遊☆戯☆王Twin Deaths【月一更新】/第3話:魂、懸けます 作:とうかいりん

~前回までのあらすじ~
凪 遊良の死神としての初仕事。しかしその相手は亜利沙の部下を何人も手にかけた強力な悪霊「Dna」。【剛鬼】を使ったデュエルタクティクスに圧倒されながらも【憎悪の勇者】の道連れ効果によりライフポイントの上では互角の戦いを見せる。
一方、亜利沙が逃がしたはずの四阿いつきは……?





「あれが、凪くんじゃない……?」


 亜利沙から「遊良とは何の関係もない」と諭されたが、いつきはそれに納得していなかった。ローブを被っていたため直接顔を見ることは出来なかったが、声色、身長、体格など、生前の特徴を先ほどの少年に当てはめれば99%の確率で遊良であると断定できる。残り1%の可能性を彼女の経験からドッペルゲンガー、双子の兄弟など、あれこれ考えてはみたが、どれも納得のいくものではなかった。このままでは帰るに帰れなくなったいつきは、彼の正体を確かめるために先ほどの場所へ走った。





*TURN03
(……マズい。このターンでグレート・オーガを対処できないと、負ける……!)


 第3ターン目。最近のデュエルは「後攻1キル」という言葉があるように高速化が図られており、短時間で勝敗が決することが多くなった。このデュエルもその例に漏れず、遊良はグレート・オーガのプレッシャーに押し潰されていた。
 今の手札は、デッキから「憎悪の勇者」をサーチできる魔法カード『マーリンの予言』1枚しかない。加えてそのカードには、サーチ後に400ダメージを受ける副次効果もついているため、ライフ差のあるこのターンで使えば、より戦況を悪化させかねないのだ。しかしこのドロー次第では使わざるを得ない。万事休すかと思ったその時、耳をつんざくほどの大声が遊良に飛んで来た。声の主は勿論、亜利沙だった。


「怯えるな!!」
「っ…」
「このドローを躊躇うくらいなら、私がこのデュエルを引き継ぐ。だが少年、もしそれで私が勝利したとして、お前に得るものがあるか?」
「……いえ」
「そう、何も無い。さてここで問題だ。現世に降り立つ前に私が集会で言ったことを覚えているか?」
「……魂を、懸けろ」


 魂を懸ける。生前の遊良は患っていた難病のために心血を注ぐほど熱中できたことが殆どなかったため、その言葉に対して拒絶の色を見せていた。しかし死神として蘇った今は、悪霊退治という目的のために自分の全てを懸けられる舞台に立っている。そこから逃げるような真似をすれば、その場に残るのは現世で過ごしてきた病院生活よりも虚しい、本当の意味での「抜け殻」だけ。
 死んで尚、現世で過ごした退屈で苦しい時間を繰り返すのか、それとも死神として亜利沙と共に魂を懸けることに情熱を注ぐのか。答えは明白だった。


「…行きます。ドロー!!」
「さあ少年、今こそお前の全てを懸ける時だ!」
「ドッペル魔法『ツイン・デス・ドロー』を発動!このカードの発動時、手札が1枚以下であればデッキから1枚ドローする!そして、ツイン・デス・ドローの効果発動!自分フィールドにドッペルモンスターが存在しない場合、メインモンスターゾーンの両端にドッペルモンスターを召喚する!!」






─────写し獲れ、2つの世界を生ける魂!『剛鬼ザ・グレート・オーガ』、捕縛完了!!─────






「「ドッペル召喚!!」」


 グレート・オーガの前に現れた巨大な鏡の中から伸びた黒い手がその影を奪い取る。その鏡が2つに分裂しながら遊良のフィールドに戻り、鏡の中から2体のドッペルゲンガーがグレート・オーガを象った状態で姿を現した……。


「怖っ!!なんだこのモンスター!?」
「これがドッペルモンスターだ。死神ならではの怪異さが滲み出ているだろう?」
「貞子も腰抜かすレベルなんですけど……」


 事前に何も知らされていないとはいえ、遊良の知っているどの召喚方法の中でも際立ってホラーテイスト且つ異色の存在であり、生前は幽霊やお化けといった類いのものが苦手だった彼にしてみればモンスターというよりも亡霊にしか見えなかった。


「グレート・オーガの効果!……何?攻撃力が下がらないだと!?」
「ドッペルモンスターが持つ元々の攻守は0。そしてリンクモンスターにも守備力は存在しない。よって、グレート・オーガとして扱われている2体のドッペルモンスターは、攻撃力を下げる効果を受けない!」
「クソがァ!」
「手札から魔法カード『マーリンの予言』を発動!デッキから『憎悪の勇者パーシヴァル』を手札に加え、400のダメージを受ける。そしてパーシヴァルの効果発動!墓地のベディヴィエールを手札に戻し、このカードを手札から特殊召喚!そしてお互いは、ベディヴィエールの攻撃力の半分のダメージを受ける。グッ…!!」
遊良→LP:1100
Dna→LP:2100


 依然としてライフポイントはDnaの方が上回っており、そのライフ差は1000。しかしパーシヴァルには、自らをリリースすることでライフポイントを1500回復する効果を持っている。その効果を使う前に、手札に戻したベディヴィエールを自身の効果で特殊召喚し、デッキから2体目の『憎悪の勇者ボールス』をスープレックスと同じ縦列に特殊召喚した。
 そしてこのタイミングでパーシヴァルのライフゲイン効果を使ったが、彼の狙いは速攻魔法『トリスタンの悲運』のもう1つの効果だ。「ヘイトレッドハート」がフィールドから墓地へ送られた場合に墓地からこのカードを除外することで、自分モンスター1体と同じ縦列に存在する相手のカードを全て破壊し、お互いが400ポイントのダメージを受ける効果によって、グレート・オーガの身代わり効果を封じることに成功した。


「クソッ……だが、その程度では倒れん!!」
「手札の『憎悪の勇者ランスロット』の効果発動!レベル5のベディヴィエールとレベル3のボールスを除外し、このカードを手札から特殊召喚する!」
「だがソイツもグレート・オーガの効果を受け、攻撃力がダウン!!」
「ランスロットの更なる効果発動!このカードをリリースし、俺のドッペルモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1250ポイントアップさせ、お互いにその数値分のダメージを受けるっ……!!」
遊良→LP:950
Dna→LP:450


 攻撃力2500、守備力2000を誇るランスロットは【憎悪の勇者】に於けるエースカードだが、グレート・オーガの効果を受けている故に高い攻撃力も500にまで下げられている。しかしこのカードには、自らをリリースすることで自軍のモンスター1体を強化する効果を持っているため、この状況には最適なのだ。
 初心者ながらここまでのデュエルタクティクスを披露した遊良に揺さぶりをかけようとしたDnaだが、その作戦が却って徒となることを頭に血が上っている状態で判断できるはずがなかった。


「クソがァ…!さっきの女を殺してからこの世界で過ごしてやろうと思ってたのに、その野望もこんな雑魚相手に…!」
「…おい、遺伝子野郎。今なんつった?」
「あァ!?テメェには関係ねぇだろ。あの女を殺し…」
「『殺す』って言葉を軽々しく使うな!!俺もいっぺん死んで、『生きてる』って、たったそれだけのことがどんだけ有難かったのかよく分かった。なのに……!命を軽んじるようなヤツが、簡単に人の命を奪うんじゃねぇ!!!」


 生前、難病に苦しめられた遊良は心無い同級生から「○ね」「病気がうつるから学校に来るな」等の悪口を執拗にかけられた。病気で心身ともに弱り切っている上に降りかかる、氷柱のように冷徹な言葉は彼にとってどれ程辛かったかは容易に想像できる。しかし祖母から「生死に関係する悪口は絶対に口に出してはいけない」と教えられた彼は、どれだけ酷いことを言われても決して相手に暴言を吐かなかった。
 Dnaは、死神となり命の重みをより強く実感している遊良の逆鱗に触れてしまった。こうなってはもう、何度命乞いをしようとも許されない。


「バトル!!ランスロットの効果で攻撃力が上乗せされたドッペルモンスターで、お前のグレート・オーガを攻撃!!」
「手札の『剛鬼マンジロック』の効果発動!このカードを手札から捨てることで、その戦闘ダメージを半分にする!!こんなところでくたばるわけには……!」
「無駄だ!!その効果を使ったとしても、お前のライフは尽きる!!」


 最後まで生きながらえようとしたものの、時既に遅し。1度に与えた戦闘ダメージはDnaが圧倒的に多かったが、遊良は1ターン目からこのターンのバトルフェイズ前まで効果ダメージを着実に積み重ね、ドッペルモンスターによるフィニッシュを可能にした。全てを懸けようと思ったその瞬間から、遊良の勝利は確定していたのだろう。
 デュエルは決着し、Dnaは超強力な電流を受け一瞬で気絶した。即座に亜利沙が札を貼り付け、無事にプリズンへの転送も完了したことで遊良のノルマは達成した。見習い階級の彼が始めに退治できる悪霊は1回の活動につき1体までと義務づけられており、低レベルの悪霊を10体退治すれば「駆け出し」階級に昇格できるのだが、より上級の悪霊を退治したことによって一発で昇格することに成功した。


「よくやったな、少年。初めてのデュエルでDnaに勝利するとは、なかなかの強運ではないか」
「正直、ツイン・デス・ドローを引けなかったら負けてまし……だっ!?」
「そこは『実力だ!』と訂正する所だろう。少しは強気になれ」


 どんな勝負事でもビギナーズラックは存在する。しかしその言葉に甘え謙遜してはいけないというのが亜利沙の信念であり、特に遊良のように自分を過小評価しがちな相手には今のように発破を掛けることも珍しくない。格上の階級だからといって壁を作ろうとせず、積極的に接していくことが出来るのも亜利沙が部下からの信頼が厚い証拠だ。
 報告のために未極へ帰ろうとしたその時、帰したはずのいつきが止めにかかった。遊良もデュエルの最中に彼女の正体に気付き、気まずさから少しの冷や汗が流れた。


「ねえ、ホントに凪くんじゃないの?」
「えっと、その……」
「言ったはずだ。この少年は凪くんではない。漣 弓弦(さざなみ ゆづる)という名の他人だ」
「……そう、ですか」
「最後の忠告だ。私達の存在は公にするな。そして、これからはこんな真夜中に出歩くな。お前の保護者も心配する」
「分かりました…」


 どうにか説得には成功したが、霊が見える彼女は今後も悪霊事変に巻き込まれる可能性が高い。ましてや死神として遊良が活動を続ける限り、彼の関係者への被害が及ぶことも考えられる。それを最小限に抑えるためにも、亜利沙が咄嗟に出した「漣 弓弦」という偽名で通さなければならなかったのだ。
 


「これから現世での生活を過ごすにあたり、あの女子のように少年のことを覚えている人間が現世にいる以上、本名で活動することは危険だ」
「だからさっき、あんな嘘を…」
「気に入らなかったか?」
「いえ。ホヅミ先輩って、意外とネーミングセンス高いんですね」
「余計なお世話だ」


 彼女の友人にも霊媒師が1人だけおり、巷では割と「悪い意味で」有名だった。実際に幽霊が見えると豪語していたものの殆どの人が半信半疑であり、早い段階から似非霊媒師というレッテルを貼られ非難の的になっていた。ところがある日、彼が潔白だったと証明される一大事件が起こった。その事件の主犯こそ亜利沙だったのだが、その内容は今の彼女からは考えられないほど幼稚なもの───バラエティ企画で有名な「ドッキリ大作戦」だった。
 その一件以降、現世では霊の存在が是認されてしまい、問題を起こした彼女には重罪として200年間の外出禁止令が下され、本名で名乗ることも禁じられた。故に今現在、彼女の本名を知っているものは誰一人として存在しない。



 未極に帰った遊良達2人は、今後の活動方針や現世での過ごし方などの重要な議題を話し合った。まずはグリーン階級を目指す、これからは1日3体の悪霊を退治する、悪霊とのデュエルで絶対に負けてはいけない等の心得は勿論、現世では「海神 侑(わだつみ ゆう)」という名の高校生として亜利沙と同じ「私立神威高校」に通うことも決まった。中学卒業後に他界した彼にとってはかつてないほどのサプライズであり、目を輝かせて喜んだ。



「高校生活……!」
「思いっきり楽しめ。それともう1つ、こちらの方が本題なのだが……」








─────少年は、神の存在を信じているか?









*初登場オリジナルカード
○憎悪の勇者ランスロット(Lv7 闇)
戦士族/効果
攻2500/守2000
このカード名の①③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:レベルの合計が7以上になるように、自分フィールド・墓地から戦士族・闇属性モンスターを除外して発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの戦闘で発生するダメージはお互いが受ける。③:自分が「ヘイトレッドハート」モンスターの戦闘でダメージを受けた場合に発動する。自分フィールドのモンスター1体を選び、そのモンスターの攻撃力は次のターン終了時まで、その数値の半分アップする。④:このカードをリリースし、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1250アップする。その後、お互いは1250ダメージを受ける。


○憎悪の勇者パーシヴァル(Lv6 闇)
戦士族/効果
攻2200/守1500
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:EXモンスターゾーンに自分のモンスターが存在しない場合、手札のこのカードを相手に見せ、自分の墓地のレベル5以下の「ヘイトレッドハート」モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターを手札に戻し、このカードを特殊召喚する。その後、お互いはこの効果で手札に戻したモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける。②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの戦闘で発生するダメージはお互いが受ける。③:このカードをリリースして発動できる。自分は1500LP回復する。


○マーリンの予言(通常魔法)
①:デッキから「ヘイトレッドハート」モンスター1体を手札に加える。その後、自分は400ダメージを受ける。


○ツイン・デス・ドロー(ドッペル魔法)(テキスト修正版)
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。①:このカードの発動時、自分の手札が1枚以下の場合、自分はデッキから1枚ドローする。②:自分フィールドにドッペルモンスターが存在しない場合、1ターンに1度、メインフェイズ1に発動できる。相手フィールドのドッペルモンスター以外の表側表示モンスター1体を選ぶ。そのモンスターと同じ種族・属性・効果・攻撃力・守備力を持つドッペルモンスター2体を自分のメインモンスターゾーンの両端に召喚する。この効果を発動するターン、自分は手札からモンスターを通常召喚できない。


※偽名リスト(死神は原則として、本名の他に偽名を2つ以上登録しなければならない。また、死神は本名で名乗ることも禁止されている)
現世→海神 侑(Yu Wadatsumi)
死神→漣 弓弦(Yuzuru Sazanami)
本名→凪 遊良


現世→生天目 梓(Azusa Nabatame)
死神→八月一日 亜利沙
本名→不明




亜利沙の一言追伸
少年はドッペル召喚の演出に驚いていたようだが、他の召喚方法がもっと残虐だということを事前に教えなければ気絶するだろうな。
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ヒラーズ
お久しぶりです!
割と表現力がすげぇ…自分もよく表現しないとやばいな。
さて、気になるのは謎の信仰、及び神の存在。
冥界だから冥王様でもいるんだろうか? (2019-03-10 08:12)
とうかいりん
ヒラーズさん
お久しぶりです。3話にしてドッペル召喚が登場しましたが、今作は死神や悪霊といった超常現象を前面に押し出す形を取っていますので、遊良や亜利沙が死神としてデュエルを行う際はVRAINSとは全く異なる召喚方法の演出を書き上げる予定です(それ以外の時はアニメと同様にします)。
神の存在についてですが、次回以降から情報を明かしていきますのでお楽しみに。 (2019-03-10 20:28)

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