第135話：決戦・2　作：光芒

「ダークシンクロ……―――現れよ！《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》！！」


　遊厳のフィールドに現れたのは、竜の頭部と下半身に人間の胴体と腕を持った巨大なモンスターだった。漆黒の身体を赤いオーラで包んだそれは、TWOビルの屋上から都心の曇った夜空を貫かんとばかりに天へと聳え立っていた。



《究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン》
シンクロ・効果モンスター
星0/闇属性/ドラゴン族/攻0/守0
ルール上、このカードのレベルは12として扱う。このカードはS召喚できず、自分フィールドのレベル8以上で同じレベルの、チューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。
(1)：このカードは効果では破壊されず、攻撃力はフィールドのモンスターの数×1000アップする。
(2)：1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。お互いのフィールドに同じ数だけ、「邪眼神トークン」（悪魔族・闇・星1・攻/守0）を可能な限り守備表示で特殊召喚する。このターンこのカードは攻撃できない。



「レベル0の……シンクロモンスター！？」
「究極幻神 アルティミトル・ビシバールキンはシンクロモンスターであるがシンクロ召喚できず、自分フィールドのレベル8以上で同じレベルのチューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。最もそのレベルは12として扱うがな。アルティミトル・ビシバールキンの効果を発動。 “邪眼新生”」

　アルティミトル・ビシバールキンの咆哮と共に二人のフィールドには巨大な目玉のようなモンスターが4体ずつ現れる。

「っ！？」
「アルティミトル・ビシバールキンは1ターンに1度、互いのメインフェイズにお互いのフィールドに同じ数だけ邪眼神トークンを可能な限り守備表示で特殊召喚できる。そしてビシバールキンの攻撃力はフィールドのモンスターの数×1000ポイントの数値になる」

究極幻神 アルティミトル・ビシバールキン　ATK0→ATK9000

「攻撃力……9000……」
「これでお前のフィールドのモンスターゾーンの空きは1か所。トークンを利用できないエクシーズ召喚を行えず、シンクロ召喚をするならチューナーモンスターが必要。融合召喚の素材にはできるが……果たしてお前のEXデッキに融合召喚を行えるモンスターは残っているかな？」

　邪眼神トークンの属性は闇。そのためフィールドの闇属性モンスターを融合素材に指定するスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの融合素材にはできる。だが、そのスターヴ・ヴェノムは既にザボルグの効果で墓地へ送られてしまっていた。

「魔法カード、トレード・インを発動。レベル8のカオス・MAXを墓地へ送り2枚ドロー。私はカードを1枚セットしてターンエンドだ」


遊厳　LP6000　手札4枚
デッキ：30　モンスター：5（究極幻神アルティミトル・ビシバールキン、邪眼神トークン×4）魔法・罠：2（冥界の宝札）墓地：15　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：6（0）
遊大　LP8000　手札5枚
デッキ：38　モンスター：4（邪眼神トークン×4）魔法・罠：0　墓地：10　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：7（0）


☆TURN02（遊大）

（……先攻でこっちのEXデッキを破壊しつつ、攻撃力9000のモンスター……やはり義父さんの強さは一線を退いた今でも尋常じゃないか）

　遊厳の言う通り、遊大のデッキの強さは覇王烈竜をはじめとしたEXデッキのモンスターにある。ペンデュラム召喚もそれ自体を主戦力とする召喚法ではなく、融合・シンクロ・エクシーズといった他の召喚法に対するつなぎの召喚法という意味合いが強いのだ。それが封じられてしまった以上、遊大はいつもの戦法を取ることができないのだ。

（でも……諦めたくないし、諦められない！ 俺はっ！）
「俺のターン、ドロー！！」
「スタンバイフェイズに前の私のターンに墓地へ送られたキメラフレシア2体の効果が発動。デッキからミラクルシンクロフュージョン2枚を手札に加える」

　遊厳はザボルグの効果でEXデッキのカードを8枚墓地へ送っていた。そしてそのうち4枚はシンクロモンスターであり、そしてミラクルシンクロフュージョンに対応したモンスターである。

（次のターン、義父さんはミラクルシンクロフュージョンの発動を狙う。でも、トークンがフィールドを埋め尽くしているのは義父さんも同じ。まだ猶予はあるはずだ……）
「俺はフィールド魔法、天空の虹彩を発動。そして左側のPゾーンにスケール4のオッドアイズ・ファントム・ドラゴンを、右側のPゾーンにスケール8のオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンをセッティング」

　融合もシンクロもエクシーズも封じられた遊大。それならば、彼は原点に返るだけであった。ペンデュラムという原点に。

「そして天空の虹彩の効果を発動！ Pゾーンのオッドアイズ・ファントム・ドラゴンを破壊し、デッキからオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に加える。そしてフィールドのオッドアイズが破壊された時、PゾーンのアークペンデュラムのP効果が発動！ デッキからオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンを守備表示で特殊召喚！」
「フィールドのモンスターが増えたことでビシバールキンの攻撃力は最大値の10000に達する」

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン　ATK9000→ATK10000

「攻撃力10000、か。でもビシバールキン攻略の糸筋は掴めた！ 俺は邪眼神トークン2体をリリースし、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをアドバンス召喚！」

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン　ATK10000→ATK9000

「なるほど……EXデッキから特殊召喚されたモンスターの効果を無効にするペルソナ・ドラゴンか。大方ペルソナ・ドラゴンの効果でビシバールキンの効果を無効化し、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの戦闘ダメージを倍にする効果で私のライフを削るということか。いい戦術だ。だが、思い通りにはさせない。私はリバースカードを発動する。永続罠《連撃の帝王》を発動だ」

《連撃の帝王》
永続罠
(1)：1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズにこの効果を発動できる。モンスター1体をアドバンス召喚する。

「連撃の帝王の効果。邪眼神トークン2体をリリース。《天帝アイテール》をアドバンス召喚だ」

《天帝アイテール》
効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2800/守1000
このカードはアドバンス召喚したモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。
(1)：このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。手札・デッキから「帝王」魔法・罠カード2種類を墓地へ送り、デッキから攻撃力2400以上で守備力1000のモンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに持ち主の手札に戻る。
(2)：このカードが手札にある場合、相手メインフェイズに自分の墓地の「帝王」魔法・罠カード1枚を除外して発動できる。このカードをアドバンス召喚する。

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン　ATK9000→ATK8000

「アドバンス召喚に成功したアイテールの効果、そして冥界の宝札の効果を発動」

チェーン2（遊厳）：冥界の宝札
チェーン1（遊厳）：天帝アイテール

「冥界の宝札の効果で2枚ドロー。そしてアイテールの効果で手札・デッキから帝王と名のついた魔法・罠カード2枚を墓地へ送り、デッキから攻撃力2400以上で守備力1000のモンスター1体を特殊召喚する。私はデッキから《汎神の帝王》と《真源の帝王》を墓地へ送り、デッキから《光帝クライス》を特殊召喚だ」

《光帝クライス》
効果モンスター
星6/光属性/戦士族/攻2400/守1000
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、フィールドのカードを2枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊し、破壊されたカードのコントローラーは破壊された枚数分だけデッキからドローできる。
(2)：このカードは召喚・特殊召喚したターンには攻撃できない。

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン　ATK8000→ATK9000

「特殊召喚に成功したクライスの効果。フィールドのカードを2枚まで対象として発動。そのカードを破壊し、破壊されたカードのコントローラーは破壊された枚数分デッキからカードをドローできる。対象はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとクライス自身だ」
「その効果にチェーンしてペルソナ・ドラゴンの効果を発動！」

チェーン2（遊大）：オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン
チェーン1（遊厳）：光帝クライス

「チェーン2のペルソナ・ドラゴンの効果でビシバールキンの効果をこのターンの終了時まで無効にする！」

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン　ATK9000→ATK0

「だが、クライスの効果でオッドアイズには消えてもらうぞ」

　クライスの放った二発の光弾がオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとクライス自身を貫く。既にアークペンデュラムの効果を発動してしまっているため、このターン新たなオッドアイズを呼ぶことはできない。召喚権を使ってしまった上でろくな反撃もできなかったのは痛かった。

「……っ！ 破壊されたオッドアイズのコントローラーは俺だから1枚ドローする。俺はこれで……ターンエンド」
「ターン終了に伴いビシバールキンの効果無効は消える」

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン　ATK7000


遊厳　LP6000　手札4枚
デッキ：26　モンスター：4（究極幻神アルティミトル・ビシバールキン、天帝アイテール、邪眼神トークン×2）魔法・罠：2（冥界の宝札、連撃の帝王）墓地：17　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：6（0）
遊大　LP8000　手札5枚
デッキ：34　モンスター：3（オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン、邪眼神トークン×2）魔法・罠：1（天空の虹彩）墓地：10　Pゾーン：青/赤8（オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン）除外：0　EXデッキ：7（2）


☆TURN03（遊厳）

「私のターン、ドロー」
「メインフェイズ1の開始時にペルソナ・ドラゴンの効果を発動！ ビシバールキンの効果をターン終了時まで無効にする！」

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン　ATK7000→ATK0

「まあいい、所詮姑息な時間稼ぎに過ぎない。私はチューナーモンスター、太古の白石を召喚。そしてレベル1の邪眼神トークンにレベル1の太古の白石をチューニング。レベル2のシンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロンをシンクロ召喚。シンクロ召喚に成功したフォーミュラ・シンクロンの効果で1枚ドロー。そしてもう1体の邪眼神トークンにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング。レベル3のシンクロチューナー、たつのこをシンクロ召喚。更にレベル8のアイテールにレベル3のシンクロチューナー、たつのこをチューニング。レベル11の《星態龍》をシンクロ召喚」

《星態龍》
シンクロ・効果モンスター
星11/光属性/ドラゴン族/攻3200/守2800
チューナー＋チューナー以外のモンスター1体以上
このカードはS召喚でしか特殊召喚できない。
(1)：このカードのS召喚は無効化されない。
(2)：このカードのS召喚成功時には、魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
(3)：このカードは攻撃する場合、ダメージステップ終了時まで他のカードの効果を受けない。

　遊厳のフィールドのモンスターを素材に彼のフィールドにはレベル11のSモンスター、星態龍がシンクロ召喚される。低ステータスの邪眼神トークンを処理しつつ、攻撃時に他のカードの効果を受け付けないモンスターを出す辺りはさすがの抜け目のなさと言えた。

（星態龍は当然厄介だけど……これで義父さんのモンスターゾーンは3つ空いた。墓地にはカオス・MAXと太古の白石、手札にはミラクルシンクロフュージョン……）
「私は1枚目のミラクルシンクロフュージョンを発動。墓地のナチュル・ビーストとナチュル・パルキオンをゲームから除外融合。現れよ。《ナチュル・エクストリオ》」

《ナチュル・エクストリオ》
融合・効果モンスター
星10/地属性/獣族/攻2800/守2400
「ナチュル・ビースト」＋「ナチュル・パルキオン」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
(1)：魔法・罠カードが発動した時、自分の墓地のカード1枚を除外し、デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動できる。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、その発動を無効にし破壊する。

「そして2枚目のミラクルシンクロフュージョンを発動。墓地のWW-ウィンター・ベル2体を除外融合。舞い降りよ。《WW-クリスタル・ベル》」

《WW-クリスタル・ベル》
融合・効果モンスター
星8/風属性/魔法使い族/攻2800/守2400
「ＷＷ-ウィンター・ベル」＋「ＷＷ」モンスター
「ＷＷ-クリスタル・ベル」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)：自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。エンドフェイズまで、このカードはそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。
(2)：このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地の、
「ＷＷ-ウィンター・ベル」1体とレベル4以下の「WW」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

「クリスタル・ベルの効果を発動。墓地のモンスター1体と同名カードとして扱い、同じ効果を得る。対象はブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」

WW-クリスタル・ベル→ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

　ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンの効果はカードの効果で破壊されない効果および守備表示モンスターを攻撃した時の貫通ダメージ、そしてその貫通ダメージを倍にするというものだ。
　ビシバールキンの効果で特殊召喚される邪眼神トークンの守備力は0。カオス・MAXのように一撃通せばすぐゲームエンドという攻撃こそ持ち合わせていないが、クリスタル・ベルの一撃でも5600のダメージが発生するため、決して見過ごせるものではない。

「墓地の太古の白石の効果を発動。このカードをゲームから除外し、墓地のブルーアイズを手札に戻す。もちろん私が戻すのはカオス・MAXだ」
「カオス・MAXが手札に戻った……義父さんの手札には……」
「儀式魔法、カオス・フォーム発動。墓地の青眼の白龍を除外し、儀式のリリースにする。儀式召喚、降臨せよ。ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン」

　ペルソナ・ドラゴンの効果でビシバールキンは無力化したが、脇をカオス・MAX、星態龍、クリスタル・ベル、ナチュル・エクストリオの4体で固める遊厳。
　星態龍は自身のS召喚時に相手のカードの発動を封じ、攻撃時にカードの効果を受け付けない。ナチュル・エクストリオは墓地のカード1枚除外＋デッキトップ墓地送りという手法で1ターン内に何度も魔法・罠の発動を無効にして破壊する。この2体が妨害を担い、ビシバールキンの効果で特殊召喚された守備力0の邪眼神トークンをカオス・MAXで貫く―――それが遊厳の狙いだったのだ。

「セントラル校で学び、どれほど強くなったのかと期待してみればこのザマか。不甲斐ないな」

　遊大は何も言い返すことはできなかった。実際自分が不甲斐ないのは事実であり、自分がもう少ししっかりしていれば遊希がこのような目に遭うこともなかったのだろうか、という負の感情が沸々と湧いてくる。

「……そうだ。最後にお前の願いを叶えてやろう」
「俺の願い？」
「お前がここに来た理由……それに会わせてやろう、というのだ」

　そう言って遊厳はコートのジャケットから取り出した装置のスイッチを押す。すると、ヘリポート後方の床が開き、中から仰々しい機械のようなものがせりあがってきた。一体何が起きているのだろうか、と疑念に思う遊大であったが、その疑念はすぐに払われた。



「……遊希さん！！」



　その装置を見て遊大は目の色を変える。何故ならば、その装置の中心部―――十字架を模した部分には身体の半分、右半身が竜のようなものに変化しつつあった遊希が磔にされていたからだ。