来上がっていたらしい。
 当初は彼女もこのファンクラブ結成を禁ずるよう注意を促していたのだが、いくら言っても聞く耳を持たないどころか、その助長をしている者が身内にいることまで発覚したこともあり、幼かった彼女は諦めた。中学2年生に上がる頃には、ファンクラブ拡大を促していた密告者(祖父)も家から追放されたが、その拡大は留まるところを知らず、2500人近くがファンクラブ会員になっていたのだ。


「海神!お前も真利愛様ファンクラブに入らないか?今なら5115番でお得だぞ!」
「この機会を逃す手はないだろ!?!?」


 当然、このファンクラブへの勧誘は遊良にも及んでいた。4組に在籍する男子生徒の9割が先のスピーチだけで彼女の虜になっており、いつの間にか『真利愛様を崇める同士(神威高校男子)』という名前のLINEグループまで作られていた。彼女ほどの眉目秀麗な少女に巡り会う機会がないのを本能で察知した者の集まりなのだが、既にそのグループメンバーは300人を超えていたことを聞かされ、遊良は宗教じみたその集団に入ることを断った。


「ごめん。俺、スマホ持ってないから……」
「ちぇっ、ノリ悪いな」
「若い内にこういう経験しとかないと後悔するぞ~?」


 おっさんか、というツッコミが喉元まで出かかったがそれを抑えた。遊良も異性や恋愛事に興味がないというわけではないのだが、もし誰かと付き合うことになった場合、いずれ自分の正体を明かさなければならない時がやってくる。そうなった瞬間、自分と深く関わってしまったばっかりに相手やその友人達にも危害が及ぶことも考えられる。自分のように学生生活を棒に振らせたくないからこそ、現世の人間との関わりは最低限度で留めておくべきだと遊良は考えていた。
 しかしスマホを持っていないというのは本当であり、亜利沙も「あんな鉄板、使う理由があるのか?」と言って持とうとしない。最低限の機能が使える機種でもいいからスマホを買うよう説得した方がいいかな、と遊良は考えていたのだった。






「はぁ……」

 真利愛は帰宅後、自室で憂いていた。オリエンテーション終了後、1年の教室がざわついていたので動向をこっそり窺っていた結果、大半の男子生徒がファンクラブに入っていたのだから無理もない。元はといえば祖父の「可愛い孫の成長記録を皆にも見て欲しい」という思いが暴走したことで始まったファンクラブだったのが、今となってはその面影もなく、まるで度が過ぎたアイドルオタクの集団と化している。こうなっては女子高生1人の力では対処のしようがない。


「あの時、お爺様の行為が普通じゃないことに気付いてさえいれば、こんな大事にはならなかったのに……」
(貴方の奥底に眠っている鬱憤、晴らしてあげてもよろしくってよ?)
「ッ、誰!?」


 脳内に誰かの声が響いたが、辺りを見渡しても誰もいない。遂に幻聴が聞こえる位にまでストレスが溜まっていたのかと息を吐いて目線を下に向けた、その瞬間だった。本来映るはずのない異形な影が自分の足下に広がっていたのだ。


「あ……ああ……」
(その身体、少し貸して?まあ、貴方に拒否権はないんだけど)
「いやあぁぁぁっ!!!」


 真利愛の尋常ならざる悲鳴を聞きつけ、彼女に仕えているメイドがドタドタと大きな跫音を立て、息を切らしながらやってきた。


「真利愛様!どうかなさいましたか!!」
「……いえ。何でも。それより今日はピアノのお稽古があるので、車を出してくださいます?」
「か、かしこまりました……」


 あれほどの悲鳴が聞こえたにも関わらず、本人にはこれといって変化がなかった。しかし真利愛は、既に謎の影の傀儡になっていたのだが、彼女の身内がこの異変に気付くことなく、1日が終わったのだった。





 翌日。この日から本格的な授業が始まり、2年生による部活勧誘も活発になっていた。亜利沙も週1回とはいえ彼女のクラスメートが立ち上げた「魔術同好会」に参加していることが判明したのだが、その衝撃が掻き消されるほどの替わりようが生徒会室で起こっていた。その事は遊良の耳にも届いており、放課後に亜利沙と2人で出向いてみたのだが、その光景を一言で表わすとしたら「クレイジー」だった。


「『真利愛様にアタックしてもらえる部屋』……?」
「随分悪趣味な部屋だな。淀殿様でもドン引きするレベルだ」


 先日まで何の変哲もない生徒会室だった2階の部屋が、今日は一変してナイトクラブのような雰囲気が漂っていた。その中を覗いてみると、異様なデュエル光景が広がっていた。真利愛のフィールドには『シューティング・スター・ドラゴン』と『リンクロス』が存在するのだが、相手には手札が6枚あるにも関わらず、モンスターも伏せカードもない。単なるドローゴーかと思いきや、確認できた手札から鑑みるにその線も薄い。
 あくまでもこのデュエルは入り口に「生徒会長の攻撃を受けたい方はこちら」と書いてあったように、接待のようなものなのだろう。


「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!デッキの上から5枚をめくり、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!」
「このコンボは……!」
「『魔救の分析者(アダマシア・アナライザー)』2枚、『魔救の探索者(アダマシア・リサーチャー)』2枚、そして『魔救の追求者(アダマシア・シーカー)』1枚。さあ、5回攻撃を受ける覚悟はよろしくて?」
「は、はぃぃ!ありがとうございます~!!」


 その後も真利愛はフィールドにカードが無い相手に『シューティング・スター・ドラゴン』の5回連続攻撃で「アタックされたい」願望を叶え続けた。何が起こっているのか、その全てを把握しきれなかった遊良は固まっていた。生前の彼のカードプールを遡っても、百発百中で連続攻撃が決まるコンボが思いつかなかったからだ。


「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果って、いつの間にあんな簡単に決まるようになっていたんですか?」
「よく見ろ。生徒会長のフィールドには『アダマシア・ラピュタイト』が発動している。あのカードで『魔救』と名のつくチューナーを5枚積み込んだ後で効果を発動すれば、連続攻撃が約束されるという絡繰りだ」
「おっそろし……」



○シューティング・スター・ドラゴン(Lv10 風)
ドラゴン族/シンクロ/効果
攻3300/守2500
Sモンスターのチューナー1体+「スターダスト・ドラゴン」
①:1ターンに1度、発動できる。自分のデッキの上から5枚めくってデッキに戻す。このターンこのカードはめくった中のチューナーの数まで攻撃できる。②:1ターンに1度、フィールドのカードを破壊する効果の発動時に発動できる。その効果を無効にし破壊する。③:1ターンに1度、相手の攻撃宣言時に攻撃モンスターを対象として発動できる。フィールドのこのカードを除外し、その攻撃を無効にする。④:この③の効果で除外されたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを特殊召喚する。


○アダマシア・ラピュタイト(フィールド魔法)
①:自分フィールドの岩石族モンスターの攻撃力・守備力は500アップする。②:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。デッキから「アダマシア」カードを5枚まで選び、好きな順番でデッキの一番上に置く。



 最悪の場合、チューナーをめくれず1回も攻撃できなくなる事故が起こる『シューティング・スター・ドラゴン』の連撃効果だが、『アダマシア・ラピュタイト』の効果でデッキトップを操作してしまえば彼女のように何度でも連続攻撃が可能になる。【魔救】はこのギャンブル効果に舞い降りた救世主なのだ。
 しかし肝心なのはそこではなく、このサディスティックな行為を、公明正大を是とする生徒会の長が楽しんでいることだ。副会長や書記、ましてや教頭先生が止めに入っても完全に無視して暴走している。彼女との接点が殆どない遊良でさえも、これを異常だと感じたのは遅くなかった。


「先輩、まさかこれって……?」
「その可能性は大いにある。今夜、あの女の動向を観察するぞ」
「押忍」




 悪霊の仕業だと睨んだ2人はすぐにアパートに戻り、真利愛を尾行するための準備に移っていた。死神装束なら現世の人間には見えなくて済むが、これを着て活動できる時間帯は限られている。かといって透明マントのような22世紀の技術もない。何か策があるのかと期待した遊良を、良くも悪くも裏切った答えを亜利沙は出した。


「少年、今から幽体離脱を行うぞ」
「ゆっ…!?」
「人間に気付かれることなく尾行するためには、この方法が一番だからな」


 幽体離脱中は死神とは異なり、魂だけが浮遊する状態になる。偵察にはお誂え向きなのだが、たとえ悪霊を見つけたとしても魂を一旦肉体に戻さなければ、退治することは不可能なのだ。また、幽体離脱している間、肉体は完全な無防備状態にあるため、わたぬき荘の一室のように誰にも見つからないような場所で行うことが鉄則とされる。
 そして忘れてはならないのが、幽体離脱も死神と同様に「霊感が強い人間には見えてしまう」ことだ。午後6時、2人の浮遊している魂を見ている人物がいたとは露知らず、2人の魂は真利愛の自宅に赴いた。



「真利愛様、本日は弓道のお稽古がございますが……」
「すぐ行くわ」

(すげぇ。この家、まるで宮殿だ)
(今のところごく自然に振る舞っているようだが、いつボロを出すかは分からん。常に警戒しておけ)
(お、押忍)


 車で移動する真利愛の後を追って20分、厳かな雰囲気の道場に到着した。毎週木曜日は精神を磨くためにここで弓道の稽古をつけてもらっており、師範も彼女の腕前・精神力の両方を認めている。2年前に全国大会に挑戦したこともあるのだが、雰囲気に呑まれてしまい初戦敗退という残念な結果を出した。それも今となっては、彼女の良い思い出になっている。
 遠く離れた的を射るために弓を構える。寸分狂わずに射貫くためには経験値だけでなく膨大な集中力も要するのだが、この時、真利愛は溜めの動作を一切行わずに矢を放った。よほど自信があったのだろうが、矢は中心から大きく外れてしまった。確かに弓道のルールはダーツと異なり「的のどこに当たっても1点」なのだが、真利愛は如何なる時も的の中央を狙うよう心掛けていた。しかし今日の彼女からは、弓道への誠意がまるで感じられなかった。


「弓矢の乱れは心の乱れ。永野くん、今日は調子が悪いようだが?」
「何か、問題でも?」
「立ち振る舞いも、呼吸も、普段の君とは明らかに違う。一体どうしたというんだ」
「いえ。少し……」
「っ!」
「少し、抑えが効かないだけですわ」


 師範の背後に一瞬で回り込み、手刀を首筋に当てて彼を気絶させた。真利愛がどれだけ武術に長けていようが、女子高生の力では大人の意識を刈り取ることは困難だ。これで2人は、彼女が陥っている状況を完全に把握した。


(……やはりあの女子、既に取り憑かれていたか)
(ホヅミ先輩)
(分かっている。直ちに帰還するぞ)






 午前2時、誰もいない河川敷で真利愛は黄昏れていた。今晩の予報は曇りで降水確率も20%を下回っている筈だが、それとは打って変わって土砂降り。おまけに河川まで氾濫している有様だ。しかし、そんな荒れた天候にも関わらず、彼女はレインコートを着ていなかった。


「こんな雨の中で何をしている。生徒会長の姿見をした悪霊」
「……」
「おおかた、その女子の身体を川に流して行方を眩ませる算段だったのだろうが、その女を失うと悲しむ輩が大勢いるのでな。ま、私には今時の男心なぞさっぱり分からんが」
「……幽体離脱でストーカーまでしておいて、死神が正義のヒーロー気取り?」
「死神は慈善団体ではない。お前達悪霊を、一匹残らずプリズンに戻すという正義に従って行動しているだけだ、Sherry」


 真利愛に取り憑いてた悪霊の正体は「Sherry」。本来丑三つ時の間しか本格的な活動を行えないが、一定の条件を満たした人間に取り憑くことで昼間でも行動を可能にした悪霊の1体だ。このような手段を執る悪霊は、日照時間内では活動を禁じられている死神にとって非常に厄介な存在であり、取り憑いても外見に大きな変化が見られないこともあって、判別が非常に難しいのだ。


「チッ…!」
「逃がすか!喰らえ『神の手』!!」
「グアアァァァアッ!!」


 川に投身しようとしたSherryを間一髪のところで分離することに成功した亜利沙だが、長時間取り憑かれたこともあり、宿主である真利愛は気を失ってしまった。遊良もアンカーを投げつけ悪霊にデュエルを挑もうとしたが、その動作は亜利沙の方が僅かに早かった。


「このデュエルは私が引き受ける。今のうちにその女子をこの場から遠ざけておけ」
「お、押忍!」


 最高階級の死神である亜利沙に目を付けられたSherryに勝ち目はないと遊良は確信していたが、同時に、この数日間よき先輩として接してきた彼女の心の奥底が、このデュエルで垣間見えるのではないかという予感もしていた。何しろ彼女の果たすべき真の目的は、400年もの恨みを解消すること。死神として使命を全うする少女の心の奥底は、どこまで怨恨に染まっているのだろうか……。


「「デュエル!!」」


亜利沙→LP:8000 手札:5 デッキ:45 メインモンスターゾーン:0 魔法&罠ゾーン:0 フィールドゾーン:0 墓地:0 除外:0


V S


Sherry→LP:8000 手札:5 デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 魔法&罠ゾーン:0 フィールドゾーン:0 墓地:0 除外:0





キャラ紹介
○永野 真利愛(Maria Nagano)(人間)(高3・女)
私立神威高校の生徒会長。永野財閥の跡取りであり、成績優秀・眉目秀麗。彼女のファンクラブが立ち上がっているが、それに関しては快く思っていない。
*個人情報
・生年月日:2001年9月6日
・年齢:17
・身長:168cm
・体重:48kg
・スリーサイズ:B86(E) W56 H84
・血液型:A
・使用デッキ:【魔救】



亜利沙の一言追伸
生徒会長を尾行してふと思ったのだが、少年の家族は一体どこで何をしているのだ?
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