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遊戯王TF SP 四天王の馴れ初め/朝霧地影 神楽坂姉妹と出逢う 作:はにわ改

 
ーー国内大会当日。
国内のアカデミア、それも初等部に限れば八校を数えるのみ。
そこから各2名を選抜しての大会。
まだまだメディアも小さく取り上げるだけの、細々とした大会に過ぎないが、
それでも国内初等部に属する選りすぐりの若きデュエリストたちが、某所某会場に集ったのだった。

その内の一人、朝霧地影。
本校では鉄壁の守備でライバルを寄せ付けぬ戦いを見せたが、
それはこの大会でも遺憾なく発揮。
トーナメント形式の大会を1回戦、2回戦を実に危なげなく勝利し、一気に準決勝へと駆け上がったのだった。
その鉄壁振り、そして勝ちを急がないある種の渋さに満ちた戦い方は、まるでプロデュエリストのようだ、と見る者を感心させ、
また他校の生徒たちに威圧感を与えてもいた。

ーーが。
無名の地影が初めて注目を集める中で、
当初から優勝候補、と注目されていた『ある姉妹』もまた、圧倒的な強さでトーナメントを勝ち上がる。

ーー姉・刹那、妹・久遠の神楽坂姉妹。

幼少から天才、とその才能を見出だされて大きく注目を受けており、
また双子であるということも相俟って、しばしば雑誌やテレビなどでも顔を出すことがあり、
地影もその姉妹の名を当然の如く知らされていた。

そして準決勝。
地影はその神楽坂姉妹の姉・刹那と当たる事になった。
通常ならばその事に関して何らかの感情が湧きそうなものだが、地影は特に気にした様子もない。
相手が誰であろうと、ただ淡々と自分のデュエルをこなすのみ、と決めていた。

ーーそう、『自分のデュエル』をーー。

かくして準決勝を前に、間に昼食休憩が挟まれた。
親が仕事で来られず、単身で来場した地影は、
残念ながら既に敗北した同校の仲間と雑談しながら、母が持たせてくれた弁当を摘まんでいた。

ーーそんな、時の事。

同校の友達が飲み物を買ってくる、と席を立つ。
それを見計らったかのように、一人になった地影へ、2つの影が近付いた。

「ーーねぇ、ちょっといい?」

「え?」

不意に話しかけられた地影が目を向けると、そこには同じ制服を着て、そして何より同じ顔をした同年代の女の子が二人。
地影はすぐに分かった。

そう、あの優勝候補の神楽坂姉妹である。

「朝霧、地影さん、ですよね」

「は、はい、そうですがーー」

最初に話しかけてきた側と、もう一方の同じ顔に名前を呼ばれ、地影は突然の事に若干緊張しつつも頷く。

「はじめまして。
私、神楽坂刹那、といいます」

「私、妹の久遠!

ねぇねぇ、私とお姉ちゃん、区別つく?」

「え、あ、あの……」

「久遠?
いきなりそんな事言って……私たち初対面なのに、失礼でしょ?」

「あはは!
ごめんなさーい!」

明るく屈託のない笑顔の妹・久遠。
そして同年代の筈ながら、既に大人の落ち着きさを得たような穏やかな姉・刹那。
地影は戸惑いつつも、2つの顔をそういった観点から見分けていた。

「それよりもさ、朝霧さんのデュエル、見たよ!
私、ああいう戦い方した事ないからすんごく参考になったし、何より格好良かった!」

「あ、ありがとう」

「ね、今度、私ともデュエルしようよ!
ーーあ、そうだ、良かったら連絡先交換しない?
携帯とか持ってる?」

「も、持ってるけどーー」

「良かった!
じゃ、ちょっと貸してくれる?
私とお姉ちゃんの携帯とアド交換しておくから!」

捲し立てるような久遠に、思わず携帯端末を差し出してしまう地影。
そんな様を見て素直に喜ぶ久遠は、地影の携帯を借りて、お互いの携帯にアドレスを交換し合った。

「ーーごめんなさい、いきなりこんな馴れ馴れしくして。
あの子、デュエルが強い人見ると、いつもあんな感じなの」

「そ、そうなんだ……」

「次、私と準決勝で戦うから、その前に挨拶を、と思ったのだけど……。
あの子には悪気はないの。
ごめんね」

物腰の柔らかい、安心出来るような口調の姉・刹那。
同じ顔をした双子でも、やはりそれぞれ別の人格を持った女の子。
地影は意識的にそんな風に感じていた。

「準決勝、お互いに頑張りましょう」

「は、はい、お手柔らかに……」

「くす、それは無理。
貴方ほどの実力者に、手を抜くなんて出来ないもの」

「そんな事……」

「正々堂々、戦いましょ?
全力で、悔いの残らないように」

差し出された刹那の手を、ゆっくり握る地影。
手から伝わる優しい温もり、そして清々しさを感じさせる刹那の振る舞い。
本当に同年代かと圧倒されつつも、地影の中の緊張も自然と解れていた。

「ねぇねぇ、そういえばさ、一つ聞いてもいい?」

アドレス交換を終えたらしい久遠が、地影に端末を返しながら口を開く。

「ーー朝霧さんって、デュエルする時ってあんな感じなの?」

「あんな、感じって……?」

「んー、何て言うか……こんなこと言ったら悪いかも、だけど。

面白くなさそうな感じだった」

「え……」

久遠が何気なく聞いたその一言。
だが地影には深く突き刺さった。

「久遠、そんな事言ったら駄目よ。
人には人の立ち振舞い、というものがあるんだから」

「んー、それはそうなんだけど」

刹那が妹を諭す。
だが久遠はどこか納得のいかないような表情だ。

「私、そんなにつまらなさそうにデュエル、してたかな?」

地影が訊いた。
自分の事だというのに、今会ったばかりの二人に己の様を自信無さそうに訊ねたのである。

「えーとね、つまらなさそう、っていうか、
なんか我慢してる感じ!」

「我慢……」

「勝ったときもあまり嬉しそうじゃなかったからさ、
ちょっと気になっちゃった」

地影はこの時、まるで己の心境を見透かされたように感じていた。
久遠は自分を見て感じた事をありありと口にして見せただけであろうが、その一言一言が地影の心に釘打つように衝撃をもたらしていたのだ。

ーーやがて帰ってきた地影のクラスメイト。

「ーーそれじゃ、あとでね。
折角の休憩をお邪魔してごめんなさい。
久遠、ほら……戻りましょ」

「はーい!
じゃ、大会終わったらメルするから、待っててねー!」

気を利かせた刹那が久遠を連れて立ち去る。
地影はその二人の背中をしばらく見つめていた。
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