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遊戯王WW(ワンダーワールド)/39話 燻る炎 作:名無しのゴーレム









「ご馳走さまでした。……マッハ、ここの料理は本当に美味しかったね」
「だろ? 前にスプリントの奴と来てここの料理を食った時、絶対もう一度来ようって思ってたんだよ!」
「確かに、最高級レストランにも劣らない味だったわね……ふぅ、少し食べ過ぎたかしら」
「俺のデザートを食っといて何言ってんだよ……」
「半分は残しておいてあげたんだから、私の温情に感謝しなさい」
「くっ……次は負けねぇからな!」
「あはは……」



……とまあこんな感じに、夕食は終始和やかな雰囲気で進んだ。クロノスも先ほどのデュエルの話をきっかけにマッハやプリンセスさんとある程度馴染むことができたみたいだし……本当に良かった。



「……それじゃあ、もう一度温泉に入ってきますね」
「おう、分かった。今度はゆっくり入れるといいなぁ?」
「はは、僕もそう願ってるよ……」



夕食も食べ終えたところで、温泉に入り直すことにした。ネージュは……あまり遠いところに残していくのも心配だから、脱衣場辺りで待っていてもらうことにしよう。そんなことを考えながら、1人で男湯の方へと向かう。









「……いい、ネージュ。僕が出てくるまでここで待ってるんだよ?」
「えー、つまんなーいー」
「いや、さっき温泉に入ったとき文句言ってたのはネージュの方じゃないか……」
「むー……」



納得いかないような表情をしているネージュを脱衣場に残し、本日2度目の温泉に入ることとなった……






「……? あれは……」



身体を洗い終わり、ようやく温泉に入ろうとしたとき……どうやら、僕の他に先客が居るようだ。もちろん宿泊客が僕たちだけということはないだろうから、これはおかしいことじゃないんだろうけど……怖い人じゃないといいなぁ。そんなことを考えながら温泉に入ろうとしていたところ、向こうもこちらに気付いたようだ。



「……お。お前は……」
「あなたは……ウルフさん、ですか?」
「おう。あんたも寝る前にひとっ風呂浴びに来たのか?」
「あはは……まあ、そんなところです」
「なるほどなぁ……ほら、そんなところで立っててもなんだ。早くこっちに来るといい」



先客の正体はウルフさんだった。仕事が一段落したのだろうか……そんなことを考えながらも、彼の誘いに乗って温泉に浸かる。



「ふぅ……」
「どうだ、女将自慢の温泉は?」
「はい、とっても気持ちいいです。ゆっくりお風呂に入るのが久しぶりだからなのかもしれませんが、本当に疲れがとれていく気がします……」
「ガハハ、そりゃあ良かった。ここの掃除が俺の主な仕事だからな、自然とここにも愛着が湧くってもんだ」
「そうなんですか……」
「? どうした、俺の身体がそんなに気になるか?」
「いや、ええっと……」



ウルフさんの身体……そこに刻まれた無数の傷痕が、どうしてもさっきウルフさんが話してくれたことを思い出させる。



「……ああ、なるほどな。悪い悪い、子供には刺激が強かったか」
「そういうわけじゃ、ないんですけど……」
「いいや。これが人に見せるもんじゃないってのは、俺も重々承知してる。戦いの傷痕は戦士の勲章……なんて時代は、もうとうの昔だからな」
「……ウルフさんは、今の時代を……戦いのない時代を、どう思ってるんですか?」
「……そりゃあ、難しい質問だな。さっきも言った通り、今は今で楽しく過ごさせてもらってるさ。だが……時々、不自由を感じることはあるな」
「不自由……ですか?」
「ああ。本当の平和ってのは、誰か1人の力で成し遂げられるもんじゃない。いつの間にか、この世界の常識も大きく変わった……些細なことだろうと気に入らないことがあればデュエルで決着をつけようとする。それが昔の常識だったが……いやはや、今じゃそうはいかないからな」
「…………」



平和ゆえの不自由……僕には思いもつかなかったものだけれど、ウルフさんにとって……いや、この世界の人たちにとっては深刻な問題なのだろう。それこそ、マキナさんのような人たちが現れるくらいに……



「…………」
「……さっきから気になってたけどよ。若いわりには難しいことを気にするもんなんだな? お前たち、ただの旅人じゃないのか?」
「それは……」



……このタイミングなら、ちょうどいいかもしれない。フラムさんに話を通してくれるかもしれないし、僕たちのことを話してみよう。



「実は……」









「…………その話、本当なのか?」
「はい。だから僕たちは、フラムさんと話がしたいんです……」
「それで、俺から女将に話を通してほしい……と、そんなところか?」
「そうですね。急にこんなことをお願いして、本当に申し訳ないとは思ってるんですが……」
「……いや、別にいいぜ。そんな事情があるってなら仕方ないことだ。女将には俺から言っておく。たぶん今夜のうちにはお前たちの部屋に向かうだろうよ」
「……ありがとうございます、ウルフさん」
「じゃ、俺は先にあがらせてもらうか。せっかくの温泉だ、ゆっくりしていきな」
「はい、ありがとうございます」



僕を残し、1人で先に脱衣場へ歩いていくウルフさん。……もしかしたらフラムさんが尋ねてくるかもしれない。僕も、もう少ししたら部屋に戻らないと。












「……ってことがあったんだ。だから、もしかしたら今夜のうちにフラムさんが来るかも……」
「マジかよ……」



温泉から自分の部屋へ戻り、マッハたちに男湯での出来事を話す。当然のことながらマッハは大きく驚いてみせた。



「ごめん、急にこんなことになっちゃって……」
「まあ、結果としてフラムと話せる機会が出来たのはお手柄でしょう。よくやったじゃない、ユージ」
「プリンセスさん……ありがとうございます」
「……でも、今日来るのかどうかも分からないんですよね?」
「クロノスの言う通りだな。あまり気を張っていても仕方ない、ここは……」






バタン‼️



「おい、何やら妾に話があるそうだが!?」
「「「!?」」」



突如襖が開き、間を置かず部屋中に大声が響く。まさか、こんなに早いなんて……



「……ん? おいウルフ、本当にここで合っているのだろうな?」
「ああ、そのはずだ……ほら、あそこに居るだろう」



どうやらウルフさんも一緒に来てくれたようだ。



「えっと……フラムさん、来てくれてありがとうございます」
「うむ、お客の要望に応えるのも妾の仕事のうちじゃ。そう気にするでない……それで、話とはなんなのじゃ?」
「それは……」



フラムさんに、僕たちの事情を話す。始めは明るい表情だったフラムさんも、話が進むにつれ神妙なものに変わっていった。






「……妾の知らぬうちに、そのようなことが起きておったとはのう」
「はい……僕たちはこの事態を何とかしたいと思っています。そのためにはインダストに向かう必要があって……」
「幻獣の聖域を通れば安全にインダストに向かうことができる……と。確かに、妾の名を出せば幻獣たちも手出しはせんだろうな。そういう意味では、お主らがフィアンマに来たのは正しいと言えるな」
「それなら……」
「しかし、それには1つの前提があるわけじゃ。妾がお主らに幻獣の聖域を通る許可を出すかどうか……そこが重要じゃの」
「悠長なことを言ってる時間はねぇんだ。既にフォーチュンシティにアミューズ、そして水鏡にメシア……多くの場所、人が危険な目に遭っている。もちろん、フィアンマが無事だという保証なんてないんだぜ?」
「私たちが信頼できないというのは分かるわ。でも、そんなことを言ってる時間はないのよ。メシアの結界がない今、次にマキナたちがどんな行動を起こすのかは全く想像もつかない……」
「そんなことは分かっておる。…………」



マッハたちの言葉を一蹴し、何やら考え込むフラムさん。突然の申し出だから、考える時間が必要なことは分かるけれど……



「……一晩、考えさせてはくれんかのう? どうしても、今すぐに答えを出すことは出来んのだ」
「分かりました。明日、またお話させてもらってもいいでしょうか?」
「そうしてもらえると助かる。……もう夜も深い、お主らは早く床に就くとよい。それでは、妾たちはこの辺で失礼させてもらうぞ」
「はい、おやすみなさい……」



最後に挨拶を交わし、フラムさんたちは部屋を去った。



「……どう、なるのかな……」
「今の感じじゃ、手応えは分からねぇな。少なくとも即答じゃなかったってことは、どちらの可能性もあるんだろうが」
「何の前触れもなく押し掛けたんだから、考える時間が必要なのは当たり前よ。とりあえず明日、フラムの答えを聞きましょう」
「そう、ですね……じゃあ、今日はもう寝ましょうか」
「そうね。クロノス、私たちも戻りましょうか」
「は、はい……それでは皆さん、おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい」
「えーっ、枕投げとかしないのかよ!?」
「……枕投げ?」
「いや、もう寝ようよ……」



ごねるマッハを何とか留めながら、隣の部屋へ戻っていくプリンセスさんたちを見送る。今日も色々あったし、早く寝てしまおう……





















「…………」
「悩んでいるようだな、女将」
「……ウルフか。何の用だ?」
「いや、俺も関係している話だからな。少し気になっただけだ……にしても、大変なことになってきたな」
「そう、じゃのう……」
「……一体、何を悩んでいるんだ? あんたはただ許可を出すだけだ、それにそこまで考えることがあるのか?」
「……妾は、恐れているのじゃよ」
「恐れる……あんたが、今さら何を恐れるって言うんだ。あんたを脅かすような相手なんて両手で数えきれる……いや、もっと少ないだろうよ。それが何故……」
「違うのじゃ。妾が恐れているのは……これ以上、妾のせいで誰かが傷つくのは見たくない。妾が何をするともしなくとも争いが起きるというのなら、妾は……もう、何とも関わりたくはない」
「……ま、あんたの考えてることは分からないでもない……いや。そんなことを言ってはいけないくらい、あんたは長く生きている。失うものだって相当あっただろうよ……俺だってそうだ」
「ウルフ……お主はどうなのじゃ? いくつもの戦争に参戦し、その中で失うものもあっただろう……そんなことを経験して、怖くはならなかったのか? 次は何を失うのか……と」
「……思わないわけじゃないが、あんたほど思い詰めたりはしなかったさ。生憎、そこまで多くのものを持ってたわけでもなかったからな。物にしろ、人にしろ……」
「…………」






スーッ……






「……おや、クリム。どうかしたのかのう?」
「いや、フラムの部屋から話し声がしたので、誰と話しているのかと思って……ウルフ、あなただったのですか」
「女将と少し世間話をな。起こしちまったなら謝るぜ」
「別に、寝ていたわけではないのです……あなたも朝から仕事があるのでしょう? 早く寝たらどうなのですか?」
「……そうだな。じゃ、先に失礼させてもらうぜ。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
「……おやすみなさい、なのです」






「……本当に、自分の部屋に戻ったみたいなのです」
「どうしたクリム? ……まさか、ウルフのことを疑っているのか?」
「もちろんなのです。ついこの前にここで働きだした元傭兵……警戒しない方がどうかしてるのです」
「待て待て。あいつはよく働いているぞ。お客との関係も良好、むしろお主より全うに働いているではないか」
「そういうことじゃなくて……とにかく、彼には注意するべきなのです。フラムがお人好しなのは知ってますが、場合によっては人を疑うことも必要なのですよ」
「……分かっておるよ。だが……人を疑うというのは、疲れるからな」
「……なら、代わりに私が警戒するのですよ。だからフラムは、いつも通りにしているといいのです」
「悪いな、クリム。……お主は口こそ悪いが、心根は優しい子だ」
「一言余計なのですよ。それでは、私ももう寝るのです。フラムも早く寝て、明日に備えるのです」
「承知した。おやすみ、クリム」
「ええ……おやすみなさい、フラム」



































ソーッ……



「…………ふぅ」



プリンセスさんを起こさないよう、ゆっくりと襖を開閉する。



「……それにしても、真っ暗ですね」



一度布団に入ったはいいけれど、こんな真夜中に……その、お手洗いに行きたくなってしまうなんて。こんなことなら、寝る前に行っておけば良かった……



「……誰も、居ないですよね……?」



誰か居て欲しいようや気もするけど、それはそれで怖い……少しずつ目が暗闇に慣れてきながら、ゆっくりと廊下を歩く。



「えっと、こっちで合ってるよね……?」



うろ覚えながらも、壁を伝って目的の場所へ進んでいく。



「……あれ?」



ある程度歩いたところで、急に廊下が明るくなってきた。どうやら、月明かりが入る方角に来たらしい。



「…………ここから、光が……」



何となく、内外を隔てる襖を開く。すると……









「……分かった。で、あっちの方はどうなんだ?」
「さあ、俺はあくまで雇われの身だ。依頼主から与えられた情報しか知らねえよ」
「忍者、ねぇ……前々から気になっていたが、お前らって俺ら傭兵とどう違うってんだ?」
「色々違うが、まあ……戦いを生業にするのが傭兵で、それ以外がメインなのが忍者ってのが分かりやすいかねぇ」






……何やら、男の人が2人、宿の外で話をしているらしい。忍者と、傭兵……?



「ま、まさか……!?」
「盗み聞きとは、女の子にしては趣味が悪いんじゃないか?」
「!!?」



突如、背後から男性の声がする。さっきまで、確かに周りには誰も居なかったはずなのに……



「……とりあえず、少し黙っててもらうぜ」
「ぇ……~~!!?」



布のようなもので口を塞がれ声も出せない。何だか、段々ぼーっと……



「ま、悪い夢を見たとでも思っておいてくれ……」






身体が、動かせない……


















「驚いたぜ。急に姿を消すんだからな」
「視線を感じたからな。敵意こそ無かったから、さっさと眠らせちまったけど……おいウルフ、この子はこの宿の客か?」
「……そうだ。お前の言っていた、勇者一行の1人だ。名前は……クロノス、だったか」
「え……そういえば、こんな子供も居た気がするな。それじゃ、部屋まで運んでおくか。こんなところで厄介ごとはゴメンなんでね」
「……俺が運んでおこう。部外者のお前が宿の中に入るのは危険だろう?」
「……それもそうだ。ならあとは任せたぜ。俺はこのままインダストへ行かせてもらう」
「分かった。……あの人によろしく伝えておいてくれ、スクアーロ」
「おう。じゃあな、ウルフ」































「…………悪く思うなよ、お嬢ちゃん。これも、依頼のうちだ」








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ギガプラント
またも暗躍者か……とりあえず危害は加えられなさそうか……?
フラムさんの言動からして簡単には先に進めなさそう。 (2019-08-26 19:17)
名無しのゴーレム
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。
クロノスの身の安全は……さて、どうなることやら。
フラムの苦悩もあり、ユージたちの旅は一筋縄ではいかないようです。 (2019-08-26 23:26)

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