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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第十四話 バトルシップ最終戦 海馬vs舞

第十四話 バトルシップ最終戦 海馬vs舞 作:サクラ

「城之内くん!!」
「お兄ちゃん!!」
「城之内!!」

遊戯達は倒れた城之内の名前を叫ぶ。審判の黒服はデュエルが終わっていない為にカウントを取り始めるが、モクバが止めさせる。

「城之内!しっかりしろ!城之──」

モクバは城之内の様子がおかしい事に気がつく。恐る恐る手を城之内の口に近づけてみる。

「そんな……城之内のヤツ……い、息してねぇぜ……」
「「「「「!?」」」」」

遊戯達は戦慄する。遊香もデュエル場に登って城之内の手首や首に触れてみる。

「城之内君の脈も動いてない……これって……城之内君、し、死んで──」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!城之内がこんなんでくたばるわけがねぇ!!」

本田も遊戯も御伽も杏子も静香もデュエル場に上がって身体を揺すったりしてみるが、城之内は動かない。

「城之内克也。デュエル続行不可能と判断して決勝トーナメント第三回戦勝者はマリク・イシュタール!」
「磯野!早く救急班を呼べ!城之内を部屋に連れて行くんだ!」
「は!」

黒服こと磯野はスマホを取り出すと電話をかけ始める。

「城之内!おい!目を覚ませ城之内!目を覚ませこの野郎!!」
「落ち着くんだ本田君!」
「くそ!ちくしょおお!!」

城之内の事でいっぱいいっぱいの本田は興奮し過ぎて我を忘れて殴り掛かろうとした所を御伽が必死に止める。
本田は自我を取り戻すも無力な自分自身への悔しさから咆哮をあげる。
黒服達が担架を持ってくると、城之内を乗せて行く。遊戯達も一緒に運ばれて行く城之内について行く。
バトルシップの医療室に入ってそこのドクターに診てもらう。

「先生!城之内は!城之内は何とかなるんですよね!?男、本田この通りこの馬鹿を治してやってくれ!頼む!」
「す、すまない……原因も異常も発見されないんだ……これではまったく手の施しようがない……」

本田は土下座してドクターに頼み込むも、ドクターは悔しそうに顔を背けてしまう。本田はドクターを掴み上げる。

「なんだと!アンタ医者だろ!?病人を治すのが仕事だろうが!!」
「本田やめて!」

杏子の一言で本田はドクターから手を離す。

「しかし、かなり危険な状態だ。私も出来る限り手を───」
「待て」

ドクターの一言を遮る声が1つ。その場の全員が声の主の方に向く。

「ゆ、遊香……?」
「退いてくれるかな?本田君」

遊香の雰囲気が変わる。本田は退くと遊香は城之内の前に移動した。遊香はピアスを指ではじくと城之内の額に人差し指を置く。すると遊香の額にウジャト眼の紋章が浮かび上がる。遊香は目をつぶって指を置き続ける。

「お、おい?何をやってんだ遊香?」

本田が遊香に尋ねる。遊香の不思議な動きに思わずドクターへの怒りが消え去り、怪訝な顔で遊香を見つめる。遊香の額からウジャト眼の紋章が消えると口を開いた。

「闇のゲームでの敗者の罰ゲームは、現代医学ではどうする事も出来ない。でも、千年アイテムを持つ者は闇のゲームや罰ゲームに干渉できる。これでどうにか城之内君の一命を取り留めた。消えかかる精神力を食い止めたのさ。目覚められるかどうかは城之内君次第だが、場合によっては罰ゲームの影響で寝たきりになるかもしれない」
「ほ、本当か!?遊香!」
「ふふ、この私だぞ?嘘はつかないさ」

本田はホッと安心すると、これまでの衝動で座り込んでしまった。他の人たちも安心したように溜め息を吐いている。しかし、その中で二人顔が険しい人たちがいる。二人は医務室を出て行った。遊香はそれを見て自分も外に出た。一人はすぐ外の廊下で拳を壁に突き付けていた。

「遊戯君」
「!?君は……遊香か……すまない。今は一人に───」

遊戯がいい終わる前に遊香はあるものを遊戯に投げ渡す。遊戯はそれを受け取ると、驚きで目を見開いた。

「これは千年タウク!?」
「イシズ・イシュタールからの戦利品だ。これには未来を見る力がある。それに映し出される映像は未来のもの。ただし、それは一つの結末だ」
「結末?」
「遊戯君。君が戦うかどうかによってこの結末は変わってくるということだ」
「!!」

遊戯の心に一閃の光が差し込む。遊戯は城之内が倒れた事にショックを受け、戦いを辞退しようとまで考えていた。自分自身の失われた記憶が仲間たちの犠牲の上にあるなど、そんな物に本当に価値があるのだろうか。遊戯は自問自答を繰り返して行った結果だった。しかし、遊戯は遊香から投げ渡された千年タウクが光り出している事に気がつく。千年タウクが激しく光りだすと、そこには童実野町が映し出されていた。そこには対峙する二つの影、そしてもう一つは離れたところにあった。

『城之内くん。準備はいいか?』
『ああ!始めようぜ!』
『『俺たちのバトルシティは終わりじゃない!!』』

そう、遊戯と城之内が対峙してデュエルが始まるまでの短い時間。それが映し出される。これを見終えた遊戯の目は決意に満ちていた。そして、遊香の方に向き直す。

「遊戯君?」
「遊香。君は俺たちの敵なのか?それとも味方なのか?DEATH-Tの時の君は敵だった。しかし、その前は俺も相棒も味方だと思っていた。君の本当の目的を教えてくれ」

遊戯は真剣な眼差しで遊香を見つめ、問うてくる。敵なのか味方なのか。DEATH-Tでは仲間たちを危険に晒し、自分の魂を奪い取ろうとした。だが、今の遊香は戦意喪失になった自分に千年タウクによる未来のビジョンを見せて遊戯の戦意を取り戻させた。

「どうなんだ?」
「私は……」

遊香は止まる。善と悪、光と闇のどちらかと聞かれれば即答でどちらも後者を選ぶ。しかし、敵が味方かと聞かれるとなんとも言えない。遊香のなかでは彼らは利用しているに違なかったからだ。遊香の中で眠っている器の遊香はまごう事なく味方だろう。だが、三千年前の記憶である自分自身は彼らの味方なのか、敵なのかはわからない。でも、

「敵だ。私は基本的に君たちの敵だ。私はペガサスやバクラ、マリク同様に闇人格だからね。記憶を取り戻してそこからどうするかはわからないが、私は君たちと仲間ごっこを勤しむ事はないだろうさ。では私は先に天空デュエル場に行くよ。そろそろ決勝トーナメントのラストの組み合わせが戦う事になるだろうしね」

遊香はスタスタと歩いて行ってしまった。遊戯は遊香がエレベーターに乗る所を見送る。

『もう一人の僕。僕はね、あのもう一人の遊香さんはそれほど悪い人じゃないと思うんだ。確かに謎な部分が多いし、DEATH-Tでは海馬くんの魂を奪い取ってみんなを危険な目に遭わせたけど、僕は何となく彼女には訳があるんじゃないかって思うんだよ』
「相棒……」
『何か大切な物があるというのか……それを求めているみたいなんだ。それが彼女の三千年の記憶にあるのかもしれない』
「ああ、その考えは俺も同感だ。遊香に敵か味方か聞いた時に、一瞬だが迷いを感じた」

洞察力のある遊戯は遊香の一瞬の感情の揺れを感じ取ったようだ。表の遊戯も心の中で頷く。遊香の真意はわからないが、千年タウクが見せたあの映像が現実になる為に遊戯も天空デュエル場に向かって歩き出した。






「それでは決勝トーナメント最終戦、対戦者海馬瀬戸vs孔雀舞!それではデュエル開始ぃぃ!!」

「「デュエル!!」」

「俺の先攻!手札から《ブラッド・ヴォルス》を召喚!更に《デーモンの斧》を装備させ、攻撃力を2900にする!カードを伏せ、これでターン終了だ!」
「アタシのターン!ドロー!アタシは《アマゾネスの剣士》を召喚!更に装備魔法《ミスト・ボディ》を装備させ、《アマゾネスの剣士》は戦闘で破壊されなくなったわ!」

エレベーターの扉が開くと、本田、御伽、杏子が出てきた。

「みんな……」
「舞さん頑張って!」
「静香ちゃんは城之内のそばに居てあげてる。頑張ってって言っていたよ!」
「そうだぜ!頑張れよ舞!」

舞の顔が少し綻ぶ。そして、気を引き締めて対戦者の海馬を睨み付けた。

「ふぅん、友の結束の力か……孔雀舞、貴様の話はデュエルモンスターズ界隈でもよく話を聞くが……聞いていた話とは違った様だ」
「どういう意味かしら?」
「何、孔雀舞は孤高の女デュエリストで通っていると聞いていただけだ。そんな奴が友の声援に喜び、それに応えようとしているのが何ともイメージ違っているのでな」

海馬の一言に舞は腹立たしさを感じる。自分が彼らの仲間としているのが悪いのかと叫びたい気持ちで一杯だった。しかし、それ以上に今の舞の心にはそれ以上に深く根付いているものがあった。

(城之内……アタシは海馬を倒して、先に進むよ。そしてマリクを倒してアンタも救い出してみせる。だから待っていて!)

「バトル!《アマゾネスの剣士》で《ブラッド・ヴォルス》を攻撃!」
「お、おい!何やってんだよ舞!いくら《ミスト・ボディ》で《アマゾネスの剣士》が戦闘で破壊されないからって、それでも攻撃力は《ブラッド・ヴォルス》の方が上だぞ!これじゃあみすみすダメージを受けに行くようなモンだぜ!」
「いえ、ダメージは受けないわ!」

アマゾネスの剣士の剣がブラッド・ヴォルスの斧とぶつかる。しかし、舞のライフポイントではなく海馬のライフポイントが減っていく。

「何?」
「驚いたかしら?《アマゾネスの剣士》との戦闘で受ける戦闘ダメージはアタシではなく、海馬!アンタが受けるのよ!」

海馬 LP2600
舞 LP4000

「ふん、この程度のダメージなど貴様にくれてやる。さっさとターンを進めろ」
「言われなくてもそうさせてもらうわよ。カードを伏せてターンエンドよ」
「俺のターン!ドロー!《ミノタウルス》を攻撃表示!ターン終了だ」

攻撃力1700のギリシャ神話の牛の怪物が現れた。しかし、ミスト・ボディとアマゾネスの剣士のコンボにより、攻撃力の高いモンスターは出すだけ自分が不利になる。それでも海馬は召喚したのだ。何かあると考える。

「アタシのターン!ドロー!」
「この瞬間!俺のフィールドに攻撃力2000以上の闇属性モンスターがいる時、このカードを発動できる!罠カード《魔のデッキ破壊ウイルス》!これにより、攻撃力1500以下の手札と場のモンスターを破壊だ、か3ターンの間貴様がドローしたカードをお互いし確認して1500以下なら破壊される!」
「何ですって!?」
「これが魔のウイルスコンボだ!さぁ手札と場の1500以下のモンスターを墓地に送れ!」

アマゾネスの剣士は1500丁度。そして、装備されているミスト・ボディは効果破壊には無力だ。ブラッド・ヴォルスの周りにウイルスが蔓延する。ブラッド・ヴォルスは苦しそうに首を抑えてのたうちまわると、そのまま動かなくなった。すると、ブラッド・ヴォルスの口や目や鼻からウイルスが飛び出して、アマゾネスの剣士や舞の手札に充満した。汚染されたアマゾネスの剣士と手札2枚を墓地に送る。

舞の手札は2枚
海馬の手札2枚

「くっ!私は《味方殺しの女騎士》を召喚し、カードを伏せてターンエンドよ!」
「ふぅん。どうやらアマゾネスデッキの弱点である打点の低さが仇となったようだな……。俺のターン!ドロー!《闇・道化師のペーテン》召喚!」

海馬のフィールドにピエロが現れた。ピエロはケラケラ笑うと舞に舌を出して馬鹿にしたような態度をとる。舞は視線を強くしてペーテンを睨み付けた。

「喜ぶがいい孔雀舞!貴様に神を見せてやろう!」
「なんですって!?」

海馬のフィールドにはミノタウルスと闇・道化師のペーテンのみ。神のカードは召喚するには3体のモンスターをリリースしなければならない。通常召喚は既にペーテンに使った為、召喚も出来ないのに神を見せると?舞は警戒心はマックスになった。

「魔法カード《クロス・ソウル》発動!モンスターをリリースする時、貴様のモンスターをリリース出来る!」
「何を言っているの?アンタは既に《闇・道化師のペーテン》を召喚しているわ!デュエルモンスターズではモンスターの通常召喚は一回だけよ!」
「ふぅん貴様に言われずともそんな事は理解しているわ!魔法カード《カード・アドバンス》!デッキの上から5枚をめくり、好きな順番でデッキに戻す。そしてこのターン俺はもう一度アドバンス召喚が出来る!」
「何ですって!?」

海馬はデッキから5枚のカードをめくって好きな順番にデッキに戻した。

「そしてこれで神を呼び込む!魔法カード《命削りの宝札》発動!手札が3枚になる様にカードをドローし、ターン終了時に手札を全て墓地に送る!俺の手札は0だ。よって3枚ドロー!ッ!!」

海馬はニヤリと笑う。

「孔雀舞。貴様に見せてやろう!この俺の神の姿を!結束の力など神のカードの前では無力だ!《ミノタウルス》、《闇・道化師のペーテン》、貴様の《味方殺しの女騎士》をリリースしてアドバンス召喚!降臨せよ!《オベリスクの巨神兵》!!」

ミノタウルス、ペーテン、味方殺しの女騎士が地面に埋もれていく。すると、地面からヒビが出来て光が湧き出てくる。そして、地面から巨大な手が出てきた。それが地面につくと中から巨人が這い出てきた。

「◼️◼️◼️◼️◼️───!!」

オベリスクの巨神兵は声を張り上げて咆哮する。舞は吹き飛ばされない様に前傾姿勢になって構える。

「孔雀舞!貴様も俺の闘いのロード。その屍となるがいい!ワハハハ!!」

海馬の高笑いがどこまでも響き渡った。
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ター坊
ガッツじゃなくて遊香によって城之内は多少持ち直しましたね。
果たして遊香の3000年の記憶とは何があるのか。バトルシティ後の記憶編などで明らかになるか?
原作ではなかった舞VS海馬も面白そうです。 (2018-11-16 15:05)
サクラ
復活するのは城之内君のガッツなので(震え声)
遊香の3000年前の記憶は大体こんな感じっていうのは決まっているのでその時までお楽しみに! (2018-11-16 16:37)

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