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HOME > 遊戯王SS一覧 > 10 Family time

10 Family time 作:ター坊




天気が常に晴れとは限らない。どんよりとした曇り空の中、登校する遊路はどこか上の空で歩いていた。
「アニキ!オハヨウゴザイマス!!」
「あー、スティーブンか。おはよう」
元気なスティーブンとはうって変わって遊路はローテンションで適当に返事する。
「ンン?ドウシタンデスカ?」
「いや、少しな…」
「ンー?」
遊路の奥歯に物が挟まったような言い方にスティーブンは疑問符を浮かべるばかりである。
「遊路。おはよう」
「ああ。遊希か」
遊希達とも合流するが、やはり遊路からはやる気のない応答しか来ない。
「…あれ?遊月と美羽は?」
「それが体の具合が悪いみたいでお休みするそうです…」
「…そうか」
「貴方も調子悪そうだけど大丈夫なの?保健室に行く?」
千夏の言う通り、遊路も声色だけでなく顔色も優れず、目は何をやるにも怠そうな腑抜けたものになっていた。



「それでは、あとはよろしくお願いします」
「ええ。任せて」
遊希達は保健室の先生に遊路を預けて授業に向かった。
「大丈夫でしょうか、遊路さん」
遊路達がこちらの世界に来てからアカデミアに入学するまでの準備期間には精密検査も行ったが、遊路達の肉体や細胞の構造は異世界人だからといってこの世界の人間と何処も変わらない。故に同じように病気にかかる事も不思議ではない。
「でも、風邪って感じじゃなかったよね」
「…もしかして鬱…とか?」
普段は楽しそうな姿を見せる遊路達だが、よく考えれば不運な境遇である。

早く元の世界に帰りたいという焦燥感―
文化的な大きな差異は無いとはいえ、異なる環境で自分らしく振る舞えない生活―
自身の秘密をこの世界で知り合った友人に隠し通さなければならない重圧と罪悪感―

病は気から、と昔から言う。遊路とて、世界チャンピオンだろうが多くの次元を救った英雄だろうが所詮は16歳の少年である。メンタルが仙人のように達観している訳でなく、こちらの世界での出来事が徐々に重荷となって精神を摩耗させていってもおかしくはない。
「…私たちに出来る事ってあるんでしょうカ…」
「分からないわ…。でも彼らを迎え入れた以上、出来る限りのことをしましょ」





その日の昼休み。雨が降りだし、アスファルトを冷たく打ち付けていた。遊路は授業を終えてから昼食も摂らず、真っ先に女子寮に向かった。当然、愛する遊月と美羽と会うためである。
「ちょっと君」
「?」
女子寮の寮長が事務室の受付窓口から遊路を呼び止めた。
「男子生徒は女子寮に入ってはいけないって規則で読まなかった?」
「えっと…彼jy…じゃなくて、友人が風邪で具合が悪いって聞いて見舞いに…」
「そんな理由では通せません。帰りなさい」
遊路達の素性を多くの人間が知ると無用な混乱が起きたり情報が漏れて余計に拡散する可能性があるため、アカデミア内でそれを知るのは遊希達と竜司校長とミハエル教頭と保健室の先生、文字通り数えられる程しかいない。故に寮長からすれば遊路は規則違反の一生徒程度の存在でしかない。遊路は何も言わないまま踵を返して寮を出た。
時が同じ頃、女子寮1階に住む七聖は午後に提出すべき課題を仕上げた時、窓から偶然遊路を目撃していた。
「…か、風峰さんがどうして女子寮に…」
七聖はカーテンを盾にして遊路を覗く。遊路が女子寮に入ってすぐ、追い出されたのかトボトボと出てきた。
遊路は出入口先でしばらく立ち止まった後、傘を差して雨降りの中を歩きだした。
「…?どこに行くんだろう…」
しかし遊路は奇妙な事に、まだ午後の授業が残っている筈なのに校舎とは反対の校門に向かった。
「ん?」
しかも遊路が七聖の真正面を通った時、七聖は心なしか遊路が楽しげに見えた。気分が沈む雨降りの中、女子寮の上階の窓を見ながら歩く遊路のその様はまるで鮮やかなピンク色に咲き誇った桜並木の道を散歩するようだった。








翌日の放課後。天気は安定しておらず、ぐずついた灰色の雲が空を覆っていた。多くの生徒が雨が降る前にと早足に寮に帰ろうという中、どよめきが起こる。
「あれ…誰?」
「綺麗…」
「身長高いし、読モやってたりして」
「あー、なんかいそう」
ざわつく女子の中を歩くその女子生徒は全員の視線を奪っていた。何か運動を嗜んでいるのか手にした大きめのスポーツバッグ、飾り気のないヘアゴムで結われた薄めの茶色のサイドテール、太陽のような黄色の瞳は目力が強いツリ目、大人っぽい女性の色香を演出する左目下の泣きボクロ、それらの綺麗な特徴は遊希や七聖とはまたベクトルが異なる美少女を形作っていた。その美少女は周囲を見ながらほくそ笑む。









(フッ…騙せてる騙せてる)
そう、何を隠そうこの美少女の正体はあの遊路なのである。遊路は女子寮を追い出されてから暫く考え、遊月と美羽に会うために閃いた策がこの女性化なのだ。
遊路は昨日、午後の授業そっちのけで街へ赴き、大きめのアカデミアの女子制服を姉の制服が酷く汚されて大至急代わりのものが欲しいと嘘を吐いて在庫で余っていたものを購入、それを皮切りにウィッグやカラコン、靴やスポーツバッグに下着とアイテムを片っ端から揃えたのだ。しかし、いくら服装が女でも顔が男ならばただの女装。より女に近づく為に、何よりも遊希達と遭遇にする事も想定して遊路は更にメイクセットも揃え、完璧なセクシー系お姉様女子高生に変貌を遂げたのである。なお、遊路のメイクテクニックは元の世界でジョセフィーヌ龍美からの直伝であり、元の世界でもたまにこれを行ってファンの追っかけを撒いた実績もあったので遊路は今回の策を思い付いたのだ。


さて、こうして装備万端の遊路の今の心中はさながらスパイ映画の主人公。バレない自信はあっても昨日追い出された受付窓口に差し掛かると心臓の鼓動が少し早まる。
(落ち着け。何も女子部屋を覗こうとか犯罪をする気はない。遊月と美羽とアレをする為に来たのだ)
遊路は横目で事務室にいる寮長の動きを観察する。
(チャンス!)
寮長は机に向かって書類仕事をしているのか、玄関の様子に注視しておらず、遊路は容易く突破した。
遊路は奥へ進み、階段を登って2階に辿り着く。学生寮というよりも高級ホテルのようで、長い廊下に無数のドアが並ぶ。
(遊月と美羽はこの階にいるハズ…)
遊路は遊月と美羽から以前聞いた部屋番号を探し始める。途中何人かすれ違うが遊路は怪しまれないように悠然と廊下を歩くフリをしながら通り過ぎるドアの番号を確認していく。
(…あった)
廊下を進んでやや奥側に遊月と美羽から教わった番号の部屋が存在した。遊路はほっとして、ドアを開けようとした時である。
「ん?あなた誰?」
ちょうど隣の部屋のドアから綾香が出てきた。寮内であれば遊希達などの顔馴染みとすれ違う事は想定していたものの、こうもガッツリ目を合わせてしまうのは遊路にとっては計算外であった。
(マズイ…。赤の他人なら喉の調子が悪いとかで誤魔化せるのに。なんでよりによって隣なんだよ)
ここで喋らなければ怪しまれて苦労が水泡に帰す、喋れば声でバレる可能性が非常に高い。目的達成の寸前で遊路は完全に詰んだのだ。
「ちょっと?聞いてる?」
(ええい。破れかぶれだ)
遊路は意を決して綾香に近づき、ドアに押し付けた。端から見れば先輩お姉様が綾香に壁ドンで迫る、その手の趣向を好む者にとってはオイシイ場面である。
「へっ!?いや待っ、私には遊希が…」
「馬鹿、俺だ」ヒソヒソ
「ええっ!!」
「声が大きい!事情話すから部屋に通してくれ」ヒソヒソ
半ば強引だが、遊路の奇怪な行動を察して綾香は遊路を自分達の部屋に通すのだった。




「…それでどうして女子寮に?」
ジロリと睨む綾香に遊路は正座で臨む。もはや遊路には綾香を正面突破で説き伏せるしか道は残されていなかった。遊路は正直に申し開きをし、説得が失敗すれば変態の汚名を被る覚悟で説得にあたる。
「…まずはこれを見てくれ」
まず遊路は己の目的を為すためにスポーツバッグに詰め込んだモノを取り出した。
「これは…」
スポーツバッグから出てきたのは新聞紙にくるまれた土鍋にポリ袋に詰められた豚バラ肉や鶏モモ肉、白菜・長ネギ・シメジ等の野菜やキノコ類、焼き豆腐に中華麺、それに塩寄せ鍋のつゆ…これらから遊路の目的は明白であった。
「…鍋なの?」
「ああ」
綾香は予想外な中身にキョトンとしてしまう。
「もしかして遊月さんたちの具合が悪いから?」
「それもあるけど、それ以上の意味がある。俺達の事はだいたい話しただろ?俺達には肉親がいない事とか」
遊路達はこの世界に来て遊希達との交流にあたって自分達の素性を話していた。遊路も遊月も美羽も血縁関係の者は既に亡くなって存在せず、3人は恋人や夫婦のように愛し合うと同時に兄弟姉妹のように肩を寄せ合って助け合う、そんな家族のような生活をしてきた。その最中、急に異世界に飛ばされ、そこで家族同然の間柄から仲良しのただの友達のフリをして過ごさなければならなず、人目が離れても別居生活を強いられるのは酷ではなかろうか。
「俺も最初は1ヶ月半なら我慢できると思ってたけど意外と寂しくてな。毎日会えるけど、それも嘘の付き合い方だから余計虚しくなるっていうか…」
「…」
綾香にも思い当たる節がある。
校長であり父でもある竜司は日本を代表するプロデュエリストでもあり、そのためか公私を分けなければならない立場であった。
何かのパーティーではしゃぐ幼い自分を諌める公の竜司、仕事で誕生日に来れなかった公の竜司、イベント等で自分以外の子供に優しくする公の竜司。
綾香は成長した今ならば公の竜司の立場も理解できるが、幼い頃は大好きな父が他人になってしまうようで寂しくて寂しくて堪らなかった。
そして遊路の今の状態は幼かった自身の想いに通じるものがあるのではと綾香は感じたのだ。
「だから頼む!これから定期的にとは言わないし、明日1日一杯とも言わない。この一晩だけ見逃してくれ!」
「…いいわよ。千夏と詩織はまだ図書室にいて課題をやってるだろうし、遊希は近所のコンビニに買い出しに行ってまだ戻ってこないし。ややこしくならないうちに隣に行けば?」
「あ、ありがとう!」
遊路の真剣な眼差しとその寂しさに共感してしまった以上、ダメだとは言えない綾香であった。







その晩。
「さぁ、出来たぞ」
「こうして私達だけで食卓を囲むのは久しぶりですね」
「うん。なんかホッとする…」
遊路は願い通り、元の家族としての時間を謳歌していた。具合が悪くて臥せっていた遊月と美羽も遊路の不意打ちの来訪に驚いたが、元気を取り戻して鍋の準備を手伝い、こうしてちゃぶ台に乗った鍋を囲っている。
「それじゃあ」
「「「いただきます」」」
それは特別なことではない、強いて言うなら少し季節外れなくらいの食卓。湯気が昇る鍋から箸で具材を取って口に運ぶ。それを皆でやって笑い合う。ただそれだけのことを数週間ぶりにやっただけなのに味が何倍も美味しく思える程、遊路達の心は満たされていた。
「ほら、バテてんなら豚肉だ。まだもう1袋あるから」
「はい。…ふぅ、温かいです」
「うん。冬からすっかり食べなくなったけど、やっぱり鍋っていいね」
遊月と美羽も遊路と本当の付き合いが出来なかったため気落ちしていたようだったが、すっかり最高の笑顔を見せるようになって鍋の具を頬張っている。


食事の後も家族らしい時間は続いた。一緒に食器を洗って、他愛もないバラエティー番組を見て笑って、デッキを弄ったりして。そして―
「遊月、美羽。その…久々に」

ゴロピッシャーン!!

天気は悪化し、雨と同時に雷の轟音が震える。遊路の言葉は途中消えかけたが二人にはちゃんと伝わった。
「…はい」
頬を赤らめる遊月。
「えっと…」
少し戸惑いを見せる美羽。
「えっ、今日ってダメな日だっけ」
「そうじゃないけど…実は、昨日ホントにダルくてお風呂に入ってないからその…臭いかもって…」
「別に構わないよ。シャンプーの匂いなんかよりお前達の全部を感じたい」
「…馬鹿」
遊路の歯の浮く台詞に美羽は顔を俯かせるがその口許のニヤケは収まらなかった。
「綾香と約束した一晩、長くなるから覚悟しろよ」






夜が深まり、時刻は1時を回っていた。天気はさらに激しくなり、雷と共に降る雨は瀑布の如く寮に落ちて全ての音をかき消すようだ。
「…ん」
ベッドから目覚めたのは詩織である。今日は雨と雷の爆音のせいか、それとも図書館でやりきれなかった千夏の課題に部屋に戻ってまで付き合って頭が冴えたせいか、少々寝つきが悪い日だった。

「ひゃんっ♡」

詩織は変な声がしたなと思って辺りを見回すが向こうの二段ベッドの遊希と綾香はスヤスヤ寝息を立て、上の千夏も寝言らしきことをムニャムニャ言ってるだけで特に変わりない。じゃあ今の声は何処からかと何気なく壁に耳を押し当ててみる。


「美羽のキツっ…腰振り過ぎて頭ぶつけるなよ」
「無理ぃっ♡一気にぃ、奥までコンコン当たっひゃうの気持ちいいのぉ♡」

「ひゃあっ、痛っ!!」
突然の甘ったるい喘ぎに驚いた詩織は文字通り飛び退いて頭をぶつけてしまう。
「…これってまさか…」
詩織の脳裏にはアルファベット3文字のあの単語が思い浮かぶ。詩織とて高校2年生。キスしたら赤ちゃんがデキるとか赤ちゃんはコウノトリが運んでくれるとかの迷信を真に受ける程、そっちの知識は無知という訳ではない。ただ、そういう写真や映像を見たことのない詩織にとって美羽の聞いたこともないあの艶かしい声は衝撃以外の感想が思い付かないほど刺激が強すぎた。
「えっと、止める…べきでしょうか…。でも止めに入るということは盗み聞きした事がバレてしまう訳で…そもそも今は何も着てないかもしれませんし…」ソワソワ
壁の向こう側で繰り広げられる情景の想像が膨らめば膨らむほど詩織の脳内に混乱が生じ、もし詩織の脳をコンピューターだとすれば今は処理しきれずオーバーヒート寸前の状態である。漫画だったら蒸気か煙がモクモク出ているであろう。
「ん?詩織どうしたの?何かブツブツ言ってるけど」
「ひゃひっ!」
向かいの二段ベッドから綾香が降りてきた。
「どうしたの?」
「えっと、その…」

ドンッ

「遊路達ね。久し振りだからってはしゃいじゃって。注意しに行こうかしら」
「あわわわっ、あ、綾香さん待って下さい!今は行かない方が!」ヒソヒソ
「え?何で?うるさくて眠れないんじゃないの?どれどれ」
「あ…」
綾香の想像と詩織が伝え損ねた現実はカニカマとタラバガニくらいの違いがある。綾香はせいぜいアホな動画を皆で見てゲラゲラ笑ってるとか枕投げで盛り上がっているものと思っている。だがしかし、壁の向こうの遊路達の行為は観賞会だとか枕投げだとか、そんなチャチなものでは断じてない。遊び半分で壁に耳を付けた綾香は未知の領域の片鱗を味わう事となる。

「あんっ♡あ、あっ♡」
「突くたんびにブルンブルン揺れて…萎える暇がないな」
「そんな、遊路様、あん♡そんなに揉んでは♡」
「大和の分も飲んであげる」
「ああっん♡ダメ、突きながら吸っちゃらめれひゅっ♡イッひゃう、イッひゃいまひゅぅ♡」

「へぇあっ!?ちょ、アイツら何やってんのよ!!」
それは怒りなのかそれとも別の理由か、綾香は顔を真っ赤にして壁から離れる。
「綾香さん、どどどうしましょう…?」ヒソヒソ
「どうって…。そりゃあ…止めるべきだろうけど… …でも、あそこに入っていく勇気ないわよ」ヒソヒソ
「…ん?何よ、綾香。呼んだ?」
声を絞っていたつもりだが、綾香の勇気という同音の単語に反応したらしく、遊希まで起きてしまった。
「え、いや…な、なんでもないわよ?遊希は寝てて」
「何よ。詩織のベッドに何かあるの?」
「いえ!ホントになんでもないので遊希さんは休んでください」
人間は何故かやるなと釘を刺されるほどやりたくなる。やけによそよそしい二人の様子を怪しむ遊希は再び眠りに就かずベッドから出てくる。

ゴン!ゴン!

「…?そう言えばこっそり遊路も泊まってるんだっけ?こんな夜中に何を騒いでいるのかしら?」
「ちょ、遊希!やめて!」
「遊希さん!」
遊希は二人の制止を聞かずに壁に耳を当ててしまった。












翌日。泣き尽くした空には雲の欠片がすっかりなくなって一面の青のキャンバスが広がり、太陽の日差しの筆が綺麗な七色のアーチを描いていた。
「おはようございマス…ンン?」
「オーッス…ってどうしたんだお前ら」
エヴァと朱里那が首を傾げるのも無理はない。晴れ渡った今の空とはうって変わって遊希・綾香・詩織の3人はげんなりとし、登校するのも億劫といった様子でゾンビのようなゆっくりとした足取りで歩いているのだ。
「さぁ?寝不足らしいけどなにをやってたのか全然教えてくれないのよ」
「寝不足…?何か悩みとかあるんですカ?」
「いいえ、千夏さんもエヴァさんも知らなくて良いと思いますよ…」
「そうね…」
「人間知らない方が幸せな事もあるのよ…」
「どういう意味ですカ!?そう言われると余計に気になりマス!」
「そうよそうよ!」
エヴァも千夏もなんだか仲間外れな気分がして面白くないが、遊希達も好きで秘密にしている訳ではない。モヤモヤというかドキドキというか、例えるなら初めて保健体育の授業を受けて男女について意識し始めたお年頃になった不思議な気分、そんな感覚にさせたアレを壁越しで聴いた3人はただ濁すことくらいしかできないのだ。
「おはよう!」
いつの間に女子寮を抜け出したのか、何食わぬ顔で遊希達の寝不足の元凶である遊路が姿を見せた。その顔は一昨日とは別人のようにスッキリと輝いていて、元気を取り戻していた。
「遊希達どうしたんだ?死んだ魚みたいな目になってるけど」
「寝不足らしいんだけど、よく分からないのよね」
「ふ~ん。…ナニがあったんだろうな。昨日はすごい音だったからな~」
「…っ!!」
遊路の思わせ振りな口調から出たすごい音というワードに詩織がビクッと反応する。
「そうなの?」
「知らなかったのか?昨日は」
「わ わ わ!」
「詩織サン!?」
「えっ!?」
普段温和で前に出る事が少ない詩織の慌てようにさすがのエヴァも千夏も驚きを隠せない。
「ん?昨日はさらに雨が酷くなってすごい土砂降りになった、って言おうとしただけだぞ?」
「へっ…?あっ…」
「確かに昨日の雨は凄かったデス」
「はて、詩織は一体何の音だと思ったんだろうなー?」
「はぅ…えぅ… ///」
遊路の意地の悪いフェイントに詩織は見事に引っ掛かり、羞恥心で轟沈する。
「? ? ?」
「結局なんなのよ!!」
詩織が赤面する理由も意味深な笑みを浮かべながらおちょくる遊路の真意も分からない両者、エヴァは頭が疑問符でいっぱいになり、千夏はただ地団駄を踏むしかなかった。






次回予告

遊路「さて、みんなは初めてやってみてどうだった?」
詩織「最初はやっぱり血が出るから痛いかなって思いましたけど…」
綾香「終わってみれば大したことなかったわね」
千夏「終わった後のケアで飲み物くれるのは優しかったな」
エヴァ「私、もう一度したいデス!」
遊路「というわけで、画面の前の良い子も献血に行こう!」
遊希「次回、遊戯王ノーレコード・メモリー第11話『Date time』。献血に行ってくれる良い子なら見てくれるよね?」




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ヒラーズ
お、久しぶりッス。
陸也「血か?欲しいならあげるぞ?不老不死になるけど」
海理「病院にそんなものあげるんじゃありません」

夜はお楽しみだったそうで(悪顔)。 (2019-06-24 07:35)
ター坊
ヒラーズさん、コメントありがとうございます。
果たして不老不死は血液検査で見つかるのか?
宿屋のおやっさんですか。 (2019-06-24 09:37)
光芒
FAMILY TIME(意味深)
愛の深さ故に為せる技とはいえ、女装してまで二人の看病をやってのける辺りは流石の一言。しかし、その夜にまさかのライディングデュエルにまで至ってしまうのだからまた別格ですね。ところで詩織さんは何と雨の音を勘違いしたんでしょうね(すっとぼけ
(2019-06-24 14:20)
ター坊
光芒さん、コメントありがとうございます。
まさか遊希達を汚すわけにもいかないので、少しアダ ルトな場面に出くわしてしまった展開にしました。
詩織さんは超ウブだけど少し興味はあるっていう感じですね。 (2019-06-24 15:01)
ギガプラント
いやはや…相変わらずお熱いようで…。
彼女等もなんというか不憫ですな…遊路先生の余裕っぷりもまたらしいですね。
鍋食いてえ…。 (2019-06-24 17:55)
ター坊
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。
冬が離れるとなんとなく鍋が恋しくなります。 (2019-06-24 18:03)

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