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HOME > 遊戯王SS一覧 > 30話:大会前日、陸也とトウマの世界調査

30話:大会前日、陸也とトウマの世界調査 作:ヒラーズ

翌日、最後の授業が終わり、放課後のチャイムが鳴り響く。
大会当日に向けて他の生徒はカードショップに行くなり、寮に戻ってデッキを調整して練習試合をするなりと騒がしくなるこの日。
海理達はブロックカードを受け取り、確認する。
「私達は・・・Bブロックですね」
「Bブロックか…まぁどうなろうと優勝すれば問題はない。腕が鳴るな」
魔奈は指をポキポキと鳴らし、やる気を示す。
それとは違って風花はトーナメント表を見つめていた。
自分たちのいるBブロックは上級生にはものすごく強いメンバーがいると理解していたのか、一度デッキを確認し、バッグにしまう。
陸也は「どうした?」と言って声をかけ、慰める。風花は「大丈夫ッス」と言うがそれを言ってさらに心配事を言いかける前に陸也は話を続けた。
「風花、別にお前が負けても気にすることはない」
「…?」
「例えこのチームのメンバー1人が敗北に屈しても俺や姉さんがその穴を埋める。だから風花は風花らしい戦い方をすれば良い。そうだろう?」

陸也の後押しの言葉につられ、水樹も励ましの言葉をかける。
「何かあってもサレンダーは恥じることじゃないぜ?」と言って笑い。風花の肩を叩く。巴もクスリと笑い、談笑する。
時に降参は恥じることではない、そんな言葉を言ってくれるのは間違いなくこのチームのみだろう。風花は若干涙を流すが、その涙を拭き取り、笑う。
「わかったッス!私、全力で頑張るッス!!」
そう言って海理達は手を合わせ、団結する。
「皆さん!絶対優勝しましょう!!」
「「「「「オーッ!」」」」」

明日の大会に向けてそれぞれ別行動を起こし、魔奈は姉の魔姫の部屋に行き、風花と巴はデッキを調整し、海理はカードショップへ行き、陸也はそれとは全く別の行動を起こしていた。












クロノヴェイルのカフェにて、陸也はトウマと合流してある会話をしていた。
「済まない、遅れたな」と陸也は謝罪しつつトウマの居る席の前に座る。トウマは「大丈夫だ」と言って一人ジュースを飲みつつ、雑誌を読んでいた。余裕な態度を見た陸也は少し笑い、メニュー表を開き、コーヒーを注文する。
数分もせずにコーヒーが運ばれ、陸也の前に置かれる。そして本格的な話へと入っていった。

「お前をここに呼んだのは他でもない。トウマ、新しい情報と調査の協力をしようという2つの事だ」
その言葉にトウマは「何だって!?」と言う顔になった。進んでいたフォークの動く速度を止める。「本当か?」と言うが、陸也は「本当だ」と言い返し、コーヒーを啜る。
「・・・豊かな香りと柔らかなコク…なるほど、ジャマイカ産の『ブルーマウンテン』を使っているな」
「よく解るなそれ…俺はコーヒーは飲めないけど」

トウマは「もうそれじゃ15歳とは言えない言葉だぜ?」と苦笑いするが、陸也はそれを鼻では笑う。「この歳でコーヒーを飲む輩なんて俺ぐらいだろう」そう言って軽いジョークを言いつつ本題に入り直す。

「まずは情報だ、ここに来て間もないが着実的に敵が動きつつある。それに若干ながら精霊達もここに来ていることだ」
陸也は地図を取り出し、ある場所に指をさし、その建物について言った。

「まず俺は図書館で調べ物をする。それ以外の調べは任せてはいるが・・・その目では捗っていないようだな」
トウマはため息を吐き、がっかりした態度を取り両手で頭を掻く。「そうなんだよ、丁度お前の力が必要だったんだ」と少し声のトーンを下げて言う。
よく見るとトウマの目の下に隈のようなものが出来ている事に気づく。
「熾天使(セラフィム)は随分と大変そうじゃないか、メタトロンに叱られたか?」と笑いながら言うがトウマは「違ぇよ・・・サンダルフォンのじいさんに説教されたんだよ。長いったらありゃしないな」と言って目を背ける。
陸也はコーヒーを再び啜り、飲み干す。そして席を立ちトウマを連れ会計を済ませ、カフェを出る。
「さて行くぞ」
「ああ、またいっちょ世界の謎を解こうぜ」

そう言って陸也とトウマは図書館に向かい、中に入ったのであった。











「ふむ・・・都市と言われるだけはあって図書館もだいぶ広いな」
「で?どこから調べるんだ?」
トウマが迷っている中、陸也は案内図を見てトウマに伝える。
「先ずは検索をかけるため、歴史、この都市のオカルトを調べる」と言って陸也は小難しい文学、歴史、オカルトなどが並べられているコーナーエリアに指をさす。トウマは「いきなりぶっ飛んだ場所から調べるな」とうへぇとした顔をする。
「何、歴史系や文学は任せろ。トウマはオカルト系を頼む」
「分かったぜ」

陸也とトウマは二手に分かれ、それぞれのコーナーに足を進める。
いち早くたどり着いた陸也は脚立を持ちつつ移動し本を選ぶ、本を開きつつ間違っては戻してを繰り返し、時間を無駄にせず調べる。
そんな時、1冊の古ぼけた本を見つける。他の本とは違い、埃を被っており、取っただけで埃が舞う。陸也は咳をしながら本を抜き取り、埃を払う。
「これは?『地下に眠る古の神』…?神学の書類か?」
(古い本だが、ページがボロボロで読めないな)

陸也は辺りを見渡し、人が居ないことを確認した後、能力を行使する。
「・・・復元させるか、【サイコリジェネレート(念復元)】」
そう言ったとたん古ぼけた本が新品同様の性質に戻り、確認した。
本を開き斜め読みをした陸也は気になるページを見て手を止める。
「・・・!これは…!!」
(これは本当の事か!?これが原本なのは分かっていたが、もしこの事が事実ならトウマの仲間の天使どもが捕らえられてもおかしくはないぞ!?)

陸也は険しい顔をしながらページをめくる。その時、一部のページだけ真っ白なページがあった。「何かのヒントか?」と言って能力を行使して文字を写すと複数のロ数字が赤い文字で書かれていた。
「……?Ⅳ、Ⅸ、Ⅴ、Ⅶ?どう言う意味だ?この都市の建設日をさしているのか?」
陸也は歴史の書類を読んでもそう言ったものが見当たらず、頭上に?が浮かぶ。「ハズレか?」と言いつつ取った書類を持ち、トウマの方に行く。
トウマもある本のページをめくって立ち尽くしている姿を見た陸也は後ろから話しかける。
「何か収穫はあったか?」
「ああ、これはすごいぜ。俺達はまた世界の闇に挑む羽目になるなんてな」

どうやら互いに収穫があったらしく、黙読できる広場に行こうとする時だった。
「「あっ…」」

陸也と海理がパッタリと合流した。
トウマは「海理、お前も来ていたのか」と言ってごまかすが、海理は陸也とトウマが持っている本を見て質問をしてくる。「大会前日に読書はちょっと余裕過ぎませんか?」と陸也に詰め寄り、本を取ろうとすると「これはまだ姉さんには早いよ」と陸也は後ろに隠す。
「これを借りたら寮に戻る。心配をかけて済まなかった。いくぞトウマ」
「お…おう…」

そう言って陸也はトウマを連れてカウンターに行き、会員カードを作って貰い、本を借りる。館員は「こんな本ありましたっけ?」と言って陸也に本を渡す。

「…」
――――怪しいな。海理にはまだ早いと言う時点で何かあるぞ。
(あの本、恐らく何かの原本ですよね?)
――――分からん、だが何か隠しているのは確かだ。







しばらくして寮に戻った陸也は夕食を済ませた後、男子寮に戻ろうとすると後ろから海理に話しかけられる。
「どうしたんだ?」
「とぼけないでもらえません?先程借りた本、私にも見せてもらえませんか?」

陸也は考えた、「どうしてもこの本が気になるのか」と言って返すが、「質問を質問で返さないで!」と言って問いかける。
陸也は能力を行使して借りた本を取り出す。使ったのは【アポート(物質転移)】、陸也はまるで警告するかのように海理に交渉をかけた。
「これを知ってしまえば姉さんは自分の役目を果たさなくなる。これを語るのは今ではないんだ!頼む、見逃してくれ!」
「……嘘はつきませんね?」

海理は若干怒りかけるが、陸也は「俺がいつ嘘をついたんだ!?」と言ってどん引きする。その驚きから見て海理の表情は怒りから通常に戻る。ほっとした表情になった陸也は本を抱えて男子寮に戻る。しかし最後に小さな声で言ったものが海理の耳に入る。
「やれやれ、これを読んだらさすがの姉さんも正気が保たれん、この件は俺とトウマで片付けさせて貰う」ボソッ
「……」

やや暗雲が近づいている事を知った陸也は本を机にしまい、明日に向けてデッキを確認する。それと同時に経典の悪魔と会話した。
――――やはりあなたの姉は油断できませんね。
――――こちらも警戒しなければなりませんな。
(ああ、だがこのことを知ってしまったら強くなるどころではない、だからこう言う難しい事は俺とトウマが適している)

陸也はデッキを確認した後、就寝時間まで再び外に出る。






辺りはすっかり暗くなっており、夜空には綺麗な星々と月が浮かんでいる。
じっくり空を見上げる、気がつくと横に海理もいた。「陸也も眠れないんですか?」と言って隣に座る。
「いや、就寝時間まで退屈だったから二つ目のデッキを確認して気休めに外に出ていただけだ」
「私も二つ目のデッキを組み立てていました」

姉弟揃って同じ事をやって外に出ている理由だったのか、海理と陸也は笑い出す。
「ククク…はっはっはっはっ…!」
「フフフッ…」
月明かりは二人を照らし、笑う姿を綺麗に映し出す。
その姿はまるでちょっとしたカップルのようになっていた。

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