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HOME > 遊戯王SS一覧 > 04:未知との会遇①

04:未知との会遇① 作:天2

「先攻は俺だッ!!」

互いの初期ライフは4000。このライフ(LP)をモンスターによる戦闘で奪い合うのがデュエルの基本的な闘い方である。

そのデュエルの機先を制したのはナグモだった。

先攻1ターン目はドローできない。
しかし相手の罠等に邪魔されるリスクは少なく、また先に罠を仕掛けることができるメリットがある。

「まずはコイツだッ!《サファイアドラゴン》を召喚ッ!」

ナグモがデュエルディスクにカードを置くとそのカードデータを読み取り、ディスクが明滅する。
そのフィールドに巨大な両腕を持つ青い体躯のドラゴンが出現した。


サファイアドラゴン/星4・ATK1900


その体皮はサファイアに覆われ、美しい輝きを放っている。しかしそれとは裏腹に纏っているのは獰猛な獣気。まるで匂い立つような存在感だ。

(この存在感はただの映像や幻やなんかじゃあない・・・! このドラゴンは確かにこの場に『存在している』・・・ッ!)

コナミの表情に僅かではあるが驚きの色が浮かぶ。
目の前にこれほど濃密な存在感を伴ったドラゴンが現れれば無理からぬことだ。

「これがDゲームのデュエルよ! Dゲームのプレイヤー・・・すなわちデュエリストは魔力(ヘカ)と呼ばれる精神の力を行使する能力を得る! そしてそれを使ってカードのモンスターを作り出し使役する! つまりそのドラゴンはヤツの『精神エネルギーの塊』! 実際には存在せず、しかし存在するものよ!」

遊唯がコナミに叫ぶ。
確かによく見てみると《サファイアドラゴン》の体は蜃気楼のように透けていて、それを通して向こう側が透けて見える。

今のコナミには完璧に遊唯の言葉の意味を理解することはできない。

(しかし闘いはもう始まっている。悠長に説明してもらっている時間はない。『精神エネルギーの塊』というものがどういうものなのかは分からないが、今は『そういうものだ』として理解するしかない・・・!)

コナミには理解することを一旦保留して無理やり納得するしかない。

その間にも《サファイアドラゴン》はグルルと喉を鳴らし、その目は獲物であるコナミの一挙手一投足に敵意を向けている。

しかしそのドラゴンの様子に違和感を感じたのは遊唯だった。

「《サファイアドラゴン》はその高い攻撃力に反して本来穏やかで争いを好まない竜のはず! デュエリストは自身の魔力(ヘカ)を使ってモンスターを召喚し使役し闘う! 主であるヤツの好戦的な精神性が魔力を通じて《サファイアドラゴン》の性質にも影響を及ぼしているんだわ・・・!」

《サファイアドラゴン》の攻撃力は1900。特殊な能力を持たない通常モンスターとは言え、レベル4以下の下級モンスターとしては確かになかなか強力なモンスターだ。
ナグモという男、どうやら口だけの輩ではないらしい。

「ククク、驚いたようだなッ・・・! しかし手を緩めねぇぜッ! さらに俺はカードを2枚伏せてターン終了だッ!」

ナグモが手札から更に2枚のカードをデュエルディスクに挿入すると、《サファイアドラゴン》の後方に裏側のカード2枚が出現する。
この伏せカードは次の自分のターンを有利にするための布石。相手のターンを妨害したり自分に有利に働く罠カードであったり、またそう相手に思わせるブラフであったり。この伏せカードの読み合いがデュエルに於いて重要な駆け引きの一つである。

「俺のターン・・・ドロー」

ナグモがターンを終了したことで、ターンがコナミに回ってきた。
後攻のプレイヤーはターン開始時のドローフェイズにデッキからカードを1枚ドローできる。先攻プレイヤーより1枚多い手札でデュエルを始められるのは大きなアドバンテージだが、すでに相手が展開しているフィールド状況を鑑みてプレイしなければならなくなるため、より戦略性が問われることになる。

コナミはほとんど逡巡することなく手札からモンスターカードを選択してデュエルディスクに置いた。

「俺が召喚するのは《咆月のシルバーフォング》!」

コナミのフィールドに銀色の毛並みを持つ一匹の狼が現れた。
それはサファイアの体皮を持つ《サファイアドラゴン》の硬質できらびやかなものとは別種の美しさ。どこか優美で柔らかな印象の狼だった。

自分も問題なくモンスターを召喚できたことで、コナミは僅かに安堵する。
コナミは魔力の使い方など知らない。だが意識せずとも自然とそのコントロールができているようだ。


咆月のシルバーフォング/星3・ATK1200


「ハッ、攻撃力1200ゥ? そんなモンスターじゃ俺の《サファイアドラゴン》には毛筋ほどの傷も付けられねぇぜ?」

《咆月のシルバーフォング》の攻撃力を確認してナグモが馬鹿にするように鼻を鳴らす。
しかし単純な攻撃力で及ばないことはコナミも承知の上だ。

「《咆月のシルバーフォング》は効果モンスターだ。そして召喚に成功したことで、そのモンスター効果が発動する」

《咆月のシルバーフォング》が高らかに遠吠えを上げる。
すると、その両脇に新たな《シルバーフォング》が2匹姿を現した。


シルバーフォング×2/星3・ATK1200


「《咆月のシルバーフォング》は召喚に成功した時LPを1000支払うことでデッキまたは手札から《シルバーフォング》を2体フィールドに呼び寄せることができる。俺はこの効果で《シルバーフォング》2体を特殊召喚した」


コナミ/LP4000→3000


《咆月のシルバーフォング》のモンスター効果はLP1000を支払いデッキ・手札から通常モンスターである《シルバーフォング》を2体特殊召喚するというもの。これを行使したことでコナミのLPは1000削られたが、これでコナミのフィールドには3体の《シルバーフォング》が揃うことになった。
初期LPが4000のデュエルに於いてLP1000のコストは軽くはないが、これによりボードアドバンテージではコナミがかなり優位に立ったと言える。

「くっ、だがそんな雑魚を何体並べようと攻撃力では俺の《サファイアドラゴン》の方が上だッ! 怖くも何ともねぇんだよッ!」

激昂するナグモを尻目にコナミは涼しい顔で言う。

「確かに俺の《シルバーフォング》達の攻撃力ではアンタの《サファイアドラゴン》には敵わない。だが、小さな力でも寄り集まれば大きな敵をも穿つ槍になるんだぜ。今からそれを見せてやる」

「なにィ?」

言うとコナミは天高く手をかざす。
そして叫んだ。




「現れろ! 未来を導くサーキット!!」




すると上空に上下左右斜めの全方位に矢印が向けられた四角形の角盤のようなものが現れた。

「な、なんだありゃあ!?」

ナグモにとってそれは未知の現象。今までデュエル中にあんなものが現れたことなどなかった。
遊唯にとってもそれは同じようで、怪訝な顔でそれを仰いでいる。

「・・・あれは『サーキット』。『リンクモンスター』を呼び出すためのゲートだ」

表情を変えることなくコナミは言う。
未知の現象を前に動揺するナグモが噛みつく。

「あれはテメェが呼び出したのかッ!?」

「他に誰がいる?」

しかしコナミはあくまで表情を崩さない。
だが遊唯はナグモとは違うところに動揺を見せた。

(『リンクモンスター』? 『リンクモンスター』ですって? まさか、この子は『あの』召喚法を使うと言うの!?)

上空のサーキット、その矢印が点灯する。下、そして左右の矢印だ。

それを確認してコナミは「アローヘッド確認」と呟く。

「召喚条件はモンスター2体以上。俺はフィールドの3体の《シルバーフォング》をリンクマーカーにセット」

コナミのフィールドの3体の狼達が茶色い光に変化し、それぞれ勢いよく点灯している矢印へと吸い込まれていった。それらを吸い込んだ矢印が燃えるように強く輝く。

「サーキットコンバイン! 刮目しろ、これが『リンク召喚』だ!」

サーキット全体が光に包まれる。
その場にいる誰もがそれに目を奪われてしまう。
確信があった。あの中から未知の何かが現れるという確信が。

「リンク召喚! 現れろ、リンク3!《電影の騎士ガイアセイバー》!!」

コナミの口上とともにサーキットの放つ光の中から1体のモンスターが飛び出してきた。

白銀の鎧を身に纏い、馬に騎乗し、長いランスを携えたその姿は、まさに中世の騎士そのもの。
青白い光の帯を放ちながら、それはコナミのフィールド、そのエクストラゾーンへと舞い降りた。


電影の騎士ガイアセイバー/リンク3・ATK2600


その姿を見たナグモと遊唯の表情は対照的だった。

(リンク召喚だと・・・。なんだそりゃ、聞いたこともねぇ・・・。融合もチューナーもレベルを合わせる必要もねぇ召喚法だっつーのか!? なんでそんな代物をこんなド素人が使えんだよ!?)

コナミを完全に素人と侮っていたナグモは当てが外れたとばかり苦虫を噛み潰したように顔を歪める。それは不機嫌などという雰囲気ではなく、もはや憎悪に近い感情だった。

一方で遊唯の表情には喜色が滲んでいた。

(これがリンク召喚・・・! 噂には聞いていたけれど実在する召喚法だったなんて・・・! しかもそれを使ったのがレベル1の初心者デュエリスト・・・! こんなことってあるの・・・!?)

こちらは純粋に未知なる召喚法との会遇を驚きながらも喜んでいる。

そして当のコナミはやはりそんな二人の様子にさして興味なさそうにしている。
いや、むしろ何をそんなに驚いているのか困惑すらしていた。何故なら彼にとってリンク召喚は何も特別なものではなかったからだ。まるでルール変更されて2年くらい経っているかのように、それは『使って当たり前』の召喚法であり今更使われても驚くほどのものでもない。

だからこそ動揺する二人を意に介さずそのままバトルフェイズに入る。

「バトルだ。《ガイアセイバー》で《サファイアドラゴン》に攻撃する」

《電影の騎士ガイアセイバー》がランスを構える。その切っ先は《サファイアドラゴン》に向けられている。
掛け声と共に馬を走らせ、青い光の帯を描きながらフィールドを駆ける。

《サファイアドラゴン》の攻撃力は1900。《電影の騎士ガイアセイバー》の攻撃力はそれを上回る2600。
いくら《サファイアドラゴン》の体皮が煌めくサファイアに覆われていようと、その突進槍の一撃はいとも容易くそれを突き砕くだろう。

「だからテメェはド素人だっつーんだよォ! 罠(トラップ)発動ッ! 永続罠《ジュエル・スケイル》!!」

コナミの直線的とも言える攻撃に、一転したり顔でナグモが伏せカードの1枚を翻らせる。
と同時に《サファイアドラゴン》の体の鱗が煌めき《電影の騎士ガイアセイバー》のランスを受け止めた。ランスの切っ先は《サファイアドラゴン》の体を貫くどころか1ミリも刺さってはいない。

「ヒャハハハハッ!《ジュエル・スケイル》は自分のドラゴン族通常モンスター1体の攻撃力を600ポイントアップさせ、戦闘では破壊されなくする永続罠だッ!」

《サファイアドラゴン》は《ジュエル・スケイル》の効果で攻撃力が2500まで上昇し戦闘破壊耐性も得ることになる。そうなると攻撃力はまだ《電影の騎士ガイアセイバー》が僅かに上回っているが、それでもこの攻撃で《サファイアドラゴン》を撃破することはできないことになるのだ。

「伏せカードが2枚もあるっつーのに、ちょっと攻撃力が上回ったからと無警戒に突っ込んでくるとはなぁッ! やはりテメェはド素人ッ! 戦略性ってもんがねぇーのよぉッ!」

先程までの苦汁をぶつけるようにナグモが喚く。

しかしコナミに慌てる様子はない。

「それで《ガイアセイバー》の攻撃を防いだつもりか?」

「なにィ?」

コナミがこのタイミングで更に手札を切る。

「俺は《ジュエル・スケイル》の発動にチェーンして手札から速攻魔法《ツイン・ツイスター》を発動する」

「なにッ!?」

コナミが発動した魔法カードから2つの竜巻が発生した。

「《ツイン・ツイスター》は手札を1枚捨てることで相手フィールドの魔法・罠カードを2枚まで破壊することができる速攻魔法。俺はこいつでアンタの《ジュエル・スケイル》ともう1枚の伏せカードを破壊するぜ。《ジュエル・スケイル》は永続罠だ。永続罠は発動にチェーンして破壊すれば効果が発揮されることはない。《ジュエル・スケイル》による《サファイアドラゴン》の強化は無効だ」

コナミが放った2つの竜巻が《ジュエル・スケイル》ともう1枚の伏せカードを襲う。

「ぐぅ・・・も、もう1枚の伏せカードも発動するッ!」

慌ててナグモが更にチェーンして他方の伏せカードも発動させる。
発動したのは、罠カード《融合徴兵》。エクストラデッキの融合モンスターを相手に見せることで、その融合素材モンスターをデッキから手札に加える通常罠カードだ。
通常罠カードならば、魔法・罠破壊カードの発動にチェーンして発動させれば効果は有効。

「俺はエクストラデッキから《竜魔人キング・ドラグーン》を公開し、デッキからその融合素材である《神竜ラグナロク》を手札に加えるッ!」

「しかし《ジュエル・スケイル》共々破壊はされる」

竜巻は2枚の罠カードを飲み込むとバラバラに引き裂いてしまう。

「そして《ジュエル・スケイル》の効果は無効となり、《ガイアセイバー》の攻撃が再び《サファイアドラゴン》を襲う」

《電影の騎士ガイアセイバー》のランスの先が触れている《サファイアドラゴン》の鱗にビキリとヒビが入る。
それは岩が砕けるようにビキビキと音を立てて広がり、同時にランスが《サファイアドラゴン》の肉に突き刺さった。

「“スパイラル・スピア”」

一度突き刺さった《電影の騎士ガイアセイバー》のランスが、まるでドリルのように回転し《サファイアドラゴン》の体を貫いた。

「・・・誰が戦略性がないって?」

コナミが口の端を上げるのと、《サファイアドラゴン》がけたたましい断末魔を上げて消滅したのは、まさに同時であった。


使用オリジナルカード

《咆月のシルバー・フォング》
効果モンスター
星3/地属性/獣族/攻1200/守800
(1):このカードが召喚に成功した時、LP1000を支払って発動できる。デッキ・手札から「シルバー・フォング」を2体まで選んで特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン攻撃できない。この効果発動後ターン終了時まで、自分は効果モンスター以外のモンスターしか特殊召喚できない。


《ジュエル・スケイル》
永続罠
(1):自分フィールドのドラゴン族通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは攻撃力が600アップし、戦闘では破壊されない。
(2):墓地のこのカードを除外し自分フィールドのドラゴン族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは攻撃力が600アップし、効果では破壊されない。
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