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HOME > 遊戯王SS一覧 > 6 Machine VS Ghost

6 Machine VS Ghost 作:ター坊


綾那の口から語られる部活潰し―それは去年の末から始まった事らしい。ある時は成績不振としての解散宣告、またある時は経費削減を理由とする仕分け、またまたある時は部員の不祥事によって…などなど理由は様々だが料理研究部やボードゲーム同好会など4つくらい部活・同好会が立て続けになくなっている。唯一共通していることは廃部の少し前に生徒会顧問兼生活指導の鶴見―あの堅物そうな女教師が訪れ、暫くして通告する、ということなのだ。
「その部活潰しを鶴見先生がやってるんですか?」
「パパ…じゃなかった校長先生にも伝えようかしら…」
「ううん。廃部の直前に鶴見先生が来て言ってるってことで噂になっただけで、直接やってるっていう証拠は…」
鶴見先生の綾那に対する罵倒とも取れる発言に遊希達は怒り心頭だったが、あくまで噂だけであり、仕事上のことかも知れないので完全に悪人・犯人と断ずることもできない。
それからあーだこーだと話し合ったが結論は出ず、暗く重い雰囲気のままお開きとなって遊路達は部室を出た。
「…」
「遊路様?」
「どうしたの?難しい顔して」
「いや。何でもない…」






翌日の放課後。この日も部活動の見学をする事した遊路達は、今度は別々に廻ることとした。
美羽は部活の一覧を見たときから興味があった部室の前に来ていた。
「失礼します」
美羽は挨拶を忘れずに入室するがその声に返答する者はいない。

カリカリカリカリ…

部員全員が机に向かって紙にペンを走らせていた。そう、ここは漫画研究会である。
(ああ…)
その特有の雰囲気を理解した美羽はそぉっと手近な席の部員の後ろに立つ。その部員は茶髪のショートで横顔は欧米っぽい外国人である。
(おぉ…。凄い上手)
その外国人が一心不乱で描いているのはアメコミ風のイラストで、筋肉質なヒーローが怪人を刀で一刀両断に切り捨てる様子がまざまざと描写されていた。
「…ワォ!!ドチラ様デスカ!?」
「んん?なんだその子は!?」
「新入生か?」
一段落してペンを止めた外国人が背後に立つ美羽に気付いて大声を挙げると、それに釣られて他の部員も騒がしくなる。
「あ、すみません…」
ちょっとした一騒動になって美羽は一礼をして謝った。




美羽の夢はカードのイラストレーターであるため絵の技量は高く、趣味として漫画を描くこともあった。部員達に何か描いてみてと言われて美羽は二つ返事でササッと用紙に適当なコマ割りと人を描いていく。
「こ、これは…」
「イイ…」
美羽が描いてみせたのは細い長方形の上のコマに赤らみながら瞳を開ける少女の目周辺部分、それに続く下の大きいコマではズームアウトして少女の全体像を映しながら小さい吹き出しで大好きと言わせる、という構図である。意を決して告白相手の顔を見据えるも恥ずかしくて声を震わせながら勇気を振り絞って告白する少女の初々しさと健気さが伝わる温かみあるタッチのイラストに部員は沸き、即戦力と持て囃す。
「凄イデスネ!コンナ少女マンガチック描ケナイノデ羨マシイデス」
「ありがとうございます。日本語上手ですね」
「私2年ノ スティーブン・ベルマー 言イマス。日本住ンデマダ1年ダカラ マダマダデス」
スティーブンはやや大袈裟な身振り手振りで話すが日本人っぽい謙虚さが備わっており、美羽としてはなかなか親しみやすかった。
「この漫画のキャラってやっぱりオリジナルですか?」
「イェース!コレ サムライマン 言イマス。日本ノ侍メチャクールダカラ ヒーローニ シマシタ!ドウデスカ?」
スティーブンはそう言って美羽に自身が描いている原稿の束を渡した。美羽は原稿をゆっくりパラパラ読み進めていく。
「…そうですね…私はこういう筋肉は上手に描けないから単純に凄いなって思います。それにストーリーもストレートな勧善懲悪だから変に凝って拗らせたものより読みやすくて頭にスッと入りやすいです」
「オゥ、ソウデスカ?」
美羽も外国人だからとか部員だからというお世辞ではなく、本当に技量が高いからこうもベタ褒めなのである。そんな盛り上がりを見せる中で部長も会話に入ってくる。
「あの、桜城 美羽さん…だったかしら?」
「はい」
「私は部長の藤吉 百合江って言うんだけど、どう?ウチに入らない?実は今 夏のコミケに向けて…部誌を作っているのだけど貴方がさっき見せてくれた絵のレベルだったら充分載せられるって太鼓判押せちゃうわ!どう?やらない?」
「えっと…」(困ったなぁ…。よくよく考えたら1ヶ月半しかいられないのに…かと言ってここまでノリ良くやって入りませんって断るのも…)
美羽は押し気味にくる藤吉に若干たじろぎつつ思考を巡らせると…

ガチャ

不意にドアが開く。そして昨日の再現のように威圧的なあの教師が入ってきた。
「全く。この部活も相変わらず無駄ね」
「うっ、鶴見先生…」
入ってくるなり嫌味を流す鶴見に部員全員苦虫を噛み潰したような顔にならざるを得ない。
「あの…少し前にも来てましたけど今日はどういうご用件で…」
「用件も何も。この部活動の廃部を宣告に来たのよ」
「ええっ!?」
部員一同驚きと落胆に染まる。しかも検討などの余地もなく廃部と決定事項のような物言いである。
「ま、待ってください!私達も次の夏の即売会用の作品を製作中でして…」
「それが無駄なのですよ。そんなくだらない部誌の製作費、即売会だかの出店料…全て学園の費用から捻出しているのは承知しているのかしら?」
「…」
「これほど無意味な部活動、この学園に相応しくないわ」
「マ、待ッテクダサイ!」
部員達が沈む中、スティーブンが声を張り上げる。
「漫画ハ無意味ナモノジャナイデス!私、日本ノ漫画ヲ見テ憧レテ日本ニ来マシタ!漫画ヲ描クコトダッテ立派ナ活動ノハズデス!!」
「ほぅ。…そこまで言うのであればこの学園のルールで決めますか?」
不敵な笑みを浮かべる鶴見に美羽も部員達も背筋がゾクッとした。







「さぁこれでトドメよ。『サイファー・スカウター』で『真六武衆―カゲキ』を攻撃!!」

サイファー・スカウター ATK 3350 VS 真六武衆―カゲキ ATK 200

「ガッテーム!!」

スティーブン:LP 2100→0

鶴見が出した条件、それは3回デュエルを行って1勝でも勝利すれば廃部は撤回するというものである。急遽行われたためデュエルディスクを使わずカードをテーブルに並べる味気ないものだが部活動の存続を賭けている以上、漫画研究会は必死に挑む。しかし鶴見も教師だけあって強く、2種類のデッキを使いこなして部長・スティーブンと2タテを決めてしまった。
「ソンナ…」
「ふん。漫画なんてくだらないものにかまけているからデュエルの腕が落ちるのよ。…さて、チャンスはあと1回。最後は誰が挑むのかしら?」
鶴見の顔は教師というより奴隷を踏みつけて悦に浸る下劣な女王であり、生徒の懸命な想いを嘲笑うようであった。そんな下衆な笑顔に部員たちは唇をギュッと噛み締めるがこうも実力差を見せつけられてはぐうの音も出ず、次に名乗り出る者は現れない。
「…私が行きます」
「貴方は昨日アイドル研究会にいた…」
「2年生の桜城美羽です。漫画研究会に入部希望で、まだ正式な部員ではないのですが資格はありますか?」
美羽がスッと前に出る。
「…まぁ、他に名乗り出ないならば良いでしょう。…それにしても貴方達も惨めね。こんな入部希望の他人に存続を委ねるなんて」
美羽がこうして前に出たのは漫画を侮辱されて腹を立てたからという事もあるが、鶴見が浮かべる邪悪な笑みがかつて自分をいじめていたクラスメイトに重なったからでもある。
「よろしくお願いします」(こんな奴に、絶対負けない!)
1年前の異世界の冒険を経た美羽にとって、かつていじめられた恐怖はいじめへの憤怒に既に転化されており、丁寧な言葉とは裏腹に内心を真っ赤に燃やしてテーブルに着く。
「では行きましょうか」
「よろしくお願いします」


「「デュエル!!」」

ジャンケンの結果、鶴見からの先攻となる。
「私のターン、手札から『D・モバホン』を召喚」
「ディフォーマー…」
鶴見が繰り出したのは電化製品等をモチーフとしたディフォーマー、小粒なモンスターが多いがその分小回りが利きなかなかの回転を見せるカテゴリである。
「魔法カード『機械複製術』によってデッキからモバホン2体を特殊召喚。最初にいたモバホンの効果でサイコロを振る」

コロコロコロ…4!

「これで4枚めくり…その中から『D・ラジカッセン』を守備表示で特殊召喚。さらに第2のモバホンの効果で再びサイコロを振る」

コロコロコロ…3!

「3枚めくり今度は『D・リモコン』を特殊召喚。私は効果を発動させたモバホン2体でオーバーレイ。エクシーズ召喚、ランク1『森羅の姫芽宮』。姫芽宮の効果でオーバーレイユニットを取り除き、デッキトップを確認」

ペラッ『ジャンクBOX』

「魔法カードのため、手札に。リモコンの効果でモバホンを除外し、デッキから『D・スマホン』を手札に。レベル4のラジカッセンにレベル3のチューナー リモコンをチューニング。レベル7『スクラップ・デスデーモン』。墓地のリモコンを除外してスマホンを特殊召喚。スマホンの効果でサイコロを振る」

コロコロコロ…6!

「6枚めくって『D・ボードン』を手札に加える。さらにレベル7のデスデーモンにレベル1のスマホンをチューニング、レベル8『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』。第3のモバホンの効果でサイコロを振る」

コロコロコロ…3!

「これで『D・スコープン』を守備表示で特殊召喚。さらに『ジャンクBOX』を発動墓地からラジカッセンを特殊召喚。レベル1のモバホンとレベル4のラジカッセンに、レベル4になっているスコープンをチューニング、シンクロ召喚『灼銀の機竜』。カードを1枚セットしてターンエンド」
鶴見の長い先攻、終わってみればモンスター効果キラーのクリスタルウィング、モバホンの低攻撃力を晒さないようにシンクロ召喚した高打点・破壊効果・リカバリーが利くヴァーミリオン、補助役の姫芽宮、さらにはセットカードと磐石な布陣を敷かれてしまい、その上手札は2枚余っている。美羽としては1ターン目から苦境であり、応援するハズの漫画研究会からは早くも諦めムードが滲み始めていた。
「私のターン、ドロー」
しかし美羽はこの圧倒的不利な盤面を何とも思っていないのか、普通通りのプレイをしようとした時だった。
「美羽、お前何やってんだ?」
「鶴見先生…ということはやはり」
遊路や遊希等のいつものメンバーに加え、他にもゾロゾロと引き連れてきた。
「遊路、どうしてここに?それに後ろの人達は…」
「鶴見先生に訊ねたいことがあってな。後ろのは生徒会の連中だ。まぁデュエル中なら…後回しでいいや。…観戦させてもらうか」
「…うん」
遊路は直接口にはしないものの、美羽は温かく見守ってくれるその雰囲気を察し目がキッと鋭くなった。
「私のフィールドにカードが無いことでクリスタルウィングを対象に手札から『無限泡影』を発動」
「くっ!」
これで『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』を無力化したことで美羽はだいぶ動きやすくなった。
「さらに『手札抹殺』を発動!」
「ちっ!」
余程悔しいのか、鶴見は乱暴に手札を投げるように捨てた。

鶴見が捨てた手札
『幽鬼うさぎ』
『エフェクト・ヴェーラー』

美羽が捨てた手札
『馬頭鬼』
『ゾンビ・マスター』
『不知火の宮司』
『不知火の隠者』

鶴見は二重の意味で内心動揺していた。1つは強力な手札誘発を捨てられた事。確実に美羽の手を止められると確信したのに一気にご破算となった。もう1つは不知火という聞き慣れないカード。鶴見としては確認をしたいが教師として無知を晒したくないというプライドと妨害札を失って展開を止めようがないという諦めからしなかった。
「私は手札からフィールド魔法『不知火流 転生の陣』を発動します。これの効果を使って手札から『ヴェンデット・コア』を墓地に送り、墓地から守備力0のアンデット族モンスター、『ゾンビ・マスター』を特殊召喚します」
「アンデット族のデッキかしら」
「はい。でも普通とは違いますよ。私は『ゾンビ・マスター』の効果で手札から『牛頭鬼』を墓地に送り、そのまま『牛頭鬼』を特殊召喚します。『牛頭鬼』の効果でデッキから『馬頭鬼』を墓地に。レベル4の『牛頭鬼』と『ゾンビ・マスター』2体でオーバーレイ。『ライトロード・セイント ミネルバ』をエクシーズ召喚します。ミネルバのオーバーレイユニットを1つ使ってデッキの上から3枚墓地に送らせれもらいます」

ペラッ
『不知火の武士』
『死者蘇生』
『妖刀―不知火』

「墓地の『馬頭鬼』を除外して墓地の『不知火の隠者』を特殊召喚させてもらいます。隠者をリリースして効果を発動、デッキから守備力0のアンデット族チューナー『ユニゾンビ』を特殊召喚します。『ユニゾンビ』の効果でデッキから『馬頭鬼』を墓地に送って自身のレベルを1つアップ。『馬頭鬼』を除外して『ゾンビ・マスター』を特殊召喚」
「これでレベル8かしら?」
「いいえ。墓地の『不知火の武士』を除外して『ヴェンデット・コア』を特殊召喚します。それと除外された武士の効果で墓地の『妖刀―不知火』を手札に加えます。手札に加えた『妖刀―不知火』を捨てて『ゾンビ・マスター』の効果で『妖刀―不知火』を特殊召喚。ここで私はレベル1の『ヴェンデット・コア』とレベル4の『ゾンビ・マスター』にレベル4の『ユニゾンビ』をチューニング、シンクロ召喚『ミスト・ウォーム』。『ミスト・ウォーム』の効果でクリスタルウィングと『灼銀の機竜』、そのセットカードをバウンスします」
「…っ」
声には出さないものの、鶴見は自分の完璧と信じた布陣が簡単に崩れた事に苛立ちを募らせているのは目に見えていた。その様子を遊路達や漫画研究会の面々はざまぁみろという痛快さと教師のクセにメタクソにやられてるぞという嘲りとが混じる表情で眺めていた。
「おい、風峰。遊月のバージェストマみたくあの不知火って言うのも」
「ああ。あれもテストプレイ用のデッキをカスタマイズしたものさ」
「ったく。お前達は一体何者なんだよ?」
「さぁ?」
朱里那の呆れに遊路は思わせ振りな微笑みを浮かべる。美羽が使う不知火は遊月のバージェストマと同じくまだ一般には発売されていないカード群で、本来墓地の除外に弱い従来のアンデットとは違いむしろ除外する事でアドバンテージを稼ぐデッキである。
「まだいきます。今度はレベル9の『ミスト・ウォーム』にレベル2の『妖刀―不知火』をチューニングして『星態龍』をシンクロ召喚。さらに永続魔法『不知火流 伝承の陣』を発動し、墓地の宮司を除外してこのターン、アンデット族の召喚・特殊召喚は無効にされません」
「今さら…まさか、その宮司も」
「はい。宮司は除外されることでフィールドの表側表示のカード1枚を破壊します。破壊するのは当然残っている『森羅の姫芽宮』です」
「けどそのモンスター達の打点では…はっ!」
フィールドはがら空きになったが今の打点ではLPを削りきれないと鶴見は一瞬高を括るがすぐにある事実に気付いたのだ。
「ええ。私はまだ召喚権を使ってませんよ。私は『不知火の物部』を召喚してデッキから『逢魔ノ妖刀―不知火』を特殊召喚し、チューニング。レベル7の『妖神―不知火』をシンクロ召喚」
これで3体だが攻撃力の合計は7300。まだ少し足りない。
「これが最後です。『妖神―不知火』の効果で墓地の隠者を除外して自身の攻撃力を300アップ。そして隠者が除外され私のフィールドに『不知火流 転生の陣』が存在することで除外されている『不知火の宮司』と武士を特殊召喚。全部のモンスターでダイレクトアタック!」

不知火の宮司 ATK 1500 + 不知火の武士 ATK 1800 + ライトロード・セイント ミネルバ ATK 2000 + 妖神―不知火 ATK 2400 + 星態龍 ATK 3200 直接攻撃

鶴見:LP 8000→0





「うおっし!!」
美羽の総攻撃が決まった瞬間、漫画研究会の全員が歓喜の声とガッツポーズを挙げる。一方の負けた鶴見はバンと机を叩いて立ち上がる。
「桜城さん、貴方はこれらのカードをどのように入手したのかしら?」
「えっ…」
「このデュエルはまだ未発売のカードを使ったイカサマ、よって私の不戦勝よ」
「はぁっ~!?何言ってんのよ!」
鶴見のとんでもない言い掛かりに丁寧な姿勢を崩さないでいた美羽も声を大にして不平を叫ぶ。
「第一、墓地の落ち方も作為的なものを感じたわ。イカサマをしてまで存続させる部活など無意味、とっとと…」
「鶴見先生、少しよろしいでしょうか?」
「遊路…」
喚く鶴見と美羽の間に遊路が割って入って前に出る。
「何?貴方もイカサマの片棒を担ぐのかしら?」
「いいえ滅相もありません。私達は校長とKC直々に新カードのテストプレイヤーに選ばれましたが、確かに他人が持っていないカードを使うという点では公平さがないと言うのはごもっともな御指摘です」
遊路はやけに芝居がかった口調で大袈裟に謝る。
「なら…」
「ですが、み…桜城さんがイカサマというのであればそちらもイカサマしたということで引き分けということでどうでしょう?」
「何!?私がイカサマ!?教師をイカサマ呼ばわりとは…」
「これでもですか?少し拝借します」
そう言って遊路は鶴見のカードである『幽鬼うさぎ』と『D・ラジカッセン』を手に取って重ねてみせた。
「なっ」
「あっ!」
パッと見では分からないが2枚を重ねて目を凝らして比べると『幽鬼うさぎ』のカードの短い方の辺の長さがほんの数ミリ足りないのである。これを突き付け遊路は鶴見を問い詰める。
「これはカッティングによるマーキング、立派なイカサマですよね?」
「これは使い古してるから多少の磨耗はあるでしょうよ。そんなの言い掛かりだわ」
「うーん。カードの痛みを全然気にしないのはそれはそれでデュエルの教師としてどうかと思いますがね」
「論点を反らさないでちょうだい」
「おっと、申し訳ありません。ではこれについてはどうでしょうか?」
遊路の追求は続き、今度は2枚の紙を取り出した。その紙は何かの表が書かれていた。
「そこの外国人さん。この2枚を見比べて違うところはありますか?」
「ン?私デスカ?」
遊路はスティーブンにその2枚の紙を渡した。
「フム…ン?コッチノ紙ノ方ガ枠多イデスネ」
「ありがとうございます。鶴見先生。これは何なのか、お分かりですよねぇ?」
「…!?」
紙を見せられた途端、余裕ぶっていた鶴見の顔に皺が走る。遊路は一瞬してやったりと笑みを浮かべる。
「これは前期の生徒会予算案の内、部費の内訳を示したものです。枠の多い方が校長先生に提出されたもの。少ない方が生徒会の控え用です」
アカデミアでは部や委員の代表が集まる生徒総会で予算案を組み、生徒会顧問の承認が下ると校長に提出されて部費などが分配される仕組みになっている。そこで校長に提出する用のものと生徒会の記録用に保管するものとで同じ用紙が2枚存在するのである。しかし、示した通り両者に違いがあるのは何故なのであろうか。
「何故、それを…」
「天都さんと星乃さんのおかげですよ。…さて、鶴見先生。お伺いますが、どうして校長先生への提出用の方には既に廃部になった筈の料理研究部・相撲部・ボードゲーム同好会・漫才研究会の部費が計上されているのでしょうか?そもそもどうして提出用と控え用で違いがあるのでしょうか?」
「っ!」
「これら廃部になっているはずの部活に分配されている部費、トータル110万円は何処に行ったのでしょうか?納得のいく説明をお願いします」
淡々としつつも煽るような物言いで遊路は鶴見に畳み掛ける。
「もしミスだと言うのなら先程のように生徒会とは特に関わりがない人が見てもすぐに気付く簡単なミス…生徒会の顧問である貴方がそのミスを見逃して校長先生に提出するとは思えません。それと廃部を言い渡したのも貴方自身らしいので廃部になったのを知らなかったとも考えられません」
「…」
沈黙。生徒達からは疑惑の視線が鶴見に突き刺さりまくる。
「黙(だんま)りですか?それじゃあ単刀直入にお伺いします。鶴見先生、貴方は部費を横領しましたね?」
遊路の指摘に鶴見は再び机が壊れんばかりの勢いで叩き立ち上がった。
「いいえでっち上げよ!私を嵌めて正義の味方気取りか!?私は学園経営の効率化と名声を高めるために無駄な部活動廃止を奨めてきたのよ!!」
「学園のため?いえいえ自分の懐を温めるためでしょう。…会計の彼を脅してまで偽の控えを作らせて」
「なっ、よくも…!」
「ひっ!!」
鶴見が遊路の後方にいる会計の男子生徒を睨んだ瞬間、遊路の勝利は確定した。
「…やはり脅してましたか」
「なっ、まさか…!」
「ええ。カマを掛けさせてもらいました。やっぱり内申点を落とすぞとか推薦なくすぞとかですか?」
「くっ…、こんな事をしてタダで済むと思っているのか!!」
「そちらこそ。これ以上、何か仰りたいことはありますか?確かに部活動の中には趣味や遊びの類いに見えるものがあるのかもしれません。しかしそれに取り組みたいと真剣に思って作り上げた部活とそこに集まった人達の情熱を踏みにじった行い、きっとお金で済まないくらい罪が重いですよ」











それから、そう日にちを空けずに部費横領事件は竜司にも伝わり、鶴見は解雇されることとなった。テレビでニュースになったりもしたが人の噂も七十五日、いや実際には1週間も経たない内に世間の関心は消えていた。
壮絶な事件の現場となった漫画研究会の部室には美羽と遊路の姿があった。
「ん?何かこのキャラ俺に似てないか?」
「えっ?うん…まぁ…、好きな人の顔ならやる気が出るっていうか…」
「ふっ…コイツめ」
美羽は云わば漫画研究会の存続を守った救世主ということで短期間(近々転校するということを話して)ながら入部を許された。そこに遊路が遊びに来ているのだ。
「ヘイ、アニキ!」
「スティーブンどうした?」
部員として美羽と最初に話したスティーブンは同様に部を守ってくれた遊路も気に入りアニキ(本人としては最大限の敬意の表明)と呼んで友達になっていた。
「私ノ サムライマンノ 相棒トシテ、アニキガ モデルノキャラ描キマシタ!」
「え、俺がモデル?」
「イェース!知略ヲ以テ サムライマンヲサポートスル天才私立探偵・ユージェイ デース!アノ時ノ アニキハ本物ノ探偵ミタイデ クールデシタ!」
「俺が探偵か…少し照れるな」
平和となった漫画研究会は今日も慌ただしい。





次回予告

美羽「今日はお便りが届いてるよ。PNハワイの騎士さん、『僕はアニメやマンガのロリキャラが好きです。とはいえ現実の幼女に手を出すと犯罪な訳で…どうにかなりませんか?』だって」
綾香「そこで私に答えさせるって悪意のあるキャスティングなんだけど」
美羽「まぁそう言わずに」
綾香「そうね…年齢差はやっぱり気にしないとね。…そういえば9歳差の歩美ちゃん…可愛かったなぁ…。今は小学3年生かぁ…」ウヘヘ
美羽「ダメだコイツ、早くなんとかしないと…。ほっといて予告しよ。次回『Dangerous Prince』。お楽しみに!」
遊路「…ちなみに同じ9歳差でも80のおじいちゃんと71のおばあちゃんって、夫婦でも違和感ないよな」
綾香・美羽「た、確かに!!」



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ギガプラント
普通に悪どい先生でした。しかしまた色々と詰めが甘いのがまた小者くさい…。
遊路先生は頭もきれるので探偵役も似合いますね。こういった役回りで何か書いてみたい気もします。
片方はイカサマしていたとはいえ凄まじいブン回りっぷりでした。ディフォーマーってソリテアできるんですね…。ocgからは離れがちだったので新鮮でした。 (2019-03-21 13:40)
ター坊
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。
『遊戯王世界ではロクな大人が少ない説』ですね。原作やアニメでも退学魔女リンの蝶野や嫌味な鶴岡(鶴見の名前はこの人から来てます)、序盤のクロノス・鷹栖などダメな大人が多いので悪徳教師を入れました。詰めが甘い、というよりも刑事ドラマばりに伏線やら証拠集めのシーンを入れたら趣旨が変わってくるのでアッサリ解決できるように加減しました。元々推理ものは苦手なので。
ディフォーマーは龍亞が使うカテゴリなので大したことがないイメージですが、モバホンのサイコロ効果に回数制限が無いことや低レベル・(たいてい)機械族とサポートが多いなどの理由でポテンシャルは遊星(ジャンク)やクロウ(BF)に迫るかと思います(※個人的な感想です)。 (2019-03-21 14:28)
ヒラーズ
おお、ゲスいゲスい。
でもこのクソ教師もイカサマ。
やり方が若干ジョジョに似てますね。
すごい。次回が気になるばかり。 (2019-03-21 16:47)
ター坊
ヒラーズさん、コメントありがとうございます。
部活を理不尽に廃部にする→教師として最低
カードを切断(しかも幽鬼うさぎ)するイカサマ→デュエリストとして最低
学園のお金を横領→人間として最低
ゲロ以下のにおいがプンプンするぜ!
遊月→美羽とカオジェネ組のメイン回が続き、次回の危ない王子様は誰のことを指すのか?遊路?それとも別な誰か?
(2019-03-21 18:19)
光芒
やだ、セントラル校腐敗し過ぎ……相次ぐ不祥事に竜司の胃薬消費量がマックスになりそうです。それでもデュエルは中々見応えのあるデュエルでした。【ディフォーマー】ってこんなに回るんですね。アニメ終了後にも多少テコ入れがあったのは知っていましたが、使用者の関係上ファンデッキかと思っていました。
それにしても横領って普通に犯罪なのに解雇で済むものなのでしょうかね。逮捕案件だと思いますが……そこは海馬コーポレーションとかの力で鎮火したんだと思いますが。

前回の朱里奈といい今回のスティーヴンといいナイスなオリキャラが多いですね。二部以降で出してみたくなる(なお

>綾香「そうね…年齢差はやっぱり気にしないとね。…そういえば9歳差の歩美ちゃん…可愛かったなぁ…。今は小学3年生かぁ…」ウヘヘ
こいつェ! (2019-03-22 01:10)
ター坊
光芒さん、コメントありがとうございます。
サイコロの運にもよりますが、ディフォーマーは舐めたら死 ぬレベルですね。他にもラジオン並べての超強化とかボードンでディフォーマー総ダイレクトアタックとか意外と勝ち筋が多く、先輩とやった時には全然勝てなかった。龍亞もガチ組みしたらジャックくらい簡単に潰せそうです。
解雇云々は結構大雑把ですね。細かく考えるとあれなので。
スティーブンはともかく朱里那はとある事情で学園去っちゃうんですよね(泣) 続編の第二部ではスティーブンは3年生…どうなるのやら。
やはりロリ乃さんというか…このネタは何処かで入れたかったので。まぁわた天のみゃー姉みたいな可愛い感じなのでね?
(2019-03-22 01:42)

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