HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王WW(ワンダーワールド) > 45話 王を目指す者

遊戯王WW(ワンダーワールド)/45話 王を目指す者 作:名無しのゴーレム











「はぁ、はぁ……ちょっと、待って……」






ミトラの後を追って森の中を進む……しかし、その余りにも無茶苦茶な道中はついていくことすら困難だ。ついに耐えかねて、ミトラに声をかける。



「…………?」
「ミトラ、お願いだからもっと歩きやすいところを……」
「…………」



少しの間立ち止まり、考える様子を見せるミトラ。その後急に方向転換し、先ほどと変わらないペースで歩き出す……



「え……?」
「……草むらを抜ける方へ向かっているようだ。一応、こちらに配慮するつもりはあるらしい」
「そう……ですね」



全くコミュニケーションをとろうとしないミトラだが、僕たちの話は聞いてくれているようだ。こちらに合わせてくれたミトラのためにも、何とか彼女についていく……














…………一体、どれくらい経ったのだろうか。休むことなく一定のペースで歩くミトラに対して、僕の体力は確実に削られていく。



「はぁ、はぁ……」
「もう、限界です……」



どうやら、クロノスも疲弊しているようだ。一向に侵入者が見つかる気配もない以上、このまま無闇に探索を続けたら……



「…………」
「……?」



鬱蒼とした森を抜け、開けた場所に出る。そのど真ん中に、ミトラは急にかがみ込む。



「えっと、ミトラ……?」
「……しばらく休憩」



チラリとこちらに目をやるような仕草をしたあと、再び周囲を見渡し始めたミトラ。彼女が疲れているようには全く見えないが……僕やクロノスのことを気遣ってくれているのだろうか。



「ありがとう、ミトラ。それじゃあお言葉に甘えて……」



感謝の気持ちを伝えたあと、その場に座り込む。原っぱに足を投げ出すと、ここまで歩き通した疲労がどっと押し寄せる。とてもじゃないけど、しばらくは立つことも難しいだろう。



「……ミトラは体力あるんだね」
「……別に、普通」



こちらからの問いかけに、ミトラは呟くように返答してくれる。……今なら、きちんと会話できるだろうか?



「やっぱり、ここで暮らしてると大変なの? 食事とか……」
「食事は……自分で採ったものを食べてる。大変と思ったことは……ない」
「そうなんだ。えーと、神羅……だったっけ。あの幻獣とはどんな関係なの?」
「関係……神羅たちとは、一緒に暮らしてる」
「一緒にって……同じところで寝たり、ご飯を食べたりするってこと?」
「…………コクリ」



さっき見た限りでは、神羅は鳥のような姿をしていたはず。そんな彼らとともに暮らしてるってことは……一体どんな生活をしているんだろう?



「……あ、そうだ。クリムに聞いたんだけど、ここには神羅以外にも幻獣がいるんだよね。彼らとも一緒だったりするの?」
「……ううん。暮らしてるのは神羅たちとだけ。他は別のところに……それぞれテリトリーがある」
「じゃあ、あんまり交流はないの?」
「ないわけじゃない、けど……神威は喧嘩っ早いし、魔迦や暁月、突刻は滅多に自分達のテリトリーから出ない……八汰はあんまり見たこともない」
「な、なるほど……同じ幻獣でも、みんな仲がいいわけじゃないんだね」
「……そんなの、当たり前」
「ぇ……」



……そう、ミトラの言う通りだ。幻獣といっても生き物であることに変わりなくて、それなら好き嫌いだって存在する……そんな当たり前のことを、僕は失念していたのか。



「……うん、当たり前だね。ありがとうミトラ。おかげで大事なことに気付けたよ」
「……?」



何を言っているのか理解できない、というふうに首をかしげるミトラ。



「あはは、変なこと言っちゃってごめんね……ようし、そろそろ捜索を再開しないと。あ、クロノスは大丈夫?」
「は、はい。足は痛いですけど、何とか歩けそうです……」
「足の痛みはすぐにはとれないよね……じゃあ、ゆっくり探してみようか。ミトラもそれでいいかな?」
「……コクリ」



休憩を終え、再び足に痛みを覚えながらも立ち上がる……丁度そのタイミングだった。


















「……か………て…!!」















森の中から漏れ聞こえてきたのは人の声。それも、悲鳴に近いような……



「今のって……!?」
「マッハやプリンセスたちのものではないな。声質からして若い男性のものだと思うが……」
「じゃあ、侵入者の声でしょうか……?」
「とにかく行ってみないと……!!」



声の正体について話し合っていた最中、突如としてミトラが駆け出した。



「み、ミトラ!!」
「確保に向かった訳か……勇者、どうする?」
「も、もちろん僕たちも! 行こう、2人とも!」
「了解した」
「分かりました!」



2人の同意を得て、ミトラの後を追い森の中へと踏み入る。……足の痛みからスピードは出せないものの、可能な限り急がなければ。


















「もう、そろそろ……!!」



疲労した足に鞭を打ち、何とか声がした(と思われる)場所へ辿り着く。そこに広がっていた光景に、思わず言葉を失う……









「だから、ダメなものはダメ。これは私たち神羅でどうにかする」
『フン、つまらないな。せっかく久方ぶりにヒトを見つけたのだ、少しくらい力を試しても……』
「…………」






草むらごしに見える光景。そこには炎を纏った虎……のような幻獣。そして、その正面にはミトラが。何やら2人で話し込んでいるようだが……






『まったく、融通がきかん奴め。これだから神羅は……仕方ない、引き上げると……おいミトラ、あれは侵入者ではないのか?』
「? ……!」



幻獣とミトラ、両者が同じ方向……というか、こちらを向いた。これは、まずい気がする……!!



『おい、そこに居るのはヒトか!? 姿を見せるがいい!』
「……出てきて」



……この状況では他にどうすることも出来ない。



「ど、どうも……」
『……ふむ、これまた戦意の薄そうな連中だな』
「彼らは私たちの協力者。手出しは許さない」
『分かったとも。しかし、おかしいな。先ほどは確かに鋭い敵意を感じたのだが』
「それについても、私たちで調査する。だから、ひとまずここを退いて欲しい」
『ああ、承知した。お前たちにどうしようもない敵でも現れたら声をかけろ。我ら神威が力を貸してやるからな』









話がまとまったのか、炎の幻獣……神威は身を翻して駆け出した。



「それは、あなたたちが暴れたいだけ……ふぅ」



そう呟いたあと、ミトラは小さくため息を吐く。その後、もう一度こちらへ身体を向ける。



「……侵入者を発見した」
「え? どこに……」
「ここ」



彼女の指で示された先はすぐ下。その先に視線を向けると……



「…………」



……目を開けたまま気絶している、1人の少年が倒れていた。



「え……これ、大丈夫なの!?」
「心臓は動いてるから、生きてる……」
「いや、そういう問題じゃないよね!?」
「と、とりあえず目を覚ますまで様子を見ますか……?」
「……このまま合流地点まで連れていく訳にもいかないだろう。素性を調べる必要もある……先ほどの休憩場所まで運ぶとしよう」
「あ、僕も手伝います……」
「無理をするな、勇者。これくらい、何ということはない」



そう言って少年を軽々と担ぎ上げる鋼さん……少年が軽いのか鋼さんが力持ちなのか、果たしてどっちなんだろうか……















「………ん、あれ……?」
「あ、目を覚ましましたよ」
「……? あなたたちは……!?」



身体を起こした彼は寝起きのように、ぼうっと周囲を見渡す。こちらを向いたまま数秒ほど固まると、瞬時に驚きの表情を見せた。



「ど、どちら様でしょうか……?」
「えっと、それはこっちの台詞なんだけど……名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「名前……ああ、僕はロードって言います。君は?」
「僕は……」
「待て、答えるな」



名乗り返そうとしたところを鋼さんに止められる。こんなこと、前にもあったような……



「相手の正体も分からないのに迂闊に情報を渡すな。……ロードと言ったか、逃げられると思うなよ。縄で縛られたくなければ、動かずに大人しくこちらの質問に答えろ」
「縛られって……えぇ!? どうして、なんで!?」



鋼さんの言葉に慌てふためくロード。……鋼さんには悪いけれど、正直こんな反応をする人が何かを企んでいるようには見えない。



「……ここは幻獣の聖域。ヒトが立ち入ることは許されない」
「幻獣……それって、あの虎のこと?」
「……そう」
「それは……ごめんなさい。僕、インダストに行きたかったんです。マキナさんに会うにはここを通って行くしかないと言われて……」
「ま、待って! 今、マキナって……」
「え? ……もしかして、皆さんもマキナさんに会いにここへ?」



ふと口に出してしまった僕の問いかけにも無邪気に応じる。しかし、その発言はとてもじゃないが捨て置けるものではなかった。



「……お前は、奴とどのような関係なんだ?」
「え、僕ですか? えっと、大したことじゃないんですが……少し前に、僕が住んでいた町にマキナさんが訪れたんです。その時機会があって、彼女と話すことができました。そうしたら、彼女がインダストという大国を作り上げたということを聞いて……それから、あの人に憧れるようになったんです!」
「あ、憧れ……?」
「はい! 僕、ずっと前から王様になることを目指していたんです。でもどうやったら王様になれるか、そもそもどんな王様になればいいのか分からなくて……そんなところにマキナさんが来たんですよ!」



まるで大好きな漫画について語るかのように、彼は目を輝かせて語り続ける。



「あの人に会ってから、彼女のようになりたいと思えるようになったんです。マキナさんこそ僕にとっての理想の王様、だからこうして……」
「インダストへ来た、と。なるほど、大まかな事情は把握した」



ヒートアップするロードの話を打ちきる鋼さん。話を聞いている限り、やはり悪意をもって幻獣の聖域に侵入した訳ではなさそうだけれども……



「ここへはお前1人で来たのか?」
「はい。ちょっと遠かったですけど、何とか頑張りました!」
「……嘘をついている気配は無し、か。ともかく一度神羅のところへと連れていこう。ミトラも、それでいいな?」
「……コクリ」
「なら決まりだ。これから侵入者を移送する。さあ、ついてこい」
「え、どこに連れて行かれるんですか!?」
「……話を聞かせてもらうだけ。おかしなことをしなければ、こちらも何もしない」
「インダストには、行けないんですか?」
「それも、あなた次第」
「…………分かりました」



ロードは抵抗することもなく、ミトラたちの言葉に従う。このまま行けば、僕たちの目的は達成される……けど、この違和感は何だ……?



「あの、ユージさん。皆さん行っちゃいますよ……?」
「えっ……あ、ありがとう。僕たちも行こうか」



クロノスの呼び掛けに思考を中断する。どうやらミトラはロードと共に移動を始めたようだ。2人に追い付くため、少し駆け足で彼らのもとに向かう……
























「勇者ッ!!!」






カキンッ!!


















「…………、え?」






静かな森の中に、激しい金属音が鳴り響く。その音源、すぐ背後に目を向けると……



「鋼、さん……!?」
「くっ……防ぎ、切れなかったか……!!」



いつの間にか背後に立っていた鋼さん。しかしその右腕には、刃物のようなものが……!!?



「そ、それって……」
「心配するな、勇者……傷は浅い。止血さえ、すれば……」



気丈に返答して見せた鋼さんだったが、その言葉に反し膝をつき……やがて地面に倒れ込んだ。



「鋼さん……鋼さん!!」
「……そこっ!!」



突然の事態に頭の回転が追い付かない。ぴくりとも動かない鋼さんへひたすら呼び掛けを続けていると、ミトラが上方の木へと小石を投げつけた。



「な、何を……」









ミトラの行動に、さらに困惑していると……小石が命中した樹木から、1つの人影が落ちてくる。






「っ……さすがは、ヒトガタの幻獣と言ったところか。瞬時に私の居場所を割り出し、投擲を行うとはな」
「……答えて、あなたは何者!?」
「……想定外の流れとなったが、まあいい。私はシザー、傭兵だ。此度はマキナの依頼を受けて参上した」












ミトラを称賛しつつも、余裕を崩さない襲撃者の女性。堂々と自らの正体を明かす、彼女の目的は一体……?















キャラクター紹介


ロード
モチーフ:【リーガリアン】 作者様:ギガプラント様
王になることを夢見る少年。以前たまたま出会ったマキナの姿に憧れ、彼女に会うためインダストを目指して来た。
未熟な部分も多いが、目標達成への熱意と行動力は人一倍。


シザー
モチーフ:【シザーバンデット】 作者様:ユフリ様
マキナに雇われた女傭兵。
彼女の依頼を受けて幻獣の聖域に潜伏していた。
束縛を嫌うため、どこの勢力にも属さない流浪の身となっている。



【リーガリアン】、【シザーバンデット】の使用許可を下さったギガプラント様、ユフリ様、本当にありがとうございます!



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ギガプラント
おお新キャラか……と思ったら私のカテゴリだった。そういえばそんなカテゴリあったな…。
敵意を感じないロードですがその本質は……どうなのか。そしてもう一人は敵意ムンムンの傭兵さん。マキナに雇われたということは……?? (2020-02-19 08:54)
名無しのゴーレム
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。
これまたお借りしてから時間が経ってしまいました。大変申し訳ありません…
一気に新キャラ2人登場ですが、その性格はほぼ対極。共通点は…マキナに関係していることくらいですかね。

次回からはもう少しペースを上げて投稿出来るはず…(希望) (2020-02-20 00:37)

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