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0:小噺 作:グレイ
少女が放課後帰路に付いていると、3人の男に行く手を塞がれた。
時刻は午後7時。人通りの少ない道であり、少女にとってあまり芳しくない状況である。幸いにも男達は腕にデュエルバンドを装着しているので、男達が誇りあるデュエリストである場合、デュエルに勝利すれば大人しく引き下がってくれると予想される。なのだが、少女は自分の実力にはあまり自信を持てていない。加えて、男達は容貌や言動から小悪党という印象をおぼえ、勝利しても退かないどころかデュエルを受けないまであるかもしれない。後退る少女を追う如く男の一人は腕を掴んだ。
「ちょっと待ちな!」
刹那聞こえてきた背後からの声に男達は思わず振り向き、誰だ、と投げかけた。声の主は一人の女性であった。少女も声の方へ目を向けると、女性が目配せをしたことに気が付いた。その旨は解る、今のうちに逃げろと言われている。信じて少女は逃げ出した。
隙を突かれた男達は畜生、と呟く。
「この往来で不埒な真似は見過ごさないよ」
「何だと……何者だお前!」
「私とデュエルをしよう。私が勝てばあの子には二度と関わらない。君達が勝てば私は君達には二度と関わらない」
男の呼びかけに応じず、女性はデュエルバンドを構えた。頭に来た男達もデュエルバンドを構える。やっちゃってくださいよ先輩、と言われ一人が前に出るのだが、全員で来なよと煽りを受ける。後ろの二人もさらに頭に来てバンドを構えたことで、全員が臨戦態勢に移った。
「「「「デュエル!」」」」
――――
4人のデュエルバンドが連動し、ディスプレイに記された先攻プレイヤーは女性――その名は栞と記されていた。
「私のターン。私はリバースカードを1枚セットし、ターンを終了する」
デュエル前に煽って来た反面1ターン目の行動はカードのセットのみ。モンスターも存在せずフィールドはガラ空きである。男達を驚愕が襲ったが、すぐさま嘲笑に変貌する。
「俺達3人を相手取るというのにフィールドはそれだけか。笑わせやがって」
「フン、こんな布陣取るに足らないすよ。ドロー!永続魔法、《トリニティインパクト》を発動し、《トリニティナイト・マゼンタ》を召喚!」
男のフィールドに、赤紫色の鎧を纏う戦士が現れた。
「永続魔法《トリニティインパクト》の効果発動!トリニティナイトが召喚されるたび、相手に500のダメージを受けてもらう!」
場の永続カードからエネルギー波が射出され、栞のライフポイントは3500となった。
「そしてバトル!攻撃力1500の《マゼンタ》で相手に直接攻撃!」
赤紫の戦士が栞のライフを切り裂いた――と思いきや、栞のリバースカードが発動していた。
「永続トラップ発動、《デプス・アミュレット》。相手からの攻撃を受ける時、手札1枚を墓地へ送り、その攻撃は無効とする」
永続カードの障壁に阻まれ、戦士は男のフィールドに帰還した。
「姑息なカードを……俺はカードを1枚伏せてターン終了!」
「ならば俺のターン!俺も手札の《トリニティインパクト》を発動し、《トリニティナイト・シアン》を召喚する!」
次なる戦士は水色の鎧を纏い、フィールドに現れた。
「トリニティナイトの召喚に反応し、こいつのフィールドのと合わせ、《インパクト》2枚分の効果!合計1000のライフダメージを食らえ!」
今度は2回のエネルギー波が射出され、聖のライフポイントは2500。
「そして《シアン》でプレイヤーを攻撃する!」
「《デプス・アミュレット》。手札1枚で攻撃はまた無効」
水色の戦士も障壁に阻まれ、フィールドへと戻る。
「フン!無効にはされるが手札は減っている。リバースカードを1枚セットしてターンを終える!」
「俺のターン。手札から永続マジック《トリニティインパクト》を発動!そして《トリニティナイト・イエロー》を召喚!」
更なる戦士は黄色の鎧を纏っていた。
「3枚分の《インパクト》により、1500ダメージを相手に与える!」
みたびエネルギー波を受けて、ライフポイントはわずか1000となる。
「それだけじゃねえ。《インパクト》の隠された効果を発動!トリニティナイトが3体揃っている場合、トリニティナイトの攻撃力は3000となる!さらに、《イエロー》はこのバトルフェイズに2回の攻撃ができる!」
三色の戦士は剣を交わし、巨大化し攻撃力を大きく上げる。さらに黄色の戦士は双剣となり、栞へのダイレクトアタックを行う。
「もちろん、《デプス・アミュレット》の効果によって手札2枚を捨てて攻撃は無効!」
二たびの攻撃もかなわず、戦士は元のフィールドに帰還するだけとなった。
「余裕そうな顔をしているが、ライフは1000、手札は0。その永続トラップもこのエンドフェイズに破壊されフィールドには何もない。おしまいだな……俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ!」
「私のターン、ドロー。手札から速攻魔法、《破魔の矢》を発動!このターンのバトルフェイズ、相手が発動したマジック・トラップカードの効果を無効にして破壊できる」
「何だと!?」
男達が伏せていたカードは相手の攻撃がスイッチとなるカードであった。もはやこのターン無意味に伏せているカードと化したのである。
「さらにスタンバイフェイズに手札とフィールドにカードがない場合、墓地の《破魔獣モウニング・モンキー》を特殊召喚できる!」
墓地から現れたのは、巨躯なる猿。巨大化した戦士達を凌ぐ大きさであるが、攻撃力は2500と届かない。
「この効果でモウニング・モンキーが特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのマジック・トラップカードを全て破壊することができる!」
「何だと!?」
巨躯なる猿はその手を一振りし、3枚の伏せカードと3枚の永続カードを破壊した。
「そしてこのカードの攻撃力は破壊したカード1枚につき500アップし、相手フィールドの全てのモンスターに攻撃できる!」
「破壊されたのは6枚……ってことは……攻撃力5500のだと!?」
モウニング・モンキーは更なる巨大化をし、永続カードを失った戦士達は遠く及ぶべくもなかった。
「バトルフェイズ!モウニング・モンキーで3体のトリニティナイトを攻撃!ワイルドカウンター!」
「クソが……うわああああああ!」
戦士達の迎撃も空しく、たった1体のモンスターで男達のライフポイントは微塵も残さず0となった。
――――
「約束は守ってもらうよ。今後二度とあの子に関わらない。いいね」
「こなくそぉ……次会ったらギッタンギッタンにしてやるー!」
「待ってくだっさい先輩ー!」
今時珍しい捨て台詞と共に敗走する男達を見守った後、栞は手元の携帯を確認すると、一件のメッセージの通知がされていた。
『次の土曜日に仕事に来てほしい。その代わりに月曜日は休みにしてあるから、突然で申し訳ないけどよろしくね』
少女を助けた報酬は休日出勤であった。
意気阻喪してしまった栞であったが、店長の頼みとあらば付いていくのが栞である。入ってしまったものは仕方がない、と気持ちを切り替えて人気のない夜道、帰路につくのであった。
時刻は午後7時。人通りの少ない道であり、少女にとってあまり芳しくない状況である。幸いにも男達は腕にデュエルバンドを装着しているので、男達が誇りあるデュエリストである場合、デュエルに勝利すれば大人しく引き下がってくれると予想される。なのだが、少女は自分の実力にはあまり自信を持てていない。加えて、男達は容貌や言動から小悪党という印象をおぼえ、勝利しても退かないどころかデュエルを受けないまであるかもしれない。後退る少女を追う如く男の一人は腕を掴んだ。
「ちょっと待ちな!」
刹那聞こえてきた背後からの声に男達は思わず振り向き、誰だ、と投げかけた。声の主は一人の女性であった。少女も声の方へ目を向けると、女性が目配せをしたことに気が付いた。その旨は解る、今のうちに逃げろと言われている。信じて少女は逃げ出した。
隙を突かれた男達は畜生、と呟く。
「この往来で不埒な真似は見過ごさないよ」
「何だと……何者だお前!」
「私とデュエルをしよう。私が勝てばあの子には二度と関わらない。君達が勝てば私は君達には二度と関わらない」
男の呼びかけに応じず、女性はデュエルバンドを構えた。頭に来た男達もデュエルバンドを構える。やっちゃってくださいよ先輩、と言われ一人が前に出るのだが、全員で来なよと煽りを受ける。後ろの二人もさらに頭に来てバンドを構えたことで、全員が臨戦態勢に移った。
「「「「デュエル!」」」」
――――
4人のデュエルバンドが連動し、ディスプレイに記された先攻プレイヤーは女性――その名は栞と記されていた。
「私のターン。私はリバースカードを1枚セットし、ターンを終了する」
デュエル前に煽って来た反面1ターン目の行動はカードのセットのみ。モンスターも存在せずフィールドはガラ空きである。男達を驚愕が襲ったが、すぐさま嘲笑に変貌する。
「俺達3人を相手取るというのにフィールドはそれだけか。笑わせやがって」
「フン、こんな布陣取るに足らないすよ。ドロー!永続魔法、《トリニティインパクト》を発動し、《トリニティナイト・マゼンタ》を召喚!」
男のフィールドに、赤紫色の鎧を纏う戦士が現れた。
「永続魔法《トリニティインパクト》の効果発動!トリニティナイトが召喚されるたび、相手に500のダメージを受けてもらう!」
場の永続カードからエネルギー波が射出され、栞のライフポイントは3500となった。
「そしてバトル!攻撃力1500の《マゼンタ》で相手に直接攻撃!」
赤紫の戦士が栞のライフを切り裂いた――と思いきや、栞のリバースカードが発動していた。
「永続トラップ発動、《デプス・アミュレット》。相手からの攻撃を受ける時、手札1枚を墓地へ送り、その攻撃は無効とする」
永続カードの障壁に阻まれ、戦士は男のフィールドに帰還した。
「姑息なカードを……俺はカードを1枚伏せてターン終了!」
「ならば俺のターン!俺も手札の《トリニティインパクト》を発動し、《トリニティナイト・シアン》を召喚する!」
次なる戦士は水色の鎧を纏い、フィールドに現れた。
「トリニティナイトの召喚に反応し、こいつのフィールドのと合わせ、《インパクト》2枚分の効果!合計1000のライフダメージを食らえ!」
今度は2回のエネルギー波が射出され、聖のライフポイントは2500。
「そして《シアン》でプレイヤーを攻撃する!」
「《デプス・アミュレット》。手札1枚で攻撃はまた無効」
水色の戦士も障壁に阻まれ、フィールドへと戻る。
「フン!無効にはされるが手札は減っている。リバースカードを1枚セットしてターンを終える!」
「俺のターン。手札から永続マジック《トリニティインパクト》を発動!そして《トリニティナイト・イエロー》を召喚!」
更なる戦士は黄色の鎧を纏っていた。
「3枚分の《インパクト》により、1500ダメージを相手に与える!」
みたびエネルギー波を受けて、ライフポイントはわずか1000となる。
「それだけじゃねえ。《インパクト》の隠された効果を発動!トリニティナイトが3体揃っている場合、トリニティナイトの攻撃力は3000となる!さらに、《イエロー》はこのバトルフェイズに2回の攻撃ができる!」
三色の戦士は剣を交わし、巨大化し攻撃力を大きく上げる。さらに黄色の戦士は双剣となり、栞へのダイレクトアタックを行う。
「もちろん、《デプス・アミュレット》の効果によって手札2枚を捨てて攻撃は無効!」
二たびの攻撃もかなわず、戦士は元のフィールドに帰還するだけとなった。
「余裕そうな顔をしているが、ライフは1000、手札は0。その永続トラップもこのエンドフェイズに破壊されフィールドには何もない。おしまいだな……俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ!」
「私のターン、ドロー。手札から速攻魔法、《破魔の矢》を発動!このターンのバトルフェイズ、相手が発動したマジック・トラップカードの効果を無効にして破壊できる」
「何だと!?」
男達が伏せていたカードは相手の攻撃がスイッチとなるカードであった。もはやこのターン無意味に伏せているカードと化したのである。
「さらにスタンバイフェイズに手札とフィールドにカードがない場合、墓地の《破魔獣モウニング・モンキー》を特殊召喚できる!」
墓地から現れたのは、巨躯なる猿。巨大化した戦士達を凌ぐ大きさであるが、攻撃力は2500と届かない。
「この効果でモウニング・モンキーが特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのマジック・トラップカードを全て破壊することができる!」
「何だと!?」
巨躯なる猿はその手を一振りし、3枚の伏せカードと3枚の永続カードを破壊した。
「そしてこのカードの攻撃力は破壊したカード1枚につき500アップし、相手フィールドの全てのモンスターに攻撃できる!」
「破壊されたのは6枚……ってことは……攻撃力5500のだと!?」
モウニング・モンキーは更なる巨大化をし、永続カードを失った戦士達は遠く及ぶべくもなかった。
「バトルフェイズ!モウニング・モンキーで3体のトリニティナイトを攻撃!ワイルドカウンター!」
「クソが……うわああああああ!」
戦士達の迎撃も空しく、たった1体のモンスターで男達のライフポイントは微塵も残さず0となった。
――――
「約束は守ってもらうよ。今後二度とあの子に関わらない。いいね」
「こなくそぉ……次会ったらギッタンギッタンにしてやるー!」
「待ってくだっさい先輩ー!」
今時珍しい捨て台詞と共に敗走する男達を見守った後、栞は手元の携帯を確認すると、一件のメッセージの通知がされていた。
『次の土曜日に仕事に来てほしい。その代わりに月曜日は休みにしてあるから、突然で申し訳ないけどよろしくね』
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