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邪龍使いの遊戯王GX/第十九話・吸血鬼の妹 作:鈴木颯手

カミューラが消えた後龍吾たちは一旦保健室に集まる事にした。十代を保健室に戻すためだ。

「くっそー!よくもクロノス先生を!」

十代がそう言うが誰もが黙っていた。理由は単純である。闇のデュエルが存在し負ければクロノス教諭の様になるとはっきりと分かったからである。

「どうすればクロノス教諭を元に戻せるんだ?」

「兄貴、寝てなきゃダメだよ」

「…クロノス教諭をもとに戻す方法は簡単だ。カミューラに勝てばいい」

そう言ったのは龍吾である。顔は何時もの通り無表情であるが十代達はどう見ても怒っているようにしか見えなかった。実際怒りのあまり握り締めた手が出血してしまい今は包帯で覆っている。

「でも負けたら、クロノス先生みたいに…そんなのまっぴらなのにゃー!」

大徳寺先生がそう言って思わず抱いていたネコの頭を握ってしまいネコが十代の寝ているベッドの下に潜り込んでしまう。それを追いかけるように大徳寺先生も下に潜ってしまう。

「あのヴァンパイアから招待状が届いたら先生は欠席すると伝えてなのにゃー!」

クロノス教諭とは全く正反対の大徳寺先生に龍吾は失笑するとドアの方へと向かう。それを見た万丈目が慌てて声をかける。

「お、おい!何処に行くんだ!?」

「…決まっているだろう?カミューラの所だ」

「今は待て!招待状が届いてからでも遅くないだろう!」

今の状態で戦えば負ける可能性がある。実際に経験している万丈目は龍吾を落ち着かせようとする。

「…そうだな」

龍吾は深呼吸をすると開いている椅子に座る。

「…しかし、闇のデュエルは言い伝えだと思っていたが…実在するとは」

「…命と魂をかける戦い。それが闇のデュエル」

「…問題ない。勝てばいいだけだ」

「そうだ。その通りだよ!」

龍吾の言葉に十代も同意するがけが人の十代に万丈目はシーツをかぶせる。

「勝つしかないって?簡単じゃねーかこの万丈目さんに任せればな」

「次は俺だ!って、いててて!」

十代は叫ぶがそれにより胸を押さえてしまう。それを見た万丈目がシーツを再びかけようとするがそれよりも先に龍吾が十代を寝かせてシーツを頭までかぶせる。

「…次は俺だ。それは譲れない」

「…龍吾、お前は一旦落ち着け」

今にも飛び出していきかねない龍吾を万丈目が必死に宥める。…しかし、あまり効果はないようだ。仕方なく龍吾たちは一旦解散する事になったが龍吾は部屋には戻らずに再び湖の方に向かう。しかし、そこには先客がいた。

「…」

「…丸藤亮」

学園で最強と言われている男が既にいた。龍吾はその隣に立つが二人は何も喋らない。お互い進んで喋らないことと龍吾が丸藤亮とあまり接点がないこともあった。

十代は制裁デュエルの前に知り合ったらしいがその時龍吾は寝ていたしオベリスクブルーに何者かが丸藤亮の部屋に侵入した時も運悪く校舎におり詳しくは知らなかった。

だが、龍吾は先にっておくことがあり一言言う。

「…次に戦うのは俺だ。あんたがどれほどクロノス教諭を尊敬しているのかは知らないが俺だってお世話になっている」

「…」

龍吾の言葉丸藤亮は無言を貫くがその姿勢から決して譲らないというオーラが出ていた。それを察した龍吾は説得は無理だなと思い招待状とやらが来るのを待つ。

暫く二人で湖を見ていると上空から大量の蝙蝠が現れた。あれが招待状なのだろうと思った龍吾は躊躇なくカミューラが通ってきた赤い道を通る。段々ときりが深くなっていくが直ぐに城門の所までたどり着く。後ろの方から複数の足音が聞こえてくるが龍吾は構わずに中に入る。中は一本道になっており龍吾は進んでいくが急にめまいが起こり少し立ち止まり収まるのを待つ。

暫くするとめまいも収まり龍吾は再び歩き出そうと前を見て固まる。そこは先ほどまで歩いていた一本道などではなく木造の扉の前に立っていた。龍吾は周りを見回すが完全に見知らぬ場所であり仕方なくドアノブを握り中に入る。

そこは小さな部屋で所々穴が開いていたりしてボロボロであった。そして部屋の脇には大きなベッドが置かれ中央の壁には机があり誰かがそこに向かっていた。

「…誰だ?」

龍吾は警戒しつつ中に入り尋ねる。するとその者は立ち上がると此方を向く。そこにはカミューラとよく似ている姿をした少女がいた。

「…お待ちしておりました。黒崎龍吾さん」

「…俺の名前を知っているのか?」

カミューラに似た少女はコクンと頷く。

「貴方の事はお姉ちゃんから聞いています。とても興味がある男、と」

「成程、つまりお前はカミューラの妹か」

「はい。リナと申します」

リナと名乗った少女はまるで貴族のようにスカートの端を少し持ち上げ頭を下げた。

「…それで?俺は何でここに呼ばれたのだ?」

龍吾はリナに問いかける。するとリナは少し悲しそうな表情となり俯いてしまう。

「…お願いがあります。どうか、お姉ちゃんを止めてほしいんです」

「…どういう事だ?」

龍吾の疑問にリナは話し始める。

「私たち吸血鬼の一族は昔、孤高で誇り高く生きていました。ですが人間は私たちを化け物と恐れ迫害してきました。そして一族は私たちを残し滅びました」

語られ始めたのはおとぎ話と思われていた吸血鬼の一族の話。龍吾は黙ってその話に耳を傾けていた。

「そして私たちは棺の中で永遠の眠りについていました。しかし、ある時お姉ちゃんを起こす者がいてその人にヴァンパイア一族を復興させないかと話を持ち掛けられたそうです。詳細は私には話してくれませんでしたが人間の魂を使って滅びた一族を復活させるそうです」

「…そんな事が可能なのか?」

龍吾はあり得ないと思いつつレナに聞く。

「私も詳しくは知らないため詳細は言えませんがそれは事実です」

「…そうか。それで俺はカミューラを止めればいいのだな?」

「はい。それと、これを持って行ってください」

そう言って渡してきたのは一枚の魔法カードであった。

「幻魔の書?これは…」

「お姉ちゃんが持っている幻魔の扉を止める事の出来るカードです。幻魔の扉はとても強力なカードです。その代りデュエルに負けるとその魂が幻魔のものとなってしまう恐ろしいカードです。ですがお姉ちゃんはそれを別の人物に変える能力を持っています」

「…厄介なカードだ。分かった。個人的にあいつは気に入らなかった。もう一度棺に押し込んでやるよ」

龍吾はそう言うと踵を返し部屋を出て行こうとする。レナは龍吾の後ろ姿に頭を下げるのであった。





☆★☆★☆
「サイバー・バリア・ドラゴンの直接攻撃!エヴォリューション・バリアショット!」

龍吾が部屋を出るとそこは大広間に続いており丸藤亮とカミューラが戦う姿がった。

「龍吾!?一体何処にいたんだ!?」

龍吾が現れた近くで様子を見ていた万丈目が驚きの声を上げる。龍吾は淡々と返す。

「…少し、な」

「そうか…。だが、カミューラもこれでおしまいだ。既にカイザーが圧倒的に有利だからな」

万丈目はそう言い再び観戦する。龍吾も場を見れば丸藤亮が有利だと言うのが一目瞭然であった。

カミューラには伏せカードもモンスターも存在せず対する丸藤亮の場には相手の攻撃を一度だけ無効にできるサイバー・バリア・ドラゴンに自分より攻撃力の高いモンスターを破壊できるサイバー・レーザー・ドラゴンが存在している。攻守が揃った万全の体制を構築していた。

「憎たらしい、可愛さ余って憎さ百倍だわ」

クロノス教諭とのデュエルの時にもあったカミューラの口が大きく開き舌を出していた。

「あたしのターン!おしおき」

カミューラは今引いたカードを見るとふいにそんな事を言ってくる。龍吾は何か逆転できるカードを引いたのかと警戒する。

「手札から魔法カード幻魔の扉発動」

引いたのは先ほどカミューラの妹、レナから聞いていた最悪のカード。効果までは聞いていなかったが強力な効果を持っている事だけは分かっており今後の展開も予想できた龍吾はカミューラから一歩離れる。

「幻魔の扉。このカードはまず相手の場のモンスター全てを破壊する!」

カミューラがそう言うとカミューラの後方に禍々しい扉が現れその扉が開くと二体の機械龍を破壊してしまう。

「もう一つ良い事を教えて差し上げますわ。このカードはデュエル中に使用したモンスターを条件なしで特殊召喚することが出来るの」

カミューラがそう言うと鏡写しのようにもう一人のカミューラが現れる。

「…何!?」

「そう、融合解除したとはいえ一度でも使用したサイバー・エンド・ドラゴンでもね!」

「…厄介な」

サンダーボルトと無条件の死者蘇生を兼ね備えたカードなら魂が代償と言うのも頷けると思いつつ相手の出方を待つ。

「勿論、その代償は高くこのデュエルに負ければ私の魂は幻魔の物となる…なんだけど~闇のデュエルらしく使わせていただきますわ~」

そう言うとカミューラは丸藤亮の弟、翔に視線を向ける。

「例えばあなたの弟に私の代わりをしてもらうとか、ね」

「っ!逃げろ翔!」

丸藤亮と龍吾が駆けだすのは同時であった。いきなりの事で対応できていない翔を龍吾は突き飛ばす。そこへカミューラの分身が現れるが龍吾の妨害に表情を歪めると翔の方へ向かおうとする。

「翔!」

十代が駆け寄ろうとするが上手く体を動かす事は出来ずその場に膝をついてしまう。

そうしている間に翔の首筋に噛みつこうとしているが翔の首とカミューラの間に龍吾は自分の腕を咄嗟に突き出す。結果龍吾の腕に噛みつくこととなり龍吾は体から力が抜けるのを感じていった。

「っちぃ!いつの間に現れたのか知らないけど仕方ないわね」

「龍吾!」

力なく倒れそうになる龍吾に三沢たちが駆け寄ろうとするがそれよりも先にカミューラの分身が龍吾の体を持ち上げて元の場所に戻ってしまう。

「黒崎龍吾の魂を生贄にサイバー・エンド・ドラゴンを召喚!」

カミューラがそう言うと目の前に半透明の三つ首のドラゴン、サイバー・エンド・ドラゴンが現れ龍吾の体から何かが抜ける感じがするとサイバー・エンド・ドラゴンに流れ込みサイバー・エンド・ドラゴンが現れる。

「…くっ!」

「龍吾!」

「龍吾さん!」

龍吾が守った翔が悲痛な声を上げるが意識が朦朧としている龍吾は意識を保つので精いっぱいであった。

「貴方とカイザーにあまり接点はないからあまり効果はないでしょうけどこのサイバー・エンド・ドラゴンを破壊すれば貴方は二度とこの世界には存在できなくなるわ」

「…カミューラぁ!」

龍吾は今できる事としてカミューラを睨みつける事しか出来なかった。だが、それはカミューラを喜ばすだけであった。

「ふふ、やっぱりいいわぁ。幻魔に捧げるのが惜しい位。…さて、あなたのターンよ」

「…」

丸藤亮は少し苦々しい顔をしながらデッキからドローすると龍吾の方を向く。龍吾は悔しいがこれでカミューラを倒せるならと構わず倒せと目で語る。丸藤亮もそれをきちんと受け取ったがやがて何もせず手を降ろすと一言言う。

「…ターンエンド」

「!?カイザー!」

丸藤亮の行動に龍吾はキレると気力で立ち上がる。カミューラそれに驚くが構わずに続ける。

「俺の為にそんな事をするのなら今すぐに取り消せ!俺のことは構わずカミューラを倒せ!」

しかし丸藤亮は答えず龍吾は歯を食いしばる。やがて限界が来たのか再び座り込んでしまうが目には怒りの表情を作っていた。

「ほほほほ!どうやらこれで終わりね。サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃!エターナル・エボリューション・バースト!」

カミューラに操られたサイバー・エンド・ドラゴンが丸藤亮に攻撃し、それが通り丸藤亮のライフは0となった。

「カイザー!」

「お兄さん!」

翔たちが叫ぶが丸藤亮は倒れクロノス教諭と同じくカミューラが取り出した人形に吸い込まれ消えていった。

「ふふ、これで二つ目。…ああ、安心なさい。この人形は私のコレクションとして大事に大事に扱ってあげるわ」

「…カミューラ」

デュエルが終わってから俯き黙っていた龍吾は顔を上げカミューラを見る。その眼には今にも破裂しそうな火山のように怒りが映っていた。

「…次は俺が相手だ。貴様を必ず倒す」

「…そう。なら楽しみにしているわ」

カミューラはそれだけ言うとその場から砂のようになり消えあたりを霧が包み込んだかと思うといつの間に湖のほとりに移されていた。龍吾は動くようになった手で地面を殴りつける。

「…くそ!俺のせいで…」

「…龍吾さんは悪くないっス。僕が咄嗟に動けなかったから…」

自責の念に捕らわれる龍吾に翔はそう言うが全く耳に入って来なかった。龍吾はカミューラのいる城の方を見るとレナからもらったカードを取り出す。

「…必ずカミューラを倒す」

龍吾はそう呟くと湖を後にするのであった。
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