第２８話　あっちでこっちでこたつ　作：にしん

前回までの状況
虹　遊飛

ＬＰ：６３００
手札：１枚
モンスター：慧眼の魔術師、オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン（ユニット×２）
魔法・罠：なし
Ｐスケール：黒牙の魔術師　８　×　１　紫毒の魔術師

ＶＳ

音無　伊御

ＬＰ：８０００
手札：１枚
モンスター：ＰＰ　まったり伊御（裏側守備）、ＰＰ　御庭つみき
魔法・罠：コタツ（永続）、マイナス伊御ン（永続）、伏せカード１枚


【ターン３：音無のターン】

「俺のターンか・・・ドロー」
音無：手札１枚→２枚

その時、アブソリュートが自身の力で机と椅子を組み立てつつ凍らせて、氷のこたつを造り上げた。
＞オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン：裏側守備表示
＞ＰＰ　まったり伊御：リバース→表側守備表示

「ちょ、アブソリュート！？」

「こたつの魔力に屈したみたいだなぁ。んー、真宵も来てくれ」
音無：手札２枚→１枚

音無さんがカードをモンスターゾーンに置くと、観客席にいた白衣の女の子が消えた。そしてこたつに突然現れた。


「呼ばれて飛び出てー！」
＞ＰＰ　片瀬真宵：星４：攻１８００（守１２００）

「ふぇっふぇっふぇ・・・伊御さん伊御さん、その手札１枚で便利なものを作っちゃうからちょーだい？」

「む」
音無：手札１枚→０枚→１枚

現れた片瀬さんに手札を渡すと、それをどこからもなく工具を取り出して加工する。・・・と見せかけてデッキから１枚のカードがサーチされていた。カード名は＜破魔矢＞って書いてあった。気がする。

＜ＰＰ　片瀬真宵＞（オリカ）
①：このカードは攻撃できない。この効果は無効化されない。
②：自分エンドフェイズに発動する。相手に５００ダメージを与える。
③：このカードが召喚、特殊召喚に成功した場合に発動できる。以下の効果のうち、いずれかを適用できる。
●「ふぇっふぇっふぇ」：手札を１枚墓地に送り、デッキから「ＰＰ」が記載されている魔法・罠カード１枚を手札に加える
●「トラブルメイカーズ」：自分の手札またはフィールドに「榊」と名の付く「ＰＰ」モンスターが存在する場合、デッキ、手札からこのカード名以外のレベル４以下の「ＰＰ」モンスター１体を特殊召喚できる。


「・・・寒いわ。あの氷のせいかしら」

「俺も寒くなってきたな・・・寒いのは苦手。つみきも寒がってるし、真宵、許可」
音無：伏せカード１枚→０枚

「では、あのでっかい炬燵からレスキューしまっす☆」


セットされていた速攻魔法カードの発動と共に、片瀬さんが氷のこたつに向かってハリケーン・・・という名の飛び両足蹴りを氷のこたつに向かって繰り出した。そしてそこからアブソリュートがこたつから吐き出され、カードとなってエクストラデッキに戻っていった。


アブソリュートの声？「アーッ！？」

「アブソリュート！出てきたと思ったら・・・」

「ここここ、このこたつやたら寒いんじゃよよよよよ」

＜コタツハリケーン＞（オリカ）：速攻魔法
①「榊さんを炬燵からレスキューしまっす☆」「許可」（ガッ！！ドシュン）「アーッ！？」：相手の守備表示のモンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻す。
②「炬燵から吐き出されたーっ！？」「炬燵には魔物が」「俺は不味いと！？」「ふぇっふぇっふぇっ」：このカードが墓地に存在し、フィールドのモンスターが裏側守備表示になった場合に発動できる。このカードを除外し、裏側守備表示になったモンスターをデッキに戻す。

「マイナス伊御ンでデッキから姫っちをサーチ、そして真宵の団子にこれを」
音無：手札１枚→２枚→１枚

ぷすっ


「破魔矢ッ！！」
＞ＰＰ　片瀬真宵：攻撃力１８００→１９００、守備力１２００→１３００

何故か片瀬さんのお団子に破魔矢が刺さった。


「矢マヨ」

「破魔ヨ」

「前にも榊さんにやられた上におみくじが凶だったやつじゃあ！・・・じゃが、今なら榊さんまだいないしいける！おみくじカモン！！」


観客席にいた榊さんが「外れたらないないしたらいいぜー」とツッコむ。それに対して片瀬さんが「ふぇっふぇっふぇ」と謎の笑いをした。

突然空中に巨大なおみくじの筒が現れる。それを片瀬さんがどこからもなく取り出したみかんを親指に指し、浮いたように見えるマジックを披露し、その筒に向ける。その瞬間、そのみかんは勢いよく射出された。みかんが刺さっていたであろう親指には謎の装置が。


「冷凍みかん射出装置じゃよ」

「まだ持ってたのか・・・」


そのみかんが筒に当たり、１枚の紙筒が出てくる。そして紙が開く。


「にゃー！これはまさかの・・・大吉！！このターン、もう１回遊べるドン！！」

「このデュエルは太鼓の名人じゃないが・・・まぁ、当たったなら姫っちもこたつに入っていいよ」
音無：手札１枚→０枚

「はひ。くっきー焼いてきたので皆さんで食べましょう」
＞ＰＰ　春野姫：星１：攻０（守２０００）

＜破魔ヨ＞（オリカ）：装備魔法
「ＰＰ」モンスターに装備可能。
①：装備モンスターの攻撃力、守備力は１００アップし、装備モンスターの効果で相手に与える効果ダメージは２００アップする。
②：自分メインフェイズに１ターンに１度発動できる。コイントスを行う。表だった場合、通常の召喚に加えてもう１度だけ「ＰＰ」モンスターを召喚できる。


そして音無さん側のこたつが４人と１匹で埋まる。ぽわぽわなオーラが俺を、そして観客を襲う。こ、これは流石の俺も・・・いや、まだこたつに入っちゃだめだ！慧眼はすでにこたつ入りしているけど・・・俺がしっかりしないと。


「ん、おいしいわね。みかんも欲しい、けど届かない・・・」

「甘いけど、みかんとお茶によく合うね」

「ちょっと甘めに作ったのですが、おいしくできててよかったです」

「みかんならまだたくさんあるんじゃよ」

「つみき、あ－ん」

「にゃっ！？あ、あーん・・・」

「ブーッ！！」


音無さんと御庭さんの思わずこっちまで照れそうな演出に突然春野さんが鼻血を噴出する。その鼻血の演出はコミカルなタッチだけど何故かこたつの慧眼とペンデュラムゾーンにいた魔術師たちを吹き飛ばした。


「うわっ！？な、何がおきたんだ・・・！慧眼は？いや、黒牙と紫毒も・・・！」

「はうぅ、かわいいですぅ～・・・」


＜ＰＰ　春野姫＞（オリカ）
①：このカードは攻撃できない。この効果は無効化されない。
②：自分エンドフェイズに発動する。相手に７００ダメージを与える。
③：このカードが召喚、リバースした場合に発動する。以下の効果のうち、いずれかを適用できる。
●「はなぢブーッ！！」：自分フィールドの「ＰＰ」モンスターの数まで相手フィールドのカードを選択し、手札に戻す。
●「かわいいですぅ～・・・」：自分フィールドに「つみき」と名の付く「ＰＰ」モンスターが存在する場合、次の相手のバトルフェイズをスキップする。相手ターンでリバースした場合、現在のフェイズを終了させる。

そして再び俺に謎のバーンダメージが襲い掛かる。


「おわあああっ！？こ、こたつに吸い込まれる！かも！！」
遊飛：ＬＰ６３００→３２００

「これがエンタメデュエルというのを忘れていたな」

「コタツを発明した人は偉大ね・・・」

「にゃー。皆ぽわってるんじゃねー」


虹　遊飛
ＬＰ：３２００
手札：１枚
モンスター：なし
魔法・罠：なし
Ｐスケール：なし

ＶＳ

音無　伊御
ＬＰ：８０００
手札：０枚
モンスター：ＰＰ　まったり伊御（守備表示）、ＰＰ　御庭つみき、ＰＰ　片瀬真宵、ＰＰ　春野姫
魔法・罠：コタツ、マイナス伊御ン
墓地：コタツハリケーン（墓地誘発あり）


【ターン４：遊飛のターン】

気が付けば戦況は圧倒的不利、そして俺の手札は１枚。エクストラデッキからペンデュラム召喚で出せるモンスターはいない。＜あっちこっち＞デッキはロックバーンだ。気づいた時には時すでに遅し。俺はこのゆったりまったりな雰囲気にのまれていたようだ。

だけど、ここから巻き返すのもエンタメ、そしてデュエルの醍醐味の１つだ。このドローに賭けるしかない。


「俺のターン、ドロー！」
遊飛：手札１枚→２枚

「私も眠くなってきました」

こたつの魔力なのか、春野さんが眠りかけていた。＜コタツ＞の効果だ。
＞ＰＰ　春野姫：裏側守備表示

とにかくまずはあのこたつを何とかしないといけない。あのバーンダメージからしてもう１人増えた瞬間、俺は負ける。対ミミカちゃんの時に入れていた＜地獄の扉越し銃＞は入れていない。


「・・・・・」


俺が焦っている。この手札では逆転できない。だけどある程度のことはできそうだ。だけどエクストラデッキに唯一表側表示でいる調弦はペンデュラム召喚では出せない。墓地にはエクシーズ素材だった相克とメテオバーストがいるけど蘇生してもコタツがある限り攻撃はできない・・・

コタツ、か・・・そうだ、そうだな。まずはコタツだ。

俺は・・・



何故か横にあるこたつに入った。


「お、ぬるめでいい感じだな」


この様子に司会の団長が反応する。観客も俺のこたつ入りに少しざわついていた。いや、サレンダーはまだしていないぞ。むしろこれからだぜ。


「おおっと、虹くんもついにコタツに入ってしまった模様。何かの策なのでしょうか。さっきより落ち着いているようにも見えます」


こたつ・・・落ち着く。そのおかげか、この先のアイデアが思いついた。とりあえずまずは用意されていたお茶を飲み、みかんの皮を剝いて身を１つ食べる。


「よし、俺はまず＜死者蘇生＞で相克を蘇生！そして手札から＜可変機獣　ガンナードラゴン＞をリリースなしで召喚！」
遊飛：手札２枚→１枚→０枚

＞相克の魔術師：星７：攻２５００（守５００）
＞可変機獣　ガンナードラゴン：星７：攻２８００→１４００（守２０００→１０００）
このカードは生け贄なしで通常召喚する事ができる。その場合、このカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。

俺のこたつには相克が、そしてその横にガンナードラゴンが機械音を立てながらこたつにはいれないか首を動かして試行錯誤していた。いやガンナードラゴンは機械だろう。


「最上級モンスターをリリースなしで召喚って確か昔のルールだったような・・・」

「このドラゴンは攻守半減するけどそれが可能なんだぜ。とりあえず俺はこれでターンエンドだ」


虹　遊飛
ＬＰ：３２００
手札：０枚
モンスター：相克の魔術師、可変機獣　ガンナードラゴン
魔法・罠：なし
Ｐスケール：なし

ＶＳ

音無　伊御
ＬＰ：８０００
手札：０枚
モンスター：ＰＰ　まったり伊御（守備表示）、ＰＰ　御庭つみき、ＰＰ　片瀬真宵、ＰＰ　春野姫
魔法・罠：コタツ、マイナス伊御ン
墓地：コタツハリケーン（墓地誘発あり）

【ターン５：音無のターン】

「ねこがドローした・・・」
音無：手札０枚→１枚

「真宵、どっちがコタツに屈すると思う？」

「んー、ガンナードラゴンは機械じゃから魔術師の方じゃよね」

「すでにぽわりかけてます！？」
＞ＰＰ　春野姫：リバース→表側守備表示

「うわマジか！その効果に対して相克の効果をチェーン！御庭さんの効果をこのターン無効化させる！」

「すやにゃー・・・」
＞ＰＰ　御庭つみき：効果無効
＞相克の魔術師：裏側守備表示

相克の魔術師はフリーチェーンで光属性モンスターの効果をターン中無効化できる。音無さん側は光属性ばかり。なのでバーンダメージが一番大きい御庭さんをひとまず封じ込めて生き残る作戦だ。


「ふむ、では真宵、あの魔術師を救助してやれ」

「あいさー！墓地の＜コタツサイクロン＞の２つ目の効果ァ！！」
＞コタツサイクロン：墓地除外発動

片瀬さんが俺側のこたつに再びサイクロンして突っ込んでくる。そしてくつろいでいる相克の魔術師がこたつから吐き出された。


相克の声？「炬燵から吐き出されたーっ！？」
「炬燵には魔物が」
相克？「俺は不味いと！？」
「ふぇっふぇっふぇ」
＞相克の魔術師：デッキバウンス

「くっ、相克もか・・・！」

「さてこのターンもおみくじかな」


片瀬さんが頭の団子に刺さった破魔矢を抜き、対面で寝ている御庭さんに渡す。その瞬間、どこからもなく黒板が舞台中央に現れ、そこには的がチョークで書かれていた。


「パジェロー、パジェロー」
「あたりとはずれしかないですっ！？」
「あたりが狭いな・・・」
「・・・・・」

御庭さんが破魔矢を投げる。するとその破魔矢は衝撃波を放ちながら黒板を貫き・・・黒板が四散した。そしてその破片が床に落ちる。


「ぶっ！？」


笑いが起こる。その破片は綺麗に「失敗」という文字の形に並んでいたからである。というかあれ完全に的の真ん中を射抜いていたとは思うけど、判定はそこなのか。

ともあれ二重召喚効果は失敗だ。俺は安心する。だけどまだ通常召喚をしていない。あの手札１枚がもし１７００以上のバーンを持つモンスター・・・もといお友達だったら負ける。

・・・はっ、そういえばマイナス伊御ン・・・！！


「じゃあマイナス伊御ンの効果で榊も特殊召喚」
＞伊御：手札１枚→０枚

＞ＰＰ　戌井榊：星６：攻２５００（守１５００）
「へへっ、サンキュー・・・って、オレの入る場所ねぇ！！」


すごい形相でツッコミを入れながら金髪ツンツンの男がこたつの横に現れた。


「榊はすでにこたつから吐き出されていたということね」

「榊さんは不味いということじゃねー」

「榊さん・・・」

「やっぱりオレは不味いのね・・・」


以前にこたつから吐き出されたのだろうか。いや、片瀬さんがやっていたサイクロンがそれなのだろう。

そういえば戌井さんの効果がまだ・・・


「ん、榊もこたつ気分を味わえるように・・・榊、新しい顔だよ」


そう言って音無さんはみかんを榊に渡した。それを謎の笑顔で受け取った。


「俺の頭軽くない！？」

「いい匂いするよ」

「いつか腐るわ！！」


ボケとツッコミの嵐で何故か俺のこたつが冷えていく。電源きれたか？というよりそもそもこのこたつ、電源どこだ？
＞可変機獣　ガンナードラゴン：効果無効：攻１４００→２８００（守１０００→２０００）
＞遊飛：ＬＰ３２００→３０００

「あはは・・・ってなんでＬＰ減るんだ！？」

「虹くんがこの流れに流されているからだね」


団長は何故か俺の隣に来て、こたつの電源のチェックをし始めた。しばらくするとこたつが温まる。


「あ、あとは戌井さんのバーンダメージか・・・！」


確か音無さんたちのこのバーンダメージはゆるゆるまったりな雰囲気のはず。だから大したことはないはず。１ターンは持つ。そう思っていた。


「ターンエンドかな」


そう宣言した瞬間・・・


どーーーん！！！


「ぎゃあああぁぁぁっ！！？」


俺のこたつが突然吹き飛んだ。そして宙を舞った俺は何故か生成されていた机の滑り台に乗って滑り、そして椅子に座らされた。その瞬間、机がはじけてそこにあったのは教卓と黒板。そして教鞭を持った団長がどや顔で立っていた。


「試験の結果を発表します。虹　遊飛くん！」

「は、はい？」

「君は・・・不合格です！」
遊飛：ＬＰ３０００→０

「な、なんでだーっ！？てか戌井さんのバーンダメージいくらなんだ！？」

「オレのバーンダメージはどうやら人数×３００らしいぜ。へへ、最the高だな」

「榊は変だからなぁ」

「変ね」

「変です」

「変じゃねー」

「変いうなし！」

音無さんたちからのボケに全力でツッコむ戌井さん。あぁ、仲いいなぁ・・・このノリもバーンダメージになったのか。


＜ＰＰ　戌井榊＞（オリカ）
①：このカードは攻撃できない。この効果は無効化されない。
②：自分エンドフェイズに発動する。相手に自分フィールドの「ＰＰ」モンスターの数×３００ダメージを与える。
③：このカードが召喚、特殊召喚に成功した場合に発動できる。以下の効果からいずれかを適用できる。
●「トラブルメイカーズ」：自分の手札、墓地から「真宵」と名の付く「ＰＰ」モンスター１体を特殊召喚する。
●「強烈なボケ＆痛烈なツッコミ」：このターン、相手フィールドのカードの効果を無効化し、相手にこの効果で無効化したカードの枚数×２００ダメージを与える。


つまり・・・御庭さんの１６００は無効化して残りの３人が合わせて１５００ダメージだったんだけど、戌井さんの登場で効果のボケ＆ツッコミで２００ダメージ、そしてエンドの５人×３００で１５００ダメージ。俺の３２００が３０００からのぴったり０になった。ということか。


「そ、そんなぁ」


【エンタメデュエル終了】
　 　 　 　 　 　 　 　ＷＩＮ！
虹　遊飛　　ＶＳ　　音無　伊御
　　　０　　ＬＰ　　８０００


「か、完全敗北・・・がくり」

燃える前にこたつの魔力に屈した俺だった。


エンタメデュエルの総合結果は言うまでもなく音無さんの圧勝。ＥＭＳカードを応用しまくったローラさんの技術の結晶による音無さんたちの日常風景というエンタメに完全敗北した。


―――
おまけ

団長「今回は虹くんフルボッコデュエルだったね。ミミカちゃん以上のロックバーンではないだろうか」
ミミカ「あのエンタメは卑怯ですよぉ。あたしまで舞台にあるこたつに入りそうでした☆あたしのチアちゃんたちもこたつに入りたがっていましたよ～」
ローラ「私の技術のおかげね！でもこたつのデザインはモニカさんだよ」
モニカ「普通の安物のやつだけど、こっそり冷房回しててよかったわ」
アリシア「だから妙に寒かったのですね・・・これは虹くんも全くヒートアップできないわ」

団長「ちなみに伊御、つみき、真宵、姫、榊は原作の初期から登場している仲良し５人組なんだ。そこから担任のキクヱ先生やみいこさんなど途中から登場していった。にしんって人の話によるとこの５人に絞ったのはそういうことだかららしい」