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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第五十五話「休息の時」

第五十五話「休息の時」 作:イクス

第五十五話「休息の時」


決闘者の帝国が終わり、あの悪夢の事件を解決した遊太達。その帝国で優勝し、見事帝国での栄光を勝ち取った遊太。
それから、数日が過ぎた。遊太達は帝国で勝利したという栄光を抱えて、プラクサスシティに帰って来た。しかし、彼らはそこにいなかった。
彼らが今いる場所はというと……。


「おお~! ここがサマーズですか!」
「青い空、白い雲、そしてエメラルドグリーンの海! まさに南の島国じゃん!」
「よぉ~し……お前ら、泳ぐぞ! この広い海を、砂浜を、思いっきり満喫だ~!」
「ハイ、アネゴ~!」
「準備体操を忘れちゃダメッスよ~!」
真夏の日差しに照らされた、暑い砂浜に水着で立つ菊姫、真薄、知多、岩ノ井と鏡山。その後ろに立つ、遊太とロベルト。遊太達は、このサマーズに旅行に来ていた。
サマーズは、アメリカに属する太平洋に浮かぶ南の島。一年中真夏のような気候で、ビーチやリゾート地が沢山ある観光地である。
「アハハハ、皆あんなに喜んで……まあ、こんなリゾート地に来れたら、皆はしゃぐよね」
「そういう君も、随分とはしゃいでいるみたいだね。遊太君」
遊太の格好も、海パン一丁と非常にこのビーチで遊ぶことを目的としたものである。やはり、こういう所では泳ぎたくなるものである。
ロベルトは、砂浜に座りながらこう語る。
「しかし、帝国で得た莫大な賞金を皆と一緒にここサマーズの3泊4日旅行に行く為に使うとは……豪勢だねえ。遊太君」
「うん。だって、あの帝国で勝つことができたのは、皆のお陰なんだから。菊姫、真薄君、知多君、岩ノ井君鏡山君、カリンちゃんにアキラ君に、烏間さん……皆の力があったからこそ、僕は勝つことができた……だからこそ、得た利益は皆で分け合わなきゃいけない。それだけのことさ……」
「遊太君……」
海の中でキャッキャッと遊ぶ菊姫達。それを見て、遊太はフフッと微笑む。だが。
「けれど、一番大変なのはここからなんだよね。ロベルトさん」
「大変とは?」
「うん、まずは何とか集まった精霊を宿すカード達。これをどうやってカードと精霊達を切り離して元の世界に返すか。だよね」
「ああ、私もそれを色々試みてはいるんだけどね。どうも上手くいかないんだ。僕なりに、色々やってはいるんだけどね」
「それともう一つ。帝国を支配していた、アイツ。今回は何とか退けることができたけど、またいつか、ああいう奴がまた来ないとは限らない。それも考えるとなると、結構骨が折れるなあ……あばらの5・6本はいっちゃうかも」
「確かに、リアルダメージが発生するあの危険なデュエル。これを仕掛けてくるかもしれないし、あるいはもっと武力的なこと。それを仕掛けてくるかもしれないね……」
「うん、それこそ危険なことがいっぱいあるかもしれない。皆も、また危険な目にあうかもしれない。そうしたら、皆は……」
そう考え、暗い顔になってしまう遊太。それを見たロベルトは、遊太の肩にポンと手を置き、語る。
「確かに、君が心配することはよくわかる。けどさ、今それを考えたって仕方ないさ。今は、皆と一緒に楽しもうよ。この楽しいひと時をさ。奴らがまた来た時は、その時考えればいいさ」
「……そうだよね。今はこの時を、たっぷり楽しまなきゃ!」
笑顔で立ち上がり、皆の方向を見据える遊太。そこでは、海の中で激しく遊ぶ菊姫達であった。
「んじゃ、僕も行こうかな」
「うん、遊んでおいで」
そう言って、菊姫達の所へと行こうとする遊太。すると、立ち止まってロベルトの方を向く。
「あ、でも。今心配しなきゃいけないことはあったね」
「何だい?」
「僕のお父さんのこと。一緒に行きたがっていたんだけど、行けなかったから。お母さんが、子供達の楽しみに私達大人がいらんちょっかい出さない方が良いってことで、ロベルトさんだけで良いって了承してくれたんだよね。けどお父さん、凄く僕のこと心配してそうだから、向こうでやらかしてないと良いけど……ま、いっか。今は思いっきり、楽しもうか!」
そう言い、遊太は菊姫達の方へ走り出した。
「おーい! 僕も混ぜてよ~!」
その後姿を見て、ロベルトはふぅと息を吐く。
「全く、その通りだね」

一方、その遊太を心配している遊太の父、六道幸市はというと。
「ほら、早く行くぞ! 幸子!」
「ねえ、本当に行くの? あなた……」
キャリーバッグを手に持ち、これから旅行に行くぞと言わんばかりの格好をしている幸市。それを、ため息をつくように見ている遊太の母、六道幸子。
「遊太はちゃんと帰って来るわよ? それなのに、わざわざ行くなんて……」
「だけど、やはり大人一人ではいろいろ危ないだろうと思ってな! ここで私達が行ってこそ、観光は楽しめるというものだぞ!」
「けれど……あの子が『たまには子供だけで旅行したい』って言ってたじゃない?」
「馬鹿を言うな! 観光地で子供だけ……どう考えても嫌な予感しかしない! ぼったくられるのはまだ良い。けれど、誘拐されたり事件に巻き込まれるかもと考えたら、心配になるじゃあないか!」
(どう考えても考えすぎよね……)
「そのためにも、今行かないでどうする! さあ、行こう!」
そう言って、玄関のドアを開ける幸市。すると、ドアを開けた咲には人がいた。
「あっ、担当君……」
「編集長から言われて、次の最新作の原稿取りに来たんですけど……その様子だとすっぽかそうとしてましたよね?」
「あ、えっと……その……これは……」
「まさか、原稿ができてないってことはないですよね?」
「そ、それは……」
「ないですよね?」
「う、うう……」
「な・い・で・す・よ・ね?」
押し黙る幸市に変わって、幸子が答えた。
「ごめんなさいね~。なんでもうちの息子が旅行に行っちゃったもんだから、そのショックで筆が止まっていたらしいのよ~」
「ゆ、幸子ぉっ!?」
「あー、そうですか。筆が止まっているなら、できてないってことですよね。丁度キャリーバッグもあるようですし、このままホテルでカンヅメにでもなってもらいましょうか。締め切り、もう近いんで」
「そ、それだけはご勘弁をぉ~っ!」
「やれやれ」
といった具合であった。


また一方サマーズにいる遊太達。遊太達は、まだ海を満喫中。海から砂浜へと上がって来た。砂浜には、パラソルを刺して、その日陰でジェラートを食べているているカリンと、烏間雛姫がいた。
「あ~、楽し……こんな所で海を満喫できるたあ、一生もんのものだよ……」
「それにしても、カリンちゃんずっとパラソルの下でジェラート食べているよね? 泳がないの?」
「ええ、サマーズのビーチで泳ぐのは、もう何十回も経験していることですし……それに、サマーズ自体ももう何十回も来ていますから……」
この言葉で、ゴーンと重苦しい何かが遊太達にのしかかった。圧倒的に、自分達とは違う出自を。こんな観光地に、もう何十回も来ているという、格の違いを……。
(こ、こぉんの、ブルジョアがぁっ!)
内心毒づく菊姫。しかし、菊姫がそう思っているとは知らず、カリンは続ける。
「でも、こんな風に皆さんと一緒に来るのは、初めてですわ。いつも行くのは、お父様のお仕事のついでか、パーティくらいでしたわ」
「ああ……そ……」
思いっきり項垂れる菊姫。それを見て、遊太達は話を変える。
「にしても、アキラ君も来ればよかったよねえ。『残念だがいけねえ』とだけ言って、それ以上言わないんだから」
「まあまあ遊太君、アキラ君は遊太君のライバルですから、そこらへんは……ね? ですよ」
「じゃん!」
「……まあそれは良いとして、なんで烏間さんも日陰で過ごしているんですか?」
「わかってないわねえ。サマーズみたいなリゾート地では、こんな風に静かに過ごすのが大人の楽しみ方なのよ。子供は思いっきり遊んで、大人は静かに過ごす。これが、大人と子どものリゾート地の違いよ」
「……そーいうものなの?」
「そういうものなの」


そうこうしている内に、昼間はあっという間に過ぎてゆき、瞬く間に夜になってしまった。ホテルに戻った遊太達は、まだ遊び足りないようで……。
「よし、これから22時まで、各自自由行動だ。くれぐれも、迷子やトラブルに巻き込まれないようにね。それじゃ、行動開始!」
「「はぁーい!」」
遊太達はそれぞれ、夜のサマーズを楽しむことにした。ロベルト達も、それぞれ自由行動することにしたのだ。
そうして、夜の観光地へと出て行った遊太達。サマーズは、夜でも様々なお店や施設が運営されており、夜であっても楽しみは衰えないのだ。
そう言う訳で、夜の町へと繰り出して行った遊太達。彼らの楽しみ方は、人それぞれであった。
「フハハハハハ! いくらでも出るぞ! メダルが出るぞ! サマーズのゲームセンター万歳!」
「あ、アネゴ! マジすごすぎッスよ!」
「いくらなんでも、ここまで出るのはおかしすぎじゃないですかねえ……?」
「フハハハハハ! これがアタシの実力だー!」
ゲームセンターのメダルゲームで、恐ろしい程メダルを出しまくる菊姫と、それを見守る取り巻き二人。
「あーっ! あれって確か、まだ日本語訳が出ていない、炎の体を持つヒーローのアメコミ『グリルビー』だ! 日本じゃ全然発売されてないから、こんな所で出会えるなんて……欲しいなあ……買っちゃおう!」
「おおっ、今度は往年の名ヒロイン『ワンダーガール』じゃないか! それに同じく『スターガール』も! これも買おう!」
真薄は日本のヒーローだけではなく、アメコミヒーローも好きである。折角アメリカに来たのだから、アメリカンヒーローのコミックが欲しくなった真薄は、コミックショップにてアメコミを買いあさる。
「ん~、美味い! もう一杯!」
レストランで、美味しい食べ物や飲み物を食べる知多。
「……星が綺麗ですねえ」
夜の誰もいなくなったビーチで、一人星空を眺めるカリン。
そして、遊太はというと。
「『イクスロードナイト・アルファ』で、ダイレクトアタック! これでライフは0だ!」
「かぁ~、負けたぁ!」
皆がサマーズの観光地を楽しんでいる傍ら、カードショップでデュエルをしている遊太なのであった。
「これで、十戦十勝。強いなあ、日本のデュエリスト!」
「それに、見たこともないカードを使う。凄いね!」
「フフフッ、これでも大会で優勝しているからね」
遊太のデュエルを見たカードショップのデュエリスト達は、遊太のその出来栄えに惚れ惚れとする。
そんな中、遊太の前に一人のデュエリストが名乗り出た。
「ねえ、僕ともデュエルしてくれないかな?」
眼鏡をかけた、遊太と同じくらいの背の高さをしている黒髪の少年。見た感じ、柔和な印象をしている。
「うん、いいよ! 挑まれたら、デュエルは断れないからね!」
「じゃあ、やろうか」
デュエルデスクに座り、デッキを置く少年。
「お手柔らかにね」
「あっ、そうだ! このデュエル、ライフ4000のハーフデュエルにしてもらえないかな? 僕、ちょっとこのデュエルの後でやらないといけないことあるから」
「うん、いいよ。いつもならライフ8000のフルデュエルだけど、ハーフデュエルというのも、面白みがあっていいよね! ところで、君の名前はなんていうの?」
「ラルセイだよ。そして君の名前は?」
「僕は遊太だよ。それじゃ、始めようか!」

「「ルールはマスタールール3! ライフポイントは4000!」」
「「デュエル!」」

こうして、デュエルが始まった。しかし、ラルセイという名前を聞いた周りのデュエリストたちはというと。
「ラルセイって……」
「あのラルセイなのか?」
と、口々に疑問を抱く。しかし、遊太はそんなことを気にしてはいない。

1・遊太のターン

「先攻は僕が貰うよ! 僕は手札から、魔法カード『増援』を発動! このカードはレベル4以下の戦士族を手札に加えられる! 僕はレベル3の『ロードナイト・スピーダー』を手札に加える」(遊太墓地0→1)
「そして、手札よりスピーダーを召喚! このカードが召喚に成功した時、手札から『ロードナイト』を特殊召喚できる! 僕は『ロードナイト・テラ』を特殊召喚する」(遊太手札5→3)
「テラは特殊召喚された時、デッキから『英雄騎士』と名の付いた魔法カードを1枚手札に加えられる。僕は『英雄騎士への覚醒』を手札に加える」(遊太手札3→4)
「そして手札より、速攻魔法『英雄騎士への覚醒』を発動! このカードは、自分フィールドの『ロードナイト』モンスター1体をリリースすることで、リリースしたモンスターと同じ属性の『イクスロードナイト』を、エクストラデッキから特殊召喚できる! 僕は、風属性のスピーダーをリリースして、エクストラデッキから風属性の『イクスロードナイト・ローズ』を特殊召喚する!」(遊太手札4→3)(遊太墓地1→2)
薔薇吹雪と共に現れた、桃色の鎧を身に纏い、右手にフルーレを、左手に薔薇の花を持つ騎士が現れた。攻撃力は、2600。
「僕はローズの効果を発動! 手札を1枚捨てることで、二つの効果から一つを選択して発動する! 一つは、デッキより2枚まで『ロードナイト』モンスターを手札に加える。もう一つはフィールドのカードを2枚まで手札に戻すの二つ。僕は、これで2枚の『ロードナイト』の『ロードナイト・ジュリアス』と『ロードナイト・エクスプローラー』の2体を手札に加える!」(遊太手札3→2→4)(遊太墓地2→3)
「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」(遊太手札4→3)

遊太

ライフポイント4000
手札枚数3枚
モンスター2体
『イクスロードナイト・ローズ』(攻撃表示・攻撃力2600・風属性・レベル8)
『ロードナイト・テラ』(守備表示・守備力1500・光属性・レベル4)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数3枚
除外されているカード0枚


2・ラルセイのターン

「僕のターン、ドロー」(ラルセイ手札5→6)
「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターがいない時、手札の『バイス・ドラゴン』は特殊召喚できる」(ラルセイ手札6→5)
「そして僕は、レベル2チューナーモンスター、『ドレッド・ドラゴン』を特殊召喚するよ」(ラルセイ手札5→4)
ラルセイのフィールドに、チューナーモンスターとそれ以外のモンスターが並ぶ。
「チューナーとそれ以外のモンスター……シンクロ召喚か!?」
「そうさ! 僕はレベル5の『バイス・ドラゴン』に、レベル2の『ドレッド・ドラゴン』をチューニング! シンクロ召喚! 現れろ、レベル7『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』!」(ラルセイ墓地0→2)
現れたのは、攻撃力2400の大きな翼を持つドラゴン。しかしレベル7とはいえ、遊太のローズには攻撃力が届かない。
「バトルフェイズだよ。僕はエクスプロードで、テラを攻撃! キング・ストーム! さらに、エクスプロードの効果発動! エクスプロードより攻撃力が低いモンスターと戦闘を行う時、そのモンスターを破壊して、モンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
「なにっ!? ぐうっ!」(遊太ライフ4000→2500)(遊太墓地3→4)
エクスプロードの効果によって、いきなり大ダメージを受けてしまう。ライフが4000のこのデュエルでは、1500のダメージでも大きな威力である。
「フフフ。デュエルというのは、最初に先手を取る物さ。しかも、このモンスターの前じゃ壁モンスターもそんなに出せない筈さ」
「やってくれるねえ……だけど、効果で破壊されたテラのモンスター効果発動! デッキより、レベル4以下の『ロードナイト』を特殊召喚できる! 僕は、レベル4の『ロードナイト・クレス』を守備表示で特殊召喚する。更に、ダメージを受けた時、手札にある『ロードナイト・エクスプローラー』は特殊召喚できる」(遊太手札3→2)
「クレスの効果発動。特殊召喚された時、デッキから『ロードナイト』を1体手札に加えられる。僕はデッキから、『ロードナイト・アウェイク』を手札に加える」(遊太手札2→3)
「流石に、簡単にはやらせてはくれないなあ。まあいっか。とりあえず、メインフェイズ2に入って、カードを3枚伏せてターンエンド」(ラルセイ手札4→1)

ラルセイ

ライフポイント4000
手札枚数1枚
モンスター1体
『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』(攻撃表示・攻撃力2400・闇属性・レベル7)
魔法・罠ゾーンのカード3枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数2枚
除外されているカード0枚


3・遊太のターン

「僕のターン、ドロー!」(遊太手札3→4)
いきなりダメージを受け、更には伏せカードによる盤石の体勢が敷かれた。攻め込むには不利なため、試案する遊太。
(もし、あの伏せカードが妨害のカードだったら、ここで打ってくるはず……)
「僕は、手札を1枚捨ててローズの効果を発動! フィールドのカードを2枚まで持ち主の手札に戻す! 僕は君の伏せカード2枚を対象とする。ローズ・タイフーン!」(遊太手札4→3)(遊太墓地4→5)
薔薇吹雪と共に、渦巻くように舞うローズ。その風によって、ラルセイの伏せカードがたなびくが。
「おっと、その効果は通らないよ! 永続罠『デモンズ・チェーン』を発動! このカードは、モンスター1体を対象として発動できるカード。対象となったモンスターの効果を無効化して、攻撃をできなくさせる! 僕はローズを対象として、その効果を無効化するよ!」
カードから現れた、黒い鎖がローズの体を縛って動きを止める。これにより、効果は不発となってしまった。
「くっ、やられた!」
「フフフ、そう簡単には効果を決めさせてあげないよ。さあ、次の手はどうするんだい?」
「……」
思考を巡らせ、手札を見る遊太。
(手札のアウェイクは、このカードを捨てることでデッキから『英雄騎士への覚醒』を手札に加えられる。僕のフィールドにいるのは、風属性、地属性、炎属性……。手札の水属性のジュリアスは特殊召喚できるから……出ているローズを除けば、7体の中から1体『イクスロードナイト』を呼べる……ならここは!)
「僕は手札より、アウェイクを捨てることで『英雄騎士への覚醒』を手札に加える」(遊太墓地5→6)
「そして、僕は手札から『英雄騎士への覚醒』を発動! 今回、僕がリリースするのは炎属性のエクスプローラー。よって、エクストラデッキから特殊召喚する『イクスロードナイト』は、『イクスロードナイト・デュナス』!」(遊太手札3→2)(遊太墓地6→8)
ワイバーンの鎧を身に着け、その背中にドラゴンの翼を持つ騎士。攻撃力は2900。
(……もったいないけど、行くぞ!)
「僕は、ライフを1000支払い、デュナスの効果発動! フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの中で攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える! ビッグバン・バーストインパクト!」(遊太ライフ2500→1500)
デュナスはデュエルフィールドの上に飛び上がり、巨大な火球を作る。その火球をフィールドにぶつけると、大爆発が起きてフィールドのモンスターが全て破壊されてしまう。敵味方問わずその炎に包み込まれ、ラルセイにダメージが行く! 
「くぅっ……!」(ラルセイライフ4000→1400)(ラルセイ墓地2→4)
「どうせ破壊されるなら、いっそ破壊してしまえ……ここなら、まだいけるよね? デュナスのモンスター効果を使用した後は、直接攻撃できない。これで、僕はターンエンドだよ」(遊太墓地8→10)

遊太

ライフポイント1500
手札枚数2枚
モンスター1体
『イクスロードナイト・デュナス』(攻撃表示・攻撃力2900・炎属性・レベル8)
魔法・罠ゾーンのカード1枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数10枚
除外されているカード0枚


4・ラルセイのターン

「僕のターン、ドロー」(ラルセイ手札1→2)
「やるねえ。一気にモンスターを破壊して、その上ダメージも与えるなんて……確かにこのライフ4000じゃキツイダメージだ。けれど、まだデュエルが終わった訳じゃないよ」
「僕は手札から、レベル3チューナー『ダーク・リゾネーター』を召喚!」(ラルセイ手札2→1)
ラルセイのフィールドに、音叉を持った悪魔が現れる。攻撃力1300。
「更に、自分フィールドにチューナーモンスターがいる時、このモンスターは手札から特殊召喚できる! 『天狼王ワイルド・ワインド』を特殊召喚!」(ラルセイ手札1→0)
再び、シンクロ召喚の用意が整ったラルセイは、新たなシンクロモンスターを呼ぶ! 
「僕は、レベル4のワイルド・ワインドに、レベル3の『ダーク・リゾネーター』をチューニング! シンクロ召喚! レベル7『デーモン・カオス・キング』!」(ラルセイ墓地3→5)
今度は、炎の翼を持った悪魔のようなモンスターが現れる。攻撃力は2600と、今一歩デュナスに届かない。
「バトルフェイズ! カオス・キングで、デュナスを攻撃! この時モンスター効果が発動するよ。『デーモン・カオス・キング』は、攻撃する時相手モンスターの攻撃力・守備力を入れ替えれる! どうやら、そのモンスターは守備力が低いみたいだしね!」
「あっ、しまった!」(デュナス攻撃力2900→1100)(デュナス守備力1100→2900)
攻守が入れ替わってしまったことにより、凄く低い守備力を晒してしまう。それにより、ぴったりライフが0になってしまうかと思われたが……? 
「罠カード発動! 『ショート・ブレイク』! フィールドのモンスター1体と、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる! そのモンスターとカードを破壊する! 今回破壊するのは、デュナスとカオス・キングだ!」
突如現れた雷によって、『デーモン・カオス・キング』とデュナスは破壊されてしまう。攻撃を避けるため、致し方ないことであろう。(遊太墓地10→12)(ラルセイ墓地5→6)
「防がれたか……まあ、これをくらえば一撃死だから当然といえば当然か。そんな簡単には攻撃させてくれないよね。仕方ない。ここはターンエンドだ」

ラルセイ

ライフポイント1400
手札枚数0枚
モンスター0体
魔法・罠ゾーンのカード2枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数6枚
除外されているカード0枚


5・遊太のターン

「僕のターン、ドロー!」(遊太手札2→3)
(攻め込むなら、今がチャンスかも! よし!)
「僕は手札から、速攻魔法『英雄騎士の緊急招集』を発動! 自分フィールドにモンスターがいない時、デッキ・手札からレベル4以下の『ロードナイト』1体を特殊召喚できる! 僕がデッキから特殊召喚するのは、レベル2のスター!」(遊太手札3→2)(遊太墓地12→13)
「更に、スターが特殊召喚された時、デッキからレベル4以下の『ロードナイト』を特殊召喚できる。僕が特殊召喚するのは、レベル4のネクロ!」
「更に、ネクロが特殊召喚された時、墓地より『英雄騎士』魔法カード1枚を手札に加えられる。僕は墓地から、再び『英雄騎士への覚醒』を手札に加える」(遊太手札2→3)(遊太墓地13→14)
「そして僕は手札から、『ロードナイト・ジュリアス』を特殊召喚する! ジュリアスは自分フィールドに『ロードナイト』がいる時、手札から特殊召喚できる」(遊太手札3→2)
「そして僕は、手札より速攻魔法『英雄騎士への覚醒』を発動!」
「その魔法カードにチェーンして、罠カード『リバイバル・ギフト』を発動! このカードは、墓地からチューナーモンスター1体を特殊召喚する。その後、相手フィールドにギフト・デモン・トークンを2体特殊召喚するよ。僕は『ダーク・リゾネーター』を特殊召喚して、君のフィールドにトークンを2体特殊召喚するよ」
「何……!?」
遊太のフィールドに、オタマジャクシのようなモンスターが攻撃表示で現れる。攻守共に1500と、そこそこ高い。しかし、遊太は気にしない。
「……今度は水属性のジュリアスを対象として発動。これで特殊召喚するのは、水属性の『ロードナイト・ジエス』だ!」(遊太手札2→1)(遊太墓地14→16)
氷の鎧と、氷柱を矢とした弓矢を持つ騎士が現れる。攻撃力は2600。
そして、そのモンスターが召喚されたと同時に、フィールドに猛吹雪が吹く。
「ジエスの効果発動。ジエスは特殊召喚された時、特殊召喚されたターンのエンドフェイズまで相手は魔法・罠を発動することはできない! その伏せカードは封じさせてもらうよ!」
「じゃあその発動にチェーンして、僕は罠カード『シンクロコール』を発動! 『シンクロコール』は、墓地のモンスターを効果を無効化して特殊召喚して、悪魔族かドラゴン族をシンクロ召喚する!」
「何!? 僕のターンで、シンクロ召喚をするだって!?」
「僕は墓地から、レベル5の『バイス・ドラゴン』を特殊召喚して、レベル3の『ダーク・リゾネーター』にチューニング!」(ラルセイ墓地5→4)
「王者の魂、今ここにあり! 荒ぶる魂を、天地に晒せ! シンクロ召喚! 現れろ、レベル8『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」(ラルセイ墓地4→7)
ラルセイのフィールドに現れた、レベル8のシンクロドラゴン。その体は赤と黒に包まれ、今にも咆哮が聞こえそうである。攻撃力は3000と、かなり高い。
「こ、これは……!」
遊太は当然驚いていたが、それよりも周りが驚き始めた。
「なにいっ!? 『レッド・デーモンズ・ドラゴン』だとおっ!?」
「ウソだろ……!?」
「マジかよ……!?」
驚く観客達だが、それを意に介さず遊太は続けようとする。
「いきなり、攻撃力3000のモンスターをシンクロ召喚するだって……これじゃあ、うかつに攻め込めない……! クソッ、墓穴を掘ってしまったか……」
「さあ、攻撃するかい?」
「クッ、ターンエンドだよ……このエンドフェイズ、『英雄騎士の緊急招集』で特殊召喚されたスターは、デッキに戻る」
(けれど、ジエスがいる限り、ダメージは与えられないはず……!)

遊太

ライフポイント1500
手札枚数1枚
モンスター2体
『イクスロードナイト・ジエス』(攻撃表示・攻撃力2600・水属性・レベル8)
『ロードナイト・ネクロ』(守備表示・守備力1600・闇属性・レベル4)
魔法・罠ゾーンのカード0枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数16枚
除外されているカード0枚


6・ラルセイのターン

「僕のターン、ドロー」(ラルセイ手札0→1)
「このメインフェイズ1開始時、ジエスの効果発動! ジエスは1ターンに1度、モンスター1体の効果を無効化して、攻撃を不可能にする! そのモンスターの攻撃は、不可能にさせてもらうよ!」
ジエスから放たれた、氷の矢によってレッド・デーモンズは氷漬けにされてしまう。これで、攻撃は封じられてしまう。
(……なんとか、攻撃は避けられたか……。あのモンスターが現れたのは、トークンを攻撃するため……! 攻撃力が3000のモンスターで1500を攻撃されたら、ライフが一瞬で消し飛ぶ!)
「……僕は、手札から魔法カード『紅蓮魔竜の壺』を発動。自分フィールドにレッド・デーモンズがいる時、2枚ドローできる」(ラルセイ手札1→0→2)(ラルセイ墓地7→8)
「僕はカードを2枚セットして、ターンエンド」(ラルセイ手札2→0)

ラルセイ

ライフポイント1400
手札枚数0枚
モンスター1体
『レッド・デーモンズ・ドラゴン』(攻撃表示・攻撃力3000・闇属性・レベル8)
魔法・罠ゾーンのカード2枚
発動しているカード0枚
墓地の枚数8枚
除外されているカード0枚


7・遊太のターン

「僕のターン、ドロー」(遊太手札1→2)
(……相手フィールドには、攻撃も効果も無効になっている攻撃力3000のモンスターがいる。そして、2枚の伏せカード……なら、ここは!)
「僕は手札より速攻魔法『英雄騎士交代』を発動! 自分フィールドの『イクスロードナイト』を1体エクストラデッキに戻し、戻したモンスターとは違う『イクスロードナイト』を特殊召喚する! 僕はジエスをデッキに戻して、エクストラデッキより特殊召喚するのは、地属性の『イクスロードナイト・アポロ』!」(遊太手札2→1)(遊太墓地→)
獅子の鎧を身に着け、両手に手甲をつけた騎士が現れる。攻撃力は2500。
「いくよ! 僕はアポロで、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を攻撃!」
「この時、アポロの効果発動。アポロは攻撃する時、自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を加算することができる! 僕はギフト・デモン・トークンの攻撃力を加算し、攻撃力4000となる! これで、レッド・デーモンズは破壊だ!」
「じゃあ、この攻撃の時、罠カード発動『聖なるバリア -ミラーフォース-』相手の攻撃宣言時、攻撃表示のモンスターを全て破壊する!」
「……そう来ることは読めていた! 手札から速攻魔法『禁じられた聖槍』を発動! モンスター1体の攻撃力を800下げ、魔法・罠の効果を受けなくする! 僕はアポロを対象に発動して、ミラーフォースの効果を受けなくする!」
(これで、レッド・デーモンズを倒すことができ、残りのモンスターの攻撃で……!)
それを見て、ラルセイが何やら感づく。
「凄いねえ。こっちの罠カードを全て読み切った上での、勝利への布石とつけ入るスキのない攻撃。なるほど、理解したよ」
「……!?」
「でも、少し読みが甘かったみたいだね。僕は罠カード発動! 『魂の一撃』! ライフが4000を下回っている時、ライフを半分支払って発動。ライフが4000より下回っている差分だけ、攻撃力を上げる!」
「えっ!? ということは……!」
「そう、ライフを半分支払ったことで、僕のライフは700となり、レッド・デーモンズの攻撃力は3300アップする!」(ラルセイライフ1400→700)(レッド・デーモンズ・ドラゴン攻撃力3000→6300)
「なにっ!?」
「迎え討て、レッド・デーモンズ! 灼熱の、クリムゾン・ヘルフレア!」
氷から解き放たれたレッド・デーモンズが、同じくマグマの拳を持つアポロに灼熱の炎を喰らってしまい、返り討ちにあってしまった! 
「うわあーーっ!」(遊太ライフ1500→0)
「僕の勝ち……だよね?」
「うん……勝ちだよ」


デュエルが終わり、互いに話をする遊太とラルセイ。
「それにしても、君のデュエルは凄かったねえ。まさかあの状況で逆転喰らうとは思わなかったよ」
「こっちも、あの状況であのカードを出されるとは思ってもいなかったよ!」
「いやいや、あの状況でやられるのはマズイって!」
お互いにデュエルのことで盛り上がり、話が弾む。周りの人間が、どんな眼をしているか知らないで。
「おっと、もうこんな時間だ。皆が待っているからもう帰らなきゃ!」 
「うん、それじゃあね。バイバーイ」
遊太は、もう時間が遅いため帰ることとなった。ラルセイも、それを見送り帰ることになった。
その帰る途中。
「おい、お前。さっきラルセイとデュエルしていた奴だろ?」
「うん、そうだけどどうしたの?」
「運がよかったなあ。アメリカのデュエルチャンピオンとデュエルできるなんて」
「えっ……」
「なんだよ、お前知らなかったのか? ラルセイ・ドリーマー。アメリカのデュエルチャンピオン、通称チャンプさ。アメリカじゃ知らない奴は殆どいないぞ」
「えーーっ!?」
「お前、知らなかったのか?」
「僕、そんなデュエリストと戦っていたの!?」


一方、ラルセイの方はというと……。
「どうだったかい、ラルセイ君? 今日本のデュエリストで、トップ10に入ると思う遊太君の実力は?」
「うん! 中々強かったよ。今はまだ粗削りだけど、きっともっともっと強くなるよ! となると、後の大会で僕と……いや、彼らとも戦うことになるのかな?」
「彼ら……って、僕の他にアメリカトップ5と言われている、ノエルとかのこと? 確かに、皆は強いよ。皆のことも、遊太君なら総なめにしちゃうかな……」
「そうかい? まあ、君がそういうんならそうなんだろうな。にしても、君がちょうどサマーズに来ていてくれてよかったよ、ラルセイ君」
「あなたこそ、まさか来るとは思いませんでした。ロベルトさん!」
ラルセイはなんと、遊太達の引率となっているロベルトと話をしていたのであった。
「そういえばロベルトさん、最近忙しそうですけど、何かありましたか?」
「いや、ちょっとね。やらなきゃいけないことが沢山あるからさ」
それを聞いて、ラルセイはにっこりと笑うのであった……。


第五十五話。終わり。
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