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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第8話:ターゲット・風峰 遊路

第8話:ターゲット・風峰 遊路 作:光芒









 自分は夢でも見ているのだろうか。遊大の持つ精霊の力が一つ“魔眼”によって動くことはおろか言葉を発することすらできなかったルナテシアは目の前でクイーン・フォースの三人が遊大一人に圧倒される様を見てそう思わざるを得なかった。クイーン・フォースは遊路がコーチを務め、昨年のデュエル甲子園では見事日本一に輝いたチームだ。そんな彼女たちが1ターンでこうも完膚なきまでに叩き潰されるとは誰が予想しただろうか。
 そしてそれ以上に予想外のこともあった。それはクイーン・フォースのライフが尽き、デュエルが終わろうとしている時だ。デュエルが終わればソリッドビジョンによって映し出されているカードが消えるのは当たり前のことなのだが、未だに消えないカードがある。

―――このデュエルは俺の勝ちだね。最もデュエリストとしての実力やデッキの完成度に差はほとんどなかったけれど……

 それが覇王星竜ドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンだ。このカードもデュエルモンスターズのカードであるならば、他のカードとと同じようにデュエル終了と同時にソリッドビジョンが消えるはずであった。

「なっ……なんで……消えないんだよ」
―――消えるも何も俺は実際にこの世に生を受けている。実際に存在しているんだ。
「デュエルモンスターズの精霊……これが……?」

 遊大ことドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンは地面に降りると、特撮映画の怪獣が迫ってくるかの如く大きな足音と共に詩音たちの方へと近づいて来る。タイムスリップをして白亜紀に飛ばされ、ティラノサウルスに迫られたらこういった感覚を受けるのだろうか。ただ、この精霊は恐竜とは違い、明確な知性もあれば、その力で人はおろか街一つを容易に消し飛ばすことであっても可能だろう。

「っ……やめろ。心愛と小飛に手を出すな……やるならアタシに……」

 巨大なドラゴンを目の前に詩音は内心怯えながらも、その身体を奮い立たせると心愛と小飛を庇うかのように立ちはだかる。元々生まれた場所も環境も違う三人であり、チーム結成当初は衝突も少なくはなかった。しかし、遊路によってチームのリーダーに任じられた彼女はリーダーとして、年長者として絶対に二人を守らなければならないという気持ちが芽生えていたのだ。

―――無駄だよ。俺の力はそんなものでは防げない。
「っ!?」

 ドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンはその鋭い爪が生えた右腕を振るう。人程度であれば軽く撫でるだけで細切れにできるであろうその爪が迫った時、詩音は思わず目を閉じる。

―――我が内に眠りし紫の竜よ。その毒を以て彼の者たちの傷を癒せ。

 しかし、ここでドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンが取ったのは意外な行動だった。彼がその紫色に輝いた右腕を三人の前にかざして振るう。すると、詩音たちのこのデュエルで負った怪我はもちろん、今日一日のイベントで溜まった披露すらも一瞬で吹き飛んだのである。

「なっ……」
「き、傷が……」
「身体の疲れも取れたアル!」
―――うん、これでもう大丈夫。そして……あなたの魔眼も解きますね。

 三人の傷を癒すと同時に、ルナテシアを拘束していた眼の力も同時に消える。急に身体の自由が戻ったことでルナテシアは勢いあまってその場に転んでしまった。

―――さて、俺の目的はあなたたちをデュエルで倒すことではありません。あなたたちは無関係だ。俺はあくまで風峰 遊路さんにだけ用がある。
「遊路に……あなたの狙いは一体何なんですか?」
―――風峰 遊路……この世界におけるデュエルの世界一を決める大会、デュエリンピックの優勝者にして名実ともにこの世界を代表するデュエリスト。でも……あなたたちは彼が何をしようとしているか知らないようですね。
「あいつが、あいつが何をしたってんだよ!!」
「そうです! 先生は私たちにとって大事な人です!」
「師匠が居てくれたからこそシャオたちは今こうしてデュエルができているネ!」

 遊路がこの世界に及ぼした影響は計り知れず、クイーン・フォースの三人とルナテシアの人生を大きく変えた存在であることには変わりない。少なくともこの場にいる四人からしてみれば、遊路は太陽にも等しい存在であると言っていいだろう。だが、ドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンはそんな彼女たちを憐れみを込めた眼で見下ろしていた。

―――随分と好かれているんだね。でも、君たちは彼の本性を知らない。
「本性……?」

 ドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンの宝石のように輝くオッドアイには彼の思いが光となって現れていた。紅玉のような右目には強い怒りと意志が、翠玉のような左目には深い悲しみと決意が漲っている。しかし、双方の眼には何処か悲しみが宿っていた。そして悲しみを込めた両目を潤ませながら、ドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンは―――遊大は言い放った。





―――彼は、風峰 遊路は……悪魔に魂を売った。いや、悪魔そのものだ。俺は彼を倒すためにこの世界にやってきた。俺たちの世界を、俺の大事な人たちを守るために!!






 ドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンの言っていることを四人は理解できなかった。遊路が悪魔に魂を売った? 遊路が悪魔そのもの? この世界にやってきた? 世界を、大事な人たちを守る? あまりに疑問が多すぎて何も言い返すことができなかった。

―――そう言えば……さっき俺は君たちに言ったよね。デュエリストとしての実力やデッキの完成度に差はほとんどなかった、って。でもデュエルの結果はああなった。どうしてかわかる?
「……」
―――君たちは確かに強いけど、俺は君たちに持っていないものを持っている。それは命を懸けても守りたいものがあるかどうか。俺には自分を、命を捨てても守りたい人がいる。その存在が俺を強くしてくれるんです。さて、今日あったこと、今のデュエルの結果……それを全て風峰 遊路さんに伝えて下さい。そして……今日から三日後の夜、俺は彼の首を取りに行きます。卑怯な手は使いたくありません。だから、正々堂々とあなたを倒す。そう、伝えて下さい。
「っ、待ちなさい!!」

 そう言ってドラグリステル・ペンデュラム・ドラゴンは翼を広げて飛び立つ。そして四人が状況を飲み込む間もなく赤い光となって漆黒の空に消えていった。

(……遊路)












「……そうか。そんなことがあったのか」

 ルナテシアとクイーン・フォースの三人は遅い時間であるにも関わらず、その足である場所に向かった。ルナテシアや三人と対面になる形で高級そうなソファに座っているのは一人の華奢な青年だった。

「予め言っておくぞ」
「はい」
「俺は何もしてないからな?」
「……」

 ルナテシアと詩音はじとっとした目で青年を見つめていた。二人の視線に気が付いた青年はちょっと待て、とばかりに両手を広げる。

「お前ら信じてないだろ? まあ確かに美人には声かけるけどな!」

 そう言ってこの青年はにっこりと笑顔を見せた。この青年こそが他ならぬ風峰 遊路(かぜみね ゆうじ)である。デュエルの世界一を決める大会であるデュエリンピックの個人部門で連覇を達成したのはもちろん、歴代最年少で世界のリーグというリーグを全て制覇するなどデュエリストとしての実績は数知れない。名実ともに世界最強の男だ。

「申し訳ありません、こんな遅い時間に……大和ちゃんや雛里ちゃんにご迷惑かもしれませんが」
「大丈夫だ。美羽と遊月が面倒を見てくれているからな」

 ちなみにデュエルでもそうだが、私生活においても彼は伝説となっている。彼はまだ21歳とこの国の法律で成人を迎えて1年しか経っていないのだが、既に美羽と遊月という二人の妻、そして二人との間に大和と雛里という二人の娘を持った所帯持ちなのだ。
 そのカリスマ性と性格からデュエルモンスターズの活動を通して多くの人脈と確かな発言力を得ており、一夫多妻制を特例で日本政府に認めさせたり、デュエル大会を通して紛争を調停させる等、彼の一挙手一投足が伝説となっている。まさにこの世界における生ける伝説と言っても過言ではない。

「それで……その高海 遊大という男はデュエルモンスターズの精霊で、俺がその精霊の世界を滅ぼす悪魔だと」
「ああ、あいつは確かにそう言った」
「そうか……まあいいや。もしそいつが来たら来たで俺はそいつを迎え撃つ。それだけだ」

 遊大の狙いは遊路であってもわからない。ルナテシアたちから確かに情報は得たが、それでもあまりに断片的すぎるものであるため彼もまとめることができなかったのだ。だが、そこで焦る必要はない。遊路は良い意味で自分の実力を知っていた。知っているからこそこうして平然としていられるのだ。
 遊大が「命を捨ててでも守りたいものがあるから強くなれる」と言うのであれば、自分にも絶対に守りたい妻が、子供がいる。父親として、一家の大黒柱として愛する者を思う気持ちは絶対に負けていない。美羽が、遊月が、大和が、雛里が、そしてクイーン・フォースやルナテシアたちのように自分のことを大事に思ってくれる人がいるからこそ、彼は世界最強として君臨しているのである。

「あ、あの、先生」
「ん、どうした?」
「シャオたちを怒らないアルカ?」
「怒る?」
「はい、私たちは先生のおかげで日本で一番のチームになったにも関わらず、三人で一人の相手に負けてしまいました……」
「アタシたちのせいでさ、その……顔に泥塗っちまったんじゃねーかって」

 そう言って俯くクイーン・フォースの三人。日本一になったのはもちろん、遊路が指導をしているということでも名の知れたクイーン・フォースである。そんなチームの敗北はコーチを務める遊路の評判を落とすことにも繋がるのだ。

「確かにお前たちがワンキルを食らうとは思わなかった。今のデュエルモンスターズはワンキル上等なところがある。どんなデッキを相手にしていても対策必須ということには変わりないな。でも……この負けでお前たちはまた一つ学ぶことができたな」
「学ぶ?」
「敗北からは勝利の三倍の経験を得ることができる。勝負の世界に生きる以上、誰にだって負けは付きまとってくるんだ。大事なのはその負けでへこたれないこと。へこたれちゃったらもう立ち直るのには時間がかかる」
「師匠……」
「先生……」
「最も、俺はお前たちの味方だからな! 辛かったよな、ほら、俺の胸に飛び込んでおいで~!」

 遊路がそう言うと、張りつめていた緊張の糸が切れたのか、心愛と小飛が飼い主に甘える子犬のように彼の胸の中に飛び込んだ。

(ったく、励ますついでにあんなに密着しやがって)
「お、どうした詩音? お前も遠慮なく俺の胸の中に飛び込んできていいんだぞー?」
「誰が飛び込むかってんのこのクズコーチ!!」

 結局、夜も遅いと言うことでルナテシアとクイーン・フォースの三人は遊路の家で泊っていくことになった。空き部屋に寝ぼけ眼の三人を送り出した遊路は、秘密裡にルナテシアにもある指示を下した。

「かしこまりました」
「……頼むよ。それにしても悪魔か……」

 一体遊大は何を以て自分を狙っているのだろうか。ただ、悪魔という言葉に対して唯一遊路だけが反応した。彼自身が悪魔というわけではないにしても、悪魔というものには何かしらの縁があるのだから。










●次回予告

国広 陸
「遂に相対した二人のデュエリスト、遊路さんと遊大。次元を越えた先に行われるデュエルだ。そりゃもう気合が入るってもんだよな。でも遊路さんはオーダーカードの使い手として有名だけど、今回はオーダーカードを使わずにデュエルをするみたいだな。一体どんなデッキを使うんだろうな?」

次回 伝説 対 精霊・前編

国広 陸
「うーん、確かに破天荒だけど俺には遊路さんが悪い奴には見えないんだよなぁ……」





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ギガプラント
なにやら遊路が悪役っぽい雰囲気……けどまぁ違うんだろうな。
けどこういった形で主人公同士が戦うのは熱いですね。
アフターケアも万全、流石だぜ大統領。 (2019-01-17 04:10)
ター坊
さて、遊路。お前は何をやったのか?
果たし状の伝言を残して去る遊大と迎え撃つ遊路の対決はどうなるか気になりますね。
遊季都「あの…一応主人公は僕…」
遊路「大丈夫だって。メインタイトルに焔獄ってあるから」 (2019-01-17 11:58)
光芒
ギガプラントさん
形こそあまり望ましいものではありませんが、異なる作品同士の主人公が相まみえるというのはやはり盛り上がる展開だと思います。それこそGX最終回で遊戯と十代がデュエルをしたのは一視聴者として楽しみに見ておりました。

>アフターケアも万全、流石だぜ大統領。
こういうことが自然とできるのが遊路の強みですね。遊大にはまだできないです(殴

ター坊さん
遊路も遊路で色々と遊んでいそうですから恨みは買いそうですよね。最もその恨みを全く意に介さないからこそ遊路は世界最強のデュエリストでいれるのだと思いますが。

>遊季都「あの…一応主人公は僕…」
遊希「主役は遅れてやってくる。そういうものよ」
(2019-01-18 00:07)

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