【特別コラボ】繋がる世界~焔獄と虹彩の輪舞~/第5話:女王の力 作:光芒








「今日は大勝利に次ぐ大勝利だったアルネ!」

 ネオンが煌めく道路を走る一台の車。車の後部座席には三人の少女が座っていた。この三人はとあるデュエルのイベントに呼ばれ、そのイベントでデュエルを行った。そして三人共に圧倒的な実力を持って勝利を収めていた。
 後部座席の真ん中に座っていた一人の少女が嬉しそうに今日の出来事を振り返る。明るく快活なこの少女の名前は苗 小飛(ミャオ・シャオフェイ)。中国デュエル界の重鎮にして中国を代表するプロデュエリストである苗 一龍(ミャオ・イーロン)の孫娘で4年前から日本でデュエルの修業をしている少女だ。

「ですが……どうして私たちに先生はあのような指示を下されたのでしょうか」
「知るかそんなん。あのクズコーチのことだから単なる気まぐれだろ、きっと」

 そして小飛を挟んで座っているのは虹宮 詩音(にじのみや しおん)と魅空 心愛(みそら ここあ)。この三人が去年の高校生デュエリスト日本一を決める「デュエル甲子園」において優勝を勝ち取ったチーム「クイーン・フォース」であり、この国を、この世界を代表するデュエリストの一人である風峰 遊路の弟子ともいえる三人だ。
 このチームのリーダーで最年長である詩音と遊路が出会ったのは今から5年前のことである。父親の事業失敗を契機に貧しい暮らしを母親と強いられていた詩音は、遊路をターゲットに身体を使って彼から金銭を脅し取ろうと近づいた。だが、それは遊路に見抜かれて失敗に終わる。
 後に遊路は彼女の家の事情を知ると、彼自身が借金取りと対峙しては危険な裏デュエルに臨んで見事勝利。その借金を帳消しにさせたのである。それ以降詩音は遊路の下でいちデュエリストとして日々研鑽を積んでいるのだ。
 そして魅空 心愛という少女。そもそもこの名前は彼女の本当の名前ではない。彼女は幼い頃にとある孤児院の前に捨てられており、魅空 心愛という名前はその孤児院の者によって付けられた名前だ。
 しかし、彼女が小学校6年生の時にその孤児院が火災に遭い、心愛が家族のように思っていた人間が皆死亡するという憂き目に遭う。そんな彼女を引き取ったのが孤児院と付き合いの深かったニューサニーアップ事務所であり、遊路たちは彼女の家族として心愛を見守ってきた。そのため心愛にとって遊路はコーチや家族以上の存在でもあるのだ。

「シャオ師匠から聞いたアルネ! 最近は公平を期するためにオーダーカードを使わないデュエルを採用している大会も多いッテ!」

 クイーン・フォースの三人が遊路から受けた指示というのは、オーダーカードを使ったデッキ以外でのデュエルをするということだ。この三人も遊路や遊季都のようにオーダーカードを使ってデュエルをしているのだが、オーダーカードを持たないデュエリストやそれを支持する団体からオーダーカードは公平性を欠く、という意見が持ち上がっており、その声の大きさは徐々に遊路からしても見過ごせるレベルではなくなっていたのだ。
 そこでニューサニーアップ事務所所属のデュエリストおよび遊路がコーチを務めるクイーン・フォースの三人にはしばらく非オーダーカードを使ったデュエルに臨むように指示が出ていたのである。

「んだよそれ。まるでオーダーカード持ってるからアタシたちが強いみたいじゃねーか」
「もちろん先生は私たちのデュエル甲子園優勝はカードの力だけではなく、私たち全員の力と仰ってくれましたが……」
「いつだって声がデカいのは弱くてあくどい奴らってことなのかよ」
「……あまりそういったことを大きな声で言わない方が吉ですよ」

 そう言って詩音を窘めるのは車を運転している銀髪ポニーテールが特徴的な美女、ルナテシア・オノダ。日本とイギリスのハーフであり、元は殺し屋として遊路のことを狙っていた存在であったが、その暗殺に失敗したために今はターゲットであった遊路に彼専属のSPとして仕えている。SPとしての仕事以外では語学堪能なことを活かして通訳や運転手を務めており、遊路の海外での活動において欠かすことのできない存在であった。

「今のあなたたちはクイーン・フォース。嫌でも社会から注目される存在になりつつあります。一つの不用意な発言があなたたちはおろか遊路さんや事務所の皆さんの首を絞める事態になりかねないのですよ」
「……わーってるよ、そんなん」
「あなたはチームのリーダーなのですから、他の二人のお手本となってあげてくださいね」
「でも詩音だと反面教師にしかならないアルネ!」
「んだとぉ!」
「まあまあ……」

 ケラケラと笑う小飛に掴み掛ろうとする詩音。そしてそんな二人をおろおろしながら仲裁に入る心愛。生まれも育ちも価値観も違う三人であるが、彼女たちはクイーン・フォースという旗の下に確かな絆で結ばれていたのだ。












「……申し訳ありませんが、今日はこのまま直帰とは行かなくなりました」

 信号待ちの間に電話を終えたルナテシアによって今後の予定が告げられる。彼女たちは遊路の妻・遊月が大家を務めるアパート「魅河荘」に住んでおり、安全性の問題から帰りが遅くなる場合はこうして社用車で自宅まで送り届けられる。本来は今日もその手はずだったのだが、急遽それが変更になった。

「えっ?」
「実は事務所の方に遊路さんがスカウトしたデュエリストの方がいらっしゃっているそうです。なんでも齢16の高校一年生にして凄く凛として落ち着かれた女性だとか」
「また女引っ掛けてきたのかよあのクズは……」
「美貌はもちろんデュエルの腕も申し分ないようです。模擬デュエルにおいてもG(グレート)ジャスティメンRXさんやジョセフィーヌ龍美さん相手に善戦したそうですから」

 GジャスティメンRXおよびジョセフィーヌ龍美とはニューサニーアップ事務所所属のプロデュエリストである。遊路にとっては先輩にあたるプロのデュエリスト相手に善戦したという報告が事実であれば、その実力はプロにも迫るということだろう。

「あの二人に善戦アルカ!? 相当の腕前アルネ!」
「もしかしてデュエルの実力は私たちに匹敵するということでしょうか」
「運が良かっただけじゃねーの? ま、あのクズコーチも人のデュエルの才能を見抜くのだけは上手いからな。そいつの実力は本物だろうよ。それでアタシらは何をすればいいんだ?」
「社長によると所属を前向きに検討するとのことです。そこでこれから皆さんには顔合わせをお願いしたいと」
「それくらいでしたら問題ないですね」
「シャオも会ってみたいアル!」
「……そんな時間かかんねえのならいいけど」

 そう言ってクイーン・フォースを乗せた車はルートを変更。ニューサニーアップ事務所へと向かうことになった。












「初めまして。この度、風峰 遊路さんよりお誘いを受けました大高 遊海(おおたか ゆうみ)と申します。宜しくお願い致します」

 事務所についたクイーン・フォースの三人を待ち受けていたのは美しい真紅の長髪が煌めく一人の少女であった。恵まれたルックスに紅と翠のオッドアイという人間離れした外見の遊海を前に三人は思わず言葉を失う。同性であるのだが、遊海の美しさに見惚れてしまっていたのである。

「すっごい美人アル! これは師匠がほっとくわけないアル!」
「あの……先生からはどんな感じでお誘いを……」
「えっと“君の美しさに心を奪われた。俺との結婚を前提にうちの事務所でデュエリストとして働かないか”……と」
「あんのスケコマシコーチィ!! 心愛の気持ちを踏みにじりやがって!!」

 遊海勧誘の経緯を聞いたクイーン・フォースの反応はまさに三者三様であった。小飛は単純に仲間が増えるということを喜んでおり、詩音は遊路に対する心愛の想いを知っているためか怒りを露わにした。そしてそんな詩音を心愛が慌てながら宥めるというのもまたこの三人の日常である。

「あはは……でも風峰 遊路さんはデュエリンピックの優勝者で世界的に有名なデュエリストですからね。英雄色を好むとも言いますから……」

 本来この国では一夫多妻制は認めていない。だが、遊路に至っては別だ。プロデュエリストになろうとした時はまだ未成年でありながら、二人の少女を嫁として娶っており、そのうち一人との間には子供ができていた。
 そのため輝かしい栄光を残しながらも下半身が奔放な遊路をプロとして迎え入れる事務所はなかったのである。誰もが遊路のデュエルの腕ではなく、遊路を所属させることで起こるイメージダウンを恐れて。しかし、そんな彼に救いの手を差し伸べたのが他ならぬニューサニーアップ事務所であったのだ。

「あの、大高さんも先生のことは……」
「えっと、評価して頂いたことは嬉しいですが……私は複数の方に愛を注ぐ方よりかは一人の方に愛されたいので……」
「そうですか……」

 遊海の中で遊路が恋愛対象ではない、ということを知って安堵の笑みを浮かべる心愛。遊海の目にも心愛が遊路に対してどのような感情を抱いているのかがよくわかった。

「あの……実はクイーン・フォースの皆さんにお願いがあるのですが……」
「んだよ。もしかして今からデュエルをしたいとか言うんじゃねえだろうな」
「あう」

 クイーン・フォースは同年代の少年少女デュエリストにとってはスターそのものである。それは遊海にとっても同じようで、まさか自分が今ここであのクイーン・フォースと同じ空間に存在し、同じ空気を吸っているとは一日前の自分は思ってもみなかっただろう。

「やめとけよ。お前じゃアタシたちには勝てねえだろ」
「シャオなら別にいいアルヨ!」
「私も……」
「あの、言い出しておいてなんですが、私に提案があるんです」
「提案?」
「ええ……例えば―――」










―――私と……クイーン・フォースの皆さんでデュエルをする、とか―――










●次回予告

大空 仁
「デュエル甲子園の前年度覇者、クイーン・フォースになんと1対3。しかもライフは8000対3人分の24000という変則ルールでデュエルを挑むだと? いくら自分の腕に自信があるとはいえ、あまりにも無謀すぎるデュエルだ。案の定、クイーン・フォースのリーダーである虹宮 詩音は怒り心頭。これではむざむざやられるだけ。だが……お前はやはりあの力を使うと言うのか?」

次回 「圧倒のクイーン・フォース」

大空 仁
「ところで……読者諸君は大高 遊海の正体に気付いているよな? うん、そう。あいつなんだ。だから幻滅するなよ?」









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ヒラーズ
ごまかすとはいえ名前の一部が反対に…。
クイーン・フォースに挑む遊d…遊海さんはどこまでやり合えるか楽しみです。
陸也「女性キャラを多数相手にするとはすごいデュエルを行うのだな遊大殿は」
海理「私も1度は1戦交えてみたいものですね」 (2019-01-11 07:43)
ター坊
クイーン・フォースだけでなくルナの紹介もしてくれるとは。
遊路「くっしゅん!…誰かに悪口言われたような気がする」
そして波乱の大乱闘が勃発。オーダー抜きとはいえ、勝てるのか? (2019-01-11 10:19)
ギガプラント
クイーンフォースの面々が見られるのは嬉しいですね。
自分には勝てないだろうという発言に対して、3体1でやろうぜーとは…これは詩音ちゃんブチ切れでも仕方ないですわ…。しかしまぁ彼女(と言っておこう)もとんでもない実力でしょうし…。あっさり負けるなんて事はないんだろうな…。 (2019-01-12 12:42)
光芒
ヒラーズさん
遊大は一対他というのは実は初めてではないですからね。そこで勝利を収めているからこそ、遊海はこの方法でのデュエルを挑んだのかもしれません。虹彩竜完結後の彼は地味に頭を働かせています。

ター坊さん
一応紹介できるところは紹介しておこうと思います。ルナはDevil Driverの方でも結構活躍していますからね。

>遊路「くっしゅん!…誰かに悪口言われたような気がする」
心当たりあるんですね(え

ギガプラントさん
クイーン・フォースは実力的にもかなりの存在であるので、この三人は出してみたいと思っていました。最もオーダーカード以外のカードを使っている三人を見てみたい、という気持ちも少なからずはありましたが。

>自分には勝てないだろうという発言に対して、3体1でやろうぜーとは…これは詩音ちゃんブチ切れでも仕方ないですわ…。
こういう時にちょっとキレやすい(?)詩音の存在は便利ですね。

>しかしまぁ彼女(と言っておこう)もとんでもない実力でしょうし…。あっさり負けるなんて事はないんだろうな…。
結構超展開なデュエルになると思います。
(2019-01-12 17:17)

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