虹彩竜と歩むもの 第二部~翠風の少女~/第5話:1‐5 作:光芒




「失礼致します」
「し、失礼しました!」

 会議室を出た俺はほっと胸を撫で下ろす。先生たちを前にした初めてのプレゼンは俺の詰めの甘さこそ所々浮き彫りになったものの、俺のフォローに入ってくれたベアトリス生徒会長、そして企画の粗を追及しつつもより議論や企画を発展させてくれた星乃校長やミハエル教頭のおかげでなんとか形にすることに成功した。

「よかったですね、遊大さん。あなたの考えた企画が通りそうですよ♪」
「ベアトリス会長……ありがとうございます。ベアトリス会長のおかげです。俺一人ではきっと先生方に納得していただけなかったと思います」
「私はただ手助けをしただけですよ。あなたが努力したからこそ、それを先生方が認めてくれたんです」

 そう言って愛らしい微笑みを見せる生徒会長。去年俺が遊希さんによってデュエル委員のサポートに抜擢された時も遊希さんやエヴァ先輩を通して色々と気に掛けてくれたこの人には足を向けて眠れない。

「確かに遊大さんの企画は海千山千、人生経験豊富な先生方の目から見れば甘いところはあったのでしょう。ですが、先生方は企画の完成度よりも遊大さんの真摯な気持ちを買ってくれたのではないか……私はそう思うんです」
「真摯な気持ち……ですか?」
「ええ。私の実家は母国のフランスはもちろんヨーロッパでもそれなりに名が通った農場でして……ってその話は前にもしましたよね」

 ベアトリス会長は遊希さんたちが一年生の時に行った小学生・中学生デュエリストとセントラル校の生徒の交流イベントに協賛していたのがきっかけで遊希さんやエヴァ先輩たちと知り合った。その時のイベントが縁でベアトリス会長はセントラル校に入学し、結衣さんはプロデュエリストにまで駆け上がった。俺と遊希さんの初対面といい、運命的な出会いがその人の人生を変えるとはよく言ったものだと思う。

「家の仕事を手伝って野菜や植物、土と触れ合っていて思ったんです。人も植物も動物も土も……いずれと接する時も、最終的に大事なのはその相手にどれだけ真摯に向き合えるか、ということを」
「……」
「遊大さんは自分のことよりも、このセントラル校の未来を、日本のデュエリストの未来を、世界のデュエリストの未来を考えた上でこの企画を作り上げた。あなたのその真摯な気持ちに、ひたむきさに先生方は応えてくれたんです。それは間違いなく遊大さんだからこそできたことですよ」
「ありがとうございます。会長……」

 そこまで褒められると思っていなかったから、さすがにこそばゆい。でも、ベアトリス会長が言ってくれるように俺はそこまでできた人間であると自分では思えなかった。脳裏に浮かぶのは俺がずっと目を背け続けてきた人の顔。恩讐渦巻くその人と俺は未だ向き合えていなかった。もし彼が目覚めた時、俺は今までのように接することができるだろうか。

「……遊大さん、どうかされましたか?」
「いえ、なんでもないです。それより早く生徒会室に戻って企画を仕上げま―――」
「あっ、ベアトリス会長! 遊大先輩!」

 そんな時、俺たちの前に一人の女の子がまるで母親を見つけた子犬のように駆け寄ってきた。彼女は新入生でアメリカからの留学生である“クリスティーナ・シャーザー”さん。鮮やかな赤毛の髪を一つにまとめたポニーテールが印象に残る元気な子で、身体の弱いルームメイトのアリシア・ストラスバーグさんのことをいつも気遣っている面倒見のいい女の子だ。

「やあ。クリスティーナさん、こんにちは」
「こんにちは、遊大先輩! あっ、クリスティーナって名前ちょっと長いから私のことはクリスって呼んでくれていいですよ!」

 アメリカ出身だけあってクリスさんはとてもフレンドリーな子だ。ただ、そんなフレンドリーな性格の中にも相手を気遣えるだけの優しさがある。フレンドリー、という言葉に紐付けられた何故か遊舞さんの顔が浮かんだけど、彼女はフレンドリーというよりかは気安いだけのような気がしちゃうけど。

「じゃあ……クリスさん。これでいいかな?」
「はい、それでOKです!」
「ところでクリスさん、どうされたのですか? どなたかお探しですか?」
「あっ、そうなんです! アリス見ませんでした? あっ、アリスって言うのは……」
「ルームメイトのアリシア・ストラスバーグさんのことだよね? わかってるよ」
「はい、今日は授業が別々だったんで一緒にはなれなかったんですけど、お昼休みの時や授業が全部終わった後はいつも迎えに行ってるんです。あの子、身体が弱いから……」

 アリシア・ストラスバーグという女の子のことは留学生委員になった美鈴さんから事前に聞いていた。生まれつき身体が弱く、日本に来る前は何度も生死の境をさまよったこともあるという。成長に伴っていくらか身体は健康になったようだけど、体育の授業は動きの激しいものに関してはドクターストップがかかっており、日本に来た今でも定期的に検診を受け続けている。
 現時点で日々の生活に影響は出ていないようだけど、いつ何が起こるかわからないのが現実だ。俺たち生徒会役員はそんなアリスさんのような人がデュエリストとして学ぶことができる環境を作り上げなければならなかった。

「そうか、じゃあ一緒に探してあげるよ。もしかしたら他の人が寮まで連れて行ってあげているかもしれないしね」
「い、いいんですか?」
「はい。私たち生徒会は常に生徒の側に立っていてこその生徒会ですから」

 俺とベアトリス会長に対してペコペコと頭を下げるクリスさん。それなりの役職に就いてもなお、お人よしなのは早々直らないようだった。











☆TURN07(苑香)

「……私のターン、ドローですー。私はモンスターをセットしてー、ターンエンドしますよー」
「……じゃあターン終了時にウィッチクラフト・ハイネの効果、そしてそれにチェーンしてリバースカードを発動するよ。罠カード《ウィッチクラフト・マスターピース》」

《ウィッチクラフト・マスターピース》
通常罠
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに「ウィッチクラフト」モンスターが存在する場合、自分または相手の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードの同名カード1枚を自分のデッキから手札に加える。
(2):自分の墓地から、このカードと魔法カードを任意の数だけ除外して発動できる。除外した魔法カードの数と同じレベルの「ウィッチクラフト」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

チェーン2(詠):ウィッチクラフト・マスターピース
チェーン1(詠):ウィッチクラフト・ハイネ

「……チェーン2のマスターピースの効果を墓地の影依融合を対象に発動。同名カード1枚を手札に加える。そしてチェーン1のハイネの効果で永続魔法のバイストリートをコストにそのセットモンスターを破壊するよ」

 ハイネの放ったエネルギー弾がセットされていたゴーストリック・キョンシーを破壊する。マリーの効果で2枚目を特殊召喚したかったそののんは幸運にも2枚目を素引きできたみたい。でも、ハイネの効果は相手ターンでも発動できることからリバース効果を発動することなく破壊されてしまった。


苑香 LP8000 手札2枚
デッキ:27 モンスター:0 魔法・罠:0 墓地:14 Pゾーン:青/赤 除外:0 EXデッキ:13(0)
詠 LP4400 手札4枚
デッキ:19 モンスター:2(エルシャドール・ミドラーシュ、ウィッチクラフト・ハイネ)魔法・罠:1 墓地:15 Pゾーン:青/赤 除外:2 EXデッキ:13(0)


☆TURN08(詠)

「……私のターン、ドロー。柊さん、悪いけど……これで決めるね。私は《シャドール・ドラゴン》を召喚」

《シャドール・ドラゴン》
リバース・効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻1900/守0
「シャドール・ドラゴン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードがリバースした場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。
(2):このカードが効果で墓地へ送られた場合、フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

「バトルフェイズ。シャドール・ドラゴンでダイレクトアタック!」

シャドール・ドラゴン ATK1900

苑香 LP8000→LP6100

「戦闘ダメージを受けたことで、ゴーストリック・マリーの効果を発動しますよー」

《ゴーストリック・マリー》
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻100/守1600
自分フィールド上に「ゴーストリック」と名のついたモンスターが存在する場合のみ、このカードは表側表示で召喚できる。このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができる。
また、戦闘またはカードの効果によって自分がダメージを受けた時、このカードを手札から捨てて発動できる。デッキから「ゴーストリック」と名のついたモンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚する。「ゴーストリック・マリー」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

「私が戦闘またはカードの効果によってダメージを受けた時にー、このカードを手札から捨てることでデッキからゴーストリックモンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚できますー。今ならミドラーシュの特殊召喚制限にはひっかかりませんねー」
「……うん、そのカードを使ってくるのはわかってた。だから、チェーンしてカウンター罠《神の通告》を発動するよ!」

《神の通告》
カウンター罠
(1):1500LPを払って以下の効果を発動できる。
●モンスターの効果が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。
●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動できる。その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。

チェーン2(詠):神の通告
チェーン1(苑香):ゴーストリック・マリー

「あららー……」
「……チェーン2の神の通告の効果、ライフ1500を支払うことでモンスターの効果の発動を無効にして破壊する。ゴーストリック・マリーの効果は無効になるよ」

詠 LP4400→LP2900

「マリーの効果は発動できませんー……このターンで決める、という言葉は本当だったみたいですねー」
「……エルシャドール・ミドラーシュでダイレクトアタック!“エルシャドール・ガスト”!」

エルシャドール・ミドラーシュ ATK2200

苑香 LP6100→LP3900

「……ウィッチクラフト・ハイネで追撃」

ウィッチクラフト・ハイネ ATK2400

苑香 LP3900→LP1500

「……手札から速攻魔法、神の写し身との接触を発動! フィールドのシャドール・ドラゴンと手札の光属性モンスター、ウィッチクラフト・マスターヴェールを融合! エルシャドール・ネフィリムを融合召喚! ネフィリムでダイレクトアタック!“エルシャドール・ジャッジメント”!」

エルシャドール・ネフィリム ATK2800

苑香 LP1500→LP0










「負けてしまいましたー……さすがは詠さんですねー」
「……運が良かっただけだよ。もしあそこで増殖するGやハーピィの羽根帚を引けていなかったら私が負けていたから」
「運も実力の内、という言葉もありますからねー。取り敢えずこの勝利を喜びましょうー」

 デュエルはよみみんの逆転勝利で終わった。でも元々控えめな性格のよみみんは勝ってもそんなに喜んだ様子は見せないし、負けたそののんはそののんであまり悔しそうな素振りを見せていない。価値観は人それぞれっていうのはよく言うけど、二人とももっとそういった感情を出してもいいんじゃないかな、って思っちゃった。そういうのって野暮って言うのかもしれないけど。

「そののん、よみみん! いいデュエルだったよー☆」
「……風花さん、ありがとう」
「遊舞さんたちの御眼鏡にかかったようで何よりですー」
「お二人が対決するデュエルは初めて見ましたので色々と新鮮でした。自分が使っていないデッキについても学べるのはいいことだと思います」
「私も皆さんのようなデュエルをしてみたいですわ……」

 そう言って何処かシュンとした様子を見せるリスりん。リスりんはお医者さんから激しい動きがあるようなデュエルについては極力控えるように言われてるんだっけ。まあそのおかげで動きは少ないけど別の意味でえげつないデッキをリスりんは使いこなせているんだけど。

「じゃあリスりん、次はアタシとデュエルを―――」
「あーっ! アリスいたー!」

 リスりんの願いは親友のアタシが叶えてあげる、と思った瞬間リスりんの名前を呼ぶ声が。デュエルスペースの入口ではリスりんのルームメイトの“ティナりん”ことクリスティーナちゃんが手を振っていた。

「クリス、どうしましたの? そんなに慌てて……」
「慌てても何もないよー! どうして何も言わずに行っちゃうのー!?」
「えっ、苑香さんや詠さんと一緒にデュエルスペースに行くとメールを送って……あら、いませんでしたわ。回線が混み合っていてメールが送れていなかったようですね」
「あっ、そうだったんだー……授業終わる時間がズレちゃったからびっくりしたよー……」
「もう、クリスったら。あなたは私の保護者にでもなったつもりですの?」
「保護者じゃなくて親友ですー!」

 そう言って笑い合うリスりんとティナりん。うん、二人を見てると癒されるよね。ゆいゆいにそう言ったら「……そうですか?」と真顔で返されちゃったけど。

「クリスさん!」

 ティナりんが来てから少し経って遊大センパイとベアトリス会長もデュエルスペースにやってきた。ティナりんと一緒にリスりんを探してくれていたみたい。やっぱり遊大センパイとベアトリス会長は優しいね☆

「あっ、センパーイ! 企画どうなったのー!」
「……おかげさまで無事通りそうだよ。近日中に学内に公示されるかな」
「そうだったんですね、おめでとうございます」
「ありがとう。自分で言うのもなんだけど、それなりに工夫を凝らしたものができそうだよ」
「おっ、それは気になりますなぁ☆ ねえねえ、センパイセンパイ? どうせならアタシたちにだけネタバレしちゃってもいいんじゃない?」

 アタシがそう言うと、露骨に表情が曇る遊大センパイ。えっ、アタシってそんなに信用されてないの? いや、やめてみんな。そんな顔でアタシを見ないで。10秒で言いふらすようなキャラに思われてるの?

「別にいいのではないですか? いずれ周知されるわけですし」

 さすがベアトリス会長! 天使、女神!

「まあ、会長がそう言うなら……数日後に公表されるけど、それまでは内緒にしていてね。今回皆が受ける試験の名前は―――」







―――決闘研究所(デュエル・ラボ)。主にカードの知識とデュエルのプレイングについての力が求められるものになったよ。―――










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名無しのゴーレム
やっぱり羽根箒からの立て直しは無理だったよ…
ポンポン高打点が飛んでくる現環境ではライフアドバンテージが活きる暇もないという…旧ルールでもゴーストリックには辛い環境だったでござる。まあ今後の活躍に期待ですかね。
そしてアリスのルームメイトも登場。募集板を見た時点で察してましたが1年男子が入り込む余地がないですねこれ(笑)。その結果遊大がハーレム環境に…
カードの知識とプレイング…アニメで何回かあったあれでもやるのかな? (2019-11-09 23:22)
光芒
名無しのゴーレムさん
ヴァレルソードというワンキル大好きドラゴンがこの時系列ではまだ出ていないとはいえ、高打点を並べる手段が多くなっている以上、8000ライフが一瞬で消し飛ぶこともざらではないですからね。ゴーストリックのようなカードパワーが低めのデッキではうまくロックをかけないと厳しいものがあります。

>まあ今後の活躍に期待ですかね。
結衣もそうですが、名無しのゴーレムさんが応募してくれたキャラクターは終盤の逆転力が高そうなキャラが多いと思いますね。

>そしてアリスのルームメイトも登場。募集板を見た時点で察してましたが1年男子が入り込む余地がないですねこれ(笑)。その結果遊大がハーレム環境に…
遊大の目にはみんな後輩としか映っていないので大丈夫です(笑)。
それに彼にはもうお相手がいますしおすし……

>カードの知識とプレイング…アニメで何回かあったあれでもやるのかな?
恐らく予想されているものとは違う方式になると思います。遊戯王とはまた違うゲームですが、多くのプレイヤーのトラウマになった某施設をオマージュしたものになる予定です。
(2019-11-12 10:31)

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