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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第六十三話「暴走! 怪人クロウリー」

第六十三話「暴走! 怪人クロウリー」 作:イクス

プラクサスで今騒ぎとなっているデュエル怪人クロウリーの正体は、まさかのカリンの友達静であった。
いくら恥ずかしがりとはいえ、あんな妙ちきりんな格好をしてデュエルを挑むとは、なんてことなのだろうと遊太は考える。
そうして、どうにかみんなと仲良くできないものかと考えるのであった。


「どうにかできないものかなあ?」
「ハイ……あの子だって、きっとみんなと一緒にデュエルがしたいだけなのデショウ。でも、できないからあんな格好して……」
「困ったもんだなあ」
と、言いながら、家へと歩みを進めていた。
こうして、数日経ったある日。プラクサスにある噂が流れるようになった。
その話を、遊太は教室で聞く。
「なあ聞いたか? 怪人の話!」
「ああ……なんでも、最近は相手をいたぶる戦術になっているとか……」
「そんでもって、リアルなダメージが発生するって話じゃねえか!」
「ひえ~おっかねえ~」
という話を、小耳に挟んだ遊太。それを聞いて、嫌な予感を感じてしまう。
(……なんだっていうんだ、いったい……)
ちょっとした、胸騒ぎ。
「どうしたじゃん? 遊太、一緒に帰ろうぜ~」
「……ゴメン、今日は忙しい! それじゃ!」
「ほへ?」
遊太はランドセルを引っ張り、慌てて教室から出て行った。知多は、それを見て呆然とするだけ。
急ぎ足で家にたどり着き、ただいまも言わないで家に上がり、自分の部屋からデュエルディスクとデッキを持って家から出た。
すると、黒塗りの高級車が遊太の家の前に急ブレーキで止まる。中から出てきたのは、カリンであった。
「カリンちゃん! もしかして……」
「話は車で、今は乗ってください」
「うんっ!」
大急ぎで車に乗り込み、発車する。それを、影ながら見ていた人物がいた。
「遊太……サン?」
ユイであった。


車の中、遊太とカリンは話をしていた。
「カリンちゃん、実は……」
「わかっていますわ。静のことでしょう?」
「わかっているの?」
「ええ、実はこの間から静と連絡が取れなくなり、もしやと思って調べてみたら、案の定ですわ。どうやら何かの拍子に暴走しているようですわね」
「うん……なんとかして止めないとね」
そうして、しばらく車を走らせた後、とある路地裏の前で。
「あっ、ここですわ! 止めて!」
車を止めさせて車から出る二人。路地裏に入ると、この間みかけたクロウリー……こと静と、やられたであろう人が転がっていた。
「静ちゃん……」
「静ぁ? 誰それ、アタシクロウリー♪ キャキャキャ!」
「ああ、やばい! なんかこの前とは全然雰囲気が違ってる!」
「サァ、デュエルしよう? デュエル!」
「アルファ、これってなんか……感じない?」
(ああ、あの時感じた、ダークネスカードと同じ感覚……!)
「ってことは、静ちゃんがダークネスカードに!? どうしよう!?」
「……ここは、私が行きますわ。遊太君」
「えっ!?」
「静は私の友達。なら、私がやらずしてどうなるというのでしょう?」
「カリンちゃん……!」
「さあ、やりましょうか!」
「ウフフフフ、やっちゃうぞ~!」


「「ルールはマスタールール3、ライフポイントは8000!」」
「「デュエル!」」


「先攻は私のターン!」


1・カリンのターン

「私は手札から、『サイバー・エッグ・エンジェル』を召喚! 効果発動、デッキから『機械天使』魔法カード、もしくは『祝福の教会―リチューアル・チャーチ』を手札に加えますわ。私がデッキから手札に加えるのは、リチューアル・チャーチ」
「そうして、私はフィールド魔法『祝福の教会―リチューアル・チャーチ』を発動しますわ! 効果発動。手札の魔法カード1枚をコストに、デッキから光属性・儀式モンスター1体か儀式魔法1枚を手札に加えられますわ。私が手札に加えるのは、儀式魔法『機械天使の儀式』を手札に加えますわ」(カリン手札5→4)(カリン墓地0→1)
「さらに、私は手札から儀式魔法『機械天使の儀式』を発動しますわ! 私は手札の『儀式魔人デモリッシャー』と、フィールドのエッグ・エンジェルの2体をリリースしてレベル5の『サイバー・エンジェル-那沙帝弥-』を儀式召喚しますわ!」(カリン手札4→1)(カリン墓地1→4)
四つ足の、ケンタウロスのような天使が現れる。守備力は1000と、それほどではない。
「那沙帝弥のモンスター効果、発動。自分フィールドのモンスター1体を対象として、その攻撃力の半分だけライフポイントを回復しますわ。私は那沙帝弥自身を選択し、ライフポイントを500ポイント回復しますわ」(カリンライフ8000→8500)
「リバースカードを1枚伏せ、ターンエンド」(カリン手札1→0)

カリン

ライフポイント8500
手札枚数0枚
モンスター1体
『サイバー・エンジェル-那沙帝弥-』(守備表示・守備力1000・レベル5・光属性)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード1枚
『祝福の教会-リチューアル・チャーチ』(フィールド魔法)
墓地の枚数4枚
除外されているカード0枚


2・クロウリーのターン

「アタシのターン、ドローっ!」(クロウリー手札5→6)
「アタシはフィールド魔法『ゴーストリック・ハウス』を発動っ! さらに、モンスターをセットして、リバースカードを2枚セットして、ターンエンド!」(クロウリー手札6→2)

クロウリー

ライフポイント8000
手札枚数2枚
モンスター1体
(裏守備表示)
魔法・罠ゾーンのカード2枚
発動しているカード1枚
『ゴーストリック・ハウス』(フィールド魔法)
墓地の枚数0枚
除外されているカード0枚


3・カリンのターン

「私のターン、ドロー」(カリン手札0→1)
「墓地の『ギャラクシー・サイクロン』は、除外することによって効果を発動できますわ。あなたの『ゴーストリック・ハウス』を対象として、表側表示の魔法・罠を破壊しますわ!」(カリン墓地4→3)(カリン除外0→1)
「……やっぱりそれ破壊しちゃうよね~、罠カード発動! 『ゴーストリック・リフォーム』っ! アタシのフィールド魔法を手札に戻して、新たなフィールド魔法を発動できるっ! フィールド魔法『ゴーストリック・ミュージアム』を発動っ! 効果は……今は言わなーい。その時教えるよっ!」(クロウリー手札2→3)(クロウリー墓地0→1)
「……避けられましたか。では、手札から魔法カード『儀式の下準備』を発動しますわ。デッキから儀式魔法『原初の叫喚』を手札に加え、その儀式魔法に名前が記された儀式モンスターを1枚手札に加えますわ。記されているのは『輝神鳥ヴェーヌ』。この2枚を手札に加えますわ」(カリン手札0→2)(カリン墓地3→4)
「そうして、私は儀式魔法『原初の叫喚』を発動させますわ! フィールドのレベル5那沙帝弥と、墓地のレベル3『儀式魔人デモリッシャー』を除外し、儀式召喚! 儀式魔人は墓地に存在する時、除外することで儀式モンスターのリリースに必要なレベルを肩代わりしますわ! これにより、私はレベル8のヴェーヌを儀式召喚!」(カリン手札2→0)(カリン墓地4→5)(カリン除外1→2)
儀式によって現れたのは、神の鳥とでも言うべき神々しい鳥。攻撃力は2800。
「バトルフェイズに入り、ヴェーヌで攻撃!」
「攻撃宣言時フィールド魔法『ゴーストリック・ミュージアム』の効果が適用されるよ! 攻撃宣言時、裏守備モンスターしかいないとき、その攻撃は直接攻撃となる! ぐっ」(クロウリーライフ8000→5200)
「お得意の戦術ですか?」
「その通りっ! ダメージを受けた時、手札から『ゴーストリック・マリー』を捨てて、効果発動っ! デッキから、『ゴーストリック』を裏守備表示で特殊召喚するっ! 『ゴーストリック・キョンシー』を裏守備で特殊召喚っ!」(クロウリー手札3→2)(クロウリー墓地1→2)
「さらに、フィールド魔法『ゴーストリック・ミュージアム』の効果発動! プレイヤーに戦闘ダメージを与えたモンスターは、裏守備表示になるよっ!」
「……かまいませんわ」
「さらに、永続罠『ゴーストリック・ナイト』を発動! 『ゴーストリック』モンスターがいる限り、相手は反転召喚できない!」
「……どうやら早急に蓋をしにきたようですわね。エンドフェイズ。墓地から儀式魔法『原初の叫喚』を除外して、効果発動ですわ。このターンに自分フィールドから墓地へ送られた儀式モンスターを1体墓地から特殊召喚させますわ。私は墓地より、那沙帝弥を復活させますわ! ターンエンド」(カリン墓地5→4)(カリン除外2→3)

カリン

ライフポイント8500
手札枚数0枚
モンスター2体
『輝神鳥ヴェーヌ』(裏守備表示・守備力2000・レベル8・光属性)
『サイバー・エンジェル-那沙帝弥-』(守備表示・守備力1000・レベル5・光属性)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード1枚
『祝福の教会-リチューアル・チャーチ』
墓地の枚数4枚
除外されているカード3枚


4・クロウリーのターン

「アタシのターン、ドローっ!」(クロウリー手札2→3)
「アタシはフィールドのモンスターをリバース! 『ゴーストリックの猫娘』と『ゴーストリック・キョンシー』! キョンシーはリバースしたとき、フィールドの『ゴーストリック』モンスターの数以下のレベルを持つ『ゴーストリック』モンスターを手札に加えられるっ! デッキからレベル1の『ゴーストリック・フロスト』を手札に加えるよ」(クロウリー手札3→4)
「そうして、『ゴーストリック・シュタイン』を召喚!」(クロウリー手札4→3)
「さらに手札から、魔法カード『月の書』を発動! フィールドのモンスター1体を裏守備表示にする! 残っている那沙帝弥を裏守備にしてもらうよ!」(クロウリー手札3→2)(クロウリー墓地2→3)
「行くよ、バトルフェイズ! ミュージアムの効果で、『ゴーストリックの猫娘』で、ダイレクトアタック!」
「リバースカードオープン! 罠カード『砂塵の大嵐』!」
「なんですって!?」
「フィールドに存在する、魔法・罠を2枚破壊させてもらいますわ。当然、あなたのフィールド魔法と罠カードを!」(カリン墓地4→5)
「嘘っ!?」(クロウリー墓地2→4)
「これで、ダイレクトアタックは封じられましたわ。とりあえず、手札にあるフィールド魔法を発動してみては?」
「くっ……だったらアタシは、シュタインで裏守備となっている那沙帝弥を攻撃! フランケン・ナックル!」
フランケンシュタインの拳が那沙帝弥を破壊する。しかし、カリンは余裕の笑み。(カリン墓地4→5)
「……メインフェイズ2に入って、私はレベル32体のモンスターを素材に、エクシーズ召喚! 現れて、お化け屋敷の主様! ランク3『ゴーストリック・アルカード』!」
真っ白な顔をした、吸血鬼のデフォルメみたいなモンスターが現れる。攻撃力は1800。
「アルカードのモンスター効果発動、エクシーズ素材を1つ取り除き、フィールドのセットされたカード1枚を破壊する! そのヴェーヌは破壊させてもらうよ! トリック・オア・トリート!」(クロウリー墓地4→5)
アルカードのマントの中から現れた、コウモリの大群によってヴェーヌは破壊される。だがそれでも、カリンは余裕の笑み。(カリン墓地5→6)
フィールドも、手札も0になったのに。
(カリンちゃん……何を企んでいるんだ?)
「アタシはフィールド魔法『ゴーストリック・ハウス』を発動して、ターンエンド! アルカードがいる限り、あなたは他の『ゴーストリック』を攻撃できないよ! そして、ハウスの効果でダメージは半分になるしね! さらに、猫娘以外の『ゴーストリック』がいるから、レベル4以上のモンスターが召喚・特殊召喚されたらそのモンスターは裏守備になる! さあ、ここからどうするのかな?」(クロウリー手札2→1)

クロウリー

ライフポイント4300
手札枚数1枚
モンスター2体
『ゴーストリック・アルカード』(攻撃表示・攻撃力1800・ランク3・X素材1つ・闇属性)
『ゴーストリックの猫娘』(攻撃表示・攻撃力400・レベル2・闇属性)
魔法・罠ゾーンのカード0枚
発動しているカード1枚
『ゴーストリック・ハウス』(フィールド魔法)
墓地の枚数5枚
除外されているカード0枚


5・カリンのターン

「私のターン、ドロー!」(カリン手札0→1)
「私は手札より、魔法カード『逆転の宝札』を発動しますわ! 私のフィールド・手札がこのカードだけの場合、発動できますわ。相手の表側表示カードのカードの数だけドローできますわ。私は、3枚ドロー!」(カリン手札0→3)(カリン墓地6→7)
「……来ましたわね。私は手札より、速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動させますわ。対象としたモンスターの攻撃力を400アップさせ、効果を無効化させますわ!」(カリン手札3→2)(カリン墓地7→8)(猫娘攻撃力400→800)
「そうして、リチューアル・チャーチの効果を発動。墓地から魔法カードをデッキに戻し、戻した数と同じレベルを持つ天使族・光属性モンスターを、墓地から特殊召喚できますわ。私は聖杯と宝札の2枚をデッキに戻し、墓地からレベル2の『サイバー・エッグ・エンジェル』を特殊召喚しますわ」(カリン墓地8→5)
「エッグ・エンジェルの効果を発動。デッキから『機械天使』魔法カードである『機械天使の儀式』を手札に加えますわ」(カリン手札2→3)
「さらに、私は手札より『宣告者の神巫』を召喚しますわ! 効果発動。デッキ・エクストラデッキから天使族モンスターを墓地へ送り、このモンスターのレベルを墓地へ送ったモンスターのレベル分上げますわ。私は、エクストラデッキより『虹光の宣告者』を墓地へ送り、レベルを4上昇させてレベル2から6としますわ」(カリン手札3→2)(カリン墓地5→6)
「さらに、墓地へ送られた『虹光の宣告者』の効果、デッキから儀式魔法か儀式モンスターを手札に。『サイバー・エンジェル-伊舎那-』を手札に」(カリン手札3→4)
「決まりましたわ。私は手札から儀式魔法『機械天使の儀式』を発動させますわ! レベル2のエッグ・エンジェルと、レベル6となっている『宣告者の神巫』をリリースして、手札からレベル8『サイバー・エンジェル-伊舎那-』を儀式召喚しますわ!」(カリン手札4→2)(カリン墓地6→8)
現れ出た、多腕の機械天使。攻撃力は2500とそんなでもないが。
「伊舎那が儀式召喚に成功した時、相手は自分フィールドの魔法・罠を1枚墓地へ送らなくてはいけない。さあ、そのフィールド魔法を墓地へ送りなさい」
「くっ……」(クロウリー墓地5→6)
「これで、ダメージ半減も無くなり、安心して攻撃ができますわ! さらに、リリースされた『宣告者の神巫』の効果、デッキからレベル2以下の光属性・天使族を特殊召喚しますわ。私はデッキから『サイバー・プチ・エンジェル』を特殊召喚して、その効果でデッキから『サイバー・エンジェル-弁天-』を手札に」(カリン手札2→3)
「行きますわよ! バトルフェイズ! 伊舎那で、アルカードを攻撃! 天空一閃!」
「きゃあっ!」(クロウリーライフ5200→4500)(クロウリー墓地6→8)
「さらに伊舎那は、相手モンスターを戦闘で破壊した時、相手モンスターへ続けて攻撃できる! 天空二閃!」
「いや~ん!」(クロウリーライフ4500→2800)(クロウリー墓地8→9)
「リバースカードを1枚セットして、ターンエンド。さあ、今度はあなたがどうしますか?」(カリン手札3→2)

カリン

ライフポイント8500
手札枚数2枚
モンスター2体
『サイバー・エンジェル-伊舎那-』(攻撃表示・攻撃力2500・レベル8・光属性)
『サイバー・プチ・エンジェル』(守備表示・守備力200・レベル2・光属性)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード1枚
『祝福の教会-リチューアル・チャーチ』(フィールド魔法)
墓地の枚数8枚
除外されているカード3枚


6・クロウリーのターン

「私のターン……」
その時、クロウリーこと静の中で、ドクンと何かが込み上げるものが起きた。
(来たっ……! ここで来た!)
「ドロー!」
「来た~! 来た来た来た来たぁ~!」
「!?」
「行くよ! アタシはダークネスカードを、はっつど~!」
「ええっ!? ダークネスカード!?」
「やっぱりか!」
(おそらくだが、奴の異常行動も、アレが原因!)
「カリンちゃん!」
「ええ、あんなものを使えば心がむしばまれるのも無理はないですわ。ですから……このデュエル、勝ちます!」
「ウフフフフフ! エクストラデッキの『ゴーストリックの駄天使』を特殊召喚して、重ねて召喚! ダークエクシーズ召喚! 現れよ、ランク5『ゴーストリックの智天使』!」
現れたのは、『ゴーストリック』にありがちなかわいい堕天使ではなく、まるで機械のような天使。『ゴーストリック』の可愛さが、全く無くなっている。守備力はは3000。
「智天使の効果、特殊召喚墓地から『ゴーストリック』モンスターを2体までエクシーズ素材にできる。アルカードとマリーを素材にする」(クロウリー墓地9→7)
「さらに、エクシーズ素材を1つ取り除いて、効果発動! 相手モンスターの効果を無効にして全て裏守備表示にし、守備表示になったモンスターの数だけデッキ・墓地から『ゴーストリック』カードをセットできる。裏になったのは伊舎那とプチ・エンジェルの2体。よってデッキから『ゴーストリック・ハウス』と『ゴーストリック・ナイト』を伏せる。そしてターンエンド……」(クロウリー墓地7→8)
「ええっ、エンド!?」
「このエンドフェイズ時、智天使の効果が発動っ! フィールドにセットされているカードと『ゴーストリック』カードの数×1000ポイントのダメージを相手に与えるぅっ!」
「ええっ!? 今フィールドにセットされているカードは5つ、それに智天使を加えれば……6000のダメージ!?」
「そのとお~り! 食らえ6000ダメージ!」
「キャアアアアッ!」(カリンライフ8500→2500)
智天使から放たれた闇の雷が、カリンを直撃……!? するかと思われたが。
「ぐぅっ……うぅっ」
「ああっ! サフィラ!」
「サフィラ……!」
カリンの精霊であるサフィラが、身を挺してかばった! 
「カリン……大丈夫ですか?」
「サフィラ……ありがとうございます」
「なんというダメージ……! 数値以上に痛いダメージだったわ。こんなものをマトモに食らえば、それこそ先ほど転がっていたあの人のように……!」
「これが……ダークネスカードの威力! そして、あの強力なモンスター!」
「ええ、だからこそ、人の心を蝕むというのですね!」
「ウフフフ~。あ、言っとくけど、智天使のエンドフェイズダメージはあなたのターンでも発動するからね~」

クロウリー

ライフポイント2800
手札枚数1枚
モンスター1体
『ゴーストリックの智天使』(守備表示・守備力3000・闇属性・ランク5・X素材2つ)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数8枚
除外されているカード0枚


7・カリンのターン

「私のターン……」
(このターンで何もできなければ、私は負ける。そうなってしまえば……ですが、私は、やってみせますわ!)
「ドロー!」(カリン手札2→3)
「このドローフェイズに、永続罠『ゴーストリック・ナイト』を発動! 相手の反転召喚を封じる!」
「関係ありませんわ。私は手札から、『マンジュ・ゴッド』を召喚! それにより、私はデッキより『サイバー・エンジェル-荼吉尼-』を手札に加えますわ」
「更に手札から、魔法カード『儀式の準備』を発動させますわ! デッキからレベル7以下の儀式モンスターを手札に加える。私はデッキからレベル6の『サイバー・エンジェル-韋駄天-』を手札に。その後墓地から儀式魔法『機械天使の儀式』を手札に加えますわ!」(カリン手札3→2→4)
「そしてそのまま、儀式魔法『機械天使の儀式』を発動させますわ! フィールドで裏守備になっているレベル8の伊舎那をリリースして、儀式召喚! 現れよ、レベル8『サイバー・エンジェル-荼吉尼-』!」(カリン手札4→2)(カリン墓地8→10)
現れたのは、伊舎那と同じく多腕の機械天使が現れる。攻撃力は2700。
「荼吉尼が儀式召喚に成功したとき、相手は自分のモンスターを1体墓地へ送らなくてはいけませんわ。たとえ、どんなに強力な耐性を持っていても、相手にリリースを強要するこの効果では、止められませんわ!」
「残念~! 智天使の効果は相手ターンも使えるんだよ! エクシーズ素材を取り除き、全ての相手モンスターの効果を無効化し、裏守備にする!」(クロウリー墓地8→9)
「くぅっ……!」
「ああっ! せっかく除去できると思ったのに!」
「さらにデッキから、『ゴーストリック・アウト』と『ゴーストリック・ブレイク』を伏せるよ!」
「さらに罠カードまで……!」
「……いいえ、大丈夫ですわ遊太君。ここからが私の本領ですわ!」
「フィールド魔法リチューアル・チャーチの効果で、墓地から魔法カード2枚をデッキに戻し、墓地からエッグ・エンジェルを特殊召喚しますわ!」(カリン墓地10→7)
「エッグ・エンジェルの効果で、デッキから『機械天使』魔法カードである『荘厳なる機械天使』を手札に!」(カリン手札2→3)
「リバースカード、オープン! 罠カード『緊急儀式術』! 墓地の儀式魔法を除外して、同じ効果を得ますわ! 墓地の『機械天使の儀式』を除外して、効果発動! これにより、手札の韋駄天をリリースし、『サイバー・エンジェル-弁天-』を儀式召喚しますわ!」(カリン墓地7→9)
現れたのは、両手に扇を持つ機械天使。攻撃力は1800と、とても頼りない。だが! 
「リリースされた韋駄天の効果発動。私の全ての儀式モンスターは攻守を1000アップさせますわ!」(弁天攻撃力1800→2800)(弁天守備力1500→2500)
「行きますわ、バトルフェイズ! そして、速攻魔法『荘厳なる機械天使』を発動! フィールド・手札の『サイバー・エンジェル』をリリースし、光属性・天使族の儀式モンスター1体の攻撃力・守備力をリリースしたモンスターのレベル×200ポイントアップさせますわ! 荼吉尼をリリースして、攻撃力を1600アップさせますわ!」(弁天攻撃力2800→4400)
「攻撃力、4400!? でも、智天使の効果で、私の『ゴーストリック』カードは戦闘・効果で破壊されは――」
「『荘厳なる機械天使』の効果、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターと効果を受けたモンスターが戦闘を行うとき、その効果を無効化する!」
「ええっ!?」
「行ってください、弁天! 荘厳なる韋駄天閃!」
「ぐぅっ~!」(クロウリー墓地9→11)
「やったあっ! ダークネスカードから生まれたモンスターを倒したぞ!」
「でも、アタシのモンスターは守備表示。ダメージは受けないよ~!」
「……それはどうかしら? 弁天のモンスター効果。戦闘で破壊し、墓地へ送ったモンスターの守備力分のダメージを、相手に与えますわ!」
「ええっ!?」
「覚悟を決めなさい! 弁天波動閃!」
「キャアアアアアッ!」(クロウリーライフ2800→0)
弁天の扇による一閃が、智天使を貫く。それによるダメージが、クロウリーに直撃! そのダメージにより、カリンはデュエルに勝利した。


「私の勝ちですわ!」
「ウガガガ……ギギギギ……」
「今ですわ、サフィラ!」
「ええ、浄化の祈り……!」
勝利したカリンと同時に、サフィラによって浄化の祈りが捧げられた。闇を払う祈り……。だが、クロウリーの様子がおかしい。
「……ウフフフ、これで終わったと思わないことねぇ!」
「ええっ!?」
「アタシのターンはまだ終わってないわよぉ~。さあ、デュエルを再開するわよぉ!」
「サフィラ……デュエルの勝利と同時に、浄化の祈りを捧げましたか」
「ええ、確かに捧げました。ですが……ダークネスカードの闇の力が、私の力よりも上回っているとしか言いようがありません」
「アハハハハ! キャハハハハ!」
「ど、どうすればいいんだ……!」
その時、物陰から現れたのは……。
「遊太サン! これは……」
「ユイ!? どうしてここに!?」
「遊太サンが心配になって……つい……! ううっ!?」
その時、ユイが胸を押さえて苦しむ。そうして、バッタリと倒れてしまう。
「ユイ!? 大丈夫!?」
ユイを揺さぶって、大丈夫かどうか確かめる。すると……? 
目をカッと見開き、急に立ち上がる。
「愚かですわね」
「ええっ?」
「人の心の隙間を闇で満たし、自分の思い通りにしようとするなんて、実に愚かですわね」
「え? ええ?」
「そんな偽りの感情など、神聖なる光の前には無力!」
「ええっ!?」
ユイが両手を掲げると、まばゆい光が辺りを照らす。それにより……。
「うぐぅっ!?」
クロウリーこと静のデッキと体の中から、黒いカードが出てくる。そうして、まるで焼け焦げるように、それは消えてしまった。
そうして、静は倒れてしまった。ユイも共に。
「え、ええっ……?」
「な、何が……?」
遊太とカリンは、ただただ呆然としていた。


「ううっ……あれ? 私……」
「あーうー……頭が痛いデス……」
しばらくして、二人は目を覚ました。
「だ、大丈夫……? 二人とも」
「わ、私は一体……?」
「ワタシもどうしたのデシょうか?」
「二人とも……」
「カリン……一つ良いかしら?」
「サフィラ?」
「今の静ちゃんからは、闇の力を一切感じません……どうやら、先ほどのユイが放った光が、闇を浄化したようね」
「ユイ、さっきのは一体……?」
「え、なんデスか? ワタシ、どうかしマシたか?」
「覚えて……ないの?」
「エエ?」
「静の方も……」
「カリン……ちゃん?」
ユイはまるで、先ほどのことなど覚えていなかった。そうして、静の方も先ほどまでの狂気が去っていた。さっきのことなんか、まるで無かったように。
そうして、カリンと遊太はなぜこんなことをしでかしたのか事情徴収を行った。だけど、静はまだクロウリーの格好をしたまま。
「実は……この間そちらの遊太君とデュエルした後、妙な人が私の前に現れたんです」
「妙な人……?」
「うん、黒いローブで全身覆ってて、体も顔も全然見えなかった。その人が、なんか奇妙な黒いカードを私に押しつけられて以降、記憶がなくって……」
「記憶が無い……?」
「うん、なんとなくだけど、訳のわからないことばかりしているようなことしかわかんないの……」
「……前話を聞いたときは、ダークネスカードは中毒のような症状を出すって聞いてたけど……人の人格すら吹っ飛ばすようなことは、なかったはずだよね? カリンちゃん」
「ええ、前聞いたときは、そんなことはなかったような気がしますわ」
「でも、これもダークネスカードが原因だとしたら……やっぱりその人は、ロベルトさんが言っていたようなアポカリプトのメンバーなんじゃあ……?」
「……よくはわかりませんが、多分そうなのでしょう」
「で、でも! これは、私の責任なのっ……! さっきの人だって……」
「……そもそも、あなたがこんなことしてたから目をつけられていたんですわよね」
「……うん……私、小さい頃から恥ずかしがりで……人の前に立つと、どうしても顔が赤くなっちゃって……」
「恥ずかしがりなら、なんでそんな格好をしてデュエルができるんですの?」
「……前、ハロウィーンのパーティでこの仮装をしたことがあるの。コレを着てみんなと話をしたら、自然と会話ができるようになったの……その時から、この格好をしていると自分が自分じゃないような気がして……私がなりたかったような、明るくて活発な女の子に……」
「だから、そんな格好をして辻デュエルを……」
「でも、それでは本当のデュエルはできませんわよ」
「カリンちゃん……」
「自分を偽って仮面を被っても、それは本当の自分じゃないですわ。だからこそ、アレがなくてもあんなデュエルしかできませんわ。やはりデュエルは、お互いに面と向かって、ですわ!」
「カリンちゃん、良いこと言う~」
「ですから、そんなものなくてもあの子たちはきっとデュエルを了承してくれるはずですわ。明日、やってみましょう? ……それを外してね」
「……」
しばらく押し黙った後、静は自分のカボチャのかぶり物に手をかけ、キュポッと頭から外した。
「……わ、わかったわ……私、やってみる。これが無くても、みんなと話ができるようになってみせる。みんなと、デュエルができるように、なってみせますっ!」
顔を赤くしながら、大声で叫ぶように宣言する静。それを見て、カリンと遊太は安心する。
「これならもう、大丈夫かな……?」
「本人の努力次第ですわね。それよりも……」
顔を赤くしている静を横目に、その様子をまじまじと見つめているユイ。
「ユイさんのあの力は、一体……? サフィラの能力とも光とも違う何か……」
「アルファ、心当たりある?」
「うむ……アレがなんなのかはわからないが……なんとなく、懐かしいような感じがした……見覚えがある……のかもしれん」
「……?」
「まあ今は、事件解決のことを祝いましょうか……」
「ユイ……君は一体、何者なんだ……」


翌日。
「『ゴーストリック・アルカード』で、ダイレクトアタック!」
「うわっ、やられたぁっ!」
「へぇ~、静って結構デュエル上手かったんだあ~」
「次俺な!」
「僕も僕も~!」
「ああっ、押さないで、押さないで……!」
静は、ゲームショップ烏間の人気者となっていた。新たなデュエル友達ができたことに、みんなは面白がっていた。
それを、遠目で眺める遊太たち。
「なんか、よかったねえ」
「うん、急にみんなのところに来て、顔を赤らめながら大声でデュエルしてくださいって言って、そのままデュエル直行……うふふ、恥ずかしがりらしいやり方ね」
「うれしそうですね、烏間さん」
「ずっとこんな風になるのを待ってたから……ね?」
「結構やるじゃねーかよ、昨日カリンと一緒にやったんだろ? 何したんだ?」
「ちょっと、口では説明できないかな~」
「なんだよなんだよ、教えるじゃん?」
「じゃあ、僕もそろそろ一緒にデュエルしてきま~す」
「おう、行ってきな」
こうして、ゲームショップ烏間に新しい仲間が増えましたとさ。
そして、デュエルをしている静のところに耳打ちする子もいた。
「ねえねえ、君」
「は、はいっ?」
「君……昨今噂になってるデュエル怪人の正体でしょ?」
「え、ええっ!?」
「ねえねえ、それなら僕も一緒にやらせてよ」
「は、はい?」
「クロウリーと、ファントムの二段構えって、良くない?」
「そ、それは結構楽しそうですね……!」
「へへへ」
「うふふ」
そうして、怪人の和も広がったり広がらなかったり……。


だけど、今回の件はよいことばかりではなかった。
闇の中、向かい合う何者か。
「新型のテストはどうだったかな?」
「ええ、もう良いデータが取れましたよ。これなら実装しても良いぐらいに……!」
「そうか。なら、これから流通させるのはこの新型のダークネスカードが望ましい……! 人格さえも、我々が支配するカード、これが我々の新たな力だ!」

第六三話。終わり。

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