DRAW:２１１ 精霊との絆　作：人喰い

(211)



ーーーーーマインと出会ったあの時、僕は命の危機を感じた。

ただ生存本能に掻き立てられ、計算など入り込む余地の無いほど無我夢中に、我武者羅に、生きる術を探った。

だが、今になってようやくわかった。
あの時の感情は、あの時『マイン』に対して協力しようと思えたのはーーーーーー



「マインがこの世界における最大の『問題児』だったからだ」



目の前の『マイン』という『問題児』を救えるのは、きっと僕だけだ。
心のどこかで、そんな風に思ってしまったのかもしれない。
彼を救わなければ、この世界は終焉を迎えるだろう。
その為に彼の側で寄り添い、正しい知識を与える。このマインによる殺戮の現場を目撃した僕にしかできない事だ。
それは僕の中に僅かに残っていた『教師』としての最後の望みだった。

しかし。

僕のした事は紛れも無い悪だ。

教師として死に。

悪魔の手先として生きる。

教師の様に振舞いつつ。

自己満足に浸るだけ。

世界の為にと謳いながら。

平穏を脅かす存在となった。

酷く愚かで、醜い。


僕はなんて強欲で、貪欲な人間なんだ。















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:２１１ーーー
《精霊との絆》















〜生命の樹 内部・『基礎の間』〜



火群【LP 4900】
(モンスター)
なし
伏せ:0
手札:0
墓地:0

真和【LP 3900】
(モンスター)
EXモンスターゾーン
『クリフォート・ゲニウス』[ATK 1800]右下・左下
(魔法)
『ブンボーグ・ベース』(フィールド)
伏せ:0
手札:0
墓地:003 x1


◉TURN:０５◉


真和「……さぁ、カードを引け…市瀬……ッ……！」


ブンボーグ・ベースの効果により、場・手札・墓地を失った火群のドローフェイズーーーー


火群「……っ…！」

火群は意を決してデッキの上に指を乗せる。

火群「……俺のターンーーーー」

緊張で押しつぶされそうな心を必死におさえつけ、精一杯の力を込め、


火群「ーーーーードロォォォオォォッッ！！！」


引き抜いた。

ドローの軌跡は炎を纏い、空高く立ち昇る。


火群「ーーーーッ……！」


ニクス『……ーーーーー…！』


真和「ーーーーー……」


火群は引いたカードを横目で確認すると、


火群「…………っ……」


そっと、腕を落とした。


火群（……クソ…ったれ……ッ…！）


火群の引いたカードはーーーーフィールド魔法『炎王の孤島』。


火群「ーーーーターンエンド……ッ………」


この局面を打開できるカードでは無く、無情にもターンの終了が宣言される。


火群（……ここで…終わるのか……？ ここでーーーーー）


◉TURN:０６◉


真和「………」

俯き、拳を握る火群を見下ろしつつ、真和はデッキの上に指を乗せた。

真和「…全部が都合よく、上手くいく訳ではない……。それが決闘だ……。
僕のターンーーーーードロー……ッ……！」

それからカードを引くまでの動作に一切の迷いは無く、真和は引いたカードに一瞬眉を寄せるも、即座に発動させる。


真和「……極限のタイミング……、またしてもこのカードを引くことになるとはなーーーーー魔法発動…！！
ーーーー『強欲で貪欲な壺』ッッ！！」


《強欲
ごうよく
で貪欲
どんよく
な壺
つぼ
/Pot of Desires》 †
通常魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：自分のデッキの上からカード１０枚を裏側表示で除外して発動できる。
自分はデッキから２枚ドローする。



火群「……ッ…！ 禁忌の……カード…ッ…！！ そのカードを使ったら…ッ先生の寿命が…ッッ！！」

精霊王の鏡の中に封印されていた、強力な効果と引き換えに使用者に“代償”を要求すると言われる９枚の“禁忌のカード”。
その１枚である『強欲で貪欲な壺』を発動するためには、自らの寿命を１０年捧げなければならないのだ。
しかし真和は代償に怯える事無く、淡々と火群に告げる。

真和「………どの道、『マイン』という名の悪魔に捧げた命だ……そう長くはない。
それに言ったはずだーーーーー全てを犠牲にしてでも……お前を倒さなければならないと」

そう言う真和の瞳に宿る強い信念のようなものを火群は感じ、一瞬言葉に詰まってしまう。
直後に真和の頭上に、欲にまみれた二つの面を持つ巨大な壺が現れた。

火群「……！！」

壺が邪悪に笑うと、真和のデッキの上から１０枚のカードが壺の中に吸い込まれて行くーーーー

真和「……僕は１０枚の“未来”ーーーー１０年の“寿命”を犠牲に……ッ……デッキから２枚のカードをドローするッッ！！」

デッキから引き抜かれた２枚のカードは瘴気を纏っており、まるで人間の欲望が視覚化されているようだった。

火群「……先生…ッ……！」

真和は引いたカードを横目で確認する。

１枚は、カウンター罠カード『レッドリブート』。

そして２枚目はーーーーー




真和「ーーーーー僕の勝利だ。市瀬」




宣言と共に１体のモンスターが召喚される。

真和「…現れろーーーー『ブンボーグ００３』ッッ！！！」[ATK 500→1000]


召喚されたのは、【ブンボーグ】のキーカードであり、最重要と言ってもいい始動札。ブンボーグ００３。

火群「……ッ………！」

ニクス『…このタイミングでそのカードを…ッ……！！』

召喚時にデッキからブンボーグを特殊召喚する効果による展開補助だけで無く、場のブンボーグ１体の攻守を場の『ブンボーグ』カード１枚につき５００上昇させる効果で戦闘補助までこなす強力なカードだ。


火群「……ッ…！」


火群のライフは残り4900。
クリフォート・ゲニウスとブンボーグ００３、そして００３から呼び出されるモンスターまでの攻撃を全て受けきる事はできない。

ニクス『……ここまで…なのかーーーーー』



火群「………」


ふと目を閉じる。

すると聞こえてきたのは、誰かの声。



『痛い』


『苦しい』


『もうやめて』


『助けて』



誰……？


ニクス……？

炎花姉さん……？

和泉………？


違う。


聞き覚えの無い声だーーーー


どこから聞こえる……？

一体、どこからーーーー





真和「ーーーーー『ブンボーグ００３』の効果発動…ッッ！！ このカードが召喚に成功した時、デッキから『ブンボーグ』モンスター１体を特殊召喚ーーーーー」


火群「ーーーー『痛い』」


被せるように発せられた、悲痛の言葉。

火群「ーーーー『苦しい』。
『もうやめて』。
『助けて』」

ニクス『……火群ーーーーっ…？』


真和「………敗北を目前に、おかしくなったか…？」


火群「……確かに聞こえたんだ。
助けを求める声がーーーー」

真和「…何を訳の分からない事をーーーーッ」

火群に構わず、真和はデッキから呼び出すモンスターを選択する為にデッキの中身を確認する。

真和「……僕が呼び出すモンスターはーーーー」

そこで、異変。

真和「ーーーーッ…！！」

真和は両眼を見開き、指を震わす。

真和「ーーーーば…ッ…馬鹿な……ッッ…！」


血相を変え取り乱す真和に、火群は告げた。



火群「……先生のデッキに、力を貸してくれる仲間はもう居ないーーーー」



火群の告げた通り、真和のデッキの中には、ブンボーグ００３の効果で呼び出せる『ブンボーグ』モンスターが１体も残っていなかった。


真和「……何故…ッッ……何故だ……ッッ！！？ こんなハズじゃーーーーー」

火群「……っ…」

哀れむような表情で真和を見つめる火群の眼から溢れ出す、大粒の涙。


火群「……先生には聞こえないのか……？
あの壺の中で叫ぶーーーーブンボーグ達の声が」



精霊の、声。



『ーーーーもうやめて。マサカズ』



真和の脳にも、確かに届いた。


真和「……！！」

火群が指差した先では、１０枚ものカードを封印した『強欲で貪欲な壺』が不気味に笑う。

真和「……全て……あの壺の中に……っ…？」

そう、真和のデッキに残っていたブンボーグは全て、強欲で貪欲な壺を発動するための犠牲となり、除外されていたのだ。


真和「…そんな………ッ…そんな事が……ッッ……！」

火群「……先生のデッキは…、『ブンボーグ』達は……っ…！ きっと闇のゲームでの闘いなんて望んでいない…！ 先生が終焉の焔として闘う事なんて望んでいなかったんだよ…っ！
…それを持ち主である先生に……伝えたかったんじゃないかな……？」


真和「……っ……なん…だと…？」

真和は力なくその場に膝をつき、薄くなったデッキをただ見つめていた。

真和「…カードが……意思を…っ……。
本当に…、そんな事がーーーー」


ニクス『……必死に試行錯誤して組み上げたデッキには魂が宿る。
そうして得た精霊と決闘者との繋がりは、未来永劫続く……大切な絆なのだ』

真和「………」

ニクスの言葉に真和は一瞬の沈黙。
そして少しして立ち上がると、再び口を開いた。

真和「…不死鳥……貴様の言うことは、理解……できない」

ただ。と、真和は続ける。


真和「……僕が今何をすべきなのかはーーーーー解った」


メインフェイズが終了し、バトルフェイズへ。


真和「すまないなーーーー僕のデッキ。
許してくれなどとは言わない。
しかし今は、この謝罪の言葉を何も言わずに聞いてくれ」


本当に、すまなかった。


繰り返すように言い、真和は俯いていた顔を上げ、対戦相手である火群へと再び視線を移す。


真和「ーーーーそしてこの決闘を最後まで戦い抜く事で、少しでも恩を返させてくれ」


突き出された右腕、クリフォート・ゲニウスの纏う瘴気が怪しく揺らめく。

真和「……クリフォート・ゲニウスで直接攻撃！！」

『クリフォート・ゲニウス』[ATK 1800]

火群に攻撃を防ぐ手段は無い。
覚悟を決めた表情で攻撃を受ける。

火群「……ぐぁぁあぁッ！！」【LP 4900→3100】

体勢を立て直す暇もなく、煙の晴れた火群の目の前には、左腕に装備した定規を振り上げるブンボーグ００３の姿。

火群「……！！」

真和「ーーーーブンボーグ００３の効果…！
僕の場の『ブンボーグ』カードの数は２枚…！ よって００３の攻撃力は１０００ポイントアップする！！」

『ブンボーグ００３』[ATK 1000→2000]

００３による一撃が火群に直撃し、辺りに爆風が立ち込める。


火群「…ーーーーーッ……！！
ハァ……ッ…！ はァ……！！」【LP 3100→1100]


真和「……まだ僕の優勢だという事を忘れるなよ……ッ…ターンエンド…ッ…！」


◉TURN:０７◉


火群「……っ…」

なんとか繋がった、首の皮１枚。

再び訪れたこの一瞬に、全神経を集中させる。


火群「ーーーー俺のターンッッ！！」


その手に宿すは、鮮やかに燃える炎。

ニクス『……私たちはここで立ち止まる訳にはいかない……！
いくぞッッ！！』

火群の右手にそっと、ニクスの手が重ねられる。


火群・ニクス「『ーーーーードロォォォオォォッッ！！！』」[手札 2]


引いたのは、常に火群を支え続けてきた、火群のデッキを代表する魔法カード。
確認せずとも、指を通して伝わる鼓動でわかる。


火群「ーーーー魔法発動ッッ！！
『炎王の急襲』ッッ！！」


《炎王
えんおう
の急襲
きゅうしゅう
/Onslaught of the Fire Kings》 †
通常魔法
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキから炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
エンドフェイズ時に破壊される。
「炎王の急襲」は１ターンに１枚しか発動できない。


発動と同時に、火群とニクス、二人を爆炎が包み込む。
そしてニクスの姿は不死鳥へと変化し、艶やかな真紅の翼を広げフィールドに舞い降りた。

『炎王神獣 ガルドニクス』[ATK 2700]

火群「更に…！ 手札からフィールド魔法『炎王の孤島』を発動！！」


《炎王
えんおう
の孤島
ことう
/Fire King Island》 †
フィールド魔法
「炎王の孤島」の(1)(2)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
(1)：自分メインフェイズにこの効果を発動できる。
自分の手札・フィールドのモンスター１体を選んで破壊し、
デッキから「炎王」モンスター１体を手札に加える。
(2)：自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこの効果を発動できる。
手札の鳥獣族・炎属性モンスター１体を特殊召喚する。
(3)：フィールドゾーンの表側表示のこのカードが、
墓地へ送られた場合または除外された場合に発動する。
自分フィールドのモンスターを全て破壊する。


真和「……！ 残りの１枚は炎王の孤島だったか……ッ…！」

焦りを見せる真和に火群は畳み掛ける。

火群「炎王の孤島の効果発動！
場のガルドニクスを破壊し、デッキから『炎王獣 クリシュナ』を手札に加える！！」[手札 1]


そして、と火群は続ける。

火群「ーーーー俺のライフは3000以下…ッ…俺の場のモンスターが破壊された事で、“制限”は解除される……！！」

真和「……ッ…！」


火群「ーーーリミット解放ッ！！ コード『ガルドニクス』！！」


宣言と同時に炎の柱が至る所から噴き上がる。

火群「ーーー朽ちること無き恒久の翼、今こそ解き放てッ！ 不滅の焔が敵を穿つ！」

大地を割り、溶岩とともに現れたニクスの周りを、眩い光を放つ無数の粒子が覆い、ニクスを新たな姿へと作り変えていく。

そして不死鳥は光を纏い舞い上がる。

火群「ーーー〝ライズ召喚〟！！！
現れろ！！
『炎王神獣 ガルド・イモータル』！！」


《炎王神獣 ガルド・イモータル》＊Ph.X Original Cards
ライズ・効果モンスター
星９/炎属性/鳥獣族/攻 2700/守 1700
ライズコア「炎王神獣 ガルドニクス」
【リミット:3000】
自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、ライズコアに指定されたモンスターを自分のフィールド・墓地から１体選び、そのモンスターをライズコアとしてライズ召喚する。(ライズコアとなったモンスターはこのデュエル中、ライズモンスターの下に重ね１枚のカードとして扱い、ライズモンスターはフィールドを離れる場合、ライズコアを重ねたままEXデッキに表で置く)
このカード名のカードは自分フィールドに１体しか表側表示で存在できず、①③の効果は、それぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①:このカードが戦闘・効果で破壊された場合、攻撃力を１０００アップさせて特殊召喚する。
②:このカードの①の効果で特殊召喚に成功した場合、このカード以外の自分フィールドのカードを２枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊し、破壊した自分のカードの数まで、相手フィールドのカードを選んで破壊する。
③:自分及び相手のスタンバイフェイズ時にこのカードがエクストラデッキに表側で存在する場合、１０００LPを払って発動できる。このカードを守備表示で特殊召喚する。


真和「……ッッ…！！ ライズ召喚…ッ…！」

火群「…これが俺たちの……精霊と人間の絆の結晶だ…ッ！！
ーーーー俺は更に、『炎王獣 クリシュナ』を召喚！！」[ATK 1200]


《炎王獣 クリシュナ》＊Ph.X Original Cards
効果モンスター
星４/炎属性/獣戦士族/攻 1200/守 200
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに表側表示で存在する「炎王」モンスターが効果で破壊された場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル３以下の炎属性チューナー1体を特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は炎属性モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
③:このカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地の「炎王獣 クリシュナ」以外の「炎王」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。


火群「……クリシュナの効果…ッ！ デッキから現れろ！！『幼炎王獣 ガルドニクス』！！」[DEF 200]


まだ止まらない。
白き炎がフィールドを駆け抜け、淡く光る。

火群「レベル４、『炎王獣 クリシュナ』に…ッ…レベル１、『幼炎王獣 ガルドニクス』をチューニング！！」

白き炎が空中に円を描き、合計５つの星となった火群のモンスター達が円に連なり燃え上がる。

火群「ーーーーーシンクロ召喚！！
再び現れろ！ レベル５ーーーーー遍く満たす炎の化身！！
『炎王獣 ヴィシュヌ』！！」[ATK 2400]


《炎王獣 ヴィシュヌ》＊Ph.X Original Cards
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星５/炎属性/獣戦士族/攻 2400/守 200
炎属性チューナー+チューナー以外の炎属性モンスター１体以上
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。手札またはデッキから「炎王獣」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果の発動後、自分は炎属性以外のモンスターの効果を発動できない。
②:相手メインフェイズに発動できる。このカードを含む、自分フィールドのチューナーとチューナー以外のモンスター1体以上を破壊し、破壊したモンスターの元々のレベルの合計と同じレベルを持つ炎属性のＳモンスター１体を、EXデッキからＳ召喚扱いで特殊召喚する。
③:このカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合、自分フィールドの炎属性モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは以下の効果を得る。⚫︎1ターンに1度、相手がカードの効果を発動した時に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。その効果は、「お互いに500ダメージを受ける」となる。


火群「……ヴィシュヌのシンクロ召喚成功時、効果発動！
デッキから現れろ…！『炎王獣 ダンディライオン』！！」[DEF 200]


《炎王獣 ダンディライオン》＊Ph.X Original Cards
効果モンスター
星４/炎属性/獣族/攻 1300/守 200
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できず、①②の効果を使用するターン自分は炎属性モンスターしか特殊召喚できない。
このカードのカード名はルール上「ダンディライオン」としても扱う。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、またはこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「綿火トークン」（植物族・炎・星１・攻／守０）１体を守備表示で特殊召喚する。「綿火トークン」はフィールドに存在する限り「綿毛トークン」としても扱い、「綿火トークン」がカードの効果で破壊された場合自分はデッキから１枚ドローする。
②:このカード以外の自分フィールドのモンスター１体と自分の墓地の「炎王獣」モンスター１体を対象として発動できる。対象の自分フィールドのモンスターを破壊し、対象の墓地のモンスターを特殊召喚する。


火群「…まだまだ…！！ ダンディの効果で、俺の場のガルド・イモータルを破壊し、墓地のクリシュナを特殊召喚！[ATK 1200]

不死鳥は再び地へとその身を沈めるが、直後、火山の噴火の如く火柱が勢いよく吹き出した。

火群「…ガルド・イモータルは破壊されてもエクストラデッキに表側で戻るーーーーそして破壊されたガルド・イモータルの効果発動！！ 自身の攻撃力を１０００アップさせて特殊召喚する！！

真和「…く……ッ…！」


火群「これが、倒れたって何度でも立ち上がる……俺たちの不滅の炎だ…ッ…！！
ーーー〝フレイミング・イン・モータル〟！！」

火柱の中より不死鳥は再びフィールドに姿を現し、金色の炎が瞬く様に燃えて輝くーーーー

ニクス『…はぁぁぁぁあぁぁぁっっ！！』[ATK 2700→3700]

火群「…更に…ッ！！ この効果で特殊召喚されたガルド・イモータルの効果…！！
俺の場のダンディ、ヴィシュヌの２体を破壊する！！」

火群の場の２体のモンスターが炎と変わり、黄金纏う不死鳥の周囲を旋回し始める。

火群「そして破壊した自分のカードの数まで、相手フィールドのカードを選んで破壊する！！」

真和「ーーーーッ…！」

不滅の焔・ガルド・イモータルが翼を一薙ぎすると、周囲を旋回していた炎弾が真和の場のカード目掛けて勢い良く飛んでいき、『クリフォート・ゲニウス』、そして『ブンボーグ００３』へと着弾。爆煙が辺りを包む中で、続けざまに火群の墓地から炎が登る。

火群「……破壊されたヴィシュヌの効果！！
白炎よーーーー不死鳥に宿れッ！！」


『炎王神獣 ガルド・イモータル』
効果付与→
⚫︎1ターンに1度、相手がカードの効果を発動した時に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。その効果は、「お互いに500ダメージを受ける」となる。


火群「…今度こそーーーーここで決める…ッッ！！」


真和「……先程までとはまるで面構えが違う……、甘い感情は捨て去ったようだなーーーー」

両手を広げ、全てを受け入れる体制をとる真和。

火群「ーーーーバトルフェイズ」

バトルフェイズの宣言がされ、まずはクリシュナによる攻撃が真和を襲う。

『炎王獣 クリシュナ』[ATK 1200]

クリシュナの持つ笛の音は炎となって真和の腕、足、胴へと降りかかった。

真和「……がっ…ふァ…ッ！！」【LP 3900→2700]

自らの宣言した攻撃で苦しむ真和を見て、火群は涙を流しながら歯を食いしばり、胸をおさえつける。
しかし目は決して逸らさない。

逃げないと、決めたから。


『炎王神獣 ガルド・イモータル』[ATK 3700]

火群「…ガルド・イモータルの攻撃ーーーー」

僅かに震える声で、


火群「ーーーーー
ﾊﾞ-ﾆﾝｶﾞﾙﾄﾞ・ｲﾝ・ﾓ-ﾀﾙ
〝不死鳥の滅焔翼〟ッッ！！！」


この決闘に終止符を打った。





真和「ーーーーーッッ」【LP 2700→0】



真和（……これがーーーーー人間と精霊の……絆の力ーーーーー）


どんな数式にも当てはまらない。
数字などでは決して推し計れない。

姉と弟ーーーーー家族の絆。



真和「ーーーー合格だ」




◉Winner◉
-市瀬 火群・ニクス-






＊＊＊




真和「ーーーーーお前の大切な友人、『桜庭和泉』、そして『桜庭結維』は、確かにこの生命の樹の内部にいる」

ところどころ焼け焦げたスーツ、乱れた七三分け、ヒビの入った眼鏡。
無残な姿で仰向けに倒れる真和は、駆け寄る火群にそう言った。

火群「…！！」

火群は一瞬足を止め、それからまたゆっくりと真和の方へ足を進める。

火群「…やっぱり、終焉の焔が……ッ…和泉をここへ……それに結維さんも…！
でもどうして…！」

和泉の所在の確定。そして結維もこの樹の中に居るという事実が分かったことを嬉しく思う反面、先程まで無理して抑えていた不安な気持ちが急に押し寄せてきていた。
早く助けに行かないと。はやる気持ちを抑えつつ、しかし今は真和から可能な限り情報を聞き出さなくてはならない。

火群「…一体……二人を何の為にーーーー」


真和「……桜庭和泉は……、終焉の焔が回収した精霊達の器となるべく、この『基礎の間』の真上に位置する『美の間』に幽閉されている」


火群「…ッ…！！ 精霊の…器……っ…！？」

真和「……適合者の選別にはとても苦労した…。
なにせ並大抵の人間では、精霊の持つエネルギーに身体が耐えきれずパンクしてしまうからな……」

ニクス『……っ…』


真和「ーーーー〝精霊憑依体質〟」


ふと、発せられたその単語に火群とニクス、二人は肩を揺らし目を見開く。

火群「……ッ……え……？」

ニクス『……ッ………』


真和「…その様子だと、聞いた事はあるみたいだな…ーーーーー桜庭はその体質を持って生まれた……精霊憑依体質者だ」


火群「……は…っ…？
嘘……だろ…？」

だって、それは。

ニクス『……』

ニクスーーーー否。
火群の姉、市瀬 炎花(いちせ ほのか)と同じ体質をもって生まれたという事。

そしてやがては、炎花と同じ運命を辿るかもしれないという事。

火群「…待てよ……ッ…そんな事……和泉は一言もーーーーー」

真和「……恐らく、本人も知らなかったはずだ。
人間界でこの事実を知る者は、桜庭の両親、半身である結維、彼女の精霊である闇口 千愛(やみぐち ちあ)、そして精霊の動きをレーダーで感知できる我々…“終焉の焔”だけだ」

火群「……！！」

ニクス『…柏木瑞希が和泉に声をかけたのも……和泉が精霊の器として本当に相応しいかを測るため……だとでもいうのか…ッ…』

真和「……そうだ」

ニクス『……和泉を攫ったのも、柏木瑞希なのか…？』

真和「…………ああ、彼女と機兵の数体で、桜庭和泉、桜庭結維、二人をこの生命の樹へと連れ去った。
最も、桜庭結維に関してはおまけの様なものだったが…」

怒りを見せ始めるニクス。真和は淡々と答える。

ニクス『……ッ…、和泉は…、結維は…っ、千愛は…ッ…！ ……まだ無事なのだろうな』

真和「……ああ。千愛と結維には眠ってもらっているだけだ。
和泉に関しても、精霊を完全に吸収し終えるには少なくともあと１時間はかかる。
…それまでに精霊を供給している装置を破壊すれば、まだ助かる見込みはあるだろう…」

火群「…！！」

１時間なら、十分間に合う。
拳を固く握り、『美の間』へと続く道を見つめる火群。

真和「…急げ、市瀬……手遅れになる前にーーーーー」

そう言う真和の身体は淡く発光し、無数の光の粒子を放出し始めていた。

火群「……！！ 先生…ッ…！？」

真和「………どうやら、ここで敗北した者は、この神星樹の養分となるらしいーーーーー」

火群「！？ そんな…ッ…！ ふざ…けんなよ…ッ！！」

火群は真和の傍に膝をつき、涙声で叫ぶ。

真和「……市瀬…、何を泣く必要がある……？
僕は君の大切なモノをいくつも傷つけてきた……死に際に涙を流される筋合いなどない…ッ……」

火群「…確かに、俺は先生の事を許すことなんてできない…！ けどーーーーたとえ誰であろうと……っ…目の前で消えて行く命を悲しむのは当然の事だろ…ッ…！？」

ポツ、ポツ、と、涙が溢れ、真和の真横で雫となって弾ける。

真和「……フッ……」

火群の言葉を受け、真和は小さく笑うと、

真和「…僕は大きな勘違いをしていたみたいだ」

そう言いながら、左手で火群の頭にそっと手を置いた。

火群「…っ……！」

真和「………『マイン様』を……いや、『マイン』を救う為には…、君の様な純粋な心が必要だった訳か…………」

火群「……え…っ…？」


真和「……さぁ、これ以上僕になど構うな…。
まずは大切な友人の元へ一刻も早く行ってやれ。
……そして、『マイン』をーーーー世界最悪の『問題児』をーーーー更生させてやってくれ」

僕にできなかった事を、君が成すんだ。

と、真和は消え入りそうな声で言う。


火群「…先生…ッ…！！」

ニクス『……っ…………！』


真和「………こんなどうしようもない僕でさえ、君はまだ“先生”と呼んでくれるんだな……。
ーーーーーありがとう。市瀬」


ーーーーさよならだ。


最期の瞬間に真和が見せた穏やかな笑顔。
それを見て火群は初めて理解した。

真和が何の為に戦い。

何の為に生きてきたのかを。

火群「…先生がマインの為に戦ってきたのは……マインを救い…この世界を救う為ーーーーー」

もっと、違う方法は無かったのだろうか。
そんなこと、今考えていても仕方がない事なのだけれど。

火群「……」

無数に散らばった光の粒子を眺めながら、火群は立ち上がる。

ニクス『ーーーーホムラ』

火群「………ああ、行こう。姉さん」


和泉のところへ。





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２１２ 限界






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙