第１４話　チェック　作：にしん

　しばらくすると結花が料理を運んできた。あいつ、俺たちだからって自分から名乗り出たな。接客業らしい営業スマイルで危なげな両手にお盆の＜盆回し＞しそうな状態でやってきた。

結花「お待たせしましまー♪遊二はステーキセットのライス大盛りと、恵那ちゃんはパスタセットのパスタ特盛りですしおすし♪」
要「ふざけてるのか真面目なのか・・・」
結花「あとドリンクバーねっ☆あたしのオススメはカル●スとメロンソーダのミックスだよーん」
要「んじゃコーヒーとウーロン茶持ってくるか」
結花「見事なスルーですたい」
恵那「あ、あはは・・・」

時間が時間だからか客がいっぱいなので結花はそそくさと退散し、真面目に働いていた。ドリンクバーで俺と恵那さんのドリンクを持って机に戻る。

恵那「もぐもぐ・・・あっ、ああありがとうございますっ」
要「もう食ってる・・・」

ドリンクバーに行った十数秒の間に恵那さんはサラダと山のように盛られたパスタをもぐもぐしていた。食べながら喋ったからか顔を少し逸らして頬を赤くしていた。

要「俺もいただきます、と。・・・聞いていいのかわからないけど恵那さん、めっさ食べるんだな」
恵那「ごふっ！？うっ、んんーっ・・・ごくんっ」

突然むせる恵那さん。まぁ確かに女の子相手に失礼な質問だったな今のは。

恵那「ご、ごめんなさい・・・えと、私、恥ずかしながら大食い・・・なんです」
要（なのにいい感じの体型なのはすごいな）

顔から火が出そうなほど頬を赤らめ、消え入りそうな声でカミングアウトする恵那さん。俺の不思議がった反応を見て更に恥ずかしがった。

要「つまるところ羨ましがられるタイプなんだろうね。結花を見てみるとわかりやすいかも」
恵那「えっ・・・あっ」

俺と恵那さんはせっせと働いている結花の方を見る。たまーにこっちをちらちら気にするように見てきていた。そして直後に考えるような仕草とお腹を押さえたり横腹をつまんだり、胸に手をかぶせる動作をする。こっちを見た時の表情はどこかしら羨ましそうにしている感じだった。

要「あいつ年の割にはちっこいしなー」
恵那「そ、それ川澄さんの前で言ったらやばそうですね」
要「いや、去年か一昨年あたり言っちゃった時は「あたしはいつまでも子供だからねー。いいでしょー」ってポジティブで返された」
恵那「そ、そうなんですね・・・本当は気にしてそうですけど」
要「多分大学入ってからだろうなぁ」

その後も時々おしゃべりしながら晩御飯を平らげた。そして追加したデザートも堪能した。


　帰る頃には結花も退勤していたようで、出口で待ち伏せしていた。

結花「ここの料理うまいっしょー」
要「まぁ、値段とファミレスの割には確かにうまかったな」
恵那「おっ、おいしかったです」

俺と恵那さんは結花の話題があるからか若干の気まずさはあったが結花がそれに気づいているかどうかは知らない。

三人で自転車を押して歩きながら帰路に就く。途中、市街地では有名なカードショップの前を通る。

恵那「ここ、広いから便利なんですよね」
結花「わかるー。あたしいつもここで買ってるしねー」
要「あのデッキ全部ここで買ったのか・・・」
結花「大きいからネット相場なんだよねー。いいカードでも安いのあったりするんだぜい」
恵那「う、うちはカードの強さと大会採用率で決めてるから・・・」
要「だから金額設定違うの多いんだな」

普通、シングルカードはネット相場や通販サイトの価格、特に初動はネットでの評価で決められることが多い。それに対して恵那さんのカードショップはちゃんと環境への影響や採用率なども考慮して決めているようだ。なのでカードによってはズレがある。

恵那「その・・・寄ってもいいですか？」
結花「いいよー。はいろはいろー」
要「そうだな」

カードショップに入る。流石に個人店であるコンビニ併設よりは明らかに広い。そしていきなり俺たちの前に広がるシングルカードが並ぶ棚。そして壁面にはポスターや低い棚と１０円カードたちやパンフレットやら雑誌やら。そして反対側の壁にはサプライなどなど。まるで都会の大きいカードショップ・・・までとはいかないものの、流石だなぁと思った。結花も恵那さんも俺も利用したことはあるが、毎回すごいなと思ってしまう。

恵那「最近のカテゴリの回し方講座もある・・・」
結花「店長独自だから環境入りはできなさそうだけどねー」

そのほかにも店内限定で使えるカード画像をコピーしたデッキレンタルや現環境カードラインナップなど、遊戯王を極めるならここと言わんばかりの充実したショップだ。俺も現役時代ここに行ったこともあるがあれから更に充実させたようだ。

　一通り見回ったところで今日のところは誰もデッキを持ってきていないので退店する。結構な時間が経過していたのか、すでに空は真っ暗だった。

結花「んじゃレポートあるから先に帰るねー」
要「げっ、レポート・・・というか結花が自ら課題の為に急ぐとは珍しい」
恵那「大学生の宿題って難しそうですけど、川澄さんって・・・」
要「・・・ほとんど俺か瀬戸さんと勉強会してる。でもなんで先に帰ったんだろう。というか俺もレポートしないといけないなぁ」
恵那「あっ」
要「どした？」
恵那「買い物しなくちゃ・・・」
要「あ、俺も買い物しないといけなかった・・・レポートといい＜影忍＞の改良といい大変だなこりゃ。早く恵那さんとデュエルしないといけないしまずはさっさと買い物済ますか」
恵那「ですね。私もお兄さんと・・・」

俺と恵那さんは自転車に跨り、急いでスーパーへと走らせた。



？？？「彼がニホンで有名なあの“ニンジャ”・・・やっぱりここの大学にして大正解デシタ。運がスーパーいいデスね」

この国の人々とは違う雰囲気を持つ、背の高めな金髪蒼眼でカタコトな日本語を話す一人の男が、遊二たちの事を見てにやりと笑っていた。